説明

埋設型標識灯の灯体収容筐

【課題】路面に対する灯体の設置高さ(取付深さ)のみならず、投光方向性(光軸)と水平度もすばやく精密に調整できる埋設型標識灯の灯体収容筐を提供する。
【解決手段】埋設用凹所(P)内の据え付け基台(A)へ上方から取り付け固定される椀受け円錐座盤(B)と、その円錐座盤(B)へ上方から取り付け固定される灯体用水平度調整椀(C)と、更にその調整椀(C)へ上方から昇降自在に螺合締結される灯体用設置高さ調整筒(D)とを備え、上記調整椀(C)の凸曲下面(20)をその椀受け円錐座盤(B)の凹曲座面(8)に沿って傾動操作することにより、上記設置高さ調整筒(D)の開放上面ヘ施蓋状態に取り付け固定される灯体(E)の水平度を正しく調整できるように定めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空港の滑走路に対して離・着陸したり、同じく空港の誘導路を地上走行したりする航空機や、一般道路を走行する自動車などの誘導用として、その路面へ埋設される標識灯の灯体収容筐に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の路面埋設型標識灯を形作る灯体収容筐については、特公平2−26010号とこれを改良した特開2003−336230号が提案されており、その何れも灯体の取付深さ(路面に対する灯体の設置高さ)を昇降調整できるようになっている。
【特許文献1】特公平2−26010号公報
【特許文献2】特開2003−336230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特開2003−336230号発明に係る標識灯用取付深さ調整装置では、灯体(F)が取り付けられた調整リング(D)と、路面に埋設された基台(C)との離間距離(灯体の取付深さ)を、その上下相互間に介在する第1〜3部材(1)(2)(3)の螺合進退操作によって、昇降調整するように構成されており、次の諸問題がある。
【0004】
即ち、円筒状第3部材(3)の中間部内周面には雌ネジが無く、その下部内周面と上部内周面だけに各々刻設された部分的な雌ネジ(3a)(3b)と、扁平なリング状第1、2部材(1)(2)の外周面へ各々対応的に刻設された雄ネジ(1b)(2b)とを、螺合締結しているに過ぎないため、灯体取付深さの調整代が未だ少なく、実際の路面に適合できない事態が生じやすい。
【0005】
そうすると、設計値から予測製作した標識灯用取付深さ調整装置を使えず、これを施工現場合わせとして特別に製作し直す必要があり、そのコストアップと納期の遅延を招来する結果となる。
【0006】
又、上記第1〜3部材(1)(2)(3)から成るネジ締結体のほかに、特別の調整リング(D)とその調整リング(D)を第2部材(2)へ取り付ける複数の固定ボルト(5)並びにアダプター(E)も準備する必要があって、未だ部品点数がいたづらに多く、その組立作業上非常に煩らわしい。
【0007】
更に、円筒状第3部材(3)とその上下一対のリング状第1、2部材(1)(2)とは、部分的に螺合締結された嵌合状態をなすにとどまる構成上、灯体(F)の上面を繰り返し通過・走行する航空機や自動車などの輪荷重に対抗し難く、その耐久強度に劣る問題もある。
【0008】
それにもまして、上記公知発明の構成では灯体(F)の取付深さだけを昇降調整できるに過ぎず、その路面の多様な状況変化に応じた灯体(F)の水平度や、基台(C)に対する灯体(F)の中心度を調整することが不可能である。
【0009】
例えば、基台(C)がその路面の埋設用凹所内へ、万一傾斜姿勢に据え付け固定された場合、その後灯体(F)を水平の設置状態に矯正することができず、又基台(C)との位置関係上、灯体(F)の中心が万一水平方向へ横ズレ偏倚していたとしても、その後にこれを矯正することができないのである。
【0010】
灯体(F)の投光方向性(光軸)を調整することに関しては、特開2003−336230号公報の段落〔0024〕に、「第2部材の調整リング取付座に取り付ける調整リングは、標識灯の水平方向の取付角度を調整可能にするように構成することができる。また、要すれば、加えて鉛直方向の取付角度を調整可能にするか、鉛直方向の取付角度を調整する別の部材を調整リングに付加することが許容される。」と記載されているが、その具体的な構成の図解は無く、全く不明である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこのような課題の抜本的な解決を目的としており、その目的を達成するための構成上、請求項1では埋設用凹所内の据え付け基台へ上方から取り付け固定される椀受け円錐座盤と、その円錐座盤へ上方から取り付け固定される灯体用水平度調整椀と、更にその調整椀へ上方から昇降自在に螺合締結される灯体用設置高さ調整筒とを備え、
