説明

基板処理装置

【課題】生産性の高いバッチ処理を採用して装置としての処理能力を高め、しかも、無電解めっき装置に適用した場合に、均一な膜厚のめっき膜を選択性よく形成できるようにする。
【解決手段】処理液を保持する処理槽10と、複数枚の基板Wを保持して処理槽10内の処理液Q中に浸漬させる基板ホルダ16と、処理槽10内の処理液Qの温度を制御する温度制御部52と、処理槽10内の処理液Qを循環させる処理液循環系40,42,44と、基板ホルダ16を、複数枚の基板Wを保持したまま処理槽10内の処理液Q中で回転させる回転機構26,28,30,32を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置に係り、特に生産性の高いバッチ処理を採用しながら、半導体ウエハ等の基板の表面に均一な膜厚の導電膜を成膜できるようにした無電解めっき装置やめっき前処理装置に使用して最適な基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスには、小型化、高速化、低消費電力化、及び高機能化といった様々な面での性能向上が求められており、それに向けて半導体デバイスの微細化や材料の見直し、新規素子構造の導入、アーキテクチャの変更などが幅広く検討されている。例えば、材料の見直しとしては、ゲート絶縁膜のhigh−k化、配線材料のアルミニウムから銅への変更、層間絶縁膜のlow−k化などが実施されている。更に、SOI(Silicon On Insulator)構造の採用やマルチコア化、並列処理化や低消費電力モードへの動作切替え、非シリコン基板の採用など、ハード、ソフト両面から工夫が行われている。
【0003】
一方、半導体デバイスの内部構造だけでなく、複数の半導体デバイスを組合せることで、システムとしての小型化、高速化を図る方法も検討されている。例えばSIP(System In Package)やMCM(Multi Chip Module)といった、パッケージレベルでの性能の向上がその例である。
【0004】
1つの半導体パッケージの中に複数の半導体デバイスを組み込む技術が1990年代後半にDRAMの容量拡大を目的として実用化された当初は、半導体パッケージ内に半導体チップを2枚重ねし、リードフレームにそれぞれの半導体チップの電極をワイヤボンディングする形式であり、実質的に2つの半導体チップが1つの半導体パッケージに入っただけの構造であった。しかしその後、種類の異なった半導体チップを同一面上に並べた面実装型MCM、さらに実装面積を小型化するために半導体チップを重ね合わせた積層型MCMへと発展している。
【0005】
半導体パッケージ内部の電気的な接続を考えた場合、複数の半導体チップを1つの半導体パッケージ内に収めると、半導体チップの数の増加に従い、半導体チップ間、及び半導体チップと基板(リードフレームやインターポーザ)間を電気的に接続するための配線の数が飛躍的に増大する。古くから半導体パッケージ内の配線には、金線を使用したワイヤボンディングが使用されてきたが、半導体パッケージ内の配線数が増加するに伴い、金線を通す物理的な空間を確保するのが難しくなっている。そこで半導体チップの表面にめっき法によりバンプを形成し、インターポーザに面実装する方法や、シリコン基板に貫通孔を開け、その中にめっき法で配線を形成して基板どうしを相互に接続する方法が開発されている。
【0006】
ワイヤボンディングを使わずに接続を行うこれらの方法には、電解めっき法や無電解めっき法が多く使用される。半導体分野では、電解めっき法は、バンプ形成や銅配線の形成に既に広く使用されており、今後も様々な応用が期待される。一方、無電解めっき法についても、めっきする下地の材質により反応性が変化することを利用して、選択的にめっきを行うことを目的に広く検討されている。例えば、半導体基板の表面に金属と絶縁膜が混在している場合、金属の表面にのみ無電解めっきでめっき膜を形成することが可能であり、パターン形成のためのリソグラフィ工程やエッチング工程を省略できる。しかし、これまでのところ、無電解めっきは、銅配線上の拡散防止膜の形成やバンプ形成に一部実用化されているものの、多くは開発段階であるのが現状である。
【0007】
