説明

基地局、移動通信端末および移動無線通信システム

【課題】端末が迅速にセル間を移動すること。ネットワーク側のリソースを無駄に消費することなく、端末がセル間を移動すること。端末の消費電力を低減すること。規制中のセルにおいて、全端末が平等にサービスを受けること。
【解決手段】第1基地局11は、配下の第1セル21が輻輳等によって規制状態であることを認識すると、第1セル21に隣接する第2セル22を管理する第2基地局12に規制情報を送信し、第1セル21が規制状態にあることを知らせる。第2基地局12は、その規制情報を受信すると、第2セル22にいる移動通信端末3にその規制内容を通知する。移動通信端末3は、その規制内容を受信すると、第1セル21に対する品質測定を中止し、第2セル22に隣接する第3セル23を品質測定の対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信技術における基地局、移動通信端末および移動無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3G(WCDMA)/2G(GSM/GPRS)対応デュアルモード移動通信端末およびセルの切り替え制御方法として、次のような提案がなされている。端末がある3Gセルからアクセスを拒否された場合、そのアクセス拒否の理由に関連付けて、その3Gセルおよびアクセス拒否の理由を共有する周辺3Gセルの周波数とコードと必要に応じてフレームタイミングとをメモリに記憶する。これにより無駄なcell reselectionにより3Gと2Gの間を短時間に行ったり来たりする現象を防ぎ、端末が音声通信やパケット通信のサービスを受けられる時間を長く確保し、ネットワークの処理負荷を抑え、また、端末の処理負荷や消費電流を軽減する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、災害時における通信要求の処理に関して、次のような提案がなされている。移動端末装置と相手方の端末との間で通信路の確立及び維持を図るために、通信回線の接続、切断及び維持を制御する基地局制御装置、交換機と、地震震度に基づいて決定した最大通話許容時間内で、基地局制御装置、交換機に通信回線を制御させる網監視装置とを備える。そして、災害時には、過密状態、輻輳状態を可能な限り回避し、できるだけ多くの利用者が通信できるように許容する(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、第3世代移動体通信システムの標準化プロジェクト(3GPP:3rd Generation Partnership Project)において、ブラックリストに関して検討されている。ここで、ブラックリストとは、災害などの原因によって、通信を行うのに適した状態にないセルの一覧である(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−88605号公報
【特許文献2】特開2005−204237号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Huawei, R2−071155, "Blacklistmaintenance", 3GPP TSG RAN WG2 #57bis,St Julian's Malta, 26−30 March 2007,p.1−6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、異なる基地局がカバーするセル間を端末が移動する場合、端末は、移動先の候補となる全ての隣接セルに対してサーチ/デコードを行い、受信レベルを測定し、受信レベルが良好なセルを選択するため、次のような問題がある。例えば、第1基地局、第2基地局および第3基地局がそれぞれ第1セル、第2セルおよび第3セルを管理し、端末が現在、第2セルにあり、この第2セルに第1セルと第3セルが隣接しているとする。以下、ある基地局が管理するセルを、その基地局の配下のセルと呼び、端末のいるセルおよびこれに隣接するセルを、それぞれ、在圏セルおよび隣接セルと呼ぶことがある。
【0008】
端末が隣接セルの中から移動先のセルを選択する際、第1セルが過負荷等の理由により規制中の状態にあり、第1セルでは発信および着信等のサービスを受けることができないことがある。そのような場合でも、端末は、第1セルと第3セルに対してサーチ/デコードを行い、第1セルの受信レベルが第3セルのそれよりもよければ、第1セルを選択する。在圏セル(第2セル)は、端末の選択に従って、第1セルに対してハンドオーバ要求を送るが、規制中のため、第1セルからは否の応答が返される。
【0009】
