説明

基板処理装置と基板処理方法

【課題】 簡易な構造と方法とで測定精度をより向上させることのできる基板処理装置と基板処理方法とを提供しようとする。
【解決手段】
従来の本発明に係る基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理装置にかわって、基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、保持治具を基板の面の上で相対移動させることをできる移動機構と、上下方向に長尺な部材であり下部開口から上部開口に向かって拡がる断面を持った空間を設けられたノズルと上部開口に連通される吐出口を持つシリンダとピストンとを有する液滴取り扱い機構と、を備え、移動機構が基板の面に付着した液滴に接触部を上側から接した保持治具を基板の面に沿って移動させた後で、移動機構が保持治具を所定の位置で上方へ移動させてから、中空空間を空にしたノズルの下部開口を所定の位置の面の近傍に位置させてピストンを直動させる、ものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理装置と基板処理方法とに係る。特に、基板に付着した液滴のハンドリング方法とその機構に特徴のある基板処理装置と基板処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶の製造設備や検査設備において、基板処理装置が使用される。
基板処理装置は、基板を検査するために前処理をする装置である。例えば、基板は、半導体ウエハー、液晶基板等の基板である。半導体ウエハーは、シリコン、ガリウム、炭化ケイ素等のウエハーである。
基板処理査装置は、基板のコンタミネーションを防止するために、簡易で確実な機構が要求される。
また、一部の基板処理装置が、半導体ウエハーの表面に形成された酸化膜や窒化膜等の薄膜の中の、超微量金属元素(例えば、ナトリウム、カリウム、鉄等)の不純物の量を正確に測定する前処理に用いられる。この基板処理装置では、基板を正確に位置決めすることが、不純物の量を正確に測定するために重要である。
【0003】
半導体ウエハーの表面の不純物を正確に測定する目的とその方法を簡単に説明する。
半導体ウエハーの表面に形成された酸化膜や窒化膜等の薄膜中に、不純物が含まれていいると、その不純物の量が微量であっても、半導体素子の電気的特性に大きな影響を与える。
従って、半導体素子の製造設備において、ウエハー表面から不純物の混入をできる限り抑制することが要請されている。
そのために、半導体ウエハーの表面に存在する不純物の量を正確に測定することが行われている。
最近、ウエハー表面に存在する不純物の量を測定するのに用いられていた二次イオン質量分析法やオージェ分光分析法や中性子放射化分析法に代わって、ふっ化物溶液を持ちいて、不純物の量を測定する。例えば、ふっ化物溶液はHF(ふっ化水素)水溶液である。
シリコンウエハーの表面の酸化膜をHF(ふっ化水素)水溶液で溶解する処理をおこなった後で、そのHF(ふっ化水素)水溶液を捕集して、HF(ふっ化水素)水溶液中の不純物を分析することが行われる。捕集したHF(ふっ化水素)水溶液の量が少なくすると、不純物の濃度が高くなり、測定精度が向上するという特徴を有する。
【0004】
基板の酸化膜をHF(ふっ化水素)水溶液で溶解する薄膜溶解法は、種々提唱されており、その代表的なものとして、気相分解法(VPD)と液滴分解法(DADD)がある。
気相分解法(VPD)では、HF(ふっ化水素)水溶液の蒸気に基板を曝し、基板の酸化層を溶解する。
液滴分解法(DADD)では、基板の表面にHF(ふっ化水素)水溶液を滴下し、液滴により基板の酸化膜を溶解する。
その後で、基板の表面にHF(ふっ化水素)水溶液またはHF・HО混合水の液滴を滴下し、その液滴を基板の表面に付着したまま移動する。液滴に酸化膜の中の不純物が捕集される。その液滴中の不純物の量を計測することにより、基板表面の不純物の量を検査する。
【0005】
液滴を基板の面で移動するために保持治具が用いられる。保持治具は、基板の面に付着した液滴に上側から接触する接触部を持つ。保持治具を基板の面に沿って移動すると、液滴は保持治具の接触部に生ずる表面張力に引っ張られて、基板の面を移動する。保持治具を、基板の面に想定される所定の領域で一筆書きをする様に移動すると、所定の領域にある溶解液を捕集することができる。
溶解液の捕集が済むと、保持治具を水平に移動して基板の横に置かれた容器に捕集した溶解液を回収する。
ところで、溶解液が保持治具に弱い力である表面張力で引っ張られて保持されているので、保持治具を基板の縁から容器の位置へ移動する際に、溶解液が保持治具から離れて落ちてしまうことがある。
また、保持治具を基板の面で持ち上げると、溶解液は基板の面に残ってしまうので、基板の面の処理をしたい領域が基板の縁を含まない場合でも、保持治具をその領域から基板の縁まで移動する必要があり、望まない箇所の溶解液も捕集していた。
【0006】
【特許文献1】特開平02−272359号
【特許文献2】特開平02−028533号
【特許文献3】特開平08−233709号
【特許文献4】特開平02−229428号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の不具合に鑑み、基板の表面の局所における不純物を精度良く測定することができ、基板の汚染を防止して測定精度を向上させることのできる基板処理装置と基板処理方法を求められていた。
【0008】
本発明は以上に述べた問題点に鑑み案出されたもので、簡易な構造と方法とで測定精度をより向上させることのできる基板処理装置と基板処理方法とを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理装置を、基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、前記保持治具を基板の面の上で相対移動させることをできる移動機構と、上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられたノズルと前記上部開口に連通される吐出口を持つシリンダと前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能なピストンとを有する液滴取り扱い機構と、を備え、前記移動機構が基板の面に付着した液滴に接触部を上側から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させた後で、前記移動機構が前記保持治具を所定の位置で上方へ移動させてから、前記中空空間を空にした前記ノズルの前記下部開口を前記所定の位置の面の近傍に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第1容積だけ拡張する様にピストンを直動させる、ものとした。
【0010】