半導体基板上に無電解めっきを行う場合の問題点としては、めっき膜厚の均一性や選択性などが挙げられる。また、無電解めっきは、電解めっきと比べて一般に成膜速度が遅いため、製造コストの面から枚葉処理よりもバッチ処理の方が有利である。これまで無電解めっき法は、キャリア治具に半導体ウエハを入れて固定し、半導体ウエハをキャリア治具ごとめっき液中に浸漬させる方法が広く採られてきた。一方、めっき膜厚の均一性は、無電解めっきが化学反応によることから、めっき液濃度、めっき液温度の分布が大きく影響するので、めっき膜厚の面内均一性が重要な工程では、一般に枚葉処理が行なわれている。これは、従来用いられていたキャリア治具では、めっき液の流れやめっき液温分布を均一に抑制するのが難しいためで、結果として、製造コストを重視すると、めっき膜厚や膜質に面内分布が発生してしまっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体デバイス製造用の無電解めっき装置は、半導体ウエハ等の基板を保持する基板カセットに基板を複数枚固定し、基板を基板カセットごとめっき液に浸漬するバッチ処理と、基板を1枚ずつめっき液に浸漬し、必要に応じて、めっき液の循環や撹拌を行う枚葉処理とがある。
【0009】
従来のバッチ処理では、めっき液は、めっき中に固定された基板表面に沿って一定方向に流れるため、基板表面に成膜されるめっき膜には、めっき液の流れ方向に依存した膜厚及び膜質分布が生じてしまう。また、枚葉処理においては、基板毎に適当なめっき液の撹拌が行えるため、成膜されるめっき膜の膜厚及び膜質分布を大幅に改善できる一方で、必要なめっき膜の膜厚が厚くなると処理時間が長くなってしまい、装置の処理能力に限界があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、生産性の高いバッチ処理を採用して装置としての処理能力を高め、しかも無電解めっき装置も適用した場合に、均一な膜厚のめっき膜を選択性よく形成できるようにした基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、処理液を保持する処理槽と、複数枚の基板を保持して前記処理槽内の処理液中に浸漬させる基板ホルダと、前記処理槽内の処理液の温度を制御する温度制御部と、前記処理槽内の処理液を循環させる処理液循環系と、前記基板ホルダを、複数枚の基板を保持したまま前記処理槽内の処理液中で回転させる回転機構を有することを特徴とする基板処理装置である。
【0012】
このように、複数枚の基板を基板ホルダで保持し処理槽内の処理液に浸漬させて処理を行う、バッチ処理方式を採用して、装置としての処理能力を高め、この処理中に、基板ホルダで保持した基板を基板ホルダと共に回転させることで、例えば無電解めっき装置に適用した場合に、基板表面に、めっき液の流れの方向に依存しない、膜厚及び膜質の面内均一性に優れためっき膜を選択性よく成膜することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記処理液循環系は、前記基板ホルダで保持して前記処理槽内の処理液に浸漬させた基板に向かって処理液を噴出する処理液噴出機構を有することを特徴とする請求項1記載の基板処理装置である。
【0014】
このように、基板ホルダで保持して処理槽内の処理液に浸漬させた基板に向かって処理液を噴出することで、処理液が基板表面に沿って互いに平行に流れるようにして、例えば無電解めっき装置に適用した場合に、成膜されるめっき膜の膜厚及び膜質の面内均一性を更に向上させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記回転機構の動力源として、前記処理液循環系によって前記処理槽内に導入される処理液の液流を使用することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0016】
これにより、モータ等の動力源を使用することなく、回転機構を回転させることができる。この場合、回転機構を高速で回転させることができず、また、処理を開始した初期に回転機構の回転が安定しない問題があるが、例えば無電解めっき装置に適用した場合、実際の無電解めっきにおけるめっき膜の成長速度は、一般に数10nm/min〜数100nm/min程度と比較的遅いため、めっき膜の膜厚や膜質への影響は小さい。
