説明

基板検査用の検査領域の設定データ作成方法および検査データ作成システム

【課題】複数の電極ピンを有する部品を対象にした検査領域の設定データの作成処理を高速化する。
【解決手段】処理対象の部品201を含む領域内の基準画像を表示して、部品本体に対応する領域30を指定する操作を受け付ける。ユーザはこの指定操作を行った後に、部品本体の一辺に配置された電極ピンのうちの一番端およびその隣の2つに対応する領域、ならびにこれらの電極ピンが接続されているランドに対応する領域を、指定枠33,34により指定する。これらの指定に応じて、指定された領域間の関係に基づき、部品201における電極ピンや配置に関する規則が特定され、さらに、特定された規則や領域30に基づいて、各電極ピンに対する検査のための検査領域が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装基板上の部品の実装状態を画像処理の手法により検査することを前提として、この検査に必要な検査領域の設定データを作成する方法、およびこの方法が適用された検査データ作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装基板の外観検査装置では、一般に、検査対象の基板を撮像して2次元画像を生成し、画像中の部品にその部品種に応じた検査領域を設定し、検査領域内の画像を処理することにより、はんだ付け状態の適否や部品の位置ずれの有無などを判別する(特許文献1を参照。)。また、2次元画像に高さ情報を加えて3次元画像とし、これを用いて電極や部品の高さを判別するものもある(特許文献2を参照)。
【0003】
この種の検査装置における検査データには、一般に、検査領域の設定データ(検査領域の数および各検査領域の設定位置および大きさを示すもの)や、各検査領域で被検査部位を抽出するための2値化しきい値、各検査領域における測定処理のロジック、判定基準値などが含まれる。具体的な検査の内容は、部品の外観に応じて異なるため、従来の基板外観検査装置では、ティーチング作業の負荷を軽減するために、あらかじめ部品の種毎に「ライブラリデータ」と呼ばれる標準の検査データを用意し、検査対象の部品に対し、それぞれその部品種に応じたライブラリデータを適用するようにしている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、教示対象の部品の具体的な画像と、この部品に対応する部品種について入力すべき項目とを表示し、各項目につき、所定数の外観情報の選択肢の中から表示中の部品に該当するものをユーザに選択させ、選択された外観情報に適合するライブラリデータを読み出して、これに基づき教示対象の部品に対する検査領域を特定することが記載されている。
【0005】
また特許文献2にも、電極ピン(リード)の3次元形状や輝度値に基づき、基板の3次元画像からリード領域を抽出し、総リード数、リード間距離などから検査部品の部品種類を決定することや、決定した部品種類を基にあらかじめ記憶した部品ライブラリを選択することなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−32525号公報
【特許文献2】特開2006−250609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
QFP,SOPなどのIC部品では、電極ピンの数やピッチが部品によって異なり、電極ピンの長さにもばらつきがある。このため、出願人が提供する従来の外観検査装置では、IC部品用の検査領域については、大まかな設定ルールのみを定め、検査対象の基板の基準画像から各電極ピンやこれらが接続されるランドを自動抽出して、抽出された電極ピンやランドに上記の設定ルールを適用することにより、検査領域を特定するようにしている。
【0008】
しかし、多数の電極ピンやランドを正しく抽出するには抽出用のプログラムが複雑になり、電極ピンやランドをすべて抽出し終えるまでにかなりの時間がかかる。また、画像中の抽出対象部位の色彩や明るさのばらつきが大きい場合に、均一な基準で抽出するのが困難である点や、部品の周囲の抽出対象部位によく似た色彩の部位が誤抽出される点も問題となっている。
【0009】
本発明は上記の問題点に着目し、多数の電極ピンを具備する部品を対象に検査領域の設定データを作成する場合に、ユーザの簡単な指定操作に応じて検査領域を特定することにより、検査領域の設定データの作成を高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による検査領域の設定方法は、部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の各部品の実装状態の検査に用いられる検査領域の設定データを作成するもので、以下の第1〜第6のステップを実行することを特徴とする。
【0011】
第1ステップでは、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する。第2ステップでは、基準画像の表示画面において、対象部品の部品本体に対応する領域を指定する第1指定操作を受け付ける。第3ステップでは、第1指定操作により指定された部品対応領域の一辺に沿って並ぶ少なくとも2つの領域を、それぞれ対象部品の一電極ピンに対応する領域として指定する第2指定操作を受け付ける。
【0012】
第4ステップでは、第1指定操作および第2指定操作が行われたことに応じて、指定された各領域の間の関係に基づき、対象部品における電極ピンの配置に関する規則を特定する。第5ステップでは、第1指定操作により指定された部品対応領域の各辺のうち少なくとも前記第2指定操作の対象となった辺に第4ステップで特定された規則を適用して、部品対応領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する。第6ステップでは、第5ステップの実行に応じて、モニタに表示されている基準画像を検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて検査領域の設定に用いられた設定データを確定する。
【0013】
