説明

基地局評価装置およびその測定条件設定方法

【課題】マルチキャリア、マルチスタンダードに対応した基地局装置の評価を行う装置において、キャリア周波数や通信規格に依存した煩雑な測定条件の設定作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】変調方式と測定項目との組合せ毎に異なるグループ名A、B、…を付与し、この対応関係を示すグループ一覧50を表示部40に表示するとともに、各キャリア周波数とそのキャリア周波数毎のフレームのスロットとで区分けされたスロット情報一覧60を表示部40に表示し、そのスロット情報一覧60のスロット欄に、グループ一覧50に表示された任意のグループ名を操作部45の操作により登録させ、その登録された内容にしたがって、解析処理を行なわせるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の移動体通信システムの基地局装置から出力された信号を解析してその評価を行う技術に関し、特に複数の異なる周波数帯域で同時に通信を行うマルチキャリア方式または複数の異なる通信規格に対応したマルチスタンダード方式に対応した基地局装置の評価を効率的に行えるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動体通信システムでは、基地局と端末との間で通信を行うための周波数帯(キャリア周波数)に複数のユーザの信号を時分割多重化して通信を行うが、ユーザ数が多くなると1つのキャリア周波数で多重化しきれなくなる。このため、1つの通信業者が複数のキャリア周波数を使用して、利用可能なユーザ数を増やしてきている。
【0003】
これに対応して、その基地局も複数のキャリア周波数を用いて同時に通信を行う所謂マルチキャリアと呼ばれる方式が採用されている。
【0004】
また、端末の変調方式の移行等に伴い、一つの通信業者で異なる通信規格(例えばGSMとW−CDMA)の通信を行うことも要求されてきており、これに対応するための基地局は複数の異なる通信規格の信号を用いて同時に通信を行う所謂マルチスタンダードと呼ばれる方式が採用されており、近年ではマルチキャリア、マルチスタンダードに対応した基地局装置が必要とされている。
【0005】
そのため同一周波数バンドで複数のシステムを運用する場合の無線規格が、3GPPTS37.104で、Multi−Standard Radio(MSR)Base Station(BS)として定義された。その周波数バンドについては図4に示す通りである。
【0006】
図4において、マルチスタンダードの例を挙げれば、基地局の出力(Downlink)で定義されている周波数帯のうち、例えば869〜894MHz、925〜960MHzの周波数帯では、MSR and E−UTRA(LTE)と、UTRA(W−CDMA)と、GSM/EDGEの3つの異なるシステムが使用される。
【0007】
したがって、これら869〜894MHz、925〜960MHzの周波数帯内のキャリア周波数を通信に用いる基地局装置を評価するためには、各キャリア周波数の信号に対して、異なるシステムにそれぞれ応じた測定が必要となるが、従来の移動体通信機器に対する評価装置は、例えば次の特許文献1に記載されているように、1つのキャリア周波数(シングルキャリア)の信号を選択的に受信して評価に必要な処理を行うものであったので、マルチキャリアの測定を行う場合には、一つのキャリア周波数についての評価に必要な一連の試験を行ってから次のキャリア周波数に移行して同様の試験を行うという処理を繰り返す必要があり、手間と時間がかかるという問題があった。
【0008】
また、その測定原理から、複数のキャリア周波数を同時に用いる場合の帯域間相互の影響を把握することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−19741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記問題を解決するための技術として、測定対象となる複数のキャリア周波数の信号成分を一括に受信し、その信号の波形データを一定時間取り込んで記憶し、その記憶した波形データから個々のキャリア周波数の信号成分を抽出して解析処理を行う方式が考えられる。
【0011】
ところが、実際に上記方式の評価装置を構成するにあたり、測定対象の複数のキャリア周波数についてそれぞれ測定条件を設定する作業が煩雑となるという新たな問題が生じることが判明した。
【0012】
本発明は、この問題を解決し、マルチキャリア、マルチスタンダードに対応した基地局装置の評価を行う装置において、キャリア周波数や通信規格に依存した煩雑な測定条件の設定作業を容易に行うことができる基地局評価装置およびその測定条件設定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の基地局評価装置は、
評価対象の基地局装置が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む受信帯域を有し、該受信帯域の信号を一定時間一括に受信し、該一定時間分の受信信号波形のデータを記憶する受信記憶部(21)と、
前記受信記憶部に記憶された波形データを解析し、前記各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、該スロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行う解析部(25)と、
表示部(40)と、
操作部(45)と、
前記操作部の操作にしたがい、且つ前記表示部に設定に必要な情報を表示させつつ、前記解析部に対し、各キャリア周波数のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させる設定部(30)とを備えた基地局評価装置であって、
前記設定部は、
変調方式と測定項目との組合せ毎に異なるグループ名を付与し、この対応関係を示すグループ一覧を前記表示部に表示するグループ一覧表示手段(31)と、
