説明

基板用コネクタ

【課題】 プレスフィット端子の保持力を確保した上で狭ピッチ化を図る。
【解決手段】 ハウジング20の基壁21には、プレスフィット端子10を上方から挿通する貫通部25が、5箇所ずつ前後2列にわたって設定されている。貫通部25には、プレスフィット端子10の弾性膨出部12を貫通させる相対的に幅広の貫通孔26が、端子10の並び方向と直交した姿勢で、また圧入部13が圧入される相対的に幅狭の圧入孔28が、端子10の並び方向に沿った姿勢で形成される。プレスフィット端子10は、まず弾性膨出部12が貫通孔26に貫通され、次に軸線回りに90度回動されたのち、圧入部13が圧入孔28に圧入され、ストッパ14が収容孔29の底面に当たって押し込みが停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフィット端子を用いた基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板用コネクタとして、図11に示すようなものが知られている。これは、コネクタハウジング1の例えば上面側には、相手コネクタが嵌合されるフード部2が形成され、このフード部2の底壁2Aには、先端に弾性膨出部4とその上方にストッパ5付きの圧入部6とがそれぞれ形成されたプレスフィット端子3が複数本並んで貫通され、それぞれの上端がフード部2内に突出するとともに、弾性膨出部4が底壁2Aの下方に突出し、弾性膨出部4がプリント回路基板の対応するスルーホールに挿入されて接続されるようになっている。
なお、この種の基板用コネクタは、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】国際公開パンフレット WO 95/14315
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで従来のものでは、プレスフィット端子3をハウジング1の底壁2Aを貫通状態に保持する手段として、プレスフィット端子3を底壁2Aに設けた圧入孔7に対して下方から挿入し、圧入部6を圧入孔7に圧入してストッパ5を突き当てる手段が採られていた。しかるにこの方法では、フード部2に相手コネクタが嵌合される等でプレスフィット端子3に下向きの力が作用した場合に、その係止力に劣る嫌いがあった。
【0004】
そこで同方向の係止力を増すには、プレスフィット端子3を上方から挿入すれば良いのであるが、圧入孔7に対しては先に弾性膨出部4が通ったのち圧入部6が圧入されるのであるから、圧入部6は弾性膨出部4より幅広としなければならず、ストッパ5も含めるとプレスフィット端子3の幅広化が余儀なくされ、プレスフィット端子3間の狭ピッチ化を図る場合に制限を受けるという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、保持力を確保しつつ狭ピッチ化に対応できるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明の基板用コネクタは、コネクタハウジングには相手コネクタが嵌合される接続部が形成され、この接続部の奥壁には、先端に弾性膨出部とその後方に圧入部とがそれぞれ形成されたプレスフィット端子が複数本並んで貫通され、それぞれの後端が前記接続部側に、前記弾性膨出部が前記接続部とは反対側に突出し、前記各弾性膨出部が回路基板の対応する接続孔に挿入されて接続されるものにおいて、前記コネクタハウジングの奥壁における前記プレスフィット端子の貫通部分には、前記圧入部が圧入される相対的に小幅の圧入孔が、前記プレスフィット端子の並び方向に沿った姿勢で設けられるとともに、前記弾性膨出部を貫通する相対的に大幅の貫通孔が、前記圧入孔と直交する姿勢で形成されている構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記プレスフィット端子の前記弾性膨出部と前記圧入部とは、同一面上において膨出または張り出し形成されており、前記プレスフィット端子は、前記弾性膨出部が前記貫通孔を貫通したのち回動姿勢が90度変更され、続いて前記圧入部が前記圧入孔に圧入可能とされているところに特徴を有する。
請求項3の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記プレスフィット端子の前記弾性膨出部と前記圧入部とは、互いに直交した姿勢で形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
