説明

基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボット

【課題】製造コストの削減および軽量化を図るとともに複数枚の基板を同時に搬送することができること。
【解決手段】基板搬送用ハンドは、第1の載置部と、第2の載置部とを備える。第1の載置部は、所定の高さの載置面にて基板を支える複数の支持部を含み、第2の載置部は、第1の載置部の載置面の高さよりも上方の載置面にて基板を支える複数の支持部を含み、該支持部のうち1または複数は退避可能である。第1の載置部に基板を載置し、さらに、第2の載置部に別の基板を載置するよう基板搬送用ハンドを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ等の薄板状ワーク(以下、「基板」と記載する)を搬送するハンドを備える基板搬送ロボットが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ハンドに設けられた一対のアームによって基板の周縁部を把持し、基板を搬送する基板搬送用ハンドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−274232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術の基板搬送用ハンドでは、基板を1枚ずつしか搬送することができなかった。
【0006】
このため、従来の基板搬送ロボットによって同時に複数枚の基板を搬送するためには、複数のハンドを備える必要がある。これにより、従来の基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットは、製造コストがかかるうえ重量がかさむという問題もあった。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、製造コストの削減および軽量化を図るとともに複数枚の基板を同時に搬送することができる基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る基板搬送用ハンドは、第1の載置部と、第2の載置部とを備える。前記第1の載置部は、所定の高さの載置面にて基板を支える複数の支持部を含み、前記第2の載置部は、前記第1の載置部の載置面の高さよりも上方の載置面にて基板を支える複数の支持部を含み、該支持部のうち1または複数は退避可能である。また、基板搬送用ハンドは、前記第2の載置部の前記退避可能な支持部を退避させた状態で、前記第1の載置部に第1の基板を載置し、さらに、前記退避可能な支持部の退避を解除させた状態で、前記第2の載置部に第2の基板を載置する。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、製造コストの削減および軽量化を図るとともに複数枚の基板を同時に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る基板搬送ロボットの模式斜視図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る基板搬送用ハンドの模式斜視図である。
【図3A】図3Aは、第1の実施形態に係るハンド本体部の側面図その1である。
【図3B】図3Bは、第1の実施形態に係るハンド本体部の側面図その2である。
【図4A】図4Aは、第1の実施形態に係るハンド本体部の側面図その3である。
【図4B】図4Bは、第1の実施形態に係るハンド本体部の上視図その1である。
【図5A】図5Aは、第1の実施形態に係るハンド本体部の側面図その4である。
【図5B】図5Bは、第1の実施形態に係るハンド本体部の上視図その2である。
【図6A】図6Aは、第2の実施形態に係るハンド本体部の側面図その1である。
【図6B】図6Bは、第2の実施形態に係るハンド本体部の側面図その2である。
【図6C】図6Cは、第2の実施形態に係るハンド本体部の側面図その3である。
【図7A】図7Aは、第3の実施形態に係るハンド本体部の側面図である。
【図7B】図7Bは、第3の実施形態に係るハンド本体部の上視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る基板搬送ロボット1について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係る基板搬送ロボット1の模式斜視図である。なお、以下では同図右下に示すような座標軸を適宜用いて説明を行うこととし、また、同図では説明を容易にするために一部の形状を単純化して示す。
【0013】
