説明

基板の表面検査装置及び表面検査方法

【課題】
基板の表面上に存在する異物と結晶欠陥、或いは異物とスクラッチの判別精度の向上。
【解決手段】
光学系5a,6aは、基板Wの表面にレーザー光を照射し、該レーザー光の散乱光を異なる角度で受光して、第1及び第2の受光信号D1,D2を出力する。データ処理手段4では、前記第1及び第2の受光信号D1,D2のレベルの相関関係を定義する基準関数を設定し、該基準関数を比較基準として前記第1及び第2の受光信号D1,D2のレベルを比較し、この比較結果に基づき前記半導体基板の表面に存在する欠陥が複数の種類の異なる欠陥のいずれかに該当するかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に存在する欠陥を光学的に検出して欠陥種類の判別を行う表面検査装置及び表面検査方法に関し、特に、半導体ウェハの表面上に存在する、例えば、異物と結晶欠陥、或いは異物とスクラッチの判別精度を向上した表面検査装置及び表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハにあっては、その素材として、高純度の多結晶シリコンが使用される。この素材の表面に欠陥があるときは製品の品質に影響を及ぼすことから、表面検査装置により検査を行っている。ウェハ表面に発生する欠陥には、一例として、表面に付着した塵埃や研磨剤などの微小な異物、該表面に形成される結晶欠陥(COP(Crystal Originated Particle ))、研磨によって生ずるスクラッチ(研磨キズ)などがある。結晶欠陥は、シリコン原子が酸化されて微小な酸化物がウェハ表面に形成され、それがウェハの洗浄によりウェハ表面から欠落することによって生じるものであり、ウェハ表面上に凹み状に形成される。スクラッチは、ウェハ表面を研磨することによって生じるものであり、ウェハ表面上に線状に形成される。これらの各種欠陥の効果的な検出方法として、従来の表面検査装置は、ウェハ表面上にレーザー光を照射し、前記各欠陥の形状、大きさ等に対してそれぞれ異なって検出される光学的性質、すなわち、前記レーザー光の反射光や散乱光を受光して欠陥を検出する方法を用いている。
【0003】
従来、ウェハ表面に存在する異物と結晶欠陥を検出する表面検査装置として、例えば、特開平9−304289号公報に示された装置がある。上記の表面検査装置では、ウェハ表面に照射したレーザー光の散乱光を低角度受光器と中角度受光器の両方で受光したときに異物の検出処理を行い、該レーザー光の散乱光を中角度受光器でのみ受光したときに結晶欠陥の検出処理を行う。また、ウェハ表面に存在する異物とスクラッチを検出する表面検査装置として、次のような装置がある。ウェハ表面に照射したレーザー光の散乱光を中角度受光器と高角度受光器とで受光したときに異物の検出処理を行い、該レーザー光の散乱光を低角度受光器でのみ受光したときにスクラッチの検出処理を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、結晶欠陥は、シリコン酸化物の欠損程度によって深さや直径が異なってくることから、ウェハ表面上には様々な形状の結晶欠陥が発生する。そのため、結晶欠陥の形状によっては、中角度受光器の方向に指向性をもって散乱すべき散乱光が該方向以外の方向にも指向性をもって散乱することがある。そのような場合、上記の表面検査装置においては、中角度受光器だけでなく低角度受光器においても結晶欠陥による散乱光を受光してしまうため、結晶欠陥が異物として検出されてしまうという問題があった。また、スクラッチにおいても、その長さ、幅あるいは深さが異なる様々な形状のものがウェハ表面に発生する。そのため、スクラッチの形状によっては、低角度受光器の方向に指向性をもって散乱すべき散乱光が該方向以外の方向にも指向性をもって散乱することがある。