説明

基礎施工機

【課題】リーダとラック材との関連構成を改良しただけの極めて簡易な構造変更により、安価な改良コストにて、基礎施工時にリーダに作用し得る偏心モーメントを効果的に抑止することのできる基礎施工機を提供すること。
【解決手段】ベースマシン1に立設されたリーダ2の軸線方向に沿って、該リーダ2の側面21,21に一対のラック材30,30が固定され、少なくともオーガを含む駆動装置4を備えた昇降機5がラック材30,30に昇降自在に支持されており、昇降機5は、ラック材30,30のそれぞれに刻設されたラック歯31,31に、その駆動軸が直接的に、もしくはピニオンギアを介して間接的に噛み合いながら回転駆動する一対の第1、第2の回転機10,10と、駆動装置4を構成する単数もしくは複数の第3の回転機20,20と、を少なくとも具備している基礎施工機100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種基礎工事に用いられる基礎施工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭基礎の施工において、たとえば鋼管杭等の既製杭を地盤に回転圧入したり、スクリューロッドで地盤を掘削する場合には、油圧モータと、この油圧モータの回転を減速する減速機と、からなる(オーガ)駆動装置を、ベースマシンのリーダに沿って昇降自在に装備してなる杭施工機等の基礎施工機が使用される。
【0003】
上記する基礎施工機の昇降機の昇降機構の一例を挙げると、ベースマシン前方に立設されたリーダに、オーガなどの駆動装置を備えた昇降機を、該リーダのガイドレールに沿って昇降自在に配設し、昇降機に設けたドライブスプロケットと、該ドライブスプロケットの上下に配置されたガイドローラとの間にたとえばチェーンを挟持して、ドライブスプロケットの複数枚の歯にチェーンを噛み合いさせ、油圧モータにてドライブスプロケットを駆動して昇降機を昇降させるような機構がある。
【0004】
一本の杭基礎を対象地盤に圧入する施工方法を取上げて説明すると、対象地盤の地盤性状、例えば地盤の硬さや礫分の有無、砂質地盤、粘性地盤等の地質の相違などに応じて、施工深度レベルで圧入時のトルクや回転数を調整しながら基礎施工が実施される。たとえば、支持地盤以浅の比較的軟弱な地盤においては駆動装置の設定トルクを低く抑え、回転数を高く設定した姿勢で杭を圧入し、支持地盤に到達した時点でトルクを増大させ、回転数を減じて杭の最終圧入をおこなうことになる。
【0005】
ここで、従来の基礎施工機として、特許文献1に開示の基礎工事用施工機を挙げることができる。本特許文献に開示の技術は、特に基礎工事用施工機の昇降装置に特徴があるものであり、その図3,4を参照することによってその特徴が明りょうに理解できる。
【0006】
すなわち、その図3より、断面が円形のリーダ3の一箇所に、該リーダ3に沿って伸びるラック板7が固設され、このラック板7の両側に刻設されたラック歯7aに沿って、2つの油圧モータ16,16の駆動軸に固設されたピニオンギア11,11が噛み合いながら回転駆動することにより、該油圧モータ16,16を搭載した昇降機9が昇降可能となっているものである。この昇降機9にはオーガ等の作業装置8が配設されており、昇降機9の降下と作業装置8の駆動が調整制御されることで、鋼管杭や鋼矢板等の圧入等の基礎施工が実施される。
【0007】
しかし、特許文献1の図3から明らかなように、従来の基礎施工機では、立設するリーダの一箇所に固設されて該リーダに沿って伸びる一条のラック板を2つの油圧モータの回転軸に固設された一対のピニオンギアが噛み合いながら回転駆動する。そのため、本願明細書の図3で模式的に説明するように、このリーダ3には、その一方側(2つの油圧モータ16側)へ、該2つの油圧モータ16の駆動および昇降に伴う偏心モーメントM(もしくは転倒モーメント)が作用し、結果として、昇降機9の昇降の際にリーダが振動すること(作業時の安全性低下)、偏心モーメントMを受け続けることでリーダ3の耐久期間が短くなってしまうこと、リーダ3をバックステー等を介して支持するベースマシンの施工時安全性を低下させること、リーダ3の振動に伴って施工杭等の施工精度が低下すること、などの様々な問題が生じていた。
【0008】
【特許文献1】特公平6−78617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、基礎施工機の特にリーダとラック材との構造(相互の関連構成)に改良を加えることにより、上記する様々な課題、すなわち、リーダには、昇降機の昇降の際にリーダに偏心モーメントが作用してリーダが振動し、作業時の安全性が低下すること、偏心モーメントを受け続けることでリーダの耐久期間が短くなること、リーダをバックステー等を介して支持するベースマシンの施工時安全性が低下すること、リーダの振動に伴って施工杭等の施工精度が低下すること、といった課題の全てを効果的に解消することのできる基礎施工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による基礎施工機は、ベースマシンに立設されたリーダの軸線方向に沿って、該リーダの側面に一対のラック材が固定され、少なくともオーガを含む駆動装置を備えた昇降機が該一対のラック材に昇降自在に支持されてなる、基礎施工機であって、前記昇降機は、前記一対のラック材のそれぞれに刻設されたラック歯に、その駆動軸が直接的に、もしくはピニオンを介して噛み合いながら該一対のラック材に沿って回転駆動する一対の第1、第2の回転機と、前記駆動装置を構成する単数もしくは複数の第3の回転機と、を具備しているものである。なお、ここで、「少なくともオーガを含む駆動装置」とは、該駆動装置が、オーガやハンマなどの、基礎杭をはじめとする各種基礎施工で適用される駆動源の全般を包含するものである。
