説明

基板収納容器

【課題】ティースの正規の位置に基板を復帰させてその取り出し作業を容易にしたり、基板の破損を抑制できる基板収納容器を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハWを収納する容器本体と、容器本体の内部両側に配設されて半導体ウェーハWを略水平に支持する複数のティースと、容器本体内に装着されて半導体ウェーハWの後部周縁を保持溝32を介して保持するリヤリテーナと、容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備える。そして、複数のティースの後方に、容器本体を蓋体により嵌合閉鎖した場合に半導体ウェーハWの両側部周縁に傾斜面51を接触させて半導体ウェーハWを上下方向に案内する複数のガイド溝50を設け、各ガイド溝50を形成する傾斜面51の傾斜角度をリヤリテーナ30の保持溝32を形成する傾斜面33の傾斜角度よりも小さく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、フォトマスク、記録媒体用の基板等を収納する基板収納容器に関し、より詳しくは、基板の支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、200mmから300mmという半導体ウェーハの大口径化に伴い、フロントオープンボックスタイプの基板収納容器が製造・販売されている。この種の基板収納容器は、図示しない複数枚の半導体ウェーハを収納するフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の内部両側に配設されて半導体ウェーハを水平に支持する複数対のティースと、容器本体内に配設されて半導体ウェーハの後部周縁を保持溝を介して保持するリヤリテーナと、容器本体の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体とから構成され、高度な自動化、密封性、低汚染性等が図られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
このような構成の基板収納容器は、航空機、船舶、あるいはトラック等により輸送される場合には、半導体ウェーハを収納した容器本体が蓋体により嵌合閉鎖され、リヤリテーナと蓋体のフロントリテーナとに半導体ウェーハが挟持されて一対のティースから擦れないように僅かに持ち上げられ、半導体ウェーハとティースとの摩擦に伴うパーティクルや磨耗粉の発生が防止される。
【0004】
これに対し、輸送後に半導体ウェーハが取り出される場合には、容器本体から蓋体が取り外されるとともに、リヤリテーナと蓋体のフロントリテーナとの挟持が解除され、半導体ウェーハが一対のティース上に再び搭載支持される。
【特許文献1】特開2003‐522078号公報
【特許文献2】特開2004‐111830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の基板収納容器は、以上のように構成され、蓋体が取り外される場合には、リヤリテーナと蓋体のフロントリテーナとの挟持が解除され、半導体ウェーハが一対のティースに再度支持されるが、この際、リヤリテーナに滑りの悪い半導体ウェーハの周縁部が引っかかり、一対のティースの正規位置に半導体ウェーハが位置決め復帰しないことがある。このような傾向は、洗浄後の滑りの悪い半導体ウェーハに多く見受けられる。半導体ウェーハが復帰しないと、半導体ウェーハを取り出すロボットの取り出し作業に支障を来たしたり、半導体ウェーハの破損を招くという大きな問題が生じる。
【0006】
このような問題の解消には、リヤリテーナの保持溝の傾斜角度を大きくして滑り性を向上させることが考えられる。
しかしながら、保持溝の傾斜角度を単に大きくすると、半導体ウェーハの保持が困難になるので、半導体ウェーハをティースから持ち上げることが難しくなり、これを無視して強行すれば、半導体ウェーハを傷付けるおそれが少なくない。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、ティースの正規の位置に基板を復帰させてその取り出し作業を容易にしたり、基板の破損を抑制することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体と、この容器本体の内部両側に設けられて基板を支持する複数のティースと、容器本体内に設けられて基板の後部周縁を保持溝を介して保持するリヤリテーナと、容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを含み、容器本体を蓋体により閉じた場合に、リヤリテーナと蓋体との間に基板を挟んで複数のティースから持ち上げるものであって、
複数のティースの後方に、容器本体を蓋体により閉じた場合に基板の周縁に傾斜面を接触させて基板を上下方向に案内するガイド溝を設け、このガイド溝を形成する傾斜面の傾斜角度をリヤリテーナの保持溝の傾斜角度よりも小さく設定したことを特徴としている。
