説明

基板の実装状態検査方法および基板の実装状態検査装置

【課題】導電性粒子による圧痕と電極パターンに形成された窪みとを識別することにより、ガラス基板に設けられた電極パターンと前記ガラス基板に実装される電子部品との接続状態を精度良く検査できる電子部品の実装状態検査方法を提供する。
【解決手段】圧着部を微分干渉光学系を介して撮像した電子画像データから、電極パターンの画像の輝度よりも低輝度の暗画素群を抽出するステップと、前記暗画素群の重心に対して特定方向に存在する画素の中から最高輝度を持つ高輝度画素をサーチするステップと、前記高輝度画素を中心として複数の方向にサーチラインを設定し、前記複数のサーチライン上に存在する画素の中からそれぞれ輝度の最も低い低輝度画素をサーチするステップと、前記高輝度画素の輝度と前記複数の低輝度画素の輝度との差の和を求めるステップと、前記輝度差の和に基づいて前記暗画素群の種別を判断するステップとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板と電子部品との実装状態を検査する方法およびその検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話等、各種の電子機器に使用されている液晶駆動基板は、液晶駆動基板を構成する透明基板上に、液晶を駆動するためのICチップやフレキシブル基板などをCOG(Chip On Glass)実装したものが広く用いられている。このCOG実装は、透明基板の表面に多数形成されたパネル電極に、ACF(Anisotropic Conductive Film)等の異方性導電材料を介してICチップ等の電子部品の電極に設けられたバンプと呼ばれる微小な凸状の端子を加熱・加圧することにより、異方性導電材料に含まれる導電性粒子を介して透明基板のパネル電極とICチップのバンプとを電気的に接合するものである。
【0003】
このとき、電子部品が透明基板に良好に実装されているか否かは、透明基板の裏面側からパネル電極とバンプとの重なり部を観察することによって検査することができる。すなわち、透明基板のパネル電極にICチップのバンプが異方性導電材料を介して圧接されると、パネル電極に異方性導材料の導電性粒子が押し付けられることにより、パネル電極の裏面、すなわち、透明基板に接している面に、微小な凸状部が圧痕として形成される。そこで、電極の裏面を微分干渉顕微鏡で観察することにより、この圧痕を検出する。従来の基板の実装状態検査方法として、COG実装した透明基板のパネル電極を基板裏面から微分干渉顕微鏡を介して撮像し、得られた2値化画像データから導電性粒子の圧痕の明部と暗部の境目を微分処理によって強調することによって、導電性数すなわち導電性粒子数をカウントし、導電性粒子数が基準値未満となった電極を、接続不良と判定するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−227217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、COG実装される透明基板には、製造中パネル電極上に窪みが形成されるものがある。この窪みは、微分干渉顕微鏡で撮像した画像では、パネル電極よりも暗く見えるが導電性粒子による圧痕の暗部の輝度とは差がない場合があり、従来の検査方法では、粒子による圧痕の明部と暗部の境界が強調されるように、パネル電極と窪みの境界も同様に強調されてしまう場合があった。
このため、従来の検査方法では、微分干渉顕微鏡を介して撮像した電子画像データにおいてパネル電極に形成された窪みと導電性粒子による圧痕とを区別することができず、パネル電極内に所定の数以下の導電性粒子しか存在しない、すなわち、接続不良と判定すべきものであるにもかかわらず、パネル電極の窪みを導電性粒子と判断することで、本来の粒子数以上の導電性粒子が存在すると判定し、不良品を良品と判定してしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、導電性粒子による圧痕と電極パターンに形成された窪みとを識別することができ、透明基板に設けられたパネル電極と前記透明基板に実装される電子部品に設けられたバンプとの接続状態を精度良く検査できる基板の実装状態検査方法および基板の実装状態検