説明

基板割れ検査装置及び基板割れ検査方法

【課題】基板割れの検査を安全且つ確実に行うことが可能な基板割れ検出装置を提供する。
【解決手段】基板割れ検査装置は、加振部12と、複数の計測部11と、制御部3とを具備する。加振部12は、基板21に所定の周波数範囲の振動を与えるように設けられている。複数の計測部11は、基板21の振動を計測するように設けられている。制御部3は、複数の計測部11の計測結果に基づいて、基板21に割れがあるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関し、特に発電層を製膜で作成する薄膜系太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として薄膜太陽電池が知られている。薄膜太陽電池は、ガラス基板に製膜やエッチング等の複数の処理を施して製造される。図1は、従来技術における薄膜太陽電池の製造工程の一部を示す模式図である。図1(a)に示されるように、複数の太陽電池が接続された太陽電池モジュール122がガラス基板121上に形成される。ここで、太陽電池モジュール122は、例えば、透明導電層(例示:酸化錫)、光電変換層(例示:単層アモルファスシリコン、アモルファスシリコンと結晶質シリコンの多接合型)及び裏面電極層(例示:Ag膜とTi膜との積層膜)をこの順に製膜された太陽電池が直列接続されている。次に、太陽電池の長手方向と略垂直な方向の端において、ガラス基板121の対向する二辺に平行にその太陽電池がレーザエッチングされ、絶縁溝126が形成される。更に、周辺領域123の太陽電池がサンドブラスト法により除去される。
【0003】
続いて、図1(b)に示されるように、ガラス基板121上に、太陽電池モジュール122及びその周辺領域123を覆うように、接着充填シート(例示:EVA)及びバックシート124(例示:PETシート/AL箔/PETシート)が配置され、ラミネータにより密着処理される。このとき、太陽電池モジュール122の両極から引き出された銅箔127(電力を取り出す電極)は、接着充填シート及びバックシート124の下方から上方へ引き出されている。その後、図1(c)に示されるように、太陽電池パネル120の裏側に端子箱125が接着剤で取付けられる。そして、図1(d)に示されるように、バックシート124に露出した銅箔127と端子箱125の出力ケーブルとがハンダ等で接続され、端子箱内部が封止剤(ポッティング剤)で充填されて密閉される。その後、最終検査を経て太陽電池パネル120が完成する。
【0004】
薄膜太陽電池の太陽電池パネル120は、ガラス基板121を用いている。そのため、上記の製造工程の中でガラス基板121の端部にカケや小傷が発生した場合、その後の製造工程で熱負荷や機械的荷重がかかるとガラス基板121が割れることがある。特に1辺が1mを超える大型サイズの薄膜太陽電池では、製造工程中において、基板の荷重、温度分布による熱応力や膜応力により基板内に大きな応力分布が存在することがあり、ガラス基板121の端部に発生したカケや小傷から基板割れになることがある。図2は、製造途中の太陽電池パネルに基板割れが発生した状態の一例を示す模式図である。この太陽電池パネル120は、そのガラス基板121の端部に発生した傷により、周辺領域123を通り太陽電池モジュール122にまで達する基板割れ145が発生している。ここで、太陽電池パネルの製造工程において、ガラス基板121は、裏面にバックシート124を貼り付けられた後においては、そのバックシート124を上面にした状態で搬送ローラにより搬送されて行くことが多い。そのため、特に、裏面にバックシート124を貼り付けられた後においては、ガラス基板121に発生した基板割れは簡易には発見できない。基板割れ145を的確に把握可能な技術が望まれる。
【0005】
製造工程における基板の破損を検査する技術として、以下のような技術が知られている。
特開2004−137059号公報には、脆性基板の異常監視装置及び異常監視方法が記載されている。この脆性基板の異常監視装置は、搬送台車のフレームに支持具を介して支持されたガラス基板を含む脆性基板の異常の有無を監視する。この脆性基板の異常監視装置は、前記脆性基板の振れを検出する振れ検出器及び前記支持具の前記脆性基板近接部位の歪を検出する歪検出器の何れか一方または双方を備えるとともに、前記振れあるいは歪の検出値に基づき前記脆性基板の異常の有無を判定する異常判定手段を備えてなる。
【0006】
特開2000−65759号公報には、基板の欠陥を検出する装置及びその方法が記載されている。この装置は、基板の欠陥を検出する。この装置は、該基板から隔てられ且つ前記基板を赤外光線で実質的に均一に照射し得るように配置された赤外線放射源と、前記基板から反射した赤外光線を集め得るように配置されたレンズを有する赤外線カメラと、前記反射した赤外光線から前記欠陥を表わす標識を含む像を形成する手段とを備える。
【0007】
特開2000−65760号公報には、回転照射源を用いた基板検査方法及び装置が記載されている。この装置は、基板の欠陥及び該基板を覆うカバ−ガラスのクラックを検出する。この装置は、電磁放射線源と、可変手段と、電磁放射線検出器と、作成手段とから成ることを特徴とする。電磁放射線源は、前記カバ−ガラスと前記基板とから間隔を置いて配置されている。そして、前記カバ−ガラスと前記基板とに所定の方位角で電磁放射線を照射するように配置され、前記基板とカバ−ガラスとは前記電磁放射線の一部を反射するようになっている。可変手段は、前記電磁放射線源が複数の方位角で前記基板とカバ−ガラスとを照射するように、前記方位角を可変する。電磁放射線検出器は、前記方位角の変化に伴って、前記反射電磁放射線の一部を連続的に集めるように配置されている。作成手段は、前記方位角の変化に伴って、前記集められた反射放射線から複数の画像を作成する。そして、前記複数の画像は前記欠陥と前記クラックを表わす指標を含んでいる。
【0008】
特開2007−78404号公報には、太陽電池パネル検査装置が記載されている。この太陽電池パネル検査装置は、太陽電池パネルの内部欠陥を検出する。この太陽電池パネル検査装置は、複数の照明素子が2次元配列されたアレイ型照明装置と、上記アレイ型照明装置から照射された太陽電池の披検査箇所を撮像するために赤外域に感度を有する撮像素子から成るCCDカメラとを具備している。
【0009】
特開2005−142495号公報には、基板クラック検査方法、基板クラック検査装置、太陽電池モジュールの製造方法が記載されている。この基板クラック検査方法は、(1)基板に振動を与えることにより音を発生させ、(2)発生した音を捉え、捉えた音について音響解析を行うことにより、パワースペクトルを求め、(3)所定の周波数領域のスペクトル強度に基づいて、基板クラックの有無を判断する工程を備える。
【0010】
特開2006−64464号公報には、基板割れ検出方法、基板割れ検出装置が記載されている。この基板割れ検出方法は、(1)基板に振動を与えることにより音を発生させ、(2)発生した音をマイクロフォンを用いて捉え、捉えた音について音響解析を行うことにより、パワースペクトルを求め、(3)所定の周波数領域のスペクトル強度に基づいて、基板割れの有無を判断する工程を備える。マイクロフォンは、基板に面した開口部を有する覆いで覆われている。
【0011】
特開2006−90871号公報には、基板割れ検査方法、基板割れ検査装置が記載されている。この基板割れ検査方法は、(1)基板に振動を与えることにより音を発生させ、(2)第1マイクロフォンを用いて少なくとも基板からの発生音を捉えるのと実質的に同時に第2マイクロフォンを用いて外部ノイズを捉え、(3)第1及び第2マイクロフォンが捉えた音について音響解析を行うことにより、それぞれの音に対応する第1及び第2パワースペクトルを求め、(4)所定の周波数領域での第1及び第2パワースペクトルのスペクトル強度の差に基づいて基板割れの有無を判断する工程を備える。
【0012】
【特許文献1】特開2004−137059号公報
【特許文献2】特開2000−065759号公報
【特許文献3】特開2000−065760号公報
【特許文献4】特開2007−078404号公報
【特許文献5】特開2005−142495号公報
【特許文献6】特開2006−064464号公報
【特許文献7】特開2006−090871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図3は、製造途中の太陽電池パネルの搬送状態の一例を示す模式図である。特に、上記図1(b)のバックシート124のラミネート工程以降の製造工程では、この図のようにバックシート124を上面にして太陽電池パネル120を搬送装置130の搬送ローラ131で搬送する。搬送ローラ131は一般にパスラインを1m程度にしており、目視できる箇所は太陽電池パネルのバックシート124側になる。したがって、ガラス基板121が露出している面が下側にあり視認できないので、ガラス基板に基板割れ145が発生していても気付かないまま製造を続け、最終検査まで発見されない場合がある。そのような基板割れ145を有する太陽電池パネル120は不良品であり使用できない。そのため、基板割れ145が発生した時点で太陽電池パネル120を早期に取り除くことができないと、無駄な製造工程を施すことになり材料費の無駄が発生するおそれがある。
【0014】
