説明

基地局装置

【課題】無線アクセスシステムの基地局を多数設置する際の消費電力量の増大を抑え、かつ、停電時でも利用可能な環境と災害に強い無線インフラを構築するための基地局装置を提供する。
【解決手段】バッテリーのバッテリー残量を取得するバッテリー残量取得手段と、所定の制御周期におけるバッテリーのバッテリー残量の計画値を管理するバッテリー残量計画値管理手段と、所定の制御周期における制御パラメータの計画値を管理する制御パラメータ計画値管理手段と、制御パラメータ計画値管理手段を参照し、かつバッテリー残量取得手段から得られるバッテリー残量の実測値と、バッテリー残量計画値管理手段から得られるバッテリー残量の計画値とを比較し、バッテリー残量の実測値が計画値より小さい場合に制御パラメータ計画値管理手段にて管理される基準値の制御パラメータよりも省電力化する制御パラメータを設定する制御パラメータ設定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスシステムの基地局を多数設置する際の消費電力量の増大を抑え、かつ、停電時でも利用可能な環境と災害に強い無線インフラを構築するための基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの普及と共に、光回線やADSL等の有線回線に加え、スマートフォンを中心とするモバイル環境でのインターネット利用が増大している。これらは、第3世代携帯電話(3G)や次世代携帯電話と位置づけられるLTE(Long Term Evolution )などの回線を利用することで、いつでも何処でもインターネット利用を可能とするものである。これらのシステムは、無線アクセスに利用される様々な周波数帯の中でも、比較的使い勝手のよいマイクロ波帯を利用するものであり、この周波数帯の性質を利用して、ひとつの基地局で広範囲のエリアをサービスエリアにすることが出来る。
【0003】
しかし、このような使い勝手のよいマイクロ波帯はその他のシステムにおいても利用が期待されており、既に周波数資源の枯渇の問題に直面している。特に、動画などを含むブロードバンドのアプリケーションが増加し、ユーザ毎の通信速度が以前に比べて高速化する中で、LTEなどではより広い周波数帯域の割り当てが必要になる。しかし、LTEでは、全体の帯域を複数の事業者が分け合うことになり、1事業者に割り当てられる帯域は非常に限定されたものとなっているのが現状である。
【0004】
一方、スマートフォンやノートPCからのモバイル環境でのインターネット利用は留まるところを知らぬ勢いで増加し、周波数資源の枯渇、パンク状態は目前の状態である。
【0005】
この問題を解決するために、これらの3GおよびLTE等の回線を迂回させる無線システムが必要となる。最も現実的なシステムは 2.4GHz帯および5GHz帯を利用するWiFiである。IEEE802.11系の規格(802.11a,b,g,n等の全ての規格を含む)に準拠するWiFiでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance )と呼ばれるアクセス技術を用い、同一の周波数チャネルを用いて非計画的に乱立する無線局が混在した中でも、効率的かつ安定的に無線アクセスを利用可能である。さらに、各家庭内のホームネットワーク、携帯型ゲーム機間、ノートPCや携帯電話等への実装など、爆発的に普及したこれらのシステムは既に基地局装置(AP:アクセスポイント)および端末装置の双方の価格が非常に安価になり、既に社会的な地位を確立している状態である。
【0006】
このWiFiにおけるCSMA/CA技術では、基地局の置局設計を特に意識しなくても破綻することなく運用可能である。特に、送信電力を抑えることによりサービスエリア半径を小さくしたマイクロセル化を行うと、個々のマイクロセル毎に所定のスループットを実現可能になり、結果的に単位面積当たりの伝送容量は増大する。このようにして、3GおよびLTE等の回線から溢れたトラヒックを効率的にWiFiネットワークにより吸収することが可能になる。
【0007】
しかし、ほとんど何処でも利用可能な3G回線などからの迂回を想定するならば、少なくとも人口の密集する市街地、住宅地などの大部分を広範囲にカバーするために、膨大な数の基地局を設置する必要がある。もともと屋内での利用を前提に設計された無線規格であることもあり、ひとつの基地局で広範囲をカバーすることは困難な上、システム全体の伝送容量増大のためにはマイクロセル化も必要になり、設置が必要な基地局の台数は膨大である。個々の基地局の消費電力はそれほど大きくなくても、それら全体の消費電力量は膨大となり、環境問題の観点からは環境に対する負荷が小さなシステムが求められている。
【0008】
これらの課題を解決するために、いわゆる環境発電と呼ばれる技術の活用が期待されている。太陽光発電(太陽電池)では発電可能な電力量も他の発電技術よりも比較的大きいため、最も有力な方法として期待される。
【0009】
この太陽電池により給電される基地局の構想は、上述の消費電力削減とは別の観点からも期待される。例えば地震などの災害時に、その災害を受けたエリア内で停電が発生するのはよくある。当然、主要なネットワークも同時に被害を受けることは予想されるが、多くの主要な設備は自家発電やバッテリーなどのバックアップを備えていたり、仮に一時的に稼動をストップすることになっても、短時間に集中的に復旧作業が行われるため、比較的早期に通常運用に戻ることが期待される。しかし、被災地の停電は数日から1週間程度に及ぶことも珍しくなく、その時に太陽電池給電の基地局装置は災害復旧に重要な役割を果たすと期待される。
【0010】
このような理由から、太陽電池で給電可能な無線インフラの基地局装置は急激に注目を集めているのが現状である。しかし、ここに大きな問題が残されている。まず、太陽光発電は太陽光が降り注ぐ昼間、さらには晴天時に多くの発電量が期待される一方で、夜間や雨天時には発電が期待できない。このため、通常はバッテリーを太陽電池に接続し、夜間や雨天時にも運用可能な状態としている。しかし、例えば電柱などの上方や専用の支柱に基地局を設置する場合を考えると、平面状の太陽電池パネルは風が吹いた時にその大きさに比例した風圧を受けることになり、強度上の観点からあまり大きなサイズの太陽電池パネルを設置することは出来ない。
【0011】
仮に30cm四方のサイズの太陽電池パネルを想定して、運用時の課題を整理してみる。現在、一般的な太陽電池パネルの発電能力は、1m2 あたり 180W/hといわれている。30cm四方の場合には、この9%の発電量に相当する。さらに、昼間と夜間を含めた晴天率(太陽が出ている率)は年間日照時間の例年の平均値が約1000時間であることから1000/(365×24)の11.4%程度の低い割合である。したがって、 180W/h×0.09×0.114 =1.85W/hとなる。さらに、一旦バッテリーに蓄電した電力を利用する場合の蓄電効率も考慮すると、利用可能な電力はさらに低い値となることが予想される。また、晴天や雨天の間隔や周期はランダムであり、発電量が低い日々が長く続けば、数日平均で見たときの発電量にも波があり、通信用のインフラとしての利用においては、当然ながらさらなるマージンが必要となる。
【0012】
もともと環境に考慮した社会的な取り組みの中でも、様々な電子機器の消費電力削減は広く進められているところであるが、上述の様な太陽電池給電の基地局装置を想定すると更に、基地局装置の省電力化が重要な課題となる。そこで、従来技術における基地局装置の省電力化技術を以下に紹介する。
【0013】
例えば、特許文献1に記載される基地局にスリープを導入する技術はそのひとつである。通常、基地局装置は商用電源に接続されるが、携帯端末は内蔵するバッテリーで駆動されていることが多い。そのようなバッテリー駆動の端末装置では、スリープと呼ばれるメカニズムを利用して一定の周期で自らの回路の動作を停止させ、バッテリーセービングを図るのが一般的である。一方、商用電源に接続された基地局側は、本来であればスリープの必要はないが、消費電力の削減のため、ないしはバッテリーを搭載した特殊な基地局などにおいて、基地局装置側も所定の周期で自らの回路を停止させ、スリープ状態に入ることで消費電力を削減する。ただし、自らがスリープ状態にある場合には、配下の端末局が無線回線でアクセスすることを禁止するメカニズムを必要とする。なお、配下の端末局の中には、基地局のスリープ開始時には電源がOFFになっていたが、途中で電源ON状態になる端末局も含めて考える必要がある。