そのような場合、上記の表面検査装置において、低角度受光系だけでなく中角度受光系と高角度受光系においてもスクラッチによる散乱光を受光してしまうため、スクラッチが異物として検出されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであり、基板の表面検査にあたって異物と結晶欠陥とを高精度に判別できる表面検査装置及び表面検査方法を提供しようとするものである。また、基板の表面検査にあたって異物とスクラッチとを高精度に判別できる表面検査装置及び表面検査方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基板の表面検査装置は、光ビーム(例えばレーザー光)を基板(例えば半導体基板)の表面に照射し、該レーザー光の散乱光を異なる角度で受光して、第1及び第2の受光信号を出力する光学系と、前記第1及び第2の受光信号のレベルの相関関係を定義する基準関数を設定し、該基準関数を比較基準として前記第1及び第2の受光信号のレベルを比較し、この比較結果に基づき前記半導体基板の表面に存在する欠陥が複数の種類の異なる欠陥のいずれかに該当するかを判別する判別手段とを具えることを特徴とする。これによれば、光学系が出力する第1及び第2の受光信号のレベルの相関関係を定義する基準関数を用いて該第1及び第2の受光信号のレベルを比較することにより、半導体基板の表面に存在する欠陥が複数の種類の異なる欠陥のいずれかに該当するかを判別するようにしたので、半導体基板の表面に存在する例えば異物と結晶欠陥とを高精度に判別することができるという優れた効果を奏する。また、基板の表面検査方法は、光ビーム(例えばレーザー光)を基板(例えば半導体基板)の表面に照射し、該光ビームの散乱光を異なる角度で受光して、第1及び第2の受光信号を出力する工程と、前記第1及び第2の受光信号のレベルの相関関係を定義する基準関数を設定し、該基準関数を比較基準として前記第1及び第2の受光信号のレベルを比較し、この比較結果に基づき前記基板の表面に存在する欠陥が複数の種類の異なる欠陥のいずれかに該当するかを判別する工程とを含むことを特徴とする。これによっても、上記の効果と同様な効果を得ることができる。
【0007】
また、本発明に係る基板の表面検査装置は、光ビーム(例えばレーザー光)を基板(例えば半導体基板)の表面に照射し、該レーザー光の散乱光を異なる角度で受光して、複数の受光信号を出力する光学系と、前記複数の受光信号のうち、所定の受光信号のレベルに所定の値を重み付けし、該所定の値を重み付けした受光信号のレベルと残りの受光信号のレベルの大小関係を判定することにより、前記半導体基板の表面に存在する複数の種類の異なる欠陥を判別する判別手段とを具えることを特徴とする。これによれば、光学系が出力する複数の受光信号のうち、所定の受光信号のレベルに所定の値を重み付けすることにより、該所定の値を重み付けした受光信号のレベルと残りの受光信号のレベルとを差別化できることから、当該所定の値を重み付けした受光信号のレベルと残りの受光信号のレベルの大小関係を判定することで、半導体基板の表面に存在する例えば異物とスクラッチとを高精度に判別することができるという優れた効果を奏する。また、基板の表面検査方法は、光ビーム(例えばレーザー光)を基板(例えば半導体基板)の表面に照射し、該光ビームの散乱光を異なる角度で受光して、複数の受光信号を出力する工程と、前記複数の受光信号のうち、所定の受光信号のレベルに所定の値を重み付けし、該所定の値を重み付けした受光信号のレベルと残りの受光信号のレベルの大小関係を判定することにより、前記基板の表面に存在する複数の種類の異なる欠陥を判別する工程とを含むことを特徴とする。これによっても、上記の効果と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る基板の表面検査装置の一実施例を示す概略構成図。
【図2】図1に示す表面検査装置に係るデータ処理部の構成ブロック図。
【図3】図1に示す表面検査装置による異物と結晶欠陥の判定処理のフローチャート。
【図4】垂直照射/中角度光学系と斜方照射/低角度光学系による異物と結晶欠陥の輝度レベルデータの分布状態を示す説明図。