製造工程における基板の破損を検査する装置として、基板割れの有無を判定するに対して高級な解析手段を使用している。すなわち、特開2000−065759号公報、特開2000−065760号公報、及び特開2007−078404号公報の各装置を用いることが考えられる。しかし、これらの装置を用いる場合、赤外線カメラやCCDカメラによる画像解析により基板割れの検査を行う。そのとき、光の照射の仕方によっては検査結果にばらつきが出る場合があること、画像解析の高価な装置が必要なこと、解析のため大型基板においては数分/枚と長い時間を要すること、などのため量産ラインで簡易に使用するには課題がある。さらに検査用の光を太陽電池パネル120へ照射するため、その太陽電池パネル120は発電する。そうなると、バックシート124から露出した銅箔(電力を取り出す電極)に高電圧が発生するので、作業上危険であり好ましくない。
【0015】
一方、他の検査装置である特開2004−137059号公報の異常監視装置は、搬送台車の振動やガラス基板の歪みを検出する。しかし、基板割れそのものの有無を発見することはできない。また、特開2005−142495号公報、特開2006−064464号公報、及び特開2006−090871号公報の各装置は、基板を加振し、その基板の振動をマイクロファンで捉えて音響解析を行う。しかし、この方法は簡便ではあるが、基板割れが小さい場合にはそれを発見することができないこと、周辺の音に影響を受けるので騒音のある工場内で使用することは困難であること等の問題がある。安価で簡便で使用性の良い基板割れの検査装置が求められる。
【0016】
本発明の目的は、基板割れの検査を安全且つ確実に行うことが可能な基板割れ検査装置及び基板割れ検査方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、安価で簡便で使用性の良い基板割れ検査装置及び基板割れ検査方法を提供することにある。
【0018】
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に、発明を実施するための最良の形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0020】
本発明の基板割れ検査装置は、加振部(12)と、複数の計測部(11)と、制御部(3)とを具備する。加振部(12)は、基板(21)に所定の周波数範囲の振動を与えるように設けられている。複数の計測部(11)は、基板(21)の振動の状況を計測するように設けられている。制御部(3)は、複数の計測部(11)の計測結果に基づいて、基板(21)に割れがあるか否かを判定する。
本発明の基板割れ検査装置は、加振部(12)で基板(21)に振動を与え、複数の計測部(11)でその振動に対する基板(21)の応答としての振動の状況を計測する。そのとき、基板(21)が割れていなければ、固有振動数の振動が計測される。一方、基板(21)が割れていると、割れた部分の質量は基板(21)全体の質量と異なるので、固有振動数の振動だけでなく、固有振動数と異なる周波数での振動が計測される。したがって、この基板割れ検査装置は、基板(21)の振動の状況を計測することにより、基板(21)の割れを計測することができる。このとき、割れた部分の大きさにより振動に与える影響(周波数)は異なるが、所定の周波数範囲を、予測される割れた部分の大きさに対応する固有振動数を含むように設定することで、割れをより確実に検知することができる。加えて、複数の計測部(11)で計測するので、各計測部(11)からの振動の状況を比較することにより、割れがあるか否かだけでなく、その割れの凡その位置を判定することも可能となる。
【0021】
特許文献1の異常監視装置は、搬送台車の振動やガラス基板の歪みを検出する。しかし、基板に積極的に振動を与えてその基板の振動を計測することで割れを検知する構成や、その技術的思想に関して、記載や示唆がされていない。すなわち、基板の割れそのものの有無を発見することはできない。
【0022】
特許文献2乃至4の各装置は、いずれも検査用の光を太陽電池パネルへ照射して、赤外線カメラやCCDカメラによる画像解析により基板割れの検査を行う。したがって、基板に積極的に振動を与えてその基板の振動を計測することで割れを検知する構成や、その技術的思想に関して、記載や示唆がされていない。
【0023】
特許文献5乃至7の各装置は、基板を加振し、その基板の振動をマイクロファンで捉えて音響解析を行う。しかし、打撃ハンマで基板に振動を与えるので、与える振動の周波数にばらつきが起きることや、割れが小さい場合にはそれを発見することができない等の可能性があると考えられる。また、マイクロフォンで音を収集しているので、周辺の音に影響を受け、騒音のある工場内で使用することは困難であると考えられる。更に、一つの箇所で計測しているので、割れのおおよその位置を検知することもできないと考えられる。
【0024】
上記の基板割れ検査装置において、制御部(3)は、計測結果における基板(21)の固有振動数よりも高い周波数の振幅の大きさに基づいて、基板(21)に割れがあるか否かを判定することが好ましい。
本発明において、基板(21)が割れていると、割れた部分の質量は基板(21)全体の質量より小さいので、固有振動数の振動だけでなく、固有振動数より高い周波数での振動が計測される。したがって、その高い周波数での振動を計測することにより、基板(21)の割れを計測することができる。
【0025】
上記の基板割れ検査装置において、複数の計測部(11)は、加振部(12)を概ね等距離で囲むように設けられていることが好ましい。
本発明では、複数の計測部(11)の各々がいずれも加振部(12)から概ね等距離にある場合、複数の計測部(11)の計測結果を用いて比較を行うことで、容易にどの計測部(11)と加振部(12)との間に割れがあるかを判定することが出来る。
【0026】
上記の基板割れ検査装置において、制御部(3)は、複数の計測部(11)の計測結果としての波形に基づいて、基板(21)の固有振動数よりも高い周波数領域における波形同士の差分が最大となる波形を検出した計測部(11)と加振部(12)との間に割れがあると判定することが好ましい。
本発明では、複数の計測部(11)の各々の計測結果同士をそのまま比較して、高い周波数での振動の振幅が最大となる計測部(11)を判定することで、容易にどの計測部(11)と加振部(12)との間に割れがあるかを判定することが出来る。
【0027】
上記の基板割れ検査装置において、制御部(3)は、複数の計測部(11)の計測結果のいずれかにおいて、予め設定された基準振幅より大きな振幅が前記基板の固有振動数よりも高い周波数領域に存在した場合、当該振幅を計測した計測部(11)と加振部(12)との間に割れがあると判定することが好ましい。
本発明では、複数の計測部(11)の計測結果と基準振幅とを比較した結果を互いに比較して、所定の高い周波数での振動の振幅が基準振幅より大きくなる計測部(11)を判定することで、容易にどの計測部(11)と加振部(12)との間に割れがあるかを判定することが出来る。
【0028】
上記の基板割れ検査装置において、基準振幅は、所定の周波数範囲内において予め設定された第1周波数領域における平均振幅であることが好ましい。基板(21)の固有振動数よりも高い周波数領域は、所定の周波数範囲内において第1周波数領域と基板(21)の固有振動数近傍とを除いた周波数領域であることが好ましい。
本発明では、基準振幅として、割れた部分による振動が発生しない領域である第1周波数領域、すなわち、所定の周波数範囲内において第1周波数領域と基板(21)の固有振動数近傍とを除いた周波数領域、での平均振幅とする。そのような基準振幅は、概ね一定であり基準値としてふさわしい。
【0029】
上記の基板割れ検査装置において、加振部(12)は複数設けられている。複数の加振部(12)のうちの一つが基板(21)に所定の周波数範囲の振動を与えるとき、複数の加振部(12)のうちの他のものは基板(21)に振動を与えないことが好ましい。
本発明では、複数の加振部(12)を用いることで、割れの位置をより正確に判定することが出来る。このとき、複数の加振部(12)は一つずつ加振する必要がある。複数の加振部(12)が同時に加振すると、基板(21)がどの加振部(12)の加振で振動しているかわからなくなるからである。
【0030】
上記の基板割れ検査装置において、複数の加振部(12)は、複数の計測部(11)に対応して一体に設けられている。複数の加振部(12)のうちの一つが基板(21)に所定の周波数範囲の振動を与えるとき、複数の計測部(11)うちの対応するものは基板(21)の振動を計測せず、複数の計測部(11)うちの他のものは基板(21)の振動を計測することが好ましい。
本発明では、加振部(12)と計測部(11)とを一体に設けることで、装置を簡略化することが出来る。ただし、一体となった加振部(12)と計測部(11)とは近過ぎるため、計測の正確性を保つために同時には動作させないようにする。ここで、一体とは、二つの機器が互いに直接的に影響しないように基板(21)を介して隣接している場合も含む。
【0031】
上記の基板割れ検査装置において、制御部(3)は、複数の加振部(11)の各々が基板(21)に所定の周波数範囲の振動を与えたときに複数の計測部(11)が基板(21)の振動を計測した計測結果を、複数の加振部(11)の各々ごとに取得して、取得された計測結果に基づいて基板(21)に割れがあるか否かを判定することが好ましい。
本発明では、一つの加振部(12)の加振により複数の計測部(11)が振動を計測した計測結果を取得し、それを複数の加振部(12)の各々について行い。最終的にそれらを総合して割れの判定を行っている。それにより、割れの有無の判定及び割れの位置等の判断をより正確に行うことができる。
【0032】
上記の基板割れ検査装置において、複数の計測部(11)は、少なくとも四個ある。当該四個の計測部(11)は、基板(21)の四つの角付近で計測可能に設けられていることが好ましい。
