説明

基礎杭の施工方法及び該工法に用いる中空杭内周壁の洗浄装置

【課題】比較的簡単かつ低コストで杭頭部を強化できる基礎杭の施工方法及びこれに用いる洗浄装置を提供する。
【解決手段】中空の既製杭を使用した既知の各種埋込み杭工法により,掘削孔40内にセメントミルクの充填された中空杭30を建て込む。そして,中空杭30の中空空間32内に存在するスライムやセメントミルク等の不要物を,除去容器10等を使用して任意の深さ迄除去し,不要物除去後の中空杭30の内周壁を洗浄した後,充填・硬化材の充填下限位置に杭内蓋体74を配置して,この杭内蓋体74上に充填・硬化材を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は杭基礎等における基礎杭の施工方法に関し,より詳細には,中空の既製杭を使用した埋込み杭工法において,基礎杭の杭頭部(本明細書に於いて,「杭頭」は,杭の頂部及び頂部近傍を,「杭頭部」を杭頭の内部及び杭頭上の掘削孔内の空間を含む概念として用い,両者を含めて単に,「杭頭部」ともいう。)から中空杭の任意の所望の深さ迄の範囲を強化し,杭全体を強化可能な基礎杭の施工方法及び該工法に用いる中空杭内の内周壁の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋,集合住宅,その他の構造物の基礎工法において,支持層の深さにまで達する基礎杭を設け,この基礎杭の杭頭上に構造物の基礎を形成する杭基礎工法が,例えば軟弱地盤,液状化地盤等に構造物を構築する際に広く用いられている。
【0003】
このような杭基礎における基礎杭の施工方法の一例として,中空の既製杭を使用した埋込み杭工法では,アースオーガ等の掘削機で形成された掘削孔内に,根固め液,周辺固定液としてセメントミルクを注入した後に,鋼管やコンクリート製の中空杭を建て込み,又は掘削孔内に中空杭を建て込んだ後,杭の中空孔を介してセメントミルクを根固め液として注入することにより,支持層に対する根固め,拡大球根の造成,周辺地盤と中空杭との一体化が行われている。
【0004】
そして,このようにして製造された基礎杭上には,前述したように構造物の基礎部分が形成されると共に,この基礎部分が杭頭部に接合されている。
【0005】
このような杭基礎の構造において,基礎杭の頭部とその上に形成される構造物の基礎部分とは,前述したように一般に接合されていることから,例えば地震等による揺れが生じたときに,基礎杭の杭頭及び杭全体が,当該基礎杭が埋設された地中地盤と上部構造物を支える基礎部分と一体の動きをするため,上部構造物から伝達される水平力や回転力によって杭頭付近に大きな曲げモーメントや剪断力等が集中する。
【0006】
特に,軟弱地盤や液状化地盤では,地震等が生じると地盤変位がより大きなものとなるために杭頭部付近に発生する剪断力や曲げモーメントはさらに大きいものとなる。
【0007】
このように,上部構造物と基礎杭を含む地中地盤とが同期して一体の動きをすることにより生じる杭頭部の曲げモーメントや剪断力に抗するために,使用する既製杭として大径のものを使用したり,または,設置する杭の本数を増やしたりすることも考えられるが,この方法では,杭基礎の施工コストが高くなる。
【0008】
なお,杭頭部を強化する方法としては,杭全体を大径とするのではなく,杭頭部から所定の深さまでを他の部分に比較して大径に形成して水平抵抗を満足させたものや(特許文献1参照),杭頭部から所定の深さに至る杭の外周に鋼管を巻き付けて補強することが提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
また,杭内の清掃に関しては,セメントミルク固化前に杭径内部に注水し,ショベルでセメントミルク及び残土を排除する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開2004−132047号公報(0006欄,図1)
【特許文献2】特開平 10−131176号公報(0002欄,図8)
【特許文献3】特開平 5−230831号公報(0008欄,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように,基礎杭の杭頭部分を他の部分に比較して大径に形成することにより,又は,杭頭部分を鋼管等で補強することにより,使用する杭全体を大径とする場合や,使用する杭の本数を増加する場合に比較して,杭基礎の施工コストを低減させることができる。
【0012】
しかし,基礎杭の杭頭部分を他の部分に比較して大径に形成するために,特許文献1に記載の発明では,杭頭位置付近に大径部を有する杭穴を掘削し,掘削孔に中空杭を建て込んだ後,前記杭穴の大径部に充填固化材を充填するという作業を必要とし,通常の埋込み杭工法に比較して作業工数の増加と,使用材料の増加を伴う。
【0013】
杭頭部に鋼管等を巻き付けて補強する特許文献2に記載の工法にあっても同様で,杭頭部に鋼管を巻き付けるために杭頭部の外周を掘り下げ,鋼管を巻き付けた後に再度埋め戻す作業が必要である等,作業工数の増加と,鋼管等の使用材料の増加を伴う。
【0014】
そのため,杭基礎を施工するために必要な工期が長期化すると共に,施工コストが嵩むものとなる。
【0015】
なお,掘削孔内にセメントミルクを充填すると,掘削孔内に残ったスライム等が比重差によって浮き上がる。そのため,中空杭の中空空間のうち,杭頭部分にあってはスライム又はスライムを多量に含むセメントミルクが存在することとなり,これをそのまま硬化させることとなるが,これらは,杭の強度,剛性には何ら寄与しない。
【0016】
また,特許文献3に開示される手段では,単にセメントミルクを固化させないだけであり,杭内周壁に付着ないし一部固化付着した不要物の除去は,困難である。
【0017】
本発明は,上記従来技術の欠点を解消するために成されたものであり,中空杭を使用した埋込み杭工法の作業工程中において,比較的簡単かつ低コストで杭の高強度化に貢献しないスライムやスライムが混入したセメントミルクを除去することができると共に,杭頭部を強化し,杭に高強度,高剛性を付与して中空杭の肉厚を減少し,あるいはその杭径が小さいものを選択することができるなどコストダウンを図ることもできる基礎杭の施工方法,及び前記杭基礎の施工方法に用いる中空杭内周壁の洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために,本発明の基礎杭の施工方法は,中空の既製杭を使用した埋込み杭工法において,掘削孔40内に建て込んだ中空杭30の中空空間32内に存在するスライムやセメントミルク等から成る不要物が液状又はゲル状にあるときに,杭頭部31から,杭全体に及ぼす強化の度合いに対応した任意の深さ,必要に応じて杭底部あるいはその近傍に達する範囲迄の前記中空空間32内に除去容器を挿入し,前記中空空間内の前記不要物を前記除去容器内に収容すると共にこれを外部に排出除去する工程と,