【0017】
請求項4に記載の発明は、基板処理装置は、処理液としてめっき液を使用する無電解めっき装置であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理装置である。
請求項5に記載の発明は、基板処理装置は、無電解めっきに先立って、基板表面に触媒を付与するめっき前処理装置であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数枚の基板を同時に処理するバッチ処理を採用して、装置としての生産能力を高め、しかも、例えば無電解めっき装置に適用した場合に、基板表面に、めっき液の流れ方向に依存することなく、膜厚及び膜質の面内均一性を改善しためっき膜を成膜することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例において、同一または相当する部材には同一符号を付して、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、無電解めっき装置に適用した、本発明の実施の形態の基板処理装置の要部を示す縦断正面図で、図2は、図1の縦断側面図である。この例では、処理液としてめっき液を使用し、めっき液(処理液)中に基板を浸漬させることで基板表面にめっき膜を成膜する、無電解めっき装置に適用しているが、処理液として、めっき液に代えて触媒付与液を使用し、触媒付与液(処理液)中に基板を浸漬させることで、基板表面に触媒付与処理(めっき前処理)を行うめっき前処理装置に適用することもできる。
【0021】
この無電解めっき装置(基板処理装置)は、内部に処理液としてのめっき液Qを保持するめっき槽(処理槽)10と、搬送アーム12に把持されて搬送される門形の支持枠14と、複数枚の半導体ウエハ等の基板Wを垂直に立てた状態で保持して、複数枚の基板Wをめっき槽10内のめっき液Qに同時に浸漬させる基板ホルダ16を備えている。支持枠14は、横方向に延びるケース本体18と、該ケース本体18の両側端に下方に向けて連結した一対の側ケース20を有しており、これらのケース本体18及び側ケース20は、防水されて密閉されている。基板ホルダ16は、側ケース20の下端に、軸受を介して、回転自在に支承されている。これにより、支持枠14及び基板ホルダ16は、支持枠14が搬送アーム12に把持されて搬送アーム12と一体に搬送される。
【0022】
基板ホルダ16は、円板状の一対の側板22と、該一対の側板22間を繋ぐ3本の支持棒24を備えており、この支持棒24の長さ方向に沿った所定の位置には、基板Wの外周部を嵌入させて基板Wを保持する溝が形成されている。そして、3本の支持棒24の内、1本の支持棒24は着脱自在で、1本の支持棒24を外した状態で、基板ホルダ16の所定の位置に基板Wを順次セットし、しかる後、外しておいて支持棒24を取付けることで、複数の基板Wを基板ホルダ16に固定(保持)するようになっている。なお、この例では、基板ホルダ16で8枚の基板Wを同時に保持するようにしているが、8枚に限ることなく、必要に応じて基板の保持枚数を増減してもよいことは勿論である。
【0023】
基板ホルダ16の一方の端部には従動プーリ26が、支持枠14のケース本体18内に収容された回転モータ28の出力軸には駆動プーリ30がそれぞれ固定され、この従動プーリ26と駆動プーリ30との間に駆動ベルト32が掛け渡されている。これによって、回転モータ28の駆動に伴って、駆動ベルト32を介して動力が伝達されて基板ホルダ16が回転する、回転機構が構成されている。回転モータ28の制御は、搬送アーム12に内蔵したモータ接点12a,12aを通して、回転モータ28に供給する電力を調整することで行う。
【0024】
従動プーリ26、駆動プーリ30及び駆動ベルト32からなる回転機構は、支持枠14の一方の側ケース20の内部に収納されている。また、回転モータ28は、前述のように、支持枠14のケース本体18内に収納されている。このように、従動プーリ26、駆動プーリ30及び駆動ベルト32(回転機構)を密閉され防水された側ケース20内に、回転モータ28を密閉され防水されたケース本体18内にそれぞれ収めることで、めっき槽10内のめっき液Qから基板ホルダ16を引き上げる時に結晶が発生したり、めっき槽10内のめっき液Qの濃度が変動したりするのを防止することができる。
