説明

基板処理方法と基板処理装置

【課題】 簡易な構造と方法とで測定精度をより向上させることのできる基板処理装置と基板処理方法とを提供しようとする。
【解決手段】
従来基板を処理する基板処理方法にかわって、基板の面に対向する開口部と前記開口部に連通した内部空間とをもつ気相分解治具を用意する気相分解治具準備工程と、基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を前記内部空間に案内する第一蒸気案内工程と、基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を前記内部空間に案内する第二蒸気案内工程と、を備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法と基板処理装置とに係る。特に、基板を処理する溶液の取扱い方に特徴のある基板処理方法と基板処理装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶の製造設備や検査設備において、基板処理装置が使用される。
基板処理装置は、基板を検査するために前処理をする装置である。例えば、基板は、半導体ウエハー、液晶基板等の基板である。半導体ウエハーは、シリコン、ガリウム、炭化ケイ素等のウエハーである。
これらの基板の表面または内部に存在する不純物は、半導体、液晶等の性能に影響をあたえる。そこで、不純物の量を測定することが行われる。基板処理装置を用いて基板を処理した跡で、不純物の量を測定する。
基板処理装置は、基板のコンタミネーションを防止するために、簡易で確実な機構が要求される。
また、一部の基板処理装置が、半導体ウエハーの表面に形成された酸化膜や窒化膜等の薄膜の中の、超微量金属元素(例えば、ナトリウム、カリウム、鉄等)の不純物の量を正確に測定する前処理に用いられる。
また、一部の基板処理装置が、半導体ウエハーの内部に含まれた超微量金属元素(例えば、ナトリウム、カリウム、鉄等)の不純物の量を正確に測定する前処理に用いられる。
【0003】
半導体ウエハーの表面または内部に含まれる不純物を正確に測定する目的とその方法を簡単に説明する。
半導体ウエハーの表面に形成された酸化膜や窒化膜等の薄膜中に、不純物が含まれていいると、その不純物の量が微量であっても、半導体素子の電気的特性に大きな影響を与える。
また、半導体ウエハーの母材(シリコン単結晶体)に不純物が含まれていると、その不純物の量が微量であっても、半導体素子の電気的特性に大きな影響を与える。
【0004】
そのために、半導体ウエハーの表面に存在する不純物の量を正確に測定することが行われている。
最近、ウエハー表面に存在する不純物の量を測定するのに用いられていた二次イオン質量分析法やオージェ分光分析法や中性子放射化分析法に代わって、ふっ化物溶液を持ちいて、不純物の量を測定する。例えば、ふっ化物溶液はHF(ふっ化水素)水溶液である。
シリコンウエハーの表面の酸化膜をHF(ふっ化水素)水溶液で溶解する処理をおこなった後で、そのHF(ふっ化水素)水溶液を捕集して、HF(ふっ化水素)水溶液中の不純物を分析することが行われる。捕集したHF(ふっ化水素)水溶液の量が少なくすると、不純物の濃度が高くなり、測定精度が向上するという特徴を有する。
【0005】
基板の酸化膜をHF(ふっ化水素)水溶液で溶解する薄膜溶解法は、種々提唱されており、その代表的なものとして、気相分解法(VPD)と液滴分解法(DADD)がある。
気相分解法(VPD)では、HF(ふっ化水素)水溶液の蒸気に基板を曝し、基板の酸化層を溶解する。
液滴分解法(DADD)では、基板の表面にHF(ふっ化水素)水溶液を液適し、液滴により基板の酸化膜を溶解する。
その後で、基板の表面にHF(ふっ化水素)水溶液またはHF・HО混合水の液滴を滴下し、その液滴を基板の表面に付着したまま移動する。液滴に酸化膜の中の不純物が捕集される。その液滴中の不純物の量を計測することにより、基板表面の不純物の量を検査する。
【0006】
また、半導体ウエハーの内部に存在する不純物の量を測定するには、溶解液をもちいてシリコンウエハーの母材を溶解させて、その溶解したシリコン中の不純物を測定する。
例えば、溶解液をシリコン基板に付着させる。また、シリコン基板を溶解液に浸す。この方法では、基板の厚み方向の溶解深さを希望の通りにすることが、難しい。また、基板の表面の特定の領域のみを溶解させることが、難しい。
例えば、溶解液を気化させて、シリコン基板全面を気化した蒸気の雰囲気に暴露する。溶解液には、シリコンを溶解させる薬液が用いられる。例えば、薬液は、硝酸を主成分とする溶液である。シリコンウエハーの表面に析出した不純物を、溶液で捕集し、その溶液中の不純物を測定する。この方法では、基板の表面の均一な溶解が難しい。これは、溶解の過程で生ずる水滴が基板の表面に付着し、均一な溶解を阻害するためと推測される。
【0007】
【特許文献1】特開平02−272359号
【特許文献2】特開平02−028533号
【特許文献3】特開平08−233709号
【特許文献4】特開平02−229428号
【特許文献5】特開2004−335954号
【特許文献6】特開2004−212261号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の不具合に鑑み、基板の表面に存在する不純物を精度良く測定することができるための基板処理方法と基板処理装置を求められていた。
また、基板の表面を形成する層を除去した後の基板の深い層に含まれる不純物を測定することのできる基板処理方法と基板処理装置とを求められていた。
【0009】
本発明は以上に述べた問題点に鑑み案出されたもので、簡易な構造と方法とで測定精度をより向上させることのできる基板処理装置と基板処理方法とを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板を処理する基板処理方法を、基板の面に対向する開口部と前記開口部に連通した内部空間とをもつ気相分解治具を用意する気相分解治具準備工程と、基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を前記内部空間に案内する第一蒸気案内工程と、基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を前記内部空間に案内する第二蒸気案内工程と、を備えるものとした。
【0011】
上記本発明の構成により、気相分解治具が基板の面に対向する開口部と前記開口部に連通した内部空間とをもつ。基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を前記内部空間に案内し、または基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を前記内部空間に案内する。
その結果、内部空間に案内された前記第一蒸気または前記第二蒸気が開口部に対向する基板の表面の酸化膜または母材を溶解する。
【0012】