そこで、在圏セルは、第1セルの次に受信レベルのよい第3セルに対してハンドオーバ要求を送り、第3セルから可の応答を受け取ることになる。このように、移動先のセルを選択する際に、本来選択すべきでないセル(第1セル)に対する選択とハンドオーバ処理が行われるため、ハンドオーバが完了するまでに時間がかかり、ネットワーク側のリソースが無駄に消費されてしまう。また、端末においては、本来選択すべきでないセル(第1セル)に対してサーチ/デコードを行うため、電力が無駄に消費されてしまう。
【0010】
また、セルが規制される理由の一つとして、災害の発生時に被災地への安否確認のための通話や、情報収集のためのインターネット接続などによって、一時的に通信量が激増し、輻輳が生じることが挙げられる。このような場合、従来、規制中のセルにおいては、規制対象の端末は、サービスの種類に限らず、一律にサービスを受けることができない。そのため、規制対象の端末を携帯するユーザは、安否確認を行うことができなくなってしまう。また、災害によって商用電源が不通になり、端末の電池を充電できないことがある。このような場合には、電池の残りの充電量でできるだけ長時間、端末を使用可能な状態にしておけるのが望ましい。しかし、従来、災害による規制時に端末の消費電力を抑えることができるようにはなっていない。
【0011】
上述した従来技術による問題点を解消するため、規制中のセルにおいて、全端末が平等にサービスを受けることができる基地局、移動通信端末および移動無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、基地局は、配下のセルが、提供可能なサービスを制限する状態にあることを認識すると、移動通信端末にサービスの制限情報を送信する。移動通信端末は、その制限情報を受信すると、低消費電力モードに移行する。
【0013】
この基地局および移動通信端末、並びに、これらからなる移動無線通信システムによれば、災害発生等によって、提供されるサービスが制限されるような場合、移動通信端末は、制限されたサービスの範囲で基地局と通信を行うことができる。また、移動通信端末が低消費電力モードに移行することによって、1回の充電で使用可能な時間が長くなる。
【発明の効果】
【0014】
この基地局、移動通信端末および移動無線通信システムによれば、規制中のセルにおいて、全端末が平等にサービスを受けることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる移動無線通信システムの概念を示す説明図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかる移動無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる移動無線通信システムにおけるセル間移動時の流れを示すシーケンス図である。
【図4】図4は、実施の形態3にかかる移動無線通信システムの概念を示す説明図である。
【図5】図5は、実施の形態3にかかる移動無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、実施の形態3にかかる移動無線通信システムにおけるサービス制限時の流れを示すシーケンス図である。
【図7】図7は、実施の形態3にかかる移動通信端末におけるサービス制限時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この基地局、移動通信端末および移動無線通信システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
実施の形態1
(システムの概略)
図1は、実施の形態1にかかる移動無線通信システムの概念を示す説明図である。図1に示すように、第1基地局11の配下の第1セル21に、隣接セルとして、第2基地局12の配下の第2セル22と、第3基地局13の配下の第3セル23が隣接しているとする。また、第2セル22が在圏セルであり、ここに移動通信端末3がいるとする。
【0018】
この構成において、第1基地局11は、第1セル21が輻輳等によって規制状態であることを認識すると、第2基地局12に規制情報を送信し、第1セル21が規制状態にあることを知らせる(図1の矢印(1))。第2基地局12は、その規制情報を受信すると、第2セル22にいる移動通信端末3にその規制内容を通知する(図1の矢印(2))。移動通信端末3は、その規制内容を受信すると、第1セル21を除く隣接セル、ここでは第3セル23を品質測定の対象とする。それによって、移動通信端末3は、第1セル21への移動を試みることなく、第3セル23へ迅速に移動することができる。
【0019】
なお、図1には、3個の基地局と7個のセルと1個の移動通信端末が示されているが、システム全体の構成は、これに限らない。ところで、従来、基地局は、配下のセルが規制状態になると、その規制中のセルにいる移動通信端末に対してのみ規制情報を通知する。これは、その規制中のセルにいる移動通信端末に対する発信や着信を制限するためであり、移動通信端末の移動先を制御するためではない。
【0020】
(システムの構成)