【図5】異物と結晶欠陥との判定処理および判別処理を示す模式図。
【図6】本発明に係る表面検査装置の他の実施例を示す概略構成図。
【図7】図6に示す表面検査装置に係るデータ処理部の構成ブロック図。
【図8】図6に示す表面検査装置による異物とスクラッチの判定処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る基板の表面検査装置の一実施例を説明する。図1において、表面検査装置Aは、検査光学系1と、回転・移動テーブル2と、駆動制御部3と、データ処理部4とを含んでおり、回転・移動テーブル2には、高純度の多結晶シリコンを素材とする検査対象の半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」と記す)Wが搭載される。検査光学系1は、投光系と受光系とをそれぞれ備える斜方照射/低角度光学系5と、垂直照射/中角度光学系6とを有する。斜方照射/低角度光学系5は、斜方照射光源5aと、低角度受光器5bとを備えており、これらがウェハW表面上に発生した欠陥すなわち結晶欠陥を検出するように、ウェハW表面に対して所定の仰角をもって所定位置に各々配置される。垂直照射/中角度光学系6は、垂直照射光源6aと、中角度受光器6bとを備えており、これらがウェハW表面上に発生した欠陥すなわち異物と結晶欠陥とを検出するように、ウェハW表面に対して上記の斜方照射/低角度光学系5よりも高角度の仰角をもって所定位置に各々配置される。また、斜方照射/低角度光学系5は、斜方照射光源5aによりウェハW表面上にレーザースポットを形成するようにレーザー光L1を斜方照射し、該ウェハW表面上を螺旋状に走査する(これをスパイラル走査と呼ぶ)。垂直照射/中角度光学系6は、垂直照射光源6aによりウェハW表面上にレーザースポットを形成するようにレーザー光L2を垂直照射し、該ウェハW表面上を螺旋状に走査するスパイラル走査を行う。この実施例では、回転テーブル2aによりウェハW自体を回転させると同時に直線移動機構2bにより該ウェハWを半径方向に移動することで、スパイラル走査を行っている。勿論、ウェハW自体を回転テーブル2aにより回転させると同時に光学系5,6全体を該ウェハWの半径方向に移動することで、スパイラル走査を行うようにしてもよい。なお、回転・移動テーブル2は、駆動制御部3を介してデータ処理部4により制御される。
【0010】
スパイラル走査を行っている際に、ウェハW表面の平滑面に欠陥(異物や結晶欠陥)があると、その欠陥の凹凸によってレーザスポットが乱反射して散乱する。異物はウェハW表面上に塵埃や研磨剤が付着してできる凸状の欠陥であることから、ウェハW表面に異物が存在する場合、レーザースポットはランダムな方向に散乱する。一方、結晶欠陥はシリコン酸化物が欠落してできる凹み状の欠陥であることから、ウェハW表面に結晶欠陥が存在する場合、レーザースポットは特定の方向に強調されて散乱する。すなわち、異物はランダムな方向に散乱光(つまり、特定の方向に強調されることがない無指向性の散乱光)を発生させるが、結晶欠陥では凹み面に応じた指向性の鋭い散乱光を発生させる。従って、レーザースポットの同一の走査位置において、ウェハW表面上に異物があるときは、低角度受光器5bと中角度受光器6bとで異物による散乱光を受光するが、ウェハW表面上に結晶欠陥があるときには、中角度受光器6bでのみ結晶欠陥による散乱光を受光する。散乱光を受光した低角度受光器5bおよび中角度受光器6bは、それぞれ、図2に示すように、A/D変換器7,8を介して受光信号D1,D2をデータ処理部4に出力する。
【0011】