以下に、本発明の実施形態に係るいくつかの基板処理方法を説明する。本発明は、以下に記載した実施形態にいずれか、またはそれらの中の二つ以上が組み合わされた態様を含む。
【0013】
本発明の実施形態に係る基板処理方法は、前記第一蒸気案内工程が、前記第一容器に貯留した第一溶液の中にキャリアガスを吹き込む第一キャリアガス吹き込み工程と前記第一容器の中の前記第一蒸気を前記内部空間に案内する第一案内工程とを有し、前記第二蒸気案内工程が、前記第二容器に貯留した第二溶液の中にキャリアガスを吹き込む第二キャリアガス吹き込み工程と前記第二容器の中の前記第二蒸気を前記内部空間に案内する第二案内工程とを有し、前記第一蒸気案内工程と前記第二蒸気工程とを同時に実施する。
上記実施形態の構成により、前記第一容器に貯留した第一溶液の中にキャリアガスを吹き込んで前記第一容器の中の前記第一蒸気を前記内部空間に案内し、同時に前記第二容器に貯留した第二溶液の中にキャリアガスを吹き込んで前記第二容器の中の前記第二蒸気を前記内部空間に案内する。
その結果、前記第一蒸気と前記第二蒸気の混合した蒸気が内部空間に充満して、混合した蒸気が開口部に対向する基板の面の酸化膜と母材とを溶解する。
【0014】
本発明の実施形態に係る基板処理方法は、前記内部空間から気体を排出する気体排出工程を備え、前記気体排出工程を前記第一蒸気案内工程または前記第二蒸気案内工程を実施するのと同時に実施する。
上記実施形態の構成により、基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を前記内部空間に案内し、または基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を前記内部空間に案内し、内部空間から気体を排出する。
その結果、内部空間に案内された前記第一蒸気または前記第二蒸気が開口部に対向する基板の表面の酸化膜または母材を溶解し、溶解の結果として生じた成分が気体とともに排出される。
【0015】
本発明の実施形態に係る基板処理方法は、前記気相分解治具が前記内部空間を前記開口部に各々連通する第一内部空間と第二内部空間とに区画する隔壁を有し、前記第一蒸気案内工程が前記第一蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、前記第二蒸気案内工程が前記第二蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、前記気体排出工程が前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの他方から気体を排出する。
上記実施形態の構成により、前記第一蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、または前記第二蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの他方から蒸気を排出する。
その結果、前記第一蒸気または前記第二蒸気が、前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちのの一方から他方へ移動する際に、開口部に対向する基板の表面を溶解し、溶解の結果として生じた成分が気体とともに排出される。
【0016】
本発明の実施形態に係る基板処理方法は、基板の面に設定した特定領域の範囲内で前記開口部を移動する様に前記気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させる気相分解治具移動工程を備え、前記気相分解治具移動工程を実施中に第一蒸気案内工程または第二蒸気案内工程を実施する。
上記実施形態の構成により、基板の面に設定した特定領域の範囲内で前記開口部を移動する際に、前記第一蒸気または前記第二蒸気を前記内部空間に案内する。
その結果、前記気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させるに従って、前記第一蒸気または前記第二蒸気が基板の面の特定領域を範囲を溶解させる。
【0017】
本発明の実施形態に係る基板処理方法は、基板の面に付着させ前記特定領域の中で移動させた液滴を回収する液滴回収工程を、備え、前記気相分解治具移動工程を実施中に前記第一蒸気案内工程と前記第二蒸気案内工程とを同時に実施した後に、前記気相分解治具移動工程を実施中に前記第二蒸気案内工程を実施せずに前記第一蒸気案内工程を実施し、その後で前記液滴回収工程を実施する。
上記実施形態の構成により、気相分解治具を基板の表面に沿って相対移動させながら、前記第一蒸気と前記第二蒸気とを前記内部空間に充満させて特定領域の基板の酸化膜と母材とを溶解し、次に、前記第一蒸気を前記内部空間に充満させて特定領域の基板の酸化膜を溶解し、その後で基板の面の特定領域にある物質を液滴に含ませて、液滴を回収する。
その結果、基板の面の特定領域の中の溶解された母材および酸化膜に含まれる物質を取り込んだ液滴を回収できる。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板を処理する基板処理装置を、基板の面に対向した開口部と前記開口部に連通した内部空間とをもつ気相分解治具と、基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を前記内部空間に案内する第一蒸気案内機器と、基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を前記内部空間に案内する第二蒸気案内機器と、を備える、ものとした。
【0019】
上記本発明の構成により、気相分解治具が基板の面に対向した開口部と前記開口部に連通した内部空間とをもつ。第一蒸気案内機器が基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を前記内部空間に案内する。第二蒸気案内機器が基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を前記内部空間に案内する。
その結果、第一蒸気を前記内部空間に案内し、または第二蒸気を前記内部空間に案内するので、内部空間に案内された前記第一蒸気または前記第二蒸気が開口部に対向する基板の面にある酸化膜または母材を溶解する。
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係るいくつかの基板処理装置を説明する。本発明は、以下に記載した実施形態にいずれか、またはそれらの中の二つ以上が組み合わされた態様を含む。