前記中空空間32内の中空杭30内周壁を洗浄する工程と,
前記中空杭30内に充填・硬化材を充填する工程を含むことを特徴とする(請求項1)。
【0019】
前述した基礎杭の施工方法は,前記スライムやセメントミルク等の不要物が除去され,洗浄された中空空間32内の前記充填・硬化材の充填範囲の下限位置に蓋体(杭内蓋体74)を配置する工程と,前記蓋体上に,前記充填・硬化材を充填する工程とを含むことができ(請求項2),前記充填・硬化材としては,生コンクリート又は高強度モルタルを含むモルタルを使用することができる(請求項3)。
【0020】
さらに,前記中空空間内に前記充填・硬化材として例えば,モルタルを充填し,前記中空杭30内に,該中空杭30の内径より小径の外径を有し,前記中空杭30頂部に上端が略達する長さの中子杭を挿入すれば,より一層の杭の強化を図ることが出来る(請求項4)。
【0021】
また,本発明に係る基礎杭の施工方法に用いる洗浄装置20は,前記中空杭30内に挿入可能な外径を有する天板(上部ケーシング22)及び底板(下部ケーシング23)間を複数の支持板25により所定の間隙を介して上下に連結し,前記支持板25により画成される複数の噴射室27を形成すると共に,一端をスクリューロッド18内の中空部に連通し,他端を前記噴射室27に臨ませて成る洗浄水の導入路28を備えることを特徴とする(請求項5)。
【0022】
上記洗浄装置20の構成において,前記底板(下部ケーシング23)を,中心部に下方に膨出する膨出部24を備えた円板状としても良い(請求項6)。
【0023】
さらに,洗浄装置20が中空杭30の中空空間32内を昇降及び/又は回転するとき,少なくともその先端が前記中空杭内周壁と摺接する払拭体26,図示の例では一例としてワイヤを束ねて直径20〜25mm程度の円柱状にした払拭体26の基端部を,洗浄装置20の側部や前記底板23の下面,前記天板の上面等に,揺動可能に,好ましくは着脱自在に取り付けた構成とすることもできる(請求項7)。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した本発明の構成により,本発明の基礎杭の施工方法によれば,従来技術にはない以下の顕著な効果を得ることができた。
【0025】
強化すべき杭頭部31を含む中空杭30の中空空間32内より,スライムや,スライムを含むセメントミルク等の不要物を,これらの不要物が硬化する前の液状ないしはゲル状にあるときに除去し,これらを除去した後の中空空間32内に,充填・硬化材としてセメントミルクに比較して硬化後の強度が高い生コンクリート又はモルタル,好ましくは,高強度モルタル等の充填・硬化材を充填し,あるいは例えば,モルタルを充填した中空杭30内に中子杭(図示せず)を挿入することにより,杭頭部31ないし,中空杭30全体を容易かつ,低コストで強化することができた。
【0026】
特に,スライムやセメントミルク等の不要物を除去した後に,中空杭30の内周壁を洗浄して付着物を除去したことで,中空杭30の内周壁に対する充填・硬化材の付着性を向上させることができ,中空杭30と充填・硬化材,又は中空杭30と中子杭とを容易に一体化させて杭頭部あるいは杭全体の強度を容易に向上させることができた。
【0027】
しかも,不要物が除去され,洗浄が行われた中空空間32であって,充填・硬化材の充填範囲の下限位置に杭内蓋体74を配置したことで,充填・硬化材としてセメントミルクや洗浄水に比較して比重の大きい生コンクリート又はモルタル,好ましくは,高強度モルタルあるいは中子杭を,中空杭30内より除去していないセメントミルクや洗浄水中に沈降させることなく杭頭部31ないし,中空杭30全体を強化すべく硬化させることができた。
【0028】
前述した構成の洗浄装置20にあっては,これを例えばアースオーガ等の掘削機のスクリューロッド18先端に取り付けて中空杭30の中空空間32内に挿入し,前記スクリューロッド18を介して洗浄水を供給すると共に,洗浄装置20を中空杭30内で回転及び/又は昇降することで,中空杭30の内周壁に対して洗浄水を噴射して洗浄することができると共に,払拭体26を設けた構成にあっては,この払拭体26の少なくとも先端部が中空杭30の内周壁と摺接して,中空杭30の内周壁に付着したスライムやセメントミルク等の附着物を容易に洗浄することができた。
【0029】
また,このようにして中空杭30の内周壁を洗浄したことにより,中空杭30の内周壁に対する充填・硬化材の付着性が向上し,中空杭30の十分に強度向上を得ることができた。
【0030】
前記洗浄装置20の底板(下部ケーシング23)中心部に,下方に膨出する膨出部24を設けた構成にあっては,スクリューロッド18の中空空間を介して導入された洗浄水を,この膨出部の内側形状によって誘導して噴射することにより効率的に噴射することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0032】
本発明の概要
本発明の基礎杭の施工方法は,中空の既製杭を使用した既知の埋込み杭工法の作業工程中,具体的には中空杭30の建て込み後に,更に以下の作業工程を行うものである。
【0033】
スライムやセメントミルク等の不要物の除去工程
本工程では,中空の既製杭を使用した埋込み杭工法の工程中において,掘削孔40内に建て込んだ中空杭30の中空空間32内に存在するスライムやセメントミルク等の不要物が未だ硬化前の液状又はゲル状にあるときに,所望の杭全体に及ぼす強度向上効果に対応して,杭頭部31から任意の深さ迄の前記中空空間32内の不要物を除去する。
【0034】
なお,この不要物の除去に先立って,杭頭部31が掘削孔40内の所定深さに設けられている場合には,杭頭部31から掘削孔40の上端に至る掘削孔40内に,円筒状の筒矢板60を挿入し,この筒矢板60で囲まれた空間を介して作業を行うことで,掘削孔40の内壁の保護と,中空杭30の中空空間32に対する土砂や泥水の浸入を防止するようにしても良い。
【0035】
杭内周壁の洗浄
この工程では,前述のようにして不要物が除去された後の中空杭30の内周壁を洗浄する工程であり(図20),このように中空杭30の内周壁を洗浄することにより,中空杭30の内周壁に対し,その後に充填される充填・硬化材の付着性が向上し,中空杭30の強度向上が図られる。