プレスフィット端子において弾性膨出部と圧入部とが同一平面上で膨出または張り出し形成されている場合は、まず弾性膨出部を貫通孔に貫通し、続いて90度回動したのち圧入部を圧入孔に対して圧入する。
弾性膨出部と圧入部とが予め直交した姿勢で形成されている場合は、プレスフィット端子を一定の回動姿勢のままで、まず弾性膨出部を貫通孔に貫通し、続い圧入部を圧入孔に対して圧入する。
【0008】
プレスフィット端子はコネクタハウジングの接続部側から挿入して圧入するのであるから、接続部に相手コネクタが嵌合されることに伴ってプレスフィット端子に挿入方向に向けて押す力が作用した場合、それに抗する優れた係止力が発揮される。すなわち、相手コネクタが嵌合された場合にプレスフィット端子が逃げることが防止され、プレスフィット端子と相手コネクタに装着された端子間での接続の信頼性を高めることができる。
【0009】
また、弾性膨出部と圧入部とは貫通孔と圧入孔といった言わば別々の孔を通すのであるから、弾性膨出部、圧入部の順に通すにも拘わらず、弾性膨出部よりも圧入部の幅を狭くでき、ひいては圧入孔を幅狭にできる。この幅狭の圧入孔をプレスフィット端子の並び方向に沿った姿勢で形成することにより、圧入孔の間隔が詰められ、すなわちプレスフィット端子を並設するについて狭ピッチ化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態を図1ないし図10によって説明する。
本実施形態の基板用コネクタは、図1及び図2に示すように、コネクタハウジング20(以下、ハウジング20という)に対して、図示10本のプレスフィット端子10が圧入によって装着され、プリント回路基板30(図9参照:以下、回路基板30という)に搭載されるようになっている。
【0011】
プレスフィット端子10は、導電性に優れた金属板をプレス加工することによって、図5に示すような形状に形成されている。プレスフィット端子10は全体としては、細長い角棒状に形成されている。その一端側(上端側)は、相手端子と接続される端子接続部11となっており、先端はガイド用に先細りに形成されている。
一方、他端(下端)には、回路基板30側と接続される基板接続部とも言うべき弾性膨出部12が形成されている。この弾性膨出部12は、間に空間を設けて目玉状をなすように幅方向の両側に膨出形成されたものであって、幅方向に弾性的に開閉可能となっている。詳細には弾性膨出部12は、図9に参照して示すように、回路基板30のスルーホール31に弾縮されて挿入され、復元力で拡開してスルーホール31の内周面に形成されたコンタクトに弾接するようになっている。
【0012】
プレスフィット端子10の長さ方向の中央部には、圧入部13が形成されている。圧入部13は、幅方向の両側に張り出して形成されているが、その幅w2 は、上記した弾性膨出部12の最大幅w1 よりも小さく設定されている。圧入部13の下端側の左右両側縁は、下方に向けて次第に幅狭となるようにテーパ縁13Aとなっている。
圧入部13の上方にはストッパ14が連設されている。ストッパ14は圧入部13よりも幅広の段付き状に張り出し形成されているが、弾性膨出部12の最大幅w1 よりも少し大きい程度の幅w3 に留められている。
【0013】
ハウジング20は合成樹脂製であって、基壁21の上面に、上方に開口した略角筒状をなすフード部22が形成された形状である。このフード部22内には、図示しない相手コネクタが上方から嵌合可能となっている。また、基壁21の下面側には、回路基板30の表面に当てられる脚体23が形成されている。
ハウジング20の基壁21には、上記したプレスフィット端子10が上方から貫通されて装着されるようになっている。基壁21には、プレスフィット端子10の貫通部25が、図3に示すように、5箇所ずつ前後2列にわたって設定されている。各列の貫通部25は一定ピッチで設けられ、前後方向では整合している。
【0014】
各貫通部25の構造を詳細に説明する。基壁21は、図9に参照して示すように、プレスフィット端子10におけるストッパ14の上端から圧入部13のテーパ縁13Aの下端にわたる長さよりも若干大きい厚さを有している。各貫通部25には、プレスフィット端子10の弾性膨出部12を貫通させる貫通孔26と、圧入部13が圧入される圧入孔28とがともに貫通状に形成されている。
