説明

埋設管の検査方法

【課題】埋設管路の相互に接続された各管体に対し衝撃弾性波試験を順次に行い、各試験における受振波の周波数スペクトルを解析・判定して劣化診断を行う場合、管内水量が在っても、その水量に見合った周波数スペクトルの補正によって統一基準で劣化診断を行い得るようにし、水抜き作業の省略による作業の容易化を可能にすることにある。
【解決手段】管内に水量が存在する状態の埋設管の所定の内面箇所にハンマーAで弾性波を入力し、その入力箇所から所定の間隔を隔てた管内面箇所で振動センサーBにより伝播弾性波を受振すると共に水位計5で管内水位を測定し、この受振波の周波数スペクトルの強度値を予め求めた管内水位に対する補正係数で補正してその受振波の基準水位に対する周波数スペクトルを求め、この周波数スペクトルを解析して埋設管の劣化診断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衝撃弾性波法により埋設管を検査して劣化診断を行う埋設管の検査方法に関す
るものである。
【背景技術】
【0002】
近来、下水管路や農水管路においては、埋設管の経年に伴う腐食摩耗や破損により陥没
や漏水等の事故が増加しつつある。このため適切な劣化診断とその診断結果に基づく適切
な修繕・更新が要請されている。
この下水管路や農水管路の劣化診断においては、一般に、修繕・改築工事の順番及び工
事方法を決定するために、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度の順位付けや定量
的な劣化レベルの進行度の把握が必要である。
従来では、目視やTVカメラを用いて外観調査を行い、必要に応じコア抜きにより得た
試料の物性を調査しているが、直視し得る劣化しか捉えることができず、管外周や肉厚内
の劣化が見逃されてしまい、劣化の程度を適切に定量的に把握することが困難である。ま
たは、定量的なデータを収集するには、コアを大量に抜く必要があり、健全管体の強度低
下が余儀なくされ、作業コストの過大化も避けられない。
【0003】
非破壊試験法として、超音波法、打音法、衝撃弾性波法が知られている。
しかしながら、超音波法では、入力波としての超音波が高周波であり、エネルギーも小
さいので、入力波をコンクリート中に伝播させ難く、コンクリート製品の検査には適さな
い。
打音法では、マイクロフォン等の非接触式の音響機器で信号を受信しているために、周
囲の雑音の影響を受け易い、打撃点の裏面側の影響を受け易い、定量的な解析・診断に個
人差が生じ易い等の不都合があり、診断精度に問題がある。
衝撃弾性波法は、被検査体に打撃等の機械的衝撃で弾性波を入力し、被検査体に接触さ
せた振動子が受振した波形の周波数スペクトルを求め、その周波数スペクトルの解析・判
定により劣化診断を行う方法であり、本出願人においては、衝撃弾性波法を利用した埋設
管の診断システムを既に提案している。(例えば、特許文献1、非特許文献1等)
【0004】
【特許文献1】特開2004−028976号公報
【非特許文献1】皆木,鎌田,野崎,舟橋、弾性波によるコンクリート下水管路の劣化診断手法に関する基礎研究,コンクリート工学年次論文集、2002,VOL24,No1、p1539−1544
【0005】
この診断システムの基本的構成を説明すれば、次の通りである。
図11の(イ)において、pは地中埋設管、aはインパルスハンマー等により弾性波を
入力させる入力点、bは伝播弾性波を振動センサで受振する受振点(出力点)を示してい
る。
弾性波の伝播は、質量m、バネ定数k、減衰係数c等で論じられ、バネ定数kは作用力
と変位との比で与えられるから、管の場合、バネ定数は管の曲げ剛性EIで評価される。
今、入力点での入力を図11の(ロ)に示すインパルスIとすると、このインパルスI
が管端での反射、クラック等の欠陥箇所での反射・透過を経て受振点に到来し、その到来
波xには、出力点と受振点との相対的位置関係、入力点や出力点と管端との相対的位置関
係、入力点や出力点と欠陥箇所との相対的位置関係、管体の曲げ剛性、減衰係数、管の比
重、経過時間等が関与し、出力点と受振点との相対的位置関係や入力点や出力点と管端と
の相対的位置関係に関する変数をL、入力点や出力点と欠陥箇所との相対的位置関係に関
する変数をL’、管体の曲げ剛性をEI、減衰係数をc、管の比重をm、経過時間tとする

【0006】
x=x(EI,c,m,L,L’,t)
で表すことができる。
而して、入力弾性波が図11の(ハ)に示すようにf(t)であるとすると、
出力Xは
【数1】

で表すことができ、その波形は、出力点と受振点との相対的位置関係や入力点や出力点