図1に示すように、第1の実施形態に係る基板搬送ロボット1は、多関節ロボットであり、基台2と、支柱3と、関節部4、6、8とアーム5、7と、基板搬送用ハンド10とを備える。
【0014】
また、基板搬送ロボット1には、制御装置200が接続されており、制御装置200によって基板搬送ロボット1の起動や停止等の動作が制御され、基板搬送用ハンド10によって基板を搬送する。
【0015】
また、制御装置200によって基板搬送ロボット1を動作させるプログラムを作成し(以下、「ティーチング」と記載する)、ティーチングされた教示データを再生することで、基板搬送ロボット1は、基板の載置や搬送等の動作を行う。なお、ここで、基板とは、半導体ウェハやガラス基板等の薄板状ワークを示す。
【0016】
支柱3は、基台2から鉛直方向(Z軸方向)にスライド可能に設けられる。これにより、基板搬送用ハンド10は、鉛直方向(Z軸方向)へ昇降する。
【0017】
アーム5は、支柱3の先端部に基端部が関節部4を介して連結される。これにより、アーム5は、関節部4の関節軸O1を中心に支柱3の先端部に回転可能に支持される。アーム7は、アーム5の先端部に基端部が関節部6を介して連結される。これにより、アーム7は、関節部6の関節軸O2を中心にアーム5の先端部に回転可能に支持される。
【0018】
2つの基板搬送用ハンド10は、アーム7の先端部に基端部が関節部8を介してそれぞれ連結される。これにより、2つの基板搬送用ハンド10は、関節部8の関節軸O3を中心にアーム7の先端部に回転可能に支持される。なお、2つの基板搬送用ハンド10の基端部は、カバー10aによって覆われている。
【0019】
また、基板搬送ロボット1は、基板搬送ロボット1に内蔵されるアクチュエータやモータ(図示せず)を駆動させることによってアーム5とアーム7とが回転動作する。これにより、基板搬送用ハンド10は、水平方向(X軸方向およびY軸方向)へ直線的に移動する。
【0020】
従来の基板搬送ロボットでは、1つの基板搬送用ハンドによって基板を1枚ずつしか搬送することができなかった。したがって、上述したような2つの基板搬送用ハンドを備える基板搬送ロボットでは、2枚の基板しか搬送することができない。
【0021】
このように、同時に複数枚の基板を搬送するためには、搬送する基板の枚数分だけ基板搬送用ハンドを備える必要がある。このため、従来の基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットは、同時に搬送する基板数分の基板搬送用ハンドを備えるための製造コストがかかるうえ重量がかさんでしまう。そこで、第1の実施形態に係る基板搬送ロボット1では、1つの基板搬送用ハンド10によって2枚の基板が搬送可能な構成とした。
【0022】
具体的には、基板搬送用ハンド10は、所定の高さの載置面にて所定の基板を載置する載置部(以下、「第1の載置部」と記載する)を備える。さらに、基板搬送用ハンド10は、第1の載置部の載置面の高さよりも高い載置面にて別の基板を載置する載置部(以下、「第2の載置部」と記載する)を備える。
【0023】
まず、基板搬送ロボット1は、第2の載置部に備える退避可能な支持部を退避させた状態で、第1の載置部に基板を載置する。さらに、基板搬送ロボット1は、退避可能な支持部の退避を解除させた状態で、第2の載置部に別の基板を載置することとした。
【0024】
このようにすることによって、第1の実施形態に係る基板搬送用ハンド10および基板搬送ロボット1では、同時に搬送する基板数分の基板搬送用ハンドを備えるための製造コストの削減および軽量化を図るとともに複数枚の基板を同時に搬送することができる。
【0025】
つぎに、第1の実施形態に係る基板搬送用ハンド10の詳細について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る基板搬送用ハンド10の模式斜視図である。なお、図2では、基板搬送用ハンド10の基端部の構成を説明するために、基端部に備えるカバー10aを外した状態の基板搬送用ハンド10を示す。
【0026】
図2に示すように、2つの基板搬送用ハンド10は、上下方向に重畳して配置されている。なお、上下の2つの基板搬送用ハンド10は、同様の構成となっているので、ここでは、一方の基板搬送用ハンド10についてのみ説明する。
【0027】
基板搬送用ハンド10は、ハンド本体部11と、先端側支持部12と、第1基端側支持部13と、第2基端側支持部14と、取付部15と、連結部16と、エアシリンダ17、19と、押圧部18a、18bとを備える。
【0028】