【0014】
図9は、従来技術における基地局のスリープ制御の概要(NAV利用)を示す。
図9において、201および202はビーコン信号、203および204はスリープ制御パケット、205は基地局の状態、206は端末局の状態を表す。また、様々な説明において開始と終了時刻を説明するために、タイミング「A」「B」…「G」を図中で示した。
【0015】
通常、WiFiでは、基地局からブロードキャストの制御情報であるビーコン信号201,202を所定の周期で送信する。端末局とのスリープ制御においては、このビーコン信号を用いて基地局からの起床指示(スリープ解除)を行うことになるが、端末局はスリープ中に全てのビーコン信号を受信できない。ビーコン信号201,202内には、DTIM(Delivery Traffic Indication MAP )カウント、およびDTIM周期等を含む情報が収容されており、このDTIMカウント値がゼロとなるビーコンだけを受信する。そこで、基地局はこのDTIM周期を1に設定し、全てのビーコン信号201,202のDTIMカウント値を0に設定し、端末がスリープ解除となっている間にスリープ制御パケット203,204を送信する。
【0016】
一般に、WiFiで用いられる無線パケットには、ある無線リンクで所定の時間だけ帯域を確保するために、NAV(Network Allocation Vector )と呼ばれる時間を設定し、当該リンク以外の無線端末に対して送信の禁止を指示する。スリープ制御用パケット203,204ではこのNAVを設定し、端末からの信号送信をブロックし、その間、自らの電源を落として消費電力削減を図る。例えば、スリープ制御パケット203の設定するNAVは時刻「C」から時刻「E」までであり、この間のうち信号を送信していない区間、時刻「C」から時刻「D」が基地局のスリープ時間となる。なお、一度のスリープ制御パケット203,204で設定可能なNAVの最大時間には限りがある。更なるスリープを行うためにはスリープ制御パケット203に続けてスリープ制御パケット204を送信することになり、これにより時刻「E」から時刻「F」までもスリープすることができ、この状況が基地局の状態205に示されている。なお、端末局の状態206で示したとおり、端末局としては、時刻「C」から時刻「E」、時刻「E」から時刻「F」までをそれぞれNAVと認識し、基地局がスリープしている時刻「C」から時刻「D」までの時間であってもスリープすることはできない。このスリープ制御パケット203,204としては、NAVを設定できるものであれば何でもよく、典型的なものとしてはCTS(Clear to Send )パケットを用いるが、ブロードキャスト、マルチキャストなどのパケットを用いてもよい。この際の設定次第では、端末局もスリープに移行することもできる。
【0017】
なお、この基地局のスリープ制御は基地局側がバッテリーで動作するポータブルタイプのものを想定した際の技術であり、端末側はむしろスリープできる時間率は低下する可能性がある。しかし、基地局と端末局の組み合わせにおいて、どちらか一方のバッテリーが空になった時点で通信はできなくなるために、端末にとっては逆効果であっても、端末より電力消費量の大きな基地局の低消費電力化技術は意味をもつことになる。
【0018】
同様のスリープは、その他の制御メッセージを用いても実現可能である。例えば、WiFiにおける制御信号のひとつであるビーコン信号内には、Quietと呼ばれるフィールドが設定してあり、このフィールドを用いてビーコン周期内に無線アクセス禁止区間を設定可能である。
【0019】
図10は、従来技術における基地局のスリープ制御の概要(Quiet IE利用)を示す。
図10において、201および202はビーコン信号、207は基地局の状態、208は端末局の状態を表す。また、様々な説明において開始と終了時刻を説明するために、タイミング「A」「B」「C」を図中で示した。
【0020】
WiFiでは、あるビーコンフレームのOffset値のタイミング「B」を開始時刻と設定し、この時刻「B」から所定の時間を端末からの送信禁止期間(図中では時刻「B」から時刻「C」まで)と設定することが可能である。これを利用して、基地局の状態207は、時刻「A」から時刻「B」までは起床(Awake )状態で、時刻「B」から時刻「C」がスリープ状態となる。一般の端末局に関しては、送信禁止期間中の動作が規定されていないために、時刻「B」から時刻「C」についてはスリープできるか否かは端末次第であるが、この間は少なくとも有意なデータを受信する可能性がないため、スリープ同様の動作とすることも可能である。
【0021】
図11は、従来技術における基地局装置の構成例を示す。図11(1) に示す基地局装置はバッテリーを備えず、図11(2) に示す基地局装置はバッテリーを備える。
図11において、101は基地局装置、102はアンテナ、103は通信手段、104は給電手段、105は電源回路、106は通信制御手段、107はスリープ管理手段、108はバッテリーを表す。基地局装置101は基地局配下の端末局と無線回線を介し、通信手段103およびアンテナ102により通信を行う。通信手段103は、通信に係わる信号処理を行う。通信制御手段106は、様々な制御パラメータを調整して通信手段103を制御する。ここでは、運用中の消費電力を削減するために、通信制御手段106内にスリープ管理手段107を備え、この手段を用いてスリープの管理を行う。これらの回路は電源回路105から電源を供給され(ここでは明示的に点線で表記)、その電源回路105は給電手段104より電力が供給される。
【0022】
図11(1) の構成では、常に給電手段104からは電力が給電されている。この意味で、給電手段104は外部の商用電源(AC 100V)やDC電源などに接続されているなどして、連続的な給電がなされている。一方、図11(2) の構成では、給電手段104からの給電はバッテリー108に入力され、電源回路105はバッテリーから電力が供給されている。商用電源やDC電源に接続されている場合は、実際には外部からの電力給電で電源回路105が動作することになるが、商用電源やDC電源に接続されていないときはバッテリー108からの給電で電源回路105は動作する。
【0023】
上述のスリープ制御に関する説明は、スリープ制御の手法に関する従来技術について説明したが、これらのスリープ制御はあくまでも漠然とした省電力化を目指すものであり、バッテリーの残量などを反映した制御とはなっておらず、機能的にもそのような構成になっていない。したがって、スリープの実施の可否判断は、例えばバッテリーで駆動している(商用電源やDC電源の供給がない)場合に省電力モードとしたり、トラヒックの負荷が非常に小さい、接続中の端末がないなどの実質的にスリープを行っても影響が出ない場合などを検出して省電力モードとするなど、単純な条件で判断がなされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2010−193290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
以上の従来構成では、基本的に基地局は商用電源に接続されたり、ないしはプライベートな無線ネットワークの基地局であるためにバッテリーを使いきって運用停止状態になった場合には、再度、商用電源に接続すればよいことを想定していた。このような場合、バッテリーで駆動している(商用電源やDC電源の供給がない)場合に省電力モードとすることも可能である。しかし、上述の3GやLTEのトラヒックを迂回させるためのWiFiネットワークを想定するならば、公衆無線インフラとしての責任上、バッテリーを使いきったからと言って運用停止状態になるのは極力避けなければならない。しかし、従来技術は言わばベストエフォート型の省電力制御であり、WiFiネットワークで太陽電池給電の基地局を利用するためには、より高度な省電力制御を行う必要がある。
【0026】
さらに従来技術においては、以下の基準で基地局のスリープ実施判断を行っていた。
(1) 接続する端末局が存在しない場合にスリープ
(2) 接続する端末局は存在するが、トラヒック量が極度に少ない場合にスリープ