【0036】
杭内蓋体(及び補強筋)の配置工程
本工程では,前記スライムやセメントミルク等の不要物が除去され,かつ,杭内周壁の洗浄が完了した中空空間32の前記充填・硬化材の充填範囲の下端位置に杭内蓋体74を配置する(図21)。
【0037】
この杭内蓋体74を配置することにより,この杭内蓋体74の配置位置よりも下方に充填・硬化材が入り込むことを防止することができ,これにより強化を行いたい部分に充填・硬化材を集中的に充填することができ,充填・硬化材の使用量を減らすことが可能である。
【0038】
中空杭30内に,異形鉄筋等によって構成される補強筋33を配置する場合には,不要物の除去,及び内周壁の洗浄が完了した中空杭30の中空空間32内に前記杭内蓋体74と共に補強筋33を配置する。
【0039】
充填・硬化材の充填
本工程では,前記杭内蓋体74上に充填・硬化材として生コンクリート又はモルタル,ここでは,高強度モルタルを充填する(図22)。
【0040】
なお,上記充填・硬化材の充填後,杭頭部31に蓋体を被せて,前記中空杭30の中空空間32内に土砂や泥水等が浸入することを防止しても良く,また,前記筒矢板60を使用する場合には,前記筒矢板60の下端開口を下部蓋体で,及び/又は上端開口を上部蓋体67で被蓋して,中空杭30の中空空間32内に土砂や泥水等が浸入することを防止すると共に,中空杭30の杭頭部31を保護するように構成しても良い(図23(A))。
【0041】
なお,杭頭より補強筋33を突設して杭頭状に形成される構築物の基礎との連結部分(連結用鉄筋33a)とした図示の実施形態にあっては,前記下部蓋体を省略しており,筒矢板60には上部蓋体67のみが設けられている。
【0042】
中子杭の挿入
本発明の他の実施形態において,前述した補強筋33に代え,又は補強筋33と共に,中空杭30内に,この中空杭30とは別の中空杭(中子杭)を挿入し,この中子杭によって前記中空杭を強化するものとしても良い(図示せず)。
【0043】
この場合,先ず,前記杭内蓋体74上における前記中空杭30の中空空間32にモルタル等の充填・硬化材を充填し,ついで,後述中空杭30と同様の杭体で,中空杭30の内径より小径の外径を有し,杭内蓋体74上で前記中空杭頂部に上端が略達する長さの中子杭を前記中空空間32内に挿入する。
【0044】
または,前記杭内蓋体74上の前記中空杭の中空空間32内に中子杭を挿入し,この中子杭の外周と前記中空杭30の内周間,及び,必要に応じて前記中子杭の中空空間内にモルタル等を充填して,中空杭30と中子杭とを一体化させても良い。
【0045】
基礎となる基礎杭の施工方法
前述のように,本発明の基礎杭の施工方法は,中空の既製杭を使用した既知の埋込み杭工法を基礎とし,この埋込み杭工法中において,前記作業工程を更に含めることにより杭頭から所定の深さ迄の杭頭部31の強化を可能としたものであり,掘削孔40内に建て込んだ中空杭30の中空空間32内に,硬化前において除去可能な例えばセメントミルク等の不要物が充填された状態が生じ得るものであれば,既知のいずれの埋込み杭工法を基礎としても良い。
【0046】
例えば,掘削孔40内にセメントミルクを充填後,中空杭30の建て込みを行う場合,セメントミルクの充填前に中空杭30を建て込み,この中空杭30の例えば中空空間32を介してセメントミルクの充填を行う場合等,基礎とする埋込み杭工法の施工手順に拘わりなく,本発明の基礎杭施工方法を適用することができ,また,使用する中空杭30についても,PC杭,PHC杭等のコンクリート製のもの,鋼管等の金属製の杭,その他,SC杭などの鋼管コンクリート杭等,その材質を問わない。
【0047】
使用する機器
本発明の基礎杭の施工方法にあっては,基礎とする既知の埋込み杭工法で使用する機器(例えばアースオーガ等の掘削機等)の他に,これに追加する前述した各工程を実現するための機器を使用する。本実施形態にあっては一例として,下記に示すような機器を使用する。
【0048】
除去容器
除去容器10は,前述したスライムやセメントミルク等の不要物を除去する工程で,中空杭30の中空空間32内より前記不要物を除去するために使用するもので,この除去容器10は,杭頭部31より前記中空杭30の中空空間32内に挿入され,前記空間を被覆可能に形成された除去容器本体11(11a,11b,11c)を有する。
【0049】
図1〜3に示した除去容器10は,ここでは,除去容器本体11を中空杭30の中空空間32内に挿入可能な直径の円筒状に形成しているが,この除去容器10の除去容器本体11部分の径あるいは形状は,図示のように円筒状に限定されず,例えば,使用する既製杭の形状等に対応し,各種の形状に形成することが可能である。
【0050】
この除去容器10の除去容器本体11内には,図2に示すように除去されるスライムやセメントミルク等の不要物を回収するための回収空間12が形成されていると共に,この回収空間12の底部側において,前記不要物をこの除去容器本体11内の回収空間12に導入するための開口13が形成され,更に,この開口13を内側より被蓋する蓋板14が設けられている(図2及び図3参照)。
【0051】
前述の開口13は,除去容器10を杭頭部31の中空空間32内に底部側より挿入した際に,液状ないしはゲル状のスライムやセメントミルク等の不要物を導入可能な位置であればいずれの位置に設けても良く,本実施形態にあっては,有底円筒状に形成された前記除去容器本体11の底面にこの開口を形成している。
【0052】
また,前述の蓋板14は,前記開口13を閉塞可能な大きさを有すると共に,前記不要物の流入圧力によって前記開口13を開放可能と成すように前記回収空間12内に揺動可能に固定されており,図示の実施形態にあっては,その一端を除去容器本体11の底板にヒンジ15により固定して,前記開口13の閉塞時,蓋板14が前記開口13を内部より覆うことにより閉塞すると共に,前記ヒンジ15を支点として揺動することにより,底板上で立ち上がり,前記開口13を開放するように構成されている。
【0053】
なお,図示の実施形態にあっては,この蓋板14を片開きの構成としているが,例えば二枚の蓋板を,所謂「観音開き」となるように取り付けても良く,前述したように前記開口13を閉塞し得ると共に,回収空間12内に流入する不要物の流入圧力によって前記開口13を開放可能な構成であれば,如何なる構成としても良い。
【0054】