一対の先端側支持部12は、先端がV字状に開いたハンド本体部11の各先端にそれぞれ固定され、ハンド本体部11の先端側(X軸の正方向)で基板を支持する。また、先端側支持部12は、高さの異なる2段の載置面が形成されている。なお、以下では、高さの高い方の載置面を上段載置面と記載し、低い方の載置面を下段載置面と記載する。
【0029】
一対の第1基端側支持部13は、ハンド本体部11上面の基端側(X軸の負方向)にそれぞれ固定され、ハンド本体部11の基端側(X軸の負方向)で基板を支持する。
【0030】
また、第1基端側支持部13は、先端側支持部12の下段載置面に対応する高さの載置面が形成されている。先端側支持部12の下段載置面と第1基端側支持部13の載置面とに基板を略水平な状態で載置する。
【0031】
一対の第2基端側支持部14は、ハンド本体部11上面の基端側(X軸の負方向)の第1基端側支持部13の近傍にそれぞれ設けられ、X軸方向へ直動可能である。また、第2基端側支持部14は、ハンド本体部11の基端側(X軸の負方向)で基板を支持する。
【0032】
第2基端側支持部14は、先端側支持部12の上段載置面に対応する高さの載置面が形成されている。先端側支持部12の上段載置面と第2基端側支持部14の載置面とに基板を略水平な状態で載置する。なお、先端側支持部12、第1基端側支持部13および第2基端側支持部14の形状の詳細については図3Aおよび図3Bを用いて後述する。
【0033】
一対の取付部15は、それぞれ第2基端側支持部14と接続されており、互いに平行に配置されている。また、一対の取付部15は、ハンド本体部11上面の基端側(X軸の負方向)で略U字状に形成される連結部16を介して双方が連結される。
【0034】
連結部16は、連結部16に接続されるエアシリンダ17によってX軸方向へ直動可能である。連結部16がX軸方向へ直動することにより、各取付部15と取付部15に連結される各第2基端側支持部14とが、X軸方向へ直動する。
【0035】
押圧部18aは、押圧部18aに接続されるエアシリンダ19によってX軸方向へ直動可能である。押圧部18aは、直動することにより、先端側支持部12と第1基端側支持部13とで支持される基板の周縁部を押圧することによってハンド本体部11の先端側(X軸の正方向)へ基板を押圧する。
【0036】
押圧部18bは、押圧部18bに接続されるエアシリンダ19によってX軸方向へ直動可能である。押圧部18bは、直動することにより、先端側支持部12と第2基端側支持部14とで支持される基板の周縁部を押圧することによってハンド本体部11の先端側(X軸の正方向)へ基板を押圧する。
【0037】
つぎに、先端側支持部12、第1基端側支持部13および第2基端側支持部14の詳細について、図3Aおよび図3Bを用いて説明する。図3Aおよび図3Bは、第1の実施形態に係るハンド本体部11の側面図その1およびその2である。
【0038】
まず、図3Aに示すように、ハンド本体部11の先端側(X軸の正方向)の先端側支持部12は、段差が形成されており、下段には下段載置面12aと壁面12bとが形成されており、上段には上段載置面12cと壁面12dとが形成されている。
【0039】
ハンド本体部11の基端側(X軸の負方向)の第1基端側支持部13は、第1載置面13aと壁面13bとが形成されており、第2基端側支持部14は、第2載置面14aと壁面14bとが形成されている。
【0040】
なお、第1載置面13aは、下段載置面12aに対応する高さであり、第2載置面14aは、上段載置面12cに対応する高さとする。下段載置面12aと上段載置面12cとの高さの関係については図5Aを用いて後述する。
【0041】
下段載置面12aと第1載置面13aは、略水平に載置される基板100aと線接触するように、載置される基板100aの中心部に向かって徐々に低くなるように傾斜している。
【0042】
また、上段載置面12cと第2載置面14aも同様に、略水平に載置される基板100bと線接触するように、載置される基板100bの中心部に向かって徐々に低くなるように傾斜している(図3B参照)。
【0043】
このように、基板100aを載置する第1の載置部は、下段載置面12a、壁面12b、第1載置面13aおよび壁面13bを含むものとする。また、基板100bを載置する第2の載置部は、上段載置面12c、壁面12d、第2載置面14aおよび壁面14bを含むものとする。
【0044】
上述した構成とする基板搬送用ハンド10は、第2基端側支持部14を退避させた状態で、下段載置面12aと第1載置面13aとに基板100aを略水平な状態で載置する。
【0045】
具体的には、基板搬送ロボット1は、エアシリンダ17によって第2基端側支持部14を第1基端側支持部13よりもX軸の負方向側に位置するよう退避させる。これにより、基板搬送ロボット1は、第2基端側支持部14が基板100aに当接するのを防止することができる。