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、透明基板上に設けられた電極パターンに、導電性粒子を含む異方性導電材料を介して電子部品を実装した基板の実装状態検査方法であって、前記電極パターンと前記電子部品に設けられた電極との重なり部を、前記透明基板の裏面側から微分干渉光学系を介して撮像し、前記重なり部の電子画像データを取得するステップAと、前記電子画像データから、前記電極パターンの画像の輝度よりも低輝度の暗画素群を抽出し、当該暗画素群の重心の位置を求めるステップBと、前記暗画素群の重心を基点とし、特定方向に対して所定の距離内に存在する画素の中から最高輝度を持つ高輝度画素をサーチし、当該高輝度画素の位置および輝度を取得するステップCと、前記高輝度画素を中心として、前記特定方向に対して±90度以下の角度を有する複数のサーチラインを設定し、前記高輝度画素から所定の距離内であって前記複数のサーチライン上に存在する画素の中からそれぞれ輝度の最も低い低輝度画素をサーチして、当該複数の低輝度画素の輝度を取得するステップDと、前記高輝度画素の輝度と前記複数の低輝度画素の輝度との差の和を求めるステップEと、前記輝度差の和と設定値とを比較することによって、前記暗画素群の種別を判別するステップFとを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明は、透明基板上に設けられた電極パターンに、導電性粒子を含む異方性導電材料を介して電子部品を実装した基板の実装状態検査方法であって、前記電極パターンと前記電子部品に設けられた電極との重なり部を、前記透明基板の裏面側から微分干渉光学系を介して撮像し、前記重なり部の電子画像データを取得するステップPと、前記電子画像データから、前記電極パターンの画像の輝度よりも低輝度の暗画素群を抽出し、当該暗画素群の重心の位置および輝度を求めるステップQと、前記暗画素群の重心を基点として、特定方向および前記特定方向の反対方向に対して±90度以下の角度を有する複数のサーチラインを設定し、前記重心から所定の距離内であって前記複数のサーチライン上に存在する画素の中から輝度の最も高い高輝度画素を前記複数のサーチライン毎にサーチして、複数の前記高輝度画素の位置と輝度を取得するステップRと、前記暗画素群の重心の位置および輝度と、複数の前記高輝度画素の位置と輝度とに基づいて、前記複数のサーチライン方向の輝度変化率を求めるステップSと、前記輝度変化率の中から最大の輝度変化率を求めるステップTと、前記特定方向以外の方向に設定された前記サーチライン方向の輝度変化率の中から最大の輝度変化率を求めるステップUと、前記ステップUで求めた輝度変化率と前記ステップVで求めた輝度変化率との差を求めるステップVと、前記輝度変化率の差と設定値とを比較することによって、前記暗画素群の種別を判別するステップWとを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、導電性粒子による圧痕と電極パターンに形成された窪みとを識別することができるので、透明基板に設けられた電極パターンと前記透明基板に実装される電子部品に設けられたバンプとの接続状態を精度良く検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1における検査装置の構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における被検査対象物である実装基板の断面図(a)と破線部の拡大図(b)である。
【図3】この発明の実施の形態1における画像データの概略図である。
【図4】この発明の実施の形態1における検査工程を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1における検査工程を示す工程図である。
【図6】この発明の実施の形態2における検査工程を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態2における検査工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について、図1ないし図5を参照して説明する。
【0012】
