説明

基準電圧発生回路

【課題】簡易な構成によって基準電圧発生回路の基準電圧の温度依存性を精度良く補正する。
【解決手段】第1及び第2バイポーラトランジスタQ1,Q2と、このQ1,Q2に定電流を供給するカレントミラー回路10とを備える。Q1のベースは、抵抗R1を介してカレントミラー回路10の第1電流供給側(M1)に接続され、Q1のコレクタは、抵抗R2を介してQ1のベースに接続される。Q2は、そのペースがQ1のコレクタに接続され、コレクタは、カレントミラー回路10の第2電流供給側(M2)に接続され、R1とM1との接続端に、基準電圧を出力する出力端子が設けられる。カレントミラー回路の第3電流供給側(M3)は、Q1のコレクタに接続され、M3に得られる電流I2により、基準電圧の温度依存性を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
温度依存性の小さいバンドギャップ電圧に基づいた基準電圧を発生する基準電圧発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電子機器において定電圧電源として基準電源発生回路が採用されており、出力の温度依存性を低減し、温度によらず精度良く基準電圧を生成する試みが為されている。
【0003】
図8は従来のバンドギャップ電圧を利用した基準電圧発生回路の構成を示す。この回路は、NPN型バイポーラトランジスタQ1と、該バイポーラトランジスタQ1に対してK倍の電流を流すNPN型パイポーラトランジスタQ2を備える。また、このQ1及びQ2に、定電流Iを供給するP型MOSのトランジスタM1及びM2より構成されるカレントミラー回路20を有する。
【0004】
カレントミラー回路のM1の電流出力側には、基準電圧出力端(VREF)と抵抗R1が接続され、抵抗R1の他端には抵抗R2の一端が接続され、さらにこの抵抗R2の他端にQ1のコレクタが接続されている。また、Q1のベースは、上記抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続されており、Q1のベースとコレクタとは、抵抗R2を介して互いに接続されている。さらにQ1のコレクタはQ2のベースに接続され、Q2のコレクタは、カレントミラー回路のトランジスタM2の電流出力側に接続されている。
【0005】
このような回路において、Q1,Q2のベース電流IBが無視できる場合、以下の式が成り立つ。
【0006】
REF=VBE1+R1I ・・・(1)
BE1=(kT/q)ln(IE1/Is) ・・・(2)
BE2=(kT/q)ln(IE2/Is) ・・・(3)
2I=VBE1−VBE2=(kT/q)ln(IE1/IE2) ・・・(4)
REF:基準電圧発生回路からの出力基準電圧
ここで、VBE1はQ1のベースエミッタ電圧、VBE2はQ2のベースエミッタ電圧、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、IEはエミッタ電流、Isは回路のプロセスに依存した定数である。
【0007】
I=IE1=K*IE2であり、(1)式を(2)〜(4)式を用いて表すと、一般的な基準電圧回路の出力基準電圧VREFは、
REF=VBE1+(R1/R2)(kT/q)ln(K) ・・・(1)’
で表される。
【0008】
また、このとき、
I=(1/R2)(kT/q)ln(K) ・・・(5)
となり、電流Iは、絶対温度Tに比例したPTAT(Proportional To Absolute Temparature)電流となる。
【0009】
バイポーラトランジスタのVBEの温度係数は、ほぼ−2.0mV[℃]であり、式(1)’について、(R1/R2)(kT/q)ln(K)の温度係数が+2.0mV[℃]であれば、VREFの温度係数は0となる。そこで、
(R1/R2)(kT/q)ln(K)=+2.0mV
となるように、R1、R2及びKを決めることで、図8に示す基準電圧発生回路は、温度変化に対して、ほぼ一定な出力電圧を発生することができる。
【0010】
しかし、実際には、VBE1は、一次直線ではなく、温度や、エミッタ電流IEの変化に対して非直線成分を持つ。
【0011】
温度依存性を持つVBE(T)は、非直線成分も含めると下式(6)で表される。
【0012】
BE(T)=VG0(1−(T/T0))+VBE0−σ(kT/q)*ln(T/TO
+σ(kT/q)*ln(IE/IE0) ・・・(6)
ここで、VG0はバンドギャップエネルギ電圧、T0は基準温度、VBE0は基準温度でのバイポーラベースエミッタ電圧、σはプロセスで決まる飽和電流温度指数である。
【0013】
上記(6)式の第1項、第2項は、温度の増加に対する線形減少を示し、第3項、第4項は非線形項であり、VBEの未補正温度曲率成分である。よって、従来回路よりもさらに温度変化の小さい基準電圧発生回路を実現するためには、上記第3,第4項の非線形成分の影響についても考慮してキャンセルする必要がある。