【0009】
なお、リヤリテーナを弾性材料を用いて形成することができる。
また、リヤリテーナの保持溝の傾斜角度を70°〜85°の範囲とすることが好ましい。
また、ガイド溝を形成する傾斜面の傾斜角度を45°〜80°の範囲とすることが好ましい。
【0010】
また、リヤリテーナ及び又はガイド溝を容器本体よりも低摩擦性の材料により形成することができる。
さらに、リヤリテーナを、容器本体の内部背面に設けられる支持体と、この支持体に設けられて基板の後部周縁を保持溝を介して保持する弾性片とから構成することができる。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも口径200mm、300mm、450mmのシリコンウェーハからなる半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、フォトマスク、記録媒体用基板、液晶ガラス等が含まれる。容器本体は、透明、半透明、不透明のいずれでも良い。この容器本体の背面は、透視窓とすることができる。
【0012】
リヤリテーナの保持溝は、断面略U字形、断面略V字形、断面略Y字形等に形成される。ガイド溝は、ティースの後方に一体形成することもできるし、別体として形成することもできる。このガイド溝を形成する傾斜面の傾斜角度とは、ティースの基板支持面と傾斜面とで形成される角度のうち、鋭角部分の角度をいう。さらに、本発明に係る基板収納容器は、フロントオープンボックスであれば、FOSBタイプとFOUPタイプのいずれもが含まれる。
【0013】
本発明によれば、基板を収納した容器本体を蓋体により閉じると、複数のティースに支持された基板が蓋体に押されてティースからガイド溝に移動してその傾斜面をスライドし、ガイド溝の傾斜面の途中からリヤリテーナの保持溝に移動し、その後、基板の後部周縁が保持溝に保持される。基板がリヤリテーナの保持溝に保持されると、リヤリテーナと蓋体とに基板が挟み持たれてティースから擦れないように持ち上げられる。
【0014】
これに対し、基板を取り出すため、容器本体から蓋体を取り外すと、基板は、リヤリテーナの保持溝からその斜面を滑り落ち、保持溝の斜面の途中からガイド溝の傾斜面に移動し、その後、ガイド溝の傾斜面からティース上に移動して支持される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ティースの正規の位置に基板を復帰させてその取り出し作業を容易にしたり、基板の破損を有効に抑制することができるという効果がある。
また、リヤリテーナを弾性材料を使用して形成すれば、基板収納容器の移動時に基板に衝撃や振動が作用しても基板を安全に保護することができる。また、基板をリヤリテーナの保持溝から高い確率で落下させることができる。
【0016】
また、リヤリテーナの保持溝の傾斜角度を70°〜85°の範囲とすれば、基板の滑り性の低下を抑制したり、傾斜面に接触する際の基板の移動性を確保したり、擦れに伴う基板の損傷や汚染等を防ぐことができる。
また、ガイド溝を形成する傾斜面の傾斜角度を45°〜80°の範囲とすれば、基板をリヤリテーナの保持溝の傾斜面からティース上に滑り落とすことができるし、基板を蓋体により容器本体内に押し込む際の抵抗を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図9に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体1と、この容器本体1の両側壁に配設されて半導体ウェーハWを略水平に支持する複数対のティース20と、容器本体1の背面壁6に装着されて半導体ウェーハWの後部周縁を保持溝32を介して保持するリヤリテーナ30と、容器本体1の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体40とを備え、複数対のティース20の後方に複数のガイド溝50を設けるようにしている。
【0018】
各半導体ウェーハWは、例えば直径300mmの丸い円板形のシリコンウェーハからなり、表裏両面がそれぞれ鏡面に形成されており、専用のロボットにより左右の両側部周縁がハンドリングされた状態で出し入れされる。この半導体ウェーハWの周縁部には、結晶方向の判別や整列を容易にするノッチが平面略半円形に切り欠かれる。
【0019】
容器本体1は、図1ないし図3に示すように、透明性と剛性に優れるポリカーボネート樹脂等の所定の樹脂を使用して正面の開口した透明のフロントオープンボックスに成形され、複数枚(例えば25枚)の半導体ウェーハWを上下方向に並べて整列収納するよう機能する。
【0020】
容器本体1は、図3に示すように、正面側に位置する中空の最拡幅部2と、この最拡幅部2の後方に傾斜段差壁を介して一体形成された中空の拡幅部3と、この拡幅部3の後方に傾斜段差壁4を介して一体形成された中空の縮幅部5と、この縮幅部5の後方に傾斜段差壁を介して一体形成された最縮幅部である背面壁6とから形成される。拡幅部後方の傾斜段差壁4は、半導体ウェーハWが収納される際のストッパとして機能する。