【0015】
貫通孔26は、図3及び図6に示すように、弾性膨出部12をほとんど弾縮させることなく貫通可能な縦幅Wa(図6(B)参照)と、プレスフィット端子10の角棒部16の厚さ(=幅)w0 よりも若干大きい横幅Wbとを有している(同図(A)参照)。横幅Wbを大きくしたのは、角棒部16が貫通孔26内で軸線回りに回動することを許容するためである。貫通孔26は、その縦幅Wa方向を、プレスフィット端子10の前後各列での並び方向と直交する方向、すなわち前後方向に向けた姿勢で形成されている。ただし、貫通孔26の入口、すなわち上面側の口縁には、上方に向けて次第に広がったテーパ状をなす誘い込み部27が形成されている。
【0016】
一方の圧入孔28は、図4及び図8に示すように、圧入部13が圧入できるように、プレスフィット端子10の角棒部16の幅w0 と圧入部13の幅w2 との間の寸法の横幅Wcを有している。この圧入孔28の横幅Wcは、上記した貫通孔26の横幅Wbと等しく、したがって貫通孔26の縦幅Waよりも小さい。なお圧入孔28の縦幅Wdは、貫通孔26の横幅Wbと同じである。
【0017】
圧入孔28は、その横幅Wc方向を、プレスフィット端子10の前後各列での並び方向に沿った方向、すなわち左右方向に向けた姿勢で形成されている。なお、圧入孔28の入口側には、図8(A)に示すように、ストッパ14を当てて収める収容孔29が形成されている。この収容孔29の横幅Weは、図3にも示すように、上記した誘い込み部27の横幅内に収まり、また図9に示すように、ストッパ14が収容孔29内に収まった場合に、ストッパ14の上端が基壁21の上面と面一となるような深さを有している。
【0018】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
プレスフィット端子10を装着するには、図2に示すように、幅方向を前後に向けた姿勢にして、対応する貫通部25の貫通孔26に対して上方から挿通する。まず、プレスフィット端子10の弾性膨出部12が誘い込み部27で芯出しされつつ、図6(B)に示すように、貫通孔26内でほとんど弾縮されることなく貫通される。図7に示すように、弾性膨出部12が貫通孔26の下方に抜けたら、プレスフィット端子10を軸線回りに90度回動させる。
【0019】
この状態からさらにプレスフィット端子10を押し込むと、図8(A)に示すように、圧入部13が圧入孔28に臨み、圧入部13が圧入孔28の横幅Wc方向の両側壁に食い込むようにして圧入される。そして、図9及び図10に示すように、ストッパ14が収容孔29の底面に当たったところで押し込みが停止され、弾性膨出部12が基壁21の下方に突出し、一方、端子接続部11が基壁21の上面からフード部22内に突出した状態でプレスフィット端子10が装着される。
すべてのプレスフィット端子10の装着が完了したら、治具等を利用することで図9に示すように、各プレスフィット端子10の弾性膨出部12が回路基板30の対応するスルーホール31に挿入され、その内周面のコンタクトに弾接して電気的接続が取られる。
【0020】
そののち、脚体23の一部が回路基板30にねじ止めされることで、ハウジング20が回路基板30に固定される。そして、ハウジング20のフード部22内に相手コネクタが嵌合されることで、プレスフィット端子10の端子接続部11と相手コネクタに装着された相手端子とが嵌合して接続される。このとき、プレスフィット端子10には、図9の下方に押し込まれる力が作用するが、ストッパ14が収容孔29の底面に当たることで、それ以上の押し込みが規制され、すなわちプレスフィット端子10が逃げることが無くて、プレスフィット端子10と相手コネクタに装着された相手端子との間の接続が確実に取られる。
【0021】
以上説明したように本実施形態によれば、プレスフィット端子10はハウジング20のフード部22内から挿入して圧入され、ストッパ14が当たることでそれ以上の挿入が規制されるようになっているから、フード部22内に相手コネクタが嵌合されることに伴ってプレスフィット端子10に挿入方向に向けて押す力が作用した場合にも、同方向の移動が確実に阻止される。すなわち、相手コネクタが嵌合された場合にプレスフィット端子10が逃げることが防止され、プレスフィット端子10と相手コネクタに装着された相手端子間での接続の信頼性を高めることができる。
【0022】