もともとプライベートな無線ネットワークの基地局であれば、接続する端末局数は非常に限られており、(1) により十分に省電力効果を得ることが出来る。しかし、公衆無線アクセスの場合には基地局に接続する可能性のある端末局は膨大であり、深夜の限られた時間帯でなければ (1)の効果は期待できない。一方、(2) に関しても、接続中の端末局はある程度の周期で何らかの制御情報を基地局との間で交換することになるため、省電力効果を高めるためには通信トラヒック量に対する閾値を比較的高めに設定する必要がある。
【0027】
もともと基地局装置内においては、単に通信を停止したから消費電力がゼロになる訳ではなく、一旦回路を停止すると再起動するのに時間がかかるような回路が多く存在する。例えば、ベースバンド信号処理回路に供給するクロックや、無線周波数とベースバンド間の周波数変換のためのローカル発振器などは、電源投入後に所望の周波数誤差に安定させるのに要する時間が比較的長く、その分だけ電源再投入のタイミングを早める必要がある。これは、通信を行っていない時間帯の回路の動作を意味するため、当初の期待値よりも実際の省電力量は大幅に小さな値となってしまう。
【0028】
このような状況を考えると、非常に大きな時間率で無線アクセス禁止区間を設定する必要に迫られるが、この無線アクセス禁止区間の設定はユーザ端末のアクセス遅延に直結するために、ユーザが体感する通信品質を大幅に劣化させる可能性がある。したがって、無用かつ過剰な無線アクセス禁止区間の設定を避け、一方で運用停止を避けるために必要であれば積極的に無線アクセス禁止区間設定を行うなど、状況に応じた省電力制御を行うことが可能な基地局が求められている。
【0029】
本発明は、バッテリー駆動の基地局装置において、現時点のバッテリー残量に応じた省電力化制御を可能とし、さらに消費電力や今後の給電量予測による今後のバッテリー残量の増減予測に応じた省電力化制御を可能とする基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、給電手段と、該給電手段から給電される電力を蓄電するバッテリーと、該給電手段または該バッテリーの少なくとも一方から給電された電力を通信手段を含む各回路に給電する電源回路とを備えた無線通信システムの基地局装置において、バッテリーのバッテリー残量を取得するバッテリー残量取得手段と、所定の制御周期におけるバッテリーのバッテリー残量の計画値を管理するバッテリー残量計画値管理手段と、制御パラメータに応じて通信手段の消費電力を制御する通信制御手段と、所定の制御周期における制御パラメータの計画値を管理する制御パラメータ計画値管理手段と、制御パラメータ計画値管理手段を参照し、かつバッテリー残量取得手段から得られるバッテリー残量の実測値と、バッテリー残量計画値管理手段から得られるバッテリー残量の計画値とを比較し、バッテリー残量の実測値が計画値より小さい場合に制御パラメータ計画値管理手段にて管理される基準値の制御パラメータよりも省電力化する制御パラメータを設定する制御パラメータ設定手段とを備える。
【0031】
また、制御パラメータ設定手段は、バッテリー残量の実測値が前記計画値と等しい場合に、制御パラメータ計画値管理手段にて管理される基準値の制御パラメータを設定し、バッテリー残量の実測値が計画値より大きい場合に、制御パラメータ計画値管理手段にて管理される基準値の制御パラメータよりも非省電力化する制御パラメータまたは当該基準値の制御パラメータを設定する構成としてもよい。
【0032】
本発明の基地局装置において、通信制御手段は、運用中に、該基地局装置配下の端末局に対し無線アクセスの禁止時間を設定し、該設定された無線アクセス禁止時間中に該基地局装置の各回路の一部を停止させるスリープ制御により該基地局装置自体の省電力化を図るスリープ管理手段を備え、制御パラメータにはスリープ制御に係わる制御パラメータを含む。
【0033】
本発明の基地局装置において、少なくとも所定の制御周期における該基地局装置の消費電力の計画値を管理する消費電力計画値管理手段を備え、制御パラメータ設定手段は、バッテリー残量の実測値が計画値より小さい場合に行う制御パラメータの設定において、該基地局装置の消費電力の実測値を取得し、該消費電力の実測値が計画値より大きいときに該消費電力を該計画値よりも低く抑える省電力化を増大する制御パラメータを設定する構成である。
【0034】
本発明の基地局装置において、少なくとも所定の制御周期における給電手段の給電量の予測値を取得する給電量予測手段と、少なくとも所定の制御周期における給電手段の給電量の計画値を管理する給電量計画値管理手段とを備え、制御パラメータ設定手段は、バッテリー残量の実測値が計画値より小さい場合に行う制御パラメータの設定において、給電量の予測値が計画値より小さいときに該消費電力を該計画値よりも低く抑える省電力化を増大する制御パラメータを設定する構成である。
【0035】
また、給電手段が太陽電池であり、給電量予測手段は、通信手段を介して太陽電池による給電量に関する情報または給電量の予測に必要な天候に関する情報のいずれかまたはその両方を取得する構成である。
【0036】
本発明の基地局装置において、バッテリー残量取得手段は、給電手段からバッテリーに対する給電量の実測値を取得し、電源回路から該基地局装置の消費電力の実測値を取得し、給電量の実測値と消費電力の実測値の差分の累積値からバッテリー残量の変動量を算出し、バッテリー残量の初期値をもとにバッテリー残量を推定する構成である。
【0037】
本発明の基地局装置において、所定の制御周期は、24時間またはそれ以上の24時間単位周期である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、例えば太陽電池等とバッテリーの組み合わせで給電される基地局装置に対し、そのバッテリー残量に応じ、さらに消費電力や給電量予測を用いてバッテリー残量の管理精度を確保しながら適切な省電力化制御を実施することができる。その結果、公衆サービスの様な安定的なサービス提供が求められるシステムにおいても、バッテリー残量がなくなり不慮の運用停止状態が発生する確率を低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1における基地局装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における基地局装置の他の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施例2における基地局装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施例3における基地局装置の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施例4における基地局装置の構成例を示す図である。
【図6】本発明におけるバッテリー残量、給電量、消費電力の関係(理想状態)を示す図である。
【図7】バッテリー残量が理想状態と異なる場合の本発明の適用動作例を示す図である。
【図8】本発明におけるバッテリー残量、給電量、消費電力の関係(給電量が計画値を下回る場合)を示す図である。
【図9】従来技術における基地局のスリープ制御の概要(NAV利用)を示す図である。
【図10】従来技術における基地局のスリープ制御の概要(Quiet IE利用)を示す図である。
【図11】従来の基地局装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
まず、本発明の背景である基地局の消費電力と、省電力化のための動作原理を簡単に説明する。
【0041】
(消費電力の見積もり)
基地局の消費電力を見積もるために、まず、消費電力を左右する運用中の状態を以下に整理する。ここで特徴的なのは、一般的な回路はスリープ時には電力の供給を停止可能であるのに対し、クロックおよびベースバンドと無線周波数間の周波数変換を行うためのシンセサイザに関しては、電源投入後から周波数が安定するまでに時間を要するために、必ずしもスリープ時でも電源供給を停止できない状態があり得るという点である。
【0042】
(a) 信号送信時:ベースバンド信号処理回路に加え、クロック、シンセサイザ、送信ハイパワーアンプが動作(消費電力の最大値)
(b) 信号受信時:ベースバンド信号処理回路に加え、クロック、シンセサイザ、受信ローノイズアンプが動作(ローノイズアンプの消費電力はハイパワーアンプの消費電力よりも若干小さい)