本発明では、基板(21)の割れ易い基板(21)の四つの角付近において計測部(11)が計測可能に設置されるので、割れを確実に把握することが出来る。
【0033】
上記の基板割れ検査装置において、複数の計測部(11)は、基板(21)の鉛直下方から支持及び計測可能に設けられていることが好ましい。
本発明では、複数の計測部(11)は、基板(21)の鉛直下方から支持して計測する。太陽電池パネル20の場合、バックシート等を上側にして搬送されている場合、上側から基板(21)が見えず割れを見逃す場合がある。鉛直下方から計測することは、そのような状況に対応でき、割れを確実に把握することが出来る。
【0034】
上記の基板割れ検査装置において、基板(21)の鉛直上方から基板(21)に載置されて基板(21)の振動を計測するように設けられた他の計測部(11)を更に具備することが好ましい。
本発明において、基板(21)を鉛直下方から支持する場合、計測部(11)の数が多すぎると、複数の計測部(11)の基板(21)への接触を均等に行うことが困難となり、支持が不安定になるおそれがある。そのため、計測部(11)の数を増やす場合、基板(21)の上部から重力により載置することで、計測部(11)の基板(21)への接触を均等にすることが出来る。
【0035】
上記の基板割れ検査装置において、基板片面は、可視光線に対して不透明な膜で覆われている。
本発明では、基板片面が可視光線に対して不透明な膜で覆われているような発見し難い基板割れを、的確且つ容易に発見することができる。
【0036】
本発明の基板割れ検査方法は、(a)基板(21)の第1箇所で、基板(21)に所定の周波数範囲の振動を与えるステップと、(b)基板(21)の複数の第2箇所で、基板(21)の振動を計測するステップと、(c)複数の第2箇所での計測結果に基づいて、基板(21)に割れがあるか否かを判定するステップとを具備することが好ましい。
【0037】
上記の基板割れ検査方法において、(c)ステップは、(c1)計測結果における基板(21)の固有振動数よりも高い周波数の振幅の大きさに基づいて、基板(21)に割れがあるか否かを判定するステップを備えることが好ましい。
【0038】
上記の基板割れ検査方法において、複数の第2箇所は、概ね等距離で第1箇所を囲むように設定されている。(c)ステップは、(c2)複数の第2箇所での計測結果としての波形に基づいて、基板(21)の固有振動数よりも高い周波数における波形同士の差分が最大となる波形を検出した第2箇所と第1箇所との間に割れがあると判定するステップを備えることが好ましい。
【0039】
上記の基板割れ検査方法において、複数の第2箇所は、概ね等距離で第1箇所を囲むように設定されている。(c)ステップは、(c3)複数の第2箇所での計測結果のいずれかにおいて、予め設定された基準振幅より大きなピークが所定の周波数範囲内の第1周波数領域に存在した場合、ピークを計測した第2箇所と第1箇所との間に割れがあると判定するステップを備えることが好ましい。
【0040】
上記の基板割れ検査方法において、第1箇所は複数ある。(a)ステップは、(a1)複数の第1箇所のうちの一つから基板(21)に所定の周波数範囲の振動を与えるステップを備え、複数の第1箇所のうちの他の箇所から基板(21)に振動を与えないことが好ましい。
【0041】
上記の基板割れ検査方法において、(c)ステップは、(c4)複数の第1箇所の各々から基板(21)に所定の周波数範囲の振動を与えたときに複数の第2箇所が基板(21)の振動を計測した計測結果を、複数の第1箇所の各々ごとに取得して、取得された計測結果に基づいて基板(21)に割れがあるか否かを判定する。
【0042】
上記の基板割れ検査方法において、基板片面は、可視光線に対して不透明な膜で覆われている。
本発明では、基板片面が可視光線に対して不透明な膜で覆われているような発見し難い基板割れを、的確且つ容易に発見することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明により、基板割れの検査を安全且つ確実に行うことが可能な基板割れ検査装置及び基板割れ検査方法を得ることができる。安価で簡便で使用性の良い基板割れ検査装置及び基板割れ検査方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の基板割れ検査装置及び基板割れ検査方法の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
【0045】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の基板割れ検査装置の第1の実施の形態について説明する。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る基板割れ検査装置の構成を示す模式図である。基板割れ検査装置1は、計測対象の基板21に振動を与えて、その振動に対する基板21の応答を計測することにより、基板21の割れを計測する。基板21に振動を与えた場合、基板21に割れが無ければ、基板21の固有振動数付近の周波数で振動する。しかし、割れがあると固有振動数以外の周波数での振動が発生する。本基板割れ検査装置1は固有振動数以外の周波数を検知することで、基板の割れを検知する。
【0046】
ここで、基板21は、割れる可能性のある基板であり、光入射に対して透光性が必要とされる場合は、ガラス基板に例示される。特に1辺が1mを超える大型サイズの薄膜太陽電池では、製造工程中において、基板の荷重、温度分布による熱応力や膜応力により基板内に大きな応力分布が存在することがあり、ガラス製の基板21の端部に発生したカケや小傷から基板割れになることがある。本実施の形態では、太陽電池パネル20に用いられている基板21について説明する。太陽電池パネル20は、完成品だけでなく、製造途中の太陽電池パネル20を含む。基板割れ検査装置1は、太陽電池パネル20の製造工程のどこででも用いることが可能である。ただし、特に、基板21上に薄膜太陽電池が形成され、接着充填シート及びバックシートが積層された状態、すなわち、図1(b)のバックシート124のラミネート工程以降の製造工程では、図3のようにバックシート124を上面にして太陽電池パネル120を搬送装置130の搬送ローラ131で搬送する場合が多い。したがって、ガラス基板121が露出している面が下側にあり視認できないので、ガラス基板に基板割れ145が発生していても気付かないまま製造を続け、最終検査まで発見されない場合がある。このような、基板21の割れが検出し難い状態で用いることが特に効果的である。すなわち、図1(b)の工程から図1(d)の工程までの間である。
尚、太陽電池パネル20は、薄膜シリコン系太陽電池(例示:単層アモルファスシリコン、アモルファスシリコンと結晶質シリコンの多接合型)や化合物半導体系太陽電池など、基板上に薄膜光電変換層を形成するものを対象とすることができる。
【0047】
基板割れ検査は、太陽電池パネル20の基板面20bの側から行い、バックシート面20cの側からは行わない。基板面20bは基板が露出している面なので基板21の割れを検査し易いからである。基板割れ検査装置1は、検出ユニット2と、制御装置3と、駆動装置4とを具備する。
【0048】
検出ユニット2は、基板21に振動を与えて、基板21の振動を検出する。検出ユニット2は、加振器12と、複数のピックアップ11(11−1〜11−4)と、支持台13を備える。
加振器12は、太陽電池パネル20の基板21(基板面20b)の中央付近に接近し(接触しても良い)、その基板21に所定の周波数範囲の振動を与える(加振する)。加振器12は、例えば、磁界中でコイルに電流を流すことによる起きる力を利用(スピーカーと同じ原理)して振動を発生させる動電型タイプの振動発生装置に例示される。所定の周波数範囲は、太陽電池パネル20の固有振動数の略1/10から略1000倍までの振動数である。加振器12は、その所定の周波数範囲で振動数を段階的に連続的に変化させて、その各々の周波数の振動で太陽電池パネル20を順次加振する。
【0049】
例えば、基板21が1.4×1.1m×4mmのガラス基板の場合、その固有振動数は略2Hzである。したがって、この場合の所定の周波数範囲は、約0.1Hz〜約1000Hzの範囲である。ここで、固有振動数(fo)は、減衰系を無視できる場合、以下の式(1)で表される。
=(1/2)π(k/M)0.5 …(1)
ただし、k=ばね定数、M=質量である。
ここで、薄膜太陽電池やバックシート等の質量はガラス基板より十分に小さいとして、k=ガラス基板のばね定数、M=ガラス基板の質量と近似できる。
【0050】
複数のピックアップ11(11−1〜11−4)は、太陽電池パネル20の基板21(基板面20b)の端部付近を略鉛直下方から接近し、接触して支持する。そして、複数のピックアップ11(11−1〜11−4)は、基板21の端部付近に接触して、加振器12で振動を与えられた基板21の振動状態を計測する。この振動を検出するピックアップ11は、例えば圧電効果を生じる材料(圧電素子:水晶の単結晶やチタンサンバリウムなど)をサイズモ系のばねとして用いた圧電型加速度ピックアップに例示される。
【0051】
ピックアップ11を支持する基板21の端部付近は、例えば基板21の四つの角付近であることが好ましい。四つの角付近でピックアップ11−1〜11−4により基板21を支持することで、基板21に働く重力を用いて基板21を四つの角付近で略均一に簡便に押圧できるからである。それにより、四つのピックアップ11−1〜11−4の計測条件を概ね同一とすることができる。
【0052】