【0012】
上記調整椀の凸曲下面をその椀受け円錐座盤の凹曲座面に沿って傾動操作することにより、上記設置高さ調整筒の開放上面ヘ施蓋状態に取り付け固定される灯体の水平度を正しく調整できるように定めたことを特徴とする。
【0013】
又、請求項1に従属する請求項2では、椀受け円錐座盤における凹曲座面の中心部から灯体への電気配線用中空芯軸を連続一体に垂立させると共に、
【0014】
その中空芯軸の周辺部へ複数の固定ボルト受け入れ用ネジ孔を全体的な放射対称分布型として、且つ上記凹曲座面と直交する一定角度の傾斜状態に穿設する一方、
【0015】
水平度調整椀における凸曲下面の中心部に上記中空芯軸の逃し入れ口と、その周辺部に上記ネジ孔と対応位置する複数の固定ボルト逃し入れ口とを、各々所要量の水平度調整代が確保される口径に切り抜いて、
【0016】
上記調整椀を上方から中空芯軸へ螺合締結される大きなセンター固定ナットと、同じく上方から座金を介してネジ孔へ螺入締結される複数の固定ボルトにより、その椀受け円錐座盤へ重畳的に取り付け固定するように定めたことを特徴とする。
【0017】
同じく請求項1に従属する請求項3では、基台のフラットな上面ヘ取り付け固定される椀受け円錐座盤を、その基台に対して水平方向へ進退操作することにより、灯体の中心度を正しく調整できるように定めたことを特徴とする。
【0018】
上記請求項3に従属する請求項4では、基台を上向き開放する断面リップ溝型の円筒状に造形して、その上部のフラットなリップ面に複数の固定ボルト受け入れ用ネジ孔を、全体的な放射対称分布型として穿設する一方、
【0019】
椀受け円錐座盤における凹曲座面の中心部から灯体への電気配線用中空芯軸を連続一体に垂立させ、
【0020】
その中空芯軸の周辺部へ上記ネジ孔と対応位置する複数の灯体用芯出し調整口を平面視の長方形に切り抜いて、その開口下縁部から向かい合う一対づつの座金受け止め凹段面を各々内向きに張り出すと共に、
【0021】
その向かい合う座金受け止め凹段面へ各々上方から跨がる状態として嵌め込まれる相似な長方形の座金に、上記芯出し調整口と直交する方向に沿い延在する灯体用芯出し調整長孔を各々切り抜いて
【0022】
その座金の灯体用芯出し調整長孔から上記ネジ孔へ各々螺入締結される固定ボルトの複数により、上記椀受け円錐座盤を基台へ取り付け固定するように定めたことを特徴とする。
【0023】
更に、請求項1に従属する請求項5では、灯体用水平度調整椀における胴面のほぼ全体に雌ネジを刻設する一方、その雌ネジと螺合締結される雄ネジを、灯体用設置高さ調整筒における胴面のほぼ全体に刻設して
【0024】
上記調整筒を回動操作することにより、灯体の設置高さと投光方向性を調整できるように定めると共に、
【0025】
その調整状態を上記調整筒の胴面から調整椀の胴面へねじ込み押圧する固定ビスによってロックすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の構成によれば、埋設型標識灯の灯体収容筐が椀受け円錐座盤と灯体用水平度調整椀並びに灯体用設置高さ調整筒とから組み立てられており、その調整椀の凸曲下面を椀受け円錐座盤の対応的な凹曲座面に沿って、360度のあらゆる方向へ自由自在に傾動させる如く操作することにより、路面の状況が標識灯毎の多様に変化していても、その灯体の水平度を常に正しく調整できるのであり、冒頭に述べた従来技術からは到底得られない効果が達成される。
【0027】
しかも、上記水平度調整椀の凸曲下面はその椀受け円錐座盤の凹曲座面によって、言わば調芯状態に受け持たれる結果、高い面圧のもとで強固に組み立てることができ、航空機や自動車などの通過・走行に伴なう振動やショックを受けるも、水平方向へ横ズレ変位するおそれがない。
【0028】
又、上記水平度調整椀に対しては灯体用設置高さ調整筒が螺合締結されているため、その調整筒を上方から回動操作することにより、これに受け持ち固定された灯体の昇降調整と、併せて灯体の360度に及ぶ広範囲な投光方向性(光軸)の調整も行なえるのであり、路面の多様な状況に対する臨機応変性に優れる。