(c) 受信待機時:実際には有意な信号を受信していないが、信号受信の有無を監視している状況であるため、近似的には(b) とほぼ同じ消費電力である
(d) 完全スリープ時:(インタフェース回路やスリープ管理用の一部の回路を除き)ベースバンド信号処理回路の大部分、送受信アンプ系を全て停止、クロック、シンセサイザ等も停止する(消費電力の最小値)
(e) 短時間スリープ時:(インタフェース回路やスリープ管理用の一部の回路を除き)ベースバンド信号処理回路の大部分、送受信アンプ系は全て停止しているが、クロック、シンセサイザ等は停止していない
(f) スリープ起床準備時:完全スリープではクロック、シンセサイザ等も停止しているが、これらの回路は周波数安定性を担保するため、実際の起床の50〜 100ms程度前から電源再投入をする必要があり、実効的には(e) とほぼ同じ消費電力となる
【0043】
以上の状態に対し、消費電力としては以下の電力値の状態間を遷移することになる。
1 :上記(a) に該当する最大消費電力
2 :上記(b),(c) に該当する消費電力
3 :上記(e),(f) に該当する消費電力
min :上記(d) に該当する最低消費電力
【0044】
なお、上記のPmin はスリープの如何に係わらず最低限必要となる消費電力である。基地局の各種運用パラメータを用いてこれらの消費電力の時刻tの時間率をそれぞれR1(t)、R2(t)、R3(t)、R4(t)(ここで、R1(t)+R2(t)+R3(t)+R4(t)=1)に制御できたとすれば、その際の時刻tの総消費電力Pcons(t) は以下の式(1) で求まる。
cons(t) =(P1−Pmin)R1(t)+(P2−Pmin)R2(t)
+(P3−Pmin)R3(t)+Pmin …(1)
【0045】
(太陽電池による給電量の予測について)
次に、太陽電池からバッテリーへの給電量の予測について説明する。太陽電池の発電量は、24時間周期で増減する。また、季節に依存して太陽の高度や日照時間が変化したり、さらには梅雨時などの晴天率の低さなども考慮すれば、太陽電池による24時間以上の長時間平均でみた平均発電量は1年を通じて変化する。このような太陽電池による発電量の変動のデータベースを参照すれば、未来の発電量の計画値を取得することは可能である。また、天気予報などの外部情報をネットワーク経由で取得すれば、さらに高い精度で予測することが可能である。このようにして予測される発電量に対し、実際の制御においては充電に伴うロスを考慮して、バッテリーへの給電量の計画値が意味を持ち、そこで現在から時間t経過後の給電量の設計上の計画値をCdes(t)として議論する。なお、この給電量の設計上の計画値Cdes(t)は、時間と共に変動する量であるが、ある程度の時間周期での制御を前提とするため、ここでの時刻に関する引数tは連続的な時間を表すものではなく、例えば10分間隔、30分間隔、1時間間隔など、ある程度の時間間隔Δt毎の離散的な値をとる関数として扱われる。
【0046】
(消費電力の予測について)
次に、消費電力に関する予測について説明する。消費電力は、上記の式(1) により与えられるが、実際のR1(t) 、R2(t) 、R3(t) の値はネットワークを流れる(ダウンリンクおよびアップリンクのそれぞれの)トラヒック量、基地局のスリープや各種運用パラメータ値により定まる。
【0047】
これらの中で、ネットワークを流れるトラヒック量の時間変動は統計的なデータから予測することが可能である。もちろん、駅等の公共施設、商店街、住宅街などの場所の条件、さらには曜日や祭日、夏休みなどの条件に時間変動量は依存するが、装置上の初期設定で与える計画値に加えて、逐次、学習データを加味して計画値を更新するなどの工夫を行えば、条件毎に精度の高いトラヒック量の時間変動計画値が得られるようになる。
【0048】
この予測されるトラヒック変動に追従するために、上述の所定の時間刻みΔt間隔で基地局の運用パラメータを変動させることにする。ここでの運用パラメータとしては、基地局のスリープ制御に関するパラメータや、その他のアクセス制御などに関連したパラメータであってもよい。例えば、従来技術におけるスリープ制御としてビーコン信号のQuiet フィールドを用いてスリープを行う場合を例に取れば、ビーコン周期Tb 、 Quietフィールドにて指定される休止時間Ts の2つのパラメータが制御パラメータとなる。
【0049】
また、NAVを仮想的に設定して端末側のアクセスを禁止する場合のスリープ制御では、省電力化のためのNAVを設定する頻度、1回のNAVの時間長などがパラメータとなる。これらの値の他にも、例えば膨大なダウンリンクトラヒックに対して強制的なスリープを実施した場合、当然ながら送信待ちの膨大な量の無線パケットが送信バッファ内に溜まることが予想される。しかし、実際にはある程度以上の時間が経過したデータはユーザにとって無意味なものとなっている可能性が高く、送信バッファのバッファの深さ(記憶容量)を動的に変更し、ダウンリンクのトラヒック負荷に応じて過剰なトラヒックをバッファオーバフローによる廃棄とすることも可能である。上述の制御パラメータには、このようなバッファ容量値やその制御を行うトラヒック負荷の閾値なども当然含めて考えればよい。
【0050】
このようにして、ネットワークを流れるトラヒック量の予測と、その計画値を考慮した制御パラメータの設定値を仮定すれば、その条件での消費電力が予測できる。ないしは設計上の目標とする消費電力に対する制御パラメータ設定値を算出すると考えてもよい。このようにして、現在から時間t経過後の消費電力の設計上の計画値をPdes(t)とする。なお、トラヒック量が多い時間帯はスリープ等の省電力化は殆ど期待できないが、夜間などトラヒック量が少ない時間帯はスリープを多用することで省電力化を図ることができる。その具体的な設定方法はいかなる手法を用いても構わない。
【0051】
(安定運用のための必要条件)
このようにして得られる消費電力の設計上の計画値Pdes(t)と、給電量の設計上の計画値Cdes(t)の間には、安定運用のための条件が存在する。これは、運用中にバッテリー残量がゼロとならないことを保証するための条件である。この安定運用条件の管理はある長時間周期で行う必要があるが、一般に24時間毎の時間変動の差分は、1日の24時間以内の時間変動に比べて小さいので、管理を行なう周期は24時間の整数倍が理想的である。この制御周期をTcont(例えば24時間、3日間等)とする。そして、この制御周期Tcontの時間経過後に、バッテリーの残量が現在時点のバッテリー残量よりも減ることがないとすることで、定常的な放電状態を回避することを考え、以下の条件式を設定する。
tt+Tcont{Cdes(t')−Pdes(t')}dt' ≧0 …(2)
【0052】
また、時刻tでのバッテリー残量の設計上の計画値Bdes(t)については、制御の起点となる時刻t0 に対しt0 ≦t≦t0 +Tcontとなる任意の時刻tでのバッテリー残量との間には、以下の関係式が成り立つ。
des(t)=Bdes(t0)+∫t0t{Cdes(t')−Pdes(t')}dt' …(3)
【0053】
以上の式において、厳密にはバッテリー容量の上限を超えた蓄電は不可能であるし、バッテリー容量がマイナスの値をとることはあり得ない(バッテリー残量がゼロになると運用が停止される)。したがって、給電量や消費電力の計画上の計画値は、これらの条件を考慮して設計する必要があるが、比較的余裕を持った容量のバッテリーを利用し、さらには初期状態で十分な充電がなされていたとするならば、これらの影響は十分に小さいものと予想される。ここでは簡単のために、これらの影響は無視できるものとして説明を行う。
【0054】
また、以上の式では積分形式で表現しているが、実際には離散時間Δt間隔で制御を行うので、その時間毎の加算・総和の形式で表記するのが適切かもしれないが、簡単のため以後も積分形式で説明を続ける。
【0055】
(消費電力の初期計画値とその補正について)
以上の条件、式(2) を満足するように、消費電力の計画上の計画値Pdes(t)を設計する必要があるが、設計段階からいきなり式(2) を満たす解を得ることは困難であるため、一旦、基地局装置の消費電力の計画上の計画値を初期計画値des(t)と仮に設定し、これに対する補正を以降の処理において行うこととする。消費電力の初期計画値は、通常は節電のための制御を若干控えめに設定し、この初期計画値が蓄電能力の限界を超えている場合に必要となる計画値補正用の係数(以下「節電係数」という)を算出することとする。