【0011】
本発明の基礎施工機は、鋼管杭やPHC杭などの既製杭を回転圧入することによって杭基礎を地盤内に立て込んだり、スクリューロッドを回転圧入しながらその先端付近からセメントミルクを吐出し、切削地盤とセメントミルクを混合攪拌することによってセメント杭を造成する基礎施工の全般に適用されるものである。
【0012】
例えば走行手段であるクローラと、その上方において、バックステーにて支持されたリーダを旋回可能に備えた旋回部とからなるベースマシンから基礎施工機は構成される。
【0013】
このリーダの側面には、一対のラック材が固定されている。ここで、このリーダは、その断面が円形、楕円形、正方形、矩形等のいずれの断面外形を有するものであってもよいが、いずれの形状であれ、対向する一対のラック材(したがって、2つの対向するラック材)をその対向側面に固設しているものである。これは、上記する特許文献1に開示のリーダとその一箇所に設けられたラック板との関連構成と大きく相違している。
【0014】
たとえば、外形が正方形のリーダ(たとえば、平鋼4枚で形成されていてもよいし、H型鋼の両フランジ端部間に2枚の平鋼を固設して外形が正方形に形成されていてもよい)の2組の一対の側面のうち、一組の一対の側面の双方において、リーダに沿って伸びるとともにラック歯が刻設されたラック材を溶接や溶着、ボルト等で固定しておく。
【0015】
昇降機には、少なくとも、上記する2つのラック材のそれぞれのラック歯と噛み合いながら回転駆動する第1、第2の回転機(たとえば油圧モータ)と、オーガ等の駆動装置を構成する第3の回転機(たとえば、2つの油圧モータと減速機とのユニットからなるオーガ)が配設されている。実際には、ラック材(およびリーダ)の立設方向(長手方向で一般的には鉛直方向)に直交する方向(したがって、一般的には水平方向)に、該ラック材のラック歯に噛み合い駆動する第1、第2の回転機の駆動軸が伸びており、この駆動軸が直接的に、もしくは、該駆動軸に固設されたピニオンギアを介して間接的にラック歯と噛み合い係合している。
【0016】
一方、駆動装置を構成するたとえば2つの第3の回転機の駆動軸は、リーダやラック材等の立設方向に平行な方向(したがって、一般的には鉛直方向)に伸びており、たとえば、2つの油圧モータと、それぞれの油圧モータに噛み合い係合する減速機とからなるオーガの場合には、双方の油圧モータの回転制御によって減速機の回転数やトルクが制御され、昇降機の降下と、該減速機の回転数や回転トルクとが相俟って、基礎杭等がその深度に応じた回転数、回転トルクにて圧入されるようになっている。
【0017】
本発明の基礎施工機によれば、リーダの対向する一対の側面のそれぞれにラック材を固設し、昇降機に搭載された回転機を直接的に、もしくはピニオンギア等を介して間接的にそれぞれのラック材に噛み合い係合させ、この姿勢で2つの回転機が同期して対応するラック材に沿って昇降できるようにしただけの極めて簡易な構造変更により、従来の基礎施工機を構成するリーダで生じていた、昇降機の昇降の際の偏心モーメントの発生を効果的に抑止することができる。したがって、その構造改良に何等のコスト増を齎すことなく、基礎施工時のリーダの振動とそれに伴うベースマシンの安定性の低下、それらに起因する施工時安全性の低下と、リーダの耐久期間の短期化といった既述する課題の全てを、効果的に解消することができるものである。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から理解できるように、本発明の基礎施工機によれば、リーダとラック材との関連構成を改良しただけの極めて簡易な構造変更により、安価な改良コストにて、基礎施工時にリーダに作用し得る偏心モーメントを効果的に抑止することができ、リーダの耐久期間の長期化を図ることができ、ベースマシン(基礎施工機)の施工時安定性を向上させることができ、基礎施工時の施工精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例では、リーダの外形断面が正方形もしくは矩形を呈しているが、リーダ断面はこれに限定されるものではなく、円形や楕円形などであってもよい。たとえば断面円形のリーダの場合には、その直径上の対向側面位置に一対のラック材が固設されるものである。
【0020】
図1は、本発明の杭施工機の側面図であり、図2は、オーガ駆動装置とリーダおよびラック材の関連構成を説明した横断面図である。図1で示すように、本発明の基礎施工機100は、クローラとその上方においてバックステー1aにて支持されたリーダ2を旋回可能に備えた旋回部とからなるベースマシン1と、このリーダ2に固設されたラック材30,30に昇降自在に装着されたオーガ駆動装置4を搭載する昇降機5と、から大略構成されている。
【0021】
