説明

垂直磁気記録媒体およびその製造方法並びに磁気記録再生装置

【課題】垂直磁気記録方式において、トラック密度を増加させた場合に記録トラック部とガードバンド部の幅が小さくなっても、ガードバンド部の加工が容易で、高記録密度記録を実現できる垂直磁気記録媒体及び、磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】非磁性基板上に少なくとも軟磁性裏打ち層および磁気記録層とを有する垂直磁気記録媒体において、前記磁気記録層は少なくともCoとPtと酸化物を含むグラニュラー構造からなり、かつ同心円状の記録トラック部と、互いに隣接する前記トラック部間の非磁性材料からなるガードバンド部からなり、磁気記録層の厚さ(t)が6nm以上18nm以下で、トラックピッチが130nm以下、記録トラック部の幅(D)が50nm以上、ガードバンド部の幅(d)と磁気記録層の厚さ(t)の比d/tが5/2以上である垂直磁気記録媒体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体および磁気記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置、可撓性ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大し、その重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特にMRヘッド、およびPRML技術の導入以来面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMRヘッド、TMRヘッドなども導入され1年に約100%ものペースで増加を続けている。
これらの磁気記録媒体については、今後更に高記録密度を達成することが要求されており、そのために磁気記録層の高保磁力化と高信号対雑音比(SN比)、高分解能を達成することが要求されている。また、近年では高面記録密度を達成するために媒体の絶対膜厚が薄くなってきており、これに伴い記録磁化が熱的擾乱によって弱められるという現象が問題となってきつつあり、特に記録の熱的安定性が大きな技術的課題となってきている。
とりわけ、前述のSN比を改善しようとすると、この熱的安定性が低下するケースが多く、このふたつの両立が開発の目標となっている。これは、一般的にSN比に優れた媒体では磁性層を構成する磁性粒子の結晶粒サイズが微細であることが多く、このことは媒体ノイズに有効である反面、磁性の熱的安定性の観点からは不安定領域に近いといえるためである。
【0003】
また、近年では線記録密度の向上と同時にトラック密度の増加によって面記録密度を上昇させようとする努力も続けられており、最新の磁気記録装置においてはトラック密度100kTPIにも達している。しかし、トラック密度を上げていくと隣接するトラック間の磁気記録情報が互いに干渉しあい、その境界領域の磁化遷移領域がノイズ源となりSN比を損なうという問題が生じやすくなる。このことはそのままBit Error rateの低下につながるため記録密度の向上に対して障害となっている。
また、トラック間距離が近づくために、磁気記録装置は極めて高精度のトラックサーボ技術を要求されると同時に、記録を幅広く実行し、再生は隣接トラックからの影響をできるだけ排除するために記録時よりも狭く実行する方法が一般的に用いられている。この方法ではトラック間の影響を最小限に抑えることができる反面、再生出力を十分得ることが困難であり、そのために十分なSN比を確保することがむずかしいという問題がある。媒体の熱的安定性を確保するために近年注目されているのが垂直磁気記録媒体である。
【0004】
このように垂直磁気記録媒体は将来の高記録密度化のための技術として期待されているが、垂直磁気記録においてもさらなる高記録密度化をするためには、トラック密度を増加する必要がある。垂直磁気記録媒体においてもトラック密度を増加させることで問題となる記録端部の書きにじみ(フリンジ)を低減させる必要がある。
フリンジを解決する方法としては、ディスクリートトラックが考えられる。
【0005】
例えば、データ部を凸部、ガードバンド部を凹部としたディスクリート媒体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、磁気記録層の膜厚が40nmと厚く、生産性が悪いばかりではなく、鋭角なガードバンド部の形成が困難となり、記録エッジ部からのノイズが増大するために、高記録密度に対応した記録再生特性を得ることができないため好ましくない。
また、ガードバンド部を埋め込み材で埋め込みをおこない、ディスク表面が平坦であるディスクリート媒体も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしガードバンド部の深さが深くなると、埋め込み材の充填率の低下をもたらし、信頼性を損なうために好ましくない。
