説明

埋設された長尺物体の探査装置および探査方法

【課題】被探査領域に埋設された合成樹脂管等の長尺物体を探査するための探査装置および探査方法を提案する。
【解決手段】本発明に係る探査装置(1)は,演算手段(7)および表示手段(8)を有する評価ユニット(6)を具え,さらに,被探査面(F)に沿って移動可能であり,かつ,探査経路センサ(10)と,アンテナ(12a)が設けられた送受信ユニット(11a)とを有する手持ち式の探査ヘッド(9)を具える。前記アンテナは,被探査面(F)内で相互に離間して配置された少なくとも2個のアンテナ(12a,12b)を含み,これらアンテナ(12a,12b)の被探査面(F)内における間隔が5cm〜50cmの範囲内に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,被探査領域に埋設された長尺物体,例えば石材や煉瓦等の壁材中に埋設された合成樹脂管等を探査するための探査装置および探査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場において長尺の,すなわち一次元方向に延在する埋設物体の検出は重要な役割を担っており,そのような埋設物体としては補強鉄筋,金属管,電気配管または合成樹脂管などが挙げられる。このような探査方法として,例えば,特許文献1:米国特許第6541965号明細書には,近接磁界のインピーダンス変化を利用した探査方法が記載されている。また,特許文献2:ドイツ特許第10239431号明細書には,近接電界のインピーダンス変化を利用した探査方法が記載されている。さらに,特許文献3:米国特許第5541605号明細書には,電磁的にレーダで検出し,かつ特徴付ける探査方法が記載されている。後者の探査原理は物理定数,特に誘電定数の変化に基づいており,この場合,壁材中に埋設された合成樹脂管は,1〜10GHzの周波数領域で相対的誘電定数が約4〜8,典型的には約4.3であるため,探査が測定技術的に困難である。さらに,その探査は,壁材の煉瓦中に断熱用の中空スペースが設けられている場合には更に困難である。
【0003】
特許文献4:米国特許第5296807号明細書には,近接磁界を利用して長尺の埋設物体を探査する手持ち式の探査装置が記載されており,この装置は,被探査面に沿って移動可能な近接磁界用の探査ヘッドと,探査経路センサと,空間的に分離したイメージを生成する評価ユニットとを具え,その評価ユニットは探査ヘッドに対して信号伝達可能に接続されている。
【0004】
特許文献5:米国特許第6600441号明細書には,互いに離間した複数のアンテナ対を具えるレーダ型の探査装置が記載されており,この場合にはアンテナからの個別的なレーダ測定信号が信号プロセッサにより相関処理され,被探査面内の長尺の埋設物体およびその位置が選択される。また,特許文献6:WO02063334号国際公開パンフレットには,パッチアンテナを具えるレーダ型の探査装置が記載されている。
【特許文献1】米国特許第6541965号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第10239431号明細書
【特許文献3】米国特許第5541605号明細書
【特許文献4】米国特許第5296807号明細書
【特許文献5】米国特許第6600441号明細書
【特許文献6】WO02063334号国際公開パンフレット
【0005】
さらに,三次元データを対象とするコンピュータ支援型の信号処理方法も既知であるが,その信号処理方法自体は本発明の対象とするものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は,被探査領域に埋設された合成樹脂管等の長尺物体を探査するための探査装置および探査方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決手段は,本発明によれば,独立請求項1および13に記載された探査装置および探査方法によって解決することが可能である。なお,本発明の好適な実施形態は,従属請求項に記載したとおりである。
【0008】
