説明

基材表面塵埃拭取装置

【課題】拭取ロール13と駆動ロール14と被動ロール16の点検修理を効率的に行い、その点検修理に伴う基材表面ゴミ取り装置の停台時間を短縮化する。
【解決手段】基材11の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取る粘着周面を有する拭取ロール13と、拭取ロール13の粘着周面12から塵埃を拭き取る清掃パッド21と、基材平面11と清掃パッド21の間で拭取ロール13を往復移動させる拭取ロール移動装置22と、基材平面11から離れて清掃パッド21に接触する部位において拭取ロール13を回転駆動する駆動ロール14を具備する基材表面ゴミ取り装置において、駆動ロール14にコロガリ接触する被動ロール16を拭取ロール13の回転軸15に軸支する。その被動ロール16の周面19を駆動ロール14の周面20に比してゴム硬度の柔らかい高分子物質で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される平板な基材の平面に接して回転し、基材の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取る基材表面塵埃拭取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基材表面ゴミ取り装置に清掃パッドを付設し、基材平面から拭き取られて拭取ロールの粘着周面に粘着している塵埃を清掃パッドによって拭き取って粘着周面を無塵状態に保つことは公知である(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
清掃パッドを具備する基材表面ゴミ取り装置には、拭取ロール移動装置と粘着周面に粘着している塵埃を感知する塵埃感知センサーを付設し、粘着周面に粘着している塵埃が所定量に達したことを塵埃感知センサーが感知して拭取ロール移動装置を起動させ、基材平面から清掃パッドへと拭取ロールを移動させることも公知である(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
基材表面ゴミ取り装置には清掃パッド駆動装置を付設し、拭取ロールの回転軸に平行に清掃パッドを往復移動させて、拭取ロールの粘着周面に粘着している塵埃を清掃パッドによって拭き取って粘着周面を無塵状態に保つことも公知である(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
【0005】
清掃パッドは、その粘着周面との接触面を変えて絶えず無塵状態に保つために、ロール状に巻き取って保持されている。清掃パッドには、粘着周面からの塵埃の離脱を促す洗浄液が付与される。
【0006】
基材表面ゴミ取り装置には、複数本の拭取ロールを設け、それらを交互に清掃パッドへと移動して清掃し、その清掃時には他の拭取ロールが基材平面に接して塵埃除去作用を営むようにすることも公知である(例えば、特許文献1、2、5参照)。
【0007】
拭取ロールは、粘着周面を有するので搬送される基材の平面に接すると、その搬送されて移動する基材に回転駆動されることになる。従って、その基材に付着している塵埃を拭き取る拭取ロールには、それを回転駆動するための駆動ロールを付設する必要はない。
しかし、拭取ロールの粘着周面に粘着している塵埃を清掃パッドによって拭き取る場合には、拭取ロールが基材平面から引き離されているので、拭取ロールを回転駆動するための駆動ロールが必要になる。
【0008】
【特許文献1】特開平08−187457号公報(特許第2687118号)
【特許文献2】特開平08−281178号公報(特許第3160795号)
【特許文献3】特開平02−227177号公報(特公平05−79395号)
【特許文献4】特開平08−047674号公報(特許第300705号)
【特許文献5】特開平01−25891号公報(特公平06−47284号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
拭取ロールの粘着周面12に粘着している塵埃を清掃パッド21によって拭き取る拭取ロール清掃装置については、基材表面ゴミ取り装置から離れた部位に拭取ロール13を回転駆動する駆動ロール14と、その駆動ロール14を回転駆動する駆動モーター33を設ける一方、駆動ロール14にコロガリ接触して回転駆動される被動ロール16を拭取ロール13の回転軸15に軸支することにした。
【0010】
しかし、駆動ロール14による被動ロール16の回転駆動は摩擦伝動であり、それらのロールの周面に耐摩耗性に優れた材料を使用するとは言え、定期的に駆動ロール14と被動ロール16を点検し、必要に応じて修理し、場合によっては取替も必要になる。