【0046】
そして、基板搬送ロボット1は、基板搬送用ハンド10を基板100aが収納されている基板収納容器(図示せず)へ移動させる。なお、基板収納容器は、基板100aを収納する筺体である。
【0047】
たとえば、基板収納容器は、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格のFOUP(Front Opening Unified Pod)に対応したカセットであってもよい。
【0048】
また、基板収納容器の他に、基板の方向性を検知して整える(アライメントする)アライナ装置などのような他の装置に基板100aが収納されていてもよい。なお、ここでは、基板搬送ロボット1が、カセットに収納された基板100aを載置する場合について示す。
【0049】
また、基板搬送ロボット1は、基板搬送用ハンド10をカセット内の基板100aの下方に位置するよう移動させ、さらに、上方へ移動させることによって下段載置面12aと第1載置面13aとに基板100aを載置する。
【0050】
その後、押圧部18aによって基板100aをハンド本体部11の先端側(X軸の正方向)へ押圧し、基板100aを壁面12bに押し付ける。これにより、基板搬送用ハンド10は、載置された基板100aを安定して搬送することができるとともに、ハンド本体部11上面と基板100a面とが当接するのを抑制することができる。
【0051】
つづいて、図3Bに示すように、基板搬送用ハンド10は、第2基端側支持部14の退避を解除させ、上段載置面12cと第2載置面14aとに基板100bを略水平な状態で載置する。
【0052】
具体的には、基板搬送ロボット1は、エアシリンダ17によって第2基端側支持部14を第1基端側支持部13よりもX軸の正方向側に位置するよう移動させる(同図矢印方向)。
【0053】
そして、基板搬送ロボット1は、基板搬送用ハンド10をカセット内の基板100bの下方に位置するよう移動させ、さらに、上方へ移動させることによって上段載置面12cと第2載置面14aとに基板100bを載置する。
【0054】
その後、押圧部18bによって基板100bをハンド本体部11の先端側(X軸の正方向)へ押圧し、基板100bを壁面12dに押し付ける。これにより、基板搬送用ハンド10は、載置された基板100bを安定して搬送することができる。
【0055】
なお、ここでは、基板100aを載置する際、押圧部18aによって基板100aを押圧し、基板100bを載置する際、押圧部18bによって基板100bを押圧することとした。
【0056】
しかし、これに限定されるものではなく、たとえば、2枚の基板100a、100bを載置した後、同時に押圧部18aおよび押圧部18bによって基板100aおよび基板100bを押圧することとしてもよい。これにより、基板搬送ロボット1は、載置にかかる時間を短縮することができる。また、この場合、別体となっている押圧部18aと押圧部18bとを一体化してもよく、これにより、基板搬送用ハンド10は、部品点数を減少させることができる。
【0057】
このようにして、第1の実施形態に係る基板搬送ロボット1では、1つの基板搬送用ハンド10によって同時に2枚の基板100a、100bを載置することができる。
【0058】
つぎに、基板搬送用ハンド10の動作の詳細について、図4A、図4B、図5Aおよび図5Bを用いて説明する。図4Aは、第1の実施形態に係るハンド本体部11の側面図その3であり、図4Bは、第1の実施形態に係るハンド本体部11の上視図その1である。また、図5Aは、第1の実施形態に係るハンド本体部11の側面図その4であり、図5Bは、第1の実施形態に係るハンド本体部11の上視図その2である。
【0059】
まず、図4Aおよび図4Bに示すように、基板搬送ロボット1は、下段載置面12aと第1載置面13aとに基板100aを載置した状態である。さらに、第2基端側支持部14は、退避を解除させた状態、すなわち、第1基端側支持部13よりもX軸の正方向側に位置するよう移動した状態であるとする。
【0060】
また、カセット内の基板100bは、4つの基板支持部材101によって基板100b下面から支持されている。この状態から、基板搬送ロボット1は、基板搬送用ハンド10をカセット内の基板100bの下方に進入するよう移動する(同図矢印方向)。
【0061】
図5Aおよび図5Bに示すように、基板搬送用ハンド10をカセット内の基板100bの下方に位置するよう移動した状態から、基板搬送ロボット1は、基板搬送用ハンド10を上方(Z軸の正方向)へ移動させる。
【0062】