すなわち,本発明による探査装置は,演算手段および表示手段を有する評価ユニットを具え,さらに,被探査面に沿って移動可能であり,かつ,探査経路センサと,アンテナが設けられた送受信ユニットとを有する手持ち式の探査ヘッドを具え,さらに,前記アンテナが,被探査面内で相互に離間して配置された少なくとも2個のアンテナを含み,これらアンテナの被探査面内における間隔が5cm〜50cmの範囲内,好適には煉瓦の標準的な高さに対応する約15cmに設定されている。本発明を実施するにあたり,評価ユニットおよび探査ヘッドは互いに一体的に構成することができ,別体として構成することも可能である。
【0009】
本発明によれば,相互に離間して配置されたアンテナの間隔を煉瓦の標準的な高さ,したがって壁面を構成するよう互いに隣接する煉瓦列の間隔に対応させるため,両アンテナで受信した測定新語により各種壁材に埋設された長尺物体を確実に検出することが可能である。煉瓦が通常は壁面内で水平方向にオフセット配置されており,煉瓦列内に周期的に配設さられた中空スペースの位置も垂直方向で変化するため,垂直方向で互いに隣接する2個の煉瓦列内における各中空スペースの位置は統計的に分散している。これに対して,垂直に埋設された合成樹脂管等の長尺物体は通常は複数の煉瓦列を貫通している。したがって,被探査領域の被探査面内でスキャナを走査方向に沿って移動させると,異なる煉瓦列からの測定信号を減算処理することにより,中空スペースと埋設された長尺物体とを区別することができる。というのは,中空スペースの相対的な信号部分が統計的には一定の位相ではなく,埋設された長尺物体の信号部分に関して減衰するからである。
【0010】
送受信ユニットがレーダ型送受信ユニットで構成され,該送受信ユニットが,任意的に,500MHzおよび10GHzの間の周波数領域内で,0.5〜1.0の範囲内の相対的帯域幅を有する構成とするのが好適である。これにより,構造材に埋設された物体を十分な深度まで検出することが可能である。レーダ波の波長および帯域幅は煉瓦中の中空スペースまたは合成樹脂管に対する十分な解像度が得られるよう適宜に設定する。
【0011】
前記少なくとも2個のアンテナがそれぞれモノスタティック型の広帯域ダイポールアンテナ(例えばパッチアンテナ)で構成され,該ダイポールアンテナが,任意的に,同一方向に向けられた極性方向を有する構成とするのが好適である。これにより,走査方向に対して垂直方向に延在する長尺物体に対して最大の感度を達成することが可能である。
【0012】
探査ヘッドが,少なくとも1つの別種センサを更に含む構成とするのが好適である。これにより,検出された埋設物体を演算手段により二通りの測定方法に基づいて特徴付けることができ,特徴付けの精度を向上することが可能である。
【0013】
上記の別種センサが,2個のアンテナの周りで対称的に延在する構成とするのが好適である。これにより,誘導型センサはその測定位置が両アンテナの中間位置に配置されることとなる。
【0014】
代替的な構成として,2個の前記別種センサが,それぞれ1個のアンテナの周りで対称的に延在する配置とすることも可能である。これにより,2個の別種センサが同一の測定位置に同軸的に配置されることとなる。
【0015】
前記別種センサは,誘導型センサで構成するのが好適であり,特に,励起コイルと,受信機として作動接続された2個の受信コイル,または複数のフラックスゲート型センサ,磁気抵抗センサ等で構成するのが更に好適である。これにより,中空スペースや合成樹脂管の高精度の検出が可能となる。というのは,煉瓦はコンクリートと対比して強度に磁化させることができ,これは焼成された粘土,通常は鉄分を含有するマグネタイトから構成されているためである。鉄分は焼成の間に磁性マグネタイトに変換されるものである。
【0016】
前記誘導型センサは,走査方向および該走査方向と直交する方向にそれぞれ異なるパスを有するクロス型フェライト部材で構成するのが好適である。この場合には,三次元の誘導測定信号を得ることが可能である。
【0017】
少なくとも2個の前記送受信ユニットを具え,これら送受信ユニットがそれぞれ各別のアンテナに関連して配置されている構成とするのが好適である。これにより,アンテナ相互間の接続手段を省略することができ,全体をモジュール化することが可能である。
【0018】
探査ヘッドを180°の角度に亘って旋回可能な脚部で構成し,前記2個の送受信ユニットを関連するアンテナと共にそれぞれ異なる脚部に配置するのが好適である。これにより,脚部を相互に重ねた収納状態で,探査装置の全長を短縮することが可能である。
【0019】
2個の送受信ユニットを前記脚部に沿って変位し得るよう固定可能とするのが好適である。これにより,両アンテナの間隔を探査すべき壁材,特に煉瓦列の間隔に適合させることが可能である。