上記の方法によれば、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品に対する検査領域の設定データを作成する場合には、モニタに表示された基準画像の画面上でユーザが第1指定操作および第2指定操作を行ったことに応じて、部品対応領域の少なくとも一辺に沿って複数の検査領域が自動的に設定され、基準画像の表示がその設定状態を表すものに切り替えられる。ユーザが、この表示により検査領域の設定が適切であると判断して確定操作を行うと、表示中の検査領域の設定データが確定される。
【0014】
SOPやQFPの部品本体の電極ピンが配置される辺では、通常、両端部に等しいマージンをおいて、大きさおよび形状が等しい電極ピンが等間隔で配列される。したがって、このような部品に対し、ユーザが、設定対象の部品の部品本体に対応する領域を正しく指定すると共に、この部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンを、端に位置する電極ピンから順に2つ以上選択して、これらに対応する領域を正しく指定すれば、電極ピンの配置に関する規則を正しく特定し、検査領域を精度良く設定することが可能になる。
【0015】
上記の方法によれば、ユーザが第2指定操作により指定した領域を電極ピンとしてみなすので、画像処理により電極ピンを抽出する必要がなくなり、処理時間を短縮することができる。また、電極ピンに対応する領域を2つ指定すれば、電極ピンの配置に関する規則を特定することができるので、ユーザに過度の負担がかかることもない。
【0016】
上記の方法の好ましい態様では、第3ステップにおいて、一電極ピンに対応する領域とともに当該電極ピンが接続されるランドに対応する領域を指定する操作を受け付ける。また第4ステップでは、電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、部品対応領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離と、対応関係にある電極ピンとランドとの位置関係とを、それぞれ特定する。
【0017】
上記の態様によれば、電極ピンに対応する領域とともに、この電極ピンが接続されるランドに対応する領域が指定されるので、ランドに関しても基準画像からの抽出を不要にすることができる。また第4ステップにおいて、部品本体領域の一辺における電極ピンの数や位置を割り出すのに必要な情報とともに、電極ピンとランドとの位置関係が特定されるので、個々の電極ピンとランドとの接続状態を検査するための検査領域を精度良く設定することが可能になる。
【0018】
上記の方法の他の好ましい態様では、矩形状の部品本体の対向する2辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、これらの辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品(SOP)を設定の対象とする。この場合の第5ステップでは、第2指定操作の対象となった辺を対象に第4ステップで特定された規則を適用して、部品対応領域の外側で前記対象の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを部品対応領域の外側で前記対象の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する。
【0019】
他の好ましい態様では、矩形状の部品本体の各辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、対向する関係にある2辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品(QFP)を設定の対象とする。この場合の第5ステップでは、第2指定操作の対象となった辺およびこの辺に直交する2つの辺のうちの一方を対象にして、それぞれの辺に第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側で対象の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを第1の領域の外側で対象の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する。
【0020】
上記の各態様によれば、対向する2辺間の対称性を利用して、一方の辺に対して設定した検査領域を他方の辺に適用して、各検査領域の設定データを効率良く作成することが可能になる。
【0021】
つぎに、本発明が適用される検査データの作成システムは、部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の部品の実装状態の検査に必要な情報を作成するものである。このシステムは、複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する基準画像表示手段;基準画像の表示画面において、対象部品の部品本体に対応する領域を指定する第1指定操作を受け付ける第1指定操作受付手段;第1指定操作により指定された部品対応領域の一辺に沿って並ぶ少なくとも2つの領域を、それぞれ対象部品の一電極ピンに対応する領域として指定する第2指定操作を受け付ける第2指定操作受付手段;第1指定操作受付手段および第2指定操作受付手段がそれぞれの指定操作を受け付けたことに応じて、指定された各領域の間の関係に基づき、対象部品における電極ピンの配置に関する規則を特定する配置規則特定手段;第1指定操作により指定された部品対応領域の各辺のうち少なくとも第2指定操作の対象となった辺に配置規則特定手段により特定された規則を適用して、部品対応領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する領域設定手段;領域設定手段により検査領域が設定されたことに応じて、モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する領域確定手段、の各手段を具備することを特徴とする。
【0022】