【0029】
特に、請求項2の構成を採用するならば、その灯体の水平度が調整された状態を、大きなセンター固定ナットの高い締付トルクと、椀受け円錐座盤の凹曲座面と直交する傾斜状態にある複数の固定ボルトによって、ますます強く固定維持することができ、耐久性に富む安定な組立状態を得られる効果がある。
【0030】
更に、請求項3の構成を採用するならば、上記灯体における水平度と設置高さ(取付深さ)並びに投光方向性(光軸)の調整を行なえるほか、基台に対して椀受け円錐座盤を水平方向へ進退操作することにより、その灯体の中心度も正確に調整できる効果がある。
【0031】
その場合に、請求項4の構成を採用するならば、椀受け円錐座盤の周辺部に切り抜かれた長方形な灯体用芯出し調整口と、その座金受け止め凹段面へ嵌め込み支持された座金の灯体用芯出し調整長孔とが、互いに直交する方向へ延在しているため、先に埋設用凹所内へ据え付け固定された基台に対して、上記円錐座盤を前後方向へ左右方向へ進退操作することができ、灯体の中心度をすばやく精密に調整し得るのである。
【0032】
請求項5の構成を採用するならば、水平度調整椀と設置高さ調整筒とが、その胴面のほぼ全体に刻設された雌ネジと雄ネジとの螺合締結状態にあるため、その灯体の設置高さと投光方向性(光軸)とを広範囲に調整できるほか、航空機や自動車などの輪荷重に対抗する優れた耐久強度も得られる効果がある。
【0033】
又、設置高さ調整筒が水平度調整椀への内嵌状態に螺合締結している関係上、その外周面を全体的に均斉化でき、これらの周辺部をエポキシ樹脂系接着剤などのシーラントにより硬化したとしても、上記調整筒を支障なく円滑に回動操作し得るのであり、保守・点検や交換作業にも役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、図1〜6はその本発明の基本実施形態に係る埋設型標識灯の全体組立状態を示しており、これは図例のような空港の滑走路中心線灯や誘導路中心線灯などとして適用実施される場合、その多数が路面(GL)へ約15〜30mの間隔ピッチを保って、図26のように埋設使用され、定電流交流電源に対して直列接続されることになる。
【0035】
本発明の埋設型標識灯は、路面(GL)の埋設用凹所(P)内へ据え付け固定される基台(A)と、その基台(A)の上面に取り付けられる椀受け円錐座盤(B)と、その円錐座盤(B)へ上方から搭載される灯体用水平度調整椀(C)と、その調整椀(C)へ上方から昇降自在に螺合締結される灯体用設置高さ調整筒(D)と、その高さ調整筒(D)の開放上面へ施蓋状態に定着される灯体(E)とを備えており、茲に椀受け円錐座盤(B)と水平度調整椀(C)並びに高さ調整筒(D)とから、灯体(E)の収容筐を形作っている。
【0036】
上記主要構成部材のうち、先ず基台(A)はアルミ合金やその他の発錆しない金属製品として、図2のような上向き開放する断面リップ溝型の円筒状に造形されており、その上部のフラットなリップ面(1)には複数(図例では合計4個)の第1固定ボルト受け入れ用ネジ孔(2)が、全体的な放射対称分布型に穿設されているほか、同じく基台(A)の胴面(3)には複数(図例では合計3個)の電線管接続口(4)が開口分布されている。
【0037】
(5)はその接続口(4)へ取り付けられた電線管であり、これからの引き込み電線(6)が図26に示唆するレセプタクル(7)などを介して、灯体(E)と接続配線され、その灯体(E)から航空機のパイロットに対する標識光を投射するようになっている。
【0038】
椀受け円錐座盤(B)もアルミ合金などの発錆しない金属製品として、基台(A)とほぼ同じ直径(例えば約216mm)の円盤型をなしているが、その上面は図7〜11のような水平度調整椀(C)の凸曲下面を受け持つ凹曲座面(8)として造形されている。(9)は同じく椀受け円錐座盤(B)の中心部から連続一体に垂立する電気配線用の中空芯軸であり、その外周面には後述のセンター固定ナットと螺合する雄ネジ(10)が刻設されている。
【0039】
又、(11)はその中空芯軸(9)の周辺部へ全体的な放射対称分布型に切り抜かれた複数(図例では合計4個)の灯体用芯出し調整口であり、図8、9のような平面視の長方形(例えば約48mm×約63mm)を呈するが、その開口下縁部から向かい合う一対のフラットな座金受け止め凹段面(12)が内向き水平に張り出されることによって、底面視の狭小な正方形に開口している。