また、太陽電池パネル20の基板21の破損は四つの角付近が多いことが発明者の研究により判明した。これは主として、大型の基板処理工程中に、基板21が支持される箇所や基板21に荷重が加わる箇所がその四つの角付近が多いために、四つの角付近に初期段階には基板割れに至らない小傷を発生しやすく、後工程で基板割れ発生に至る場合があると考えられる。したがって、四つの角付近にピックアップ11−1〜11−4を設けることで、基板21の割れをより確実に把握できる。
【0053】
複数のピックアップ11は、加振器12を囲むように設けられていることが好ましい。更に、複数のピックアップ11は、加振器12との距離がいずれも等しいことが好ましい。このように配置されることにより、複数のピックアップ11の計測結果を比較するだけで、どのピックアップの近傍に異常すなわち基板21の割れがあるかが判断でき、基板割れの凡その発生位置を判断できるからである。
【0054】
制御装置3は、パーソナルコンピュータに例示される情報処理装置である。加振器12の加振の制御、ピックアップ11の計測の制御、駆動装置3による支持台13や加振器12の駆動の制御を行う。また、複数のピックアップ11の計測結果に基づいて、ガラス基板20に割れがあるか否かを判定する。判定の方法としては、例えば、以下の方法が考えられる。複数のピックアップ11の計測結果は、基板21に破損がなければ、概ね同じ振動波形を示す。したがって、計測結果が正常な場合の振動波形(基準値)と比較して大きく異なる場合、その計測結果を出力したピックアップ11の近傍に、異常すなわち基板21に割れがあると判断できる。又は複数のピックアップ11の計測結果同士を比較した比較結果から、あるピックアップ11の近傍に、異常すなわち基板21に割れがあると判断できる。
【0055】
例えば、四つの角付近にピックアップ11を配置している場合、それらピックアップ11で基板21の振幅を計測することにより、どのピックアップ11の計測結果が異常か否かで、四つの角うちのどの付近で異常すなわち基板21に割れがあるかを判断できる。
【0056】
支持台13は、太陽電池パネル20と概ね等しい大きさを有する枠状の部材である。その枠状の部材は略水平に保持され、その上に既述の複数のピックアップ11が搭載されている。このとき、複数のピックアップ11の頭頂部(検知部)は、支持台13からの高さが概ねそろった状態で設置されている。また、例えば、ピックアップ11が太陽電池パネル20の基板21の四つの角付近で計測を行う場合、四つのピックアップ11−1〜11−4がそれぞれ支持台13の四隅に配置される。複数のピックアップ11は、支持台13が上下することで、上方に移動して基板21に接触したり、下方に移動して基板21から離れたりする。
【0057】
駆動装置4は、基板割れ検査のとき支持台13及び加振器12を上方へ移動して、ピックアップ11を基板21に接触させ、加振器12を基板21に接近(接触しても良い)させる。一方、基板割れ検査を行わないときや、検査を終了したときは、支持台13及び加振器12を下方へ移動して基板21から引き離す。
【0058】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る基板割れ検査装置の動作状況を示す斜視図である。基板割れ検査装置1は、例えば、太陽電池パネル20を水平搬送する搬送装置30の途中に設けられている。太陽電池パネル20は搬送装置30の搬送ローラ31により基板割れ検査装置1上に移動される。基板割れ検査装置1の制御装置3は、太陽電池パネル20が所定の位置に到達したことを位置センサ等(図示されず)により検知する。そして、制御装置3は水平搬送されてきた太陽電池パネル20を一時停止させて、駆動装置4を制御して、支持台13と加振器12とを所定の高さまで上昇させる。それにより、支持台13を介してピックアップ11が太陽電池パネル20の基板21の四隅を、加振器12が基板21の中央部をそれぞれ搬送ローラ31から離れるように持ち上げる。以上により基板割れ検査の準備が整う。基板割れ検査後は、基板割れ検査装置1の逆の動作により、太陽電池パネル20が搬送ローラ31上に降ろされる。その後、太陽電池パネル20は水平搬送を再開し、搬送装置30の搬送ローラ31により次の製造工程へ移動する。
【0059】
太陽電池パネル20が大きいとき、支持台13を介してピックアップ11が基板21の四隅を、加振器12が基板21の中央部をそれぞれ持ち上げる場合、ピックアップ11及び加振器12は概ね同時に基板21に接触して持ち上げることが好ましい。それにより、自重による基板21のしなりを抑制し、不要な応力が検査中にかからないようにすることができる。
【0060】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る太陽電池パネルとピックアップとの位置関係を示す模式図である。太陽電池パネル20の基板21は、太陽電池モジュール22の形成された領域とそれを囲む周辺膜研磨領域とがある。基板の割れ45は、例えば、図に示されるように、基板21の角付近に、その縁から内側へ向かうように発生することが多い。したがって、できるだけ四つの角付近の領域41−1〜41−4にピックアップ11を接触させられるように、ピックアップ11を支持台13上に配置することが好ましい。四つの角付近にピックアップ11を接触させることで、角付近の割れ45をより正確に検知することができる。四つの角付近としては、基板21端部より基板長の1/10以下となる100mm以内が好ましく、基板長の1/20以下となる50mm以内が更に好ましい。その場合、加振器12の接近(接触)位置は、各ピックアップ11から概ね等距離となる基板21の中央部の領域40とすることや、後述のように各ピックアップ11と同じ位置に配置することが適切である。
【0061】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係るピックアップの計測結果を示すグラフである。縦軸は各ピックアップが検知した振動の振幅を示し、横軸はピックアップが計測した振動の周波数である。ここでは、基板21は1.4×1.1m×4mmのガラス基板とする。また、加振器12は図6の基板21の中央部の領域40で加振を行うこととする。この場合、既述のように、基板21の固有振動数は略2Hzであるから、加振器12は約0.1Hz〜約1000Hzの振動をステップ状に所定時間毎に所定振動数変化幅で段階的に順次変化させながら連続的に与える。ステップ状に変化させる途中で所定の時間加振しないようにすれば、前状態での振動を減衰してから新しい加振状態での振幅を計測できるのでより好適である。しかしながら加振しない時間を多く取り過ぎると計測時間が長くなるので、太陽電池の生産を阻害しない範囲で設定することが望ましい。更に、ピックアップ11は図6の基板21の四つの角付近で計測を行うこととする。すなわち、ピックアップ11−1〜11−4が、それぞれ図6の領域41−1〜41−4において振動の状況を計測する。曲線A1〜A4は、それぞれピックアップ11−1〜11−4の計測結果を示している。そして、基板21の割れは図6の割れ45の位置とする。
【0062】
図に示されるように、加振器12とピックアップ11−1,11−2との間には割れ45は無い。そのため、ピックアップ11−1,11−2の計測結果を示す曲線A1、A2は、基板21の固有振動数(約2Hz)付近に鋭いピークを示している。また、加振器12とピックアップ11−4との間には割れ45が一部かかっている。そのため、ピックアップ11−4の計測結果を示す曲線A4は、その影響により基板21の固有振動数(約2Hz)付近のピークが、曲線A1、A2と比較して相対的に鈍くなっている。これは、固有振動数以外の周波数(高い周波数)の振動が混合されているためである。更に、加振器12とピックアップ11−3との間には割れ45が存在する。そのため、ピックアップ11−3の計測結果を示す曲線A3は、その影響により基板21の固有振動数(約2Hz)付近のピークが、曲線A1、A2、A4と比較して相対的に鈍くなっている。これも、固有振動数以外の周波数(高い周波数)の振動が混合されているためである。加えて、曲線A3では、新たに高い周波数側で別のピークが計測されている。
【0063】
このような固有振動数以外の周波数(高い周波数)の振動が混合されたり、新たに高い周波数側で別のピークが計測されたりする理由は、以下のように考えることが出来る。
基板21に破損部分(割れ)がない場合には、ピックアップ11からの各信号は、固有振動数(約2Hz)に振幅のピークがある。ここで、基板21の一部が割れていた場合、割れた部分の質量は、基板21よりも小さいので、前述の式(1)よりその小質量部分は固有振動数が高くなる。例えば、割れた部分の質量が基板21の1/100場合、固有振動数は式(1)より基板21の固有振動数の10倍になる。したがって、割れが存在する場合、高い周波数の領域に振幅のピークが現れることになる。すなわち、高い周波数の領域にピークがあれば、基板に割れが発生していると判断することが出来る。実際の計測では、基板21の裏面側(製膜側)に貼り付けた接着充填シート(EVA)とバックシートが減衰系を形成することが考えられる。そのため、基板21の割れの位置だけでなく、ばね定数(k)等の影響で、高い周波数の具体的な周波数は変化する。ただし、実際の基板21の割れの位置や大きさ、割れにより分離される範囲等を考慮すると、多くの場合に基板21の固有振動数の約2Hzより大きく、約500Hzより小さいの範囲で発生すると考えられる。
【0064】
以上のことから、制御装置3が基板21の割れの存在を判定するには、少なくとも以下の二種類の方法が考えられる。
(A)波形同士を相対的に比較する方法