上記本発明の構成により、保持治具の接触部が基板の面に付着した液滴に上方から接することをでき、移動機構が前記保持治具を基板の面の上で相対移動させることをでき、液滴取り扱い機構において、ノズルが上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられ、シリンダが前記上部開口に連通される吐出口を持ち、ピストンが前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能であり、前記移動機構が基板の面に付着した液滴に接触部を上側から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させるので、液滴が基板の面に接触しつつ保持治具に引っ張られて基板の面を移動し、前記移動機構が保持治具を所定の位置で上方へ移動させるので、液滴が保持治具から離れて基板の面に取り残され、前記中空空間を空にした前記ノズルの前記下部開口を前記所定の位置の面の近傍に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第1容積だけ拡張する様にピストンを直動させるので、液滴が前記ノズルの前記中空空間に吸い込まれて、液滴の取り扱いが容易になる。
【0011】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理装置は、液滴を貯留可能な容器を、備え、前記中空空間に液滴が入った前記ノズルの前記下部開口を容器の口の上に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させる。
上記実施形態の構成により、前記中空空間に液滴が入った前記ノズルの前記下部開口を容器の口の上に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させるので、第2容積に対応した量の液滴を容器に入れることができる。
【0012】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理装置は、前前記第1容積が前記保持治具の前記接触部に接触した液滴の体積よりも大きい。
上記実施形態の構成により、前前記第1容積が前記保持治具の前記接触部に接触した液滴の体積よりも大きいので、基板に残された液滴が前記中空空間に吸い込まれ、雰囲気の気体が中空空間に吸い込まれた場合も、気体が上に行くにしたがって拡がる断面を持った中空空間を上昇する間に液滴と分離する。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理装置を、基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、前記保持治具を基板の面の上で相対移動させることをできる移動機構と、上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられたノズルと前記上部開口に連通される吐出口を持つシリンダと前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能なピストンとを有する液滴取り扱い機構と、液滴を貯留可能な容器と、を備え、前記移動機構が基板の表面に付着した液滴に接触部を上方から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させた後で、液滴を前記容器に回収してから、前記中空空間に液体が入った前記ノズルの前記下部開口を回収された液滴の入った容器の口の上に位置して前記密閉空間を所定の容積である第3容積だけ縮小する様にピストンを直動させる、ものとした。
【0014】
上記本発明の構成により、保持治具の接触部が基板の面に付着した液滴に上方から接することをでき、移動機構が前記保持治具を基板の面の上で相対移動させることをでき、
液滴取り扱い機構において、ノズルが上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられ、シリンダが前記上部開口に連通される吐出口を持ち、ピストンが前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能であり、容器が液滴を貯留可能であり、前記移動機構が基板の表面に付着した液滴に接触部を上方から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させるので、液滴が基板の面に接触しつつ保持治具に引っ張られて基板の面を移動させた後で、液滴を前記容器に回収してから、前記中空空間に液体が入った前記ノズルの前記下部開口を回収された液滴の入った容器の口の上に位置して前記密閉空間を所定の容積である第3容積だけ縮小する様にピストンを直動させるので、液体がその容器に補充されて、容器の中の液体を第3容積に対応する量だけ増量させることができる。
【0015】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理装置は、回収された液滴の入った前記容器の重量を測定できる重量測定機器を、備え、前記第3容積が一定の値から前記重量を差し引いた値に対応する。
上記実施形態の構成により、重量測定機器が回収された液滴の入った前記容器の重量を測定でき、前記第3容積が一定の値から前記重量を差し引いた値に対応するので、容器に入った液体の総量を一定の値にすることができる。
【0016】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理装置は、前記重量測定機器が前記容器を下から支持する重量計と該重量計と前記容器とを上方から覆うカバーとを有し、基板処理装置がダウンフローのある清浄空間に設置される。
上記本発明の構成により、基板処理装置がダウンフローのある清浄空間に設置され、重量計が前記容器を下から支持して重量を計測し、カバーが前記重量計と前記容器とを上方から覆うので、ダウンフローが重量測定機器に与える影響を小さくし、液体の入った容器の重量の測定精度を上げることができる。
【0017】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理装置は、洗浄液を吹き出すノズル洗浄機構を、備え、前記中空空間を空にされた前記ノズルの前記下部開口を前記ノズル洗浄機構の吹き出す洗浄液に浸けて前記密閉空間を所定の容積である第4容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させる。
上記本発明の構成により、前記中空空間を空にされた前記ノズルの前記下部開口を前記ノズル洗浄機構の洗浄液に浸けて前記密閉空間を第4容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させるので、ノズルの中空空間を洗浄液で洗浄できる。
【0018】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理装置は、前記液滴取り扱い機構が、前記ピストンを直動させる直動アクチエータを有し、前記直動アクチエータが前記ピストンを前記所定の容積に対応したストロークだけ直動させる。
上記実施形態の構成により、前記直動アクチエータが前記ピストンを前記所定の容積に対応したストロークだけ直動させるので、前記密閉容器の容積を精度良く変化させ、中空空間に出入りする液体の量を精度良く調整できる。