これにより、基板搬送ロボット1は、上段載置面12cと第2載置面14aとに基板100bを載置し、基板100bと基板支持部材101とは当接していない状態となる。
【0063】
そして、基板搬送ロボット1は、基板搬送用ハンド10をカセットから退避させる方向(X軸の負方向)へ移動する。その後、基板搬送ロボット1は、2枚同時に載置した基板100a、100bを所定の場所へ搬送する。
【0064】
なお、下段載置面12aと上段載置面12cとの高さの関係については、以下のように設定する。図5Aに示すように、基板支持部材101は、上下に位置する基板100aおよび基板100bの双方に当接していない状態である。
【0065】
この状態のまま基板支持部材101が各基板100a、100bに当接せずに基板搬送用ハンド10をカセットから退避させるためには、基板支持部材101と各基板100a、100bとの間に空隙が必要となる。
【0066】
かかる空隙の余裕値を、上下それぞれBupおよびBlowとし、基板支持部材101の厚みをDEPとすると、基板100aと基板100bとのクリアランス102は、基板支持部材101の厚み(DEP)に基づいて算出され、式(1)のようになる。
【0067】
クリアランス102=DEP+Bup+Blow …(1)
【0068】
そして、下段載置面12aと上段載置面12cとの高さの差がクリアランス102と基板100aの厚みとの和以上であるように先端側支持部12が形成されている。
【0069】
このことから、基板支持部材101の厚み(DEP)が薄いほど、基板搬送用ハンド10の厚みは薄く形成することができる。なお、上下それぞれの余裕値(Bup、Blow)には、基板100a、100bが鉛直方向へたわむ場合を考慮して、たわみ分を含むこととしてもよい。
【0070】
上述したように、基板搬送ロボット1は、1つの基板搬送用ハンド10によって2枚同時に基板100a、100bを載置し、搬送することができる。また、基板搬送ロボット1は、2枚同時に搬送された基板100a、100bをカセットへ載置する場合には、以下のように動作させる。
【0071】
まず、基板搬送ロボット1は、上段載置面12cと第2載置面14aとに載置された基板100bをカセットへ載置する。その後、基板搬送ロボット1は、第2基端側支持部14を退避させた状態で、下段載置面12aと第1載置面13aとに載置された基板100aをカセットへ載置する。
【0072】
このように、基板搬送ロボット1は、1つの基板搬送用ハンド10によって2枚同時に基板100a、100bを搬送し、また、2枚同時に搬送された基板100a、100bをカセット等に載置することができる。
【0073】
なお、ここでは、基板支持部材101が各基板100a、100bに当接しないまま基板搬送用ハンド10をカセットから退避させることとした。しかし、これに限定されるものではなく、たとえば、カセットの基板支持部材101は、可動式であってもよい。
【0074】
この場合、基板搬送ロボット1は、上段載置面12cと第2載置面14aとに基板100bを載置し、図5Bに示すように、基板支持部材101は、Y軸方向(矢印方向)へ可動し退避する。
【0075】
その後、基板搬送ロボット1は、基板搬送用ハンド10をカセットから退避させる方向(X軸の負方向)へ移動するが、この場合の退避のための移動量は、基板支持部材101をよける必要がないために基板支持部材101が固定の場合と比較して少なくてよい。
【0076】
したがって、基板支持部材101が可動式の場合、基板搬送用ハンド10の移動量が少ないために、基板搬送ロボット1は、短時間で基板を搬送することができる。
【0077】
なお、下段載置面12a、上段載置面12c、第1載置面13aおよび第2載置面14aは、載置される基板100a、100bの中心部に向かって徐々に低くなるように傾斜を設けることとした。しかし、これに限定されるものではなく、たとえば、各載置面に傾斜を設けずに平板状に形成することとしてもよい。
【0078】
上述したように、第1の実施形態では、基板搬送用ハンドは、所定の高さの載置面が形成されている第1の載置部と、第1の載置部に形成される載置面の高さよりも上方に載置面が形成されている第2の載置部とを備える。そして、第1の実施形態に係る基板搬送ロボットは、第2の載置部に備える退避可能な支持部を退避させた状態で、第1の載置部に基板を載置する。さらに、第1の実施形態に係る基板搬送ロボットは、退避可能な支持部の退避を解除させた状態で、第2の載置部に別の基板を載置することとした。
【0079】
このようにすることによって、第1の実施形態に係る基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットでは、製造コストの削減および軽量化を図るとともに複数枚の基板を同時に搬送することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
