説明

基板裏面のエッチング処理方法およびその装置

【課題】ウェーハの片面を保護して他の片面をエッチングまたはリンス処理を行うエッチング処理方法およびその装置を提供する。
【解決手段】基板のウェーハデバイス面を保護するため、界面部を純水で保護しながら、基板の界面部全般に純水による表面張力が均質にかかるように、純水受け皿底面を円錐状に加工し、円錐状の端面を基板の円周の内側とし、その外側は基板とフラットとの間に狭い隙間を形成させ、対向して複数にチャック止めされた基板と基板保護用純水の円錐状受け皿は設定された回転数で同軸により回転させ、純水の表面張力と回転による遠心速度をバランスさせることで、裏面エッチッグ液またはリンス水が下面に回り込まないようにして、下面になっているウェーハデバイス面のコンタミネーションを防止する。これら基板の乾燥はこの純水をクリーン窒素ガスに置換して基板の両面が乾燥するまで回転させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程の中で、ウェーハの片面を保護して他の片面をエッチングする工程があり、例えば薄板化工程でウェーハの裏面側を研磨した後加工歪を除去するため、片面を保護しておいて、他の片面をケミカルエッチングして加工歪を除去するエッチング処理方法およびその装置に関するものである。またウェーハ裏面配線の工程において、デバイスパターン面を保護しておいて、その裏面側をウエットエッチングする工程などでのエッチング処理方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体用のウェーハデバイス面を保護しながらその基板の裏面をエッチング洗浄する方式として、真空吸着方式、コーティング剤塗布方式、テープマウント方式、ベルヌイチャック方式、純水シャワー方式またはウォーターベアリング方式などが知られている。
特に、多く使用されているのがベルヌイチャク方式で、ウェーハ裏面よりガスを吹き付け吹き寄せる方法であり、ウェーハ外周部を復数のピンで保持し、裏面からガスを吹き付ける料によりウェーハ裏面外周部からウェーハの中央部に回り込む薬液をコントロールする方式である。ウェーハ裏面から吹き付けるガスは通常は高純度窒素ガス(Nガス)が用いられている。この吹き付けガスを高純度空気を用いる検討もされているが、ナチュラルオキサイド(酸化物)が発生しやすいことが報告されている。更にこの方式の場合、薬液はミスト状となり飛散するためダクトを用いた排気にミストセパレーターを設置する必要がある。
また、純水シャワー方式と呼ばれる方法は、ウェーハデバイス面を裏面にして複数のチャック爪でウェーハ外周部を固定したチャックテーブル面を傾斜状にして、回転させて低速安定回転状態になってから純水を供給する。この供給された純水にウェーハ裏面がこの純水に没水させて、エッチッグ洗浄に用いられる薬液はウェーハ外周部からウェーハデバイス面に回り込まない程度の量を排出させる方式である。エッチッグ洗浄が終了すると。回転数を揚げて、ウェーハデバイス面側の純水を抜いた後、高純度窒素ガス(Nガス)を供給しながら乾燥する方式で、ナチュラルオキサイドの発生を防止している。この方式の場合、チャックテーブル面を傾斜状で使用するという稼動状況がある。
その他、真空吸着方式、コーティング剤塗布方式、テープマウント方式はいずれも表面(メタル面)にタッチしまうという欠点とコストが高くなる経済的問題がある。又純水を掛けて表面(メタル面)を保護する方式になる純水シャワー方式またはウォーターベアリング方式、ベルヌイチャック方式はウェーハとチャックの隙間から雰囲気や水滴が入り表面(メタル面)が曇ると言う欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の解決課題は、基板の裏面をエッチング処理する際、エッチング液の無駄をなくして、除去されたメタル等が、下面になっている基板のウェーハデバイス面(メタル面)に再付着しないようにすると共に、下面になっている基板のウェーハデバイス面(メタル面)との界面部にコンタミネーションを生じないようにし、エッチング処理時間を短縮することが出来るようにした基板の裏面のエッチング処理方法およびその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は半導体用の基板のウェーハデバイス面を保護しながらその基板の裏面をエッチング洗浄する方式としての裏面のエッチング処理方法としては、まず下面になっているウェーハデバイス面のコンタミネーションを生じさせないようにするため、界面部を純水で保護しながら、基板の界面部全般に純水による表面張力が均質に掛かるようにするため純水受け皿底面を円錐状に加工し、円錐状の端面を基板の円周の内側とし、その外側は基板とフラットの薄い隙間を形成させ、ウェーハデバイス面と純水の間に薄い空気層を形成させるように純水を流出させて、裏面エッチング液またはリンス水が純水側の下部に回り込まないようにして、下面になっているウェーハデバイス面のコンタミネーションを防止する。