【0025】
めっき槽10の周囲には、めっき槽10の周壁をオーバフローしためっき液Qを溜める循環槽40が配置され、この循環槽40内に溜められためっき液Qは、循環ポンプ42の駆動に伴って、めっき槽10の内部に戻って循環する。これによって、めっき液循環系が構成されている。
【0026】
この例では、めっき槽10の底部に、長さ方向に沿った所定の位置に多数のめっき液噴出口を有する複数のめっき液噴出管44が平行に配置されている。このめっき液噴出管44はめっき液噴出機構を構成する。これにより、循環ポンプ42から吐き出されためっき液は、複数枚の基板Wを保持した基板ホルダ16をめっき槽10内に配置した時、めっき液噴出管(めっき液噴出機構)44のめっき液噴出口から基板Wの表面に平行なめっき液の流れを発生させるようにめっき槽10内に噴出される。
【0027】
めっき槽10の上方には、めっき槽10の上方を覆って、めっき槽10内のめっき液Qの温度低下と蒸発による液組成の変動を抑制する蓋体46が配置され、この蓋体46は、循環槽40の上端にヒンジ48を介して開閉自在に取付けられている。蓋体46は、基板ホルダ16を搬送アーム12によりめっき槽10内に出し入れする際に、搬送アーム12の動作と連動して開閉するようになっている。
【0028】
めっき槽10と循環槽40には、これらの内部に溜まっためっき液Qの温度を測定する熱電対50a,50bがそれぞれ設置されている。この熱電対50a,50bからの出力信号は、温度制御部52に入力され、この温度制御部52からの出力信号により、循環槽40内に設置したヒータ54が制御され、これによって、めっき液温度が一定に保持される。
【0029】
めっき槽10には、図2に示すように、めっき液分析・補給装置56が付設され、めっき槽10内のめっき液Qは、めっき液分析・補給装置56に送られ、ここでめっき液Qの各成分の濃度やpH等が分析された後、必要なめっき液成分が補給されて循環槽40に戻される。
【0030】
以上の構成により、基板ホルダ16に保持された複数枚の基板Wを、基板ホルダ16ごとめっき槽10内のめっき液Qに浸漬させて基板Wの表面にめっきを行う。つまり、基板ホルダ16の内部に複数枚の基板Wを保持した後、基板ホルダ16を回転自在に支承する支持枠14を搬送アーム12で把持してめっき槽10の直上方まで搬送する。次に、搬送アーム12を下降させて、基板ホルダ16で保持した基板Wをめっき槽10内のめっき液Qに浸漬させる。この搬送アーム12の下降に伴って、基板ホルダ16の通過を阻害しないように、蓋体46が開閉する。
【0031】
このめっき時に、循環ポンプ42を駆動して、めっき液Qをめっき槽10と循環槽40との間を循環させながら、めっき液Qの液温を、温度制御部52により一定に保持する。同時に、回転モータ28を駆動して、基板ホルダ16を回転させて、基板ホルダ16で保持した複数の基板Wをめっき槽10内のめっき液Q中で鉛直方向に回転させる。これにより、バッチ処理方式を採用して、装置としての処理能力を高め、このめっき処理中に、基板ホルダ16で保持した基板Wを基板ホルダ16と共に回転させることで、基板表面に、めっき液の流れの方向に依存しない、膜厚及び膜質の面内均一性に優れためっき膜を選択性よく成膜することができる。
【0032】
特に、この例では、めっき槽10の底部に配置しためっき液噴出管44のめっき液噴出口からめっき槽10内にめっき液を噴出させてめっき液を循環させることで、基板Wの表面に平行なめっき液の流れを発生させて、基板表面に成膜されるめっき膜の膜厚及び膜質の面内均一性をより高めることができる。
【0033】
図3及び図4は、電解めっき装置に適用した、本発明の他の実施の形態の基板処理装置を示す。この無電解めっき装置(基板処理装置)の図1及び図2に示す無電解めっき装置と異なる点は、回転モータから基板ホルダへの動力伝達手段として、駆動ベルトの代わりにリンクを用いている点にある。
【0034】