【特許文献1】特開平6−259709号公報
【特許文献2】特開平9−97419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高記録密度を実現するための技術である垂直磁気記録方式において、トラック密度を増加することで記録トラック部、ガードバンド部の幅が小さくなっても、ガードバンド部の加工と埋め込み、さらには記録トラック部に形成した埋め込み材の除去が容易である垂直磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するために以下の発明を提供する。すなわち、
(1) 非磁性基板上に少なくとも軟磁性裏打ち層および磁気記録層とを有する垂直磁気記録媒体において、前記磁気記録層は少なくともCoとPtと酸化物を含むグラニュラー構造からなり、かつ同心円状の記録トラック部と、互いに隣接する前記トラック部間の非磁性材料からなるガードバンド部からなり、磁気記録層の厚さ(t)が6nm以上18nm以下で、トラックピッチが130nm以下、記録トラック部の幅(D)が50nm以上で、ガードバンド部の幅(d)と磁気記録層の厚さ(t)の比d/tが5/2以上である垂直磁気記録媒体、
(2) 前記磁気記録層の厚さが6nm以上15nm以下である(1)に記載の垂直磁気記録媒体、
(3) 非磁性基板上に少なくとも軟磁性裏打ち層および磁気記録層とを有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、非磁性基板上に、軟磁性裏打ち層、磁気記録層、保護膜を形成した後、該保護膜表面にレジストを塗布し、このレジストをパターニング後、ガードバンド部とすべき部分の磁気記録層を除去し、前記磁気記録層を除去した部分に酸化物を充填し、磁気記録層に同心円状の記録トラック部と非磁性材料からなるガードバンド部を構成し、その後表面を平滑化した後保護膜及び潤滑膜を形成する垂直磁気記録媒体の製造方法、
(4) 前記レジストのパターニングに、スタンパーを用いたインプリント法を用いる(3)に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法、
(5) 前記酸化物の充填にスパッタ法を用いる(3)または(4)に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法、
(6) 前記表面の平滑化にイオンビームエッチング法を用いる(3)から(5)の何れか1つに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(7) 少なくとも垂直磁気記録媒体と該垂直磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、磁気記録媒体が(1)または(2)に記載の垂直磁気記録媒体である磁気記録再生装置、の各発明を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板上に少なくとも軟磁性裏打ち層および基板面に対し垂直方向に磁気異方性を有する酸化物グラニュラー磁気記録層とを有する垂直磁気記録媒体であって、酸化物グラニュラー磁気記録層は同心円状の記録トラック部と、非磁性材料からなる互いに隣接するトラック部の間に存在するガードバンド部からなり、磁気記録層の厚さが6nm以上18nm以下で、トラックピッチが130nm以下、かつ記録トラック部の幅が50nm以上で、かつガードバンド部の幅(d)と酸化物グラニュラー磁気記録層の厚さ(t)の比d/tが5/2以上であるので、SNRと信頼性に優れしかも高生産性を満たし、かつ高記録密度の磁気記録媒体となる。この磁気記録媒体を使用すれば、SNRと信頼性に優れた高記録密度の磁気記録再生装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
先ず製造方法の概要について説明する。
図1及び図2に、酸化物グラニュラー磁気記録層が形成された磁気記録媒体基材の磁気記録層に、トラック部、ガードバンド部を形成するおよその工程を示す。
1) 非磁性基板1上に軟磁性裏打ち層2、配向制御層3、磁気記録層4、保護膜5を順次形成して磁気記録媒体基材8とする。(図1−A参照。)。
2) 1)で得られた磁気記録媒体基材8表面の保護膜5の上にレジスト7を塗布する。
必要に応じて焼成を行い余分な有機溶剤等を除去する。(図1−B参照。)。
3) 所望のトラック間距離にあわせて設計された凹凸を有する金属製の型(スタンパー)9を磁気記録媒体基材8のレジスト7の表面に密着させ、高圧でプレスすることにより磁気記録媒体基材8表面にトラック形状の凹凸部11を形成する(以下インプリントプロセスと呼ぶ)(図1−C参照。)。