と管端との相対的位置関係L、入力点や出力点と欠陥箇所との相対的位置関係L’、管体
の曲げ剛性EI、減衰係数c、管の比重m等によって異なる。
【0007】
図12の(イ)はJISA 5303B型1種の呼び径250mm、長さ2mのコンク
リートヒューム管について入力点と受振点との距離を1950mmとし、入力弾性波を時
間長さ120μsのインパルスハンマーで発生させたときの受振弾性波の波形を示してい
る。図12の(ロ)はその波形を高速フーリエ変換して求めた周波数スペクトルを示し、
固有振動周波数で最大ピークを呈している。
この周波数スペクトルにおいて、健全品と欠陥品とでは次のような差異が生じる(勿論
、入力値、入力点と受振点との相対的位置関係、管内水量等の環境条件は同じとしての対
比である)。
(1)最大ピークのスペクトル強度値
劣化品は健全品に較べ最大ピークのスペクトル強度値(固有振動数におけるスペクトル
強度値)が小さくなる。この理由は、クラック等の欠陥が在ると、弾性波が伝播し難くな
るためと推定される。
(2)固有振動周波数
劣化品は健全品に較べ固有振動周波数が低周波域側にシフトする。この理由は、クラッ
ク等の欠陥が在ると、管体の曲げ剛性が低下するためと推定される。
(3)ピーク本数
特に欠陥が管軸方向クラックである場合、ある強度以上のピーク本数が少なくなる。そ
の理由は、管軸方向クラックにより分割された質量のことなるコンクリート部分が別個に
振動するものの連成振動における相互作用により減衰が顕著になるためと推定される。
これらの(1)〜(3)を判定点として例えば図13に示すフローに従って劣化診断を行
っている。
すなわち、検査しようとする埋設管の区間の各管体の受振波周波数スペクトルを得、各
周波数スペクトルから最大ピークのスペクトル強度値40%以上の値のスペクトル本数を
求め、ピーク本数が2本以下のものでは軸方向クラックと判定し、ピーク本数が3本以上
のもののうち、健全品の受振波周波数スペクトルと比較して最大ピークの強度値が顕著に
減少しているものは周方向クラックと判定し、減少の程度が小さいものは管厚み減少と判
定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記埋設管の劣化診断においては、各管体について同一測定条件、同一環境条件のもと
で受振波の周波数スペクトルを測定する必要がある。
そこで、健全管体と測定条件及び環境条件(管内水量0%)を同じとするために図14
に示すように、検査区間の両側をエアバッグ等Gで止水して検査区間の水を抜き、振動セ
ンサーB及びインパルスハンマーAをそれぞれ上下動可能なように台車上に搭載した検査
ロボット1‘を埋設管の検査区間内に導入し、振動センサーBとインパルスハンマーAと
の相対的位置関係やインパルスハンマーAの入力値を健全管体と同じにして次々と各管体
の受振波の周波数スペクトルを測定している。
管内水量は伝播弾性波を減衰し、管体質量の実質的な増加をもたらすから、前記した振
動波形の基本式〔数1〕から明らかなように、管内水量は受振波形に影響を及ぼし、その
周波数スペクトルに異同をもたらす。
而に、検査区間の水抜きは、管内水量0%を基準にして水量に対する環境条件を揃える
意義を有し、診断精度を高めるのに有効である。
しかしながら、埋設管路のマンホール間の径間は長く、使用中の下水管路や農水管路の
その径間の水量は多く、その水抜き作業は至難である。
【0009】
そこで、本発明者においては、実際の埋設管路において管内水量が前記受振波周波数ス
ペクトルに及ぼす影響を鋭意検討したところ、予想外にも、受振波周波数スペクトルの固
有振動周波数、ピーク本数が殆ど変わらず、スペクトルの強度(波高値)の変化にとどま
ることを知った。
この事実は、管内水量の上昇に比例して管内水中に出力弾性波の一部が放出されること
による受振弾性波の波高値減少が、減衰係数の変化や質量の変化による受振弾性波の変化
よりも強く現れる結果と推定される。
【0010】
本発明の目的は、埋設管路の相互に接続された各管体に対し衝撃弾性波試験を順次に行
い、各試験における受振波の周波数スペクトルを解析・判定して劣化診断を行う場合、管
内水量が在っても、その水量に見合った周波数スペクトルの補正によって統一基準で劣化
診断を行い得るようにし、水抜き作業の省略による作業の容易化を可能にすることにある

【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る埋設管の検査方法は、管内に水量が存在する状態の埋設管の所定の内面箇