図2は、実施の形態1にかかる移動無線通信システムの構成を示すブロック図である。システム全体では、複数の基地局と複数の移動通信端末が存在するが、ここでは、図2に示すように、第1基地局11、第2基地局12および移動通信端末3について説明する。第1基地局11は、対コアネットワーク信号送受信部(以下、CN送受信部とする)111、呼処理信号処理部(以下、呼処理部とする)112、無線信号送受信部(以下、無線送受信部とする)113、基地局制御部(以下、制御部とする)114および基地局間信号送受信部(以下、BS送受信部とする)115を備えている。
【0021】
CN送受信部111は、コアネットワークからの信号を受信するとともに、コアネットワークへ信号を送信する。BS送受信部115は、他の基地局からの信号を受信するとともに、他の基地局へ信号を送信する。BS送受信部115が送信または受信する信号の一つに、規制情報がある。従って、BS送受信部115は、他の基地局へ規制情報を送信し、また、他の基地局から規制情報を受信する。
【0022】
制御部114は、基地局全体の制御を司る。その制御の一つとして、制御部114は、配下のセルが輻輳等の何らかの原因によって規制状態であることを認識する。この場合には、制御部114は、その規制中のセルに隣接するセルを管理する基地局に、BS送受信部115を介して規制情報を通知するための制御を行う。また、制御部114は、BS送受信部115で受信した規制情報に基づいて、配下のセルにいる移動通信端末の中から、規制内容を通知する移動通信端末を決定する。この場合には、制御部114は、その決定した移動通信端末に、無線送受信部113を介して規制内容を通知するための制御を行う。
【0023】
呼処理部112は、移動通信端末へ信号を送信する際の呼処理を行う。無線送受信部113は、移動通信端末からの信号を受信するとともに、移動通信端末へ信号を送信する。従って、呼処理部112および無線送受信部113は、制御部114により通知対象に決定された移動通信端末へ規制内容を送信する。
【0024】
第2基地局12の構成は、第1基地局11の構成と同様である。以下の説明では、第1基地局11と第2基地局12とで、同一の機能部を識別するため、各機能部の前に、第1基地局11では「第1」を付加し、第2基地局12では「第2」を付加する。また、第2基地局12の各機能部の符号を百二十番代とし、末尾を第1基地局11と同じにする。例えば、第1基地局11のBS送受信部115は、第1BS送受信部115となり、第2基地局12のBS送受信部125は、第2BS送受信部125となる。
【0025】
移動通信端末3は、無線信号送受信部(以下、無線送受信部とする)131、端末制御部(以下、制御部とする)132および信号処理部(以下、処理部とする)133を備えている。移動通信端末3の各機能部を、前記第1基地局11および第2基地局12の各機能部と識別するため、移動通信端末3の各機能部の前に「第3」を付加する。
【0026】
第3無線送受信部131は、基地局からの信号を受信するとともに、基地局へ信号を送信する。第3処理部133は、基地局へ送信する信号および基地局から受信した信号の処理を行う。従って、第3無線送受信部131および第3処理部133は、基地局から前記規制容内容を受信する。第3制御部132は、端末全体の制御を司る。その制御の一つとして、第3制御部132は、第3無線送受信部131を介して基地局から受信した規制内容に基づいて、規制中のセルを除く隣接セルを品質測定の対象に決定する。
【0027】
(セル間移動時のシーケンス)
図3は、実施の形態1にかかる移動無線通信システムにおけるセル間移動時の流れを示すシーケンス図である。図3に示すように、第2基地局12の配下の第2セルに、アイドルまたは無通信状態の第1移動通信端末31と、第2基地局12と通信中(音声による通話中を含む)の第2移動通信端末32がおり、これらの端末がセル間を移動する際のシーケンスを説明する。第1基地局11の配下の第1セルに、アイドルまたは無通信状態の第3移動通信端末33がいるとする。第3基地局13は、第3セルを管理する。各基地局と各セルとの関係は、図1を参照しながら先に説明した通りである。符号4で示すCNは、コアネットワークである。第1移動通信端末31、第2移動通信端末32および第3移動通信端末33は、移動通信端末3と同様の構成とする。
【0028】
あるセルが規制状態になる前の段階においては、第2基地局12は、第2移動通信端末32に、隣接セルの品質を測定することを指示するメッセージを送る(ステップS1)。その際のメッセージは、品質を測定する対象のセル(以下、測定対象セルとする)を明示的に示すメッセージ(例えば、Measurement Control for Cell#1 & Cell#3)でもよいし、全ての隣接セルを測定対象セルとするメッセージ(例えば、Measure Control for all Neighbour