4) ドライエッチング、反応性イオンエッチングなどの手法を用いて3)の磁気記録媒体基材8表面のレジスト7、保護膜5、磁気記録層4の一部を剥ぎ取る。これの結果、3)で形成されたトラックの凹凸に沿った磁気記録層の凸部11aと凹部11bが残ることになる(以下エッチングプロセスと呼ぶ)(図1−D参照。)。
5) この上から磁気記録層に使用したのと同じ材質の酸化物12をスパッタリングなどの手法を用いて堆積させ、トラックとトラックの間に形成された極めて細長い凹部11bに該酸化物12を充填する(以下埋め込みプロセスと呼ぶ)(図2−E参照。)。このとき磁気記録媒体基材上の凹部11bの奥までこの酸化物12が充填されることが必要である。
6) その後、ポリッシュまたはドライエッチングなどの手法により酸化物12の表面に残る凹凸を平滑化する(以下平滑化プロセスと呼ぶ)(図2−F参照。)。
7) 再びプラズマCVDなどの方法を用いて保護膜16となるDLC(DiamondLike Carbon)を成膜する(図2−G参照。)。
8) 最後に保護膜16の上に潤滑膜17となるフッ素系潤滑剤や炭化水素系潤滑剤の1〜4nmの厚さの膜をスピンコート等により形成する(図2−H参照。)。
【0010】
次に、製造方法の詳細について説明する。
非磁性基板としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、結晶化ガラス、アモルファスガラス、シリコン、チタン、セラミックス、カーボン、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。結晶化ガラス基板としては、リチウム系結晶化基板を用いることができ、アモルファス基板としては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスが挙げることができる。
非磁性基板の平均表面粗さRaを1nm以下、好ましくは0.5nm以下とすると、酸化物グラニュラー磁気記録層の垂直配向性が良好となる、さらにインプリント工程での圧力分布が小さくなり、加工の均一性が向上する点から好ましい。
非磁性基板の表面の微小うねりWaを0.3nm以下とすると、インプリント工程での圧力分布が小さくなり、加工の均一性が向上する点から好ましい。
【0011】
軟磁性下地膜は、軟磁性材料からなるもので、この材料としてはFe、Co、Niを含む材料を挙げることができる。この材料としては、合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrBなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNb、CoBなど)を挙げることができる。
軟磁性下地膜は積層構造とすることが好ましい。2層の軟磁性膜の間にRu膜、Re膜、Cu膜等を設けた、3層積層構造として所定の厚さにすることで、上下に設けられた軟磁性膜を反強磁性結合させることができるためである。このような構成とすることで、垂直媒体特有の問題であるWATE(Wide Area Track Erasure)の現象を改善することが可能となる。
【0012】
配向制御膜は、上に設けられた酸化物グラニュラー磁気記録層の配向や結晶サイズを制御するためのものである。配向制御膜に用いられる材料は、六方最密構造(hcp構造)または面心立方構造(fcc構造)を有するものが好適である。特にRuが好ましい。
配向制御膜の厚さは30nm以下であることが好ましい。配向制御膜の厚さが30nmを超えると記録再生時における磁気ヘッドと軟磁性下地膜の距離が大きくなるため、OW特性や再生信号の分解能が低下するため好ましくない。
【0013】
酸化物グラニュラー磁気記録層は磁化容易軸が基板面に対し垂直方向に有している。構成元素としては、少なくともCoとPtと酸化物を含んでおり、さらにSNR特性改善などの目的でCr、B、Cu、Ta、Zrを添加することもできる。
酸化物グラニュラー磁気記録層を構成する酸化物としては、SiO、SiO、Cr、Y、Ta、TiO等を挙げることができる。酸化物の体積率は15〜40体積%であることが好ましい。酸化物の体積率が15体積%未満であると、SNR特性が不十分となるため好ましくない。酸化物の体積率が40体積%を超えると、高記録密度に対応するだけの保磁力を得ることができないため好ましくない。
【0014】
本発明で使用する垂直磁気記録層は、磁性結晶粒の周囲を非磁性非金属物質である酸化物で囲んだ構造をもつ、いわゆるグラニュラー構造をなしている。グラニュラー磁性層は、非磁性非金属の粒界相が磁性粒子を物理的に分離するため、磁性粒子間の磁気的な相互作用が低下し、記録ビットの遷移領域に生じるジグザグ磁壁の形成を抑制するので、低ノイズ特性が得られる。また、このようなグラニュラー磁気記録層においては、粒界相として用いられる非磁性非金属の物質は、磁性粒子間の相互作用を低減することが可能である。