つぎに、第2の実施形態に係る基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットについて図6A〜図6Cを用いて説明する。図6A〜図6Cは、第2の実施形態に係るハンド本体部111の側面図その1〜その3である。
【0081】
第2の実施形態に係る基板搬送用ハンドは、基板を載置する載置面に吸引孔を設けた点が、第1の実施形態の基板搬送用ハンド10および基板搬送ロボット1とは異なる。なお、基板搬送ロボットの構成については図1と同様であるので、ここでは、基板搬送ロボットの構成の説明については省略することとする。
【0082】
また、基板100aを載置する第1の載置部と基板100bを載置する第2の載置部とを除く基板搬送用ハンドの構成については図2と同様であるので、ここでは、基板搬送用ハンドの構成の説明については省略することとする。
【0083】
図6Aに示すように、ハンド本体部111の先端側(X軸の正方向)の先端側支持部112は、段差が形成されており、下段には下段載置面112aと吸引孔112bとが、上段には上段載置面112cと吸引孔112dとが形成されている。また、下段載置面112aと上段載置面112cとは平板状に形成されている。
【0084】
吸引孔112bおよび吸引孔112dは、それぞれ、一方端部が下段載置面112aおよび上段載置面112cに露出されている。吸引孔112bおよび吸引孔112dは、それぞれ、下段載置面112aに載置される基板100aおよび上段載置面112cに載置される基板100bに平面的に重なるように設けられている。
【0085】
吸引孔112bおよび吸引孔112dは、それぞれ、他方端部が吸引部(図示せず)に接続されており、負圧により基板100aおよび基板100bを下段載置面112aおよび上段載置面112c側に吸引する。
【0086】
つづいて、図6Bに示すように、ハンド本体部111の基端側(X軸の負方向)の第1基端側支持部113は、第1載置面113aと吸引孔113bとが形成されている。また、ハンド本体部111の基端側(X軸の負方向)の第2基端側支持部114は、第2載置面114aと吸引孔114bとが形成されている。
【0087】
第1載置面113aは、先端側支持部112の下段載置面112aに対応する高さの載置面であり、平板状に形成されている。また、第2載置面114aは、先端側支持部112の上段載置面112cに対応する高さの載置面であり、平板状に形成されている。
【0088】
吸引孔113bおよび吸引孔114bは、それぞれ、一方端部が第1載置面113aおよび第2載置面114aに露出されている。吸引孔113bおよび吸引孔114bは、それぞれ、第1載置面113aに載置される基板100aおよび第2載置面114aに載置される基板に平面的に重なるように設けられている。
【0089】
吸引孔113bおよび吸引孔114bは、それぞれ、他方端部が吸引部(図示せず)に接続されており、負圧により基板100aおよび基板100bを第1載置面113aおよび第2載置面114a側に吸引する。
【0090】
上述した構成とする基板搬送用ハンドは、第1の実施形態と同様に、図6Bに示すように、第2基端側支持部114を退避させた状態で、下段載置面112aと第1載置面113aとに基板100aを略水平な状態で載置する。
【0091】
基板搬送用ハンドが基板100aを載置する際、基板100aは負圧により下段載置面112a側と第1載置面113a側とに吸引され、移動が規制された状態で載置される。これにより、基板搬送用ハンドは、載置された基板100aを安定して搬送することができる。
【0092】
さらに、図6Cに示すように、基板搬送用ハンドは、第2基端側支持部114の退避を解除させ、上段載置面112cと第2載置面114aとに基板100bを略水平な状態で載置する。
【0093】
ここでも、基板100bは負圧により上段載置面112c側と第2載置面114a側とに吸引され、移動が規制された状態で載置される。これにより、基板搬送用ハンドは、載置された基板100bを安定して搬送することができる。
【0094】
上述したように、第2の実施形態では、基板を載置する載置面に吸引孔を設け、負圧により載置された基板を載置面側に吸引する。このようにすることによって、第2の実施形態に係る基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットでは、載置された基板を安定して搬送することができる。
【0095】
(第3の実施形態)