【0021】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、前記第一蒸気案内機器が、前記第一溶液を貯留する第一容器と前記第一容器に貯留された前記第一溶液の中にキャリアガスを案内する第一ガス案内配管と前記第一容器の中の前記第一蒸気を前記内部空間に案内する第一蒸気案内配管と前記第一ガス案内配管または第一蒸気案内配管に設けられた第一開閉弁とを有し、前記第二蒸気案内機器が、前記第二溶液を貯留する第二容器と前記第二容器に貯留された前記第二溶液の中にキャリアガスを案内する第二ガス案内配管と前記第二容器の中の前記第二蒸気を前記内部空間に案内する第二蒸気案内配管と前記第二ガス案内配管または前記第二蒸気案内配管に設けられた第二開閉弁とを有し、スケジュールに従って前記第一開閉弁と前記第二開閉弁とを同時に開放可能である。
上記実施形態の構成により、第一容器が前記第一溶液を貯留する。第一ガス案内配管が前記第一容器に貯留された前記第一溶液の中にキャリアガスを案内する。第一蒸気案内配管が前記第一容器の中の前記第一蒸気を前記内部空間に案内する。第一開閉弁が前記第一ガス案内配管または前記第一蒸気案内配管に設けられる。第二容器が前記第二溶液を貯留する。第二ガス案内配管が前記第二容器に貯留された前記第二溶液の中にキャリアガスを案内する。第二蒸気案内配管が前記第二容器の中の前記第二蒸気を前記内部空間に案内する。第二開閉弁が前記第二ガス案内配管または前記第二蒸気案内配管に設けられる。
スケジュールに従って前記第一開閉弁と前記第二開閉弁とを別々に開閉可能である。
その結果、スケジュールに従って、前記第一蒸気と前記第二蒸気とを前記内部空間に充満させることを、選択的に行える。
【0022】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、前記内部空間から気体を排出する気体排出機器を、備え、前記気体排出機器を作動させると同時に、前記第一蒸気案内機器または前記第二蒸気案内機器を作動させることをできる。
上記実施形態の構成により、気体排出機器が前記内部空間から気体を排出する。
その結果、第一蒸気を前記内部空間に案内し、または第二蒸気を前記内部空間に案内するのと同時に、前記内部空間から気体を排出すると、内部空間に案内された前記第一蒸気または前記第二蒸気が開口部に対向する基板の表面を溶解し、溶解の結果として生じた気体が排出される。
【0023】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、前記気相分解治具が前記内部空間を前記開口部に各々連通する第一内部空間と第二内部空間とに区画する隔壁を有し、前記第一蒸気案内機器が前記第一蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、前記第二蒸気案内機器が前記第二蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、前記気体排出機器が前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの他方から気体を排出する、
上記実施形態の構成により、前記第一蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、または、前記第二蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの他方から気体を排出する。
その結果、前記第一蒸気または前記第二蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方から他方へ流すことをできる。
【0024】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、基板の面に設定した特定領域の範囲内で前記開口部を移動する様に前記気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させる気相分解治具移動機器を、備える。
上記実施形態の構成により、気相分解治具移動機器が基板の面に設定した特定領域の範囲内で前記開口部を移動する様に前記気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させる。
その結果、前記第一蒸気が基板の面の特定領域の酸化膜を溶解し、前記第二蒸気が基板の面の特定領域の母材を溶解させることをできる。
【0025】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、基板の面に付着させ前記特定領域の中で移動させた液滴を回収する液滴回収機器を、備える。
上記実施形態の構成により、液滴回収機器が基板の面に付着させ前記特定領域の中で移動させた液滴を回収する。
その結果、基板の面の特定領域の中の溶解された母材および酸化膜に含まれる物質を取り込んだ液滴を回収できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明に係る基板処理方法と基板処理装置は、その構成により、以下の効果を有する。
開口部と開口部に連通する内部空間をもった気相分解治具を用意し、開口部を基板の面に対向させ、基板の酸化膜を溶解できる前記第一蒸気を前記内部空間に案内し、または基板の母材を溶解できる前記第二蒸気を前記内部空間に案内し、前記内部空間から気体を排出するので、内部空間に案内された前記第一蒸気または前記第二蒸気が開口部に対向する基板の面の酸化膜または母材を溶解できる。
また、前記第一容器に前記第一液体を貯留し、前記第一液体にキャリアガスを吹き込み、発生した前記第一蒸気を前記内部空間に案内し、同時に、前記第二容器に前記第二液体を貯留し、前記第二液体にキャリアガスを吹き込み、発生した前記第二蒸気を内部空間に案内するので、前記第一蒸気と前記第二蒸気の混合した蒸気が内部空間に充満して、混合した蒸気が開口部に対向する基板の面を溶解する。
また、前記第一蒸気案内工程または前記第二蒸気案内工程を実施するのと同時に内部空間から気体を排出するので、基板の表面の酸化膜または母材が溶解した際に発生するガスを除去できる。
また、前記内部空間を開口部に共に連通する前記第一内部空間と前記第二内部空間に区画し、前記第一蒸気または前記第二蒸気を一方に案内し、他方から気体を排出するので、前記第一蒸気または前記第二蒸気が、前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちのの一方から他方へ移動する際に、開口部に対向する基板の表面を溶解する。
また、特定領域を基板の面に設定し、前記特定領域の範囲内で開口部を移動させるので、前記気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させるに従って、前記第一蒸気または前記第二蒸気が特定領域を範囲の基板の面を溶解させる。
また、前記気相分解治具移動工程を実施中に前記第一蒸気案内工程と前記第二蒸気案内工程とを同時に実施した後に、前記気相分解治具移動工程を実施中に第二蒸気案内工程を実施せずに第一蒸気案内工程を実施し、その後で前記液滴回収工程を実施するので、基板の面の特定領域の中の溶解された母材および酸化膜に含まれる物質を取り込んだ液滴を回収できる。