【0021】
容器本体1の底面の前部両側と後部中央とには、基板収納容器を搭載する加工装置に位置決めされる位置決め具8がそれぞれ一体形成される。各位置決め具8は、断面略M字形、略逆V字形、略逆Y字形あるいは凹んだ小判形等に形成される。
【0022】
容器本体1の天井中央部には図1や図2に示すように、平面矩形のロボティックフランジ9が一体的あるいは着脱自在に装着され、このロボティックフランジ9がOHT(オーバーヘッドホイストトランスファー)と呼ばれる図示しない自動搬送機構に保持されることにより、基板収納容器が工程内を搬送する。また、容器本体1の開口正面の周縁部は断面略L字形に形成されることにより、外方向に張り出されてリム部10を形成(図2、図3参照)し、このリム部10内の上下には、蓋体施錠用の係止穴11がそれぞれ複数凹み形成される。
【0023】
容器本体1の両側壁には、肉厚の円板形、略L字形、あるいは倒U字形の搬送ハンドル(図示せず)がそれぞれ選択的に装着され、この搬送ハンドルが作業員に把持されることにより基板収納容器が搬送される。
なお、容器本体1、位置決め具8、ロボティックフランジ9、及び搬送ハンドルは、例えばポリカーボネート、ポリエーテルイミド、又は環状オレフィン樹脂等を使用して成形される。これらの材料には、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維、帯電防止剤等を適宜添加することができる。
【0024】
複数対のティース20は、図2、図3、図8、図9に示すように、容器本体1の両側壁内面から内方向に突出して相互に対向し、半導体ウェーハWを略水平に支持搭載する左右一対のティース20を備え、この一対のティース20が上下方向に所定のピッチで複数配列される。各ティース20は、容器本体1、位置決め具8、ロボティックフランジ9、及び搬送ハンドルと同様の材料を使用して成形され、容器本体1の拡幅部3からその後方の傾斜段差壁4にかけて形成される。
【0025】
各ティース20は、平面略長方形、略く字形、あるいは略半円弧形に形成されて半導体ウェーハWの側部周縁に沿う平板21と、この平板21の前部内側上に一体形成される平坦な前部中肉領域22と、平板21の前部外側上に一体形成されて前部中肉領域22の外側、換言すれば、容器本体1の側壁側に位置する平坦な前部厚肉領域23と、平板21の後部に一体形成される後部中肉領域24と、平板21の後部に形成されて後部中肉領域24の前方に位置し、容器本体1の側壁寄りに僅かな面積で位置する平坦な後部厚肉領域25とから形成される。
【0026】
前部中肉領域22と前部厚肉領域23との間には、半導体ウェーハWの側部周縁に接触する垂直の段差が僅かに形成される。前部厚肉領域23は、半導体ウェーハWの厚さ相当の高さ、具体的には0.3〜0.7mm程度の高さに形成され、蓋体40の取り外し時に半導体ウェーハWが容器本体1から飛び出すのをストッパとして規制する。前部中肉領域22と後部中肉領域24との間には、僅かに凹んだ薄肉領域が形成され、この薄肉領域が半導体ウェーハWの側部周縁に僅かな隙間を介して対向する。
【0027】
このような構成のティース20は、平坦な前部中肉領域22と後部中肉領域24とに半導体ウェーハWの側部周縁を高い精度を維持しつつ水平に支持し、半導体ウェーハWが上下方向に傾斜してロボットのフォークによる出し入れが困難になるのを防止するよう機能する。
【0028】
リヤリテーナ30は、図2、図3、図6、図8、図9に示すように、容器本体1の背面壁内面に装着される平面略U字形で縦長の支持板31を備え、この支持板31の両自由端部には、断面略V字形の保持溝32が上下方向に複数並べて形成されており、各保持溝32に半導体ウェーハWの後部周縁が保持される。
【0029】
支持板31は、半導体ウェーハWに保持溝32が個別に接触保持する観点から、容器本体1よりも柔軟性、摺動性(低摩擦性)、弾性に優れる材料を使用して成形される。具体的には、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、フッ素含有樹脂、ポリエステル系等の各種熱可塑性エラストマー等が使用される。
【0030】
各保持溝32の上下方向に広がる傾斜面33の傾斜角度θ2は70°〜85°の範囲とされるが、これは、70°未満の場合には、半導体ウェーハWの滑り性が低下するからである。逆に、85°を超える場合には、傾斜面33に摺接する際の半導体ウェーハWの移動性が悪化し、擦れにより半導体ウェーハWの周縁部の損傷を招いたり、汚染が生じるからである。
【0031】
蓋体40は、図1ないし図4に示すように、容器本体1のリム部10内に着脱自在に嵌合される嵌合体41と、この嵌合体41の開口した表面の両側部にそれぞれセットされる左右一対の施錠機構46と、嵌合体41の開口した表面に着脱自在に装着されて施錠機構46を被覆するカバープレート47とから構成され、容器本体1のリム部10内に押圧嵌合されてシール状態に嵌合閉鎖する。
【0032】