図7に示されるように、割れ45の近傍にあるピックアップ11−3の波形を示す曲線A3は、他のピックアップ11の波形を示す曲線A1、A2、A4に比較して固有振動数(約2Hz)付近のピークが低く、鈍い。そして、固有振動数よりも高い周波数の振動成分が多くなっている。従って、少なくとも固有振動数(約2Hz)付近のピークが相対的に低くて鈍く、固有振動数よりも高い周波数の振動成分が多い波形を計測したピックアップ11の近傍に割れがあると判定することが出来る。すなわち、各ピックアップ11で計測された波形同士の差分のみで、基板21の割れの有無を判定することができる。特に、固有振動数よりもより高い周波数において波形同士の差分(振動振幅同士の差分)が大きければ大きいほど、その波形を検出したピックアップ11と加振器12との間又はそれの近傍に割れがあることを示している。逆に、各波形間にほとんど差が無ければ割れは無いと判断できる。
(B)波形を基準値と比較する方法
(B−1)基準波形と比較する方法
図7の曲線A1、A2のような基板21に割れが無い場合の曲線を基準波形とし、その基準波形と各ピックアンプ11で計測された波形との比較により、割れがあるか否かを判定することが出来る。具体的には、あるピックアンプ11で計測された波形と基準波形との差が、他のピックアンプ11で計測された波形と基準波形との差と比較して相対的に大きい場合、そのピックアップ11の近傍に割れがあると判定することが出来る。特に、固有振動数よりもより高い周波数において基準波形との差が大きければ大きいほど、その波形を検出したピックアップ11の近傍に割れがあることを示している。逆に、各波形間にほとんど差が無ければ割れは無いと判断できる。
(B−2)特定周波数領域で波形の振幅を基準値と比較する方法
既述のように、基板21に割れが発生すると、ピックアップ11で計測される波形には高い周波数の領域にピークが現れる。従って、高い周波領域において波形にピークがあるか否かで判定することができる。例えば、基板21は1.4×1.1m×4mmのガラス基板の場合、あるピックアンプ11で計測された波形において、10Hz〜500Hzまでの領域の波形が、基準値と比較してピークを有している場合、そのピックアップ11の近傍に割れがあると判定することが出来る。特に、より高い周波数において基準値との差が大きければ大きいほど、その波形を検出したピックアップ11の近傍に割れがあることを示している。基準値は、予め設定された固定値(基準振幅)、又は、500Hz以上の領域の波形若しくはその領域の平均振幅である。逆に、各波形間にほとんど差が無ければ割れは無いと判断できる。
【0065】
図7の場合、上記(A)の判定方法では、固有振動数よりもより高い周波数において、ピックアップ11−3で計測された波形と他のピックアップ11−1、11−2、11−4で計測された波形との差分が他の場合と比較して最も大きい。したがって、制御装置3は、ピックアップ11−3に対応する領域41−3の近傍に割れ45が有ると判定する。
上記(B−1)の判定方法の場合、固有振動数よりもより高い周波数において、基準波形(例示:曲線A1のような基板21に割れが無い場合の曲線)とピックアンプ11−3で計測された波形との差が、他のピックアップ11−1、11−2、11−4で計測された波形との差よりも大きい。したがって、制御装置3は、ピックアップ11−3に対応する領域41−3の近傍に割れ45が有ると判定する。
上記(B−2)の判定方法では、例えば500Hz以上の領域の平均振幅を基準値とした場合、固有振動数よりもより高い周波数において、ピックアンプ11−3で計測された波形は200Hz付近にピークを有してる。したがって、制御装置3は、ピックアップ11−3に対応する領域41−3の近傍に割れ45が有ると判定する。
【0066】
上記各判定方法は例示であり、これらに限定されるものではない。すなわち、上記各判定方法は単独で用いるだけでなく、技術的に矛盾が発生しない限り、併用又は混合して用いることが出来る。また、数値も、使用される基板21の大きさや重量、さらには基板21の裏面側(製膜側)に貼り付けた接着充填シート(EVA)とバックシートの減衰系等により変化する。なお、波形(基準波形を含む)同士の比較や波形と基準値との比較は、加振する(計測する)周波数範囲を複数の周波数領域に区分し、波形については各周波数領域での平均振幅を求め、その平均振幅同士や平均振幅と基準値との比較で行う。
【0067】
上記判定方法を図7の場合に適用すると、曲線A3を計測したピックアップ11−3の近傍にわれが発生していることがわかる。
【0068】
次に、本発明の基板割れ検査方法の第1の実施の形態について説明する。ここでは、ピックアップ11が基板21の四つの角付近を計測するように四つのピックアップ11−1〜11−4を設けた場合を例として説明する。
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る基板割れ検査方法を示すフロー図である。太陽電池パネル20は搬送装置30の搬送ローラ31により基板割れ検査装置1上に移動される。基板割れ検査装置1の制御装置3は、太陽電池パネル20が所定の位置に到達したことを位置センサ等(図示されず)により検知する。そして、制御装置3は駆動装置4を制御して、支持台13と加振器12とを所定の高さまで上昇させる。それにより、支持台13を介してピックアップ11が太陽電池パネル20の基板21の四隅を、加振器12が基板21の中央部をそれぞれ搬送ローラ31から離れるように持ち上げる。以上により基板割れ検査の準備が整う。その後、制御装置3の制御により、加振器12は、基板21の中央付近で、基板21に所定の周波数範囲(例示:0.1Hz〜1000Hz)の振動をステップ的に段階的に変化させながら各ステップに所定時間(例えば数秒間)与える(ステップS01)。
【0069】
一方、制御装置3の制御により、複数のピックアップ11−1〜11−4は、それぞれ基板21の四つの角付近で、基板21の振動を計測する(ステップS02)。計測は、各ピックアップ11が直接接触して行っているので、周囲からの音の影響をほとんど受けることは無い。そのため、S/N比の高い計測が可能である。但し固有振動数付近においては基板の振動が続くので、基準より長く安定化のための時間をおいてから振動を計測することが好ましい。数秒間の間で振幅の変化量が基準値以下になったことを確認して計測することがさらに好ましい。しかしながら加振安定の時間を多く取り過ぎると計測時間が長くなるので、太陽電池の生産を阻害しない範囲で設定することが望ましい。複数のピックアップ11−1〜11−4による計測結果は、それぞれ制御装置3へ出力される。
【0070】
制御装置3は、複数のピックアップ11−1〜11−4の四つの角付近での計測結果に基づいて、前記基板21に割れがあるか否かを判定する(ステップS03)。判定方法は、上記(A)の判定方法、上記(B)の判定方法、及びそれらを併用又は混合した方法に例示される。例えば、複数のピックアップ11−1〜11−4による基板21の四つの角付近での計測結果のいずれかにおいて、予め設定された基準値(例示:基準振幅又は500Hz以上での平均振幅)より大きなピークが所定の周波数範囲(例示:0.1Hz〜1000Hz)内の所定の周波数領域(例示:10Hz〜500Hz)に存在した場合、四つの角付近のうちのピークを計測した角付近と基板21の中央付近との間に割れがあると判定する。
【0071】
図7の場合では、ピックアップ11−3の計測結果を示す曲線A3では、固有振動数の近傍の主ピークが相対的に小さく、固有振動数よりも高周波側に他のピークが重なっているため主ピークが高周波側に広がっており、高周波側で更に別のピークが計測されている。これら曲線A3、A1,A2同士の比較((A)の判定方法)や、これら曲線A3、A1,A2と基準波形や基準値との比較((B)の判定方法)から、ピックアップ11−3の近傍で割れが発生していると判断できる。
【0072】
制御装置3は、基板21の割れを検出した場合、その後の製造工程にその基板21を含む太陽電池パネル20を送らないように、後続の搬送装置30の制御部へ異常を示す信号を出力する(ステップS04)。その時、例えば、製造工程を監視する監視装置や警告装置にも当該信号を出力しても良い。それにより、後続の搬送装置30は、割れを有する太陽電池パネル20をその後の製造工程に搬送しないようにラインアウトの動作をすることができる。その結果、割れを有する太陽電池パネル20に対して無駄な処理を行うことが無くなり、材料費の無駄等を防止できる。
【0073】
基板割れ検査後、制御装置3は駆動装置4を制御して、支持台13と加振器12とを所定の高さまで下降させる。それにより、ピックアップ11及び加振器12では無く搬送ローラ31が太陽電池パネル20を支持する。制御装置3は、太陽電池パネル20が所定の位置に到達したことを位置センサ等(図示されず)により検知する。そして、搬送装置30の搬送ローラ31は、搬送を再開して、太陽電池パネル20を基板割れ検査装置1から他の処理工程場所へと移動させる。
【0074】
本実施の形態では、太陽電池パネル20の基板面20bの四つの角付近にピックアップ11を接触させるという簡単な手法で、基板21の割れを監視することができる。それにより、割れを生じた太陽電池パネル20に対して、無駄な製造工程を施す必要がなく材料費の無駄を抑制することができる。このように、太陽電池パネルの製造工程に新たな品質管理手段が加わるので、製品(太陽電池パネル)の信頼性を向上することが可能となるとともに、製造工程の歩留まりを向上することが出来る。すなわち、基板割れの検査を安全且つ確実に行うことができ、安価で簡便で使用性の良い基板割れ検査装置を得ることができる。