ところで、結晶欠陥は、シリコン酸化物の欠損程度によって深さや直径が異なることから、比較的大きな結晶欠陥、例えば、深さが浅く直径の大きい結晶欠陥では、凹み面が平面に近い面形状となることから、散乱光の指向性範囲が広がり、その散乱光が中角度受光器6bのみならず低角度受光器5bにも受光されることがある。このように、斜方照射/低角度光学系5および垂直照射/中角度光学系6により結晶欠陥による散乱光を受光したような場合には、そのままでは異物との区別がつかなくなるので、データ処理部4では、受光信号D1,D2の検出レベル(輝度レベル)の相関関係を定義する基準関数を設定した欠陥判定テーブルを用いて異物と結晶欠陥とを判別する判別処理を行う。すなわち、欠陥判定テーブルの基準関数を比較基準として受光信号D1,D2の検出レベルを比較し、この比較結果に基づきウェハW表面に存在する欠陥が異物と結晶欠陥のいずれかに該当するかを判別する。
【0012】
図3を参照してデータ処理部4での異物と結晶欠陥の判定処理および判別処理を説明する。データ処理部4のMPU4aは、メモリ4bに格納されているプログラムを実行し、低角度受光器5bより得られる受光信号D1と、中角度受光器6bより得られる受光信号D2をインターフェイス4cからデータバス4dを介して取り込む(ステップS1)。ステップS2では、受光信号D1を取り込んだか、受光信号D1とD2とを取り込んだかを判定する。受光信号D1を取り込んだ場合、結晶欠陥と判定して(ステップ3)、ステップ7に進む。受光信号D1とD2とを取り込んだ場合、ステップS4に進んで異物と結晶欠陥とを判別する判別処理を行う。散乱光測定方式の場合、垂直照射/中角度受光による異物および結晶欠陥の検出レベルが同じであるとき、斜方照射/低角度受光による異物の検出レベルは結晶欠陥の検出レベルよりも大きい。このような斜方照射/低角度受光による異物および結晶欠陥の検出レベルの大小関係は、垂直照射/中角度受光において、異物および結晶欠陥の検出レベルが同一であれば、該検出レベルの大・小に関係なく同じような傾向を示す。従って、上記のような斜方照射/低角度受光による異物および結晶欠陥の検出レベルの大小関係から異物の検出レベルデータと結晶欠陥の検出レベルデータとをある程度分離することができる。MPU4aは、上記の斜方照射/低角度受光による異物および結晶欠陥の検出レベルの相関関係に基づいて基準関数を設定した欠陥判定テーブルT(図4参照)を用いることで異物と結晶欠陥とを判別する。欠陥判定テーブルTは、図4に示すように、横軸(X軸)が垂直照射/中角度受光の受光信号D2の検出レベルに、縦軸(Y軸)が斜方照射/低角度受光の受光信号D1の検出レベルにそれぞれ対応しており、基準関数として、例えば、一次関数の弁別線Sが設定される。弁別線Sは、例えば、一般式y=ax+bで表される。ここに、「a」は、予め粒径が判っている複数種類の標準粒子について垂直照射/中角度受光および斜方照射/低角度受光で検出される検出レベルの検出比から求めた傾きであり、「b」は斜方照射/低角度受光の検出レベルのオフセットである。MPU4aでは、例えば、受光信号D1とD2の検出レベルデータが図4にて黒点で示す分布状態にあるとき、弁別線Sの下領域にある検出レベルデータのグループG1を結晶欠陥と判定し(ステップ5)、弁別線Sの上領域にある検出レベルデータのグループG2を異物と判定する(ステップ6)。そして、ステップS5において結晶欠陥と判定したグループG1をステップS3にて判定した結晶欠陥に追加する。このようにして、受光信号D1とD2における異物と結晶欠陥との判別処理が行われると、次に結晶欠陥と異物の大きさ判定処理が行われ(ステップS7)、次に結晶欠陥と異物の数を個別にカウントして総計を算出する検出値カウント処理が行われ(ステップS8)、次に結晶欠陥と異物をそれぞれCRT9にマップ表示するマップ出力処理が行われる(ステップS9)。
【0013】