【0019】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理方法を、基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられたノズルと前記上部開口に連通される吐出口を持つシリンダと前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能なピストンとを有する液滴取り扱い機構と、を準備する準備工程と、基板の面に付着した液滴に接触部を上側から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させる基板処理工程と、前記保持治具を所定の位置で上方へ移動させてから、前記中空空間を空にした前記ノズルの前記下部開口を基板の前記所定の位置の面の近傍に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第1容積だけ拡張する様にピストンを直動させる液滴吸引工程と、を備え、前記液滴吸引工程を前記基板処理工程の後で実施する、ものとした。
【0020】
上記本発明の構成により、保持治具の接触部が基板の面に付着した液滴に上方から接することをでき、液滴取り扱い機構において、ノズルが上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられ、シリンダが前記上部開口に連通される吐出口を持ち、ピストンが前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能であり、基板の面に付着した液滴に接触部を上側から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させるので、液滴が基板の面に接触しつつ保持治具に引っ張られて基板の面を移動し、保持治具を所定の位置で上方へ移動させるので、液滴が保持治具から離れて基板の面に取り残され、前記中空空間を空にした前記ノズルの前記下部開口を基板の前記所定の位置の面の近傍に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第1容積だけ拡張する様にピストンを直動させるので、液滴が前記ノズルの前記中空空間に吸い込まれて、液滴を取り扱うのが容易になる。
【0021】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理方法は、前記準備工程がさらに液滴を貯留可能な容器を準備し、前記中空空間に液滴が入った前記ノズルの前記下部開口を前記容器の口の上に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させる液滴排出工程と、を備える。
上記実施形態の構成により、前記中空空間に液滴が入った前記ノズルの前記下部開口を前記容器の口の上に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させるので、第2容積に対応した量の液滴を容器に入れることができる。
【0022】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理方法は、前記第1容積が前記保持治具の前記接触部に接触した液滴の体積よりも大きい。
上記実施形態の構成により、前記第1容積が前記保持治具の前記接触部に接触した液滴の体積よりも大きいので、基板に残された液滴が前記ノズルの中空空間に吸い込まれ、雰囲気の気体が吸い込まれた場合も、気体が上に行くにしたがって拡がる断面を持った中空空間を上昇する間に液滴と分離する。
【0023】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理方法を、基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられたノズルと前記上部開口に連通される吐出口を持つシリンダと前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能なピストンとを有する液滴取り扱い機構と、液滴を貯留可能な容器と、を準備する準備工程と、基板の表面に付着した液滴に前記接触部を上方から接した前記保持治具を基板の面に沿って相対移動させる基板処理工程と、液滴を前記容器に回収する液滴回収工程と、前記中空空間に液体が入った前記ノズルの前記下部開口を回収された液滴の入った前記容器の口の上に位置して前記密閉空間を所定の容積である第3容積だけ縮小する様にピストンを直動させる溶液補充工程と、を備えるものとした。
【0024】
上記本発明の構成により、保持治具の接触部が基板の面に付着した液滴に上方から接することをでき、液滴取り扱い機構において、ノズルが上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられ、シリンダが前記上部開口に連通される吐出口を持ち、ピストンが前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能であり、容器が液滴を貯留可能であり、基板の表面に付着した液滴に前記接触部を上方から接した前記保持治具を基板の面に沿って相対移動させるので、液滴が基板の面に接触しつつ保持治具に引っ張られて基板の面を移動し、液滴を前記容器に回収し、前記中空空間に液体が入った前記ノズルの前記下部開口を回収された液滴の入った前記容器の口の上に位置して前記密閉空間を所定の容積である第3容積だけ縮小する様にピストンを直動させるので、液体がその容器に補充されて、容器の中の液体を第3容積に対応する量だけ増量させることができる。
【0025】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理方法は、回収された液滴の入った前記容器の重量を測定する重量測定工程と、を備え、前記第3容積が一定の値から前記重量を差し引いた値に対応する。
上記実施形態の構成により、回収された液滴の入った前記容器の重量を測定し、前記第3容積が一定の値から前記重量を差し引いた値に対応するので、容器に入った液体の総量を一定の値にすることができる。
【0026】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理方法は、前記重量測定工程がダウンフローのある清浄空間の中で前記容器を上方からカバーで覆う。
上記実施形態の構成により、ダウンフローのある清浄空間の中で前記容器を上方からカバーで覆うので、ダウンフローが測定に与える影響を小さくし、容器に入った液体の重量の測定精度を上げることができる。
【0027】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理方法は、前記中空空間を空にされた前記ノズルの前記下部開口を洗浄液に浸けて前記密閉空間を所定の容積である第4容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させるノズル洗浄工程と、を備える。
上記実施形態の構成により、前記中空空間を空にされた前記ノズルの前記下部開口を洗浄液に浸けて前記密閉空間を所定の容積である第4容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させるので、ノズルの中空空間を洗浄液で洗浄できる。
【0028】
さらに、本発明の実施形態に係る基板処理方法は、前記準備工程が、前記ピストンを直動させる直動アクチエータを準備し、前記直動アクチエータが前記ピストンを前記所定の容積に対応したストロークだけ直動させる。