【0040】
(13)は上記角形芯出し調整口(11)の向かい合う座金受け止め凹段面(12)へ、各々上方から跨がる水平設置状態に嵌め込まれた相似な長方形の第1固定ボルト用座金であり、これらは図12の矢印(X)(Y)で示す如く、その一対の座金受け止め凹段面(12)に沿って上記中空芯軸(9)からの放射方向又は求心方向へ進退操作できるようになっている。しかも、その進退操作方向との直交方向に沿って延在する楕円形の灯体用芯出し調整長孔(14)が、上記座金(13)に各々切り抜かれているほか、その座金(13)の下面からは廻り止め用キー凸子(15)が各々突設されてもいる。
【0041】
そのため、上記第1固定ボルト用座金(13)をその座金受け止め凹段面(12)に沿って、中空芯軸(9)からの放射方向又は求心方向へ進退操作すると共に、座金(13)の芯出し調整長孔(14)から上記基台(A)の第1固定ボルト受け入れ用ネジ孔(2)へ、第1固定ボルト(六角穴付きボルト)(16)を螺入締結することにより、椀受け円錐座盤(B)を先に埋設用凹所(P)内へ据え付け固定された基台(A)に対して、その後灯体(E)の芯出し調整状態に正しく取り付け一体化することができる。
【0042】
つまり、基台(A)が埋設用凹所(P)内へ灯体(E)との位置関係上、万一図17のような水平方向へ一定量(W)だけ横ズレ偏心した状態に据え付け固定されたとしても、その後椀受け円錐座盤(B)を基台(A)に対し、その芯出し調整口(11)と座金(13)の芯出し調整長孔(14)に沿って、前後方向(Y)と左右方向(X)へ進退操作することにより、灯体(E)の中心と合致させるべく矯正し得るようになっているのである。
【0043】
尚、このような趣旨を達成できる限りでは、図示省略するが、第1固定ボルト(16)に代るスタッドボルトを、上記基台(A)のリップ面(1)から予じめ一体的に垂立させて、そのスタッドボルトへ椀受け円錐座盤(B)の上方から固定ナットを締結一体化してもさしつかえない。
【0044】
又、上記椀受け円錐座盤(B)における角形芯出し調整口(11)の隣り合う相互間にはやはり全体的な放射対称分布型として、複数の第2固定ボルト受け入れ用ネジ孔(17)がその凹曲座面(8)と直交する一定角度(α)(図例では約15度)の傾斜状態に穿設されており、ここへ上方から螺入締結する後述の第2固定ボルトによって、水平度調整椀(C)をその椀受け円錐座盤(B)の凹曲座面(8)へ取り付け一体化できるようになっている。
【0045】
次に、水平度調整椀(C)はこれもアルミ合金などの発錆しない金属製品として、上記基台(A)や椀受け円錐座盤(B)とほぼ同じ直径並びに一定深さ(例えば約100mm)を有する図18〜20のような椀型に造形されており、その胴面(18)のほぼ全体には雌ネジ(19)が刻設されていると共に、同じく下面が上記椀受け円錐座盤(B)の凹曲座面(8)と対応する凸曲面(20)をなしている。
【0046】
(21)はその水平度調整椀(C)における凸曲下面(20)の中心部に切り抜かれた中空芯軸逃し入れ口であり、上記椀受け円錐座盤(B)から垂立する中空芯軸(9)の直径(例えば約70mm)よりもかなり大きな口径(例えば約93mm)の円形を呈している。
【0047】
又、水平度調整椀(C)における中空芯軸逃し入れ口(21)の周辺部には、上記椀受け円錐座盤(B)の傾斜した第2固定ボルト受け入れ用ネジ孔(17)と対応位置する比較的小さな円形の第2固定ボルト逃し入れ口(22)と、同じく円錐座盤(B)の角形芯出し調整口(11)と対応位置する比較的大きな第1固定ボルト用回動操作工具逃し入れ口(23)とが、その複数づつ(図例では合計4個づつ)の全体的な放射対称分布型に切り抜かれている。
【0048】
茲に、小さな第2固定ボルト逃し入れ口(22)の口径は一例として約29mm、大きな回動操作工具逃し入れ口(23)の口径は一例として約36mmであり、その後者は埋設型標識灯における保守・点検や交換などの作業に供される。
【0049】
(24)は上記第2固定ボルト逃し入れ口(22)に各々跨がる長方形の第2固定ボルト用座金であり、その下面が図21、22のような凸曲面として、上記椀受け円錐座盤(B)の凹曲座面(8)と密着し得ることは言うまでもない。
【0050】