従って、簡易な構造と方法とで測定精度をより向上させることのできる基板処理装置と基板処理方法とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る基板処理装置の正面図である。図2は、本発明の実施形態に係る基板処理装置の平面図である。図3は、本発明の実施形態に係る第一の形式の気相分解治具の断面図である。図4は、本発明の実施形態に係る第二の形式の気相分解治具の断面図である。図5は、本発明の実施形態に係る第三の形式の気相分解治具の断面図である。図6は、本発明の実施形態に係る第四の形式の気相分解治具の断面図である。図7は、本発明の実施形態に係る液滴回収治具の断面図である。
基板処理装置1は、基板を処理する装置であり、気相分解治具20と第一蒸気案内機器30aと第二蒸気案内機器30bと気体排出機器40と気相分解治具移動機器50と液滴回収治具600とで構成される。
第一蒸気案内機器30aと第二蒸気案内機器30bとは、蒸気案内機器30と総称される。
【0029】
基板は、母材でできた板材である。酸化膜が、基板の表面に存在する。例えば、酸化膜は、空気中の酸素が結合した膜である。例えば、酸化膜は、人為的に酸化されてできた膜である。
母材は、複数の層で構成されてもよい。例えば、母材は、シリコンである。
例えば、第一層が基板10の表面を形成する層である。第二層が、第一層の下に重なる層である。第三層は、第二層の下に重なる層である。
例えば、表面の酸化膜が、がSiО、自然SiОである。
母材の第一層がシリコン膜(pоly−Si、a−Si、SОI−Si、SIMОX−Si等のうちのひとつ)であり、第二層が、層間膜(SiО、Si等のうちのひとつ)であり、第三層が基板(Si単結晶、ガラス等のうちのひとつ)である。
【0030】
気相分解治具20は、基板の面に対向する開口部と開口部に連通した内部空間とをもつ治具である。
例えば、開口部Oは、基板の表面の局所Gに対向する。
例えば、開口部Oは、基板の側面の局所Gに対向する。
以下で4つの形式の気相分解治具20を説明する。
【0031】
図3は、本発明の実施形態における第一の形式の気相分解治具20を示している。
第一の形式の気相分解治具20は、筒状の形状をしている。
中空空間Hが、筒状の内壁部22で囲まれる空間である。
筒状の下端が、基板の面の局所Gに対向する。
後述する蒸気案内治具30が、蒸気を筒状の内側に上方から案内する。
蒸気は、内部空間Hを通り筒状の下端の開口部Oから排出され、基板の表面の局所Gに当たる。基板の表面の局所の酸化膜または母材が溶解し、生成物が生じ、酸化膜または母材に含まれていた不純物等が残される。
【0032】
図4は、本発明の実施形態における第二の形式の気相分解治具20を示している。
第二の形式の気相分解治具20は、端部21と内壁部22と外壁部23と蒸気導入管24と蒸気排出管25とで構成される。
気相分解治具20の材質は、蒸気に腐食されない材質であり、例えば、PTFE等である。
端部21は、基板の表面にある局所Gに対向した開口部Оを取り囲み基板10の面に接触しない部分である。
内壁部22は、端部21から立ち上がり開口部Оに連通した内部空間Hを形成する部分である。内部空間Hは、開口部Оと蒸気導入管24と蒸気排出管25とを除いて密閉されている。
外壁部23は、気相分解治具20を囲う部分である。
蒸気導入管24は、外部から内部空間Hに蒸気を導入する為の管であり、例えば、外壁部23の上部から内壁部22へ突き抜けた管である。特に蒸気導入管24の下端は、内部空間Hの中央部に向いていてもよい。
蒸気排出管25は、内部空間Hから外部へ蒸気を排出する為の管であり、例えば、外壁部23の上部から内壁部22へ突き抜けた管である。
【0033】
図5は、本発明の実施形態における第三の形式の気相分解治具20を示している。
第三の形式の気相分解治具20は、端部21と内壁部22と外壁部23と蒸気導入管24と蒸気排出管25と隔壁26とで構成される。
気相分解治具20の材質は、蒸気に腐食されない材質であり、例えば、PTFE等である。
端部21は、基板の表面にある局所Gに対向した開口部Оを取り囲み基板10の面に接触しない部分である。
内壁部22は、端部21から立ち上がり開口部Оに連通した内部空間Hを形成する部分である。内部空間Hは、開口部Оと蒸気導入管24と蒸気排出管25との箇所を除いて密閉されている。
外壁部23は、気相分解治具20を囲っている部分である。
隔壁26は、内部空間Hを開口部Оに各々連通する第一内部空間H1と第二内部空間H2とに区画する部分である。蒸気案内機器30が、第一内部空間H1または第二内部空間H2のうちの一方に蒸気を導入し、気体排出機器40が、第一内部空間H1または第二内部空間H2のうちの他方から蒸気を排出する。
例えば、内部空間Hが円柱形の空洞であり、隔壁16は内部空間Hの中央に設けられ上端部を内壁部22の繋がった円筒形の部分である。円筒形の部分の内側が、第一内部空間H1を形成し。円筒形の部分の外側と内壁部22とで囲われる内部空間Hが、第二内部空間H2を形成する。
【0034】
図6は、本発明の実施形態における第四の形式の気相分解治具20を示している。
第四の形式の気相分解治具20は、端部21と内壁部22と外壁部23と蒸気導入管24と蒸気排出管25と隔壁26とで構成される。
気相分解治具20の材質は、蒸気に腐食されない材質であり、例えば、PTFE等である。
端部21は、基板の側面に位置する局所Gに対向した開口部Оを取り囲み基板10の面に接触しない部分である。
内壁部22は、端部21から立ち上がり開口部Оに連通した内部空間Hを形成する部分である。内部空間Hは、開口部Оと蒸気導入管24と蒸気排出管25と以外は密閉されている。
外壁部23は、気相分解治具20を囲っている部分である。
隔壁26は、内部空間Hを開口部Оに各々連通する第一内部空間H1と第二内部空間H2とに区画する部分である。蒸気導入機器が、第一内部空間H1または第二内部空間H2のうちの一方に蒸気を案内し、蒸気排出機器が、第一内部空間H1または第二内部空間H2のうちの他方から蒸気を排出する。
例えば、内部空間Hが横方向に向いた開口部Оに連通する空洞である。隔壁26の内側が、第一内部空間H1を形成し。隔壁26の外側と内壁部22とで囲われる内部空間Hが、第二内部空間H2を形成する。
第四の形式の気相分解治具20を用いると、基板の側面を形成する層を溶解することができる。
【0035】
第一蒸気案内機器30aは、基板10の酸化膜11を溶解可能な第一溶液2の蒸気である第一蒸気を内部空間Hに案内する機器である。
例えば、第一蒸気案内機器30aは、第一容器31aと第一ガス案内配管32aと第一蒸気案内配管33aと第一開閉弁34aと第一流量調整弁35aと第一加温プレート36aとガス加熱器37とで構成される。
第一溶液31aは、第一溶液2を貯留する容器である。
第一ガス案内配管32aは、第一容器31aに貯留された第一溶液2の中にキャリアガスを案内する配管である。
キャリアガスは、第一溶液または第二溶液と基板との溶解反応に影響をあたえない気体である。
例えば、キャリアガスは、窒素ガスである。
例えば、第一ガス案内配管32aは、第一容器31aに貯留された第一溶液2の中に窒素ガスを吹き込む。