本実施の形態における基板の実装状態検査装置10は、図1に示すように、X、Y軸方向に移動可能でθ軸方向に回転可能に設けられた搭載ステージ1と、上記各軸を制御する制御装置(図示せず)とを備えている。搭載ステージ1の上面には、被検査物体である実装基板2が搭載され、この実装基板2は吸着などによって搭載ステージ1上に固定される。搭載ステージ1に搭載された実装基板2の上方には、微分干渉光学系4を介して撮像手段であるカメラ3が設けられており、カメラ3は実装基板2の方向に向けて固定されている。微分干渉光学系4にはレンズ(図示せず)および照明装置(図示せず)が装備されている。このカメラ3と微分干渉光学系4はZ軸方向に移動するステージ(図示せず)に固定されている。また、カメラ3には画像処理手段である画像処理装置5が接続されており、カメラ3によって撮像された画像を取り込み、データ処理を行う。
【0013】
被検査物体である実装基板2は、図2(a)に示すように、ガラスからなる透明基板21の表面に間隔をおいて複数形成された電極パターン21に、ACFからなる異方性導電材料7を介して、電子部品であるICチップ6の電極に設けられたバンプ61と呼ばれる微小な凸状の端子を圧着することにより、透明基板2の電極パターン21とICチップ6のバンプ61とを電気的に接合したものである。異方性導電材料7は、図2(b)に示すように、熱硬化性樹脂膜72中に多数の導電性粒子71を分散させたものであり、膜厚方向に加圧することにより導電性粒子71が電極パターン21およびバンプ61と接触して膜厚方向には導電性を実現するが、膜面方向には導電性粒子71間に樹脂が介在して絶縁性を保持するものである。
また、電極パターン21には、図2(b)に示すように電極パターン21の製造時に透明基板20と接する側に製造欠陥である窪み22が形成される。
【0014】
図3は、基板の実装状態検査装置10を用いて、電極パターン21とバンプ61との圧着部周辺を透明基板20の裏面側から撮像した画像データの一例である。なお、図3は、表示される画像のイメージを示すものであり、実際の画像とは色調が異なる。
【0015】
図3において、21aは電極パターン21の電子画像であり、71aは電極パターン21に異方性導材料7中の導電性粒子71が押し付けられることにより、透明基板20に形成された圧痕の画像(以下、「導電性粒子画像」という)である。また、22aは電極パターン21に形成された窪み22の画像であり、破線は、ICチップ6のバンプ61と電極パターン21との重なり領域を示している。
【0016】
画像データ100において、電極パターン画像21aは、電極パターン21が存在しない領域に比べて薄く(輝度が高く)表示される。そして、電極パターン21上に存在する導電性粒子71の画像71aは、ほぼ円形状に表示され、電極パターン画像21aよりも薄く(輝度が高く)表示される領域71a1と、電極パターンの画像21aよりも濃く(輝度が低く)表示される領域71a2とを有している。また、電極パターン21の窪み画像22aは、楕円形状や円形状等に表示され、電極パターン画像21aよりも全体が濃く(輝度が低く)表示される。
【0017】
次に、図4および図5を参照して、本実施の形態における基板の実装状態検査方法について説明する。なお、図4は本実施の形態における実装状態検査方法のフローチャートであり、図5(a)は電極パターン21上に導電性粒子71が存在する場合、図5(b)は電極パターン21上に窪み22が存在する場合の実装状態検査方法の工程を示す工程図である。
【0018】
本実施の形態における基板の実装状態検査方法では、まず、電極パターン21と電子部品6に設けられたバンプ61との重なり部周辺を、基板の実装状態検査装置10に設けられたカメラ3で微分干渉光学系4を介して透明基板21の裏面側から撮像し、電極パターン21とバンプ61との圧着部周辺の電子画像データ100を取得する(画層撮像処理:ステップA)。
【0019】
そして、ステップAで取得した画像データ100を、基板の実装状態検査装置10に設けられた画像処理装置5によって、予め定められた階調Kを閾値として2値化し、明画素と暗画素とに分離する。そして、暗画素の集合体である暗画素群の重心βを求める(暗部抽出処理:ステップB)。なお、閾値である階調Kは、電極パターン画像21aの輝度と電極パターンの窪み画像22aの輝度との間の値に設定されている。