【0056】
この節電係数α(t0)を以下の式で定義する。
α(t0)=Min{1,(∫t0t0+Tcontdes(t')dt'−Pmincont)
/(∫t0t0+Tcontdes(t')dt'−Pmincont) } …(4)
この節電係数を用いて、消費電力の計画値を以下の様に定める。
des(t)=α(t0){des(t)−Pmin}+Pmin …(5)
【0057】
このようにして、制御を行う周期Tcont毎にバッテリーの残量がもとの残量に一致するように設計することで、1日24時間内ではバッテリー残量が時間と共に変化するが、同じ時刻であれば季節が変ってもバッテリー残量が変化しないような消費電力計画を定めることができる。なお、ここでの時刻t0 は制御の起点の時刻を表す。節電係数の変更は、逐次行うことも可能であるが、単純には制御を行う周期Tcont毎に見直し変更を行うことにすればよい。
【0058】
このようにすると、式(3) で与えられる設計上のバッテリー残量の計画値Bdes(t)と、実際の現在のバッテリー残量B(t) を比較し、更なる低消費電力化の必要性を判断することが可能になる。また、天気予報や日照時間予測などの未来の情報を入手可能であれば、給電量の設計上の計画値Cdes(t)も日々の変動を取り入れた高精度な予測値Cest(t)に置き換え可能であり、低消費電力化の必要性を更に正確に判断できるようになる。
【0059】
(具体的な制御方法について)
簡単な制御として、式(3) で与えられる設計上のバッテリー残量の計画値Bdes(t)と、実際の現在のバッテリー残量B(t) を比較し、節電係数α(t0)を補正する追加節電係数β(t) を算出する。最も単純な例では、以下の式で与えてもよい。
β(t) =B(t)/Bdes(t) (for B(t)<Bdes(t))
=1 (for B(t)≧Bdes(t)) …(6)
【0060】
この追加節電係数β(t) を用いて、目標とする消費電力Ptarget(t) は以下の式で与えられる。
target(t) =β(t){Pdes(t)−Pmin}+Pmin …(7)
【0061】
注意すべき点は、節電係数α(t0)はある程度の周期(例えばTcont)でステップ型に変動する関数として定義されるが、β(t) はそれよりも短い制御、設計の最小単位である時間Δt 単位で逐次見直し・変更を行う関数となっている。
【0062】
また、天気予報や日照時間予測などの未来の予測情報を用いた給電量の高精度な予測値Cest(t)を用いることで、以下のように制御を行うことも可能である。
γ(t) =Min{1,(∫tt+Tcont est(t')dt'−Pmincont)
/(∫tt+Tcont des(t')dt'−Pmincont) } …(8)
target(t) =γ(t){Pdes(t)−Pmin}+Pmin …(9)
または、式(6) を考慮して、以下の式を用いてもよい。
target(t) =β(t)γ(t){Pdes(t)−Pmin}+Pmin …(10)
【0063】
このようにして得られる目標とする消費電力Ptarget(t) および予測されるトラヒック量を考慮した上で、その消費電力Ptarget(t) を実現可能なR1(t)、R2(t)、R3(t)を設計し、その時間率を実現可能な制御パラメータの組み合わせを導出する。
【0064】
(目標消費電力からの時間率の求め方)
例えば、ダウンリンクでの単位時間当たりのトラヒック量が予測され、それらの伝送速度の分布がモデル化できると、ダウンリンクの単位時間当たりの送信時間が求まる。例えば、IEEE802.11a/g を例に取れば、利用可能な伝送速度は6Mbps (BPSK R=1/2)、12Mbps (QPSK R=1/2)、24Mbps (16QAM R=1/2)、36Mbps (16QAM R=3/4)、48Mbps (64QAM R=2/3)、54Mbps (64QAM R=3/4)などである。ユーザの分布を一様だとすれば、これらの分布p1 〜p6 (確率の条件から総和が1となる)がどのようになるかを計算できる。
【0065】
さらに、実際のトラヒックをモニタすることで、無線回線上でのパケット長の分布が計算できる。例えば、ユーザデータとして64Byte、 256Byte、 512Byte、1518Byteなどのパケット長がどのように分布するのか、さらには無線回線上でのACKなどの制御情報なども、どの程度の頻度で送信されるかをモデル化できる。基準となるトラヒック量を適当に定めて、モデル化した条件でのダウンリンクでの送信時間を計算すると、時間率R1(t)を決定することができる。単純化すれば、トラヒック量が半分になれば時間率R1(t)も半分になるなど想定すれば、その他のトラヒック量に対しても時間率R1(t)を計算できる。ただし、ビーコン信号などはトラヒックの有無に関係ないので、この部分は固定値として扱い、それに上乗せする形でトラヒック量に依存する時間を求めて時間率R1(t)を決定することが好ましい。
【0066】
次に、基地局のスリープとしてビーコン信号内のQuiet フィールドを用いる場合には、ビーコン周期Tb 、Quiet フィールドにて指定される休止時間Ts を用いることで、以下の関係式が成り立つ。
4(t)= (Ts−Tp)/Tb …(11)
3(t)=Tp/Tb …(12)
【0067】
ここで、Tp はクロックに電源再投入してから所望の周波数安定度になるまでの時間(概ね50ms程度と予想)を表す。なお、従来技術において説明したNAVを用いた短時間のスリープを、ビーコン周期Tb 中に時間TNAV の割合で実施する場合には、式(12)は以下のように書き換えられる。
3(t)= (TP+TNAV)/Tb …(13)
【0068】
このようにして、残りのR2(t)を以下の式で求める。
2(t)=1−R1(t)−R3(t)−R4(t) …(15)
ここで、トラヒック量が定まると時間率R1(t)は自動的に定まると仮定し、さらに目標消費電力Ptarget(t) も与えられるとする。さらに、時間率R3(t)は式(12)で与えられるとすれば、目標消費電力とパラメータTb 、Ts に対する条件式は以下のようになる。
target(t) =(P1−Pmin) R1(t)
+(P2−Pmin){1−R1(t)−Tp/Tb−(Ts−Tp)/Tb
+(P3−Pmin)Tp/Tb+Pmin …(16)
このようにして、目標消費電力に対応した制御パラメータの算出が可能となる。
【0069】
以上の説明では省電力化を行うための係数α,βおよびγは最大値が1となるように定義してきたが、これは予定よりも電力が余りそうな場合であり、さらなる節電の必要がない場合であっても、当初の設計以上の消費電力を許さないという、バッテリー残量を確実に担保するための条件であった。すなわち、安全側の設計として最大値を1と設定していたのであるが、本来であればスリープしない方が好ましい状況であっても、設計時には余裕を持って運用できるようにスリープを行う設定としている場合もあり、係数α、βおよびγの最大値が1以上の値をとるように修整した制御とすることも可能である。
【0070】
例えば、式(4) 、式(6) および式(8) では係数α,βおよびγが1以下の値となるような制限を設定していたが、この上限値を1以上の固定値に設定しても構わない。また、式(6) を例にとれば、B(t)/Bdes(t) が1以上の値の場合には、0より大きく1以下の定数δを用い、B(t)/Bdes(t) のδ乗とする(以下の式では^δと表記)など、1を超えた値に対して係数βの値の増加量を抑えるような設定としても構わない。
β(t) =B(t)/Bdes(t) (for B(t)<Bdes(t))
= (B(t)/Bdes(t))^δ (for B(t)≧Bdes(t)) …(17)
【0071】
さらに、条件判断として、バッテリー残量が計画値以上ではあるが十分な余裕には至っていない場合に対し、係数βを1とする、下記の条件式を用いても構わない。
β(t) =B(t)/Bdes(t) (for B(t)<Bdes(t))
=1 (for ε>(B(t)/Bdes(t))^δ≧1)
= (B(t)/Bdes(t))^δ(for (B(t)/Bdes(t))^δ≧ε)
…(18)
このような対処は、α,γにおいても同様である。
【0072】