第一蒸気案内配管33aは、第一容器31aの中の第一蒸気2を内部空間Hに案内する配管である。
第一開閉弁34aは、第一ガス案内配管32aまたは第一蒸気案内配管33aに設けられた開閉弁である。
例えば、第一開閉弁34aは、第一ガス案内配管32aに設けられる。
第一流量調整弁35aは、第一ガス案内配管32aまたは第一蒸気案内配管33aに設けられた流量調整弁である。
例えば、第一流量調整弁35aは、第一ガス案内配管32aに設けられる。
第一加温プレート36aは、第一容器31aに貯留する第一溶液2に加温する機器である。
ガス加熱器37は、キャリアガスを加熱する機器である。
【0036】
第二蒸気案内機器30bは、基板10の母材12を溶解可能な第二溶液2の蒸気である第二蒸気を内部空間Hに案内する機器である。
例えば、第二蒸気案内機器30bは、第二容器31bと第二ガス案内配管32bと第二蒸気案内配管33bと第二開閉弁34bと第二流量調整弁35bと第二加温プレート36bとガス加熱器37とで構成される。
第二容器31bは、第二溶液2を貯留する容器である。
第二ガス案内配管32bは、第二容器31bに貯留された第二溶液3の中にキャリアガスを案内する配管である。
キャリアガスは、第二溶液または第二溶液と基板との溶解反応に影響をあたえない気体である。
例えば、キャリアガスは、窒素ガスである。
例えば、第二ガス案内配管32bは、第二容器31bに貯留された第二溶液3の中に窒素ガスを吹き込む。
第二蒸気案内配管33bは、第二容器31bの中の第二蒸気2を内部空間Hに案内する配管である。
第二開閉弁34bは、第二ガス案内配管32bまたは第二蒸気案内配管33bに設けられた開閉弁である。
例えば、第二開閉弁34bは、第二ガス案内配管32bに設けられる。
第二流量調整弁35bは、第二ガス案内配管32bまたは第二蒸気案内配管33bに設けられた流量調整弁である。
例えば、第二流量調整弁35bは、第二ガス案内配管32bに設けられる。
第二加温プレート36bは、第二容器31bに貯留する第二溶液3に加温する機器である。
ガス加熱器37は、キャリアガスを加熱する機器である。
【0037】
気体排出機器40は、内部空間Hから気体を排出する機器である。
例えば、気体排出機器40は、気体排気アクチエータ41とガス配管42と気体案内配管43と排気流量調整弁44とで構成される。
気体排気アクチエータ41は、気体を排気する機械要素である。
例えば、気体排気アクチエータ41は、エゼクタである。
ガス配管42は、気体排気アクチエータ41を駆動するガスを気体排気アクチエータ41に導く配管である。
例えば、ガスは加圧された窒素ガスである。
例えば、ガス配管42は加圧窒素ガスをエゼクタに供給する。
気体案内配管43は、内部空間Hの気体を気体排気アクチエータ41に案内する配管である。
排気流量調整弁44は、ガス配管42の途中に設けられ、内部空間Hの気体の排気流量を調整するための流量調整弁である。
排気流量調整弁44でガスの流量を調整すると、エゼクタでの気体の排気速度を調整でき、気相分解治具20の内部空間Hでの反応速度を調整できる。例えば、ガスの流量を多くすると、気体の排気速度が大きくなり、内部空間Hでの第一蒸気と第二蒸気の濃度が低下して、基板の母材12を溶解する速度が低下する。従って、一定の時間での基板の母材の溶解する深さが浅くなる。
【0038】
気相分解治具移動機器50は、基板の面に設定した特定領域Aの範囲内で開口部Oを移動する様に気相分解治具20を基板10の面に沿って相対移動させる機器である。
例えば、気相分解治具移動機器50は、ベース51と基板回転機構52と治具揺動アーム53と制御機器(図示せず)で構成される。
ベース51は、基板回転機構52と治具揺動アーム53と制御機器(図示せず)を支持する支持構造である。
基板回転機構52は、水平に支持した基板10を水平に回転させる機構である。
治具揺動アーム53は、気相分解治具20と液滴回収治具60とを基板の面に沿って移動させる機構である。
制御機器は、基板回転機構52と治具揺動アーム53とを制御する。
【0039】
液滴回収治具60は、基板の面に付着させ特定領域Aの中で移動させた液滴を回収する治具である。
図7は、単体で用いられる液滴回収治具60を示す。
液滴回収治具60は、基板10の面に付着した液滴4を保持する治具である。例えば、液滴回収治具60は、露出した窪み61と窪み61に連通する液滴貯留空間62を持った治具である。
基板の表面または裏面に付着した液滴を保持する液滴回収治具60は、円筒形状の下部に設けられ下を向いた窪み61を持つ。
基板の側面にに付着した液滴を保持する液滴回収治具60は、円筒形状の側部に設けられ横を向いた窪み61を持つ。
液滴回収治具60を、基板の面に付着した液滴4を保持させて、基板の面に沿って移動させると、液滴4が基板の表面に付着した液滴4を捕集できる。
【0040】
次に、本発明の実施形態に係る基板処理方法を、説明する。
基板処理方法は、基板を処理する方法であって、気相分解治具準備工程S10と第一蒸気案内工程S20と第二蒸気案内工程S30と気体排出工程S40と気相分解治具移動工程S50と液滴回収工程S60とで構成される。
【0041】
気相分解治具準備工程S10は、基板の面に対向する開口部と前記開口部に連通した内部空間とをもつ気相分解治具を準備する工程である。
気相分解治具は、開口部と開口部に連通した内部空間とをもつ治具である。
例えば、気相分解装置の記載で説明した気相分解治具20を準備する。
気相分解治具移動機構50が、気相分解治具20を保持し、開口部Oを基板10の面に対向させる。
【0042】
第一蒸気案内工程S20は、基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を内部空間Hに案内する工程である。
第一蒸気案内工程S20は、第一キャリアガス吹き込み工程と第一案内工程とで構成されてもよい。
第一キャリアガス吹き込み工程は、第一容器31aに貯留した第一溶液2の中にキャリアガスを吹き込む工程である。キャリアガスは、第一溶液または第二溶液の溶解反応に影響をあたえない気体である。例えば、キャリアガスは窒素ガスである。
第一案内工程は、第一容器の中の第一蒸気を内部空間Hに案内する工程である。
第一蒸気が、内部空間Hに充満し、開口部Oに対面する基板の面の局所Gの酸化膜を溶解する。
【0043】
第二蒸気案内工程S30は、基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を内部空間Hに案内する。
第二蒸気案内工程S30は、第二キャリアガス吹き込み工程と第二案内工程とで構成されてもよい。
第二キャリアガス吹き込み工程は、第二容器31bに貯留した第二溶液3の中にキャリアガスを吹き込む工程である。キャリアガスは、第一溶液または第二溶液の溶解反応に影響をあたえない気体である。例えば、キャリアガスは窒素ガスである。
第二案内工程は、第二容器の中の第二蒸気を内部空間Hに案内する工程である。
第二蒸気が、内部空間Hに充満し、開口部Oに対面する基板の面の局所Gの母材を溶解する。時間が経過するに従い、蒸気が、母材を溶解する。