嵌合体41は、基本的には断面略ハット形に形成されるとともに、横長の正面略矩形に形成され、周壁が剛性を確保できるよう断面略H字形、断面略L字形、あるいは断面略Z字形に形成されており、この屈曲した周壁に、容器本体1と蓋体40との間に介在するシールガスケット42が着脱自在に嵌合される。シールガスケット42は、例えばフッ素ゴムやシリコーンゴム等を使用してエンドレスに成形され、蓋体40の嵌合時にリム部10の内周面に圧接変形し、容器本体1の外部から内部に塵埃を含む気体が流入するのを抑制防止するよう機能する。
【0033】
嵌合体41の凹んだ裏面中央部には、弾性のフロントリテーナ43が装着され、このフロントリテーナ43が容器本体1に収納された各半導体ウェーハWの前部周縁を挟持する(図9参照)。このフロントリテーナ43は、図2や図4に示すように、上下方向に並ぶ複数のバネ片44と、各バネ片44に一体形成されて半導体ウェーハWの前部周縁をV溝を介し保持する誘導ブロック45とから形成される。
【0034】
各施錠機構46は、嵌合体41の表面側部に軸支され、図示しない蓋体開閉装置の外部からの操作で回転する回転リールと、嵌合体41にスライド可能に支持されて回転リールに連結され、回転リールの回転に基づいて蓋体40の内外上下方向に直線的にスライドする複数の進退動バーと、各進退動バーの先端部に形成され、嵌合体41の周壁の開口から出没してリム部10の係止穴11に嵌合係止する係止爪とから構成され、容器本体1のリム部10を嵌合閉鎖した蓋体40を施錠する。
【0035】
カバープレート47は、嵌合体41の開口表面に対応する形に形成され、回転リールの表面中心部に対向する施錠機構46用の貫通操作孔48が正面矩形に穿孔されており、この左右一対の貫通操作孔48が蓋体開閉装置のキーに貫通される。
なお、蓋体40の嵌合体41、施錠機構46、カバープレート47等は、例えばポリカーボネート、フッ素を含有したポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を使用して成形される。
【0036】
複数のガイド溝50は、図2、図3、図5に示すように、容器本体1の両側壁内面、換言すれば、拡幅部後方の傾斜段差壁4の上下方向に一列に並設されて複数のティース20の後方に位置し、容器本体1が蓋体40により嵌合閉鎖された場合に、半導体ウェーハWの両側部周縁に傾斜面51を接触させて半導体ウェーハWを上下方向に案内するよう機能する。複数のガイド溝50は半導体ウェーハWの枚数に応じて形成され、各ガイド溝50は断面略V字形に形成される。
【0037】
ガイド溝50を形成する傾斜面51の傾斜角度θ1は、保持溝32の傾斜面33の傾斜角度θ2よりも小さく設定され、具体的には45°〜80°の範囲とされる(図5、図7参照)。これは、45°未満の場合には、半導体ウェーハWが保持溝32の傾斜面33からティース20上に滑り落ちず、半導体ウェーハWがガイド溝50で停止して取り出しエラーのおそれがあるからである。逆に、80°を超える場合には、半導体ウェーハWをフロントリテーナ43により容器本体1内に押し込む際の抵抗が増大し、半導体ウェーハWに擦り傷が付くからである。
【0038】
このようなガイド溝50と保持溝32とは、図7に示すように、半導体ウェーハWがガイド溝50の傾斜面51の途中から保持溝32の傾斜面33に載り移ることができるようオーバーラップした関係に設定される。本実施形態においては、容器本体1に蓋体40が2mm押し込まれることにより、半導体ウェーハWがガイド溝50の傾斜面51の途中から保持溝32の傾斜面33に載り移るよう設定される。
【0039】
上記において、航空機、船舶、あるいはトラック等により基板収納容器を輸送するため、半導体ウェーハWを整列収納した容器本体1を蓋体40により嵌合閉鎖する(図8、図9参照)と、一対のティース20に支持された半導体ウェーハWが蓋体40のフロントリテーナ43に押圧されてティース20からガイド溝50に移動してその傾斜面51上をスライドし、ガイド溝50の傾斜面51の途中からはじめて保持溝32の急角度の傾斜面33に移動接触し、その後、半導体ウェーハWの後部周縁が保持溝32の谷34で停止する(図7、図9参照)。
【0040】
こうして、半導体ウェーハWが保持溝32の谷34に停止して保持されると、リヤリテーナ30と蓋体40のフロントリテーナ43とに半導体ウェーハWが挟持されて一対のティース20から擦れないように僅かに持ち上げられ、半導体ウェーハWとティース20との摩擦に伴うパーティクルや磨耗粉の発生が確実に防止される。
【0041】
これに対し、輸送後に半導体ウェーハWを取り出すため、容器本体1から施錠機構46を解除した蓋体40を取り外すと、半導体ウェーハWは、保持溝32の谷34から傾斜面33を滑り落ち、保持溝32の傾斜面33の途中からはじめてガイド溝50の傾斜面33・51に移動接触した後、ガイド溝50の傾斜面51からその先端を基準としたティース20の前部中肉領域22と後部中肉領域24とに移動して位置決め搭載される。この際、保持溝32の傾斜角度がガイド溝50の傾斜角度よりも急角度なので、半導体ウェーハWを保持溝32から高い確率で落下させることができる。