図2中,Sはストッパであり,前述の蓋板14の開放時,この蓋板14が,90度未満の開放角度となるように蓋板14の揺動範囲を規制する。
【0055】
例えば図2に示す実施形態において,蓋板14の開放角度が90度を超え,その先端(自由端)が除去容器本体11の内壁と接触する迄揺動すると,蓋板14はこの位置で安定して開口13を被蓋する方向に揺動しなくなるおそれがあるが,図2に示すようにストッパSによって蓋板14の開放角を90度未満の位置(本実施形態にあっては85度)で規制することにより,蓋板14は,不要物の導入時の圧力より開放された時に自重により,または,中空杭の中空空間より抜き取る際の不要物の重量により,確実に開口13側に倒れて開口13を塞ぐ。
【0056】
前記除去容器本体11内の回収空間12は,前記除去容器本体11内に不要物が導入された際に,この不要物の導入量に応じて回収空間12内の空気を排出することができるよう,その上方部分が開放されており,本実施形態にあっては,除去容器本体11を円筒体により構成し,この円筒体である除去容器本体11の上端を開口している。
【0057】
以上のように構成された除去容器本体11の上端には,この除去容器10の吊り下げ等を可能とするための連結部19が設けられている。
【0058】
本実施形態にあっては,円筒体である除去容器本体11の上端開口内に,除去容器本体11の内周間に掛け渡された支持材21を設け,この支持材21に前述の連結部19を設けている。
【0059】
図1,2の実施形態にあっては,前記除去容器本体11の上部開口内周間を直径方向に掛け渡す第1のH型鋼21aと,この第1のH型鋼21aの長さ方向の中央部分と除去容器本体11の内周間に掛け渡された第2及び第3のH型鋼21b,21cによって,平面視において十字状に直交するように前記支持材21を形成し(図1参照),除去容器本体11の上端開口を塞ぐことなく,除去容器本体11上端部の補強と連結部19の取り付けとを可能としている。
【0060】
このように構成された支持材21の中央部分には,前述の連結部19が設けられており,本実施形態にあっては,この連結部19として掘削機のスクリューロッド18のジョイント部に使用されている,六角柱状の継手(オス)を固着している。
【0061】
このように連結部19を設けることにより,スクリューロッド18の先端に設けられた継手(メス)内に前記連結部19を挿入すると共に,スクリューロッド18に設けられた継手(メス)に設けたピン孔と,前記連結具19に設けたピン孔に共に係止ピンを挿入することで,除去容器10を容易にスクリューロッド18の先端に取り付けることができる。
【0062】
なお,除去容器10の構成は,図1〜3を参照して説明した構成に限定されず,各種の変更が可能である。
【0063】
排出補助手段
図4及び5中50は,前記除去容器10と共に組み合わせて使用することにより,前述の除去容器10によって抜き取られたスライムやセメントミルク等の不要物の排出を容易に行うことがでる排出補助手段50である。
【0064】
この排出補助手段50は,前記除去容器10を載置可能と成す基台55と,この基台55上に立設された係合突起56を備え,除去容器10をこの排出補助手段50の基台55上に載置した際に,係合突起56が前記除去容器10の底部に設けた開口13を被蓋する蓋板14を押し上げて,除去容器10内に収容された不要物の排出を行う。
【0065】
なお,除去容器10自体に回収された不要物の排出を容易とするための手段を設ける場合には,このような排出補助手段を別途設ける必要がなく,例えば,除去容器10の蓋板14に,開口の被蓋時,下向きに突出する係合突起を設ける等して,床面や地面上に除去容器を載置した際に,係合突起の下端が地面や床面等との接触により押し上げられて蓋板14が開くように構成しても良い。
【0066】
図示の実施形態において,排出補助手段50は,H型鋼や角パイプ等を2本平行に配置して構成された脚部51,51の上面間に,同様にH型鋼や角パイプ等からなる3本の横架材52,53,54を架設して前記基台55を形成し,この基台55の横架材52,53,54上に前記除去容器10を載置可能として,横架材間(図示の例では横架材53,54間)に形成された間隔により,不要物の排出空間を確保している。
【0067】
この排出補助手段50には,前記係合突起56が正確に前記蓋板14をここでは押し上げることができるように,排出補助手段50に対する除去容器10の載置位置を規制乃至は誘導するための手段を設けることが好ましく,本実施形態にあっては,基台55の上面より4枚の規制片57a〜57dを突出し,この規制片57a〜57dで囲まれた空間内に除去容器10の底部が配置されるように構成している。
【0068】
なお,前記基台55に設けた符号58で示す部材は,吊下リングであり,本実施形態にあっては,この吊下リング58を前記脚部51,51の長さ方向の両端部のそれぞれ上面に固着することにより,ワイヤ等を取り付け可能として,吊り下げ,移動等を容易に行うことができるように構成している。
【0069】
図6(A),(B)は,杭頭部31から地表面までの掘削孔40の高さが,例えば2m以上などと高い場合,あるいは,掘削孔40の地盤が軟弱である場合,杭頭部31の掘削孔地盤から湧水する場合などの施工に好適な筒矢板60に関し,前述の不要物の除去工程から充填・硬化材の充填迄の全工程において,掘削孔40内に挿入されていると共に,前記充填・硬化材の充填後には,この筒矢板60の上下開口のいずれか若しくは双方を被蓋することにより,中空杭30の杭頭部31より土砂や泥水等が浸入することを防止すると共に,杭頭部31を破損等より保護する。
【0070】
この筒矢板60は,ここでは,掘削孔40の内周より小径の外形を有する円筒状を成す,断面L字状の上下の枠体61,62間に鉄筋などの保持杆63を挿入し,上下の突出端の螺子部を枠体61,62にナットなどで固定し,上下枠体61,62を連結し,該上下枠体にそれぞれ対向方向に設けたガイド片64,64内に,金属製筒体あるいはボイド管などの筒体70を嵌め込み固定したものである。65は挿入部で,中空杭30の杭頭部31内周に嵌合する外径を有する下部枠体62底縁に突設した中空杭30の杭頭部31への挿入のガイド又は保持のための環状の板片状部材である。図6の実施例では,ボイド管70を上下に重ねて筒矢板60の全長を高くしており,このためジョイント71を介して上下に保持杆63を連結し,この保持杆の適宜位置に環状の支持片72を設け,突設部73上下において,上下のボイド管70を支持している。従って,筒矢板60の全高ないし全長は,杭頭部31に対応して任意に設定できる。