経過する時間を調整することにより溶解する母材の深さを調整できる。
【0044】
気体排出工程S40は、内部空間Hから気体を排出する工程である。
気体排出工程S40を第一蒸気案内工程S20または第二蒸気案内工程S30を実施するのと同時に実施する。
例えば、気体排出工程S40を実施するのと同時に、第一蒸気案内工程S20を実施し、第二蒸気案内工程S30を実施しない。
例えば、気体排出工程S40を実施するのと同時に、第二蒸気案内工程S30を実施し、第一蒸気案内工程S20を実施しない。
例えば、気体排出工程S40を実施するのと同時に、第一蒸気案内工程S20と第二蒸気案内工程S30とを実施する。
【0045】
気相分解治具移動工程S50は、基板の面に設定した特定領域の範囲内で開口部Oを移動する様に気相分解治具20を基板10の面に沿って相対移動させる工程である。
開口部Oが基板の面に設定した特定領域の範囲内で移動するので、内部空間に充満した第一蒸気が特定領域の酸化膜を溶解し、内部空間に充満した第二蒸気が特定領域の母材を溶解する。
内部空間に充満した第一蒸気と第二蒸気とが特定領域の酸化膜と母材を溶解する。
【0046】
液滴回収工程S60は、基板の面に付着させ特定領域の中で移動させた液滴を回収する工程である。
例えば、液体を基板の特定領域の範囲内に滴下して、その液滴を特定領域の範囲で基板の面に付着させたまま移動させる。液滴が、特定領域にある金属粒子等を取り込む。液滴を回収し、液滴内の金属粒子の量を測定すると、特定領域の中の母材または酸化膜中の金属粒子の量を特定できる。
液滴を特定領域の範囲で走査するのに、液滴回収治具60を用いてもよい。
気相分解治具移動工程S50を実施中に第一蒸気案内工程S20と第二蒸気案内工程S30とを同時に実施した後に、気相分解治具移動工程S50を実施中に第二蒸気案内工程S30を実施せずに第一蒸気案内工程S20を実施し、その後で液滴回収工程S60を実施してもよい。
【0047】
次に、本発明の実施形態にかかる基板処理装置と基板処理方法の作用を、一つの基板処理方法を例にして、図を基に、説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る基板処理方法の工程図である。図9は、本発明の実施形態に係る基板処理方法の作用説明図その1である。図10は、本発明の実施形態に係る基板処理方法の作用説明図その2である。
基板が半導体用シリコン基板である場合を例に説明する。
半導体用シリコン基板の母材は、シリコン単結晶である。
半導体用シリコン基板の酸化膜は、酸化シリコンである。
第一溶液は、HF(ふっ化水素)水溶液が主成分である溶液である。HF(ふっ化水素)水溶液は、酸化膜である酸化シリコンを溶解する。
第二溶液は、硝酸を主成分とする溶液である。硝酸は、母材であるシリコンを溶解する。
第3のタイプの気相分解治具20を使用する場合を例にして説明する。
【0048】
(ステップA)
気相分解治具準備工程S10を実施する。
気相分解治具20は、開口部と開口部に連通した内部空間とをもつ治具である。
基板処理装置1に処理対象のシリコン基板を置く。気相分解治具20を治具揺動アーム53にセットし、気相分解治具20の開口部Oを基板の面に対向させる。
【0049】
(ステップB)
気相分解治具移動工程S50を実施中に、第一蒸気案内工程S20と気体排出工程S40とを実施し、第二蒸気案内工程S30を実施しない。
基板の面に設定した特定領域の範囲内で開口部を移動する様に気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させると同時に、第一蒸気を内部空間に案内し、内部空間から気体を排出する。第二蒸気を内部空間に案内しない。
第一開閉弁を開状態にし、第二開閉弁を閉状態にし、気体排気機器40を作動させる。
キャリアガスが第一容器31aに貯留する第一溶液2に吹き込まれる。第一容器31aのなかで、第一蒸気が第一溶液2から発生する、第一蒸気が第一蒸気案内配管33aに案内されて、気相分解治具20の第一内部空間H1に入る。
第一蒸気は、開口部Oの側へ移動し、第二内部空間H2に移動する。内部空間に充満した第一蒸気が、開口部Oに対面した基板の表面の局所Gの酸化膜を溶解する。
酸化膜とHF(ふっ化水素)蒸気との反応により生じる気体状の生成物が、内部空間に混じる。
生成物の混じった気体が、内部空間Hから排気される。
内部空間に充満するHF(ふっ化水素)蒸気の濃度が一定に維持される。また、内部空間に充満する気体中に含まれる水分が、基板の表面に液体になって付着することが抑制される。
その結果、基板の特定領域の範囲内の表面に酸化膜に含まれていた金属不純物等が残る。
ステップBが完了すると、基板の表面の酸化膜が溶解し、母材が露出する。母材は、疎水性であるので、溶液を母材の面に落とすと、表面張力により盛り上がった液滴となる。
【0050】
(ステップC)
液滴回収工程S60を実施する。
液滴回収治具60を治具揺動アーム53に保持させる。
液滴回収治具60の窪み61を基板の表面の特定領域の範囲内に対向させる。
液体を、液滴貯留空間62を通して、基板の表面に落下させる。
液滴を窪み61に保持させて、液滴回収治具60を基板の表面に沿って移動させる。
液滴を特定領域の範囲で基板の面に付着させたまま移動させる。
液滴に、酸化膜に含まれた金属不純物等が取り込まれる。
液滴を回収し、分析装置に移す。
【0051】
(ステップD)
気相分解治具移動工程S50を実施中に、第一蒸気案内工程S20と第二蒸気案内工程S30と気体排出工程S40とを実施する。
基板の面に設定した特定領域の範囲内で開口部を移動する様に気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させると同時に、第一蒸気と第二蒸気とを内部空間に案内し、内部空間から気体を排出する。
第一開閉弁34aを開状態にし、第二開閉弁34bを開状態にし、気体排気機器40を作動させる。
キャリアガスが第一容器31aに貯留する第一溶液2に吹き込まれる。第一容器31aのなかで、第一蒸気が第一溶液2から発生する、第一蒸気が第一案内配管に案内されて、気相分解治具の第一内部空間H1に入る。
キャリアガスが第二容器31bに貯留する第二溶液3に吹き込まれる。第二容器31bのなかで、第二蒸気が第二溶液3から発生する、第二蒸気が第二案内配管に案内されて、気相分解治具の第一内部空間H1に入る。
第一蒸気と第二蒸気とは、開口部Oの側へ移動し、第二内部空間H2に移動する。内部空間に充満した第一蒸気と第二蒸気とが、開口部に対面した基板の表面の局所Gの酸化膜と母材とを溶解する。
ガスが、酸化膜とHF(ふっ化水素)蒸気との反応と母材と硝酸との反応により生じる。
ガスが、内部空間から排気される。
内部空間に充満するHF(ふっ化水素)蒸気の濃度と硝酸の濃度とが一定に維持される。また、ガス中に含まれる水分が、基板の表面に液体になって付着することが抑制される。
ステップDを完了すると、基板の面の特定領域の範囲内の母材の所定の層が溶解し、その層に含まれていた金属不純物等が残る。
