説明

基板の研磨装置及び研磨方法

【課題】本発明は、基板を吸着保持する吸着シートの破れを自動で確認できる基板の研磨装置及び研磨方法を提供する。
【解決手段】本発明の研磨装置12は、3台の光電センサ40〜44を備えた検査装置10を有する。光電センサ40〜44は、貼着ステージ22から研磨ステージ26に向けて搬送中の膜体16の破れを検出する。光電センサ40〜44は、光を投光する投光部46と光を受光する受光部48とを備えている。投光部46及び受光部48は、膜体16の吸着シート32に対向配置され、投光部46から光を吸着シート32に投光し、吸着シート32から反射した前記光を受光部48によって受光する。前記受光量の変化に基づいて膜体16に破れが発生したと検知部50が判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに使用されるガラス基板は、該ガラス基板の表面の微小な凹凸やうねりが画像に歪みを与える原因になるので、微小な凹凸やうねりが研磨装置によって研磨されることにより除去される。このような研磨装置として、研磨定盤に設けられた研磨パッドに、キャリアに保持されたガラス基板を押し当てるとともに、研磨定盤及びキャリアを相対的に回転させてガラス基板を研磨する装置が一般的に知られている。
【0003】
特許文献1に開示された研磨装置は、膜枠に張られた膜体の吸着シートにガラス基板を貼着する基板貼着ステージと、前記膜枠をキャリアに取り付ける膜枠取付ステージと、膜枠が取り付けられたキャリアと研磨定盤とを相対的に近づけて、前記吸着シートに貼着されたガラス基板の研磨面を研磨定盤の研磨パッドに押し付けて研磨する研磨ステージとを備えている。
【0004】
すなわち、前記研磨装置によれば、ガラス基板貼着ステージにおいて、前記吸着シートに研磨前のガラス基板を貼着する。次に、膜枠取付ステージにおいて、ガラス基板が吸着シートに貼着された膜枠をキャリアに取り付ける。次いで、研磨ステージにおいて、膜枠が取り付けられたキャリアと研磨定盤とを相対的に近づけて、吸着シートに貼着されたガラス基板の研磨面を研磨パッドに押し付けて研磨する。
【0005】
ところで、前記研磨装置では、キャリアと膜体との間の密閉空間に圧縮エアを供給し、前記圧縮エアの圧力を、吸着シートを介してガラス基板に伝達することにより、研磨パッドに対するガラス基板の押圧力を設定している。したがって、吸着シートは、前記圧縮エアの圧力によって膨張し、研磨パッドに接触して破れるというおそれがある。
【0006】
ガラス基板の研磨中に吸着シートが破れると、前記吸着シートの破片が研磨中のガラス基板と研磨パッドとの間に入り込むため、ガラス基板が破損するという問題があった。研磨中にガラス基板が破損すると、研磨装置を一時停止し、破損したガラス基板の廃棄、及び研磨装置の清掃を行わなくてはならず、また、廃棄作業及び清掃作業は長時間におよぶため、ガラス基板の生産効率が低下するという不具合があった。
【0007】
そこで従来では、このようなガラス基板の破損を未然に防止するために、作業者が数時間毎に吸着シートを目視により検査することで吸着シートの破れの有無を確認していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−122351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来では吸着シートの破れを作業者が目視により確認しているため、確認作業に手間がかかるという問題があった。また、吸着シートの破れをガラス基板の研磨前に常時確認することも困難であった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、基板を吸着保持する吸着シートの破れを自動で確認できる基板の研磨装置及び研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために、基板を吸着し保持する吸着シートが取り付けられた支持体と、該支持体が取り付けられたキャリアとの間に加圧流体を供給し、前記キャリアと研磨パッドとを相対的に近づけて、前記基板の研磨面を前記研磨パッドに押し付けて研磨する基板の研磨装置であって、前記吸着シートに向けて光を投光する投光部と光を受光する受光部とを備え、前記投光部から前記吸着シートに光を投光し、該吸着シートから反射した前記光を前記受光部によって受光するセンサと、前記センサの前記受光部で受光された光量の変化に基づいて前記吸着シートの破れを検知する検知部と、からなる吸着シートの検査装置を備えたことを特徴とする基板の研磨装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記目的を達成するために、基板を吸着し保持する吸着シートが取り付けられた支持体と、該支持体が取り付けられたキャリアとの間に加圧流体を供給し、前記キャリアと研磨パッドとを相対的に近づけて、前記基板の研磨面を前記研磨パッドに押し付けて研磨する基板の研磨方法であって、前記吸着シートに向けて光を投光する投光部と光を受光する受光部とを備えたセンサを用い、該センサの前記投光部から前記吸着シートに光を投光し、該吸着シートから反射した前記光を前記受光部によって受光し、前記受光部で受光された光量の変化に基づいて検知部が前記吸着シートの破れを検知することを特徴とする基板の研磨方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、センサの投光部から吸着シートに光を投光し、吸着シートから反射した反射光をセンサの受光部で受光する。このとき、吸着シートが破れていると、吸着シートから反射する光量が変化するため、センサの受光部で受光する光量が変化する。検知部は、前記受光量の変化に基づいて吸着シートの破れを検知する。これにより、本発明によれば、基板を吸着保持する吸着シートの破れを自動で検知でき、また、省人化を図ることができる。
【0014】
また、本発明の前記支持体は、前記キャリアとの間で気密を保持する気密保持層と、該気密保持層を保持するとともに支持体を張設する張力に耐え得る所定の引張強さを有する強度保持層とからなる二層構造で構成され、前記検出部は、前記吸着シートで反射された反射光の受光量から、前記強度保持層で反射された反射光の受光量に変化した際に、前記吸着シートの破れを検知することが好ましい。
【0015】
また、本発明によれば、前記吸着シートと前記支持体との間に金属製の中間シートが接着されており、前記検出部は、前記吸着シートで反射された反射光の受光量から、前記中間シートで反射された反射光の受光量に変化した際に、前記吸着シートの破れを検知することが好ましい。
【0016】
また、本発明の前記支持体は、前記キャリアとの間で気密を保持する金属性気密保持層で構成され、前記検出部は、前記吸着シートで反射された反射光の受光量から、金属性気密保持層で反射された反射光の受光量に変化した際に、前記吸着シートの破れを検知することが好ましい。
【0017】
本発明は、前記目的を達成するために、基板を吸着し保持する吸着シートが取り付けられるキャリアと研磨パッドとを相対的に近づけて、前記基板の研磨面を前記研磨パッドに押し付けて研磨する基板の研磨装置であって、前記吸着シートに向けて光を投光する投光部と光を受光する受光部とを備え、前記投光部から前記吸着シートに光を投光し、該吸着シートから反射した前記光を前記受光部によって受光するセンサと、前記センサの前記受光部で受光された光量の変化に基づいて前記吸着シートの破れを検知する検知部と、からなる吸着シートの検査装置を備えたことを特徴とする吸着シートの検査装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記目的を達成するために、基板を吸着し保持する吸着シートが取り付けられるキャリアと研磨パッドとを相対的に近づけて、前記基板の研磨面を前記研磨パッドに押し付けて研磨する基板の研磨方法であって、前記吸着シートに向けて光を投光する投光部と光を受光する受光部とを備えたセンサを用い、該センサの前記投光部から前記吸着シートに光を投光し、該吸着シートから反射した前記光を前記受光部によって受光し、前記受光部で受光された光量の変化に基づいて検知部が前記吸着シートの破れを検知することを特徴とする基板の研磨方法を提供する。
【0019】
本発明は、加圧流体を使用しない形態の研磨装置、研磨方法に適用された吸着シートの検査装置、検査方法の発明である。
【0020】
本発明の前記検知部は、前記吸着シートで反射された反射光の受光量から、前記キャリアで反射された反射光の受光量に変化した際に、前記吸着シートの破れを検知することが好ましい。
【0021】
本発明の前記センサは、前記基板を前記吸着シートに吸着させて保持させる基板保持ステージと、前記基板の被研磨面を前記研磨パッドによって研磨する基板研磨ステージとの間に設置され、前記基板保持ステージと前記基板研磨ステージとの間で移動される前記吸着シートを前記センサによって観察し、前記検知部にて前記吸着シートの破れを検知することが好ましい。