【0020】
前記各脚部に被探査面に沿って移動可能な少なくとも1個のホイールが設けられ,特に,旋回軸線に沿って互いにオフセット配置された合計3個のホイールが設けられた構成とするのが好適である。この場合,脚部の展開状態において遊びのない三点支持を達成することができ,脚部を相互に重ねた収納状態では3個の車輪を互いに入り込ませて格納することが可能である。
【0021】
前記各脚部につき,少なくとも1個のホイールが探査経路センサ,たとえば増分的経路センサまたは光学的相関センサと結合するのが好適である。これにより,被探査面内での探査ヘッドの位置変化のみならず,姿勢変化を検知することが可能である。
【0022】
本発明による探査方法は,多数回に亘って反復される第一工程において探査装置により,被探査面に沿って走査方向に移動可能な探査ヘッドの位置変化を生じさせると共に,その位置に関連する個別的測定信号を少なくとも1個のアンテナにより受信し,第二工程において演算手段により個別的測定信号から,当該個別的測定信号中の,埋設されている可能性のある物体を同定可能に含む個別的測定データを算出するものである。本発明では,第一工程において,少なくとも2個のアンテナにより個別的測定信号(A‐スキャン信号)を受信し,第二工程において,個別的測定信号から個別的測定データを算出し,第三工程において,演算手段により少なくとも2つの個別的測定データから相関測定データを算出するものである。
【0023】
第二工程において,個別的測定信号を少なくとも部分的に個別的測定データとして使用するのが好適である。これにより,高精度の生データが得られ,複雑な演算を必要とする信号処理方法に依存する必要がなくなるからである。
【0024】
第二工程において,演算手段による演算処理の少なくとも一部を慣用的な信号処理方法をもって実行するのが好適である。慣用的な信号処理方法としては,前処理(スケール化,フィルタ処理,雑音除去,補間),バックグラウンド減算(中間値,メジアン予測),深度に応じた増強(減衰損失補償),対数化(対数的スケール化),横方向フォーカス(移動,縁部値の参入,合成開口フォーカス=SAFT),深度方向フォーカス(ヒルベルト変換,オイラー逆重畳〔デコンボリューション〕,パルス圧縮)等を挙げることができ,何れも個別的測定データの質を向上しえるものである。
【0025】
第三工程において,演算手段による個別的測定データからの相関測定データの算出を,次の計算方法の少なくとも1つをもって実行するのが好適である。
a) 少なくとも2つの個別的測定データから,AND結合または乗算により相関測定データを算出する計算方法。
b) 少なくとも2つの個別的測定データから,相互相関または相互分散により相関測定データを算出する計算方法。
c) 少なくとも2つの個別的測定データにおける,空間的に離散して検出された物体の理論的交差値を算出する計算方法。
d) 少なくとも2つの個別的測定データにおける,空間的に非鋭敏(ファジー)に検出された物体の重畳された確率値を算出する計算方法。
【0026】
第四工程において,演算手段により相関測定データと,付加的な測定データとを組み合わせて複合測定データを取得し,該付加的な測定データは,第一工程において更なるセンサにより付加的な測定データとして受信し,かつ,第二工程において付加的な測定データとして加工されるものとするのが好適である。これにより,測定データの冗長度を向上することができ,検出された埋設物体の特徴付けをより良好に達成することが可能である。
【0027】
付加的な測定信号を誘導型センサにより検出する場合に,演算手段により該付加的な測定信号を電源回路の電源周波数として検出し,かつ,付加的な測定データに加工するのが好適である。これにより,電線の埋設箇所を確実に特定することが可能である。
【0028】
更なる工程において,演算手段により多数の相関測定データまたは複合測定データをそれらの位置と共に相互に減算し(極値の検出およびグループ化),任意的に,所定の物体パラメータ(測定閾値,例えば2cm以上とする寸法閾値,確率テスト)と比較し,かつ,位置および深度と関連させた物体データに加工するのが好適である。これにより,埋設物体を三次元的に特定することができる。この工程は,ユーザの選択に依存するものであり,複合測定データの演算前または演算後に行うことが可能である。
【0029】