上記のMPU4aによる異物と結晶欠陥との判定処理および判別処理を容易に理解できるよう図5にそれらの処理の模式図を示す。図5に示すよう、垂直照射/中角度受光でのみ受光信号D1が得られた場合に、結晶欠陥と判定する。一方、垂直照射/中角度受光と斜方照射/低角度受光の両方から受光信号D1,D2が得られ場合に、欠陥判定テーブルTを用いて弁別線Sにより異物と結晶欠陥とを判別する。なお、斜方照射/低角度受光でのみ得られる受光信号については未定義としてキャンセルする。欠陥判定テーブルTにおいて、例えば、受光信号D1,D2の検出レベルデータが黒点で示す分布状態であるときに、弁別線Sの下領域にある検出レベルデータのグループG1を結晶欠陥(COP)と判定し、弁別線Sの上領域にある検出レベルデータのグループG2を異物と判定する。このように、斜方照射/低角度光学系5と垂直照射/中角度光学系6の両方で得られる受光信号D1,D2の相関が弁別線Sの下領域か上領域かを判定することによって、異物と結晶欠陥とを高精度に判別することができる。そして、その結晶欠陥(COP)を既決の結晶欠陥(COP)の判定結果に追加する。
【0014】
この実施例に係る表面検査装置において、欠陥判定テーブルTに一次関数の弁別線Sを設定しているが、弁別線Sはこれに限られるものでなく、判別対象となる欠陥種類に応じて傾き「a」およびオフセット「b」を適切な値に設定可能である。また、弁別線Sとして、一次関数以外にも曲線を含む関数を弁別線として適宜設定してよい。
【0015】
次に、図6を参照して他の実施例の表面検査装置を説明する。この実施例では、異物とスクラッチを検出する表面検査装置を説明する。なお、前述した表面検査装置と共通する構成部材には同じ符号を付す。図6において、表面検査装置Bは、検査光学系1として、投光系と受光系とをそれぞれ備える斜方照射/低角度光学系5と、垂直照射/中・高角度光学系11とを有する。斜方照射/低角度光学系5は、斜方照射光源5aと、低角度受光器5bとを備えており、これらがウェハW表面上に発生した欠陥すなわちスクラッチを検出するように、ウェハW表面に対して所定の仰角をもって所定位置に各々配置される。垂直照射/中・高角度光学系11は、垂直照射光源11aと、中角度受光器11bと、高角度受光器11cとを備えており、これらがウェハW表面上に発生した欠陥すなわち異物を検出するように、ウェハW表面に対して上記の斜方照射/低角度光学系5よりも高角度な仰角をもって所定位置に各々配置される。上述の実施例と同じように、斜方照射/低角度光学系5は、斜方照射光源5aによりウェハW表面上にレーザースポットを形成するようにレーザー光L1を斜方照射し、該ウェハW表面上を螺旋状に走査するスパイラル走査を行う。垂直照射/中・高角度光学系11は、垂直照射光源6aによりウェハW表面上にレーザースポットを形成するようにレーザー光L2を垂直照射し、該ウェハW表面上を螺旋上に走査するスパイラル走査を行う。この実施例においても、回転テーブル2aによりウェハW自体を回転させると同時に直線移動機構2bにより該ウェハWを半径方向に移動することで、スパイラル走査を行っている。勿論、ウェハW自体を回転テーブル2aにより回転させると同時に光学系5,11全体を該ウェハWの半径方向に移動することで、スパイラル走査を行うようにしてもよい。
【0016】
スパイラル走査を行っている際に、ウェハW表面の平滑面に欠陥(異物やスクラッチ)があると、その欠陥の凹凸によってレーザスポットが乱反射して散乱する。上述したように、異物はウェハW表面上に塵埃や研磨剤が付着してできる凸状の欠陥であることから、ウェハW表面に異物が存在する場合、レーザースポットはランダムな方向に散乱する。一方、スクラッチはウェハW表面を研磨してできる線状の凹み欠陥であることから、ウェハW表面にスクラッチが存在する場合、レーザースポットは特定の方向に強調されて散乱する。すなわち、異物はランダムな方向に散乱光(つまり、特定の方向に強調されることがない無指向性の散乱光)を発生させるが、スクラッチでは深さや幅に応じた指向性の鋭い散乱光を発生させる。従って、レーザースポットの同一の走査位置において、ウェハW表面上に異物があるときは、中角度受光器11bと、高角度受光器11cとで異物による散乱光を受光するが、ウェハW表面上にスクラッチがあるときには、低角度受光器5bでのみスクラッチによる散乱光を受光する。散乱光を受光した低角度受光器5b、中角度受光器11bおよび高角度受光器11cは、それぞれ、図7に示すように、A/D変換器12,13,14を介して受光信号D3,D4,D5をデータ処理部4に出力する。