上記のシステムによれば、先に述べた検査領域の設定方法を実行して検査領域の設定データを効率良く作成することができる。なお、このシステムは、検査を行う装置に導入することができるが、パーソナルコンピュータなどの外部のコンピュータに導入することもできる。後者の場合には、作成された検査データは、たとえば通信により検査装置に移植することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、SOP,QFPなど、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品について、各電極ピンおよびこれらに対応するランドの状態に適した検査領域を容易に特定して、検査領域の設定データの作成にかかる効率を向上し、処理を高速化することが可能になる。また、表示されている部品の形状に合わせて第1指定操作を行い、当該部品の一辺に配置された電極ピンの一部を対象に、各電極ピンに対応する領域を指定することにより検査領域を正しく設定することができるので、設定作業に慣れていないユーザでも、適切な検査領域を容易に設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】基板外観検査装置の構成を検査データ作成用のコンピュータとの関係とともに示す図である。
【図2】検査データ作成システムによるバリエーションの作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】チップ部品に対する検査領域の設定方法を示す図である。
【図4】SOPを対象にした検査領域の設定画面を示す図である。
【図5】図4の画面において部品対応領域を指定した後の画面表示の変化を示す図である。
【図6】2種類の指定枠により電極領域およびランド領域を指定する操作の例を示す図である。
【図7】電極領域およびランド領域の指定が完了したときの表示から検査領域の設定状態を示す表示への変化を示す図である。
【図8】検査領域の設定のために導出されるパラメータを示す図である。
【図9】SOPおよびQFPを対象にした検査領域の設定処理についての詳細を示すフローチャートである。
【図10】想定ピッチテーブルのデータ構成例を示す図である。
【図11】ランドの幅が一定でない例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、部品実装基板の自動外観検査を行う検査装置1の主要構成を、この検査装置1に接続されるパーソナルコンピュータ7ととともに示す。
【0026】
この実施例の検査装置1は、はんだの印刷工程、部品の実装工程、およびリフロー工程により製作された完成体の基板200を対象にした検査を実行するためのもので、カラー撮影用のカメラ2、照明部3、基板ステージ4、および制御処理部5などにより構成される。
【0027】
基板ステージ4には、基板200を支持するためのテーブル部41や、このテーブル部41をX,Yの各軸方向に移動させるための移動機構42などが設けられる。カメラ2は、基板ステージ4の上方に、撮像面を下方に向け、かつ光軸を鉛直方向に合わせた状態で配備される。
【0028】
照明部3には、赤、緑、青の各色彩光をそれぞれ発する円環状光源3R,3G,3Bが含まれており、基板ステージ4とカメラ2との間に配置される。各光源3R,3G,3Bは、それぞれ径が異なり、また各中心部をカメラ2の光軸に合わせた状態で配備される。これにより、基板200に対し、赤、緑、青の各光が、それぞれ仰角が異なる方向から照射されるので、はんだフィレットや後記する電極ピンなどの鏡面反射性の高い部位の傾斜状態を各照明光の色彩により表現した画像を生成することができる。図3〜6等の画像の模式図では、画像中の色彩を網点などのパターンに置き換えて示す。
【0029】
制御処理部5には、コンピュータによる制御部50のほか、画像入力部51、撮像制御部52、照明制御部53、XYステージ制御部54、メモリ55、表示部56、入力部57、通信インターフェース58などが設けられる。
【0030】
画像入力部51には、カメラ2からの画像をディジタル変換するためのA/D変換回路などが含まれる。撮像制御部52は、カメラ2に対し、撮像を指示するタイミング信号を出力し、照明制御部53は、各光源3R,3G,3Bの点消灯動作や光量を制御する。XYステージ制御部54は、基板ステージ4の移動のタイミングやX,Yの各軸方向における移動量を制御する。
【0031】
メモリ55には、検査を実行するための一連の処理手順が記述されたプログラムや検査データ格納用のデータベース(以下、「検査用データベース」という。)が格納される。検査用データベースには、検査対象の基板200に実装される部品毎に、設定すべき検査領域の設定に関するデータ(検査領域の位置および大きさを示すもの)、各検査領域で被検査部位の色彩を検出するための2値化しきい値、被検査部位の測定値(主として面積)の適否を判定するための判定ロジックならびに判定基準値など、複数種の検査データが設定される。
【0032】
本明細書では、上記の検査データのうち、検査領域の位置および大きさを示すデータを「検査領域の設定データ」と呼び、それ以外の検査データを「検査用パラメータ」と総称する。
【0033】
つぎに、この実施例の基板200は複数の領域に分けて撮像される。検査用データベースには、基板200に対するカメラ2の視野の割り付けに関するデータも格納されており、制御部50は、このデータに基づきXYステージ制御部54を介して基板ステージ4の移動を制御することにより、カメラ2を各撮像対象領域に順に位置合わせして撮像を行う。毎時の撮像により生成されたカラー画像は画像入力部51を介して制御部50に入力され、その内部のメモリ(RAMなど)に格納される。制御部50は、この内部メモリに格納された画像中の部品に順に着目し、着目部品に対し、その検査データに基づき、検査領域の設定、2値化、計測、良否判定の各処理を順に実行する。
【0034】
制御部50は、通信インターフェース58および通信回線6を介して、図中のパーソナルコンピュータ7や図示しない上位機器に接続されている。制御部50は、1枚の基板200の検査が終了する都度、その基板200に対する検査の結果や検査に用いられた画像などを、上位機器に出力する。また、検査結果や画像は、表示部56にも表示される。
【0035】
パーソナルコンピュータ7には、上記の検査装置で使用される検査データを作成するためのシステム(以下、「検査データ作成システム」または単に「システム」という。)が組み込まれている。この検査データ作成システムには、複数の部品種にそれぞれサブ部品種を対応づけた階層構造データが登録されている。部品種は、想定され得る各種部品の外観を、主として部品本体の形状の違いにより分類することで設定されたものである。この部品種を、部品の色彩や電極の形状などの違いに基づき細分類したものがサブ部品種である。