チャック止めされた基板と基板保護用純水の円錐状受け皿は設定された同軸で回転させ、純水の表面張力と回転による遠心速度をバランスさせて、界面部を安定させる。エッチング洗浄はエッチング液を流下して接触し、ウェーハの回転により外周に純水と共に飛散するエッチング液を回転方向に位置する回収口から回収後、純水をクリーン窒素ガス(Nガス)に置換して基板の両面が乾燥した状態で回転を止めてなることを特徴とする基板の裏面のエッチング処理方法およびその装置が提案され、上記課題が解決される。
【発明の効果】
【0005】
本発明は上記のように構成され、基板の凹凸などひずみ発生を防ぐと共に、下面のウェーハデバイス面を保護すると共に、ウェーハの回転により外周に飛散するエッチング液を該回収口より回収され、エッチング液の無駄をなくすることができ、基板が乾燥状態で回収され作業の簡略化と経済性の向上が計れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の実施の形態を図1および図2に基づいて説明するが、本発明思想から逸脱しない限りこれら実施の形態について種々の変更または変形が可能なことは言うまでもない。
【0007】
本発明の基板裏面のエッチング処理装置は、図1がその全体の概略図であり、図2はその概略図の半分を中心線より輪切りにしてチャックテーブル4に複数取り付けられた遠心力チャック爪ユニット7の内の1個付近の概略図を、平面図[2−1]、断面図[2−2]、断面右側図面[2−3]で表した。
【0008】
まず、前処理段階として、チャックテーブル台8は円錐形をして純水を貯留するためのチャックテーブル4とその中心部に純水出入口パイプ5(径10φ)(また、このパイプは高純度窒素ガス(Nガス)出入パイプを兼ねる)と複数のチャック爪ユニット7と、系外のロボットでウェーハデバイス面を裏側にして運ばれてきた基板(シリコーンウェーハ)1をチャック爪に移載して100RPMの低速で回転して固定する。更に、スピンシャフトのクランプボルトで固定した後、純水供給配管18より純水供給バルブV3,V4で流量制御を行いながら純水出入口パイプ5を経由して円錐形をして純水を貯留するためのチャックテーブル4へ給水する。次に、図2[2−2]断面図に示した遠心力チャック爪ユニット7のチャック面とウェーハ面との隙間が示されているが、このチャック爪での純水排水のための隙間21からの流水排水状況を目視確認して、先の純水供給バルブV3,V4で流量を再調整する。
【0009】
先ず、タイミングプーリー11で低速回転を行う。低速回転であればウェーハとチャックテーブル4の間の隙間で、凹加工した円錐形状のチャクテーブル4内の純水による表面張力が発生して、純水の重量によりチャックテーブル4中心へ純水が引き寄せられる。この表面張力を維持するには回転速度が重要であり、低速で回転させると遠心力とのバランスが取れている回転速度であれば、表面張力は安定に維持される。この低速回転速度はウェーハの径により回転数を設定するが、その回転数は100から300RPMであり、好ましくは200RPM前後であることが好ましい。次にチャックテーブル4中心へ純水を純水出入パイプ5より一定量供給して、ウェーハとチャックテーブルとの隙間から同量の水が排出され、更に安定した表面張力が得られる。この隙間はウェーハの径にも関係するが、実験経験的には0.5から2mmの隙間になるように設定するのが好ましい。またこの隙間は、図面への記載は省略したがエッチング液ノズルからの王水、フッ酸、硝酸及びフッ酸・硝酸の混合液等のエッチング液及びこれらエッチング液を洗浄する純水ノズルからのリンス水の回り込み防止、更に雰囲気ガス・ミストの混入の防止にも重要である。エッチング完了後はウェーハの乾燥工程に入る。
【0010】
先ず純水供給バルブV3,V4を供給停止にした後、クリーン窒素ガス供給バルブV1、V2と先のV4とドレーンバルブ17で純水を排出する排出量とを連動させて窒素ガス供給量を調整して供給する。円錐形状の受け皿の純水が全てクリーン窒素ガスに置換した段階で、タイミングプーリー11で高速回転に切り替えてシリコーンウェーハ1の両面を乾燥させる。乾燥工程での回転速度はウェーハの径により回転数を設定するが、2000から3000RPMの回転数が好ましい。
【0011】
純水配管15より導入される純水は、RO膜法、イオン交換樹脂法、限外ろ過膜法等超純水製造装置で製造されたものであり、クリーン窒素ガスは半導体用クリーン窒素ガスとして規定されたものを用いる。又、エッチング液として用いる薬品類も半導体用薬品に規定されたものを用いる。