このような1以上の値を係数として設定する場合(非省電力化する制御パラメータ)のメリットは、通信における品質を改善する点にある。基地局がスリープしている期間においては、端末局側においてアップリンクで送信すべきデータが存在していたとしても、直ぐには送信を開始することはできない。WiFiの場合では、通常はCSMA/CAのアクセス制御のメカニズムの中で、他局が通信状態(ビジー状態)でアクセスできない場合を除けば、比較的には速やかにデータ送信が可能であり、この結果として良好な遅延特性を得ることができた。しかし、基地局のスリープ時間はそのまま遅延時間として付加されるので、その分だけ特性が劣化するリスクが存在する。本発明では、そのようなリスクは考慮しつつも、それ以上に基地局を動作させるのに必要な電力が底をつき、サービス停止により通信できなくなるリスクの方が大きいと考えたものであり、したがって必要に応じてスリープを実施する半面、可能な範囲ではスリープ時間を圧縮するのが好ましく、このような1以上の係数が効果的である場合がある。
【0073】
なお、式(4) 、式(6) 、式(8) および式(18)などで各節電係数の算出方法の一例を示したが、これらの節電係数は所定の関数形で表されるものである必然性はなく、所定のデータテーブルを用いて上述の式の引数に相当する値に対して数値的に係数を与える構成とすることも可能である。
【0074】
次に、このような設計に基づいたバッテリー残量の時間的な変動について、図を参照して説明する。
図6は、本発明におけるバッテリー残量、給電量、消費電力の関係(理想状態)を示す図である。
【0075】
図6において、横軸は時間(時刻)、縦軸はバッテリー残量、給電量、消費電力を表す。ここでは制御周期Tcontを24時間(1日)に設定した場合を仮定し、深夜0時から翌日の同時刻までを示している。グラフの縦軸はそれぞれの量の変動の概要を示すために、便宜上数値を表示しているが、バッテリー残量の初期値を0に、かつ給電手段からの給電量の最大値が 100となるように目盛りを調整して表した。したがって、バッテリーの容量に対し、初期状態(時刻0時時点)で十分に充電がなされているものと仮定すれば、バッテリー残量がグラフ上ではマイナスで表示されていても、これはバッテリーに蓄電されている電力が空になっていることを表したものではない。また、図中の「●」は給電量、「○」は消費電力、「■」はバッテリー残量の時間変動を表す。
【0076】
例えば、給電手段として太陽電池を想定すれば、給電量「●」は夜間は0であり、昼間に最大値となる。一方、消費電力「○」は、無線回線上に流されるトラヒック量に依存して増減し、昼間に加え特に夕方から深夜0時頃にかけて高い値を示し、その後も消費電力は0とはならず、低い値で推移する。バッテリー残量「■」は、深夜の内は給電量よりも消費電力の方が大きいために午前7時頃まで下降し、それ以後日の出と共にバッテリー残量が増加する。しかし、夕方になって給電量を消費電力が上回ると再度下降し、翌日の深夜0時にもとのバッテリー残量に戻る。
【0077】
ここで重要なことは、制御周期Tcont毎にバッテリー残量が同じ値に戻る点である。この特長により、バッテリー残量は空とはならず、継続的な運用が可能となる。なお、バッテリーの残量は時間と共に大きく変動するため、その変動量に対して十分大きな容量を持つものでなければならない。バッテリーの容量が不十分だと、給電手段から得られる給電を効果的にバッテリーに蓄電できないため、無駄な電力が発生してしまう。また、バッテリー残量が最も小さくなる時点でバッテリー残量が空にならないように、初期状態で十分な充電がなされているものとする。
【0078】
図7は、バッテリー残量が理想状態と異なる場合の本発明の適用動作例を示す。ここでは、バッテリー残量が初期状態(時刻0時)時点で、理想的な値よりもグラフ上で 100だけ低い状態を示す。その他の給電量には図6と変化がないものと仮定している。
【0079】
本来のバッテリー残量の計画値(図6における「■」でプロットされたライン)よりも実際のバッテリー残量が低い値にあることが検出された場合には、制御パラメータを調整して、消費電力が抑えられるようにして運用する。図6の場合に比べて十数パーセントの消費電力を削減することで、24時間後にはバッテリー残量を理想的な計画値に一致させている。ここでは時刻0時に理想的な値に復帰する例を示したが、一般には各時刻において逐次バッテリー残量と理想的な計画値(図中では一点鎖線で表示)との差分を検出し、差分の量に応じた制御パラメータの補正を行い、バッテリー残量の理想的な計画値に漸近させる制御が行われる。
【0080】
図8は、本発明におけるバッテリー残量、給電量、消費電力の関係(給電量が計画値を下回る場合)を示す。ここでは、バッテリー残量が初期状態(時刻0時)時点で理想的な計画値に一致しているが、例えば太陽電池を想定した場合に翌日の曇天予想により、給電量が80%値に低下する状態を示す。バッテリー残量は初期状態(時刻0時)では理想的な状態であるが、給電量が計画値を下回るためにバッテリー残量は徐々に低下し、その累積値として24時間後には計画値から約−200 のレベルになると予測している。この状態を回避するためには、制御パラメータを調整し、一点鎖線で表示したバッテリー残量となるように消費電力を抑制する。
【0081】
このような制御により、バッテリー残量が理想的な計画値に常に一致するように継続することで、例えば天候などの要因で運用停止とならない安定動作が可能な基地局装置を提供することが可能になる。以下では、以上の動作原理に対する具体的な実施形態を示す。
【実施例1】
【0082】
図1は、本発明の実施例1における基地局装置の構成例を示す。
図1において、1は基地局装置、2はアンテナ、3は通信手段、4は給電手段、5はバッテリー、6は電源回路、7はバッテリー残量取得手段、8はバッテリー残量計画値管理手段、9は制御パラメータ設定手段、10は制御パラメータ計画値管理手段、11は通信制御手段、12はスリープ管理手段を示す。
【0083】
通信手段3は、アンテナ2を介して配下の端末局との間で無線通信を行う。また、通信手段3は、ここでは明示的に図示していないが、有線または無線回線を介してネットワークとの通信を行う機能も備えている。例えば、光ファイバやイーサネット(登録商標)ケーブルなどが接続されていれば、有線経由でネットワークの通信を行うこともできるし、上述の無線通信を行う機能を用いてネットワーク側と無線通信を行っても構わない。無線通信でネットワーク側と通信する際には、配下の端末局との通信に用いる無線規格および周波数帯を用いてもよいし、異なる無線規格や周波数帯を用いても構わない。異なる無線規格および周波数帯を用いる場合には、別のアンテナを介して通信を行っても構わない。さらに、必ずしも接続する先はネットワークである必要もなく、何らかのサービスを行うためのサーバやPC等に接続し、ネットワークとは孤立しながらも局所的に閉じたサービスを提供していても構わない。
【0084】
この通信手段3およびその他の各部の動作には電力の供給が必要であり、電源回路6より図示しない電源線を介して各部に対して電源が供給される。電源回路6はバッテリー5に接続されており、さらにそのバッテリー5には給電手段4から電力が給電される。この給電手段4としては、例えば太陽電池の様な比較的高出力の給電手段であっても構わないし、風力による発電や振動などの自然エネルギーをもとに発電したものであっても構わない。さらには、電波を受信して得られるものでも構わない。この電波による給電とは、無線電力伝送を意図した積極的な給電システムであってもよいし、放送や無線通信の電波を受信して発電する環境発電技術を用いたものであっても構わない。さらには、例えば燃料電池の様な燃料を利用するものから、有線で微小な電力を継続的に給電するものであっても構わない。ただし、図6に示したように、給電手段4がもつ給電能力の平均値(例えば1日平均)が消費電力のピーク値よりも低く、バッテリー5を介さずに直接的に給電手段4から電源回路6に給電することでは対処できないものとする。
【0085】
バッテリー5に接続されるバッテリー残量取得手段7は、バッテリー5のバッテリー残量を逐次取得して制御パラメータ設定手段9に通知する。制御パラメータ設定手段9は、現時点のバッテリー残量と、バッテリー残量計画値管理手段8に記憶されたバッテリー残量計画値の時間変動データから取得した現時点のバッテリー残量計画値とを比較する。
【0086】