そして、このような座金(24)の上方から水平度調整椀(C)の第2固定ボルト逃し入れ口(22)を通じて、上記椀受け円錐座盤(B)の傾斜した第2固定ボルト受け入れ用ネジ孔(17)へ第2固定ボルト(六角穴付きボルト)(25)を螺入締結することにより、その調整椀(C)を椀受け円錐座盤(B)へ取り付け一体化できるようになっている。
【0051】
(N)は上記椀受け円錐座盤(B)の中空芯軸(9)へ上方から螺入締結される大きなセンター固定ナットであって、図2〜4に示す如く、水平度調整椀(C)の中空芯軸逃し入れ口(21)よりも大きな直径(例えば約110mm)の円形をなし、その調整椀(C)を高い締付トルクのもとで押え付け固定できるようになっている。(26)はそのセンター固定ナット(N)の外周面に付与された向かい合う一対の回動操作工具用係止切欠である。
【0052】
その場合、水平度調整椀(C)の凸曲下面(20)は椀受け円錐座盤(B)の凹曲座面(8)に受け持たれており、しかもその調整椀(C)の中空芯軸逃し入れ口(21)が椀受け円錐座盤(B)の中空芯軸(9)よりも径大として、又同じく調整椀(C)の第2固定ボルト逃し入れ口(22)が椀受け円錐座盤(B)の第2固定ボルト受け入れ用ネジ孔(17)よりも径大として、各々所要量の水平度調整代を確保した状態に切り抜かれているため、その調整椀(C)を傾動操作することにより椀受け円錐座盤(B)へ、灯体(E)の水平度が保たれた調整状態に正しく取り付け固定できることとなる。
【0053】
つまり、上記基台(A)が埋設用凹所(P)内の底部へ、万一図23のような一定角度(β)の傾斜姿勢に据え付け固定され、その上面に椀受け円錐座盤(B)が取り付け固定されたとしても、その後円錐座盤(B)の凹曲座面(8)に沿って水平度調整椀(C)を360度のあらゆる傾斜方向へ矯正することにより、灯体(E)の水平度を正しく調整し得るのであり、その調整状態を第2固定ボルト(25)とセンター固定ナット(N)によって、重畳的にロックすれば良い。
【0054】
更に、設置高さ調整筒(D)はこれもアルミ合金などの発錆しない金属製品として、上記水平度調整椀(C)の胴面(18)へ内嵌し得る径小(例えば約200mmの直径)な胴面(27)と、その上端部から連続一体に張り出す径大な拡開フランジ(28)とを備えた図24のような所謂段付き円筒型に造形されており、例えば約115mmの一定深さを有する。その拡開フランジ(28)の直径は上記水平度調整椀(C)のそれとほぼ同じである。
【0055】
(29)はその拡開フランジ(28)の開口縁部に言わば切り欠かれた形態のフラットな灯体受け止め凹段面であり、ここには位置決めピン受け入れ用盲孔(30)と第3固定ボルト受け入れ用ネジ孔(31)との向かい合う一対づつが穿設されている。
【0056】
そして、上方から位置決めピン受け入れ用盲孔(30)へ位置決めピン(32)を差し込み、引き続き第3固定ボルト受け入れ用ネジ孔(31)へ第3固定ボルト(33)を螺入締結することにより、灯体(E)をその設置高さ調整筒(D)へ施蓋状態に取り付け固定できるようになっている。
【0057】
他方、設置高さ調整筒(D)における胴面(27)のほぼ全体には雄ネジ(34)が刻設されており、その雄ネジ(34)が上記水平度調整椀(C)の雌ネジ(19)と螺合締結されている。そのため、その高さ調整筒(D)を回動操作すれば、これが水平度調整椀(C)に対して上下方向(Z)へ進退(昇降)作用し、灯体(E)の設置高さを調整することができると同時に、その灯体(E)からの投光方向性(光軸)も360度の自由自在に調整し得るのである。
【0058】
何れにしても、その灯体(E)の調整状態は高さ調整筒(D)の胴面(27)から水平度調整椀(C)の胴面(18)へ、廻り止めキーとなる少なくとも1本の固定ビス(六角穴付き止めネジ)(35)をねじ込み押圧することにより、確固に安定良くロックすることができる。(36)はその固定ビス(35)の受け入れ用ネジ孔である。
【0059】
但し、このような趣旨を達成できるならば、図示省略するが、高さ調整筒(D)の胴面(27)を水平度調整椀(C)の胴面(18)へ逆に外嵌させて、その雌ネジ(19)と雄ネジ(34)との螺合締結状態に保っても良く、又埋設用凹所(P)の深さ次第では上記水平度調整椀(C)と高さ調整筒(D)における何れか一方又は双方を、その深さの異なるものと交換して組合せ使用することができる。
【0060】