【0036】
各部品種には、当該部品種に適した検査領域の基本の設定ルールが登録されている。また各サブ部品種には、上位の部品種の検査領域の設定ルールへのリンク情報と、サブ部品種の外観の特徴に応じた検査用パラメータとを含む基本ライブラリデータとが登録されている。
【0037】
この実施例では、検査装置において、基板200の部品実装前および部品実装後の良品モデルをそれぞれ複数の領域に分割して領域毎に撮像し、生成された画像をつなぎ合わせることにより、基板200の全体構成を表す基準画像を生成する。以下では、部品実装前の基板を示す基準画像を「実装前基準画像」といい、部品実装後の基板を示す基準画像を「実装後基準画像」という。
【0038】
検査データ作成システムでは、各基準画像や基板200のCADデータを入力し、これらの入力情報と上記の基本ライブラリデータとを用いて、CADデータが表す部品の型式毎に、その型式に適したサブ部品種を特定し、特定されたサブ部品種にリンクする検査用パラメータを使用して、当該型式に対応するバリエーションのライブラリデータ(以下、単に「バリエーション」という。)を作成し、これを登録する。なお、既にバリエーションが登録されている型式については、この処理は不要である。
【0039】
上記の登録処理が終了すると、システムでは、CADデータが示す各部品にそれぞれその型式に応じたバリエーションを適用して、各部品の検査データを作成する。完成した検査データは、検査装置1に送信され、メモリ55内の検査用データベースに格納される。
【0040】
図2は、上記のバリエーションの作成に関して検査データ作成システムが実行する処理の概略手順を示す。
このフローチャートを参照して説明すると、まず、検査データ作成システムは、基板200のCADデータからバリエーションが登録されていない部品を検索し、この検索で抽出された部品の部品型式を示すリスト(以下、「未登録リスト」という。)を図1に示すモニタ17に表示する(ST1)。ユーザが未登録リスト中の一部品型式を選択すると(ST2が「YES」)、検査データ作成システムは、選択された型式の部品の実装位置をCADデータから割り出し、この部品を含む範囲内の実装後基準画像をモニタ17に表示する(ST3)。
【0041】
このときの表示画面には、各種部品種やサブ部品種のサンプル画像のリストも表示される。ユーザは、選択中の型式の部品の形状や色彩をこのリストと照合して、当該部品に適合する部品種およびサブ部品種を選択する。
さらにユーザは、表示中の画像上で設定対象の部品の部品本体に対応する領域を指定する。ここで指定される領域を、以下では「部品本体領域」という。
【0042】
検査データ作成システムでは、上記の各操作を受け付けると(ST4,5)、選択された部品種およびサブ部品種に適合する検査領域の設定ルールを読み出し、このルールを部品本体領域が設定された範囲に適用して検査領域を設定する(ST6)。さらに、表示中の実装後基準画像を、検査領域の設定状態を示すものに更新する(ST7)。
【0043】
この表示に対し、ユーザが確定操作を行うと(ST8)、検査データシステムでは、表示中の検査領域の設定データに、設定対象の部品につき選択されているサブ部品種の検査用パラメータを組み合わせ、この組み合わせを新規のバリエーションとして登録する(ST10)。
なお、この新規バリエーションには、バリエーション名として設定対象の部品の品番名称が付与される。また、検査領域の設定状態の表示に対し、ユーザがその表示を不適当であると判断してキャンセル操作を行った場合には、ユーザの手操作に応じて検査領域を修正する(ST9)。
【0044】
以下、未登録の部品型式がなくなるまでこれらが順に選択されて、上記と同様の処理が実行される。これにより、全ての型式に適合するバリエーションが作成されて登録されると、ST11が「NO」となり、バリエーションの作成処理を終了する。
【0045】
以下、ST6の検査領域の設定処理について詳細に説明する。
この実施例では、電極の数が比較的少なく、かつ電極数が固定されているチップ部品に対しては、図3(A)に示すように、処理対象の部品202の部品種に設定されている基本のルールに基づき、ユーザにより指定された部品本体領域30を基準にして各種検査領域S101〜S104を設定する。ただし、基板側のランドの位置や大きさには、ばらつきがあるので、図3の(B)(C)に示すように、実装前基準画像の対応範囲からランドを抽出し、この抽出結果に応じて、はんだ付け状態の検査用の検査領域S101,S102を修正するようにしている。
なお、図中の検査領域S103は、部品の有無を判別する検査に用いられる。また、検査領域S104は、実際の処理対象画像から検査対象の部品やランドを抽出して、各検査領域S101〜S103の位置を微調整する目的に使用される。
【0046】
上記に対し、SOP,QFPなど、多数の電極ピンが配置され、部品型式によって電極ピンの数が異なる部品を設定対象とする場合には、まず電極ピンの数やピッチを特定する必要がある。この特定をするには、実装前基準画像からランドを抽出したり、実装後基準画像から電極ピンを抽出する方法が考えられるが、微小で数が特定されていない部位を正確に抽出するには複雑な処理を行う必要があり、処理時間が長びく可能性がある。またランドに関してメッキ処理がされている場合に、表面の凹凸むらなどによって画像中の色彩や明るさにばらつきが生じて抽出に失敗したり、部品の周囲にある電極ピンやランドによく似た色の部位が誤抽出されるなど、抽出の精度を確保できない可能性もある。
【0047】
そこで、この実施例では、SOPやQFPでは電極ピンが規則性をもって配置されていることや、線対称の形状を有している点に着目し、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンのうち一番端およびその隣に位置する2つの電極ピン、ならびにこれらが接続されるランドをユーザに指定させて、指定された各部位の関係から電極ピンおよびランドの規則性を特定し、この結果に基づき、全ての電極ピンおよびランドに対する検査領域を設定するようにしている。
【0048】