【0020】
次に、ステップAで得られた電子画像データ100において、ステップBで得られた暗画素群の重心βを基点とし、予め定められた特定方向M、すなわち微分干渉光学系4のコントラストの強弱が生じる方向Mの所定の距離内で最も輝度の高い高輝度画素αをサーチする。そして、高輝度画素αの位置および輝度を取得する(高輝度画素サーチ処理:ステップC)。なお、上記特定方向Mは、基板の実装状態検査装置10の微分干渉光学系4のセッティング状態により決まる。
【0021】
そして、ステップCで得られた高輝度画素αを中心とし、上記特定方向(微分干渉光学系4のコントラストの強弱が生じる方向)M、および特定方向Mに対して±45度、±90度の角度を有する方向に計5本のサーチラインを設定し、高輝度画素αから所定の距離内であって、上記サーチライン上に存在する画素の中から、各サーチライン上で最も輝度の低い低輝度画素γi(i=1〜5)をサーチする。そして、この低輝度画素γiの輝度を取得する(暗画素サーチ処理:ステップD)。
【0022】
次いで、ステップCで得られた高輝度画素αとステップDで得られた低輝度画素γiの輝度との差(α−γi)をそれぞれ求め、これら輝度差の和Σを画像処理装置に設けられた演算手段により求める(輝度差積算処理:ステップE)。
【0023】
そして、ステップEで得られた輝度差の和Σを予め定められた閾値Jと比較する(判定処理:ステップF)。ここで、図5(a)に示す導電性粒子画像71aの場合、微分干渉光学系4のコントラストの強弱が生じる方向Mに電極パターン画像21aよりも明るい明部71a1が存在するため、前記輝度差の和Dは大きな値となる。これに対し、図5(b)に示す電極パターン部の窪み画像22aの場合、微分干渉光学系4のコントラストの強弱が生じる方向Mには輝度の低い電極パターン画像21aしか存在しないため、前記輝度差の和Σは小さな値となる。このため、閾値Jを適切な値に設定することにより、輝度差の和Σが閾値Jよりも大きい場合はステップBで抽出した暗画素群は導電性粒子画像71aであると判定し、閾値J以下の場合は上記暗画素群は電極パターンの窪み画像22aであると判定することができる。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、導電性粒子画像71aと電極パターンの窪み画像22aとを識別できるので、電極パターン21上に所定数以下の導電性粒子71しか存在しないものを接続不良と判定することができる。
【0025】
なお、上記ステップC、ステップDにおいて高輝度画素αおよび低輝度画素をサーチする所定の距離はステップBで抽出した暗画素群の大きさに基づいて定められた距離、例えば暗画素群を等価楕円に近似したときの長軸や周囲長または暗画素群の画素数等に設定すれば、周囲に存在する他の導電性粒子71や電極パターンの窪み22の影響を受けないようにすることができる。また本実施の形態のステップCにおいては、サーチラインの本数を5本としたが、導電性粒子画像71aや電極パターンの窪み画像22aの形状によりサーチラインの本数や方向を適宜変更してもよい。ただし、サーチラインは、高輝度画素αの位置を中心とし、前記特定方向Mに対して±90度未満の角度を有することが望ましい。
【0026】
また、上記実施の形態では、ステップ(B)で抽出した暗画素群を、導電性粒子画像71aであるか電極パターンの窪み画像22aのいずれであるかを判別しているが、実際には透明基板21とICチップ6との間に異物が噛み込んでいる場合がある。この場合、異物の電子画像は導電性粒子画像71aと同様に輝度差の和Σが大きくなるため、電極パターンの窪み画像22aと識別することができる。なお、異物と電極パターンとの識別は、公知の実装状態検査方法を用いて識別することができる。
【0027】