【0052】
(ステップE)
気相分解治具移動工程S50を実施中に、第一蒸気案内工程S20と気体排出工程S40とを実施し、第二蒸気案内工程S30を実施しない。
基板の面に設定した特定領域の範囲内で開口部を移動する様に気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させると同時に、第一蒸気を内部空間に案内し、内部空間から気体を排出する。第二蒸気を内部空間に案内しない。
第一開閉弁を開状態にし、第二開閉弁を閉状態にし、気体排気機器40を作動させる。
キャリアガスが第一容器31aに貯留する第一溶液2に吹き込まれる。第一容器31aのなかで、第一蒸気が第一溶液2から発生する、第一蒸気が第一蒸気に案内されて、気相分解治具の第一内部空間H1に入る。
第一蒸気は、開口部Oの側へ移動し、第二内部空間H2に移動する。内部空間に充満した第一蒸気が、開口部に対面した基板の表面の局所Gの母材の表面にできた自然酸化膜を溶解する。
ガスが、自然酸化膜とHF(ふっ化水素)蒸気との反応により生じる。
ガスが、内部空間から排気される。
内部空間に充満するHF(ふっ化水素)蒸気の濃度が一定に維持される。また、ガス中に含まれる水分が、基板の表面に液体になって付着することが抑制される。
その結果、基板の特定領域の範囲内の表面に母材に含まれていた金属不純物等が残る。
【0053】
(ステップF)
液滴回収工程S60を実施する。
液滴回収治具60を治具揺動アーム53に保持させる。
液滴回収治具60の窪み61を基板の表面の特定領域の範囲内に対向させる。
液体を、液滴貯留空間62を通して、基板の表面に落下させる。
液滴を窪み61に保持させて、液滴回収治具60を基板の表面に沿って移動させる。
液滴を特定領域の範囲で走査する。
液滴に、母材に含まれていた金属不純物等が取り込まれる。
液滴を回収し、分析装置に移す。
【0054】
上述の実施形態に係る基板処理装置と基板処理方法とを用いれば、以下の効果を発揮する。
開口部Oと開口部Oに連通する内部空間Hをもった気相分解治具20を用意し、開口部Oを基板の面に対向させ、基板の酸化膜11(酸化シリコン)を溶解できる第一蒸気(HF(ふっ化水素)溶液を主成分とする溶液)を内部空間Hに案内し、または基板の母材12(シリコン)を溶解できる第二蒸気(硝酸を主成分とする溶液)を内部空間Hに案内し、内部空間Hから気体を排出するので、内部空間Hに案内された第一蒸気または第二蒸気が開口部Oに対向する基板10の面の局所Gの酸化膜11または母材12を溶解できる。
また、流量調整弁を調整することにより、第一蒸気の量と第二蒸気の量を所定の割合にすることができ、基板の面の溶解を調整できる。
また、第一容器に第一液体HF(ふっ化水素)溶液を主成分とする溶液)を貯留し、第一液体にキャリアガス(窒素ガス)を吹き込み、発生した第一蒸気を内部空間Hに案内し、同時に、第二容器に第二液体(硝酸を主成分とする溶液)を貯留し、第二液体にキャリアガス(窒素ガス)を吹き込み、発生した第二蒸気を内部空間Hに案内するので、第一蒸気と第二蒸気の混合した蒸気が内部空間Hに充満して、混合した蒸気が開口部Oに対向する基板の面の局所Gを溶解する。
また、第一蒸気案内工程S20または第二蒸気案内工程S30を実施するのと同時に内部空間Hから気体を排出するので、基板10の表面の酸化膜11または母材12が溶解した際に発生するガスを除去できる。
また、基板の酸化膜と母材の溶解によって生じた水分が気体にともなって排出されるので、液体の水分が基板の面に付着するのを抑制でき、基板の面を均一な深さに溶解できる。
また、内部空間Hを開口部Oに共に連通する第一内部空間H1と第二内部空間H2に区画し、第一蒸気または第二蒸気を一方に案内し、他方から気体を排出するので、第一蒸気または第二蒸気が、第一内部空間H1と第二内部空間H2のうちのの一方から他方へ移動する際に、開口部Oに対向する基板の表面の局所Gを溶解する。
また、特定領域を基板の面に設定し、特定領域の範囲内で開口部Oを移動させるので、気相分解治具20を基板10の面に沿って相対移動させるに従って、第一蒸気または第二蒸気が範囲の基板の面の特定領域を溶解させる。
また、気相分解治具移動工程S50を実施中に第一蒸気案内工程S20と第二蒸気案内工程S30とを同時に実施した後に、気相分解治具移動工程S50を実施中に第二蒸気案内工程S30を実施せずに第一蒸気案内工程S20を実施し、その後で液滴回収工程S60を実施するので、基板の面の特定領域の中の溶解された母材12および酸化膜11に含まれる物質を取り込んだ液滴を回収できる。
【0055】
本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。
ステップAからステップFまでの手順で進行する実施態様で説明したが、これに限定されず、工程をその他の組み合わせにより行ってもよい。
また、ステップAからステップFを実施したあと、さらにステップCからステップFまでを複数回繰り返してもよい。この様にすると、基板の深さ方向を複数の層に区画して、相互との不純物の混入程度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基板処理装置の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る第一の形式の気相分解治具の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る第二の形式の気相分解治具の断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る第三の形式の気相分解治具の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第四の形式の気相分解治具の断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る液滴回収治具の断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る基板処理方法の工程図である。
【図9】本発明の実施形態に係る基板処理方法の作用説明図その1である。
【図10】本発明の実施形態に係る基板処理方法の作用説明図その2である。
【符号の説明】
【0057】
A 特定領域
H 内部空間
H1 第一内部空間
H2 第二内部空間
О 開口部
G 局所
1 基板処理装置
2 第一溶液
3 第二溶液
4 液滴
10 基板
11 酸化膜
12 母材
20 気相分解治具
21 端部
22 内壁部
23 外壁部
24 蒸気導入管
25 蒸気排出管
26 隔壁
30 蒸気案内機器
30a 第一蒸気案内機器
31a 第一容器
32a 第一ガス案内配管
33a 第一蒸気案内配管
34a 第一開閉弁
35a 第一流量調整弁
36a 第一加温プレート
30b 第二蒸気案内機器
31b 第二容器
32b 第二ガス案内配管
33b 第二蒸気案内配管
34b 第二開閉弁
35b 第二流量調整弁