所に弾性波を入力し、その入力箇所から所定の間隔を隔てた管内面箇所で伝播弾性波を受
振すると共にん管内水位を測定し、この受振波の周波数スペクトルの強度値を予め求めた
管内水位に対する補正係数で補正してその受振波の基準水位に対する周波数スペクトルを
求め、この周波数スペクトルを解析して埋設管の劣化診断を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
管内に水量が在っても、その状態で測定して求めた受振波の周波数スペクトルを一定水
量(例えば、水量0%)のときの周波数スペクトルに補正でき、埋設管の劣化診断を管内
水量の影響を受けることなく行うことができる。従って、埋設管路の検査区間からの水抜
きが不要になり、その検査区間の衝撃弾性波試験の準備作業の簡易化を図ることができる

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明において使用する衝撃弾性波試験法を説明するための図面である。
図1において、pは管体、Aは管体内面の所定箇所に弾性波を入力するための打撃具、
Bは入力点から所定の距離を隔てた管内面の所定箇所に接触させた振動センサー、Cは振
動センサーの受振波を記録し、高速フーリエ変換により周波数スペクトルを表示するコン
ピュータである。
前記打撃具Aには、常に同じ力・時間長さで打撃できるもの、例えばシュミットハンマ
ーやバネ、ピストン等により一定の力でハンマー、鋼球を打ち出すもの(例えばインパル
スハンマー)、一定の高さから鋼球を落下させるもの等を使用でき、特に入力情報の記録
データを計測し、解析時に反映できるものを使用することが好ましい。
前記振動センサーBには、振動加速度、振動速度、振動変位をピックアップする何れの
方式であってもよく、センサー素子には抵抗線ひずみゲージ、ピエゾ効果を利用した半導
体ゲージ、圧電磁器等の圧電型加速度ピックアップ等を使用でき、AE波検波用のAEセ
ンサーも使用できる。振動センサーの管内面への接触には粘着テープ、接着剤、手での押
え付けで行うこともできるが、後述のアームで振動センサーやハンマーをハンドリングす
る検査ロボットを使用することが好ましい。
振動センサーやハンマーにおいては、水や酸性水や塩基性水に接触されることがあるの
で、耐食金属製、例えばアルミ合金製、SUS製とすることが好ましい。
【0014】
管体の衝撃弾性波試験を行うには、図1において、打撃具Aにより弾性波を入力し、伝
播されて来る弾性波を振動センサーBで受振し、その受振波をコンピュータCに記録する
と共にその記録波形を高速フーリエ変換して受振波の周波数スペクトルを求める。
入力の持続時間は100〜150μsであるのに対し、受振時間は0〜800×10μ
sとされ、周波数スペクトルの周波数は0〜10kHz、好ましくは0.5〜8kHzと
される。(0.5kHz未満のカットは雑音排除のため)
埋設管路の検査区間における互いに接続された管体を順次に衝撃弾性波試験していくと
きの各管体に対する試験条件を同じにするために入力、入力位置と受振位置との相対的位
置関係は実質的に同じにされる。この場合、入力位置と受振位置との間隔が短いと、出力
位置からの伝播弾性波が管体欠陥箇所を反射して受振位置に至るまでの距離が長くなり、
その伝播中での減衰が大きくなって受振波形に管体の欠陥情報が反映され難くなるので、
入力位置と受振位置との間隔は管体長さの1/4以上とすることが望ましい。
また、入力の大きさ影響を排除するために、受振波/入力波とで求められる伝達関数を
受振情報として使用することが好ましい。
【0015】
本発明は、欠陥管体内に水量が在っても、その受振波の固有振動周波数、同受振波の周
波数スペクトルのピーク本数等の欠陥情報が実質的に殆ど変わず、受振波の波高値が実質
的に異なるだけであり、その差異の比は健全管体でのそれに実質的に等しく、従って、健
全管体について管内水量と受振波波高値との関係を求めておけば、水量が存在する欠陥管
体の受振波の周波数スペクトルのスペクト強度を補正して基準水量(通常0%水量)での
周波数スペクトルを求め得るという予想外の知見に基づいている。
【0016】
まず、この基礎的事項を検証する。
(A)健全管体における受振波の管内水量に対する補正式の算出
この補正式は次のようにして算出した。
健全管体試料に、JISA 5303のB型1種に基づく呼び径250mm、長さ2m
のコンクリート製ヒューム管を使用した。
弾性波の入力位置と受振位置とは管内面の頂上で1950mm離れた位置とし、検査装
置には、図2に示すように台車上に第1アーム11aと第2アーム11bとを有し、第1