上記実施形態の構成により、前記直動アクチエータが前記ピストンを前記所定の容積に対応したストロークだけ直動させるので、前記密閉容器の容積を精度良く変化させ、中空空間に出入りする液体の量を精度良く調整できる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明に係る別の基板処理装置と基板処理方法は、その構成により、以下の効果を有する。
基板の面に付着した液滴に上方から接する接触部をもった保持治具と下部開口から上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を備えたノズルと上部開口に連通した密閉空間を持ったシリンダ・ピストンを用意し、基板の面に付着した液滴に接触部を接した保持治具を基板の面に沿って移動するので、液滴が基板の面に接触しつつ保持治具に引っ張られて基板の面を移動し、その後で、保持治具を所定の位置で上方に移動するので、液滴が所定の位置で基板の面に取り残され、下部開口を前記所定の位置においてシリンダ・ピストンの密閉空間を拡げるので、液滴が前記ノズルの中空空間に吸い込まれて、液滴を取り扱うのが容易になる。
また、前記中空空間に液滴が入った前記ノズルの前記下部開口を空の容器の口の上に位置させて前記密閉空間を第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させるので、第2容積に対応した量の液滴を容器に入れることができる。
また、前記第1容積が保持治具が保持した液滴の体積よりも大きいので、基板に残された液滴が前記中空空間に吸い込まれ、雰囲気の気体が中空空間に吸い込まれた場合も、気体が上に行くにしたがって拡がる断面を持った中空空間を上昇する間に液滴と分離する。
また、基板の面に付着した液滴に上方から接する接触部をもった保持治具と下部開口から上部開口に向かっ拡がる断面を持った中空空間を備えたノズルと上部開口に連通した密閉空間を持ったシリンダ・ピストンを用意し、基板の面に付着した液滴に接触部を接した保持治具を基板の面に沿って移動するので、液滴が基板の面に接触しつつ保持治具に引っ張られて基板の面を移動し、その後、液滴を前記容器に回収し、前記中空空間に液体が入ったノズルの前記下部開口を容器の口の上に位置して前記密閉空間を第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させるので、液体がその容器に補充されて、容器の中の液体を第2容積に対応する量だけ増量させることができる。
また、回収された液滴の入った前記容器の重量を測定し、前記第3容積が一定の値から前記重量を差し引いた値に対応するので、容器に入った液体の総量を一定の値にすることができる。
また、基板処理装置がダウンフローのある清浄空間に設置され、カバーが前記測定機器と前記容器とを上方から覆うので、ダウンフローが測定に与える影響を小さくし、容器に入った液体の重量の測定精度を上げることができる。
また、前記中空空間を空にした前記ノズルの前記下部開口を洗浄液に浸けて前記密閉空間を第4容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させるので、ノズルの中空空間を洗浄液で洗浄できる。
また、前記直動アクチエータが前記ピストンを前記所定の容積に対応したストロークだけ直動させるので、前記密閉容器の容積を精度良く変化させ、中空空間に出入りする液体の量を精度良く調整できる。
従って、簡易な構造と方法とで測定精度をより向上させることのできる基板処理装置と基板処理方法とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る基板処理装置の平面図である。図2は、本発明の実施形態に係る液滴取り扱い機器の概念図である。図3は、本発明の実施形態に係る基板処理装置のA−A断面図である。図4は、本発明の実施形態に係る基板処理装置のB−B断面図である。図5は、本発明の実施形態に係る基板処理装置のB−B断面図である。図6は、本発明の実施形態に係る基板処理装置のB−B断面図である。図7は、本発明の実施形態に係る基板処理装置のC−C断面図である。図8は、本発明の実施形態に係る基板処理装置のD−D断面図である。
基板処理装置1は、基板Tを検査するために基板Tに液滴Pを付着させて移動させる装置であり、保持治具10と容器20と移動機構30と液滴取り扱い機構40とノズル交換機構50と保持治具洗浄機構60と薬液槽70とノズル洗浄槽80と受け皿ユニット90の重量測定機器100とで構成される。
例えば、基板Tは、多層膜基板である。
例えば、第一層が基板Tの表面を形成する層である。第二層が、第一層の下に重なる層である。第三層は、第二層の下に重なる層である。第四層は、第三層の下に重なる層である。
例えば、第一層がSiО、自然SiО、Siのうちのひとつであり、第二層がシリコン膜(pоly−Si、a−Si、SОI−Si、SIMОX−Si等のうちのひとつ)であり、第三層が、層間膜(SiО、Si等のうちのひとつ)であり、第四層が基板(Si単結晶、ガラス等のうちのひとつ)である。
【0032】
図1は、基板処理装置の全体配置を示す。
基板処理装置は、ダウンフローのある清浄空間に設置される。例えば、基板処理装置1は、ダウンフローの発生するクリーンベンチの中に設置される。
【0033】
保持治具10は、基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ治具である。
図3乃至図5は、後述する揺動アーム機構32の先端部に吸着された保持治具10を示している。
保持治具10は、フランジ部11と筒状部12と貫通孔13と接触部14とで構成される。
フランジ部11は、保持治具10の上部構造である。フランジ部11の上面が、後述する保持治具吸着機構33に負圧で吸着される吸着面となっている。
筒状部12は、保持治具10の下部構造である。筒状部12は、上下に伸びた筒状の部材である。
フランジ部11と筒状部12とは、一体の素材から削り出されている。
貫通孔13は、保持部材10を上下方向に貫通する孔である。
接触部14は、貫通孔13に連通し、筒状部12の下部に設けられる部分である。接触部14は、基板Tの面に付着した液滴Pに接触する部分である。
例えば、接触部14は、上に凹んだ窪みの内壁である。
接触部14を基板Tの面に付着した液滴Pに接触させて、保持治具10を基板Tの面に沿って水平移動させると、接触面14に発生する表面張力が液滴Tを引っ張る。従って、液滴Pは、保持治具10の移動と共に、基板の面に接触したまま、基板Tの面に沿って移動する。
【0034】
容器20は、液滴を貯留可能な容器である。
例えば、容器20は、広口の容器である。容器20の広口は、保持治具10のフランジ部11と筒状部12の境目に嵌合する。容器20は、後述する受け皿ユニット90に設けられた容器収納穴93に収納される。
【0035】
移動機構30は、保持治具10を基板Tの面の上で相対移動させることをできる機構である。
例えば、移動機構30は、基板回転機構31と揺動アーム機構32と保持治具吸着機構33とノズル取付口固定機構34とで構成される。
基板回転機構31は、基板Tを下から支えて垂直軸回りに回転させる機構である、基板Tは、表面を上にして基板回転機構31に支持され、外周の円弧部の中心を回転中心として水平に回転する。