前記各キャリア周波数とそのキャリア周波数毎のフレームのスロットとで区分けされたスロット設定情報一覧を前記表示部に表示するスロット情報一覧表示手段(32)と、
前記スロット情報一覧のスロット欄に前記グループ一覧に表示された任意のグループ名を前記操作部の操作に基づいて登録する解析情報登録手段(33)とを有し、
前記解析部は、前記設定部の解析情報登録手段によって登録された内容にしたがって、解析処理を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の基地局評価装置の測定条件設定方法は、
評価対象の基地局装置が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む受信帯域を有し、該受信帯域の信号を一定時間一括に受信し、該一定時間分の受信信号波形のデータを記憶する受信記憶部(21)と、
前記受信記憶部に記憶された波形データを解析し、前記各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、該スロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行う解析部(25)と、
表示部(40)と、
操作部(45)と、
前記操作部の操作にしたがい、且つ前記表示部に設定に必要な情報を表示させつつ、前記解析部に対し、各キャリア周波数のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させる設定部(30)とを備えた基地局評価装置における測定条件設定方法であって、
変調方式と測定項目との組合せ毎に異なるグループ名を付与し、この対応関係を示すグループ一覧を前記表示部に表示するとともに、前記各キャリア周波数とそのキャリア周波数毎のフレームのスロットとで区分けされたスロット情報一覧を前記表示部に表示する段階と、
前記スロット情報一覧のスロット欄に前記グループ一覧に表示された任意のグループ名を前記操作部の操作に基づいて登録させる段階とを含み、
該登録された内容にしたがって、前記解析部による解析処理を行なわせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明では、変調方式と測定項目との組合せ毎に異なるグループ名を付与し、この対応関係を示すグループ一覧を表示部に表示するとともに、各キャリア周波数とそのキャリア周波数毎のフレームのスロットとで区分けされたスロット情報一覧を表示部に表示し、そのスロット情報一覧のスロット欄にグループ一覧に表示された任意のグループ名を操作部の操作に基づいて登録させ、その登録された内容にしたがって、解析処理を行なわせるようにしている。
【0016】
このため、マルチキャリア、マルチスタンダードに対応した基地局装置の評価を行う装置において、キャリア周波数や通信規格に依存した煩雑な測定条件の設定作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】実施形態の要部の動作を説明するための図
【図3】実施形態の要部の動作を説明するための図
【図4】基地局装置が使用する周波数帯と通信に用いるシステムとの関係を表す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した基地局評価装置20の構成を示している。
【0019】
図1において、受信記憶部21は、広帯域受信部22、A/D変換器23、波形データメモリ24とによって構成されている。
【0020】
広帯域受信部22は、マルチキャリア、マルチスタンダードに対応した評価対象の基地局装置1が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む広い受信帯域(例えば、前記したように869〜894MHz、925〜960MHzの周波数帯域)を有し、その受信帯域の信号を一括に受信する。
【0021】
ここで、図2の(a)に示すように、複数の異なるキャリア周波数f1、f2、……が、周波数fa〜fbまでの範囲に含まれているとすれば、その周波数fa〜fbの範囲の入力信号SINを、固定周波数fのローカル信号によりヘテロダイン変換して、図2の(b)のように、データ処理が容易な中間周波数帯の信号SIFに一括に変換する。この中間周波数帯は例えば(fa−f)〜(fb−f)の幅を有し、周波数fa〜fbの範囲の元の入力信号成分を含んでいる。
【0022】
中間周波数帯に変換された信号SIFは、A/D変換器23により所定周波数(中間周波数帯の上限周波数の2倍以上)でサンプリングされてデジタルの信号列D(k)に変換され、波形データメモリ24に一定時間分記憶される。
【0023】
解析部25は、受信記憶部21の波形データメモリ24に記憶された波形データを解析し、各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、そのスロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行い、その結果を表示部40に表示させる。
【0024】
ここで、解析部25は、後述する設定部30の解析情報登録手段33に登録された内容にしたがって、解析処理を行う。
【0025】
設定部30は、操作部45の操作にしたがい、且つ表示部40に設定に必要な情報を表示させつつ、解析部25に対し、各キャリア周波数のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させるためのものである。
【0026】
設定部30には、グループ一覧表示手段31、スロット情報一覧表示手段32および解析情報登録手段33が設けられている。
【0027】
グループ一覧表示手段31は、GMSK、8PSK等の変調方式と、Power、Modulation(変調誤差)、ORFS(隣接チャンネル漏洩)等の測定項目との組合せ毎に異なるグループ名を付与したデータベース(これは任意に編集可能とする)を有し、その対応関係を示すグループ一覧50を例えば図3に示すように表示部40に表示する。
【0028】