つまり、この例の無電解めっき装置は、回転モータ28を別置きとして支持枠14の側方に配置し、この回転モータ28の駆動軸に固定した、小径の駆動ギア60と、支持枠14のケース本体18に回転自在に支承した、大径の被動ギア62とを互いに噛合せている。また、基板ホルダ16の回転軸16aを、一方の側ケース20の側方まで延出させ、この回転軸16aの端部に回転板64を固定している。そして、被動ギア62の中心から偏心した位置にリンク66の一端を、回転板64の中心から偏心した位置にリンク66の他端を、それぞれ回転自在に連結して、被動ギア62、回転板64及びリンク66で回転機構(平行運動機構)を構成し、これによって、被動ギア62の回転に伴って、回転機構(平行運動機構)を介して、基板ホルダ16の回転軸16aが回転するようにしている。
【0035】
この例にあっては、回転モータ28を、基板ホルダ16側ではなく、めっき槽10側に固定できるため、基板ホルダ16の軽量化が可能になり、搬送アーム12への負荷を軽減することができる。さらに、駆動系を密閉しないで済むため、メンテナンス性にも優れている。また、リンク66による動力の伝達により、めっき槽10内のめっき液Qが回転モータ28の付近まで引き上げられるのを比較的簡単に防止することができるといったメリットがある。
【0036】
図5及び図6は、無電解めっき装置に適用した、本発明の更に他の実施の形態の基板処理装置を示す。この例の無電解めっき装置(基板処理装置)の図1及び図2に示す無電解めっき装置と異なる点は、回転モータ及びその動力伝達手段を備えることなく、めっき液Qの流れにより基板ホルダ16を回転させるようにしている点にある。
【0037】
つまり、この例の無電解めっき装置は、基板ホルダ16として、側板22の側方に、周縁部に複数の羽根68aを有する羽根車68を取付けたものを使用し、更に、めっき液噴出管44のめっき液噴出口から噴出されるめっき液の流れの一部が羽根車68の羽根68aに直接当たるようにして、回転機構を構成している。これによって、循環ポンプ42の駆動に伴って、めっき液噴出管44のめっき液噴出口からめっき液が噴出されると、このめっき液の流れの一部が羽根車68の羽根68aに直接当たって基板ホルダ16が回転する。この例においては、めっき液噴出管44のめっき液噴出口から噴出されるめっき液の流量及び流速で基板ホルダ16の回転速度を調整することができる。
【0038】
この例にあっては、前述の各例における無電解めっき装置に比べて、基板ホルダ16の高い回転速度が得にくく、めっき初期時に基板ホルダ16の回転が安定しない問題がある。しかし、実際の無電解めっきでは、めっき膜の成長速度は、数10nm/min〜数100nm/min程度と比較的遅いため、基板表面に成膜されるめっき膜の膜厚及び膜質への影響は比較的小さい。
【0039】
図7は、例えば、図1及び図2に示す構成の基板処理装置(無電解めっき装置)を使用した基板処理システムの平面配置図を示す。この基板処理システムは、例えば、半導体ウエハ等の基板Wのアルミニウム配線上に、ジンケート処理(亜鉛触媒化処理)、無電解Niめっき、及び無電解Auめっきを順次行うようにしている。なお、図1及び図2に示す基板処理装置(無電解めっき装置)の代わりに、図3及び図4、または図5及び図6に示す基板処理装置(無電解めっき装置)を適用してもよいことは勿論である。
【0040】
この基板処理システムは、基板Wを基板カセットに入れた状態でセットするロード/アンロードポート70と装置フレーム72を有している。装置フレーム72の内部には、基板カセット内の基板Wを基板ホルダ16に移送する移送部74と、Zn処理槽76と、Niめっき槽78と、Auめっき槽80と、3つのリンス槽82a,82b,82cと、ドライ(乾燥)槽84と、基板ホルダ16を一時的にストックするバッファ槽86が配置されている。更に、装置フレーム72内に位置して、ロード/アンロードポート70と移送部74との間に搬送ロボット88が配置されている。
【0041】