また、基板21は四つの角付近にピックアップ11により水平に支持して計測しているが、基板搬送装置30の都合で、基板21は鉛直軸と直角方向となる水平状態ではなく、鉛直方向から傾いた状態でも良い。例えば基板21は鉛直方向から約10°傾斜した状態においても、同様に基板割れ検査を実施することが可能である。このときピックアップ11には、基板が滑り落ちないように、基板21の引っ掛かり用の段差が付いたものを設置して、基板21を仮支持して計測することが望ましい。
【0075】
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の基板割れ検査装置の第2の実施の形態について説明する。
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る基板割れ検査装置の構成を示す模式図である。本実施の形態の基板割れ検査装置1aは、検出ユニット2aと、制御装置3と、駆動装置4とを具備する。検出ユニット2aは、複数の加振器12(12−1〜12−4)と、複数のピックアップ11(11−1〜11−4)と、支持台13とを備える。
【0076】
本実施の形態の基板割れ検査装置1aでは、加振器12は複数ある点で、第1の実施の形態と異なる。複数の加振器12を有していることは、割れの位置をより正確に把握できる点で好ましい。本実施の形態の基板割れ検査装置1aでは、更に、独立して設けられているのではなく、複数のピックアップ11(11−1〜11−4)に対応して設けられている点で、第1の実施の形態と異なる。すなわち、複数の加振器12(12−1〜12−4)の各々は、複数のピックアップ11(11−1〜11−4)のいずれかに対応して概ね同じ位置に設けられている。加振器12とピックアップ11とが一体となっていても良い。それにより、加振器12及びピックアップ11がいずれも複数あるにもかかわらず、基板割れ検査装置1aの構造をより簡易にすることが出来る。
【0077】
複数の加振器12(12−1〜12−4)は、複数のピックアップ11(11−1〜11−4)と共に駆動装置4により上下に移動する。加振器12が基板21に振動を与えるとき、その加振器12に対応するピックアップ11は計測を行わず、他のピックアップ11が計測を行う。本実施の形態の基板割れ検査装置1aにおける測定原理、その他の構成については、第1の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0078】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る基板割れ検査装置の動作状況を示す斜視図である。基板割れ検査装置1aは、例えば、太陽電池パネル20を搬送する搬送装置30の途中に設けられている。太陽電池パネル20は搬送装置30の搬送ローラ31により基板割れ検査装置1a上に移動される。基板割れ検査装置1aの制御装置3は、太陽電池パネル20が所定の位置に到達したことを位置センサ等(図示されず)により検知する。そして、制御装置3は太陽電池パネル20の搬送を一時停止させて、駆動装置4を制御して、支持台13を所定の高さまで上昇させる。それにより、ピックアップ11及び加振器12の少なくとも一方が支持台13を介して太陽電池パネル20の基板21の四隅をそれぞれ搬送ローラ31から離れるように持ち上げる。以上により基板割れ検査の準備が整う。基板割れ検査後は、基板割れ検査装置1aの逆の動作により、太陽電池パネル20が搬送ローラ31上に降ろされる。その後、太陽電池パネル20は搬送を再開され、搬送装置30の搬送ローラ31により次の製造工程へ移動する。
【0079】
図11及び図12は、本発明の第2の実施の形態に係るピックアップの計測結果を示すグラフである。縦軸は各ピックアップが検知した振動の振幅を示し、横軸はピックアップが計測した振動の周波数である。ここでは、基板21は1.4×1.1m×4mmのガラス基板とする。また、加振器12は図6の基板21の四つの角付近で計測を行うこととする。すなわち、加振器12−1〜12−4が、それぞれ図6の領域41−1〜41−4において振動を与えることとする。この場合、既述のように、基板21の固有振動数は略2Hzであるから、加振器12は約0.1Hz〜約1000Hzの振動をステップ状に所定時間毎に所定振動数変化幅で段階的に順次変化させながら連続的に与える。更に、ピックアップ11は図6の基板21の四つの角付近で計測を行うこととする。すなわち、ピックアップ11−1〜11−4が、それぞれ図6の領域41−1〜41−4において振動の状況を計測する。曲線B2〜B4は、それぞれピックアップ11−2〜11−4の計測結果を示している。曲線C1、C2、C4は、それぞれピックアップ11−1、11−2、11−4の計測結果を示している。そして、基板21の割れは図6の割れ45の位置とする。
【0080】
図11は、4つある加振器を順次加振する1つの段階として、加振器12−1により基板21に振動が与えられた場合におけるピックアップ11−2〜11−4の計測結果を示している。加振器12−1にあるピックアップ11−1は計測をしない。図11に示されるように、加振器12−1とピックアップ11−2との間には割れ45は無い。そのため、ピックアップ11−2の計測結果を示す曲線B2は、基板21の固有振動数(約2Hz)付近に鋭いピークを示している。また、加振器12−1とピックアップ11−4との間には割れ45が一部かかっている。そのため、ピックアップ11−4の計測結果を示す曲線B4は、その影響により基板21の固有振動数(約2Hz)付近のピークが、曲線B2と比較して相対的に鈍くなっている。これは、固有振動数以外の周波数(高い周波数)の振動が混合されているためである。更に、加振器12−1とピックアップ11−3との間には割れ45が存在する。そのため、ピックアップ11−3の計測結果を示す曲線B3は、その影響により基板21の固有振動数(約2Hz)付近のピークが、曲線B2、B4と比較して相対的に鈍くなっている。これも、固有振動数以外の周波数(高い周波数)の振動が混合されているためである。加えて、曲線B3では、新たに高周波側で別のピークが計測されている。このように高い周波数の振動が発生する理由は既述の通りである。
【0081】
この図の場合、ピックアップ11−3の計測結果を示す曲線B3において、固有振動数の近傍の主ピークが相対的に小さく、固有振動数よりも高い周波数側に他のピークが重なっているため主ピークが高い周波数側に広がっており、高い周波数側で更に別のピークが計測されている。これら曲線B3、B2、B4同士の比較((A)の判定方法)や、これら曲線B3、B2、B4と基準波形や基準値との比較((B)の判定方法)から、加振器12−1とピックアップ11−3との間であって、ピックアップ11−2、11−4から離れた位置に割れが発生していると予測できる。
【0082】
一方、図12は、加振器12−3により基板21に振動が与えられた場合におけるピックアップ11−1、11−2、11−4の計測結果を示している。図12に示されるように、加振器12−3とピックアップ11−1との間には割れ45がある。そのため、ピックアップ11−1の計測結果を示す曲線C1は、その影響により基板21の固有振動数(約2Hz)付近のピークが、図11の曲線B2と比較して相対的に鈍くなっている。更に、曲線C1では、高い周波数側で別のピークが計測されている。また、加振器12−3とピックアップ11−2との間には割れ45がある。そのため、ピックアップ11−2の計測結果を示す曲線C2は、その影響により基板21の固有振動数(約2Hz)付近のピークが、図11の曲線B2と比較して相対的に鈍くなっている。更に、曲線C2では、高い周波数側で別のピークが計測されている。ただし、ピックアップ11−1よりもピックアップ11−2のほうが割れ45からの距離が長い。そのため、固有振動数付近のピークは相対的には鋭い。高い周波数側での別のピークは相対的には小さい。また、加振器12−3とピックアップ11−4との間には割れ45がある。そのため、ピックアップ11−4の計測結果を示す曲線C4は、その影響により基板21の固有振動数(約2Hz)付近のピークが、図11の曲線B2と比較して相対的に鈍くなっている。更に、曲線C4では、高い周波数側で別のピークが計測されている。ただし、ピックアップ11−1よりもピックアップ11−4のほうが割れ45からの距離が短い。そのため、固有振動数付近のピークは相対的には鈍い。高い周波数側での別のピークは相対的には大きい。
【0083】
この図の場合、ピックアップ11−1、11−2、11−4の計測結果を示す曲線C1,C2,C4のいずれにおいても、固有振動数の近傍の主ピークが相対的に小さく、固有振動数よりも高い周波数側に他のピークが重なっているため主ピークが高い周波数側に広がっており、高い周波数側で更に別のピークが計測されている。ただし、曲線C4,C2、C1の順にその程度が大きくなっている。これら曲線C1,C2,C4同士の比較((A)の判定方法)や、これら曲線C1,C2,C4と基準波形や基準値との比較((B)の判定方法)から、加振器12−3とピックアップ11−1、11−2、11−4との間であって、ピックアップ11−4、11−1、11−2の順に近い箇所に割れが発生していると予測できる。
【0084】
次に、加振器12−2により基板21に振動が与えられた場合におけるピックアップ11−1、11−3、11−4の計測結果は、その傾向が図11と同様であるのでその記載を省略する。この場合、加振器12−2とピックアップ11−3との間であって、ピックアップ11−1、11−4から離れた位置に割れが発生していると予測できる。同様にして次に、加振器12−4により基板21に振動が与えられた場合におけるピックアップ11−1〜11−3の計測結果は、その傾向が図11と同様であるのでその記載を省略する。この場合、加振器12−4とピックアップ11−3との間であって、ピックアップ11−1、11−2から離れた位置に割れが発生していると予測できる。