【0042】
上記構成によれば、保持溝32の傾斜角度がガイド溝50の傾斜角度よりも急角度で、リヤリテーナ30に半導体ウェーハWの周縁部が引っかかることがないので、一対のティース20の正規位置に半導体ウェーハWを位置決め復帰させることができる。したがって、半導体ウェーハWを取り出すロボットの取り出し作業に支障を来たしたり、半導体ウェーハWの破損を招くという問題をきわめて有効に解消することができる。また、半導体ウェーハWを安全に輸送することができ、しかも、輸送時に無用な接触領域を減少させて汚染の抑制防止を図ることができる。
【0043】
また、半導体ウェーハWを比較的傾斜の緩やかなガイド溝50の傾斜面51に沿って移動させ、引き続き傾斜角度の急なリヤリテーナ30に支持されるように移動させるので、半導体ウェーハWのスムーズな移動と保持の容易化が大いに期待できる。したがって、半導体ウェーハWをティース20から簡易に持ち上げることができ、半導体ウェーハWを傷付けるおそれがない。
【0044】
また、リヤリテーナ30を柔軟性、摺動性、弾性に優れる材料を使用して成形するので、半導体ウェーハWを保持溝32から確実に落下させることができ、しかも、半導体ウェーハWの取り出しの際の位置精度を著しく向上させることが可能になる。さらに、ティース20を容器本体1等と同様の材料により形成するので、弾性変形が小さく、寸法ばらつきも小さいので、ティース20上に半導体ウェーハWを高精度に搭載支持することが可能になる。
【0045】
次に、図10は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1の両側壁内面、換言すれば、拡幅部後方の傾斜段差壁4に、連続した山型からなる複数の凹凸を所定のピッチで上下方向に並設し、この複数の凹凸の表面に摺動性や低摩擦性に優れる樹脂層52を被覆して摺動性や低摩擦性に優れる別体のガイド溝50を複数設けるようにしている。
【0046】
別体のガイド溝50は、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、フッ素含有樹脂等の樹脂を使用したインサート成形法や二色成形法等により容器本体1に成形される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0047】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、摺動性や低摩擦性に優れる材料を使用してガイド溝50を成形するので、洗浄後の半導体ウェーハWでも高精度にローディングすることができるのは明らかである。また、半導体ウェーハWの損傷や磨耗を抑制防止することができる。
【0048】
次に、図11は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、リヤリテーナ30を、容器本体1の背面壁内面に装着される支持枠体35と、この支持枠体35の両側部間に並設されて半導体ウェーハWの後部周縁を保持溝32を介して保持する複数の弾性片36とから構成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、リヤリテーナ30の構成の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0049】
次に、図12は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1の内部両側に配設されて半導体ウェーハWに接触するティース20の一部又は全部の接触領域に、ガイド溝50同様、容器本体1よりも柔軟性、摺動性(低摩擦性)、弾性に優れる材料を使用して複数の低摩擦樹脂層26を設けるようにしている。
【0050】
低摩擦樹脂層26は、例えばティース20の前部中肉領域22や後部中肉領域24等にインサート成形法や二色成形法等によりそれぞれ一体形成されたり、別体の層として摩擦係合等の方法により積層される。この低摩擦樹脂層26の具体的な材料としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、フッ素含有樹脂等が使用される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0051】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、低摩擦樹脂層26の利用により、蓋体40の開閉時にティース20とリヤリテーナ30との間で半導体ウェーハWをよりスムーズに移動させることができるのは明白である。さらに、半導体ウェーハWのエッジを傷付けたり、磨耗部分が発生したり、あるいは位置ずれが生じるのをきわめて有効に防止することができる。
【0052】
なお、上記実施形態のロック機構を、蓋体40に支持されて外部からの操作で回転する回転体と、蓋体40にスライド可能に支持されて回転体に連結され、回転体の回転に基づいて蓋体40の内外方向に進退動する複数の進退動バーと、蓋体周壁の開口付近に回転可能に支持されて進退動バーの先端部に連結され、この進退動作バーの進退動に基づいて蓋体40の開口から出没する係止ローラとから構成することができる。