なお、図7では、基板ホルダ16のみを図示しているが、図1及び図2に示すように、基板ホルダ16は、支持枠14で回転自在に支承されて搬送アーム12で搬送され、Zn処理槽76との間で本発明の基板処理装置としてのジンケート処理装置(めっき前処理装置)が、Niめっき槽78との間で本発明の基板処理装置としての無電解Niめっき装置が、Auめっき槽80との間で本発明の基板処理装置としての無電解Auめっき装置が構成されるようになっている。
【0042】
次に、この基板処理システムによる基板処理について説明する。
基板Wを基板カセットに入れた形でロード/アンロードポート70にセットする。搬送用ロボット88は、ロード/アンロードポート70にセットした基板カセットから基板Wを受取って、移送部74に位置する基板ホルダ16の内部に移送し、これによって、基板Wを基板ホルダ16の所定の位置にセットする。この操作を、基板ホルダ16で保持する基板Wの枚数だけ繰返す。この時、めっき液中で基板の裏面からの異物が隣の基板の表面に転写するのを防ぐため、表面の方向が交互になるように、基板Wを基板ホルダ16にセットすることが望ましい。更に、基板ホルダ16の両端に位置する基板は、他の基板と比較して、めっき液の流れの分布に差ができやすい。このため、必要に応じて、表面がSiOやSiNで覆われたダミーウエハを基板ホルダ16にセットすることが好ましい。基板Wを基板ホルダ16にセットし終わったら、基板Wの端部を押さえて基板Wを固定し、しかる後、搬送アーム12(図1及び図2参照)により基板ホルダ16を移動する。
【0043】
先ず、基板ホルダ16をZn処理槽76に移動させ、基板ホルダ16で保持した複数の基板WをZn処理槽76内の処理液中に所定時間浸漬させてジンケート処理(亜鉛触媒化処理)を行う。Zn処理槽76内では、回転モータ28(図1及び図2参照)を駆動して基板ホルダ16を回転させて、該基板ホルダ16で保持した基板Wを同時に回転させ、これによって、処理液の撹拌を行う。ジンケート処理後、搬送アーム12により基板ホルダ16をリンス槽82aに移動させ、基板ホルダ16で保持した基板Wをリンス槽82a内のリンス液(純水)に所定時間浸漬させてリンス(水洗)を行う。この時、必要に応じて、基板ホルダ16をリンス液中で回転させる。
【0044】
更に、基板ホルダ16をNiめっき槽78に移動させ、前述とほぼ同様にして、基板ホルダ16を回転させながら、基板ホルダ16で保持した基板Wの表面に無電解Niめっきを所定時間行って、アルミニウム配線上にNiめっき膜を成膜する。そして、基板ホルダ16をリンス槽80bに移動させて基板Wをリンスする。次に、基板ホルダ16をAuめっき槽80に移動させ、前述とほぼ同様にして、基板ホルダ16を回転させながら、基板ホルダ16で保持した基板Wの表面に無電解Auめっきを所定時間行って、Niめっき膜上にAuめっき膜を成膜する。そして、基板ホルダ16をリンス槽80cに移動させて基板Wをリンスする。これにより、アルミニウム配線上に、無電解Niめっき及び無電解Auめっきを処置した基板(半導体ウエハ)を得る。
【0045】
めっき終了後、基板ホルダ16をドライ槽84に移動させる。ドライ槽84では基板Wを基板ホルダ16ごと加熱したIPA(Isopropyl Alcohol)に浸漬させて水分とIPAを置換したのち、加熱雰囲気で基板WをIPAから引き上げて基板Wを乾燥させる。そして、基板ホルダ16を移送部74に移送し、基板ホルダ16で保持した乾燥後の基板Wを搬送ロボット88により基板カセットの元の位置に戻す。
【0046】
バッファ槽86は、各槽の処理時間の差を吸収するために一時的に基板ホルダ16をストックする槽で、設置場所や設置位置は、それぞれのめっき及び洗浄処理時間のバランスに応じて決定される。更に、各めっき層の膜厚バランスにより、めっき槽の数を増やし、複数の基板ホルダを同時に処理することで、装置全体の処理能力を向上させることができる。
【実施例】
【0047】
半導体ウエハを面方向に回転できるウエハホルダを準備し、PVD-AL-Cu(膜厚800nm)付きシリコンウエハに対して、ジンケート処理及び無電解Niめっきを行った。この処理に際して、処理液噴出口から処理液を噴出させて、処理液の上方への流れを作り、ウエハを回転させながら、ジンケート処理、次に無電解Niめっきを行って、ウエハのパッド上にNiめっき膜を成膜した。ジンケート処理には、奥野製薬工業製のサブスターAZを、無電解Niめっきには奥野製薬工業製のICPニコロンGMを用い、ジンケート処理は室温で、無電解Niめっきは80℃でそれぞれ行い、Niめっき膜の膜厚が5μmとなるようにめっき時間を調節した。