図4および図5は、上記の方法で検査領域を設定する際に用いられる作業用画面を提示される順に示す。この画面の左側には、基板200の実装後基準画像を表示するための画像表示領域100が設けられ、右側には、選択対象の部品に関する情報を表示する欄101や、ユーザの設定操作を支援するためのガイダンス領域102などが設けられる。
【0049】
図4に示す画面は、処理対象の部品(現在選択されている型式の部品)の部品種およびサブ部品種が選択されたことに応じて表示されたもので、画像表示領域100には、処理対象の部品201(この例ではSOP)を中心にした実装後基準画像が、デフォルトの設定による部品本体領域30とともに表示されている。また、画面の右上およびガイダンス領域102の中央部には、選択されたサブ部品種のサンプル画像103が表示される。
【0050】
部品本体領域30は、各検査領域を設定するための基準として用いられるもので、範囲を表す矩形枠の一辺に三角形状のマーク31が設定されている。このマーク31は部品201の向きを示すもので、たとえば、マーク31が右向きであれば部品201の向きは0度であり、マーク31が上向きであれば、部品201の向きは90度である。この部品201の向きは、CADデータに基づき設定される。
【0051】
ガイダンス領域102には、サンプル画像103や、ユーザの操作を支援するためのメッセージ104が表示されるほか、複数のボタン110〜116が設けられる。これらのボタンのうち、矢印が付されたボタン111は、部品本体領域30の向きが検査データの定義と異なる場合に、この向きを変更するためのものである。ボタン112,113,114は指定の対象を切り替えるためのもので、ボタン115は指定をリセットするのに用いられる。
【0052】
また「抽出」の文字が付されたボタン110は、指定の内容を確定して検査領域を自動設定することを指示するためのものである。以下、このボタン110を「抽出ボタン110」という。
【0053】
さらに、ガイダンス領域102の下方には、画面を一段階前のものに戻すための「戻る」ボタン107などが設けられる。また、画像表示領域100の下方には、この領域100内の表示倍率を切り替えるための設定領域108や、表示中の画像を切り替えるための切り替え用のボタン109などが設けられる。ボタン109は、画像表示領域100内の設定対象の部品の状態が良くない場合などに操作されるもので、この操作が行われると、画像表示領域100内の表示は、選択中の部品型式で、現在表示されているものとは別の場所にある部品を中心にするものに更新される。
【0054】
図4の例の画像表示領域100に表示されている部品本体領域30は、選択中の部品種の基本の設定ルールに基づいて設定されたものであるが、実際の部品には適合していない。この実施例では、ユーザに、マウスを用いて、部品本体領域30の各辺を実際の部品本体に合わせるように調整することを要求する。ユーザがこの要求に応じた操作を行って、「1ピン」ボタン112を操作することにより、図2のST5の受付処理が実行される。
【0055】
部品本体領域30の指定が受け付けられると、画面は図5に示すものに切り替えられる。この画面の画像表示領域100では、調整後の部品本体領域30の下辺の左端位置に矩形枠33が表示される。この矩形枠33は処理対象の部品201の一電極ピンに対応する領域を指定するためのものである。以下、矩形枠33を「指定枠33」といい、指定枠33により指定された領域を「電極領域」という。
【0056】
ユーザは、ガイダンス領域102のコメント104に従って、電極ピンに対応する領域およびランドに対応する領域を順に指定する。図6は、この指定操作に応じた画像表示領域100内の表示の変化を、処理対象部品201の一部(領域の指定が行われる部分)に限定して示す。
【0057】
図5および図6を参照して具体的な作業の流れを説明する。
この実施例では、マーク31により特定される部品の向きと選択中の部品種とに基づき、部品対応領域30の各辺の中から電極ピンの配列に対応する辺(図6の例では下辺)を特定し、この辺の端部(図6の例では左端)に指定枠33を表示するようにしている。
【0058】
ユーザは、部品対応領域30の調整を終了した後に、ガイダンス領域内102の「1ピン」ボタン112を操作することにより、図5に示した位置に指定枠33を呼び出し、この指定枠33を、電極ピンの配列中の左端の電極ピンに合うように調整する(図6(1))。つぎに、ユーザが「1ランド」ボタン113を操作すると、上記の指定枠33よりやや外側に、この指定枠33とは異なる色彩により、ランド指定用の指定枠34が表示される(図6(2))。ユーザは、この指定枠34の先端が左端のランドの先端に合うように調整する(図6(3))。この指定枠34より指定された領域を、以下では「ランド領域」という。
【0059】
つぎにユーザがガイダンス領域102の「2ピン・ランド」のボタン114を操作すると、各指定枠33,34が複写されて、現在の表示位置の右手に表示される(図6(4))。ユーザは、この複写された指定枠33,34を、マウスのドラッグ・ドロップ操作や矢印キー116の操作により、左から2番目の電極ピンおよびランドに位置合わせする(図6(5))。
【0060】
上記のように、部品本体領域30の一辺に沿って並ぶ電極ピンの中の一番端およびその隣の電極ピンおよびこれらが接続されるランドを選択し、それぞれに指定枠33,34を合わせることにより、電極領域およびランド領域が2組指定された状態になる。
【0061】
上記の指定が終了すると、ユーザはガイダンス領域102の抽出ボタン110を操作する。これにより、部品本体領域30および電極領域ならびにランド領域の指定が確定され、これらの領域に基づき、部品の検査に必要な全ての検査領域が設定される。
【0062】
図7は、指定枠33,34による指定が完了して抽出ボタン110が操作されたときに画像表示領域100における表示の変化を、処理対象の部品201に表示を限定して示す。図中、(A)は抽出ボタン110が操作される直前の表示状態であり、(B)は抽出ボタン110の操作により更新された表示状態である。
【0063】
図7に示すように、この実施例では、抽出ボタン110の操作に応じて設定された検査領域を示す矩形枠を、部品201の画像に重ね表示する。