【0014】
上記VBEの非直線成分については、特許文献2、特許文献3等、様々な方法でこれをキャンセルすることが提案されている。
【0015】
【特許文献1】特開平5−206755号公報
【特許文献2】特表2006−519433号公報
【特許文献3】特開2006−59001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、これら従来の基準電圧発生回路では、上記非直線成分の補正のために、発生回路とは別の回路を用い、補正電流や補正バイアスを作成したり、補正用に設けた抵抗の温度特性の二次係数を利用したり、或いは環境温度によって補正回路を切り替えるなどを行っている。このような別回路等を用いると、その分回路は複雑になる。
【0017】
また、回路中で、補正電流をコピーするためにカレントミラー回路を採用したり、補正のための電圧を得るために差動アンプを用いる。このような基準電圧発生回路の構成とは別回路のばらつきや、アンプのオフセットばらつきを無視することができず、温度補正ができても出力電圧や温度特性カーブが回路毎にばらついてしまう。
【0018】
また、図8に示すようなバンドギャップ電圧を発生するバイポーラトランジスタと、MOSトランジスタを用いたタイプの基準電圧発生回路では、個体ばらつきが小さいことが知られている。しかし、微細化されたMOS用のプロセスで作成されたバイポーラトランジスタ(寄生バイポーラトランジスタ)は、その直流電流増幅率HFEを高くすることが難しく、トランジスタQ1,Q2のベース電流IBを無視することができず、温度特性の悪化をまねく。このように、微細化MOSプロセスではQ1,Q2のベース電流IBを無視した理想状態で特性を決めることができず、図8に示すタイプの回路は、多用されていなかった。
【0019】
ここで、図8の回路においてQ1,Q2のベース電流IBを考慮すると、出力電圧VREFは、以下のように表される。
【数1】

【0020】
また、このとき、Q1,Q2のベース電流IB1、IB2及びカレントミラー回路に流れる電流Iは、以下のようになる。
【数2】

【0021】
出力電圧VREFは、上記式(7)で表され、回路設計に当たっては、R1,R2,Kに加え、IB1,IB2も決める必要がある。しかし、上述のように、このIB1,IB2が温度特性を持つため、図8の基準電圧発生回路において温度変化をなくすことは難しい。図9は、この図8の回路を実際に作成した場合の温度特性の一例を示す。図9の結果において、VREFのピーク−ピーク間の電圧差は、12mV程度である(VREFp-p≒12mV(−20℃〜125℃))。
【0022】
本発明では、簡易な構成によって、温度特性が小さく、かつ、特性ばらつきの小さい基準電圧発生回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は基準電圧発生回路であって、第1バイポーラトランジスタ及び第2バイポーラトランジスタと、前記第1バイポーラトランジスタ及び第2バイポーラトランジスタに定電流を供給するカレントミラー回路と、を備え、前記第1バイポーラトランジスタのベースは、第1抵抗を介して前記カレントミラー回路の第1電流供給側に接続され、該第1バイポーラトランジスタのコレクタは、第2抵抗を介して前記ベースに接続され、前記第2バイポーラトランジスタのペースは前記第1バイポーラトランジスタのコレクタに接続され、該第2バイポーラトランジスタのコレクタは、前記カレントミラー回路の第2電流供給側に接続され、前記第1抵抗と、前記カレントミラー回路の前記第1電流出力側との接続端に、基準電圧を出力する出力端子が設けられ、前記カレントミラー回路の第3電流供給側は、前記第1バイポーラトランジスタのコレクタに接続され、前記カレントミラー回路の第3電流供給側に得られる電流によって、前記基準電圧の温度依存性を補正する。
【0024】
本発明の他の態様では、上記基準電圧発生回路において、前記カレントミラー回路は、MOSトランジスタによって構成され、ゲートドレイン間が短絡接続され、前記第2バイポーラトランジスタに第1電流を流す第1MOSトランジスタと、該第1MOSトランジスタにゲートが共通接続された第2MOSトランジスタ及び第3MOSトランジスタを備え、前記第2MOSトランジスタは、前記第1MOSトランジスタと等しい前記第1電流を流し、前記第3MOSトランジスタは、前記第1バイポーラトランジスタのベースエミッタ電圧の温度依存性に応じ、前記第1電流のA倍の第2電流(Aは0より大きい正の実数)を前記第1バイポーラトランジスタのコレクタに流す。
【0025】