更なる第五工程において,演算手段により物体データを位置および/または深度と共にデータ画像(A‐,B‐,C‐またはD‐スキャン)として算出し,該データ画像を評価手段における出力手段から任意的にグラフィックイメージとして出力するのが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下,本発明を図示の好適な実施形態に基づいて更に詳述する。
【0031】
図1は,中空スペース4を有する煉瓦3で構成された壁材2に埋設された長尺物体としての合成樹脂管5を探査するための探査装置1を示す。探査装置1は,マイクロプロセッサμCで構成された演算手段7と,イメージディスプレイで構成された出力手段8と,入力手段20とを含む評価手段6を具え,さらに,紙面と直角な被探査面F内で移動可能な探査ヘッド9を具えている。探査ヘッド9は,ホイール19に結合された増分型距離計で構成した移動経路センサ10と,複数の送受信ユニット11a,11b,…11nと,被探査面F内で互いに離間した複数のアンテナ12a,12b,…12nとを含み,被探査面F内におけるアンテナ12a,12bの間隔は煉瓦3の標準的高さに相当する15cmである。評価ユニット6は,探査ヘッドとの間で信号伝達を可能とした,手持ち式の一体的ユニットを構成する。複数の送受信ユニット11a,11b,…11nは,500MHzおよび10GHzの間の周波数領域内で,0.5〜1.0の範囲内の相対的帯域幅を有するレーダ型送受信ユニットとして構成し,それぞれ1個ずつのアンテナ12a,12b,…12nに関連させている。さらに,複数の別種形式のセンサ13a,…13nを設け,これらは誘導型センサとして構成する。
【0032】
図2に線図的に示すように,探査ヘッド9は,被探査面Fに沿って移動可能な3個のホイール19と,被探査面F内で距離Aを隔てた2個のアンテナ12a,12bとを具え,これらのアンテナはそれぞれモノスタティック型の広帯域ダイポールアンテナで構成され,同一方向に向けられた極性方向Pを有する。探査ヘッド9は,さらに,少なくとも1つの別種センサ13aとして誘導型センサを具える。この誘導型センサは13aは,2個のアンテナ12a,12bの周りで対称的に延在するものであり,励起コイル14と,互いに差動接続された複数の受信コイル15とで構成されている。
【0033】
図3に示す変形例に係る探査ヘッド9は,被探査面Fに沿って移動可能な3個のホイール19と,探査面F内で距離Aを隔てた2個のアンテナ12a,12bとを具え,これらのアンテナはそれぞれ別種形式の誘導型センサ13a,13bに関連して配置されている。クロス形状としたフェライト部材16がそれぞれ1個のアンテナ12a,12bの周りで対称的に延在するよう配置されている。さらに,センサ13a,13bは被探査面F内で45°の角度に配置されている。
【0034】
図4および図5にそれぞれ収納状態および展開状態で示すように,手持ち式の探査ヘッド9は旋回軸線Sの周りで180°の角度に亘って旋回可能とした2個の脚部17a,17bをもって構成されている。2個のアンテナ12a,12bがそれぞれ異なる脚部17a,17bに配置されている。その際,旋回ヒンジ18は内側に位置する送受信ユニット11a,11bが関連するアンテナ12a,12bと共に変位できるよう固定可能とされている。したがって,アンテナ12a,12bの間隔Aを調整することが可能である。一方の脚部17aに1個のホイール19を配置し,他方の脚部17bに2個のホイール19を配置する。この場合,収納状態では3個のホイール19が旋回軸線Sに沿ってオフセット配置される構成とする。さらに,各17a,17bにおける1個のホイール19を移動経路センサ10に接続し,脚部17bに配置した2個のホイール19を内側に位置する歯車22により相互に結合する。一体的な評価ユニット6として構成された手持ち式探査ヘッド9の脚部17a,17bには,ノブ形状の入力手段20を配置する。探査ヘッド9には適当な無線形式(ラジオ周波方式または赤外線方式)の双方向データ伝達系23を設けて別の構成ユニットとした評価ユニット6に接続する。この評価ユニット6は,埋設された物体5の表示手段としてイメージディスプレイよりなる出力手段8と,ノブ形状の入力手段20とを具える。
【0035】