ここで図7(B)を参照して、設定される検査領域を簡単に説明すると、この実施例では、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンを3〜4個のグループに分けて、グループ毎に、そのグループ内の電極ピンおよびこれらに対応するランドが含まれる範囲に検査領域S1〜S4を設定する。また、個々の電極ピンにもそれぞれ個別に検査領域が設定されるが、図6(3)の表示例では、グループ毎に、そのグループ内の電極ピンの1つを代表として、代表の電極ピンに設定した検査領域S11,S21,S31,S41のみを表示する。
【0064】
また、図7(B)の例では表示されていないが、S11,S21,S31,S41などの電極ピン単位の検査領域の間には、それぞれブリッジを検出するための検査領域が設定され、各電極ピンの先端からランドの先端までの範囲には、両者の間のフィレットの状態を検査するための検査領域が設定される。
【0065】
電極ピン単位の検査領域は、電極ピンの有無や位置ずれ、形状の適否などを判別する検査に用いられる。
また、グループ単位の検査領域S1〜S4は、撮像対象領域を割り付ける際の基準の単位として用いられる。すなわち、同じグループに含まれる範囲のすべてが同一の画像に含まれるように毎時の撮像対象領域が設定される。これにより電極ピンやランドの単位で実施される検査の精度を確保することができる。
【0066】
なお、この実施例では、抽出ボタン110を操作するまでの間であれば、部品本体領域30や各指定枠33,34の位置や大きさを修正することができる。
【0067】
また、2組目の指定枠33,34が呼び出されて、その位置が確定した後に、再度、ボタン114を操作することにより、指定枠33,34をもう1組複写し、これらを左から3番目の電極ピンおよびランドに位置合わせすることもできる。以下、同様の指定を続けることにより、部品対応領域30の一辺に沿って、3組以上の電極領域およびランド領域を指定してから抽出ボタン110を操作することができる。
【0068】
抽出ボタン110が操作された後の全体画面に関しては図示していないが、ガイダンス領域102には、抽出ボタン110に代えて、検査領域の設定を確定するための確定ボタンが設けられる。ユーザが表示された検査領域を適切であると判断して確定ボタンを操作することにより、表示中の検査領域にかかる設定データが確定されて、先の図2のST10の処理が実行される。一方、リセットボタン115が操作された場合には、検査領域の設定データは破棄され、ガイダンス領域102は図5に示した状態のものに戻される。
【0069】
図8は、上記の検査領域を設定するために導出される主要なパラメータを示す。図中、Pは電極ピンの幅であり、Pは電極ピンの長さであり、Pは電極ピン間のピッチである。また、Lはランドの幅であり、Lは部品の端縁からランドの端縁までの距離である。Sは、部品の一角部からその直近の電極ピンまでの距離(以下、この距離を「マージン」と呼ぶ。)である。
【0070】
図9は、抽出ボタン110の操作に応じて検査データ作成システムが実行する処理の手順を示す。以下、このフローチャートに沿って、SOPやQFPを対象に検査領域の設定データを作成する場合の処理を説明する。
【0071】
この処理では、まず、抽出ボタン110が操作されたときの指定枠33,34による指定の状態をチェックする。ここで2組以上の指定枠33,34による指定が行われている場合には、ST102以下の処理に進むが、この指定が行われていない場合には、ガイダンス領域102に再度の指定を求めるメッセージを表示するなどのエラー処理を実行する。
【0072】
2組以上の指定枠33,34による指定が行われている場合(ST101が「YES」)には、まず、各指定枠33により指定された領域を電極領域と認定して、これらの幅および長さを計測し、それぞれの平均値を求める。そして、幅の計測値の平均値を電極ピンの幅Pとし、長さの計測値の平均値を電極ピンの長さPとする(ST103)。
【0073】
つぎに、ステップST103では、電極領域間の距離を計測し、その計測値に基づき電極ピン間のピッチPを特定する。この処理では正確を期すために、図10に示す想定ピッチテーブルを参照して計測値に最も適合する想定ピッチを特定し、特定された想定ピッチをピクセルの単位に置き換えたものをPとする。この想定ピッチテーブルには、開発者が経験的に構築した情報に基づくピッチの具体的な値(ただし、図10ではa〜gの文字により示す。)が格納されている。
なお、電極領域が3個以上指定されている場合には、ST103では、隣り合う電極領域の組み合わせ毎にピッチを計測し、各計測値により想定ピッチテーブルを参照して、Pの値を導出する。
【0074】
つぎに、部品本体の角部のマージンSを求める処理を実行する(ST104)。ここでは、認識した電極領域の中で部品本体領域30の角部に最も近いものに着目し、当該角部と着目した電極領域との間の距離を計測し、その計測値をマージンSとする。
【0075】
つぎに、ST105では、各指定枠34により指定された領域をランド領域と認定して、これらの幅および長さを計測し、各幅の計測値の平均値をランドの幅Lとし、各長さの計測値の平均値をランドの長さLとする。
【0076】
このようにして各種パラメータが導出されると、ST106では、部品本体領域30の指定枠33,34が設けられた辺を基準の辺として、この基準の辺の両端にそれぞれマージンSを設定する。そして、両端のマージンSを除いた範囲の長さとピッチPとを用いて、基準の辺における電極ピンの数および各電極ピンの位置を特定する。
【0077】
つぎに、ST107では、上記の処理により特定された各電極ピンに検査領域を割り付ける。具体的には、電極ピンやランドの幅および長さを示すパラメータP,P,L,Lに基づき、電極ピン単位の検査領域(図7(B)のS11,S21,S31,S41)の幅や長さを特定し、これらを各電極ピンにつき特定した位置に設定する。さらに、これらの検査領域を3個または4個の単位でグループ分けして、グループ単位の検査領域(図7(B)のS1,S2,S3,S4)を設定する。さらに、ブリッジ検査用の検査領域や、ランドに対する検査領域などを設定する。
なお、電極ピン単位の検査領域を特定する場合には、電極ピンとランドとの幅方向が中心位置で位置合わせされているものとして、検査領域の幅を設定する。
【0078】