【0085】
以上のように、加振器12−1〜12−4の各々の加振に応じて、ピックアップ11−1〜11−4で基板21の振動の状況を計測した計測結果から、制御装置3は、割れ45はピックアップ11−3の近傍に発生していると判定することが出来る。
【0086】
すなわち、第2の実施の形態における基板の割れの判定方法は、例えば、以下のような方法で行う。まず、上記(A)の判定方法や(B)の判定方法に例示される方法で、各加振器12の加振ごとに、各ピックアップ11が計測した計測結果から第1の判定を行う。次に、加振器12の個数に対応する複数の第1の判定を総合して、最終的な判定(第2の判定)を行う。例えば、複数の第1判定において、最も割れが近いと判定された回数が多いピックアップ11の近傍に割れがあると判定する。回数が同数のピックアップ11がある場合、その中間の位置に割れがあると判定する。
【0087】
例えば、図6の状態の太陽電池パネル20の場合、まず、加振器12−1が基板21を加振する。各ピックアップ11−2〜11−4が基板21の振動の状況を計測する。そして、制御装置3が、上記(A)の判定方法や(B)の判定方法に例示される方法で基板の割れを判定する(1個目の第1の判定)。同様に、加振器12−2〜12−4の加振に対応して、制御装置3がそれぞれ判定を行い、2個目〜4個目の第1の判定を得る。次に、制御装置3が、1個目〜4個目の第1の判定を総合して、最終的な判定(第2の判定)を行う。
【0088】
次に、本発明の基板割れ検査方法の第2の実施の形態について説明する。
図13は、本発明の第2の実施の形態に係る基板割れ検査方法を示すフロー図である。太陽電池パネル20は搬送装置30の搬送ローラ31により基板割れ検査装置1上に移動される。基板割れ検査装置1の制御装置3は、太陽電池パネル20が所定の位置に到達したことを位置センサ等(図示されず)により検知する。そして、制御装置3は太陽電池パネル20の搬送を一時停止させて、駆動装置4を制御して、支持台13を所定の高さまで上昇させる。それにより、支持台13を介してピックアップ11又は加振器12が太陽電池パネル20の基板21の四隅を搬送ローラ31から離れるように持ち上げる。以上により基板割れ検査の準備が整う。その後、制御装置3の制御により、加振器12−1は、基板21の中央付近で、基板21に所定の周波数範囲(例示:0.1Hz〜1000Hz)の振動をステップ状に所定時間毎に所定振動数変化幅で段階的に順次変化させながら与える(ステップS11)。
【0089】
一方、制御装置3の制御により、加振器12−1と同じ位置にあるピックアップ11−1以外の複数のピックアップ11−2〜11−4は、それぞれ基板21の三つの角付近で、基板21の振動の状況を計測する(ステップS12)。計測は、各ピックアップ11が直接接触して行っているので、周囲からの音の影響をほとんど受けることは無い。そのため、S/N比の高い計測が可能である。複数のピックアップ11−2〜11−4による計測結果は、それぞれ制御装置3へ出力される。制御装置3は、複数のピックアップ11−2〜11−4の計測結果を制御装置3の記憶装置(図示されず)に格納する(ステップS13)。
【0090】
制御装置3は、全ての加振器12について、ステップS11〜ステップS13を実行したか否かを判断する(ステップS14)。全ての加振器12について実行していない場合(ステップS14:No)、加振する加振器12を変更し(ステップS15)、ステップS11〜S13を実行する。全ての加振器12について実行した場合(ステップS14:Yes)、次の処理へ進む。制御装置3は、各加振器12の加振に対応する計測結果に基づいて、各加振器12ごとに第1の判定を実行する。判定方法は、上記(A)の判定方法、上記(B)の判定方法、及びそれらを併用又は混合した方法に例示される。次に、各加振器12ごとに得られた複数の第1の判定に基づいて、それら複数の第1の判定を総合して、第2の判定を実行する。それにより、最終的な基板の割れを判定する(ステップS16)。例えば、制御装置3は、加振器12−1に関する第1の判定〜加振器12−4に関する第1の判定を、上記(A)の判定方法や(B)の判定方法に例示される方法で行う。次に、制御装置3は、得られた複数の第1の判定において、最も割れが近いと判定された回数が多いピックアップ11の近傍に割れがあると判定する。
【0091】
制御装置3は、基板21の割れを検出した場合、その後の製造工程にその基板21を含む太陽電池パネル20を送らないように、後続の搬送装置30の制御部へ異常を示す信号を出力する(ステップS17)。その時、例えば、製造工程を監視する監視装置や警告装置にも当該信号を出力しても良い。それにより、後続の搬送装置30は、割れを有する太陽電池パネル20をその後の製造工程に搬送しないようにラインアウトの動作をすることができる。その結果、割れを有する太陽電池パネル20に対して無駄な処理を行うことが無くなり、材料費の無駄等を防止できる。
【0092】
基板割れ検査後、制御装置3は駆動装置4を制御して、支持台13を所定の高さまで下降させる。それにより、ピックアップ11又は加振器12では無く搬送ローラ31が太陽電池パネル20を支持する。制御装置3は、太陽電池パネル20が所定の位置に到達したことを位置センサ等(図示されず)により検知する。そして、搬送を再開して、搬送装置30の搬送ローラ31は、太陽電池パネル20を基板割れ検査装置1から他の処理工程の場所へ移動させる。
【0093】
本実施の形態では、太陽電池パネル20の基板面20bの四つの角付近にピックアップ11を接触させるという簡単な手法で、基板21の割れを監視することができる。それにより、基板割れを生じた太陽電池パネル20に対して、無駄な製造工程を施す必要がなく材料費の無駄を抑制することができる。加えて、複数の加振器12で互いに異なる位置で基板21を加振するので、基板21の割れの有無及び位置をより正確により高精度で判断することが出来る。このように、太陽電池パネルの製造工程に新たな品質管理手段が加わるので、製品(太陽電池パネル)の信頼性を向上することが可能となるとともに、製造工程の歩留まりを向上することが出来る。すなわち、基板割れの検査を安全且つ確実に行うことができ、安価で簡便で使用性の良い基板割れ検査装置を得ることができる。
【0094】
上記実施の形態では、ピックアップ11で基板21の角(四隅)付近を計測するようにしている。しかし、基板が更に大きい場合には、ピックアップ11を更に増やしても良い。その一例を示しているのが図14である。図14は、本発明の第2の実施の形態に係る他の基板割れ検査装置の構成及び動作状況を示す斜視図である。基板割れ検査装置1bは、検出ユニット2bが更にピックアップ11−5、11−6を有し、それらが太陽電池パネル20の長辺側の中央付近で振動を計測するように設けられている、という点で第2の実施の形態と異なる。その他は、図9及び図10の場合と同様であるのでその説明を省略する。
【0095】
このとき、6個のピックアップ11−1〜11−6ができるだけ均等な荷重で基板21と接触することが重要である。したがって、角付近の4個のピックアップ11−1〜11−4に比べて、長辺側の中央付近のピックアップ11−5〜11−6は、その固有振動数が1Hz以下の弱いバネ押圧による支持にする。このような手法によれば、ピックアップ11を効果的に増加できるので、大型の基板においても検出能力を向上することが可能である。
【0096】
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る更に他の基板割れ検査装置の構成を示す模式図である。図14の例では、6個のピックアップ11−1〜11−6ができるだけ均等な荷重で基板21と接触することが出来るように、ピックアップ11−5〜11−6を、その固有振動数が1Hz以下の弱いバネ押圧により支持している。一方、図15では、図14と異なる手法として、基板割れ検査装置1cは、検出ユニット2cのピックアップ11−5、11−6が上部から重力を利用した接触(押圧)を行う。このような手法によっても6個のピックアップ11−1〜11−6ができるだけ均等な荷重で基板21と接触することが出来る。それにより、ピックアップ11を効果的に増加できるので、大型の基板においても検出能力を向上することが可能である。
【0097】
また、上記第1及び第2の実施の形態の基板割れ検査装置と比較して、太陽電池パネル20の割れを更に簡易に検出するために、ピックアップ11を基板21の角付近に4個設置するのではなく、ピックアップ11を3個設置するようにしても良い。この場合、3点で太陽電池パネル20を支持するので、太陽電池パネル20が必ずピックアップ11に支持されるようになる。それにより、4個設置の場合に比較して、基板21の割れの位置を特定する精度はやや下がるが、ピックアップ11同士の誤差はより均一化される。また、装置の構成が簡易になり、割れの有無の非常に簡易な計測判断が可能となる。
【0098】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、従来技術における薄膜太陽電池の製造工程の一部を示す模式図である。