【0022】
本発明によれば、研磨装置における吸着シートの移動経路にセンサを配置したので、基板の研磨前に吸着シートの破れを検知できる。また、破れ検知用の専用ステージを研磨装置に設けることなく吸着シートの破れを検知できるので、基板の研磨に支障を与えることなく吸着シートの破れを検知できる。
【0023】
本発明の研磨装置によれば、前記センサの前記受光部および前記投光部を覆う保護具を備えたことが好ましい。
【0024】
本発明によれば、保護具によってセンサの受光部および投光部を覆うことにより、センサの未使用時に、研磨装置からの研磨液によって、センサが汚染されることを防止できる。
【0025】
本発明の研磨方法によれば、前記基板が吸着された前記吸着シートにおいて、前記基板が吸着されていない前記吸着シートの露出領域を検査することが好ましい。
【0026】
吸着シートの破れの原因は、加圧流体だけの圧力ではなく、基板の貼付圧力によって基板周辺の吸着シートが膨らみ、膨らんだ箇所が研磨パッドに接触して破れる。よって、センサによる吸着シートの破れ検知箇所は、吸着シートの前記露出領域であることが好ましい。
【0027】
本発明の研磨方法によれば、前記吸着シートの前記露出領域の同一箇所において、少なくとも2回以上の破れ検出をしたときに、前記吸着シートの交換を促す信号を前記検知部が発生することが好ましい。
【0028】
本発明によれば、検知部による1回の破れ検出では、誤検出の可能性があるため、検知部が吸着シートの露出領域の同一箇所において2回以上の破れを検出したときに破れたと判断し、検知部が作業者に対して、吸着シートの交換を促す信号を発生する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の基板の研磨装置及び研磨方法によれば、基板を吸着保持する吸着シートの破れを自動で確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態の吸着シートの検査装置が設置された研磨装置の側面図
【図2】膜体の構成を示した断面斜視図
【図3】膜体に対する光電センサの配置位置を示した平面図
【図4】膜体に対する光電センサの配置位置を示した側面図
【図5】検知部に入力される受光量を示したグラフ
【図6】三層構造の膜体の構成を示した断面斜視図
【図7】金属製気密保持層と吸着シートからなる二層構造の膜体の構造図
【図8】キャリアに吸着シートを直接取り付けた形態の構造図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明に係る基板の研磨装置及び研磨方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、実施の形態の吸着シートの検査装置10が設置された研磨装置12の側面図である。
【0033】
研磨装置12は、大型のガラス基板G(例えば、一辺が1800mmを超え、厚み0.2mm〜0.7mm)の表面を液晶ディスプレイ用ガラス基板に必要な平坦度に研磨する研磨装置である。また、研磨装置12は、膜枠14に張られた膜体16に研磨前のガラス基板Gを貼着するとともに、膜枠14を研磨ヘッド18のキャリア20に装着する貼着ステージ22、ガラス基板Gを研磨する研磨パッド24を備えた研磨ステージ26、及び研磨完了したガラス基板Gを膜枠14から取り外すステージ(不図示)等を備えている。
【0034】
更に、研磨装置12には、貼着ステージ22から研磨ステージ26に膜枠14を研磨ヘッド18と共に搬送する搬送装置(不図示)が設けられている。なお、研磨ステージ26は、用途により一台であっても二台以上であってもよい。効率やコストを考慮すると、粗研磨ステージと仕上研磨ステージの二台のステージを備えることが好ましい。粗研磨ステージと仕上研磨ステージとを設けた研磨装置の場合には、実施の形態の吸着シートの検査装置10を、粗研磨ステージと仕上研磨ステージとの間のガラス基板Gの搬送経路に設けてもよい。
【0035】
貼着ステージ22においては、まず、ガラス基板Gが膜枠14の膜体16に貼着される。基板保持部16の貼着方法について説明すると、膜枠14は貼着ステージ22において、ガラス基板貼着手段である不図示の昇降装置に保持されており、膜枠14の下方にガラス基板Gが位置したところで、膜枠14が昇降装置により下降移動され、膜枠14に張設された膜体16がガラス基板Gに押し付けられる。ガラス基板Gの押圧力によってガラス基板Gが膜体16に貼着される。その後、膜枠14が研磨ヘッド18のキャリア20に取り付けられる。なお、膜枠14や膜体16は円形であってもよく、矩形であってもよい。