Cells)でもよい。ここで、Cellの後の#1および#3は、それぞれ第1セルおよび第3セルの識別情報(ID)である。
【0029】
第1セルが過負荷等の原因によって規制状態になると、第1基地局11は、第1制御部114により、第1セルが規制状態にあることを認識する(ステップS2)。そして、第1基地局11は、第1呼処理部112および第1無線送受信部113により、その第1セルにいる第3移動通信端末33へ報知情報を送り、第1セルが規制状態にあることを通知する(ステップS3)。
【0030】
また、第1基地局11は、第1BS送受信部115により、第1セルに隣接する第2セルおよび第3セルをそれぞれ管理する第2基地局12および第3基地局13に規制情報を送り、第1セルが規制状態にあることを通知する(ステップS4、ステップS5)。第2基地局12は、第2BS送受信部125を介して第1基地局11から規制情報を受け取ると、第2制御部124により、第1セルが規制状態にあることを認識し、規制情報に基づいて規制内容を通知する端末(ここでは、第1移動通信端末31)を決定する。そして、第2基地局12は、第2呼処理部122および第2無線送受信部123により、第1移動通信端末31へ報知情報を送り、第1セルが規制状態にあることを通知する(ステップS6)。
【0031】
第1移動通信端末31は、第3無線送受信部131および第3処理部133により、その報知情報を受け取る。このように、規制内容を通知するか否かによって、基地局は、移動通信端末ごとにセルの品質測定やセルの選択を制御する。また、基地局は、通知する規制内容を適宜変更することによって、移動通信端末ごとにセルの品質測定やセルの選択を制御するようにしてもよい。
【0032】
また、第2基地局12は、通信中の第2移動通信端末32に対しては、第2呼処理部122および第2無線送受信部123により、測定指示として、隣接セルの品質測定時に規制中のセルに対する品質測定を行わないことを指示するメッセージを送る(ステップS7)。その際のメッセージは、測定対象セルを明示的に示すメッセージ(例えば、Measurement Control for Cell#3)でもよいし、規制中の第1セルを除く全ての隣接セルを測定対象セルとするメッセージ(例えば、Measure Control for all Neighbour Cells except Cell#1)でもよい。
【0033】
第2移動通信端末32は、第3無線送受信部131および第3処理部133により、そのメッセージを受け取る。このように、通話中の移動通信端末のハンドオーバ時には、基地局は、その端末に適した品質測定を行うように、移動通信端末ごとに個別に指示をする。
【0034】
第2セルの通信品質が第1移動通信端末31における通信品質の閾値よりも低くなると(ステップS8)、第1移動通信端末31は、第3制御部132により、第1セルが規制状態にあることを認識して測定対象セルを決定する。ここでは、測定対象セルは、第3セルである。そして、第1移動通信端末31は、第3セルに対してサーチ/デコードを行う(ステップS9)。
【0035】
一方、第2セルの通信品質が第2移動通信端末32における通信品質の閾値よりも低くなると(ステップS10)、第2移動通信端末32は、第3制御部132により、第1セルを測定対象セルから除き、品質測定を行うセル(ここでは、第3セル)を決定する。そして、第2移動通信端末32は、第3セルに対してサーチ/デコードを行う(ステップS11)。その後、第2移動通信端末32は、ハンドオーバ元である第2基地局12へ品質測定の結果を返す(ステップS12)。その際、測定結果は、第3セルの測定結果(例えば、Measurement Report for Cell#3)でもよいし、第1セルを除く全隣接セルの測定結果(例えば、Measure Report for all Neighbour Cells except Cell#1)でもよい。
【0036】
第2基地局12は、第2移動通信端末32から測定結果を受け取ると、通信品質の良い順にハンドオーバ要求(H/O要求)を送る。ここでは、第2基地局12は、第2移動通信端末32から第3セルの品質測定結果のみを受け取っているので、第3セルを管理する第3基地局13へ、第3セルに対するハンドオーバ要求(例えば、Cell#3)を送る(ステップS13)。それに対して、第3基地局13は、第3セルが規制中でないので、第2基地局12へハンドオーバ可の応答(例えば、Cell#3 OK)を返す(ステップS14)。そして、実際にハンドオーバを行うための処理が行われる(ステップS15)。
【0037】