揺動アーム機構32は、水平に延びたアームの後端部を垂直軸回りに回転し、先端部を揺動させる機構である。保持治具吸着機構33とノズル取付口固定機構34とがアームの先端部に固定される。
さらに、揺動アーム機構32は、上下方向に所定の距離だけ昇降可能になっている。
保持治具吸着機構33は、保持治具10を負圧により吸着して固定する機器であり、揺動アーム機構32の先端部に固定される。保持治具吸着機構33の吸着口35が、揺動アーム機構32の部材の中に設けられた真空配管に連通する。保持治具10のフランジ部11の上面が、保持治具吸着機構33の吸着口35に吸着される。
ノズル取付口固定機構34は、後述する液滴取り扱い機構40のノズル取付口42を固定する機構であり、揺動アーム機構32の先端部に固定される。
【0036】
液滴取り扱い機構40は、基板に付着させる液滴Pを取り扱う機構であり、ノズル41とノズル取付口42とフレキスブルホース43とシリンダ44とピストン45と直動アクチエータ46とで構成される。
ノズル41は、上下方向に長尺な部材であり、下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間Sを設けられる。
例えば、ノズル41は、樹脂製である。
例えば、ノズル41は、マイクロピッペット用のチップのうち上記の形状をしているものを流用することができる。
ノズル取付口42は、下端部にノズル41の上部開口に嵌合する嵌合部を持ち、上下に伸びた貫通孔をもつ部材である。ノズル取付口42は、ノズル取付口固定機構34に固定される。
フレキシブルホース43は、ノズル取付口42の貫通孔と後述するシリンダ44の吐出口47とを連通する柔軟製材料でできたホースである。従って、シリンダ44の吐出口47はノズル41の上部開口49に連通する。
シリンダ44は、吐出口を持った筒状部材である。
ピストン45は、シリンダ44の内部に吐出口47に連通し気体の充満した密閉空間Hを形成して直動可能な部材である。ピストン56を直動させると、密閉空間Hが所定の容積だけ、拡張または縮小する。
シリンダ56とピストン56とは、マイクロシリンジを流用することができる。
ピストン56をシリンダ56に押し込むと、ストロークに対応して密閉空間Hの容積が縮小する。
ピストン56をシリンダ56から引き抜くと、ストロークに対応して密閉空間Hの容積が拡張する。
直動アクチエータ46は、ピストン45を直動させるアクチエータである。
例えば、直動アクチエータ46は、ステップモータで駆動される直動機構である。
【0037】
液体がノズル41の中空空間Sに入っている状態で、直動アクチエータ46がピストン45を所定のストロークだけ押し込むと、所定のストロークに対応した容積だけ密閉容器が縮小し、所定の容積分の液体がノズル41の下部開口から排出される。
空の中空空間Sのノズル41の下部開口を液体に浸けた状態で、直動アクチエータ46がピストン45を所定のストロークだけ引き抜くと、所定のストロークに対応した容積だけ密閉容器が拡張して、所定の容積分の液体がノズル41の下部開口から吸引される。気体が、下部開口に吸引されると、中空空間Sの断面が下部開口から上部開口に向かって拡がっているので、気体が中空空間Sに満ちた液体の中を上昇し、気体と液体は液体の界面で分離する。
【0038】
ノズル交換機構50は、ノズル41を交換するための機構である。予め、新しいノズル41をノズル交換機構50にセットできる。
新しいノズル41をノズル交換機構50にセットした状態で、移動機構30によりノズル41を除去した液滴取り扱い機構40のノズル取付口42をノズル交換機構50の上部に移動させる。
ノズル取付口42が新しいノズル41の上部開口に嵌合する。
【0039】
保持治具洗浄機構60は、保持部材10を自動洗浄する機構である。
保持治具洗浄機構60は、保持治具10のフランジ部11と筒状部12の結合部を支えて、噴出口から噴出した洗浄液が、保持部材10の貫通孔13を洗浄する。
複数の保持治具洗浄機構60を備えてもよい。この様にすると、複数の保持治具10を洗浄しながら、交互に使用することができる。
図3は、2式の保持治具洗浄機構60を示している。この様にすると、2個の保持治具10を洗浄しながら、交互に使用できる。
保持部材吸着機構33に吸着された保持部材10を、保持部材洗浄機構60の上に位置させ、保持部材吸着機構33の負圧をなくすと、保持部材10が保持治具洗浄機構60に支持される。
洗浄液により保持部材10を洗浄する。
例えば、洗浄液は、純水、HF水溶液、または希釈した溶解液である。
洗浄液は、中央の噴出口から吹きだして、保持部材10を洗浄して、排液口から排出される。
【0040】
薬液槽70は、溶液を貯留できる槽である。溶解槽の上部にノズルを挿入可能な開口があいている。
例えば、溶液は、HF水溶液、溶解液または希釈した溶解液である。
【0041】
ノズル洗浄機器80は、ノズルを洗浄するための洗浄液を貯留する機器である。
ノズル洗浄機器80は、洗浄液を噴出する噴出口と洗浄液を排出する排出口を有する。
例えば、洗浄液は、純水、HF水溶液、または希釈した溶解液である。
洗浄液は、中央の噴出口から吹きだして、排液口から排出される。
【0042】
受け皿ユニット90は、容器20を受けるユニットであり、受け皿回転機構91と受け皿92とで構成される。
受け皿92は、円板状の部材である。複数の容器格納穴93が、縁に沿って所定のピッチで設けられる。
受け皿92は、円板の中心を通る垂直軸回りに回転する。
受け皿回転機構91は、受け皿92を下方から支持して回転させる機構である。
【0043】
重量測定機器100は、回収された液滴Pの入った容器20の重量を測定できる機器であり、重量計101とカバー102とで構成される。
重量計101は、容器を下から支持する重量計である。
重量計101は、受け皿92の下部に設けられ、1個の容器格納穴93に格納された容器20を持ち上げて、容器の重量を測定する。
カバー102は、重量計101と容器10とを上方から覆う部材である。この様にすると、カバー102がクリーンブース内を流れるダウンフローを遮るので、重量計101の計測精度がダウンフローの影響を受けなくなる。
【0044】
次に、本発明の実施形態に係る基板処理方法を、図を基に、説明する。
図9は、本発明の実施形態に係る基板処理装置の手順図である。
図10は、本発明の実施形態に係る液滴取り扱い機器の作用図である。
基板処理方法は、基板設置工程S10と溶液吸引工程S20と保持治具吸着工程S30と溶液滴下工程S40と基板処理工程S50と保持治具上昇工程S60と保持治具洗浄工程S70と液滴回収工程S80と重量測定工程S90とノズル洗浄工程S100と溶液補充工程S110とで構成される。
前述した基板処理装置を用いる場合を例に説明する。
【0045】
(基板設置工程S10)
基板設置工程S10は、基板Tを移動機構30に設置する工程である。
気相分解法(VPD)または液滴分解法(DADD)によって溶解液により表面を溶解された基板Tを、基板回転機構31に乗せる。
基板の円弧状縁の中心を基板回転機構31の回転中心に一致させる。
【0046】
(溶液吸引工程S20)
溶液吸引工程S20は、中空空間Sを空にしたノズル41の下部開口48を溶液に浸けて密閉空間Hを所定の容積だけ拡張する様にピストンを直動させる工程である。