【0036】
図2は、膜体16の構成を示した断面斜視図である。図2に示すように、膜体16は支持体27と吸着シート32とから構成される。また、支持体27は気密保持層28と強度保持層30とからなる二層構造に構成されている。気密保持層28は、図1のキャリア20の底部に備えられている空気室(不図示)との間で気密を保持するシート材である。シート材の材料としてはゴム類、シリコン類、フッ素樹脂、塩化ビニル(PVC)等のビニル系、ナイロン系及びウレタン等を例示できるが、製造上では塩化ビニル、ウレタンが好ましく、特にウレタン製のものが好ましい。
【0037】
また、図2の強度保持層30は、気密保持層28を保持するとともに支持体27全体を張設する張力に耐え得る所定の引張強さを有するシート材である。強度保持層30の材料としては、ゴム、樹脂系が一般的に考えられるが、実施の形態においては、変形を嫌うため、アラミド繊維、ステンレス製金網、スチール金網、炭素繊維、ガラス繊維、ナイロン繊維、金属シート、樹脂シート等の材料で作られている。特に、アラミド繊維が引張力に対する伸びが極めて少ないという理由で好ましい。
【0038】
吸着シート32は、ガラス基板Gを貼り付けるために使用する一般的なガラス保持シートを貼り付けて構成されるが、吸着シート32の表面の凹凸が大きいと、研磨時に前記凹凸がガラス基板Gに転写する問題がある。このため、吸着シート32は、表面が平滑である必要がある。しかし、樹脂、ゴム層をのり引き等の方法で塗布するような工法の場合、局所的に凹凸が発生してしまう場合がある。これを防止できない場合、厚さが薄い吸着シート32をラミネート工法により、支持体27に貼り付けることで、表面が平滑な吸着シート32を製造できる。厚さが薄い吸着シート32の材料は、例えばウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等、平滑性が保持できるものであればよい。ウレタンやポリ塩化ビニルが一般的なラミネート工法で製造できるので好ましい。
【0039】
一方、図1に示した研磨ヘッド18は本体ケーシング34を備えている。本体ケーシング34にはモータが内蔵され、前記モータの出力軸が、鉛直方向に垂下されたスピンドル36に連結されている。前記スピンドル36にキャリア20が連結されている。また、本体ケーシング34は、不図示の昇降機構を介して不図示のスライダに連結されている。前記昇降機構によって本体ケーシング34が前記スライダに対して昇降されることにより、キャリア20が研磨ステージ26の研磨パッド24に対して進退移動されるとともに、進出移動されることにより、膜体16の吸着シート32に貼着されたガラス基板Gが研磨パッド24に所定の圧力で押圧される。また、本体ケーシング34は、不図示の公転駆動機構に連結され、所定の公転半径で公転する機能も有している。
【0040】
研磨パッド24は、研磨定盤38の上面に貼り付けられる。研磨定盤38の下部には、不図示の回転軸を介してモータが接続されている。なお、研磨パッド24は回転しなくてもよい場合があるので、必ずしもモータを必要としない。また、研磨パッド24を水平方向に揺動させてもよい。
【0041】
次に実施の形態の膜体16の検査装置10について説明する。
【0042】
図3は、膜体16に対する光電センサ40、42、44の配置位置を示した平面図である。
【0043】
図1に示す検査装置10は、図3に示す平面図の如く、3台の光電センサ(株式会社キーエンス製:LV−H32)40、42、44から構成される。図1に示すように、これらの光電センサ40、42(光電センサ44は不図示)は、貼着ステージ22と研磨ステージ26との間に配置され、貼着ステージ22から研磨ステージ26に向けて搬送中の膜体16の吸着シート32の破れを検出する。なお、光電センサの台数は3台に限定されるものではない。すなわち、ガラス基板Gを貼着する吸着シート32の破れを、膜体16の搬送中に確実に検出可能であれば、2台以下でもよく4台以上であってもよい。また、膜体16の搬送を一時停止し、膜体16の下方で光電センサを移動させて吸着シート32の破れを検出する場合には、1台の光電センサでまかなうことができる。しかしながら、ガラス基板Gの加工効率を維持するためには、膜体16の停止時間を極力短くすることが好ましく、このために実施の形態では3台の光電センサ40〜44が、膜体16の移動経路に配置されている。
【0044】