【0015】
酸化物グラニュラー磁気記録層のニュークリエーション磁界(−Hn)は1.5(kOe)以上であることが好ましい。−Hnが1.5(kOe)未満であると熱揺らぎが発生するので好ましくない。なお、1Oeは約79A/mである。
酸化物グラニュラー磁気記録層の厚さは6nm以上18nm以下であることが好ましい。特に、酸化物グラニュラー磁気記録層は6nm以上15nm以下であることが好ましい。酸化物グラニュラー層の厚さがこの範囲であると、磁性層を削ってガードバンド部の形成をする際、時間を短くすることが可能であるとともに、ガードバンド部の形状が深さ方向に台形になるのを抑えることができる。また、埋め込みの際に非磁性材料の充填が容易となり、平滑化プロセスの際に除去する厚さも低減することが可能となるので、生産性が大きく向上する。
【0016】
スタンパーのトラックピッチは130nm以下であることが好ましい。トラックピッチとは、記録トラック部中心部と、隣接する記録トラック部に中心部との距離を意味する。
高記録密度を達成するためには、130nm以下であることが必要である。
記録トラック部の幅は50nm以上であることが好ましい。記録トラック部の幅が50nm未満であると、出力が小さくなりSNRの低下が生じるために好ましくない。
【0017】
ガードバンド部の幅(d)と酸化物グラニュラー磁気記録層の厚さ(t)の比d/tが5/2以上であることが好ましい。d/tが5/2以上である本発明では、ガードバンド部の埋め込み充填率が非常に高くすることができる。充填率が低下すると腐食が発生し、信頼性を大きく損ねるので好ましくない。
【0018】
インプリントプロセスで用いるスタンパーは金属プレートに電子線描画などの方法を用いて微細なトラックパターンを形成したものであり、材料としてはインプリントプロセスに耐えうる硬度、耐久性が要求される。たとえばNiなどが使用されるが、前述の目的に合致するものであれば材料は問わない。
【0019】
磁気記録媒体基材上に塗布されるレジストは広く工業的に使用されているフォトレジストなどさまざまな種類のものを使用することができる。通常はスピンコートなどを用いて薄く均一に塗布したのち、オーブンで一定温度、時間で焼成をかけ不要な有機溶剤などを除去する。このプロセスに関しては使用するレジストの性質に合わせて適宜プロセスを調整することができる。
【0020】
エッチングプロセスには、反応性イオンエッチング、イオンミリングなどの方法を適宜用いることができる。酸化物グラニュラー磁気記録層を完全に切断し凹部(ガードバンド部)を形成後、トラック部上部に残ったレジストを除去する。
【0021】
埋め込みプロセスにおいて、埋め込み材料は酸化物グラニュラー磁気記録層に使用したのと同じ非磁性の酸化物材料を用いることが好ましい。特にSiOなどの酸化物を用いることが好ましい。
【0022】
埋め込みプロセスでは、極めて細く深い溝に均一に該非磁性材料を充填する必要があるので、どのようなプロセス条件を用いるかは重要である。代表的なプロセスとしてはスパッタリング法があるが、堆積速度、ガス圧など条件を慎重に選ぶことが必要である。この埋め込みプロセスがきちんとなされないとトラック間の磁気的相互作用が十分遮断されず十分な記録再生特性を期待できない。また、隙間の部分が酸素などのガスと接触し耐食性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0023】
平坦化プロセスでは、埋め込みプロセス後に生じるであろう媒体表面の凹凸を、磁気記録媒体として十分なレベルまで平滑にする。この手段としてはChemical Mechanical Polish(CMP)、Ion Beam Etching(IBE)などを用いることができる。磁気記録媒体の性能を損なわず、磁気記録媒体表面を十分平滑に加工できる限りにおいてはいかなる手法を用いても本発明の効果には支障ない。ヘッド浮上量ができるだけ小さいことが高密度磁気記録の実現には有効である。本発明の磁気記録媒体においての表面粗さ(Ra)は、1nm以下、さらには0.5nm以下であることが好ましく、中でも0.3nm以下であることが好ましい。
【0024】
次いで、保護膜を形成する。一般的にはDiamond Like Carbon(DLC)の薄膜をP−CVDなどを用いて成膜するが、手法はこの限りではない。ここでの保護膜は一般的に磁気記録媒体保護膜として使用されているものと同じと考えてよい。保護膜としてはこの他、C、水素化C、窒素化C、アルモファスC、SiC等の炭素質層やSIO、Zr、TiNなど、通常用いられる保護膜材料を用いることができる。また、保護膜が2層以上の層から構成されていてもよい。保護膜の膜厚は1〜10nm、特に1〜5nmであり、耐久性を確保できる範囲でできるだけ薄く設定することが好ましい。