アーム11aの先端にインパルスハンマーAを支持し、第2アーム11bの先端に振動セ
ンサーBを支持した検査ロボットを使用し、振動センサーにキーエンス社製GH−313
Aを使用し、受信アンプにキーエンス社製GA−245を、データロガーにキーエンス社
製NR−2000をそれぞれ使用し、高速フーリエ変換プログラムに株式会社アブティッ
ク製を使用した。
前記の健全試料を図3の(イ)に示すように厚み200mmの敷土上に設置し、更に図
3の(ロ)に示すように土覆厚み500mmで埋設し、試料内に前記検査ロボットを導入
し(インパクトハンマーの打撃箇所から受振箇所までの距離を1950mmにしてある)
、試料の両端口に上側部分は開いたままとするように堰止板を取付け(アクリル板を接着
剤で固定)、検査ロボットを操作して振動センサーを試料内面に接触させ、管体内水位を
0%、10%、30%、50%とするように水道水を注入し、各水位ごとに衝撃弾性波試
験を行って受振波の波形を記録した。図4の(イ)は水位0%での受振波の波形を示して
いる。
各水位に対する受振波形を絶対値に変換し〔図4の(ロ)は図4の(イ)に示す波形の
絶対値変換を行った波形〕、0〜700×10μsの時間区間で積分し、
積分値の比率y=(水位x%での受振波の積分値)/(水位0%での受振波の積分値)
を算出し、図4の(ハ)に示す、
〔式2〕 y=−0.005x+1
を得た。
この積分値の比率yは(水位x%での受振波のエネルギー)/(水位0%での受振波の
エネルギー)を意味している。
同様にして、水位を変えて受振波の周波数スペクトルを求め(図5の(イ)は水位20
%での受振波の周波数スペクトルを示し、図5の(ロ)は水位50%での受振波の周波数
スペクトルを示している)、周波数0.5〜10kHzの区間で積分し、
積分値の比率y=(水位x%での受振波周波数スペクトルの積分値)/(水位0%での
受振波周波数スペクトルの積分値)
を算出したところ、前記〔式2〕と同じ式を得た。
この補正式から、10%単位で変えた水位に対する補正係数を示せば次の通りである。
【表1】

【0017】
(B)補正式yと欠陥管体の受振波周波数スペクトルとの相関性
次のようにして相関性のあることを確認した。
欠陥管体として、前記ヒューム管を図6の(イ)に示すように落下して図6の(ロ)に
示すように管体中央に周方向クラックを巾0.15mm(周方向等間隔5点での平均値)
の寸法でいれたものを使用し、この欠陥管体を前記健全試料と同様にして埋設し、管体両
端に堰止板を固着して所定の水位に注水できるようにした。
この欠陥管体内に水量が存在しても、次のように前記補正式yによりその欠陥管体の受
振波周波数スペクトルのスペクトル強度(波高値)を補正して基準水位(通常0水位)で
の受振波周波数スペクトルを求めることができる。
図7の(イ)の左側図は欠陥管体の管内水位が20%での受振波周波数スペクトルを示
し、右側図は前記補正式に基づく補正係数1.11で補正した補正後受振波周波数スペク
トルを示している。
図7の(ロ)の左側図は欠陥管体の管内水位が50%での受振波周波数スペクトルを示
し、右側図は前記補正式に基づく補正係数1.33で補正した補正後受振波周波数スペク
トルを示している。
図7の(イ)の左側図で示す補正後の受振波周波数スペクトルの最大ピーク値と図7の
(ロ)の左側図で示す補正後の受振波周波数スペクトルの最大ピーク値とは共に8.4で
あって一致しており、最大ピーク値周波数(固有振動周波数)、ピーク本数も実質的に一
致している。
【0018】
従って、欠陥管体内に水量が在っても、その受振波の固有振動周波数、同受振波の周波
数スペクトルのピーク本数等の欠陥情報が実質的に殆ど変わず、受振波の波高値が実質的
に異なるだけであり、その差異の比は健全管体でのそれに実質的に等しく、従って、健全
管体について管内水量と受振波波高値との関係を求めておけば、水量が存在する欠陥管体
の受振波の周波数スペクトルのスペクト強度を補正して基準水量(通常0%水量)での周
波数スペクトルを求め得る。
この理由は、前記した補正係数、すなわち、(水位x%での試料の受振波周波数スペク
トルの積分値)/(水位0%での試料の受振波周波数スペクトルの積分値)の比が、(水
位x%での受振波のエネルギー)と(水位0%での受振波のエネルギー)との比であり、
弾性波出力のエネモルギーが管内水位に比例して管内水に放出され、この放出分だけ受振
波のエネルギーが小さくなることによると推定される。
【0019】
本発明に係る埋設管の検査方法により埋設管の劣化診断を行うには、図2に示す検査ロ