以上、本実施の形態によれば、電極パターンと電子部品に設けられた電極との重なり部を、透明基板の裏面側から微分干渉光学系を介して撮像し、前記重なり部の電子画像データを取得するステップAと、前記電子画像データから、前記電極パターンの画像の輝度よりも低輝度の暗画素群を抽出し、当該暗画素群の重心の位置を求めるステップBと、前記暗画素群の重心を基点とし、特定方向に対して所定の距離内に存在する画素の中から最高輝度を持つ高輝度画素をサーチし、当該高輝度画素の位置および輝度を取得するステップCと、前記高輝度画素を中心として、前記特定方向に対して±90度以下の角度を有する複数のサーチラインを設定し、前記高輝度画素から所定の距離内であって前記複数のサーチライン上に存在する画素の中からそれぞれ輝度の最も低い低輝度画素をサーチして、当該複数の低輝度画素の輝度を取得するステップDと、前記高輝度画素の輝度と前記複数の低輝度画素の輝度との差の和を求めるステップEと、前記輝度差の和と設定値とを比較することによって、前記暗画素群の種別を判別するステップFとを備えているので、導電性粒子による圧痕と電極パターンの窪みとを識別でき、その結果、透明基板に設けられた電極パターンと前記透明基板に実装される電子部品との接続状態を精度良く検査することができる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、特定方向Mを、微分干渉光学系4による観察像の輝度のコントラストの強弱が変化する方向としたので、粒子とパターンの窪みとを容易に識別できる。
【0029】
さらに、本実施の形態によれば、所定の距離を、前記暗画素群の大きさに基づいて定めたので、窪みの大きさに依存せずに粒子と識別することができる。
【0030】
実施の形態2.
図6および図7を参照して、本発明の実施の形態2における基板の実装状態検査方法について説明する。なお、実施の形態2における基板の実装状態検査装置は、実施の形態1と同じ構成であるので説明を省略する。
なお、図6は実装状態検査方法のフローチャートであり、図7(a)は電極パターン21上に導電性粒子71が存在する場合、図7(b)は電極パターン21に窪み22が存在する場合の実装状態検査方法の工程を示す工程図を示すものである。
【0031】
本実施の形態における基板の実装状態検査方法では、まず、電極パターン21と電子部品6に設けられたバンプ61との重なり部周辺を、基板の実装状態検査装置10に設けられたカメラ3で微分干渉光学系4を介して透明基板21の裏面側から撮像し、電極パターン21とバンプ61との圧着部周辺の電子画像データ100を取得する(画層撮像工程:ステップP)。
【0032】
そして、ステップPで取得した画像データ100を、基板の実装状態検査装置10に設けられた画像処理装置5によって、予め定められた階調Kを閾値として2値化し、明画素と暗画素とに分離する。そして、暗画素の集合体である暗画素群の重心βの位置と輝度を求める(暗部抽出処理:ステップQ)。なお、閾値である階調Kは、電極パターン画像21aの輝度と電極パターンの窪み画像22aの輝度との間の値に設定されている。
【0033】
次に、ステップQで得られた暗画素群の重心βを基点として、予め定められた特定方向M、すなわち微分干渉光学系4のコントラストの強弱が生じる方向M、およびその特定方向Mに対し±90度、−180度の角度をなす方向にサーチラインを計4本設定し、上記暗画素群の重心βから所定の距離内であって、各サーチライン上に存在する画素の中からそれぞれ最も輝度の高い高輝度画素δi(i=1〜4)をサーチする。そして、この高輝度画素δiの位置と輝度を取得する(高輝度画素サーチ処理:ステップR)。
【0034】
そして、ステップQにおいて得られた暗画素群の重心βの位置および輝度と、ステップRにおいて得られた複数の高輝度画素δiの位置と輝度を用いて次式で定義される輝度変化率を上記サーチライン毎に求める(輝度変化率算出処理:ステップS)。
輝度変化率=(高輝度画素δiの輝度と暗画素群の重心βの輝度との差/暗画素群の重心βと高輝度画素δiとの距離)
【0035】
次に、ステップSにおいて得られた輝度変化率の中から最大の変化率Ε1を求める。通常、Ε1は、特定方向M(微分干渉光学系4のコントラストの強弱が生じる方向)の変化率と一致する(最大変化率抽出処理1:ステップT)。
【0036】
そして、上記特定方向M以外の方向に設定されたサーチライン方向の輝度の変化率の中から最大の変化率Ε2を求める(最大変化率抽出処理2:ステップU)。
【0037】
次いで、上記輝度変化率E1とE2との差であるΔΕ(=Ε1−Ε2)を算出する(変化率差分処理:ステップV)。
【0038】