図3に示すように、光電センサ40〜44は、光を投光する投光部46と光を受光する受光部48とをそれぞれ備えている。図4は、膜体16に対する光電センサ40〜44の配置位置を示した側面図である。図4に示すように、投光部46及び受光部48は、膜体16の吸着シート32に対向配置されており、投光部46から光を吸着シート32に投光し、吸着シート32から反射した前記光を受光部48によって受光する。以下、光電センサ40〜44の投光動作及び受光動作を、観察と表現する。
【0045】
また、光電センサ40〜44の各受光部48で受光された光量を示す信号は、検知部50に出力される。図5は、検知部50に入力される受光量Pを示したグラフである。図5に示すように、検知部50には、吸着シート32で反射した光量Aと、図2に示す強度保持層30で反射した光量Bと、光量Bに対して光量が少ない基準光量Cとが記憶されている。
【0046】
したがって、光電センサ40〜44の各受光部48から光量Aの信号が出力されている場合には、検知部50は、吸着シート32が正常品であると判定する。また、光電センサ40〜44の受光部48から光量Bの信号が出力された場合には、吸着シート32が破れて露出した強度保持層30からの反射光を受光したため、検知部50は、吸着シート32に破れが発生したと判定する。実施の形態の膜体16は、吸着シート32が黒色であり、強度保持層30が金属色(白色)なので、受光部48で受光される光量が図5の如く変化する。なお、破れ判定の基準値を光量Bと規定してもよいが、この場合、強度保持層30が確実に露出しなければ破れと判定しないため、破れ判定の基準値を光量Bより少ない光量Cとしている。
【0047】
これにより、実施の形態の吸着シート32の検査装置10によれば、ガラス基板Gを吸着保持する吸着シート32の破れを自動で検知でき、また、省人化を図ることができる。
【0048】
次に、3台の光電センサ40〜44を使用した吸着シート32の検査方法について説明する。
【0049】
図3に示すように、貼着ステージ22から研磨ステージ26に向けて膜体16が矢印A方向に搬送されてくると、まず、ガラス基板Gの左側短辺Gaと膜枠14とで囲まれる膜体16の露出領域16aが光電センサ40の上方を通過する際に、光電センサ40によって観察され、露出領域16aの吸着シート32の破れの有無が検知部50によって判定される。
【0050】
次に、膜体16が継続してA方向に搬送されてくると、ガラス基板Gの下側長辺Gbと膜枠14とで囲まれる膜体16の露出領域16bが光電センサ42の上方を通過する際に、光電センサ42によって観察され、露出領域16bの吸着シート32の破れの有無が検知部50によって判定される。これと同時に、ガラス基板Gの上側長辺Gcと膜枠14とで囲まれる膜体16の露出領域16cが光電センサ44の上方を通過する際に、光電センサ44によって観察され、露出領域16cの吸着シート32の破れの有無が検知部50によって判定される。
【0051】
次いで、膜体16が継続して搬送されてくると、ガラス基板Gの右側短辺Gdと膜枠14とで囲まれる膜体16の露出領域16dが光電センサ40の上方を通過する際に、光電センサ40によって観察され、露出領域16dの吸着シート32の破れの有無が検知部50によって判定される。
【0052】
すなわち、実施の形態の光電センサ40〜44は、研磨装置12における膜体16の移動経路に配置されているので、破れ検知用の専用ステージを研磨装置12に設けることなく吸着シート32の破れを検知できる。よって、ガラス基板Gの研磨に支障を与えることなく膜体16の破れを検知できる。
【0053】
なお、光電センサ42、44は、露出領域16b、16cを走査するように露出領域16b、16cの吸着シート32の状態を観察できるため、高精細な検出が可能となる。これと同様に、光電センサ40において高精細な検出を可能とするためには、光電センサ40の上方に露出領域16a、16dが位置したところで、膜体16の搬送を一時停止し、光電センサ40を露出領域16a、16dに沿って矢印B方向に移動させながら、露出領域16a、16dの吸着シート32の状態を観察すればよい。この場合の光電センサ40の移動方向は、膜体16の搬送方向Aに対して直交する方向であることが好ましい。
【0054】
また、実施の形態の膜体16は、支持体27と吸着シート32とからなる二層構造に構成されているが、三層構造の膜体52を使用することもできる。図6は、三層構造の膜体52の構成を示した断面斜視図である。
【0055】