また、スロット情報一覧表示手段32は、各キャリア周波数f1、f2、…とそのキャリア周波数毎のフレームのスロットとで区分けされたメモリテーブルを有し、そのテーブルの内容を示すスロット情報一覧60を例えば図3に示すように表示部40に表示する。
【0029】
解析情報登録手段33は、スロット情報一覧60のスロット欄にグループ一覧50に表示されたグループ名のいずれかを操作部45の操作に基づいて登録させる。
【0030】
この登録処理は、例えば、マウス操作によるポインタ操作で、グループ一覧の任意のグループ名を選択してスロット設定情報一覧の任意のスロット欄にコピーさせ、そのスロットと選択したグループ名との対応情報(つまりスロット設定情報一覧の内容)をメモリテーブルに登録している。
【0031】
解析部25は、上記設定部30の解析情報登録手段33によって登録された内容を参照し、波形データメモリ24に記憶された波形データから各キャリア周波数f1、f2、……の信号成分をデジタルフィルタ処理によって抽出し、各キャリア周波数の信号のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、そのスロットに対して、スロット情報一覧に設定されたグループを見付け、そのグループに対応する変調方式と測定項目に基づいて信号復調処理および各種測定処理を行い、その結果を表示部40に表示させる。
【0032】
このように、実施形態の基地局評価装置20では、変調方式と測定項目との組合せ毎に異なるグループ名を付与し、この対応関係を示すグループ一覧を表示部40に表示するとともに、各キャリア周波数とそのキャリア周波数毎のフレームのスロットとで区分けされたスロット情報一覧を表示部40に表示し、そのスロット情報一覧のスロット欄に、グループ一覧に表示された任意のグループ名を操作部45の操作により登録させ、その登録された内容にしたがって、解析処理を行なわせるようにしている。
【0033】
このため、マルチキャリア、マルチスタンダードに対応した基地局装置の評価を行う装置において、キャリア周波数や通信規格に依存した煩雑な測定条件の設定作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
20……基地局評価装置、21……受信記憶部、22……広帯域受信部、23……A/D変換器、24……波形データメモリ、25……解析部、30……設定部、31……グループ一覧表示手段、32……スロット情報一覧表示手段、33……解析情報登録手段、40……表示部、45……操作部、50……グループ一覧、60……スロット情報一覧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の基地局装置が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む受信帯域を有し、該受信帯域の信号を一定時間一括に受信し、該一定時間分の受信信号波形のデータを記憶する受信記憶部(21)と、
前記受信記憶部に記憶された波形データを解析し、前記各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、該スロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行う解析部(25)と、
表示部(40)と、
操作部(45)と、
前記操作部の操作にしたがい、且つ前記表示部に設定に必要な情報を表示させつつ、前記解析部に対し、各キャリア周波数のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させる設定部(30)とを備えた基地局評価装置であって、
前記設定部は、
変調方式と測定項目との組合せ毎に異なるグループ名を付与し、この対応関係を示すグループ一覧を前記表示部に表示するグループ一覧表示手段(31)と、
前記各キャリア周波数とそのキャリア周波数毎のフレームのスロットとで区分けされたスロット情報一覧を前記表示部に表示するスロット情報一覧表示手段(32)と、
前記スロット情報一覧のスロット欄に前記グループ一覧に表示された任意のグループ名を前記操作部の操作に基づいて登録する解析情報登録手段(33)とを有し、
前記解析部は、前記設定部の解析情報登録手段によって登録された内容にしたがって、解析処理を行うことを特徴とする基地局評価装置。
【請求項2】
評価対象の基地局装置が通信に用いる複数の異なるキャリア周波数を含む受信帯域を有し、該受信帯域の信号を一定時間一括に受信し、該一定時間分の受信信号波形のデータを記憶する受信記憶部(21)と、
前記受信記憶部に記憶された波形データを解析し、前記各キャリア周波数のフレーム内の所望タイムスロットに挿入されている信号を検出し、該スロットに対して予め設定された変調方式と測定項目に基づいて信号復調と測定を行う解析部(25)と、
表示部(40)と、
操作部(45)と、
前記操作部の操作にしたがい、且つ前記表示部に設定に必要な情報を表示させつつ、前記解析部に対し、各キャリア周波数のフレーム内の各スロットについての変調方式情報と測定項目情報を設定させる設定部(30)とを備えた基地局評価装置における測定条件設定方法であって、
変調方式と測定項目との組合せ毎に異なるグループ名を付与し、この対応関係を示すグループ一覧を前記表示部に表示するとともに、前記各キャリア周波数とそのキャリア周波数毎のフレームのスロットとで区分けされたスロット情報一覧を前記表示部に表示する段階と、
前記スロット情報一覧のスロット欄に前記グループ一覧に表示された任意のグループ名を前記操作部の操作に基づいて登録させる段階とを含み、
該登録された内容にしたがって、前記解析部による解析処理を行なわせることを特徴とする基地局評価装置における測定条件設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−171901(P2011−171901A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32295(P2010−32295)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】