上記の処理により、基準の辺に対応する検査領域が設定されると、これらの検査領域を180度回転させたものを基準の辺に対向する辺に設定する(ST108)。なお、検査領域の回転処理として、この実施例では、画像中の検査領域の配列を時計回りまたは反時計回りに回転させるが、これに限らず、検査領域の配列を、その配列方向を軸として軸回転させる処理(各検査領域を裏返した状態にする変換処理)を行ってもよい。
処理対象の部品がSOPである場合には、つぎのST109が「NO」となり、これをもって検査領域の設定処理が終了する。
【0079】
一方、処理対象の部品がQFPである場合(ST109が「YES」)には、部品本体領域30の基準の辺に直交する二辺のうちの一方を基準の辺に変更して(ST110)、この基準の辺における電極ピンの数および位置を特定し(ST111)、その特定結果に基づき検査領域の割り付け処理を実行する(ST112)。さらに、この処理により設定された検査領域を180度回転させたものを、基準の辺に対向する辺に設定する(ST113)。これをもって、検査領域の設定処理が終了となる。
【0080】
ST111,ST112,ST113では、それぞれST106,ST107,ST108と同様の処理を実行する。ただし、処理対象の部品の部品本体が正方形でない場合には、直交する二辺におけるマージンが異なる場合がある。このマージンの違いに対応するためにST112では、電極ピン単位の検査領域を割り付けた後に、これらの検査領域の配列の中心位置が基準の辺の中心に位置合わせされるように、各検査領域を微調整する。
【0081】
また、図10に示した想定ピッチテーブル中に値が接近したピッチが複数格納されている場合には、これらが想定ピッチテーブル中に画像から計測されたピッチに近似して、いずれを選択するのが良いかを判別するのが困難になる場合があると考えられる。この点につきこの実施例では、ST103において、想定ピッチテーブル中の2以上の値が画像から計測されたピッチに近似した場合には、これらの値をすべてPとして仮設定する。さらにST106においては、Pの各仮設定値に基づき電極ピンの数および位置を特定し、各電極ピンを等間隔により近い状態で配置できたときの特定結果およびその特定に用いたPを採用する。さらに、この後にST111を実行する場合には、ピッチPとして、ST106で採用した方の値を使用する。
【0082】
また、図4〜7に示した例では、各ランドの幅が均一であるものとしたが、基板によっては、図11に示すように、端部のランドの幅LW1が他のランドの幅LW2より大きくなっている場合もある。このような場合に対応するために、ST105では、各ランド領域から計測した幅を比較し、部品対応領域30の角部の直近のランド領域の幅がその隣のランド領域の幅より大きく、かつこれらの差が所定のしきい値を上回る場合には、前者の計測値をLW1とし、後者の計測値をLW2とする。ST107では、これらLW1,LW2の値を検査領域の設定に反映させる。
【0083】
上記のとおり、この実施例では、SOPやQFPについては、各電極ピンや各ランドの配置の規則性や部品の線対称の形状を利用して、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンのうち、端から順に2本の電極ピンおよびこれらに対応するランドを指定し、指定された部位における規則性を部品全体に適用することによって、全ての電極ピンおよびランドに対する検査領域を設定する。よって、電極ピンやランドを抽出するための画像処理にかかる負担が軽減され、検査領域の設定に要する処理の時間を短縮することが可能になる。また、ユーザが部品本体領域30や指定枠33,34を正しく設定すれば、これらの指定に基づき、電極ピンやランドの配置の規則を示すパラメータを十分に精度良く求めることができるから、検査領域の設定の精度を確保することができる。
【0084】
したがって、画像からの電極ピンやランドの色彩や明るさにばらつきがあったり、電極ピンやランド以外の部位を誤抽出する可能性があるなど、画像処理による抽出の精度を確保するのが困難な場合でも、電極ピンやランドの目視に問題がなければ、これらを正しく指定することによって検査領域を精度良く設定することが可能になる。また、この設定にはユーザによる電極領域やランド領域の指定が必要であるが、その指定操作は電極ピンおよびランドを2つずつ指定する程度のものであるので、大きな負担をかけることがなく、検査領域の設定作業を短時間で完了することができる。
【0085】
ただし、上記の例のように、電極ピンおよびランドを組にして指定することは必須ではなく、電極領域のみをユーザに指定させ、その指定領域の先端を基準にした所定の範囲からランドを抽出するようにしてもよい。この場合には、ランド抽出のための画像処理の処理対象範囲が限定されるので、ランドの抽出用のしきい値の基準をある程度低くすることで抽出の失敗を防止でき、また周囲の関係のない部位を誤抽出するのを防止することができる。よって、ランドを精度良く抽出して、検査領域の設定用のパラメータの導出を支障なく行うことができる。また、この処理では、指定枠33により指定された電極領域に対応するランドを抽出するだけであるから、抽出のための処理時間が長くなるおそれもない。
【0086】
つぎに上記の実施例では、SOP,QFPなど、対向する2辺間における電極ピンの配列に線対称の関係が成立する部品を設定の対象としたが、このような形状以外の部品(たとえばコネクタ)に関しても、電極ピンが複数配置されている辺に指定枠33,34を設定することにより、上記実施例と同様の手法で検査領域の設定データを作成することが可能である。
【0087】
また、上記の実施例では、部品型式に対応するサブ部品種用のライブラリデータを作成する処理の中で、検査領域の設定データを作成しているが、ライブラリデータによらずに、基板200の実装後基準画像を用いて個々の部品毎に検査領域の設定データを特定する場合にも、同様の処理を適用することができる。
【0088】
また、処理対象の画像は、上記実施例のような2次元画像に限らず、2次元画像に各部位の高さデータを組み合わせた3次元画像や、X線CT画像から復元された3次元情報を対象にした検査を行う場合にも、上記と同様の方法で検査領域の設定データを特定することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 検査装置
2 カメラ
7 パーソナルコンピュータ
17 モニタ
30 部品対応領域
32,33,34 指定枠
100 画像表示領域