【0071】
保持杆63は,筒体70内周に円周を等分割した位置に設けられており,外部からの土圧に抗して,筒矢板60に剛性を付与している。
【0072】
本発明の基礎杭の施工方法に使用する筒矢板60の更に別の実施形態を図7〜9を参照して説明する。
【0073】
図6を参照して説明した実施形態にあっては,上下枠体61,62間を連結する保持杆63として鉄筋を使用した例を示したが,図7〜9に示す実施形態では,前記保持杆63として使用されていた鉄筋に代えて,例えば足場パイプ等として使用される鋼管63’を使用した。
【0074】
このような鋼管63’による上下枠体61,62間の連結を可能とするために,上下枠体61,62のそれぞれには,鋼管63’を取り付けるためのクランプ69を等角度毎に放射状に設け,このクランプ69によって鋼管63’の上下端を把持することで,上下枠体61,62間に所定の間隔が設けられている。
【0075】
このクランプ69の取り付け位置に対して更に内周側には,図7に示すように縦方向の断面において,上部枠体61にあっては下向きコ字状,下部枠体62にあっては上向きコ字状の嵌合部61a,62aが形成されており,この上下で対向する嵌合部61a,62a内にボイド管等の筒体70の開口縁を挿入して筒矢板60を形成し,筒矢板60内に土砂や泥,水等が侵入することを防止している。
【0076】
なお,中空杭30の上部開口縁との接触部分における下側枠体62には,例えばスポンジやゴム等を配して止水部62bとし,両者の接触部分の隙間から土砂や泥,水等が筒矢板60内に浸入することを防止している。
【0077】
図10〜12は更に別の筒矢板60の実施形態であり,上下枠体61,62及び中間に設けた支持片72に,L字状のアングル材を保持杆63として溶接等の方法により固着して,これら枠体61,62及び支持片72間の間隔を固定すると共に,上下枠体61,62にそれぞれ相互に対峙する方向に開口する断面コ字状の嵌合部(図12に下部枠体62の嵌合部62aのみを図示)を設け,この嵌合部内に筒状に丸められた波板等の鋼板から成る筒体70の上下開口縁を差し込むことで,筒矢板60の外壁を形成している。
【0078】
この筒矢板60の下部枠体62には,図12に示すように中空杭30の杭頭開口縁に載置することができるように断面L字状に形成されていると共に,この部分にスポンジ等を設ける等して止水部62bを形成している。
【0079】
なお,図示の例では,前記中空杭30の上端開口縁に載置される断面L字状の部分の水平部が開口縁に載置された際,垂直部が中空杭の外周を囲むように構成したが,これとは逆に垂直部が中空杭内に挿入されるように構成しても良く,図示の実施形態に限定されない。
【0080】
前述の筒矢板60は,充填・硬化材の充填後にその上部及び下部開口のいずれか一方若しくは双方を着脱自在の例えば金属製の平板状の上下部の蓋体67,68で被蓋し,根伐作業を行った後,養生後,前記筒矢板60を前記上下部の蓋体67,68と共に搬出して除去する。これにより,根伐作業によって杭頭部の損壊等が生ずることを防ぐことが出来る。
【0081】
なお,図13中,(A)は図6を参照して説明した筒矢板60の上蓋67,(B)は同図6の筒矢板60の下蓋68であり,図13(C)は図7〜9を参照して説明した筒矢板60の上蓋67である。
【0082】
もっとも,中空杭30の杭頭より,杭頭上に構築される構築物の基礎内に埋設されて,該基礎との連結を行うための連結用鉄筋33aを突設する場合には(図21〜23参照),筒矢板60の下部枠体62には蓋をせず,上部枠体61にのみ蓋をするようにしても良い。
【0083】
なお,杭頭部31から地表面までの掘削孔40の高さが比較的低いとき,あるいは,掘削孔40の地盤が軟弱でない場合,又は,杭頭部31の掘削孔地盤から湧水するおそれのない場合などの施工には,前記筒矢板60の使用には及ばないが,充填・硬化材の充填後,前記杭頭に図示せざる蓋体(杭頭蓋体)を載置して,杭頭から地表面までを埋め戻し,又は埋め戻すことなく根伐を行い,その後,前記杭頭蓋体を除去するようにしても良い。
【0084】
洗浄装置
スライムやセメントミルク等の不要物が除去された後の中空杭30の中空空間32内を洗浄する前述の洗浄装置20は,例えばアースオーガ等の掘削機に設けたスクリューロッド18先端に取り付けられる等して中空杭30の中空空間32内に配置されると共に,中空杭30の中空空間32内で,前記スクリューロッド18を介して導入された洗浄水を供給しながら回転及び昇降することで,中空杭30の内周壁に付着した汚れを除去することができるように構成されている。
【0085】
この洗浄装置20は,中空杭30の中空空間32内周壁に付着した汚れを洗浄・除去することができるものであれば如何なる構成であっても良いが,本実施形態にあっては,スクリューロッド18を介して導入された洗浄水を中空杭30の中空空間32内で噴射する,洗浄水の噴射構造と,回転又は昇降時に中空杭30の内周壁と少なくともその一端が摺接して汚れを払拭する払拭体26を備えている。
【0086】
中空杭30の中空空間32内における噴射水の噴射を可能とするために,本実施形態の洗浄装置20にあっては,図14〜図16に示すように中空杭30内に挿入可能な外径を有する天板(上部ケーシング22)及び底板(下部ケーシング23)を複数の支持板25により所定の間隙,一例として等角度毎の所定の間隔を介して上下に連結し,前記上下ケーシング22,23間の間隔を支持板25により画成して複数の噴射室27を形成すると共に,この噴射室27の中央部分に一端をスクリューロッド18内の中空部に連通し,他端を前記噴射室に臨ませて成る,前記洗浄水の導入路28が形成されている。
【0087】
従って,図16に示す構成例にあっては,スクリューロッド18を介して洗浄装置20内に導入された洗浄水は,前記洗浄装置20の中央部分に形成された洗浄水の導入路28を介して各噴射室27内に導入され,前記洗浄装置20の外周側において前記噴射室27に臨む中空杭30の内周壁に衝突してその水圧によって中空杭30の内周壁に付着した汚れを洗浄する。
【0088】
図示の実施形態にあっては,下部ケーシング23を中央において下方に向かって膨出する形状に形成し,上部ケーシング22と下部ケーシング23間を通過して噴射される洗浄水が,前記下部ケーシング23の形状に案内されて斜め上方側に向かって噴射されるように構成し,後述する払拭体26による摺接位置乃至はその近傍に洗浄水の噴射が行われるようにしている。
【0089】