更に、上記第3固定ボルト(33)に代るスタッドボルトを、高さ調整筒(D)の灯体受け止め凹段面(29)から予じめ一体的に垂立させて、そのスタッドボルトへ灯体(E)の上方から固定ナットを締結一体化しても良く、その場合位置決めピン(32)とその受け入れ用盲孔(30)の設置を省略してもさしつかえない。
【0061】
図25は図2と対応する本発明の変形実施形態を示しており、これから明白なように、上記椀受け円錐座盤(B)から連続一体に垂立する中空芯軸(9)と、その雄ネジ(10)に螺合締結するセンター固定ナット(N)とを省略することにより、灯体(E)の収容筐を上記基本実施形態よりも一層深く設定しても良い。(37)は上記中空芯軸(9)の代りとして、椀受け円錐座盤(B)の中心部に形成された円形の電気配線口であり、水平度調整椀(C)の中心部と連通開口している。尚、変形実施形態におけるその他の構成は上記基本実施形態と実質的に同一であるため、その図25に図2との対応符号を記入するにとどめる。
【0062】
先に一言した灯体(E)は上下一対の2つ割り構造として、その水密状態の空洞に光源や反射鏡、ランプソケット、プリズムなどの光学ユニットを内蔵しており、その上面に設けられた一対の投光窓(38)と光導出溝(39)を通じて、標識光を投射するようになっているが、それ自身公知であるため、その詳細な図解と説明を省略する。
【0063】
本発明に係る埋設型標識灯の灯体収容筐は、上記したような椀受け円錐座盤(B)と灯体用水平度調整椀(C)並びに灯体用設置高さ調整筒(D)とから成るため、これを所謂スタッキング方式として、次のとおり順序良く簡便に組立使用することができる。
【0064】
即ち、その組立使用に当っては、予じめ施工現場の路面(GL)にボーリングされた埋設用凹所(P)内へ、先ず上記基台(A)を据え付け固定して、電線管(5)の接続配管を行ない、その基台(A)のリップ面(1)へ上方から椀受け円錐座盤(B)を、複数の第1固定ボルト(16)によって取り付ける。
【0065】
その際、椀受け円錐座盤(B)の角形芯出し調整口(11)と第1固定ボルト用座金(13)の芯出し調整長孔(14)により確保された調整代を活用して、その椀受け円錐座盤(B)を基台(A)との位置関係上、水平方向へ横ズレ偏心しない灯体(E)の正確な芯出し状態となるように、その中心度を調整した後、上記第1固定ボルト(16)を締め上げロックする。
【0066】
次いで、その固定維持された上記椀受け円錐座盤(B)へ、上方から灯体用水平度調整椀(C)を搭載させ、その円錐座盤(B)から垂立する中空芯軸(9)の雄ネジ(10)へ、センター固定ナット(N)を仮りに螺合締結することにより、上記水平度調整椀(C)をその椀受け円錐座盤(B)へ一旦抜け止め状態に保つ。
【0067】
そして、水平度調整椀(C)の中空芯軸逃し入れ口(21)と第2固定ボルト逃し入れ口(22)により確保された調整代を活用しつつ、その調整椀(C)を上記円錐座盤(B)の凹曲座面(8)に沿って傾動操作することにより、正確な水平度を保つ姿勢状態に調整した後、上記センター固定ナット(N)を締め上げロックする一方、複数の第2固定ボルト(25)も締め上げ操作して、上記水平度調整椀(C)をその椀受け円錐座盤(B)へ重畳的に固定一体化する。
【0068】
このような水平度調整椀(C)へ、引き続き上方から灯体用設置高さ調整筒(D)を螺合締結して、その回動操作により高さ調整筒(D)を昇降作用させ、路面(GL)に対する灯体(E)の設置高さ(取付深さ)を正しく調整すると同時に、その灯体(E)の投光方向性(光軸)も正確に調整した後、上記高さ調整筒(D)から先の水平度調整椀(C)へ固定ビス(35)をねじ込み押圧して、その高さ調整筒(D)を廻り止め状態にロックする。
【0069】
他方、灯体(E)を上記電線管(5)から基台(A)内への引き込み電線(6)と接続配線しておいた上、最後にその灯体(E)を上記高さ調整筒(D)の灯体受け止め凹段面(29)へ、上方から複数の第3固定ボルト(33)により取り付け一体化して、これを灯体収容筐へ内蔵設置するのであり、そうすれば図26のような路面(GL)に対する標識灯の正しい埋設施工状態を得られる。(40)は標識灯の周辺部を硬化させるため、その埋設用凹所(P)内へ充填されたエポキシ樹脂系接着剤やその他の適当なシーラントである。
【0070】