上述した構成の探査装置1による探査方法においては,図6に示すように,多数回に亘って反復される第一工程Iにおいて探査装置1により,被探査面Fに沿って走査方向に移動可能な探査ヘッド9の位置変化Δxを生じさせると共に,その位置xに関連する個別的測定信号A(x)を少なくとも1個のアンテナ12aにより受信する。第二工程IIにおいては,演算手段7により個別的測定信号A(x),B(x)から,当該個別的測定信号A(x),B(x)中の,埋設されている可能性のある物体5を同定可能に含む個別的測定データA[A(xA), xA],B[B(xB), xB]を算出する。その際,第二工程IIにおいて,自動的なバックグラウンド認識やユーザによる設定に応じて,演算手段により慣用的な信号処理方法を,次の順番で実行することが可能である:前処理,バックグラウンド減算,減衰損失補償,対数化,横方向フォーカスおよび深度方向フォーカス。引き続き,埋設物体を検出するために演算手段により多数の個別的測定データA[A(xA), xA],B[B(xB), xB]およびそれらの位置xA, xBに基づいて位置xおよび深度zにおける物体データA(x, y), B(x, y)を算出し,その物体データはブール代数的な三次元データまたは三次元的な確率分布で表すことができ,後者の分布には物体の存在確率が非鋭敏的(ファジー)に含まれる。第三工程IIIでは,これら2つの物体データA(x, y), B(x, y)から演算手段により相関測定データA∩BまたはA*Bを算出し,その際に三次元データから相関測定データA∩Bを算出するか,または両個別的三次元確率分布の積により重畳された相関測定データA*Bを算出する。この工程に引き続く第五工程Vにおいて,演算手段により相関測定データA∩BまたはA*Bを位置xおよび深度zと共に選択されたイメージとし,これを評価ユニットにおけるグラフィック表示手段から出力する。
【0036】
図7は,図6の一部に変更を施した探査方法の変形例を示す。この場合,第二工程IIにおける深度フォーカスで終了する信号処理プロセスは,第三工程IIIで各位置につき両個別的測定データA[A(xA), xA],B[B(xB), xB]の離散的な二次元A‐スキャン相互相関を共通の相関データとして使用し,物体検出に先立って物体データO(x, y)を算出し,これに基づいて第五工程Vにおいて位置xおよび深度zと共にデータイメージを算出し,評価ユニットにおけるグラフィック表示手段から出力する。
【0037】
図8は離散型二次元相互相関法における相関マトリクスC(i,j)として相関データを得る方法を示す。ここにMaおよびNaはマトリクスAの寸法,MbおよびNbはマトリクスBの寸法を表わし,i,j,m,nは変数である。
【0038】
図1に示す探査方法によれば,演算手段により第三工程IIIに引き続く第四工程IVで物体の位置を検出したか否かの決定を行う。その際,離散型の局所的相関ANDおよび付加的な測定データ,すなわち第一工程Iにおいて誘導型センサで構成された多数のセンサ13a,…13nにより付加的測定信号として受信され,第二工程IIにおいて加工された付加的な測定データと共に信号処理され,復調により電源周波数に重畳された形態で検出され,確率チェックにおいて重み付けされ,複合測定データとして合成される。この複合測定データが所定の閾値を超えると,その位置で埋設物体5の存在が推定され,穂y時手段においてグラフィック表示される。全ての測定データおよび付加的データは自動的に,またはユーザの設定により,入力手段20により制御可能なバックグラウンド認識手段21に送られ,信号処理の個別的ステップに応じて個別的な測定信号を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る探査装置のブロック線図である。
【図2】(a)は探査ヘッドの正面図,(b)は側面図である。
【図3】(a)は探査ヘッドの変形例の正面図,(b)は側面図である。
【図4】収納状態の探査ヘッドの斜視図である。
【図5】展開状態の探査ヘッドの斜視図である。
【図6】本発明に係る探査方法を示すフローチャートである。
【図7】探査方法の変形例を示すフローチャートである。
【図8】離散型二次元相互相関法の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 探査装置
5 埋設された長尺物体
6 評価ユニット
7 演算手段
8 表示手段
9 探査ヘッド
10 探査経路センサ
11a,11b 送受信ユニット
12a,12b アンテナ
13a,13b 別種センサ
16 フェライト部材
17a,17b 脚部