これにより,後述する払拭体26によって掻き取られた中空杭30内周壁の汚れは,洗浄水によって内周壁を伝って下方に押し流され,掻き取られた汚れが中空杭の内周壁に再付着することなく,中空杭30の中空空間底部に落下するように構成されている。
【0090】
前述した払拭体26は,スクリューロッド18によって洗浄装置20を回転し,又は昇降させた際,中空杭30の内周壁と摺接して,中空杭30内周壁に付着した汚れを払拭することができるものであれば如何なる構成のものであっても良く,例えば,洗浄装置20の外周方向に突設したゴム等の弾性材料から成るヘラ状のものを設けておき,昇降時,又は回転時,このヘラ状物が中空杭30の内周壁を掻き取って汚れを除去するように構成しても良く,また,洗浄装置20の外周に向かって突出するブラシ等を設け,このブラシとの摺接によって,中空杭30の内周壁に付着した汚れが洗浄装置20の回転乃至は昇降により掻き取られるように構成しても良い。
【0091】
本実施形態における払拭体26は,洗浄装置20の回転時に,遠心力によって少なくともその先端が中空杭30の内周壁に摺接するものとして構成し,一例として,図14に示すように,複数本のワイヤを束ねて成る払拭体26の基端部を回動可能に上部ケーシング22に取り付け,洗浄装置20の回転により,このワイヤの先端が中空杭30の内周壁と摺接するように構成している。
【0092】
なお,遠心力によって中空杭30の内周壁と摺接する払拭体26の構成としては図示の実施形態に限定されず,例えば多数の紐状の払拭体26の基端部を洗浄装置20の外周や下部ケーシング23の底面に取り付けておき,洗浄装置20を回転させた際,この紐状の払拭体26の先端が遠心力によって洗浄装置20の外周方向に広がり,中空杭30の内周壁と摺接するように構成しても良く,更には,先端にブラシ等が取り付けられたアームの基端部を洗浄装置20の外周に上下方向に揺動可能に取り付け,洗浄装置20が回転した時の遠心力によりこのアームが水平方向に回動して,このアームの先端に取り付けたブラシが中空杭の内周壁と摺接するように構成しても良く,少なくともその先端部が中空杭の内周壁に摺接して,中空杭の内周壁に付着した汚れを掻き落とすことができる構成であれば,如何なる構成を採用しても良い。
【0093】
杭内蓋体及び補強筋
杭内蓋体74は,前述したように,不要物の除去が完了し,かつ,中空杭30内周壁に付着した汚れの洗浄が完了した後における中空杭30の中空空間32内の所定位置に配置され,中空杭30内に挿入可能なサイズに形成された円盤状を成す。
【0094】
この杭内蓋体74を,前記中空杭30の不要物除去が充填・硬化材の充填を行う深さ迄行われている場合には,除去されずに残る不要物上に配置し,また,不要物の除去が充填・硬化材の充填深さよりも所定の深い位置迄行われている場合には,充填・硬化材を充填する下限位置に配置する。そして,後述するように,この杭内蓋体74上に充填・硬化材を充填して,前記杭内蓋体74は,中空杭30内の所定の位置に埋設される。
【0095】
この杭内蓋体74は,杭内に残るセメントミルクや洗浄水に比較して比重の高い生コンクリートなどの充填・硬化材を直接中空杭30の中空空間内に充填すると,充填・硬化材がセメントミルクや洗浄水中に沈降して中空杭30の底部に溜まり,杭頭部31から所望の深さ迄の位置に留めることができないという問題を解消するために設けたものであり,予めこの杭内蓋体74を中空杭30内に配置して,この杭内蓋体74上に充填・硬化材を充填することにより,杭頭部31寄りの所定の位置において生コンクリートなどを硬化させることが可能となる。
【0096】
従って,この杭内蓋体74は,充填された充填・硬化材がセメントミルクや洗浄水中に沈降することを防止し,所望の位置に留めておくことができるものであれば,材質,形状等は特に限定されず,各種材質,形状のものを使用することができる。
【0097】
一例として,本実施形態にあっては,中空杭内に嵌装される円盤状に形成された鋼鉄など金属製の板体を前述の杭内蓋体として使用する。
【0098】
この杭内蓋体74自体がセメントミルクや洗浄水内に沈降することを防止し,かつ,充填される充填・硬化物の重量を支えることができるよう,前記杭内蓋体74を前記配置位置に固定する手段を設けることが好ましく,一例としてこのような位置固定を行うために,本実形態では,この杭内蓋体74を,中空杭30の中空空間32内に埋設されてこれを補強する補強筋33の下端に固着すると共に,この補強筋33を吊り下げ筋35によって前記筒矢板60の上端開口縁に係止して,中空杭30の高さ方向における所定の位置に前記杭内蓋体74と補強筋33の位置を固定することができるように構成している。
【0099】
前述の補強筋33は,本実施形態にあっては中空杭30の中空空間32内に長さ方向に平行に挿入された棒状を成し,これら各補強筋33の下端を前記杭内蓋板74に固着すると共に,この補強筋33のうちの数本,好ましくは3本以上,10本程度の補強筋が配置される本実施形態にあっては,4,5本程度の上端を,上端を鉤状に曲折されている吊り下げ筋35の下端にジョイント34を介して連結し,この吊り下げ筋35の鉤状に曲折された前記上端を,筒矢板60の上部開口縁に係止することで,補強筋33が中空杭30中の所定の位置に吊り下げられると共に,この補強筋33の下端に固着された杭内蓋体74が,所定の位置に固定される。
【0100】
補強筋33の上端と,前記吊り下げ筋35の下端間を連結する前述のジョイント34としては,例えば補強筋33の上端に形成された雄ネジと螺合する雌ネジを一端に備えると共に,吊り下げ筋35の下端に形成された雄ネジと螺合する雌ネジを他端に備え,前記補強筋33又は吊り下げ筋35のいずれか一方に形成された雄ネジと,これと螺合する前記ジョイントの雌ネジを逆ネジとすることで,前記ジョイント34を所定の方向に回転させることにより,吊り下げ筋35の上端から補強筋33の下端迄の全長を微調整して,杭内蓋体74の水平調整を行うことができるように構成しても良い。
【0101】
なお,中空杭30内に前記補強筋33に代えて,又は補強筋33と共に層に有される中子杭としては,中空杭30と同様,PC,PHC,RC, 鋼管,鋼管巻コンクリート製の中空杭であって,建て込みが完了している前記中空杭30の内径より小径の外径を有し,杭内蓋体74上で前記中空杭30頂部に上端が略達する長さのものを使用する。
【0102】
基礎杭の施工方法
次に,前述した各機器を使用した,本発明の杭基礎の施工方法について以下説明する。
【0103】
既知の埋込み杭工法による処理段階