実施の形態1によれば、移動通信端末が規制中のセルに対するサーチ/デコードを行わずに済む。これによって、以下のような効果が得られる。第1に、移動先の候補となるセルに対するサーチ/デコードを迅速に終えることができる。従って、移動通信端末がセル間を迅速に移動することができる。第2に、移動通信端末において、規制中のセルに対してサーチ/デコードを行う場合に消費される分の電力を節約することができるので、移動通信端末の消費電力を低減することができる。従って、移動通信端末において、1回の充電で使用可能な時間が長くなる。第3に、規制中のセルに対する選択処理やハンドオーバ処理に、ネットワーク側のリソースが消費されるのを抑えることができるので、ネットワーク側のリソースを無駄に消費するのを抑えることができる。
【0038】
実施の形態2
実施の形態2は、実施の形態1において、基地局間で授受される規制情報および基地局から移動通信端末へ通知される規制内容に、規制中のセルにおいて規制される端末を特定する端末情報を含めるようにしたものである。具体的には、図3に示すシーケンス図において、端末情報は、ステップS3の報知情報、ステップS4およびステップS5の規制情報(規制状態通知)、ステップS6の報知情報、並びにステップS7の測定指示に含められる。その際、ステップS7では、端末情報に該当する移動通信端末に対して測定指示のメッセージが送られる。
【0039】
ここで、端末情報として、例えばアクセスクラス(Access class)を用いることができる。アクセスクラスとは、基地局との通信の優先度に応じて移動通信端末を分類したグループの等級のことであり、例えば0〜15のクラスに分類されている。例えば、0〜9は、一般のユーザが使用する端末のクラスであり、13は、警察向け端末のクラスであり、14は、救急向け端末のクラスである。その他のクラスは、現状では未使用である。このようなアクセスクラスを規制情報や規制内容に含めて基地局や移動通信端末に通知することによって、例えば、全ての端末を規制対象としたり、13および14のクラスの端末のみを規制対象から除いたりすることができる。
【0040】
移動通信端末のUSIM(Subscriber Identification Module)には、アクセスクラスの番号がEF_ACCとして書き込まれている。このEF_ACCの番号が、基地局から通知されたアクセスクラスと一致する場合、その移動通信端末が規制の対象となる。移動通信端末は、自身が規制対象となる端末であることを知ることによって、規制中のセルに対するサーチ/デコードを行うのを止めることができる。
【0041】
また、ステップS6およびステップS7において、規制中のセルの隣接セルを管理する基地局は、端末情報に該当する移動通信端末がその隣接セルにいる場合にのみ、ステップS6の報知情報やステップS7の測定指示メッセージを送るようにしてもよい。基地局は、端末情報に該当する移動通信端末が配下のセルに存在するか否かを、例えば端末の位置登録情報で認識することができる。
【0042】
実施の形態2によれば、規制中のセルにおいて規制される端末を特定することによって、移動通信端末が規制中のセルへ移動するのを一律に禁止するのではなく、規制中のセルにおいて規制対象となる端末の移動のみを制限することができる。また、基地局が、配下のセルに規制対象の端末がいない場合に報知情報や測定指示を送らないことによって、無線リソースが無駄に消費されるのを抑えることができる。また、規制中のセルの隣接セルを管理する基地局が、規制中のセルを管理する基地局から受け取った規制情報を何ら加工せずにそのまま移動通信端末へ送信するようにしてもよい。そうすることによって、移動通信端末が移動先のセルを迅速に選択することができる。
【0043】
実施の形態3
(システムの概略)
図4は、実施の形態3にかかる移動無線通信システムの概念を示す説明図である。図4に示すように、第1基地局11の配下の第1セル21が規制中である場合、第1基地局11は、第1セル21にいる全ての移動通信端末、図示例では、第3移動通信端末33および第4移動通信端末34に、規制中の第1セル21において提供可能なサービスの情報(以下、QOS制限情報とする、QOS:Quality of Service)を送る。QOS制限情報は、例えばトラフィッククラス(Traffic class)情報や、最大情報転送速度の情報などである。
【0044】
トラフィッククラスには、例えば音声通話のようなアプリケーションを対象とするカンバセーショナルクラス(conversational class)、ビデオ放送のようなアプリケーションを対象とするストリーミングクラス(streaming class)、電子メールのようなアプリケーションを対象とするバックグラウンドクラス(background class)、およびWebブラウジングなどのアプリケーションを対象とするインタラクティブクラス(interactive class)がある。第3移動通信端末33および第4移動通信端末34は、第1基地局11からQOS制限情報を受け取ると、その制限されたサービスの範囲内で第1基地局11と通信することができる。
【0045】