19 ホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被探査領域に埋設された長尺物体(5)を探査するための探査装置(1)であって,演算手段(7)および表示手段(8)を有する評価ユニット(6)を具え,さらに,被探査面(F)に沿って移動可能であり,かつ,探査経路センサ(10)と,アンテナ(12a)が設けられた送受信ユニット(11a)とを有する手持ち式の探査ヘッド(9)を具える探査装置において,前記アンテナが,被探査面(F)内で相互に離間して配置された少なくとも2個のアンテナ(12a,12b)を含み,これらアンテナ(12a,12b)の被探査面(F)内における間隔が5cm〜50cmの範囲内に設定されていることを特徴とする探査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の探査装置であって,前記送受信ユニット(11a)がレーダ型送受信ユニットで構成され,該送受信ユニットが,任意的に,500MHzおよび10GHzの間の周波数領域内で,0.5〜1.0の範囲内の相対的帯域幅を有することを特徴とする探査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の探査装置であって,前記少なくとも2個のアンテナ(12a,12b)がそれぞれモノスタティック型の広帯域ダイポールアンテナで構成され,該ダイポールアンテナが,任意的に,同一方向に向けられた極性方向(P)を有することを特徴とする探査装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の探査装置であって,前記探査ヘッド(9)が,少なくとも1つの別種センサ(13a)を更に含むことを特徴とする探査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の探査装置であって,前記別種センサ(13a)が,2個のアンテナ(12a,12b)の周りで対称的に延在することを特徴とする探査装置。
【請求項6】
請求項4に記載の探査装置であって,2個の前記別種センサ(13a,13b)が,それぞれ1個のアンテナ(12a,12b)の周りで対称的に延在することを特徴とする探査装置。
【請求項7】
請求項4〜6の何れか一項に記載の探査装置であって,前記別種センサ(13a)が誘導型センサで構成されていることを特徴とする探査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の探査装置であって,前記誘導型センサが,走査方向および該走査方向と直交する方向にそれぞれ異なるパスを有するクロス型フェライト部材(16)で構成されていることを特徴とする探査装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の探査装置であって,少なくとも2個の前記送受信ユニット(11a,11b)を具え,これら送受信ユニットがそれぞれ各別のアンテナ(12a,12b)に関連して配置されていることを特徴とする探査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の探査装置であって,前記探査ヘッド(9)が180°の角度に亘って旋回可能な脚部(17a,17b)で構成され,前記2個の送受信ユニット(11a,11b)が,関連するアンテナ(12a,12b)と共に,それぞれ異なる脚部(17a,17b)に配置され,任意的に,両アンテナ(12a,12b)が,前記脚部(17a,17b)に沿って変位し得るよう固定可能とされていることを特徴とする探査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の探査装置であって,前記各脚部(17a,17b)に被探査面(F)に沿って移動可能な少なくとも1個のホイール(19)が設けられ,任意的に,旋回軸線(S)に沿って互いにオフセット配置された合計3個のホイール(19)が設けられていることを特徴とする探査装置。
【請求項12】
請求項11に記載の探査装置であって,前記各脚部(17a,17b)につき,少なくとも1個のホイール(19)が前記探査経路センサ(10)と結合していることを特徴とする探査装置。
【請求項13】