前記三層構造の膜体52は、気密保持層28と強度保持層30とからなる支持体27と、吸着シート32との間に、アルミニウム又はステンレス等の金属製の中間シート54を介在させたものである。検知部50は、吸着シート32で反射された反射光の受光量から、中間シート54で反射された反射光の受光量に変化した際に吸着シート32の破れを検知する。
【0056】
また、本発明は支持体27が異なる構成の膜体に使用できる。図7は、支持体を金属製気密保持層56として、該金属性気密保持層56と吸着シート32からなる二層構造の膜体58の構造図である。前記二層構造の膜体58の場合、吸着シート32で反射された反射光の受光量から、金属製気密保持層56で反射された反射光の受光量に変化した際に、検知部50が吸着シート32の破れを検知する。
【0057】
更に、本発明は別の構造の膜体に使用できる。図8は、キャリア60に吸着シート32を直接取り付けた形態の構造図である。図8に示すように、キャリア60に吸着シート32を直接取り付けた、加圧流体を使用しない研磨装置の場合には、吸着シート32で反射された反射光の受光量から、キャリア60で反射された反射光の受光量に変化した際に、検知部50が吸着シート32の破れを検知する。
【0058】
一方、研磨装置12によるガラス基板Gの研磨中は、研磨液が研磨装置の近傍で飛散している。このため、図1に示すようにセンサ40、42(光電センサ44は不図示)の投光部46および受光部48を覆う保護具62を備えることが好ましい。
【0059】
本発明によれば、保護具62によって投光部46および受光部48を覆うことにより、センサ40〜44の未使用時に、研磨装置12からの研磨液によって、センサ40〜44が汚染されることを防止できる。
【0060】
また、実施の形態の研磨方法は、図3に示したように、ガラス基板Gが吸着されていない吸着シート16の露出領域16a〜16dを検査する。
【0061】
吸着シート16の破れの原因は、加圧流体だけの圧力ではなく、ガラス基板Gの貼付圧力によってガラス基板G周辺の吸着シート16が、すなわち、露出領域16a〜16dが膨らみ、膨らんだ箇所が研磨パッド24に接触して破れる。よって、センサ40〜44による吸着シート16の破れ検知箇所は、吸着シート16の露出領域16a〜16dであることが好ましい。
【0062】
更に、実施の形態の研磨方法によれば、吸着シート16の露出領域16a〜16dの同一箇所において、少なくとも2回以上の破れを検知部50が検出をしたときに、検知部50が吸着シート16の交換を促す信号を発生させることが好ましい。
【0063】
検知部50による1回の破れ検出では、誤検出の可能性がある。このため、検知部50が吸着シート16の露出領域16a〜16dの同一箇所において2回以上の破れを検出したときに破れたと判断し、検知部50が作業者に対して、吸着シート16の交換を促す信号を発生する。前記信号は、スピーカ64によるアラーム発生信号でもよく、研磨装置の操作用ディスプレイに警告文字として表示させる信号でもよい。
【符号の説明】
【0064】
G…ガラス基板、10…吸着シートの検査装置、12…研磨装置、14…膜枠、16…膜体、18…研磨ヘッド、20…キャリア、22…貼着ステージ、24…研磨パッド、26…研磨ステージ、28…気密保持層、30…強度保持層、32…吸着シート、34…本体ケーシング、36…スピンドル、38…研磨定盤、40、42、44…光電センサ、46…投光部、48…受光部、50…検知部、52…膜体、54…中間シート、56…金属製気密保持層、58…膜体、60…キャリア、62…保護具、64…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着し保持する吸着シートが取り付けられた支持体と、該支持体が取り付けられたキャリアとの間に加圧流体を供給し、前記キャリアと研磨パッドとを相対的に近づけて、前記基板の研磨面を前記研磨パッドに押し付けて研磨する基板の研磨装置であって、
前記吸着シートに向けて光を投光する投光部と光を受光する受光部とを備え、前記投光部から前記吸着シートに光を投光し、該吸着シートから反射した前記光を前記受光部によって受光するセンサと、前記センサの前記受光部で受光された光量の変化に基づいて前記吸着シートの破れを検知する検知部と、からなる吸着シートの検査装置を備えたことを特徴とする基板の研磨装置。
【請求項2】
前記支持体は、前記キャリアとの間で気密を保持する気密保持層と、該気密保持層を保持するとともに支持体を張設する張力に耐え得る所定の引張強さを有する強度保持層とからなる二層構造で構成され、