次に、ステップVで算出された輝度変化率の差ΔΕを閾値Lと比較する(判定処理:ステップW)。ここで、図7(a)に示す導電性粒子画像71aの場合、微分干渉光学系4のコントラストの強弱が生じる方向Mに電極パターン画像21aよりも輝度の高い明部71a1が存在し、微分干渉光学系のコントラストの強弱が生じる方向M以外では輝度の低い電極パターン画像21aしか存在しないため、輝度変化率の差ΔΕは大きな値となる。これに対し、図7(b)に示す電極パターンの窪み画像22aの場合、特定方向M(微分干渉光学系のコントラストの強弱が生じる方向)には電極パターン画像21aしか存在しないため、輝度変化率の差ΔΕは小さな値となる。
【0039】
このため、閾値Lを適切な値に設定することにより、輝度変化率の差ΔΕが閾値Lよりも大きい場合はステップQで抽出した暗画素群を導電性粒子画像71aであると判定し、閾値Lよりも小さい場合は上記暗画素群は電極パターンの窪み画像22aであると判定することができる。
【0040】
このように、本実施の形態によれば、導電性粒子画像71aと電極パターンの窪み画像22aとを識別できるので、電極パターン21上に所定数以下の導電性粒子71しか存在しないものを接続不良と判定することができる。
【0041】
なお、上記ステップRにおいて高輝度画素をサーチする距離は、ステップQで抽出した暗画素群の大きさに基づいて定められた距離、例えば暗画素群を等価楕円に近似したときの長軸や周囲長または暗画素群の画素数等に設定すれば、周囲にある他の導電性粒子71や電極パターンの窪み22の影響を受けない。またステップRにおいては、サーチラインの本数を4本としているが、導電性粒子画像71aや電極パターンの窪み画像22aの形状によりサーチラインの方向や本数を変更してもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、ステップQで抽出した暗画素群が導電性粒子画像71aか電極パターンの窪み画像22aのいずれであるかを判定しているが、実際には透明基板21とICチップ6との間に異物が噛み込んでいる場合がある。この場合、異物の画像は導電性粒子画像71aと同様に、輝度変化率の差ΔΕが大きくなるため、異物の画像と電極パターンの窪み画像22aとを識別することができる。なお、異物と電極パターン21との識別は、公知の実装状態検査方法を用いて識別することができる。
【0043】
以上、本実施の形態によれば、電極パターンと電子部品に設けられた電極との重なり部を、透明基板の裏面側から微分干渉光学系を介して撮像し、前記重なり部の電子画像データを取得するステップPと、前記電子画像データから、前記電極パターンの画像の輝度よりも低輝度の暗画素群を抽出し、当該暗画素群の重心の位置および輝度を求めるステップQと、前記暗画素群の重心を基点として、特定方向および前記特定方向の反対方向に対して±90度以下の角度を有する複数のサーチラインを設定し、前記重心から所定の距離内であって前記複数のサーチライン上に存在する画素の中から輝度の最も高い高輝度画素を前記複数のサーチライン毎にサーチして、複数の前記高輝度画素の位置と輝度を取得するステップRと、前記暗画素群の重心の位置および輝度と、複数の前記高輝度画素の位置と輝度とに基づいて、前記複数のサーチライン方向の輝度変化率を求めるステップSと、前記輝度変化率の中から最大の輝度変化率を求めるステップTと、前記特定方向以外の方向に設定された前記サーチライン方向の輝度変化率の中から最大の輝度変化率を求めるステップUと、前記ステップUで求めた輝度変化率と前記ステップVで求めた輝度変化率との差を求めるステップVと、前記輝度変化率の差と設定値とを比較することによって、前記暗画素群の種別を判別するステップWとを備えているので、導電性粒子による圧痕と電極パターンに形成された窪みとを識別でき、その結果、透明基板に設けられた電極パターンと前記透明基板に実装される電子部品との接続状態を精度良く検査することができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、特定方向Mを、微分干渉光学系4による観察像の輝度のコントラストの強弱が変化する方向としたので、粒子とパターンの窪みとを容易に識別できる。
【0045】
さらに、本実施の形態によれば、所定の距離を、前記暗画素群の大きさに基づいて定めたので、窪みの大きさに依存せずに粒子と識別することができる。
【0046】
実施の形態3.