被探査領域に埋設された長尺物体(5)を探査するための探査方法であって,多数回に亘って反復される第一工程(I)において探査装置(1)により,被探査面(F)に沿って走査方向に移動可能な探査ヘッド(9)の位置変化(Δx)を生じさせると共に,その位置(x)に関連する個別的測定信号(A(x))を少なくとも1個のアンテナ(12a)により受信し,第二工程(II)において演算手段(7)により個別的測定信号(A(x),B(x))から,当該個別的測定信号(A(x),B(x))中の,埋設されている可能性のある物体(5)を同定可能に含む個別的測定データ(A[A(xA), xA])を算出する探査方法において,
第一工程(I)において,少なくとも2個のアンテナ(12a,12b)により個別的測定信号(A(x),B(x))を受信し,
第二工程(II)において,個別的測定信号(A(x),B(x))から個別的測定データ(A[A(xA), xA, B[B(xB), xB])を算出し,
第三工程(III)において,演算手段(7)により少なくとも2つの個別的測定データ(A[A(xA), xA], B[B(xB), xB])から相関測定データを算出することを特徴とする探査方法。
【請求項14】
請求項13に記載の探査方法であって,第二工程(II)において,個別的測定信号(A(x))を少なくとも部分的に個別的測定データ(A[A(xA), xA)として使用することを特徴とする探査方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の探査方法であって,第二工程(II)において,演算手段(7)による演算処理の少なくとも一部を慣用的な信号処理方法をもって実行することを特徴とする探査方法。
【請求項16】
請求項13〜15の何れか一項に記載の探査方法であって,第三工程(III)において,演算手段(7)による個別的測定データ(A[A(xA), xA], B[B(xB), xB])からの相関測定データの算出を,次の計算方法の少なくとも1つをもって実行することを特徴とする探査方法。
a) 少なくとも2つの個別的測定データから,AND結合または乗算により相関測定データを算出する計算方法。
b) 少なくとも2つの個別的測定データから,相互相関または相互分散により相関測定データを算出する計算方法。
c) 少なくとも2つの個別的測定データにおける,空間的に離散して検出された物体の理論的交差値を算出する計算方法。
d) 少なくとも2つの個別的測定データにおける,空間的に非鋭敏(ファジー)に検出された物体の重畳された確率値を算出する計算方法。
【請求項17】
請求項13〜16の何れか一項に記載の探査方法であって,第四工程(IV)において,演算手段(7)により相関測定データと,付加的な測定データとを組み合わせて複合測定データを取得し,該付加的な測定データは,第一工程(I)において更なるセンサ(13a)により付加的な測定データとして受信し,かつ,第二工程(II)において付加的な測定データとして加工されるものであることを特徴とする探査方法。
【請求項18】
請求項17に記載の探査方法であって,付加的な測定信号を誘導型センサにより検出する場合に,演算手段(7)により該付加的な測定信号を電源回路の電源周波数として検出し,かつ,付加的な測定データに加工することを特徴とする探査方法。
【請求項19】
請求項13〜18の何れか一項に記載の探査方法であって,更なる工程において,演算手段(7)により多数の相関測定データまたは複合測定データをそれらの位置(xA, xB)と共に相互に減算し,任意的に,所定の物体パラメータと比較し,かつ,位置(x)および深度(z)と関連させた物体データ(O(x, y))に加工することを特徴とする探査方法。
【請求項20】
請求項13〜19の何れか一項に記載の探査方法であって,更なる第五工程(V)において,演算手段(7)により物体データ(O(x, y))を位置(x)および/または深度(z)と共にデータ画像として算出し,該データ画像を評価手段(6)における出力手段(8)から任意的にグラフィックイメージとして出力することを特徴とする探査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−308593(P2006−308593A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122427(P2006−122427)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】