揺動アーム機構32の先端部を薬液槽70の上に移動する。
ノズル41の下部開口48を薬液槽70に貯留した薬液に浸ける。
直動アクチエータ56により、密閉空間Hが所定の容積だけ拡張する様に、ピストン45を引き抜く。
ここで所定の容積は、基板の表面に滴下したい液滴の容積である。
溶液が、ノズル41の中空空間Sに満たされる。
【0047】
(保持治具吸着工程S30)
保持治具吸着工程S30は、保持治具10を移動機構30に保持させる工程である。
揺動アーム機構32の先端を保持治具洗浄機構60の上に移動する。
洗浄が済んだ保持治具10を保持治具吸着機構33に吸着する。
【0048】
(溶液滴下工程S40)
溶液滴下工程S40は、基板の表面に溶液を滴下する工程であり、中空空間に溶液が入ったノズルの下部開口を基板の表面の上に位置させて密閉空間Hを所定の容積だけ縮小する様にピストンを直動させる。
揺動アーム機構32の先端を基板Tの上に移動する。
揺動アーム機構32を下げて、保持治具10と基板の表面との距離の所定の寸法にする。
直動アクチエータ56により、密閉空間Hが所定の容積だけ縮小する様に、ピストン45を押し込む。
ノズル41の中空空間Sに満ちた薬液が、滴下して、基板の表面に付着する。
液滴が、保持治具10の接触部に接触する。
【0049】
(基板処理工程S50)
基板処理工程S50は、基板Tの表面に付着した液滴に接触部を上側から接した保持治具10を基板Tの面に沿って移動させる工程である。
揺動アーム機構32の先端を揺動させ、基板回転機構31により基板を回転させる。基板Tの回転と揺動アーム機構の揺動を同期させると、保持治具10の接触部14に接触した液滴Pが、基板Tの表面を所定の軌跡で移動する。
所定の軌跡を所定の領域内を一筆書きした軌跡にすると、液滴を基板の面の所定の領域内で移動することができる。
液滴に、基板の面に付着した溶解液を取り込むことができる。
【0050】
(保持治具上昇工程S60)
保持治具上昇工程は、保持治具を所定の位置で上方に移動させる工程である。
揺動アーム機構32と基板回転機構31の動きを停止し、保持治具10を基板の面の所定の位置で停止させる。
揺動アーム機構の先端を上昇させると、保持治具を所定の位置で上方に移動する。
保持治具が上方に移動し、液滴と接触部の接触がなくなり、液滴が基板の表面の所定の位置に取り残される。
【0051】
(保持治具洗浄工程S70)
保持治具洗浄工程S70は、保持治具10を洗浄する工程である。
揺動アーム機構32の先端を保持治具洗浄機構60の上に位置する。
保持治具10を保持治具洗浄機構60に乗せる。
保持治具吸着機構33の負圧をなくすと、保持治具10が保持治具吸着機構33から離れる。
保持治具洗浄機構60により保持治具10を洗浄する。
【0052】
(液滴回収工程S80)
液滴回収工程S80は、液滴を容器に回収する工程である。
液滴回収工程S80の一例を複数の工程に分離して説明する。
(液滴吸引工程S81)
液滴吸引工程S81は、中空空間Sを空にしたノズル41の下部開口48を基板Tの所定の位置の面の近傍に位置させて密閉空間Hを所定の容積である第1容積だけ拡張する様にピストンを直動させる工程である。
ノズル41の下部開口48を基板の所定の位置の表面の近傍に位置させる。
ノズル41の下部開口48を基板Tの表面に接触させない様に、可能なかぎり下げる。ノズルの下端と基板の表面の距離は、例えば、0.1mmである。
図6は、液滴を吸引する様子を示している。
密閉空間Hを所定の容積である第1容積だけ拡張する様にピストンを引き抜く。
液滴が、基板の表面から中空空間に移動する。
図10は、ノズル41の中空空間Sの様子を示している。
第1容積は、保持治具10の接触部に接触した液滴の体積よりも大きい。
この様にすると、液滴が、基板の表面に残ることなく、中空空間に入る。
雰囲気の気体が中空空間に入ると、気体は泡Aとなり中空空間に満ちた液滴の中を上昇し、液滴と分離する。
中空空間の断面が、下部開口から上部開口に向かうに従って拡がっているので、気泡Aが栓になって、液滴が上昇する恐れがない。
【0053】
(液滴排出工程S82)
液滴排出工程S82は、中空空間Sに液滴が入ったノズル41の下部開口48を容器20の口の上に位置させて密閉空間Hを所定の容積である第2容積だけ縮小する様にピストン45を直動させる工程である。
揺動アーム機構32の先端を受け皿ユニット90の容器収納穴93の上に位置する。容器20が、容器格納穴93に格納されている。
密閉空間を所定の容積である第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させる。
液滴が、ノズル41の中空空間Sから排出されて、容器20に入る。
【0054】
(重量測定工程S90)
重量測定工程S90は、回収された液滴の入った容器の重量を測定する工程である。
ダウンフローのある清浄空間の中で、容器20を上方からカバーで覆ってもよい。
この様にすると、ダウンフローが容器に直接にあたらないので、測定精度が向上する。
【0055】
(ノズル洗浄工程S100)
ノズル洗浄工程S100は、ノズル41の中空空間Sを洗浄する工程であり、中空空間Sを空にされたノズル41の下部開口48を洗浄液の中に浸けて密閉空間Hを所定の容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させる。
揺動アーム機構32の先端をノズル洗浄機構80の上に移動する。
ノズル41の下部開口をノズル洗浄機構80に降ろして、洗浄液に付ける。
密閉空間Hを所定の容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させると、洗浄液が中空空間に出入りする。従って、洗浄液が中空空間を洗浄する。
【0056】
(溶液補充工程S110)
溶液補充工程S110は、液滴の回収された容器の中に溶液を補充する工程であり、中空空間Sを液体に満たされたノズルの下部開口を回収された液滴の入った容器の口の上に位置して、密閉空間Hを所定の容積である第3容積だけ縮小する様にピストンを直動させる。
ノズル41の下部開口48を薬液槽70の溶液に浸けて、密閉空間Hを所定の容積だけ拡大する様にピストンを直動させる。その様にすると、中空空間Sが溶液が満たされる。 次に、ノズル41の下部開口48を溶液20の口の上に位置する。密閉空間Hを第3容積だけ縮小する様にピストンを直動させると、第3容積の溶液が容器20に入る。
第3容積が一定の値から前記重量を差し引いた値に対応させてもよい。
この様にすると、容器の中に満たされた液体の総量が一定になり、後工程での溶液検査工程での作業が容易になる。
【0057】
以下、基板設置工程S10から溶液補充工程S100を繰り返すと、受け皿ユニット90の容器収納穴93に収納された容器に溶液が満たされる。
【0058】
上述の実施形態に係る基板処理装置と基板処理方法とを用いれば、以下の効果を発揮する。
上下方向に長尺な部材であり下部開口48から上部開口49に向かって拡がる断面を持った中空空間Sを設けられたノズル41と上部開口49に連通される吐出口47を持つシリンダ・ピストン44、45とを有する液滴取り扱い機構40を基板処理装置に設けたので、溶液を取り扱うのが容易になる。