又、拭取ロールによる基材平面からの塵埃拭取過程において、基材平面11とのスリップによる拭取ロール13の摩耗がないとしても、その粘着周面12に粘着した塵埃を拭き取る洗浄液による粘着周面12の変質や経時的劣化は不可避であり、拭取ロール13を取り外し、定期的に粘着周面12を点検し、必要に応じて粘着周面12を構成している粘着表皮の張替修理も必要となる。
【0011】
そこで、本発明は、拭取ロール13と駆動ロール14と被動ロール16の点検修理を効率的に行い、その点検修理に伴う基材表面ゴミ取り装置の停台時間を短縮化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る基材表面塵埃拭取装置は、(a) 搬送される平板な基材11の平面に接して回転し、基材11の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取る粘着周面を有する拭取ロール13と、(b) 拭取ロール13の粘着周面12に接触して粘着周面12に粘着している塵埃を拭き取る清掃パッド21と、(c) 基材11の平面と清掃パッド21の間で拭取ロールを往復移動させる拭取ロール移動装置22と、(d) 拭取ロール移動装置22に駆動されて基材平面11から離れて清掃パッド21に接触する部位において拭取ロール13を回転駆動する駆動ロール14とを具備し、(e) 拭取ロール13が清掃パッド21に接触する部位において駆動ロール14にコロガリ接触して回転駆動される被動ロール16が拭取ロール13の回転軸15に軸支されており、(f) その被動ロール16の周面19が駆動ロール14の周面20に比してゴム硬度の柔らかい高分子物質で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
拭取ロールの粘着周面12が摩耗し難くなるとは言え、その粘着周面12に粘着した塵埃を拭き取る洗浄液による粘着周面12の変質や経時的劣化は不可避であり、拭取ロール13を取り外し、粘着周面12を点検し、必要に応じて粘着周面12を構成している粘着表皮を張り替える定期的点検修理が必要となる。しかし、本発明では、駆動ロール14と拭取ロール13との伝動機構を、駆動ロール14と被動ロール16がコロガリ接触する摩擦伝動としたので、定期的点検修理に際して拭取ロール13が取り外し易い。その際、被動ロール16は、拭取ロール13の回転軸15に軸支されているので、拭取ロール13と一緒に取り外すことが出来、従って、被動ロール16だけを取り外す手間が省かれ、粘着周面12の点検修理と同時に被動ロール16の周面19も点検修理することが出来る。
【0014】
特に、本発明では、駆動ロール14の周面20を被動ロール16の周面19に比してゴム硬度の硬い高分子物質で構成し、駆動ロールの周面20のゴム硬度を被動ロールの周面19に比して硬くしたので、駆動ロール14の耐用性が高まって長期にわたる使用に耐え、従って、長期にわたって駆動ロール14を取り替えずに済み、又、駆動ロール14の点検修理をせずに済む。
このように本発明の基材表面塵埃拭取装置は、拭取ロール13の取り外しが容易であり、粘着周面12と被動ロール16を同時に点検修理することが出来る一方、駆動ロール14の周面20については点検修理が不要となり、又、駆動ロール14を取り外す手間も省かれ、点検修理に伴う停台時間も短縮される等の点で頗る好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
被動ロール16の周面19と駆動ロール14の周面20には、高分子物質として、ブチル・ゴム(イソプレン・イソブチレン・ラバー)、ニトリル・ブタジエン・ゴム、水添ニトリル・ブタジエン・ゴム、ポリウレタン、エチレン・プロピレン・ゴム等を含むゴムが使用され、それらの周面のゴム硬度は、その適用するブチル・ゴム(イソプレン・イソブチレン・ラバー)、ニトリル・ブタジエン・ゴム、水添ニトリル・ブタジエン・ゴム、ポリウレタン、エチレン・プロピレン・ゴム等の種類と材質、加硫(架橋)剤や加硫(架橋)促進剤、充填剤、可塑剤等の副資材の種類や配合量等によって調整される。
【0016】
本発明の基材表面塵埃拭取装置を伸縮性のある基材、例えば膜厚が30μm以下の薄手のブラスチックフイルム11の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取るために使用する場合、ブラスチックフイルム11に連れ回りする拭取ロール13の回転が遅れ、ブラスチックフイルム11の走行速度と拭取ロール13の周速との差に起因してブラスチックフイルム11に余分なテンションが掛かり、拭取ロール13から受ける抵抗によって薄手のブラスチックフイルム11が破断したり、皺が発生したり、内部歪みが発生したりしてブラスチックフイルム11の特性が損なわれ易くなる。