ボットを使用することが好ましい。この検査ロボットは図2の(ロ)に示すように、中折
り可能とし、マンホールから管路に至る間の直角空間に円滑に挿通できるようにしてある

【0020】
本発明に係る埋設管の検査方法により埋設管の劣化診断を行うには、例えば図8に示す
検査ロボット1を使用し図9に示すフローに従って進めることができる。この場合、一本
の管体の衝撃弾性波試験を行えば、次の管体内に検査装置を移行させるが、陥没が過酷な
場合は衝撃弾性波試験を行うまでもなく重劣化と判定する。
図8において、3はTVカメラを示し、陥没の程度はTVカメラの監視により行い、管
路内面を監視しつつ検査装置を移行させる。4は制御ユニット、cは操作信号を入力した
り、データ記録、高速フーリエ変換を行うパソコンやTVカメラモニタを示している。T
Vカメラ3または検査ロボット1に水位計5を取付け、その信号をパソコンに入力して受
振波周波数スペクトルの管内水量補正を行いえるようにしてもよい。
【0021】
埋設管の劣化診断を行うには、まず、埋設管路の各管体に対し、検査ロボット1を使用
して衝撃弾性波試験を行い、振動センサーBが受振する入力弾性波をパソコンに保存し、
高速フーリエ変換ソフトによりその入力弾性波をフーリエ変換して周波数スペクトルを求
める。水位計5で管内水位x(%)を測定し、前記の式2により補正係数を算出し、管内
水位による補正を行い、補正された周波数スペクトルを求める。
この補正した周波数スペクトルを解析し、最大ピークのスペクトル強度値40%以上の
ピーク本数を求め、ピーク本数が2本以下であれば〔図10の(ロ)参照〕、軸方向クラ
ック在りと診断し、ピーク本数が3本以上であれば〔図10の(ハ)、図10の(ニ)参
照〕、最大ピークの強度値を解析し、予め求めておいた健全管体の周波数スペクトル〔図
10の(イ)参照〕と比較して最大ピークの強度値が顕著に減少しているもの〔図10の
(ハ)参照〕では周方向クラック在りと診断し、最大ピークの強度値の減少程度が小さな
もの〔図10の(ニ)参照〕では管厚み減少と診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明において使用する衝撃弾性波法を示すために用いた図面である。
【図2】本発明において使用する検査ロボットを示す図面である。
【図3】本発明において水位補正係数を求めるために使用した試料を示すための図面である。
【図4】本発明において水位補正係数を求める過程を示すための図面である。
【図5】同上の水位補正係数を受振波の周波数スペクトルより求めるための異なる水位での周波数スペクトルを示す図面である。
【図6】前記水位補正係数の欠陥管体への相関性を確認するために使用する欠陥管体試料を示す図面である。
【図7】前記水位補正係数の欠陥管体への相関性を確認するために使用した異なる水位の欠陥管体の受振波周波数スペクトルを示す図面である。
【図8】本発明に係る埋設管路の検査方法の実施例を示すために使用した図面である、
【図9】同上実施例のフローチャートを示す図面である。
【図10】同上実施例での欠陥判定を行う基準とする受振波周波数スペクトルの各種類型を示す図面である。
【図11】衝撃弾性波法での受振波関数を説明すために使用した入力波を示す図面である。
【図12】衝撃弾性波法での受振波とその周波数スペクトルを示す図面である。
【図13】従来の埋設管の検査方法のフローチャートを示す図面である。
【図14】従来の埋設管の検査方法の作業状態を示す図面である。
【符号の説明】
【0023】
A ハンマー
B 振動センサー
p 管体
1 検査ロボット
5 水位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内に水量が存在する状態の埋設管の所定の内面箇所に弾性波を入力し、その入力箇所か
ら所定の間隔を隔てた管内面箇所で伝播弾性波を受振すると共に管内水位を測定し、この
受振波の周波数スペクトルの強度値を予め求めた管内水位に対する補正係数で補正してそ
の受振波の基準水位に対する周波数スペクトルを求め、この周波数スペクトルを解析して
埋設管の劣化診断を行うことを特徴とする埋設管の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−3319(P2006−3319A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182882(P2004−182882)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】