【0025】
最後に保護膜の上に潤滑膜を形成される。潤滑膜に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられ、通常1〜4nmの厚さで潤滑膜を形成する。
【0026】
本発明の磁気記録再生装置20は、図3に例示するように、少なくとも上述してきた本発明の垂直磁気記録媒体22と、これを記録方向に駆動する磁気記録媒体駆動部23と、記録部と再生部からなる磁気ヘッド24と、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対運動させるヘッド駆動部27と、磁気ヘッドへの信号入力と磁気ヘッドからの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段28を有する磁気記録再生装置である。
さらに上述の磁気ヘッドの再生部をGMRヘッドあるいはTMRヘッドで構成することにより、高記録密度においても十分な信号強度を得ることができ、高記録密度を持った磁気記憶装置を実現することができる。またこの磁気ヘッドを、浮上量を0.005μm〜0.020μmと従来より低い高さで浮上させると、出力が向上して高い装置S/Nが得られ、大容量で高信頼性の磁気記憶装置を提供することができる。また、最尤復号法による信号処理回路を組み合わせるとさらに記録密度を向上でき、例えば、トラック密度170kTPI以上、線記録密度1200kbpI以上、1平方インチ当たり200Gピット以上の記録密度で記録・再生する場合にも十分なS/Nが得られる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
洗浄済みのHD用ガラス基板(オハラ製、外径0.85インチ)をセットした真空チャンバをあらかじめ1.0×10−5Pa以下に真空排気した。さらに該ガラス基板上に加熱なしで65Fe−25Co−10B(at%)合金膜を50nm、Ru膜を0.8nm、65Fe−25Co−10B(at%)合金膜を50nmの厚さに成膜して軟磁性下地膜を形成した。ついでRu膜からなる配向制御膜を20nm、65Co−10Cr−15Pt−10SiO(mol%)からなる酸化物グラニュラー磁気記録層を12nm、カーボンからなる保護膜を4nm形成した。
【0028】
次に、保護膜まで形成した磁気記録媒体基材を真空チャンバ内から取り出し、表面にレジストをスピンコートで塗布した。塗布した後に約100℃の恒温槽で20分焼成して余分な溶剤を除去した。
次にあらかじめ用意していたNi製スタンパーを用いてインプリントを施した。スタンパーはトラックピッチ130nmとした。記録トラック部の幅を60nm、ガードバンド部の幅が70nmになるようにパターニングされている。
【0029】
次にこれらの磁気記録媒体基材サンプルを高真空チャンバ内にセットし、イオンビームエッチングを用いてガードバンド部の酸化物グラニュラー記録膜を除去した。
その後、RFスパッタ法を用いてSiO膜を堆積させたて、ガードバンド部にSiOを充填した。SiOの平均膜厚は810nmになるように調整した。さらにイオンビームエッチングを用いてトラック部に酸化物グラニュラー磁気記録層が露出したところまで表面平滑化をおこなった。最後にCVD法にてDLCを4nm形成し、潤滑剤を2nm塗布して磁気記録媒体を作製した。このサンプルを実施例1とする。
【0030】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
酸化物グラニュラー磁気記録層の厚さとガードバンド部の幅を表1に示すように変えたこと以外は実施例1に準じて磁気記録媒体を作製した。
【0031】
実施例1〜6および比較例1〜3の磁気記録媒体のSNRとガードバンド部の埋め込み材の充填率を求めた。
SNRの評価は、GUZIK社製リードライトアナライザRWA1632、およびスピンスタンドS1701MPを用い、書き込み部にシールディッドタイプヘッド、再生部にGMR素子を用いた磁気ヘッドを使用し、Sp−Pを160kFCL、Nを960kFCLでのrms値(root mean square−inches)である。
充填率の評価には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面観察をおこない、充填されていない隙間の部分の割合を算出した。結果を表1に併記する。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果より、高記録密度お磁気記録媒体を達成するために、ガードバンド部の幅を80nm以下とした条件では、酸化物グラニュラー磁気記録層が6nm以上18nm以下、特に6nm以上15nm以上では、SNRと充填率の両立ができていることがわかる。