本発明の他の態様では、上記基準電圧発生回路において、前記第2バイポーラトランジスタは、前記第1バイポーラトランジスタのK倍のエミッタ電流を流し、前記第2電流によって、前記第1バイポーラトランジスタのベースエミッタ電圧の温度依存性による前記基準電圧の温度依存性を補正する。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、第1及び第2バイポーラトランジスタに定電流を供給するカレントミラー回路において、第1及び第2電流供給端において流す定電流に応じた電流を、第1バイポーラトランジスタのコレクタに補正用の電流として供給する。このカレントミラー回路からの補正用の電流によって定電流の温度特性カーブを変化させ、温度依存性を有する第1バイポーラトランジスタのベースエミッタ電圧の温度依存性を低減する。このような補正機能をカレントミラー回路に所定電流の電流供給端を設けるという簡易な構成によって、精度の良い温度依存性の補正が実現できる。
【0027】
また、第1及び第2バイポーラトランジスタとして、例えば、MOSプロセスで作成されたバイポーラトランジスタを採用し、ベース電流IB1,IB2の温度依存性を無視できない場合であっても、カレントミラー回路からの補正用電流により、ベース電流の温度依存性性を考慮し、基準電圧の温度依存性を低減することができる。
【0028】
また、この補正用の電流は、共通のカレントミラー回路を用いて作成すれば、基準電圧発生回路毎の特性ばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図1は本実施形態に係るバンドギャップ電圧を利用した基準電圧発生回路の構成を示す。NPN型バイポーラトランジスタQ1と、該バイポーラトランジスタQ1に対してK倍の電流を流すNPN型パイポーラトランジスタQ2を備える点は図8と共通する。
【0031】
一方、このQ1及びQ2に定電流を供給するためのカレントミラー回路10は、P型MOSトランジスタM1及びM2を備えると共に、さらに同じ導電型のP型MOSトランジスタM3を備える。トランジスタM2はゲートドレインが短絡され、このトランジスタM2のゲートに、トランジスタM1のゲート及びトランジスタM3のゲートが接続され、トランジスタM1,M2,M3のいずれもソース側が同一の電源Vddに接続されている。したがって、トランジスタM2が流す定電流I1と等しい電流I1をトランジスタM1が流し、また、トランジスタM3は、I1に対応した電流I2を流す。このI2の電流量は、トランジスタM3のトランジスタサイズ(チャネル幅)Wによって変更可能であり、I2=A*I1が成り立つ。
【0032】
トランジスタM1のドレイン(第1電流供給端)には、基準電圧出力端子VREFと、抵抗R1の一端とが接続され、この抵抗R1の他端には、抵抗2の一端が接続されている。また、Q1のコレクタが該抵抗2の他端に接続され、Q1のベースは、上記抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続されており、Q1のベースとコレクタとは、抵抗R2を介して互いに接続されている。なお、Q1及びQ2のエミッタは接地されている。
【0033】
トランジスタM2のドレイン(第2電流供給端)はトランジスタQ2のコレクタに接続され、このQ2のベースは、上記Q1のコレクタに接続されている。
【0034】
一方、トランジスタM3のドレイン(第3電流供給端)は、上記トランジスタQ2のベース及びトランジスタQ1のコレクタに接続され、トランジスタQ1のコレクタ及びトランジスタQ2のベースに対し、補正用電流として、I1に対応した(A*I1)電流I2を供給する。なお、Aは、0より大きい正の実数である。
【0035】
このトランジスタM3を含むカレントミラー回路10は、トランジスタM1,M2,M3の相対精度で動作し、1つのカレントミラー回路の流す定電流を別のカレントミラー回路によってコピーする場合と異なり、異なるカレントミラー回路同士の相対ばらつきがなく、かつゲートが共通接続されたM3を増設するだけという簡易な構成によって実現できる。したがって、基準電圧発生回路毎の特性のばらつきなく、基準電圧の温度依存性を低減できる。
【0036】
以下、図1に示す基準電圧発生回路の動作原理について説明する。まず、この回路のVREF,IB1,IB2は以下の式(7)’,(8)’,(9)’で表すことができる。
【数3】

【0037】
また、I1については、ΔVBEから、下式(10)’で表すことができる。
【数4】

【0038】
直流電流の増幅率HFEが、一般的なバイポーラ特性にしたがって低電流領域では温度の上昇に比例して増加し、また、電流IC1の増加に対しても増加する場合、上記式(10)’の第1項IB1と温度とは、図2に示すような関係となる。図2ではI2をそれぞれ変更したときの温度電流特性を示しており、温度電流特性は、I2が増加するほど下に凸の二次曲線成分が増加している。
【0039】
また、式(10)’の第2項に関しては、抵抗R2に流れる電流IR2の温度特性は、図3に示すようになる。図3において、I2が増加するほど上に凸な二次曲線成分が減少している。
【0040】