ノズル41の中空空間Sの断面が下部開口48から上部開口49に向かって拡がるので、下部開口48から雰囲気の気体が入った場合に、気体が気泡となり、中空空間Sに溜まった液体の中を上昇して、液体から分離する。従って、気体が栓になって、液体がノズルの上に昇る現象が生じることがない。
例えば、液滴取り扱い機構40を用いて、基板Tの表面に溶液Pを滴下したり、基板Tの表面に液滴Pを回収したり、回収した液滴を容器29に入れたり、容器20のなかに溶液を補充したりすることができる。
また、ノズル41とシリンダ・ピストン44、45の吐出口をフレキシブルホース43で連通したので、ノズル41の取り回しが容易になる。
またノズル41をノズル取付口42に嵌合する様にしたので、ノズル41の交換が容易にできる。
また、保持治具10の接触部に基板の付着した液滴を付着させて、保持治具10を基板の表面に沿って相対移動させるので、液滴を基板Tの表面に付着させた状態で、基板Tの表面を移動できる。
その後、保持治具10を上方に移動させるので、液滴を基板の表面にとり残すことができる。
また、液滴取り扱い機構40を用いて、基板Tの表面に残された液滴を吸引し、容器20に回収するので、液滴Pを落とす恐れがなくなる。
また、従来の方式である保持治具10に付着させた液滴を基板Tの表面を縁部まで移動させて、縁部から容器20の上へ移動して、液滴Pを容器20に回収する方式に較べて、縁部を移動しないのですむ。
また、液滴取り扱い機構40を用いて、基板Tの表面に付着した液滴を吸引する場合に、所定の容積が保持治具10の接触部14に接触した液滴の体積よりも大きくすると、基板の表面に付着した液滴のほとんどをノズルの中空空間に吸い込むことができる。
また、液滴取り扱い機構40を用いて、液滴が回収された容器20の中に溶液を補充するので、容器20の中の溶液の量を所望の量にすることができる。
また、回収された液滴の入った容器20の重量を測定できる重量測定機器100を設けたので、回収された液滴の総量を知ることが出来る。
また、液滴取り扱い機構40を用いて溶液を容器に補充する際に、密閉空間Hの減少する容積を一定の値から重量を差し引いた値に対応するので、容器20に入る溶液の総量を一定の値にすることができる。
また、基板処理装置をダウンフローのある清浄空間に設置した場合に、カバー102を重量計101に乗った容器20の上に設けたので、ダウンフローが容器20に当たるのを抑制し、重量測定機器100の測定精度を向上させることができる。
また、洗浄液を吹き出すノズル洗浄機構80を設け、ノズル41の下部開口48を洗浄液に浸けて、ピストン45を往復動する様にしたので、ノズル41の中空空間Sを洗浄液で洗浄することができる。
また、直動アクチエータ46でピストン・シリンダのピストン45を直動させる様にしたので、直動アクチエータ46の直動距離を制御することで、密閉空間の拡張または減少する容積を精度良く調整できる。
【0059】
本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。
1個のノズル交換機構と2個の保持治具洗浄機構と1個の薬液槽と1個のノズル洗浄機構とを隣あう様にならべた例で説明したがこれに限定されない。
液滴回収工程を、保持治具を上げて、基板の表面に残された液滴を、液滴取り扱い機構で吸引する例で説明したが、これに限定されず、例えば、保持治具を用いて、接触した液滴を基板の縁部まで移動させて直接に容器に回収する方法を用いてもよい。
ノズルの長手方向が垂直になった例で説明したが、これに限定されず、ノズルの長手方向が下部開口を下にして上部開口を上にして斜めになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る液滴取り扱い機器の概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基板処理装置のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る基板処理装置のB−B断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る基板処理装置のB−B断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る基板処理装置のB−B断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る基板処理装置のC−C断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る基板処理装置のD−D断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る基板処理装置の手順図である。
【図10】本発明の実施形態に係る液滴取り扱い機器の作用図である。
【符号の説明】
【0061】
A 気泡
T 基板
S 中空空間
H 密閉空間
P 液滴
10 保持治具
11 フランジ部
12 筒状部
13 貫通孔
14 接触部
20 容器
30 移動機構
31 基板回転機構
32 揺動アーム機構
33 保持治具吸着機構
34 ノズル取付口固定機構
40 液滴取り扱い機構
41 ノズル
42 ノズル取付口
43 フレキシブルホース
44 シリンダ
45 ピストン
46 直動アクチエータ
47 吐出口
48 下部開口
49 上部開口
50 ノズル交換機構
60 保持治具洗浄機構
70 薬液槽
80 ノズル洗浄機構
90 受け皿ユニット
91 受け皿回転機構
92 受け皿
93 容器収納穴
100 重量測定機器
101 重量計
102 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理装置であって、
基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、
前記保持治具を基板の面の上で相対移動させることをできる移動機構と、
上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられたノズルと前記上部開口に連通される吐出口を持つシリンダと前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能なピストンとを有する液滴取り扱い機構と、
を備え、
前記移動機構が基板の面に付着した液滴に接触部を上側から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させた後で、前記移動機構が前記保持治具を所定の位置で上方へ移動させてから、前記中空空間を空にした前記ノズルの前記下部開口を前記所定の位置の面の近傍に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第1容積だけ拡張する様にピストンを直動させる、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
液滴を貯留可能な容器を、
備え、
前記中空空間に液滴が入った前記ノズルの前記下部開口を容器の口の上に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1容積が前記保持治具の前記接触部に接触した液滴の体積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理装置であって、