例えば、QOS制限情報において、トラフィッククラス情報がバックグラウンドクラスであり、最大情報転送速度の情報が数kbpsである場合には、第3移動通信端末33および第4移動通信端末34は、その最大情報転送速度の範囲内で第1基地局11との間で電子メールの送受信を行うことができる。しかし、トラフィッククラス情報がバックグラウンドクラスであっても、最大情報転送速度が数Mbpsのファイル転送サービスは、無線のリソースを多く消費するため、許可されない。また、最大情報転送速度が数kbpsであっても、カンバセーショナルクラスの音声通話サービスは、無線リソースを長く保持するため、許可されない。
【0046】
このようなシステムでは、規制中のセルにおいて、各移動通信端末が制限されたサービスの範囲内で平等にサービスの提供を受けることができる。従って、特に限定しないが、例えば災害発生等の緊急時に、特定のユーザがリソースを多く使用して通信を行い、それによって、他のユーザに割り当てるリソースがなくなり、一部のユーザが通信できなくなるという事態が発生するのを防ぐことができる。
【0047】
それに対して、ネットワークから規制中のセルにいる全移動通信端末にQOS制限情報を送らないシステムでは、そのセルにいる全移動通信端末が通信不能になったり、あるいは、例えばアクセスクラスによって規制対象となる移動通信端末が通信不能になってしまう。なお、従来、パケットドメインのみ使用可能なドメイン毎の規制を行うシステムはあるが、サービス別に規制を行うシステムはない。
【0048】
(システムの構成)
図5は、実施の形態3にかかる移動無線通信システムの構成を示すブロック図である。システム全体では、複数の基地局と複数の移動通信端末が存在するが、ここでは、図5に示すように、第1基地局11および移動通信端末3について説明する。第1基地局11の構成および移動通信端末3の構成は、それぞれ実施の形態1で説明した通りである。
【0049】
ただし、第1基地局11において、第1CN送受信部111は、例えば災害発生時にコアネットワークから災害発生通知を受信する。第1制御部114は、第1CN送受信部111で受信した災害発生通知に基づいて、災害が発生した状態にあることと、配下のセルが、提供可能なサービスを制限する状態(規制状態)にあることを認識する。第1呼処理部112および第1無線送受信部113は、第1制御部114により認識されたサービス制限状態に応じて、配下のセルにいる移動通信端末にQOS制限情報を送信する。送信対象となる移動通信端末が存在しない場合には、QOS制限情報を送信しなくてもよい。
【0050】
このときのQOS制限情報は、各端末が少ない無線リソースで通信できるようなサービスに制限する情報である。例えば、QOS制限情報は、トラフィッククラスがバックグラウンドクラスであり、最大情報転送速度が5kbpsであるという情報(Background/5kbps/with restriction)であってもよい。
【0051】
一方、移動通信端末3においては、第3無線送受信部131および第3処理部133は、基地局からQOS制限情報を受信する。第3制御部132は、第3無線送受信部131で受信したQOS制限情報に基づいて、提供可能なサービスが制限されていることを認識する。第3制御部132および第3処理部133は、QOS制限情報により制限されたサービスの範囲内で基地局と通信する。例えば、上述したBackground/5kbpsのQOS制限情報の場合には、移動通信端末3は、基地局と例えば電子メールでの通信を行う。
【0052】
また、第3制御部132および第3処理部133は、QOS制限情報を認識すると、あるいは自身がいるセルが災害発生状態であることを認識すると、低消費電力モードに移行する。低消費電力モードでは、例えば、移動通信端末3からネットワークへの定期的な位置登録処理が停止される。また、低消費電力モードでは、指定されたアプリケーションの起動もしくは動作が、停止または制限される。
【0053】
(サービス制限時のシーケンス)
図6は、実施の形態3にかかる移動無線通信システムにおけるサービス制限時の流れを示すシーケンス図である。ここでは、図6に示すように、ステップS2において、第1基地局11が、配下のセルが規制状態にあり、かつ災害発生状態にあることを認識する場合を例にして説明する。
【0054】
ステップS2に続いて、第1基地局11は、第1呼処理部112および第1無線送受信部113により、配下の第1セルにいる第3移動通信端末33へ、第1セルが規制状態にあることを通知する報知情報(規制情報)と、上述したようなサービスを制限するQOS制限情報(図では、QOS情報)を送信する(ステップS3)。第1基地局11の配下のセルに送信対象となる移動通信端末が存在しない場合には、これらの情報を送信しないようにしてもよい。
【0055】