実施の形態1で示した基板の実装状態検査方法と実施の形態2で示した基板の実装状態検査方法とを組み合わせて基板の実装状態を検査してもよい。
【0047】
例えば、実施の形態1における実装状態検査方法で電極パターンの窪み22と判別されたものに対し、さらに実施の形態2における実装状態検査方法を適用し、両方の検査方法で電極パターンの窪み22である判断されたものを真に窪み22と判定することにより、電子部品実装状態の検査精度をより向上させることができる。なお、実施の形態1における実装状態検査方法と、実施の形態2における実装状態検査方法の適用順序はこれに限られるものではない。また、識別の対象は、電極パターンの窪み22に限られるものではなく、導電性粒子71としてもよい。
【0048】
また、実施の形態1における実装状態検査方法と実施の形態2における実装状態検査方法を重畳して適用し、いずれかの検査で電極パターンの窪み22と判断されたものを真に窪み22と判定することにより、より確実に基板の実装状態の検査を行うことができる。
【0049】
なお、上記実施の形態1ないし3においては、液晶基板の検査を例として説明したが、液晶基板の検査に限定されるものではなく、撮像した画像データ100内において暗部に隣接して明部が存在している対象と明部が存在していない対象が存在する場合に両者を識別する検査に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 搭載ステージ、 2 実装基板、 3 カメラ(撮像手段)、4 微分干渉光学系、 5 画像処理装置(画像処理手段)、 6 ICチップ(電子部品)、 7 異方性導電材料、 10 基板の実装状態検査装置、 20 透明基板、 21 電極パターン、 21a電極パターン画像、 22 電極パターンの窪み、 22a 電極パターンの窪み画像、 61 バンプ(電極) 71 導電性粒子、 71a 導電性粒子画像、 100 電子画像データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に設けられた電極パターンに、導電性粒子を含む異方性導電材料を介して電子部品を実装した基板の実装状態検査方法であって、
(A)前記電極パターンと前記電子部品に設けられた電極との重なり部を、前記透明基板の裏面側から微分干渉光学系を介して撮像し、前記重なり部の電子画像データを取得するステップと、
(B)前記電子画像データから、前記電極パターンの画像の輝度よりも低輝度の暗画素群を抽出し、当該暗画素群の重心の位置を求めるステップと、
(C)前記暗画素群の重心を基点とし、特定方向に対して所定の距離内に存在する画素の中から最高輝度を持つ高輝度画素をサーチし、当該高輝度画素の位置および輝度を取得するステップと、
(D)前記高輝度画素を中心として、前記特定方向に対して±90度以下の角度を有する複数のサーチラインを設定し、前記高輝度画素から所定の距離内であって前記複数のサーチライン上に存在する画素の中からそれぞれ輝度の最も低い低輝度画素をサーチして、当該複数の低輝度画素の輝度を取得するステップと、
(E)前記高輝度画素の輝度と前記複数の低輝度画素の輝度との差の和を求めるステップと、
(F)前記輝度差の和と設定値とを比較することによって、前記暗画素群の種別を判別するステップと
を備えたことを特徴とする基板の実装状態検査方法。
【請求項2】
前記ステップ(F)において、前記輝度差の和が前記設定値以下のときに前記暗画素群は前記電極パターンに形成された窪みであると判断し、前記輝度差の和が前記設定値よりも大きいときに前記暗画素群は前記導電性粒子であると判断することを特徴とする請求項1に記載の基板の実装状態検査方法。
【請求項3】
透明基板上に設けられた電極パターンに、導電性粒子を含む異方性導電材料を介して電子部品を実装した基板の実装状態検査方法であって、
(P)前記電極パターンと前記電子部品に設けられた電極との重なり部を、前記透明基板の裏面側から微分干渉光学系を介して撮像し、前記重なり部の電子画像データを取得するステップと、