図4は、上記式(10)’に示すような第1項と第2項の和で表される電流I1の温度特性を示している。図4において電流I1の温度特性は、電流I2が増加すると正の曲率が大きくなっており、以上のことから、電流I2を任意に選択することで、電流I1の正の二次曲率成分を変化させられることが理解できる。ここで、VREFは下式(11)
REF=VBE1+R11 ・・・(11)
で示され、その第1項VBE1の負の二次曲率成分を、第2項の電流I1の正の二次曲率成分でキャンセルすることができ、結果として、温度変化に対する基準電圧VREFの変化を低くすることができる。なお、一次直線成分については、抵抗R1とR2の抵抗比によって調整することができる。
【0041】
図5は、本実施形態に係る基準電圧発生回路の基準電圧VREFの温度特性の例を示す。図5の結果において、VREFのピーク−ピーク間の電圧差は、0.8mV程度であり(VREFp-p≒0.8mV(−20℃〜125℃))、図9に示したような電流I2による補正を行わない場合のVREFp-p≒12mVと比較しても、1/10以下と、著しい温度特性の改善が実現されることが理解できる。
【0042】
ここで、図5では、カレントミラー回路10のトランジスタM3のチャネル幅Wの設定により、I1に対し、I2=0.8I1にした。I1に対するI2の値は、基準電圧発生回路の特性に応じ、要求温度範囲内(例えば−40℃〜125℃の範囲や、−20℃〜125℃)で、VREFの温度変化に対するピーク−ピーク間(VREFp−p)が最小となる値を選択することが好適である。
【0043】
図6は、本実施形態の基準電圧発生回路において、I2を変化させたときのVREFの変化の様子を示している。この例では、図6(b)において、I2=A*I1の条件の時が温度変化に対するVREFのp−pが最も小さく、図6(a)は、I2<A*I1の時のVREFの温度変化、図6(c)は、I2>A*I1の時のVREFの温度変化をそれぞれ示している。I2>0で、I2を増加させていくと、図6(a)のように最適値よりも小さい電流I2値の範囲では、VREFの温度特性の上に凸な特性曲線の曲線が小さくなり、VREFp−pは小さくなっていく。さらにI2を増加させ、図6(b)のようにI2=A*I1となると、VREFp−pは最小となる。ここで、I2を用いた補正電流カーブによっては、完全にVBE1の非直線成分を補正することはできないため、VREF特性は図6(b)に示すように変曲点を持つ曲線となる。しかし、上述のように、VREFp−pは一例として従来の1/10以下であり、このようなI2をトランジスタM3からトランジスタQ1のコレクタに供給する電流として選択することにより、温度依存性の著しい改善が図られる。I2をさらに増加させ、I2>A*I1とするとVREFは、下に凸の曲線となり、VREFp−pは大きくなっていく。
【0044】
以上のことから、I2の選択に際しては、VREFp−pが最小となる条件を採用すれば温度依存性を最も小さくすることができる。但し、図6(a)〜図6(c)のいずれのVREFp−pについても、I2=0、つまり補正しない従来の基準電圧発生回路の値よりも半分以上小さい。
【0045】
したがって、バンドギャップ電圧を発生するトランジスタQ2,Q1を、HFEが小さくIBが無視できない微小MOSプロセスにて作成した基準電圧発生回路においても、IBの温度特性を、M2にミラー接続(ベースが共通接続)されたM3の流す補正電流I2によって補正することができる。したがって、簡易、かつ回路毎のばらつきの小さい構成によって、基準電圧発生回路の温度依存性を著しく低減することができる。
【0046】
図7は、本実施形態の基準電圧発生回路の他の回路構成の例を示す。図1と相違する点は、バンドギャップ電圧を発生するトランジスタQ1,Q2をPNP型トランジスタとして高圧側電源Vddとカレントミラー回路12との間に設け、このカレントミラー回路のトランジスタM1〜M3として、ソース側がグランドなどの低圧側電源に接続されたN型MOSトランジスタを採用する点である。また、後述する理由から、この構成の場合には、カレントミラー回路のトランジスタM3の流す電流I2をミラーし、トランジスタQ1のコレクタに供給するカレントミラー回路14を備える。このカレントミラー回路14は、ゲートが共通接続されたp型MOSトランジスタM4,M5を備え、トランジスタM4は、電源Vddにソースが接続され、ドレイン・ゲートが短絡され、ゲートがトランジスタM3のドレイン側に接続されている。トランジスタM5は、M4と同じ電流I2をM5のドレインに接続されたトランジスタQ1のコレクタに供給する。
【0047】
なお、カレントミラー回路のトランジスタM2が流す定電流I1が、トランジスタQ2のコレクタに流れ、同じくトランジスタM1が流す定電流I1が、トランジスタQ1のコレクタ、抵抗R2,R1を介して流れる。そして、I1に応じてトランジスタM3の流す電流I2をミラーした電流I2’がトランジスタQ1のコレクタに供給される。
【0048】