基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、
前記保持治具を基板の面の上で相対移動させることをできる移動機構と、
上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられたノズルと前記上部開口に連通される吐出口を持つシリンダと前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能なピストンとを有する液滴取り扱い機構と、
液滴を貯留可能な容器と、
を備え、
前記移動機構が基板の表面に付着した液滴に接触部を上方から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させた後で、
液滴を前記容器に回収してから、前記中空空間に液体が入った前記ノズルの前記下部開口を回収された液滴の入った容器の口の上に位置して前記密閉空間を所定の容積である第3容積だけ縮小する様にピストンを直動させる、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
回収された液滴の入った前記容器の重量を測定できる重量測定機器を、
備え、
前記第3容積が一定の値から前記重量を差し引いた値に対応する、
ことを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記重量測定機器が前記容器を下から支持する重量計と該重量計と前記容器とを上方から覆うカバーとを有し、
基板処理装置がダウンフローのある清浄空間に設置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
洗浄液を吹き出すノズル洗浄機構を、
備え、
前記中空空間を空にされた前記ノズルの前記下部開口を前記ノズル洗浄機構の吹き出す洗浄液に浸けて前記密閉空間を所定の容積である第4容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させる、
ことを特徴とする請求項1または請求項4のうちのひとつに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記液滴取り扱い機構が、前記ピストンを直動させる直動アクチエータを有し、
前記直動アクチエータが前記ピストンを前記所定の容積に対応したストロークだけ直動させる、
ことを特徴とする請求項1または請求項4のうちのひとつに記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理方法であって、
基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、
上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられたノズルと前記上部開口に連通される吐出口を持つシリンダと前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能なピストンとを有する液滴取り扱い機構と、を準備する準備工程と、
基板の面に付着した液滴に接触部を上側から接した前記保持治具を基板の面に沿って移動させる基板処理工程と、
前記保持治具を所定の位置で上方へ移動させてから、前記中空空間を空にした前記ノズルの前記下部開口を基板の前記所定の位置の面の近傍に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第1容積だけ拡張する様にピストンを直動させる液滴吸引工程と、
を備え、
前記液滴吸引工程を前記基板処理工程の後で実施する、
ることを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
前記準備工程がさらに液滴を貯留可能な容器を準備し、
前記中空空間に液滴が入った前記ノズルの前記下部開口を前記容器の口の上に位置させて前記密閉空間を所定の容積である第2容積だけ縮小する様にピストンを直動させる液滴排出工程と、
を備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記第1容積が前記保持治具の前記接触部に接触した液滴の体積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項12】
基板を検査するために基板に液滴を付着させて移動させる基板処理方法であって、
基板の面に付着した液滴に上方から接することをできる接触部を持つ保持治具と、
上下方向に長尺な部材であり下部に位置する下部開口から上部に位置する上部開口に向かって拡がる断面を持った中空空間を設けられたノズルと前記上部開口に連通される吐出口を持つシリンダと前記シリンダの内部に前記吐出口に連通し気体の充満した密閉空間を形成して直動可能なピストンとを有する液滴取り扱い機構と、液滴を貯留可能な容器と、を準備する準備工程と、
基板の表面に付着した液滴に前記接触部を上方から接した前記保持治具を基板の面に沿って相対移動させる基板処理工程と、
液滴を前記容器に回収する液滴回収工程と、
前記中空空間に液体が入った前記ノズルの前記下部開口を回収された液滴の入った前記容器の口の上に位置して前記密閉空間を所定の容積である第3容積だけ縮小する様にピストンを直動させる溶液補充工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項13】
回収された液滴の入った前記容器の重量を測定する重量測定工程と、
を備え、
前記第3容積が一定の値から前記重量を差し引いた値に対応する、
ことを特徴とする請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記重量測定工程がダウンフローのある清浄空間の中で前記容器を上方からカバーで覆う、
ことを特徴とする請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記中空空間を空にされた前記ノズルの前記下部開口を洗浄液に浸けて前記密閉空間を所定の容積である第4容積だけ拡張しさらに縮小する様にピストンを往復動させるノズル洗浄工程と、
を備える、
ことを特徴とする請求項9または請求項12のうちのひとつに記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記準備工程が、前記ピストンを直動させる直動アクチエータを準備し
前記直動アクチエータが前記ピストンを前記所定の容積に対応したストロークだけ直動させる、
ことを特徴とする請求項9または請求項12のうちのひとつに記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−190858(P2006−190858A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2143(P2005−2143)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2004年12月1日から3日 SEMIジャパン開催の「セミコン・ジャパン 2004」に出品
【出願人】(304000412)有限会社NAS技研 (10)
【Fターム(参考)】