つぎに、第3の実施形態に係る基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットについて図7Aおよび図7Bを用いて説明する。図7Aは、第3の実施形態に係るハンド本体部の側面図であり、図7Bは、第3の実施形態に係るハンド本体部の上視図である。
【0096】
第3の実施形態に係る基板搬送用ハンドは、1つの基板搬送用ハンドによって3枚同時に基板を搬送する点で、第1、2の実施形態の基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットとは異なる。
【0097】
なお、基板搬送ロボットの構成については図1と同様であるので、ここでは、基板搬送ロボットの構成の説明については省略することとする。また、基板100aを載置する第1の載置部と基板100bを載置する第2の載置部とを除く基板搬送用ハンドの構成については図2と同様であるので、ここでは、基板搬送用ハンドの構成の説明については省略することとする。
【0098】
図7Aおよび図7Bに示すように、基板搬送用ハンドは、ハンド本体部211と、先端側支持部212と、第1基端側支持部213と、第2基端側支持部214と、第3基端側支持部215と、取付部216と、取付部217とを備える。
【0099】
ハンド本体部211の先端側(X軸の正方向)の先端側支持部212は、高さの異なる3つの載置面が形成されている。なお、以下では、高さが1番高い載置面を上段載置面と記載し、高さが2番目に高い載置面を中段載置面と記載し、高さが1番低い載置面を下段載置面と記載する。
【0100】
一対の第1基端側支持部213は、ハンド本体部211上面の基端側(X軸の負方向)にそれぞれ固定され、ハンド本体部211の基端側(X軸の負方向)で基板を支持する。
【0101】
また、第1基端側支持部213は、先端側支持部212の下段載置面に対応する高さの載置面が形成されている。先端側支持部212の下段載置面と第1基端側支持部213の載置面とに基板100aを略水平な状態で載置する。
【0102】
一対の第2基端側支持部214は、ハンド本体部211上面の基端側(X軸の負方向)の第1基端側支持部213の近傍にそれぞれ設けられ、X軸方向へ直動可能である。また、第2基端側支持部214は、ハンド本体部211の基端側(X軸の負方向)で基板を支持する。
【0103】
第2基端側支持部214は、先端側支持部212の中段載置面に対応する高さの載置面が形成されている。先端側支持部212の中段載置面と第2基端側支持部214の載置面とに基板100bを略水平な状態で載置する。
【0104】
一対の第3基端側支持部215は、ハンド本体部211上面の基端側(X軸の負方向)の第2基端側支持部214の近傍にそれぞれ設けられ、X軸方向へ直動可能である。また、第3基端側支持部215は、ハンド本体部211の基端側(X軸の負方向)で基板を支持する。
【0105】
第3基端側支持部215は、先端側支持部212の上段載置面に対応する高さの載置面が形成されている。先端側支持部212の上段載置面と第3基端側支持部215の載置面とに基板100cを略水平な状態で載置する。
【0106】
一対の取付部216は、エアシリンダによって取付部216に接続される連結部経由でX軸方向へ直動可能である。これにより、取付部216に連結される第2基端側支持部214は、X軸方向へ直動する。
【0107】
一対の取付部217は、エアシリンダによって取付部217に接続される連結部経由でX軸方向へ直動可能である。これにより、取付部217に連結される第3基端側支持部215は、X軸方向へ直動する。なお、取付部216に連結される第2基端側支持部214と取付部217に連結される第3基端側支持部215とは、独立で直動することとする。
【0108】
上述した構成とする基板搬送用ハンドは、まず、第2基端側支持部214および第3基端側支持部215を退避させた状態で、先端側支持部212の下段載置面と第1基端側支持部213の載置面とに基板100aを略水平な状態で載置する。
【0109】
つづいて、基板搬送用ハンドは、第1の実施形態と同様に、第2基端側支持部214の退避を解除させ、先端側支持部212の中段載置面と第2基端側支持部214の載置面とに基板100bを略水平な状態で載置する。
【0110】
具体的には、基板搬送用ハンドは、第2基端側支持部214を第1基端側支持部213よりもX軸の正方向側に位置するよう移動させて基板100bを載置する。
【0111】
さらに、基板搬送用ハンドは、第1の実施形態と同様に、第3基端側支持部215の退避を解除させ、先端側支持部212の上段載置面と第3基端側支持部215の載置面とに基板100cを略水平な状態で載置する。