更に言えば、図27は上記図17と図23との状況を併有する最悪状況として、路面(GL)へ埋設された標識灯の正確な調整状態を例示しており、これから明白なように、その路面(GL)へボーリングされた埋設用凹所(P)の深さや口径、その内部へ先に据え付け固定される基台(A)の姿勢状態、その他の諸状況が常に一定とは限らず、標識灯毎の多様に変化したとしても、灯体(E)の取付深さ(路面に対する設置高さ)のみならず、その灯体(E)の中心度と水平度並びに投光方向性(光軸)をも、施工現場合わせでの臨機応変に正しく調整できるのであり、その意味から量産効果と施工性の向上に大きく寄与する。
【0071】
尚、図示の実施形態では灯体(E)の取付深さ(路面に対する設置高さ)と中心度、水平度並びに投光方向性(光軸)を悉く調整できるように構成されているが、上記椀受け円錐座盤(B)の灯体用芯出し調整口(11)と、灯体用芯出し調整長孔(14)が切り抜かれた座金(13)とを省略し、その円錐座盤(B)を基台(A)へ複数の第1固定ボルト(16)により、灯体(E)の正確な芯出し状態に取り付け固定して、その中心度の調整に限ってはこれを行なわないように構成してもさしつかえない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る埋設型標識灯の組立状態を示す平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1から灯体を取りはずした状態の平面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線に沿う部分拡大断面図である。
【図6】図2の6−6線に沿う部分拡大断面図である。
【図7】椀受け円錐座盤を抽出して示す正面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】図8の底面図である。
【図10】図8の10−10線断面図である。
【図11】図8の11−11線断面図である。
【図12】図8に第1固定ボルト用座金を嵌め込んだ状態の平面図である。
【図13】第1固定ボルト用座金を抽出して示す平面図である。
【図14】図13の正面図である。
【図15】図14の側面図である。
【図16】図13の底面図である。
【図17】基台に対する灯体の中心度調整状態を示す図2に対応する断面図である。
【図18】灯体用水平度調整椀を抽出して示す平面図である。
【図19】図18の19−19線断面図である。
【図20】図18の20−20線断面図である。
【図21】第2固定ボルト用座金を抽出して示す平面図である。
【図22】図21の22−22線断面図である。
【図23】基台に対する灯体の水平度調整状態を示す図2に対応する断面図である。
【図24】灯体用設置高さ調整筒を抽出して示す半欠截断面図である。
【図25】図2に対応する本発明の変形実施形態を示す断面図である。
【図26】図2の埋設施工状態を示す断面図である。
【図27】基台に対する灯体の中心度並びに水平度の調整状態を示す図2に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0073】
(1)・リップ面
(2)・第1固定ボルト受け入れ用ネジ孔
(3)・胴面
(4)・電線管接続口
(8)・凹曲座面
(9)・電気配線用中空芯軸
(10)・雄ネジ
(11)・灯体用芯出し調整口
(12)・座金受け止め凹段面
(13)・第1固定ボルト用座金
(14)・灯体用芯出し調整長孔
(15)・キー凸子
(16)・第1固定ボルト
(17)・第2固定ボルト受け入れ用ネジ孔
(18)・胴面
(19)・雌ネジ
(20)・凸曲下面
(21)・中空芯軸逃し入れ口
(22)・第2固定ボルト逃し入れ口
(23)・回動操作工具逃し入れ口
(24)・第2固定ボルト用座金
(25)・第2固定ボルト
(26)・係止切欠
(27)・胴面
(28)・拡開フランジ
(29)・灯体受け止め凹段面
(30)・位置決めピン用盲孔
(31)・第3固定ボルト受け入れ用ネジ孔
(32)・位置決めピン
(33)・第3固定ボルト
(34)・雄ネジ
(35)・廻り止め用固定ビス
(36)・固定ビス受け入れ用ネジ孔
(37)・電気配線口
(38)・投光窓
(39)・光導出溝
(40)・シーラント
(A)・基台
(B)・椀受け円錐座盤
(C)・灯体用水平度調整椀
(D)・灯体用設置高さ調整筒
(E)・灯体
(N)・センター固定ナット
(P)・埋設用凹所
(X)・左右方向
(Y)・前後方向
(Z)・上下方向
(α)・傾斜角度