36b 第二加温プレート
37 ガス加熱器
40 気体排出機器
41 気体排気アクチエータ
42 ガス配管
43 気体案内配管
44 排気流量調整弁
50 気相分解治具移動機器
51 ベース
52 基板回転機構
53 治具揺動アーム
60 液滴回収治具
61 窪み
62 液滴貯留空間
S10 気相分解治具準備工程
S20 第一蒸気案内工程
S30 第二蒸気案内工程
S40 気体排出工程
S50 気相分解治具移動工程
S60 液滴回収工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理方法であって、
基板の面に対向する開口部と前記開口部に連通した内部空間とをもつ気相分解治具を用意する気相分解治具準備工程と、
基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を前記内部空間に案内する第一蒸気案内工程と、
基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を前記内部空間に案内する第二蒸気案内工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記第一蒸気案内工程が、前記第一容器に貯留した第一溶液の中にキャリアガスを吹き込む第一キャリアガス吹き込み工程と前記第一容器の中の前記第一蒸気を前記内部空間に案内する第一案内工程とを有し、
前記第二蒸気案内工程が、前記第二容器に貯留した第二溶液の中にキャリアガスを吹き込む第二キャリアガス吹き込み工程と前記第二容器の中の前記第二蒸気を前記内部空間に案内する第二案内工程とを有し、
前記第一蒸気案内工程と前記第二蒸気工程とを同時に実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記内部空間から気体を排出する気体排出工程を備え、
前記気体排出工程を前記第一蒸気案内工程または前記第二蒸気案内工程を実施するのと同時に実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記気相分解治具が前記内部空間を前記開口部に各々連通する第一内部空間と第二内部空間とに区画する隔壁を有し、
前記第一蒸気案内工程が前記第一蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、
前記第二蒸気案内工程が前記第二蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、
前記気体排出工程が前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの他方から気体を排出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
基板の面に設定した特定領域の範囲内で前記開口部を移動する様に前記気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させる気相分解治具移動工程を、
備え、
前記気相分解治具移動工程を実施中に第一蒸気案内工程または第二蒸気案内工程を実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
基板の面に付着させ前記特定領域の中で移動させた液滴を回収する液滴回収工程を、
備え、
前記気相分解治具移動工程を実施中に前記第一蒸気案内工程と前記第二蒸気案内工程とを同時に実施した後に、前記気相分解治具移動工程を実施中に前記第二蒸気案内工程を実施せずに前記第一蒸気案内工程を実施し、その後で前記液滴回収工程を実施する、
ことを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板の面に対向した開口部と前記開口部に連通した内部空間とをもつ気相分解治具と、
基板の酸化膜を溶解可能な第一溶液の蒸気である第一蒸気を前記内部空間に案内する第一蒸気案内機器と、
基板の母材を溶解可能な第二溶液の蒸気である第二蒸気を前記内部空間に案内する第二蒸気案内機器と、
を備える、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記第一蒸気案内機器が、前記第一溶液を貯留する第一容器と前記第一容器に貯留された前記第一溶液の中にキャリアガスを案内する第一ガス案内配管と前記第一容器の中の前記第一蒸気を前記内部空間に案内する第一蒸気案内配管と前記第一ガス案内配管または第一蒸気案内配管に設けられた第一開閉弁とを有し、
前記第二蒸気案内機器が、前記第二溶液を貯留する第二容器と前記第二容器に貯留された前記第二溶液の中にキャリアガスを案内する第二ガス案内配管と前記第二容器の中の前記第二蒸気を前記内部空間に案内する第二蒸気案内配管と前記第二ガス案内配管または前記第二蒸気案内配管に設けられた第二開閉弁とを有し、
スケジュールに従って前記第一開閉弁と前記第二開閉弁とを同時に開放可能である、
ことを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記内部空間から気体を排出する気体排出機器を、
備え、
前記気体排出機器を作動させると同時に、前記第一蒸気案内機器または前記第二蒸気案内機器を作動させることをできる、
ことを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記気相分解治具が前記内部空間を前記開口部に各々連通する第一内部空間と第二内部空間とに区画する隔壁を有し、
前記第一蒸気案内機器が前記第一蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、
前記第二蒸気案内機器が前記第二蒸気を前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの一方に案内し、
前記気体排出機器が前記第一内部空間と前記第二内部空間のうちの他方から気体を排出する、
ことを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板の面に設定した特定領域の範囲内で前記開口部を移動する様に前記気相分解治具を基板の面に沿って相対移動させる気相分解治具移動機器を、
備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項12】
基板の面に付着させ前記特定領域の中で移動させた液滴を回収する液滴回収機器を、
備える、
ことを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−198924(P2007−198924A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18284(P2006−18284)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(304000412)有限会社NAS技研 (10)
【Fターム(参考)】