図17は,中空の既製杭を使用した,既知の埋込み杭工法による施工途中の基礎杭であり,この段階において,掘削孔40内に建て込んだ中空杭30内には,硬化前の液状又はゲル状のスライムやセメントミルク等の不要物が存在している。
【0104】
図示の実施形態において,中空杭30の杭頭部31は,掘削孔40の上端(地表)に対して低い位置に設けられているが,この中空杭30の杭頭部31を越えて存在する土砂は,その後,中空杭30上に造成される構造物の基礎を形成する際に,根伐によって除去される部分である。
【0105】
筒矢板の取り付け及び不要物の除去
図18及び図20〜23は,前掲の図1における太線枠内における作業状況を拡大して示したもので,図18は,杭基礎の施工工程において前述した図17の状態にある中空杭30の中空空間32内より,前述した除去容器10を使用してスライムやセメントミルク等の不要物を除去する工程である。
【0106】
この不要物の除去は,充填・硬化材の充填を行う深さ迄として行っても良いが,好ましくは充填・硬化材の充填を行う深さに比較して所定の深い位置迄除去を行い,中空杭30の強化が,杭頭部分のみならず,杭全体に対して行われる場合には,中空杭30の杭頭から底部に至る迄の中空空間32全体について不要物の除去を行うようにしても良い。
【0107】
一例として本実施形態にあっては,中空杭30の杭頭から内径(直径)Dに対して10倍(10D)程度の深さ迄,充填・硬化材の充填を行うものとし,この充填・硬化材の充填深さ10Dに対して,更に中空杭の内径の約2倍(2D)深い位置まで不要物の除去を行っており,図17において,太線の枠で囲まれた部分が本発明の方法による処理部分である。
【0108】
この除去容器10による除去を行うにあたって,中空杭30の杭頭部31から掘削孔40の上端部にかけての内周に,掘削孔40の内径に対して小径に形成された前述の筒矢板60を挿入した(図17参照)。
【0109】
この筒矢板60によって掘削孔40の内壁を保護すると共に,掘削孔40の内壁が崩壊する等して生じた土砂や,掘削孔40内における湧水に伴う泥水等が,中空杭30の中空空間32内に入り込むことを防止している。
【0110】
本実施形態にあっては,図17中の円内に示した拡大図のように,除去容器10を前記筒矢板60の下部に取り付けた状態で筒矢板60を杭頭部31に配置することにより,筒矢板60の設置と同時に除去容器10を中空杭30の中空空間32内に配置しているが,予め筒矢板60を掘削孔40内に挿入して掘削孔40の内壁保護と中空杭30内への土砂や湧水の浸入を防いだ状態で,筒矢板60によって囲まれた空間を介して除去容器10を中空杭30の中空空間32内に挿入しても良く,掘削孔40の内壁の保護・中空杭30に対する土砂,湧水の浸入防止と,中空杭30内のスライム及び/又はセメントミルクの除去を効率的に行うことができるものであれば,筒矢板60の取り付け手順は図示の実施形態に限定されない。
【0111】
このように,掘削孔40内に前記筒矢板60を挿入した状態で除去容器10を使用して,中空杭30内のスライムやセメントミルク等の不要物の除去が行われる。
【0112】
この除去容器10は,前述したように本実施形態にあっては円筒状の本体11内に液状又はゲル状のスライムやセメントミルク等の不要物を回収するための回収空間12を有すると共に,この回収空間12の底部において下方に向かって開口する開口13を有し,この開口13を被蓋する,開閉自在な蓋板14が設けられているものであり,一例として,この除去容器10を掘削機のスクリューロッド18の先端に取り付けて中空杭30の中空空間32内に挿入すると,中空空間32内の不要物の圧力により,除去容器10の開口13を閉じていた蓋板14が開き,これによって不要物が除去容器10の回収空間12内に流入する(図18(A))。
【0113】
このようにして除去容器10内に不要物の流入が完了すると,この不要物の流入により開口13を開いていた蓋板14が自重によって開口13を閉じる。
【0114】
そして,中空杭30の中空空間32内より除去容器10を抜き取ると,除去容器10の回収空間12内に導入された不要物の重量により蓋板14は完全に開口13を閉じ,回収空間内に閉じ込められた不要物は除去容器10と共に中空杭30の中空空間32より抜き取られて除去される(図18(B))。
【0115】
このような不要物の除去は,所望の杭全体に及ぼす強度向上効果に対応して,中空杭30の杭頭部31からどの程度の長さ(深さ)まで行うかに応じて,必要な深さまで行い,除去容器10の一回の挿入によっては必要量の不要物が除去できない場合には,この作業を繰り返して必要な深さまで不要物の除去を行う。
【0116】
なお,図18(A),(B)に示した実施形態にあっては,掘削孔内に前記筒矢板60を挿入した状態で中空杭内の不要物を除去するものとして説明したが,前述した筒矢板は,例えば,杭頭から掘削孔の上端迄の深さが2m以下であり,また,掘削孔内に湧水等が生じていない場合には,これを省略しても良い。
【0117】
除去容器からの不要物の排出
前述の除去容器10によって除去された不要物は,除去容器10と共に掘削孔40外に抜き取られ,図19(A),(B)に示すように,前述した排出補助手段50が設けられている場合には,この排出補助手段50上に載置されて,排出される。
【0118】
排出補助手段50上の所定の位置に載置された除去容器10は,排出補助手段50に設けた係合突起56が前記除去容器10の底部に設けた開口13を被蓋する蓋板14を押し上げて,除去容器10内に収容された不要物を排出し,排出された不要物は残土ピット等に回収される。
【0119】
中空杭内の洗浄
このようにして,中空杭30内の不要物を所定量除去し終えると,中空杭30の杭頭部31内にはスライムやセメントミルクの不要物が除去されて中空空間32が現れる。
【0120】
このようにして現れた中空空間32の内周壁は,中空空間32内に充填されていたスライムやセメントミルク等が付着して汚染されているため,前述した洗浄装置20を使用して洗浄水の吹き付け,好ましくはこの洗浄水の吹き付けと共に,ブラシやワイヤ,紐等から成る払拭体26を前記中空杭30内周壁に摺接させることにより洗浄する。
【0121】
図20は,本発明施工方法に用いる中空杭内周壁の洗浄装置20によって中空杭30内周壁を洗浄する様子を示し,掘削機のスクリューロッド18のジョイント部に,前記洗浄装置20に設けた六角柱状の継手(オス)である連結部19を連結してこれを中空杭30内に挿入して洗浄する。
【0122】