(Q)前記電子画像データから、前記電極パターンの画像の輝度よりも低輝度の暗画素群を抽出し、当該暗画素群の重心の位置および輝度を求めるステップと、
(R)前記暗画素群の重心を基点として、特定方向および前記特定方向の反対方向に対して±90度以下の角度を有する複数のサーチラインを設定し、前記重心から所定の距離内であって前記複数のサーチライン上に存在する画素の中から輝度の最も高い高輝度画素を前記複数のサーチライン毎にサーチして、複数の前記高輝度画素の位置と輝度を取得するステップと、
(S)前記暗画素群の重心の位置および輝度と、複数の前記高輝度画素の位置と輝度とに基づいて、前記複数のサーチライン方向の輝度変化率を求めるステップと、
(T)前記輝度変化率の中から最大の輝度変化率を求めるステップと、
(U)前記特定方向以外の方向に設定された前記サーチライン方向の輝度変化率の中から最大の輝度変化率を求めるステップと、
(V)前記ステップ(U)で求めた輝度変化率と前記ステップ(V)で求めた輝度変化率との差を求めるステップと、
(W)前記輝度変化率の差と設定値とを比較することによって、前記暗画素群の種別を判別するステップと
を備えたことを特徴とする基板の実装状態検査方法。
【請求項4】
前記ステップ(W)において、前記輝度変化率の差が前記設定値以下のときに前記暗画素群は前記電極パターンに形成された窪みであると判断し、前記輝度差の和が前記設定値よりも大きいときに前記暗画素群は前記導電性粒子であると判断することを特徴とする請求項3に記載の基板の実装状態検査方法。
【請求項5】
前記特定方向は、前記微分干渉光学系の観察像においてコントラストの強弱が変化する方向であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の基板の実装状態検査方法。
【請求項6】
前記所定の距離は、前記暗画素群の大きさに基づいて定められたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の基板の実装状態検査方法。
【請求項7】
透明基板上に設けられた電極パターンに、導電性粒子を含む異方性導電材料を介して電子部品を実装した基板の実装状態検査装置であって、
微分干渉光学系と、
前記電極パターンと前記電子部品に設けられた電極との重なり部を、前記透明基板の裏面側から前記微分干渉光学系を介して撮像し、電子画像データにする撮像手段と、
前記電子画像データに対し、請求項1に記載のステップ(B)ないしステップ(F)を実行する画像処理手段と
を備えたことを特徴とする基板の実装状態検査装置。
【請求項8】
透明基板上に設けられた電極パターンに、導電性粒子を含む異方性導電材料を介して電子部品を実装した基板の実装状態検査装置であって、
微分干渉光学系と、
前記電極パターンと前記電子部品に設けられた電極との重なり部を、前記透明基板の裏面側から前記微分干渉光学系を介して撮像し、電子画像データにする撮像手段と、
前記電子画像データに対し、請求項3に記載のステップ(Q)ないしステップ(W)を実行する画像処理手段と
を備えたことを特徴とする基板の実装状態検査装置。
【請求項9】
前記特定方向は、前記微分干渉光学系の観察像においてコントラストの強弱が変化する方向であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の基板の実装状態検査装置。
【請求項10】
前記所定の距離は、前記暗画素群の大きさに基づいて定められたことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の基板の実装状態検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−256223(P2010−256223A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107925(P2009−107925)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】