また、弾性膨出部12と圧入部13とは、貫通孔26と圧入孔28といった言わば別々の孔を通すのであるから、弾性膨出部12、圧入部13の順に基壁21に通すのにも拘わらず、弾性膨出部12よりも圧入部13の幅を狭くでき、また圧入部13よりも幅広となるストッパ14についても極力幅狭にでき、その結果収容孔29を含めた圧入孔28を幅狭に形成することができる。そして、この幅狭の圧入孔28をプレスフィット端子10の並び方向に沿った姿勢で形成することにより、圧入孔28の間隔が詰められ、すなわちプレスフィット端子10を並設するについて狭ピッチ化を図ることが可能となる。
【0023】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)プレスフィット端子の弾性膨出部と圧入部とは、その間の部分をねじる等によって、予め互いに直交した姿勢を取るように形成しておいてもよい。この場合は、プレスフィット端子を一定の回動姿勢のままで挿入することにより、まず弾性膨出部を貫通孔に貫通し、続い圧入部を圧入孔に対して圧入することができる。
(2)上記実施形態のプレスフィット端子では、圧入部の後端にストッパを設けたが、圧入部の形状等により挿入の規制が十分に期待できれば敢えてストッパを設ける必要はなく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(3)プレスフィット端子としては、上記実施形態に例示した直線状のものに限らず、途中で直角曲げされたL字形のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレスフィット端子の圧入前の状態の正面から見た断面図
【図2】同側面から見た断面図
【図3】ハウジングの平面図
【図4】同底面図
【図5】(A)はプレスフィット端子の底面図、(B)は同正面図、(C)は同側面図
【図6】(A)はプレスフィット端子の貫通途中の状態の正面から見た部分断面図、(B)はその側面から見た部分断面図
【図7】(A)はプレスフィット端子の弾性膨出部が基壁の下面側に貫通した状態の正面から見た部分断面図、(B)はその側面から見た部分断面図
【図8】(A)はプレスフィット端子の圧入開始状態の正面から見た部分断面図、(B)はその側面から見た部分断面図
【図9】プレスフィット端子が装着された状態の正面から見た断面図
【図10】同側面から見た断面図
【図11】従来例の断面図
【符号の説明】
【0025】
10…プレスフィット端子
12…弾性膨出部
13…圧入部
14…ストッパ
20…コネクタハウジング
21…基壁(奥壁)
22…フード部(接続部)
25…貫通部
26…貫通孔
28…圧入孔
29…収容孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングには相手コネクタが嵌合される接続部が形成され、この接続部の奥壁には、先端に弾性膨出部とその後方に圧入部とがそれぞれ形成されたプレスフィット端子が複数本並んで貫通され、それぞれの後端が前記接続部側に、前記弾性膨出部が前記接続部とは反対側に突出し、前記各弾性膨出部が回路基板の対応する接続孔に挿入されて接続されるものにおいて、
前記コネクタハウジングの奥壁における前記プレスフィット端子の貫通部分には、前記圧入部が圧入される相対的に小幅の圧入孔が、前記プレスフィット端子の並び方向に沿った姿勢で設けられるとともに、前記弾性膨出部を貫通する相対的に大幅の貫通孔が、前記圧入孔と直交する姿勢で形成されていることを特徴とする基板用コネクタ。
【請求項2】
前記プレスフィット端子の前記弾性膨出部と前記圧入部とは、同一面上において膨出または張り出し形成されており、前記プレスフィット端子は、前記弾性膨出部が前記貫通孔を貫通したのち回動姿勢が90度変更され、続いて前記圧入部が前記圧入孔に圧入可能とされていることを特徴とする請求項1記載の基板用コネクタ。
【請求項3】
前記プレスフィット端子の前記弾性膨出部と前記圧入部とは、互いに直交した姿勢で形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−4642(P2006−4642A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176571(P2004−176571)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】