第3移動通信端末33は、基地局から規制情報およびQOS制限情報を受け取り、QOS制限情報に基づいて、QOS制限下において利用可能なサービスを認識する(ステップS21)。次いで、第3移動通信端末33は、制限されたサービスの範囲内で第1基地局11と通信する(ステップS22)。次いで、第3移動通信端末33は、省電力モードへ移行する(ステップS23)。第3移動通信端末33で実行される詳細な処理については次に説明する。これ以降、第3移動通信端末33は、規制が解除されるまでこの状態を維持する。第1移動通信端末31および第2移動通信端末32のセル間移動時のシーケンスについては、実施の形態1または実施の形態2で説明した通りである。
【0056】
(QOS制限下での移動通信端末の処理)
図7は、実施の形態3にかかる移動通信端末におけるサービス制限時の処理を示すフローチャートである。図7に示すように、第3移動通信端末33において、第3無線送受信部131および第3処理部133は、基地局から規制情報とQOS制限情報を受け取る(ステップS31の「制限情報を受信」)。次いで、第3制御部132は、在圏セルが規制状態でかつ災害発生状態にあることを認識し、QOS制限情報に基づいて利用可能なサービスを認識する(ステップS32の「制限を認識」)。
【0057】
次いで、第3制御部132は、第3処理部133に、利用可能なサービスの範囲内で基地局と通信することを指示する(ステップS33の「通信を指示」)。第3処理部133は、第3制御部132から通信の指示を受け取ると、利用可能なサービスの範囲内で基地局と通信する(ステップS34の「制限下で通信」)。例えば、第3移動通信端末33は、電子メールによって基地局と通信する。
【0058】
また、第3無線送受信部131および第3処理部133は、基地局から規制情報またはQOS制限情報を受け取り(ステップS35の「制限情報を受信」)、それを認識すると(ステップS36の「制限を認識」)、省電力モードへ移行する。省電力モードでは、第3制御部132は、第3処理部133に、例えばネットワークへの定期的な位置登録処理を停止することを指示する(ステップS37の「登録停止を指示」)。
【0059】
第3処理部133は、第3制御部132から登録停止の指示を受け取ると、位置登録処理を停止する(ステップS38の「登録を停止」)。また、第3制御部132は、第3処理部133に、例えば指定されたアプリケーションの起動を停止することを指示する(ステップS39の「起動停止を指示」)。第3処理部133は、第3制御部132から起動停止の指示を受け取ると、指定されたアプリケーションの起動を停止する(ステップS40の「起動を停止」)。例えば、ファイルのダウンロードを行うアプリケーションや、音声通話のアプリケーションなどの起動が停止される。
【0060】
実施の形態3によれば、災害発生等によって、提供されるサービスが制限されるような場合、移動通信端末は、制限されたサービスの範囲で基地局と通信を行うことができるので、規制中のセルにおいて、全端末が平等にサービスを受けることができる。従って、災害時でも全てのユーザが安否確認等の連絡をとることが可能となる。また、移動通信端末が低消費電力モードに移行することによって、1回の充電で使用可能な時間が長くなるので、充電を行うことができない場合に、できるだけ長時間、移動通信端末を使用可能な状態にしておくことができる。
【0061】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0062】
(付記1)他の基地局との間で規制中のセルに関する規制情報を授受する基地局間信号送受信部と、前記基地局間信号送受信部で受信した前記規制情報に基づいて、規制内容を通知する端末を決定する基地局制御部と、前記基地局制御部により通知対象に決定された前記端末に前記規制内容を送信する呼処理信号処理部および無線信号送信部と、を備えることを特徴とする基地局。
【0063】
(付記2)前記規制情報および前記規制内容は、規制される端末を特定する端末情報を含むことを特徴とする付記1に記載の基地局。
【0064】
(付記3)前記他の基地局から受信した前記規制情報をそのまま前記規制内容として前記端末に通知することを特徴とする付記2に記載の基地局。
【0065】
(付記4)自局が管理するセルに存在する前記端末のうち、前記端末情報に該当する端末にのみ、前記規制内容を通知することを特徴とする付記2または3に記載の基地局。
【0066】
(付記5)通信中の前記端末に、前記規制中のセルに対する品質測定を中止するように指示することを特徴とする付記4に記載の基地局。
【0067】
(付記6)自局が管理するセルが、提供可能なサービスを制限する状態にあることを認識する基地局制御部と、前記基地局制御部により認識されたサービス制限状態に応じて、端末にサービスの制限情報を送信する呼処理信号処理部および無線信号送信部と、を備えることを特徴とする基地局。
【0068】
(付記7)前記サービス制限状態とは、災害が発生した状態であることを特徴とする付記6に記載の基地局。
【0069】