そのような場合には、薄手のブラスチックフイルム11から塵埃を粘着させて拭き取る過程で、搬送される薄手のブラスチックフイルム11によってではなく、拭取ロール13を駆動モーターによって積極的に回転駆動し、拭取ロール13の粘着周面での回転速度と薄手のブラスチックフイルム11の搬送速度が常に同じ一定速度になるようにすることが望ましい。
【0017】
図2は、拭取ロール13を積極的に回転駆動する基材表面塵埃拭取装置を図示し、拭取ロール13の回転軸15に軸支された被動ロール16にコロガリ接触する駆動ロール14’と、その駆動ロール14’を回転駆動する駆動モーター33’と、基材11の搬送速度を読み取る速度読取装置31と、その速度読取装置31の読み取った速度信号32を駆動モーター33’に伝達する信号伝達手段34を具備し、その基材11から読み取った速度信号32によって拭取ロール13の粘着周面での回転速度と基材11の搬送速度が同速に同調するようになっている。速度読取装置31には、基材11を送り出す送出ロールや基材11を引き出す引出ロール、その送出ロールと引出ロールの間に配置されるガイドロール等の搬送ロールに付設したエンコーダーが適用される。駆動モーター33’には、インダクションモーターやサーボモーター、ステッピングモーター等が適用される。
【0018】
この基材11の搬送速度に同調させて拭取ロール13を回転駆動する駆動ロール14’と被動ロール16についても、被動ロール16の周面19を駆動ロール14’の周面20’に比してゴム硬度の柔らかい高分子物質で構成し、定期的点検修理において、拭取ロール13を取り外し易くし、駆動ロール14’の周面20’については点検修理をせずに済むようにする。
【0019】
清掃パッド21は巻取式にし、順次繰り出してクリーンな新しい部分が拭取ロールに触れるようにし、蒸発性の洗浄液を付与して濡らせて拭取ロールの粘着周面12の塵埃を拭き取り易くし、拭取ロールの拭取・清掃を効率的に行う。
基材平面11と清掃パッド21の間で拭取ロールを往復移動させる拭取ロール移動装置22、および、拭取ロール13の回転軸15に平行に清掃パッド21を往復移動させる清掃パッド移動装置については、前記の特許文献1、2、3、4、5等に開示されている従来技術を適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る基材表面塵埃拭取装置の要部斜視図である。
【図2】本発明に係る基材表面塵埃拭取装置の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
11:基材(平面)
12:粘着周面
13:拭取ロール
14:駆動ロール
15:回転軸
16:被動ロール
19・20:周面
21:清掃パッド
22:拭取ロール移動装置
31:速度読取装置
32:速度信号
33:駆動モーター
34:信号伝達手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 搬送される平板な基材(11)の平面に接して回転し、基材(11)の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取る粘着周面を有する拭取ロール(13)と、
(b) 拭取ロール(13)の粘着周面(12)に接触して粘着周面(12)に粘着している塵埃を拭き取る清掃パッド(21)と、
(c) 基材(11)の平面と清掃パッド(21)の間で拭取ロールを往復移動させる拭取ロール移動装置(22)と、
(d) 拭取ロール移動装置(22)に駆動されて基材平面(11)から離れて清掃パッド(21)に接触する部位において拭取ロール(13)を回転駆動する駆動ロール(14)とを具備し、
(e) 拭取ロール(13)が清掃パッド(21)に接触する部位において駆動ロール(14)にコロガリ接触して回転駆動される被動ロール(16)が拭取ロール(13)の回転軸(15)に軸支されており、
(f) その被動ロール(16)の周面(19)が駆動ロール(14)の周面(20)に比してゴム硬度の柔らかい高分子物質で構成されている基材表面塵埃拭取装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−617(P2009−617A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163473(P2007−163473)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000109495)テクノロール株式会社 (9)
【Fターム(参考)】