(β)・傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設用凹所(P)内の据え付け基台(A)へ上方から取り付け固定される椀受け円錐座盤(B)と、その円錐座盤(B)へ上方から取り付け固定される灯体用水平度調整椀(C)と、更にその調整椀(C)へ上方から昇降自在に螺合締結される灯体用設置高さ調整筒(D)とを備え、
上記調整椀(C)の凸曲下面(20)をその椀受け円錐座盤(B)の凹曲座面(8)に沿って傾動操作することにより、上記設置高さ調整筒(D)の開放上面ヘ施蓋状態に取り付け固定される灯体(E)の水平度を正しく調整できるように定めたことを特徴とする埋設型標識灯の灯体収容筐。
【請求項2】
椀受け円錐座盤(B)における凹曲座面(8)の中心部から灯体(E)への電気配線用中空芯軸(9)を連続一体に垂立させると共に、
その中空芯軸(9)の周辺部へ複数の固定ボルト受け入れ用ネジ孔(17)を全体的な放射対称分布型として、且つ上記凹曲座面(8)と直交する一定角度(α)の傾斜状態に穿設する一方、
水平度調整椀(C)における凸曲下面(20)の中心部に上記中空芯軸(9)の逃し入れ口(21)と、その周辺部に上記ネジ孔(17)と対応位置する複数の固定ボルト逃し入れ口(22)とを、各々所要量の水平度調整代が確保される口径に切り抜いて、
上記調整椀(C)を上方から中空芯軸(9)へ螺合締結される大きなセンター固定ナット(N)と、同じく上方から座金(24)を介してネジ孔(17)へ螺入締結される複数の固定ボルト(25)により、その椀受け円錐座盤(B)へ重畳的に取り付け固定するように定めたことを特徴とする請求項1記載の埋設型標識灯の灯体収容筐。
【請求項3】
基台(A)のフラットな上面ヘ取り付け固定される椀受け円錐座盤(B)を、その基台(A)に対して水平方向へ進退操作することにより、灯体(E)の中心度を正しく調整できるように定めたことを特徴とする請求項1記載の埋設型標識灯の灯体収容筐。
【請求項4】
基台(A)を上向き開放する断面リップ溝型の円筒状に造形して、その上部のフラットなリップ面(1)に複数の固定ボルト受け入れ用ネジ孔(2)を、全体的な放射対称分布型として穿設する一方、
椀受け円錐座盤(B)における凹曲座面(8)の中心部から灯体(E)への電気配線用中空芯軸(9)を連続一体に垂立させ、
その中空芯軸(9)の周辺部へ上記ネジ孔(2)と対応位置する複数の灯体用芯出し調整口(11)を平面視の長方形に切り抜いて、その開口下縁部から向かい合う一対づつの座金受け止め凹段面(12)を各々内向きに張り出すと共に、
その向かい合う座金受け止め凹段面(12)へ各々上方から跨がる状態として嵌め込まれる相似な長方形の座金(13)に、上記芯出し調整口(11)と直交する方向に沿い延在する灯体用芯出し調整長孔(14)を各々切り抜いて
その座金(13)の灯体用芯出し調整長孔(14)から上記ネジ孔(2)へ各々螺入締結される固定ボルト(16)の複数により、上記椀受け円錐座盤(B)を基台(A)へ取り付け固定するように定めたことを特徴とする請求項3記載の埋設型標識灯の灯体収容筐。
【請求項5】
灯体用水平度調整椀(C)における胴面(18)のほぼ全体に雌ネジ(19)を刻設する一方、その雌ネジ(19)と螺合締結される雄ネジ(34)を、灯体用設置高さ調整筒(D)における胴面(27)のほぼ全体に刻設して
上記調整筒(D)を回動操作することにより、灯体(E)の設置高さと投光方向性を調整できるように定めると共に、
その調整状態を上記調整筒(D)の胴面(27)から調整椀(C)の胴面(18)へねじ込み押圧する固定ビス(35)によってロックすることを特徴とする請求項1記載の埋設型標識灯の灯体収容筐。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−170001(P2007−170001A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367768(P2005−367768)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【特許番号】特許第3810787号(P3810787)
【特許公報発行日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(505471990)
【Fターム(参考)】