102 ガイダンス領域
110 抽出ボタン
201 部品
S1,S2,S3,S4,S11,S21,S31,S41 検査領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の部品の実装状態の検査に用いられる検査領域の設定データを作成する方法において、
複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する第1ステップ、
前記基準画像の表示画面において、対象部品の部品本体に対応する領域を指定する第1指定操作を受け付ける第2ステップ、
前記第1指定操作により指定された部品対応領域の一辺に沿って並ぶ少なくとも2つの領域を、それぞれ前記対象部品の一電極ピンに対応する領域として指定する第2指定操作を受け付ける第3ステップ、
前記第1指定操作および第2指定操作が行われたことに応じて、指定された各領域の間の関係に基づき、前記対象部品における電極ピンの配置に関する規則を特定する第4ステップ、
前記第1指定操作により指定された部品対応領域の各辺のうち少なくとも前記第2指定操作の対象となった辺に前記第4ステップで特定された規則を適用して、前記部品対応領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する第5ステップ、
前記第5ステップの実行に応じて、前記モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する第6ステップ、の各ステップを実行することを特徴とする基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項2】
前記第3ステップでは、前記一電極ピンに対応する領域とともに当該電極ピンが接続されるランドに対応する領域を指定する操作を受け付けており、
前記第4ステップでは、電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、前記部品対応領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離と、対応関係にある電極ピンとランドとの位置関係とを、それぞれ特定する、
請求項1に記載された基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された方法において、
矩形状の部品本体の対向する2辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、これらの辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品を設定の対象とし、
前記第5ステップにおいて、前記第2指定操作の対象となった辺を対象に前記第4ステップで特定された規則を適用して、前記部品対応領域の外側で前記対象の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを前記部品対応領域の外側で前記対象の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する、基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載された方法において、
矩形状の部品本体の各辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、対向する関係にある2辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品を設定の対象とし、
前記第5ステップにおいて、前記第2指定操作の対象となった辺およびこの辺に直交する2つの辺のうちの一方を対象にして、それぞれの辺に前記第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側で対象の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを前記第1の領域の外側で対象の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する、基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項5】
部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の部品の実装状態の検査に必要な情報を作成するシステムであって、
複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する基準画像表示手段、
前記基準画像の表示画面において、対象部品の部品本体に対応する領域を指定する第1指定操作を受け付ける第1指定操作受付手段、
前記第1指定操作により指定された部品対応領域の一辺に沿って並ぶ少なくとも2つの領域を、それぞれ前記対象部品の一電極ピンに対応する領域として指定する第2指定操作を受け付ける第2指定操作受付手段、
前記第1指定操作受付手段および第2指定操作受付手段がそれぞれの指定操作を受け付けたことに応じて、指定された各領域の間の関係に基づき、前記対象部品における電極ピンの配置に関する規則を特定する配置規則特定手段、
前記第1指定操作により指定された部品対応領域の各辺のうち少なくとも前記第2指定操作の対象となった辺に前記配置規則特定手段により特定された規則を適用して、前記部品対応領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する領域設定手段、
前記領域設定手段により検査領域が設定されたことに応じて、前記モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する領域確定手段、
の各手段を具備することを特徴とする基板検査用の検査データ作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−95054(P2011−95054A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247995(P2009−247995)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】