ガードバンド部の幅が80nmを超える条件(比較例3)では、記録トラック部の幅が小さくなり、SNRが低下するため好ましくない。ガードバンド部の幅が80nmを超える条件で記録トラック部の幅を大きくすると、SNRと信頼性の両立は可能となるが、トラックピッチが広くなりトラック方向の線密度が小さくなるために高記録密度の磁気記録媒体の作製ができないため好ましくない。
酸化物グラニュラー磁気記録層の厚さが薄すぎたり(比較例1)、逆に厚すぎる(比較例2)と、SNR特性が悪くなる。
【0034】
上記のようにして得られた磁気記録媒体を使用して、図3に示す構造の磁気記録再生装置を組み立てた。
本発明の磁気記録再生装置は、SNR特性やOW特性に優れていて、高密度の情報の記録再生が可能な磁気記録再生装置となった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体の製造方法を示す工程図である。
【図2】図1に続く工程図である。
【図3】本発明に係る磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1・・・・・・非磁性基板、2・・・・・・軟磁性裏打ち層、3・・・・・・配向制御層、4・・・・・・磁気記録層、5・・・・・・保護膜、7・・・・・・レジスト、8…磁気記録媒体基材、9・・・・・・スタンパー、11・・・・・・凹凸部、11a・・・・・・凸部、11b・・・・・・凹部、12・・・・・・酸化物、13・・・・・・記録トラック部、14・・・・・・ガードバンド部、16・・・・・・保護膜、17・・・・・・潤滑膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板上に少なくとも軟磁性裏打ち層および磁気記録層とを有する垂直磁気記録媒体において、前記磁気記録層は少なくともCoとPtと酸化物を含むグラニュラー構造からなり、かつ同心円状の記録トラック部と、互いに隣接する前記トラック部間の非磁性材料からなるガードバンド部からなり、磁気記録層の厚さ(t)が6nm以上18nm以下で、トラックピッチが130nm以下、記録トラック部の幅(D)が50nm以上で、ガードバンド部の幅(d)と磁気記録層の厚さ(t)の比d/tが5/2以上であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記磁気記録層の厚さ(t)が6nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
非磁性基板上に少なくとも軟磁性裏打ち層および磁気記録層とを有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、非磁性基板上に、軟磁性裏打ち層、磁気記録層、保護膜を形成した後、該保護膜表面にレジストを塗布し、このレジストをパターニング後、ガードバンド部とすべき部分の磁気記録層を除去し、前記磁気記録層を除去した部分に磁気記録層に使用したのと同一の酸化物を充填し、磁気記録層に同心円状の記録トラック部と非磁性材料からなるガードバンド部を構成し、その後表面を平滑化した後保護膜及び潤滑膜を形成することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記レジストのパターニングに、スタンパーを用いたインプリント法を用いることを特徴とする請求項3に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記酸化物の充填にスパッタ法を用いることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記表面の平滑化にイオンビームエッチング法を用いることを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
少なくとも垂直磁気記録媒体と該垂直磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、前記垂直磁気記録媒体が請求項1または請求項2に記載の垂直磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−155863(P2006−155863A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308323(P2005−308323)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】