【実施例】
【0012】
実施例として、図1及び図2の示すように、200φと300φの場合の寸法表示を示した。それぞれの寸法での稼動条件を次の表1に示した。
【0013】
【表1】

上記実施例に示す如く、シリコーンウェーハの径により最適と考えられる回転数は径が大きくなるほど遅くなるように設定するのが好ましい。又、純水流出の隙間でもあるウェーハ1とチャックテーブル4の隙間は0.6から2mmであれば、良い結果が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0014】
円盤型のガラス、セラミック等シリコーンウェーハ以外の材料で両面の加工処理をおこなうものへの利用への応用可能性は十分考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基板の裏面のエッチング処理装置の概略図
【図2】概略図の中心線より輪切りにしてチャックテーブル4の遠心力爪チャックユニット7のうちの1個付近の概略図 [2−1]:平面図 [2−2]:断面図 [2−3]:断面図右側図面
【符号の説明】
【0016】
1.チャック外径:
210φ
310φ
2.チャック内径:
200φ
300φ
3.基板(シリコンウェーハ)
3−1.基板(シリコンウェーハ)のセンター
3−2.基板(シリコンウェーハ)の外径
4.チャックテーブル
4−1.チャックテーブルの純水受皿傾斜部の直径
5.純水出入口パイプ
6.チャックテーブル交換ねじ
7.遠心力チャック爪ユニット
8.チャックテーブル台
9.スピンボルトのクランプシャフト
10.上軸受
11.タイミング プーリー
12.下軸受
13.真空リーク穴
14.真空シール
15.純水配管
16.クリーン窒素ガス(Nガス)配管
17.ドレインバルブ
18.真空装置接続口
19.回転部への純水供給配管
20.トラップ排水部
21.チャック爪での純水排水のための隙間
V1.クリーン窒素ガス供給バルブ1
V2.クリーン窒素ガス供給バルブ2
V3.純水供給バルブ1
V4.純水供給バルブ2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のウェーハデバイス面を保護しながらその基板の裏面をエッチング洗浄する方式としての裏面のエッチング処理方法において、
基板のウェーハデバイス面を保護するため、下面になっているウェーハデバイス面の界面部を円錐状の純水受け皿の純水と、円錐状の純水受け皿の端面を基板の円周の内側とし、その外側との間に狭い隙間を形成させ、同軸で回転させ、純水の表面張力と回転による遠心速度をバランスさせることで、エッチング液またはリンス水が下部に回り込まないようにして、下面になっているウェーハデバイス面のコンタミネーションを防止するエッチング方法と、
これら基板の乾燥方法として、この純水受け皿の純水をクリーン窒素ガス(Nガス)に置換して高速で回転させることにより基板の両面を乾燥させることを特徴とする基板裏面のエッチング処理方法。
【請求項2】
基板のウェーハデバイス面を保護しながらその基板の裏面をエッチング洗浄する方式としての裏面のエッチング処理工程において、
基板のウェーハデバイス面を保護するため、下面になっているウェーハデバイス面の界面部を円錐状の純水受け皿の純水と、円錐状の純水受け皿の端面を基板の円周の内側とし、その外側との間に狭い隙間を形成させ、同軸で回転させ、純水の表面張力と回転による遠心速度をバランスさせることで、エッチング液またはリンス水が下部に回り込まないようにして、下面になっているウェーハデバイス面のコンタミネーションを防止するエッチング工程と、
これら基板の乾燥工程として、この純水受け皿の純水をクリーン窒素ガス(Nガス)に置換して高速で回転させることにより基板の両面を乾燥させることを特徴とする基板裏面のエッチング処理装置。
【請求項3】
前記エッチング処理工程での同軸による回転数が100から300RPMであり、好ましくは200RPM前後であることを特徴とする請求項2記載の基板裏面のエッチング処理装置。
【請求項4】
前記乾燥工程での同軸による回転数が2000から3000RPMであることを特徴とする請求項2記載の基板裏面のエッチング処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−147282(P2009−147282A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341714(P2007−341714)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(390039619)株式会社ピュアレックス (19)
【Fターム(参考)】