【0048】
比較例として、実施例と同じ条件で、ウエハを回転させることなく、ジンケート処理および無電解Niめっきを行って、ウエハのパッド上にNiめっき膜を成膜した。
【0049】
実施例及び比較例によってパッド表面に成膜されたNiめっき膜の外観と膜厚分布を測定した結果、めっき槽中でウエハの回転を行わなかった比較例の場合、めっき膜の表面にめっき液の流れに起因する縦方向の模様が観察されたが、めっき槽中でウエハを回転させた実施例の場合では、めっき膜の表面にめっき液の流れに起因する縦方向の模様は観察されず、無電解めっき中にウエハを回転することによる効果が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】無電解めっき装置に適用した、本発明の実施の形態の基板処理装置を示す縦断正面図である。
【図2】無電解めっき装置に適用した、本発明の実施の形態の基板処理装置を示す縦断側面図である。
【図3】無電解めっき装置に適用した、本発明の他の実施の形態の基板処理装置を示す縦断正面図である。
【図4】無電解めっき装置に適用した、本発明の他の実施の形態の基板処理装置を示す縦断側面図である。
【図5】無電解めっき装置に適用した、本発明の更に他の実施の形態の基板処理装置を示す縦断正面図である。
【図6】無電解めっき装置に適用した、本発明の更に他の実施の形態の基板処理装置を示す縦断側面図である。
【図7】基板処理システムの一例を示す平面配置図である。
【符号の説明】
【0051】
10 めっき槽(処理槽)
12 搬送アーム
14 支持枠
16 基板ホルダ
18 ケース本体
20 側ケース
22 側板
24 支持棒
26 従動プーリ
28 回転モータ
30 駆動プーリ
32 駆動ベルト(回転機構)
40 循環槽
42 循環ポンプ
44 めっき液噴出管(めっき液噴出機構)
46 蓋体
50a,50b 熱電対
52 温度制御部
54 ヒータ
56 めっき液分析・補給装置
60 駆動ギア
62 被動ギア
64 回転板
66 リンク
68 羽根車
70 ロード/アンロードポート
72 装置フレーム
74 移送部
76 Zn処理槽
78 Niめっき槽
80 Auめっき槽
84 ドライ槽
86 バッファ槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を保持する処理槽と、
複数枚の基板を保持して前記処理槽内の処理液中に浸漬させる基板ホルダと、
前記処理槽内の処理液の温度を制御する温度制御部と、
前記処理槽内の処理液を循環させる処理液循環系と、
前記基板ホルダを、複数枚の基板を保持したまま前記処理槽内の処理液中で回転させる回転機構を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液循環系は、前記基板ホルダで保持して前記処理槽内の処理液に浸漬させた基板に向かって処理液を噴出する処理液噴出機構を有することを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記回転機構の動力源として、前記処理液循環系によって前記処理槽内に導入される処理液の液流を使用することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板処理装置は、処理液としてめっき液を使用する無電解めっき装置であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置は、無電解めっきに先立って、基板表面に触媒を付与するめっき前処理装置であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−57593(P2009−57593A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225137(P2007−225137)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】