【0112】
具体的には、基板搬送用ハンドは、第3基端側支持部215を第2基端側支持部214よりもX軸の正方向側に位置するよう移動させて基板100cを載置する。
【0113】
上述したように、第3の実施形態では、基板搬送用ハンドは、高さの異なる載置面が形成されている載置部を3つ備える。そして、第3の実施形態に係る基板搬送ロボットは、上方の載置部に備える退避可能な支持部を退避させた状態で、下方の載置部に基板を載置する。さらに、第3の実施形態に係る基板搬送ロボットは、基板が載置された直上に位置する退避可能な支持部の退避を解除させた状態で、基板が載置された直上に位置する載置部に別の基板を載置することとした。そして、第3の実施形態に係る基板搬送ロボットは、上記の処理を繰り返すことにより、さらに上方の載置部に基板を載置する。
【0114】
このようにすることによって、第3の実施形態に係る基板搬送用ハンドおよび基板搬送ロボットでは、製造コストを削減するとともに複数枚の基板を同時に搬送することができる。
【0115】
なお、ここでは、先端側支持部は、高さの異なる複数の載置面が形成されることとしたが、これに限定されるものではなく、たとえば、先端側支持部は、別体であってもよく、複数の支持部によって構成されていてもよい。そして、各支持部の載置面は、互いに高さが異なるよう形成されており、それぞれハンド本体部の先端に固定されていてもよい。
【0116】
また、基板搬送用ハンドに備える押圧部によって載置される基板の周縁部を押圧することとしたが、これに限定されるものではなく、たとえば、基板搬送用ハンドに押圧部がない構成としてもよい。
【0117】
これにより、基板搬送用ハンドは、基板底面を先端側支持部に備える各載置面上を移動させないため、基板に擦り傷が付くのを抑制することができるとともに部品点数を減少させることができる。
【0118】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 基板搬送ロボット
2 基台
3 支柱
4、6、8 関節部
5、7 アーム
10 基板搬送用ハンド
11 ハンド本体部
12 先端側支持部
12a 下段載置面
12b 壁面
12c 上段載置面
12d 壁面
13 第1基端側支持部
13a 第1載置面
13b 壁面
14 第2基端側支持部
14a 第2載置面
14b 壁面
15 取付部
16 連結部
17 エアシリンダ
18a 押圧部
18b 押圧部
19 エアシリンダ
100a 基板
100b 基板
100c 基板
101 基板支持部材
102 クリアランス
200 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さの載置面にて基板を支える複数の支持部を含む第1の載置部と、
前記第1の載置部の載置面の高さよりも上方の載置面にて基板を支える複数の支持部を含み、該支持部のうち1または複数は退避可能である第2の載置部と
を備え、
前記第2の載置部の前記退避可能な支持部を退避させた状態で、前記第1の載置部に第1の基板を載置し、さらに、前記退避可能な支持部の退避を解除させた状態で、前記第2の載置部に第2の基板を載置することを特徴とする基板搬送用ハンド。
【請求項2】
前記第1の載置部の載置面の高さと前記第2の載置部の載置面の高さとの差は、前記基板を収納する基板収納部が備える基板支持部材の厚みと、前記第1の載置部に載置される前記基板の厚みと、所定のマージンとの和であることを特徴とする請求項1に記載の基板搬送用ハンド。
【請求項3】
前記第1の載置部に載置された前記基板の周縁部および前記第2の載置部に載置された前記基板の周縁部を先端側へそれぞれ押圧する押圧部
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の基板搬送用ハンド。
【請求項4】
前記第1の載置部および前記第2の載置部の一方または双方は、
前記基板を吸引する吸引孔をさらに備え、前記吸引孔によって前記基板を吸引することを特徴とする請求項1または2に記載の基板搬送用ハンド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の基板搬送用ハンド
を備えることを特徴とする基板搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2013−69914(P2013−69914A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208044(P2011−208044)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】