図7の回路においてVREFは以下の式(12)で示される。
REF=Vdd−VBE1−R11 ・・・(12)
【0049】
電流I1は、上記式(10)’で与えられるため、トランジスタQ1のコレクタ側からI2を直接トランジスタM3によって流し出した場合、I2の増加に伴って下に凸の二次曲線成分が増加する。しかし、上記(12)式に示すVBE1は、このとき下に凸の二次曲線成分を持つ。したがって、トランジスタQ1,Q2の極性を逆にした回路構成の場合には、図7に示すように別途カレントミラー回路14を設けてI2に応じた電流I2’をトランジスタQ1のコレクタに供給することで温度依存性を低減することができる。但し、カレントミラー回路12とは別のカレントミラー回路14を必要とするため、回路毎の特性ばらつきが発生することとなるが、微細なMOSプロセスを用いたバイポーラトランジスタを利用した簡易な基準電圧発生回路における温度依存性の補償は達成される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る基準電圧発生回路の構成を説明する回路図である。
【図2】図1に示す回路における電流IB1の温度特性を示す図である。
【図3】図1に示す回路におけるIR2の温度特性を示す図である。
【図4】図1に示す回路における電流I1の温度特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る基準電圧発生回路で得られる基準電圧の温度特性を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る基準電圧発生回路の温度特性と補正電流I2との関係を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る基準電圧発生回路の構成例を説明する回路図である。
【図8】従来の基準電圧発生回路の構成を説明する回路図である。
【図9】図8の回路の基準電圧の温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10,12 カレントミラー回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バイポーラトランジスタ及び第2バイポーラトランジスタと、
前記第1バイポーラトランジスタ及び第2バイポーラトランジスタに定電流を供給するカレントミラー回路と、を備え、
前記第1バイポーラトランジスタのベースは、第1抵抗を介して前記カレントミラー回路の第1電流供給側に接続され、該第1バイポーラトランジスタのコレクタは、第2抵抗を介して前記ベースに接続され、
前記第2バイポーラトランジスタのペースは前記第1バイポーラトランジスタのコレクタに接続され、該第2バイポーラトランジスタのコレクタは、前記カレントミラー回路の第2電流供給側に接続され、
前記第1抵抗と、前記カレントミラー回路の前記第1電流出力側との接続端に、基準電圧を出力する出力端子が設けられ、
前記カレントミラー回路の第3電流供給側は、前記第1バイポーラトランジスタのコレクタに接続され、前記カレントミラー回路の第3電流供給側に得られる電流によって、前記基準電圧の温度依存性を補正することを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項2】
請求項1に記載の基準電圧発生回路において、
前記カレントミラー回路は、MOSトランジスタによって構成され、
ゲートドレイン間が短絡接続され、前記第2バイポーラトランジスタに第1電流を流す第1MOSトランジスタと、該第1MOSトランジスタにゲートが共通接続された第2MOSトランジスタ及び第3MOSトランジスタを備え、
前記第2MOSトランジスタは、前記第1MOSトランジスタと等しい前記第1電流を流し、
前記第3MOSトランジスタは、前記第1バイポーラトランジスタのベースエミッタ電圧の温度依存性に応じ、前記第1電流のA倍の第2電流(Aは0より大きい正の実数)を前記第1バイポーラトランジスタのコレクタに流すことを特徴とする基準電圧発生回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の基準電圧発生回路において、
前記第2バイポーラトランジスタは、前記第1バイポーラトランジスタのK倍のエミッタ電流を流し、
前記第2電流によって、前記第1バイポーラトランジスタのベースエミッタ電圧の温度依存性による前記基準電圧の温度依存性を補正することを特徴とする基準電圧発生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−87010(P2009−87010A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255761(P2007−255761)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】