ここで、バッテリー残量の実測値がバッテリー残量計画値よりも大きければ、バッテリー5のバッテリー残量は問題ないので、制御パラメータ設定手段9は制御パラメータ計画値管理手段10から読み出したその時刻の制御パラメータの計画値を通信制御手段11に設定する。一方、バッテリー残量の実測値がバッテリー残量計画値よりも小さければ、バッテリー5のバッテリー残量不足を検出し、制御パラメータ設定手段9は制御パラメータ計画値管理手段10からその時刻の制御パラメータの計画値を読み出し、バッテリー残量不足に応じたより節電(省電力)効果の高い制御パラメータに設計変更し、その値を通信制御手段11に設定する。あるいは、制御パラメータ計画値管理手段10にバッテリー残量不足に応じた複数の制御パラメータを記憶しておき、制御パラメータ設定手段9はバッテリー残量不足に応じて節電(省電力)効果の高い制御パラメータを選択し、通信制御手段11に設定する構成でもよい。
【0087】
通信制御手段11では、その内部にスリープ管理手段12を備えており、スリープに関する制御パラメータからその他の運用上の制御パラメータまで含めて、制御パラメータ設定手段9から設定された各種制御パラメータを用いて通信手段3を制御し、必要な省電力制御を実施する。
【0088】
なお、ここでの制御パラメータの例としては、例えばWiFiを前提とした従来技術におけるNAVを用いたスリープ制御の場合には、NAVにより送信停止となる時間長や送信停止設定を行う頻度などの制御パラメータがこれに該当する。さらに、ビーコン信号に収容されたQuietフィールドを用いるスリープ制御であれば、ビーコンフレーム周期とQuietフィールドにより指示される送信停止期間などがこれに該当する。さらには、CSMA/CAによるアクセス制御の各種パラメータとして、ランダムバックオフに係わる制御パラメータなどを動的に制御しても構わない。もちろん、WiFi以外のシステムにおいても同様であり、WiMAXなどのようにTDMAフレームを用いた基地局集中制御を前提とするならば、アップリンクおよびダウンリンクにて帯域割り当てがなされていない時間帯は、クロックやシンセサイザ等を除けば送信および受信の機能を停止することも可能である。また、帯域割り当てに関するスケジューリング情報すら送信しなければ、1TDMAフレームまるごと送受信動作を休止することも可能である。このように、対象とする無線規格毎にスリープ制御ないしは送受信動作の停止を実現するための手法や制御パラメータは様々であるが、これらの如何なる制御パラメータを用いるものであっても構わない。
【0089】
図2は、本発明の実施例1における基地局装置の他の構成例を示す。
ここでは、給電手段4とバッテリー5と電源回路6が相互に直接電力のやり取りができる構成となっており、図1の構成のように常にバッテリー5を介して給電手段4と電源回路6が接続される構成とは異なる。例えば、十分な給電能力がある時間帯であれば、直接、給電手段4から電源回路6に供給しても構わない。しかし、これらは電源系の構築方法の差でしかなく、実際に給電量が消費電力を下回る時にはバッテリー5からの給電により電源回路6が動作するため、本発明にとっては本質的な差ではない。
【0090】
また、現時点のバッテリー残量の実測値がバッテリー残量計画値よりも大きいときは、制御パラメータ計画値管理手段10の制御パラメータの設計変更は不要であるので、制御パラメータ計画値管理手段10から基準となる制御パラメータを通信制御手段11に直接設定する構成としてもよい。
【実施例2】
【0091】
図3は、本発明の実施例2における基地局装置の構成例を示す。
図3において、実施例2の特徴は、図1に示す実施例1の構成に加えて消費電力計画値管理手段13を備え、制御パラメータ設定手段9が通信手段3から消費電力情報を逐次取得し、さらに消費電力計画値管理手段13から現時点における消費電力の計画値を取得し、スリープ管理手段12に設定する制御パラメータの調整に反映させる構成にある。
【0092】
消費電力の管理は、ある程度の時間平均を行った値を用いるが、その時間平均値で見たときの計画値との差分がある場合には、将来的にはバッテリー残量の増減となって表れる。そのため、制御パラメータ設定手段9は、実施例1と同様にバッテリー残量の計画値と実測値の差分から節電の必要性の有無を把握すると共に、消費電力の計画値と実測値の差分からその節電の必要性が今後更に厳しくなるのか緩和されるのかの予測結果を加味し、微調整された最適な制御パラメータを算出または選択して通信制御手段11に設定する。
【0093】
バッテリー残量が計画値より小さく、節電(省電力)効果の高い制御パラメータを設定する場合に、消費電力の実測値が計画値よりも大きいために今後、省電力化の必要性が増大することが予測される場合には、1より小さい所定の係数を節電係数γ(t) として利用する。一方、消費電力の実測値が計画値よりも小さいために今後、省電力化の必要性が縮小することが予想される場合には、1または1より大きい所定の係数を節電係数γ(t) として利用する。その他の部分に関しては、実施例1と同様である。なお、本実施例では通信手段3から消費電力情報を逐次取得するとしたが、電源回路6から取得するとする構成であっても構わない。
【実施例3】
【0094】
図4は、本発明の実施例3における基地局装置の構成例を示す。
図4において、実施例3の特徴は、図1に示す実施例1の構成に加えて給電量予測手段14および給電量計画値管理手段15を備え、制御パラメータ設定手段9は給電量予測手段14から給電手段4における今後の給電量の予測値を取得し、さらに給電量計画値管理手段15から給電量の計画値を取得し、スリープ管理手段12に設定する制御パラメータの調整に反映させる構成にある。
【0095】
給電量予測手段14は、通信手段3を介して給電量の予測を行うために必要になる情報を収集し、その情報をもとに給電量を予測する。ここで収集する情報の例としては、例えば給電手段4として太陽電池を想定するならば、天気予報、日照時間予報等の情報が該当する。例えば、1時間単位ないしは数時間単位で行われる雲の量または雲の厚さ等の天気予報情報が得られれば、快晴状態を 100%とした時の太陽光の強さを予測することは可能であり、この予測される太陽光の強さから給電量に換算することができる。1日中快晴状態が続く場合の日照時間や、太陽の高度(角度)に依存した給電量の季節毎の増減は、外部からの情報収集に頼る必要はないので、これらの情報は制御パラメータ計画値において反映されるものと考えられるが、季節毎の変動も外部より取得する構成とすることも可能である。また、給電手段4として風力発電などを想定する場合には、天気予報における風速情報などの情報が該当する。
【0096】
今後の給電量の予測値と計画値との間に差分がある場合は、将来的にはバッテリー残量の増減となって表れる。そのため、制御パラメータ設定手段9は、実施例1と同様にバッテリー残量の計画値と実測値の差分から節電の必要性の有無を把握すると共に、今後の給電量の予測値と計画値の差分から、更なる節電(省電力化)が必要であるか否かを判断し、微調整された最適な制御パラメータを算出または選択して通信制御手段11に設定する。
【0097】
バッテリー残量が計画値より小さく、節電(省電力)効果の高い制御パラメータを設定する場合に、給電量の予測値が計画値よりも小さいために今後、省電力化の必要性が増大することが予測される場合には、1より小さい所定の係数を例えば節電係数β(t) 、γ(t) などに乗算する。一方、給電量の予測値が計画値よりも大きいために今後、省電力化の必要性が縮小することが予想される場合には、1より大きい所定の係数を例えば節電係数β(t) 、γ(t) などに乗算する。その他の部分に関しては、実施例1と同様である。このようにして、今後の給電量を予測した制御パラメータの最適化を実施する。
【0098】
また、実施例2に示す消費電力の実測値と計画値の差分から省電力化の増大または縮小を行う方法と、実施例3に示す給電量の予測値と計画値の差分から省電力化の増大または縮小を行う方法とを組み合わせて、より節電(省電力)効果の高い制御パラメータを算出または選択して通信制御手段11に設定する構成としてもよい。例えば、バッテリー残量が計画値よりも小さいために、節電(省電力)効果の高い制御パラメータを設定する場合に、消費電力が計画値よりも大きく、かつ給電量の予測値が計画値よりも小さい場合には、さらに節電(省電力)効果の高い制御パラメータを設定するようにする。
【実施例4】
【0099】