【0053】
また、容器本体1の両側壁内面に、ガイド溝50を取付ボスの熱溶着や超音波溶着等の方法により一体化しても良いし、別部品として取り付けても良い。さらに、ティース20、リヤリテーナ30、ガイド溝50の全部又は一部にしぼ(texture)を加工して低摩擦抵抗領域を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す全体斜視説明図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体とフロントリテーナとを示す説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるガイド溝を示す図3のV−V線断面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるリヤリテーナを示す図3のVI−VI線断面説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるリヤリテーナとガイド溝との関係を示す断面説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の嵌合閉鎖直前の状態を示す説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の嵌合閉鎖時の状態を示す説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を示す断面説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態を示す断面説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の第4の実施形態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 容器本体
2 最拡幅部
3 拡幅部
4 傾斜段差壁
5 縮幅部
6 背面壁(背面)
9 リム部
20 ティース
21 平板
22 前部中肉領域
23 前部厚肉領域
24 後部中肉領域
25 後部厚肉領域
26 低摩擦樹脂層
30 リヤリテーナ
32 保持溝
33 傾斜面
34 谷
35 支持枠体(支持体)
36 弾性片
40 蓋体
43 フロントリテーナ
44 バネ片
45 誘導ブロック
50 ガイド溝
51 傾斜面
52 樹脂層
W 半導体ウェーハ(基板)
θ1 ガイド溝の傾斜面の傾斜角度
θ2 保持溝の傾斜面の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する容器本体と、この容器本体の内部両側に設けられて基板を支持する複数のティースと、容器本体内に設けられて基板の後部周縁を保持溝を介して保持するリヤリテーナと、容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを含み、容器本体を蓋体により閉じた場合に、リヤリテーナと蓋体との間に基板を挟んで複数のティースから持ち上げる基板収納容器であって、
複数のティースの後方に、容器本体を蓋体により閉じた場合に基板の周縁に傾斜面を接触させて基板を上下方向に案内するガイド溝を設け、このガイド溝を形成する傾斜面の傾斜角度をリヤリテーナの保持溝の傾斜角度よりも小さく設定したことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
リヤリテーナを弾性材料を用いて形成した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
リヤリテーナの保持溝の傾斜角度を70°〜85°の範囲とした請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
ガイド溝を形成する傾斜面の傾斜角度を45°〜80°の範囲とした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項5】
リヤリテーナ及び又はガイド溝を容器本体よりも低摩擦性の材料により形成した請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。
【請求項6】
リヤリテーナを、容器本体の内部背面に設けられる支持体と、この支持体に設けられて基板の後部周縁を保持溝を介して保持する弾性片とから構成した請求項1ないし5いずれかに記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−120791(P2006−120791A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305866(P2004−305866)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】