オーガ駆動装置4は、たとえば出力性能が同一な2基の第3の回転機20,20(油圧モータ)の各出力軸(の歯車)が減速機20Aの歯車と噛み合い係合しており、減速機20Aの下方に突出した出力軸に既製杭(図示する鋼管S)やスクリューロッドと連結される把持装置40が装着されて構成されている。これらの油圧モータ20,20、減速機20Aは鋼製桁と鋼製プレートとからなる鋼製架構60にて一体とされ、この鋼製架構60が昇降機5に連結固着されている。
【0022】
昇降機5にはさらに、オーガ駆動装置4に加えて、出力性能が同一な2基の第1、第2の回転機10,10(油圧モータ)が搭載されており、この油圧モータ10の駆動軸10aには、ピニオンギア10bが固設されている。
【0023】
一方、リーダ2は、その外形断面が正方形もしくは矩形を呈しており、その対向する一対の側面21,21に、該リーダ2に沿って伸びるとともに、ラック歯31,…を具備する鋼製のラック材30,30が固設されている。
【0024】
第1、第2の油圧モータ10,10に装着されたそれぞれのピニオンギア10b、10bは、対応するそれぞれのラック材30,30のラック歯31,…と噛み合い係合しており、双方の油圧モータ10,10が同期して回転駆動することにより、リーダ2の側面21,21を沿うようにして、ピニオンギア10b、10bが回転しながら昇降機5が昇降自在となっている。また、この回転軸10aやピニオンギア10bの下方位置であって、昇降機5を一体に組み付ける鋼製架構60には、ラック材30にスライド自在なオーガ用ガイド50が設けられており、昇降機5のラック材30,30へのより堅固な取り付けと安定した昇降を担保できるようになっている。なお、図示例以外にも、油圧モータ10,10の駆動軸10a,10aが直接的にラック材30,30のラック歯31,…に噛み合い係合している形態であってもよい。
【0025】
既述する特許文献1に開示の従来のリーダおよび昇降機に搭載された油圧モータとの関連構成と、図1,2で示す本発明の基礎施工機100における昇降機5およびリーダ2(の両側のラック材30,30)との関連構成を比較するとより明りょうとなるが、本発明の関連構成によれば、リーダ2の対向する側面21,21に沿って油圧モータ10,10の駆動軸10a,10aが同期して回転駆動しながら昇降機5の昇降が実行されることで、該昇降機5の昇降時に、リーダ2に偏心モーメントが作用することが効果的に抑止される。しかも、本発明の上記関連構成は、リーダ2の対向側面21,21に一対のラック材30,30を設け、これに昇降機5を昇降させる回転機10,10の駆動軸10a,10aを直接的に、もしくは間接的に噛み合い係合させただけの極めて簡易な構造変更によるものであるため、極めて低コストで本改良構成を製作することができるものである。
【0026】
また、本発明の基礎施工機100によれば、基礎杭等の施工の際にリーダ2に偏心モーメントが作用しない、もしくはほとんど作用しないことから、この偏心モーメントに起因してリーダ2が振動することが抑止され、したがって、該基礎杭等を直接把持して駆動する駆動装置4を昇降させる昇降機5の振動も同様に抑止される結果、施工杭等の高い施工精度を担保することができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の杭施工機の側面図である。
【図2】オーガ駆動装置とリーダおよびラック材の関連構成を説明した横断面図である。
【図3】従来の杭施工機のリーダに油圧モータ側に偏心モーメントが作用している状況を説明した模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1…ベースマシン、1a…バックステー、2…リーダ、21…スプロケット、30…ラック材、31…ラック歯、4…オーガ駆動装置、5…昇降機、10…第1、第2の回転機(油圧モータ)、10a…駆動軸、10b…ピニオンギア、20…第3の油圧モータ、20A…減速機、40…把持装置、100…基礎施工機、S…鋼管杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに立設されたリーダの軸線方向に沿って、該リーダの側面に一対のラック材が固定され、少なくともオーガを含む駆動装置を備えた昇降機が該一対のラック材に昇降自在に支持されてなる、基礎施工機であって、
前記昇降機は、前記一対のラック材のそれぞれに刻設されたラック歯に、その駆動軸が直接的に、もしくはピニオンギアを介して間接的に噛み合いながら該一対のラック材に沿って回転駆動する一対の第1、第2の回転機と、前記駆動装置を構成する単数もしくは複数の第3の回転機と、を少なくとも具備している、基礎施工機。
【請求項2】
前記リーダは、その外形が正方形もしくは矩形を呈しており、該正方形もしくは矩形のうちの対向する一対の側面のそれぞれに前記ラック材が固定されている、請求項1に記載の基礎施工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138553(P2010−138553A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313536(P2008−313536)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(593157758)株式会社エーコー (8)
【出願人】(595018916)株式会社シロタ (5)
【Fターム(参考)】