前記検出部は、前記吸着シートで反射された反射光の受光量から、前記強度保持層で反射された反射光の受光量に変化した際に、前記吸着シートの破れを検知する請求項1に記載の基板の研磨装置。
【請求項3】
前記吸着シートと前記支持体との間に金属製の中間シートが接着されており、
前記検出部は、前記吸着シートで反射された反射光の受光量から、前記中間シートで反射された反射光の受光量に変化した際に、前記吸着シートの破れを検知する請求項1または2に記載の基板の研磨装置。
【請求項4】
前記支持体は、前記キャリアとの間で気密を保持する金属性気密保持層で構成され、
前記検出部は、前記吸着シートで反射された反射光の受光量から、金属性気密保持層で反射された反射光の受光量に変化した際に、前記吸着シートの破れを検知する請求項1に記載の基板の研磨装置。
【請求項5】
基板を吸着し保持する吸着シートが取り付けられるキャリアと研磨パッドとを相対的に近づけて、前記基板の研磨面を前記研磨パッドに押し付けて研磨する基板の研磨装置であって、
前記吸着シートに向けて光を投光する投光部と光を受光する受光部とを備え、前記投光部から前記吸着シートに光を投光し、該吸着シートから反射した前記光を前記受光部によって受光するセンサと、前記センサの前記受光部で受光された光量の変化に基づいて前記吸着シートの破れを検知する検知部と、からなる吸着シートの検査装置を備えたことを特徴とする基板の研磨装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記吸着シートで反射された反射光の受光量から、前記キャリアで反射された反射光の受光量に変化した際に、前記吸着シートの破れを検知する請求項5に記載の基板の研磨装置。
【請求項7】
前記センサは、前記基板を前記吸着シートに吸着させて保持させる基板保持ステージと、前記基板の被研磨面を前記研磨パッドによって研磨する基板研磨ステージとの間に設置され、前記基板保持ステージと前記基板研磨ステージとの間で移動される前記吸着シートを前記センサによって観察し、前記検知部にて前記吸着シートの破れを検知する請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板の研磨装置。
【請求項8】
前記センサの前記受光部および前記投光部を覆う保護具を備えた請求項1〜7のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項9】
基板を吸着し保持する吸着シートが取り付けられた支持体と、該支持体が取り付けられたキャリアとの間に加圧流体を供給し、前記キャリアと研磨パッドとを相対的に近づけて、前記基板の研磨面を前記研磨パッドに押し付けて研磨する基板の研磨方法であって、
前記吸着シートに向けて光を投光する投光部と光を受光する受光部とを備えたセンサを用い、該センサの前記投光部から前記吸着シートに光を投光し、該吸着シートから反射した前記光を前記受光部によって受光し、前記受光部で受光された光量の変化に基づいて検知部が前記吸着シートの破れを検知することを特徴とする基板の研磨方法。
【請求項10】
基板を吸着し保持する吸着シートが取り付けられるキャリアと研磨パッドとを相対的に近づけて、前記基板の研磨面を前記研磨パッドに押し付けて研磨する基板の研磨方法であって、
前記吸着シートに向けて光を投光する投光部と光を受光する受光部とを備えたセンサを用い、該センサの前記投光部から前記吸着シートに光を投光し、該吸着シートから反射した前記光を前記受光部によって受光し、前記受光部で受光された光量の変化に基づいて検知部が前記吸着シートの破れを検知することを特徴とする基板の研磨方法。
【請求項11】
前記基板が吸着された前記吸着シートにおいて、前記基板が吸着されていない前記吸着シートの露出領域を検査する請求項9または10に記載の基板の研磨方法。
【請求項12】
前記吸着シートの前記露出領域の同一箇所において、少なくとも2回以上の破れ検出をしたときに、前記吸着シートの交換を促す信号を前記検知部が発生する請求項11に記載の基板の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−192471(P2012−192471A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56738(P2011−56738)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】