【0017】
ところで、スクラッチは、ウェハW表面を研磨してできる線状の凹み程度によって深さや幅が異なることから、比較的大きなスクラッチ、例えば、深さが浅く幅の大きいスクラッチでは、凹み面が平面に近い面形状となることから、散乱光の指向性範囲が広がり、その散乱光が低角度受光器5bのみならず中角度受光器11bおよび高角度受光器11cにも受光されることがある。特に、高角度受光器11cにおいては、比較的大きなスクラッチによる散乱光が検出される。なお、中角度受光器11bは、高角度受光器11cで受光されない散乱光を受光するためのものであり、高角度受光器11cの補完的な役割を果たすものとして用いられる。垂直照射/中・高角度光学系11でスクラッチによる散乱光を受光したような場合には、そのままでは異物との区別がつかなくなるので、データ処理部4では、受光信号D3,D4,D5の検出レベルデータ(輝度レベルデータ)のうち、受信信号D4,D5の検出レベルデータに所定の値を重み付けして、残りの受光信号D3の検出レベルデータとの大小関係を判定することにより、異物とスクラッチとを判別する判別処理を行う。
【0018】
図8を参照してデータ処理部4での異物とスクラッチの判定処理および判別処理を説明する。データ処理部4のMPU4aは、メモリ4bに格納されているプログラムを実行し、低角度受光器5bより得られる受光信号D3と、中角度受光器11bおよび高角度受光器11cより得られる受光信号D4,D5をインターフェイス4cからデータバス4dを介して取り込む(ステップS11)。ステップS12では、受光信号D3を取り込んだか、受光信号D3とD4とD5とを取り込んだかを判定する。受光信号D3を取り込んだ場合、スクラッチと判定して(ステップ13)、ステップ17に進む。受光信号D3とD4とD5とを取り込んだ場合、ステップS14に進んで異物とスクラッチとを判別する判別処理を行う。すなわち、ステップS14では、受光信号D4,D5の検出レベルデータの加算値に対して所定の係数Kを積算して得られる値つまりK(D4+D5)より得られる値と、残りの受光信号D3の検出レベルデータとの大小関係を比較する。このように、垂直照射/中・高角度光学系11から得られる受光信号D4,D5の検出レベルデータに所定の係数Kを重み付けすることで、該所定の係数Kを重み付けした受光信号D4,D5と、斜方照射/低角度光学系5から得られる受光信号D3を差別化することができる。ステップS14において、K(D4+D5)≧D3dの場合(ステップS14の「Y」)にスクラッチと判定し(ステップS15)、K(D4d+D5d)<D3dの場合(ステップS14の「N」)には異物と判定する(ステップS16)。そして、ステップS16において判定したスクラッチをステップS13にて判定したスクラッチに追加する。このようにして、受信信号D3,D4,D5における異物とスクラッチとの判別処理が行われると、次にスクラッチと異物の大きさ判定処理が行われ(ステップS17)、次にスクラッチと異物の数を個別にカウントして総計を算出する検出値カウント処理が行われ(ステップS18)、次にスクラッチと異物をそれぞれCRT9にマップ表示するマップ出力処理が行われる(ステップS19)。
【0019】
以上のように、この実施例では、垂直照射/中・高角度光学系11から得られる受光信号D4,D5の検出レベルデータに所定の値を重み付けして、斜方照射/低角度光学系5から得られる受光信号D3の検出レベルデータと比較するので、異物とスクラッチとを高精度に判別することができる。勿論、検査光学系1の垂直照射/中・高角度光学系11に代えて、垂直照射光源11aと、高角度受光器11cとを備える垂直照射/高角度光学系を用いてもよい。
【0020】
また、上述の各実施例では、光ビームにレーザー光を用いた場合を例に説明したが、レーザー光に代えて白色光や紫外線照射光を用いてもよい。また、各実施例では、レーザー光がウェハ表面上を螺旋状に走査するスパイラル走査で説明しているが、走査はXYの二次元走査であってもよい。さらに、各実施例では、半導体ウェハ基板の表面検査について説明しているが、ガラス基板等の表面検査にも適用できる。