以上の実施例は、バッテリー残量はバッテリー5から直接取得しており、リアルタイムの消費電力や給電量を直接収集し、その情報をもとにバッテリー残量を算出する構成ではない。これは、給電量と消費電力の差分の累積値は、最終的にはバッテリー残量としてモニタできるので、補正・制御の最小単位であるΔt周期毎でみれば、必ずしも瞬時の消費電力や給電量を知る必要はない。しかし、バッテリー残量をモニタする代わりに、消費電力および給電量を直接収集し、その情報をもとにバッテリー残量値を算出することは可能である。具体的には、バッテリー5のバッテリー残量の正確な評価が困難な場合には、消費電力および給電量を直接収集し、それらの差分を累積することでバッテリー残量の変化量を知ることが可能である。
【0100】
例えば、式(3) と同様に、時刻tでの消費電力の実測値をP(t) 、給電量の実測値をC(t) とし、制御の起点となる時刻t0 に対して、t0 ≦t≦t0 +Tcontとなる任意の時刻tでのバッテリー残量B(t) は、以下の関係式で求まる。
B(t)=B(t0)+∫t0t{C(t')−P(t')}dt' …(19)
したがって、適当な時刻でのバッテリー残量の初期値をB(t0)とすれば、その初期値からの差分の累積値としてバッテリー残量を把握することが可能である。
【0101】
図5は、本発明の実施例4における基地局装置の構成例を示す。
図5において、基本的な構成は図1に示す実施例1と同様であるが、給電手段4および電源回路6からバッテリー残量取得手段7に対して、給電量および消費電力等の情報を与える。バッテリー残量取得手段7では、式(17)を用いてバッテリー残量の精度の高い値を取得することが可能である。ただし、測定誤差の蓄積などにより累積誤差が大きくなることを回避するため、バッテリー残量取得手段7はバッテリー5から、適宜、バッテリー残量をモニタする構成としてもよい。なお、式(17)での初期値としては、適切な値を設定可能であれば任意のバッテリー残量を初期値としても構わないが、それが困難であればバッテリー5を一旦フル充電状態にしておき、初期値自体はフル充電時のバッテリー残量に対し適当な係数(例えば80%値であれば0.8 など)をかけた値を初期値として代用しても構わない。
【0102】
実施例4は、実施例1の構成をもとに説明したが、実施例2の構成、実施例3の構成、さらに実施例2と実施例3の組み合わせの構成にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 基地局装置
2 アンテナ
3 通信手段
4 給電手段
5 バッテリー
6 電源回路
7 バッテリー残量取得手段
8 バッテリー残量計画値管理手段、
9 制御パラメータ設定手段
10 制御パラメータ計画値管理手段
11 通信制御手段
12 スリープ管理手段
13 消費電力計画値管理手段
14 給電量予測手段
15 給電量計画値管理手段
101 基地局装置
102 アンテナ
103 通信手段
104 給電手段
105 電源回路
106 通信制御手段
107 スリープ管理手段
108 バッテリー
201,202 ビーコン信号
203,204 スリープ制御パケット
205 基地局の状態
206 端末局の状態
207 基地局の状態
208 端末局の状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電手段と、該給電手段から給電される電力を蓄電するバッテリーと、該給電手段または該バッテリーの少なくとも一方から給電された電力を通信手段を含む各回路に給電する電源回路とを備えた無線通信システムの基地局装置において、
前記バッテリーのバッテリー残量を取得するバッテリー残量取得手段と、
所定の制御周期における前記バッテリーのバッテリー残量の計画値を管理するバッテリー残量計画値管理手段と、
制御パラメータに応じて前記通信手段の消費電力を制御する通信制御手段と、
前記所定の制御周期における前記制御パラメータの計画値を管理する制御パラメータ計画値管理手段と、
前記制御パラメータ計画値管理手段を参照し、かつ前記バッテリー残量取得手段から得られるバッテリー残量の実測値と、前記バッテリー残量計画値管理手段から得られるバッテリー残量の計画値とを比較し、バッテリー残量の実測値が計画値より小さい場合に前記制御パラメータ計画値管理手段にて管理される基準値の制御パラメータよりも省電力化する制御パラメータを設定する制御パラメータ設定手段と
を備えたことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局装置において、
前記制御パラメータ設定手段は、
前記バッテリー残量の実測値が前記計画値と等しい場合に、前記制御パラメータ計画値管理手段にて管理される基準値の制御パラメータを設定し、
前記バッテリー残量の実測値が前記計画値より大きい場合に、前記制御パラメータ計画値管理手段にて管理される基準値の制御パラメータよりも非省電力化する制御パラメータまたは当該基準値の制御パラメータを設定する構成である
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基地局装置において、
前記通信制御手段は、運用中に、該基地局装置配下の端末局に対し無線アクセスの禁止時間を設定し、該設定された無線アクセス禁止時間中に該基地局装置の各回路の一部を停止させるスリープ制御により該基地局装置自体の省電力化を図るスリープ管理手段を備え、
前記制御パラメータには前記スリープ制御に係わる制御パラメータを含む
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基地局装置において、
少なくとも前記所定の制御周期における該基地局装置の消費電力の計画値を管理する消費電力計画値管理手段を備え、
前記制御パラメータ設定手段は、前記バッテリー残量の実測値が計画値より小さい場合に行う制御パラメータの設定において、該基地局装置の消費電力の実測値を取得し、該消費電力の実測値が計画値より大きいときに該消費電力を該計画値よりも低く抑える省電力化を増大する制御パラメータを設定する制御パラメータを設定する構成である
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基地局装置において、
少なくとも前記所定の制御周期における前記給電手段の給電量の予測値を取得する給電量予測手段と、
少なくとも前記所定の制御周期における前記給電手段の給電量の計画値を管理する給電量計画値管理手段と
を備え、
前記制御パラメータ設定手段は、前記バッテリー残量の実測値が計画値より小さい場合に行う制御パラメータの設定において、前記給電量の予測値が計画値より小さいときに該消費電力を該計画値よりも低く抑える省電力化を増大する制御パラメータを設定する制御パラメータを設定する構成である
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基地局装置において、
前記給電手段が太陽電池であり、
前記給電量予測手段は、前記通信手段を介して前記太陽電池による給電量に関する情報または給電量の予測に必要な天候に関する情報のいずれかまたはその両方を取得する構成である
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項7】
請求項1に記載の基地局装置において、
前記バッテリー残量取得手段は、前記給電手段から前記バッテリーに対する給電量の実測値を取得し、前記電源回路から該基地局装置の消費電力の実測値を取得し、給電量の実測値と消費電力の実測値の差分の累積値から前記バッテリー残量の変動量を算出し、前記バッテリー残量の初期値をもとに前記バッテリー残量を推定する構成である
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項8】
請求項1に記載の基地局装置において、
前記所定の制御周期は、24時間またはそれ以上の24時間単位周期である
ことを特徴とする基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−253621(P2012−253621A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125665(P2011−125665)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】