【図2】図2は、製造途中の太陽電池パネルに基板割れが発生した状態の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、製造途中の太陽電池パネルの搬送状態の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態に係る基板割れ検査装置の構成を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態に係る基板割れ検査装置の動作状況を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係る太陽電池パネルとピックアップとの位置関係を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態に係るピックアップの計測結果を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態に係る基板割れ検査方法を示すフロー図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施の形態に係る基板割れ検査装置の構成を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態に係る基板割れ検査装置の動作状況を示す斜視図である。
【図11】図11は、本発明の第2の実施の形態に係るピックアップの計測結果を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の第2の実施の形態に係るピックアップの計測結果を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の第2の実施の形態に係る基板割れ検査方法を示すフロー図である。
【図14】図14は、本発明の第2の実施の形態に係る他の基板割れ検査装置の構成及び動作状況を示す斜視図である。
【図15】図15は、本発明の第2の実施の形態に係る更に他の基板割れ検査装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0100】
1、1a、1b、1c 基板割れ検査装置
2、2a、2b、2c 検出ユニット
3 制御装置
4 駆動装置
11、11−1〜11−6 ピックアップ
12、12−1〜12−6 加振器
20 太陽電池パネル
20b 基板面
20c バックシート面
21 基板
23 周辺研磨領域
30 搬送装置
31 搬送ローラ
40、41−1〜41−4 領域
45 割れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の周波数範囲の振動を与えるように設けられた加振部と、
前記基板の振動を計測するように設けられた複数の計測部と、
前記複数の計測部の計測結果に基づいて、前記基板に割れがあるか否かを判定する制御部と
を具備する
基板割れ検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板割れ検査装置において、
前記制御部は、前記計測結果における前記基板の固有振動数よりも高い周波数の振幅の大きさに基づいて、前記基板に割れがあるか否かを判定する
基板割れ検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板割れ検査装置において、
前記複数の計測部は、前記加振部を概ね等距離で囲むように設けられている
基板割れ検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板割れ検査装置において、
前記制御部は、前記複数の計測部の計測結果としての波形に基づいて、前記基板の固有振動数よりも高い周波数領域における波形同士の差分が最大となる波形を検出した計測部と前記加振部との間に割れがあると判定する
基板割れ検査装置。
【請求項5】
請求項3に記載の基板割れ検査装置において、
前記制御部は、前記複数の計測部の計測結果のいずれかにおいて、予め設定された基準振幅より大きな振幅が前記基板の固有振動数よりも高い周波数領域に存在した場合、当該振幅を計測した計測部と前記加振部との間に割れがあると判定する
基板割れ検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板割れ検査装置において、
前記基準振幅は、前記所定の周波数範囲内において予め設定された第1周波数領域における平均振幅であり、
前記基板の固有振動数よりも高い周波数領域は、前記所定の周波数範囲内において前記第1周波数領域と前記基板の固有振動数近傍とを除いた周波数領域である
基板割れ検査装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の基板割れ検査装置において、
前記加振部は複数設けられ、
前記複数の加振部のうちの一つが前記基板に前記所定の周波数範囲の振動を与えるとき、前記複数の加振部のうちの他のものは前記基板に振動を与えない
基板割れ検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板割れ検査装置において、
前記複数の加振部は、前記複数の計測部に対応して一体に設けられ、
前記複数の加振部のうちの一つが前記基板に前記所定の周波数範囲の振動を与えるとき、前記複数の計測部うちの対応するものは前記基板の振動を計測せず、前記複数の計測部うちの他のものは前記基板の振動を計測する
基板割れ検査装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の基板割れ検査装置において、
前記制御部は、前記複数の加振部の各々が前記基板に前記所定の周波数範囲の振動を与えたときに前記複数の計測部が前記基板の振動を計測した計測結果を、前記複数の加振部の各々ごとに取得して、取得された前記計測結果に基づいて前記基板に割れがあるか否かを判定する
基板割れ検査装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の基板割れ検査装置において、
前記複数の計測部は、少なくとも四個あり、
当該四個の計測部は、前記基板の四つの角付近で前記基板を支持及び計測可能に設けられている
基板割れ検査装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の基板割れ検査装置において、
前記複数の計測部は、前記基板の鉛直下方から計測可能に設けられている
基板割れ検査装置。
【請求項12】
請求項11に記載の基板割れ検査装置において、
前記基板の鉛直上方から、前記基板上に載置されて前記基板の振動を計測するように設けられた他の計測部を更に具備する
基板割れ検査装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の基板割れ検査装置において、
前記基板片面は、可視光線に対して不透明な膜で覆われている
基板割れ検査装置。
【請求項14】
(a)基板の第1箇所で、前記基板に所定の周波数範囲の振動を与えるステップと、
(b)前記基板の複数の第2箇所で、前記基板の振動を計測するステップと、
(c)前記複数の第2箇所での計測結果に基づいて、前記基板に割れがあるか否かを判定するステップと
を具備する
基板割れ検査方法。
【請求項15】
請求項14に記載の基板割れ検査方法において、
前記(c)ステップは、
(c1)前記計測結果における前記基板の固有振動数よりも高い周波数の振幅の大きさに基づいて、前記基板に割れがあるか否かを判定するステップを備える
基板割れ検査方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の基板割れ検査方法において、
前記複数の第2箇所は、概ね等距離で前記第1箇所を囲むように設定され、
前記(c)ステップは、
(c2)前記複数の第2箇所での計測結果としての波形に基づいて、前記基板の固有振動数よりも高い周波数領域における波形同士の差分が最大となる波形を検出した第2箇所と前記第1箇所との間に割れがあると判定するステップを備える
基板割れ検査方法。
【請求項17】
請求項14又は15に記載の基板割れ検査方法において、
前記複数の第2箇所は、概ね等距離で前記第1箇所を囲むように設定され、
前記(c)ステップは、
(c3)前記複数の第2箇所での計測結果のいずれかにおいて、予め設定された基準振幅より大きな振幅が前記基板の固有振動数よりも高い周波数領域に存在した場合、当該振幅を計測した第2箇所と前記第1箇所との間に割れがあると判定するステップを備える
基板割れ検査方法。
【請求項18】
請求項14又は15に記載の基板割れ検査方法において、
前記第1箇所は複数あり、
前記(a)ステップは、
(a1)前記複数の第1箇所のうちの一つから前記基板に前記所定の周波数範囲の振動を与えるステップを備え、前記複数の第1箇所のうちの他の箇所から前記基板に振動を与えない
基板割れ検査方法。
【請求項19】
請求項18に記載の基板割れ検査方法において、
前記(c)ステップは、
(c4)前記複数の第1箇所の各々から前記基板に前記所定の周波数範囲の振動を与えたときに前記複数の第2箇所が前記基板の振動を計測した計測結果を、前記複数の第1箇所の各々ごとに取得して、取得された前記計測結果に基づいて前記基板に割れがあるか否かを判定する
基板割れ検査方法。
【請求項20】
請求項14乃至19のいずれか一項に記載の基板割れ検査方法において、
前記基板片面は、可視光線に対して不透明な膜で覆われている
基板割れ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−145154(P2009−145154A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321712(P2007−321712)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】