【0021】
以上説明したように、本発明に係る基板の表面検査装置及び表面検査方法によれば、光学系が出力する第1及び第2の受光信号のレベルの相関関係を定義する基準関数を用いて該第1及び第2の受光信号のレベルを比較することにより、基板の表面に存在する欠陥が複数の種類の異なる欠陥のいずれかに該当するかを判別するようにしたので、基板の表面に存在する例えば異物と結晶欠陥とを高精度に判別することができる。また、光学系が出力する複数の受光信号のうち、所定の受光信号のレベルに所定の値を重み付けすることにより、該所定の値を重み付けした受光信号のレベルと残りの受光信号のレベルとを差別化できることから、当該所定の値を重み付けした受光信号のレベルと残りの受光信号のレベルの大小関係を判定することで、基板の表面に存在する例えば異物とスクラッチとを高精度に判別することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 検査光学系 4 データ処理部
5 斜方照射/低角度光学系 5a 斜方照射光源
5b 低角度受光器 6 垂直照射/中角度光学系
6a 垂直照射光源 6b 中角度受光器
11 垂直照射/中・高角度光学系 11a 垂直照射光源
11b 中角度受光器 11c 高角度受光器
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを基板の表面に照射し、該光ビームの散乱光を異なる角度で受光して、第1及び第2の受光信号を出力する光学系と、
前記第1及び第2の受光信号のレベルの相関関係を定義する基準関数を設定し、該基準関数を比較基準として前記第1及び第2の受光信号のレベルを比較し、この比較結果に基づき前記基板の表面に存在する欠陥が複数の種類の異なる欠陥のいずれかに該当するかを判別する判別手段とを具える基板の表面検査装置。
【請求項2】
光ビームを基板の表面に照射し、該光ビームの散乱光を異なる角度で受光して、複数の受光信号を出力する光学系と、
前記複数の受光信号のうち、所定の受光信号のレベルに所定の値を重み付けし、該所定の値を重み付けした受光信号のレベルと残りの受光信号のレベルの大小関係を判定することにより、前記基板の表面に存在する複数の種類の異なる欠陥を判別する判別手段とを具える基板の表面検査装置。
【請求項3】
光ビームを基板の表面に照射し、該光ビームの散乱光を異なる角度で受光して、第1及び第2の受光信号を出力する工程と、
前記第1及び第2の受光信号のレベルの相関関係を定義する基準関数を設定し、該基準関数を比較基準として前記第1及び第2の受光信号のレベルを比較し、この比較結果に基づき前記基板の表面に存在する欠陥が複数の種類の異なる欠陥のいずれかに該当するかを判別する工程とを含む基板の表面検査方法。
【請求項4】
光ビームを基板の表面に照射し、該光ビームの散乱光を異なる角度で受光して、複数の受光信号を出力する工程と、
前記複数の受光信号のうち、所定の受光信号のレベルに所定の値を重み付けし、該所定の値を重み付けした受光信号のレベルと残りの受光信号のレベルの大小関係を判定することにより、前記基板の表面に存在する複数の種類の異なる欠陥を判別する工程とを含む基板の表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−186492(P2009−186492A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125388(P2009−125388)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【分割の表示】特願2000−292676(P2000−292676)の分割
【原出願日】平成12年9月26日(2000.9.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】