(付記8)基地局から規制中のセルに関する規制情報を受信する無線信号受信部および信号処理部と、前記無線信号受信部で受信した前記規制情報に基づいて、前記規制中のセルを除くセルを品質測定の対象に決定する端末制御部と、を備えることを特徴とする移動通信端末。
【0070】
(付記9)基地局から、提供可能なサービスを制限する制限情報を受信する無線信号受信部および信号処理部と、前記無線信号受信部で受信した前記制限情報に基づいて、低消費電力モードに移行する端末制御部および信号処理部と、を備えることを特徴とする移動通信端末。
【0071】
(付記10)前記端末制御部および前記信号処理部は、前記無線信号受信部で受信した前記制限情報により制限されるサービスの範囲内で前記基地局と通信することを特徴とする付記9に記載の移動通信端末。
【0072】
(付記11)自局が管理する第1セルが規制状態であることを認識し、他の基地局に前記第1セルに関する規制情報を送信する第1基地局と、前記第1基地局から送信されてきた前記規制情報を受信し、自局が管理する第2セルに存在する移動通信端末に前記第1セルに関する規制内容を通知する第2基地局と、前記第2基地局から送信されてきた前記規制内容を受信し、前記第1セルを除くセルを品質測定の対象とする移動通信端末と、を備えることを特徴とする移動無線通信システム。
【0073】
(付記12)前記規制情報および前記規制内容は、規制される移動通信端末を特定する端末情報を含み、前記第2基地局は、自局が管理するセルに存在する前記移動通信端末のうち、前記端末情報に該当する移動通信端末にのみ、前記規制内容を通知することを特徴とする付記11に記載の移動無線通信システム。
【0074】
(付記13)前記第2基地局は、通信中の前記移動通信端末に、前記第1セルに対する品質測定を中止するように指示し、前記通信中の移動通信端末は、前記第1セルを除くセルを品質測定の対象とすることを特徴とする付記12に記載の移動無線通信システム。
【0075】
(付記14)自局が管理するセルが、提供可能なサービスを制限する状態にあることを認識し、移動通信端末にサービスの制限情報を送信する基地局と、前記基地局から送信されてきた前記制限情報を受信し、低消費電力モードに移行する移動通信端末と、を備えることを特徴とする移動無線通信システム。
【0076】
(付記15)前記移動通信端末は、前記制限情報により制限されるサービスの範囲内で前記基地局と通信することを特徴とする付記14に記載の移動無線通信システム。
【0077】
(付記16)前記サービスの制限状態とは、災害が発生した状態であることを特徴とする付記14または15に記載の移動無線通信システム。
【符号の説明】
【0078】
11,12,13 基地局
21,22,23 セル
112,122 呼処理信号処理部
113,123,131 無線信号送受信部
114,124 基地局制御部
115,125 基地局間信号送受信部
132 端末制御部
133 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自局が管理するセルが、提供可能なサービスを制限する状態にあることを認識する基地局制御部と、
前記基地局制御部により認識されたサービス制限状態に応じて、端末にサービスの制限情報を送信する呼処理信号処理部および無線信号送信部と、
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項2】
基地局から、提供可能なサービスを制限する制限情報を受信する無線信号受信部および信号処理部と、
前記無線信号受信部で受信した前記制限情報に基づいて、低消費電力モードに移行する端末制御部および信号処理部と、
を備えることを特徴とする移動通信端末。
【請求項3】
自局が管理するセルが、提供可能なサービスを制限する状態にあることを認識し、移動通信端末にサービスの制限情報を送信する基地局と、
前記基地局から送信されてきた前記制限情報を受信し、低消費電力モードに移行する移動通信端末と、
を備えることを特徴とする移動無線通信システム。
【請求項4】
前記移動通信端末は、前記制限情報により制限されるサービスの範囲内で前記基地局と通信することを特徴とする請求項3に記載の移動無線通信システム。
【請求項5】
前記サービスの制限状態とは、災害が発生した状態であることを特徴とする請求項3または4に記載の移動無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−70394(P2012−70394A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228376(P2011−228376)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【分割の表示】特願2008−53996(P2008−53996)の分割
【原出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】