洗浄装置20は,図14〜16を参照して説明したように,中空杭30内に挿入可能な外径を有する平面円形の傘ないし皿状を成す上部ケーシング22及び下部ケーシング23を備え,この上部ケーシング22及び下部ケーシング23間を,ここでは,8片の支持板25により上下に連結して,前記上部ケーシング22及び下部ケーシング23間に前記スクリューロッド18内の中空部を介して供給された水を,前記中空部に連通し,且つ円周方向に噴射する開口27を有している。
【0123】
なお,前記下部ケーシング23の中心部は,同図下方に支持板25の中心方向端縁まで膨出形成された円状膨出部を備え,スクリューロッド18から圧入された水を前記開口方向へ360°分散噴射する。
【0124】
26は,払拭体で,洗浄装置20を回転させた際の遠心力により,先端が中空杭の内周壁面に摺接するように,基端部を揺動可能に前記上部ケーシング22,下部ケーシング23等に揺動可能に取り付けられた,ロープ,ウエス,あるいはブラシ様のものとして構成することができる。
【0125】
図示の実施形態にあっては,直径4mm程度のワイヤを束ねて直径20〜25mm程度の一定の剛性と,柔軟性を有する円柱状のブラシ状を成す払拭体26を形成し,この払拭体26の基端部を上部ケーシング22の上面に揺動可能に取り付けて,前記スクリューロッド18の回転により,少なくともその先端が前記中空杭内周壁に達するように構成している。
【0126】
以上のように構成された洗浄装置20を掘削機のスクリューロッド18先端に取り付けて,スクリューロッド18を介して前記洗浄装置20に洗浄水を供給すると共に,中空杭30内を回転させながら昇降させると,噴射室27を介して噴射された洗浄水が中空杭30の内周壁に衝突し,中空杭30の内周壁に付着した付着物を洗浄する。
【0127】
洗浄装置20に設けられた払拭体26は,洗浄装置20が回転することにより遠心力によってその先端を外周方向に向けて広げ,少なくともその先端部分が中空杭30の内周壁に摺接して,中空杭30内周壁に付着して付着物を掻き取る。
【0128】
このように払拭体26によって掻き取られた付着物は,噴射室27を介して噴射された洗浄水によって流し落とされ,中空杭30の中空空間32内における底部側に溜まる。
【0129】
このようにして中空杭30の内周壁を洗浄して内周壁に付着する付着物を除去したことにより,その後に充填される充填・硬化材の中空杭30内周壁に対する付着性が向上する。
【0130】
この洗浄によって,中空杭30内周壁の付着物を流し落とした洗浄水は,中空杭30の内周壁を伝って中空空間32内に溜まる。このようにして溜まった洗浄水は,前記不要物の除去方法と同様の方法で中空杭30の中空空間32より除去するものとしても良いが,前述したように不要物の除去が充填・硬化材の充填深さを越えて行われ,洗浄水がこの部分(図20における底部2Dの範囲)に溜まっている場合には,この洗浄水を除去することなく次工程の作業を行うことが可能である。
【0131】
杭内蓋体及び補強筋の配置
このようにして洗浄が完了した中空空間32に対して充填・硬化材の充填を行う下限位置,すなわち,除去されずに中空杭30内に残ったセメントミルクや中空杭30内で噴射されて底部に溜まった洗浄水の液面上には,図21に示すように,円盤状に形成された杭内蓋体74を配置する。
【0132】
この杭内蓋体74の配置により,後述する生コンクリートなどの充填・硬化材を充填するための床面が形成され,これにより充填された充填・硬化材が,セメントミルクや洗浄水内に沈降することが防止される。
【0133】
杭内蓋体74は,例えば押し込み棒等によって中空杭30の中空空間32内に押し込むことにより配置することもできるが,本実施形態にあっては,前記中空杭30内に前記杭内蓋体74と共に補強筋33を配置するものとし,この補強筋33の下端に前記杭内蓋体74を取り付けて補強筋33と共に中空杭30内に配置した。
【0134】
この補強筋33は,予め工場施設等において切断,溶接等して所定形状,例えば円筒籠状に組み立てられたものを使用することができ,この補強筋33の下端部に予め前述した杭内蓋体74を取り付けておき,補強筋33を中空杭30の中空空間32内に挿入すると,同時に杭内蓋体74を中空空間32内の所望の位置に配置することができる。
【0135】
このような補強筋33を,中空杭30の中空空間32内の所定の位置に配置するために,縦方向を成す数本の補強筋33上端を,ジョイント34を介して吊り下げ筋35の下端に連結すると共に,この吊り下げ筋35の上端を例えば鉤状に形成する等して前述した筒矢板60の上端縁に係止して,補強筋33が中空杭30の中空空間32内の所定位置に配置されるように構成しても良く,また,これにより,補強筋33の下端に取り付けられた杭内蓋体74についても中空杭30内に所望の高さ位置で配置することができる(図21参照)。
【0136】
中空杭30内に対する補強筋33の配置は,補強筋33の上端が,杭頭より所定長さ(一例として1m程度)突出するようにしておくことが好ましく,この杭頭より突出した補強筋33の上端部分は,その後,この杭頭上に構築される構築物の基礎中に埋設され,構造物の基礎杭との連結部分とすることができる。
【0137】
なお,図示の実施形態では,この補強筋33として中空杭30の長さ方向を長さ方向とする縦方向の補強筋33のみを設けた例を示しているが,例えばこの補強筋33の長さ方向における所定間隔で,縦方向の各補強筋に接合される例えば環状の補強筋を設け,全体として円筒状の籠体に形成された補強筋33を中空杭30の中空空間32内に挿入するものとしても良い。
【0138】
充填・硬化材の充填
図22は,以上のようにして中空杭30内に配置された杭内蓋体74上に,生コンクリート又は高強度モルタルなどの充填・硬化材を充填する工程である。
【0139】
本実施形態において,充填・硬化材の充填は,中空杭30内にトレーミー管を挿入することによって行い,このトレーミー管の下端から充填・硬化材を充填しながら,好ましくはトレーミー管の下端が充填・硬化材中に埋設された状態を維持しながら徐々にトレーミー管を上方に抜き取ることにより,杭頭部31の所定の位置まで充填・硬化材を充填する。
【0140】
中子杭の挿入
中空杭30の中空空間32には,前述した補強筋33に代え,又は補強筋33と共に,必要に応じて中子杭を挿入することができる。
【0141】
図示は,省略するが,本発明の他の実施形態においては,中空杭30の中空空間32において,前記杭内蓋体74上にモルタルを充填する。このモルタルは,高強度,無収縮,樹脂モルタルから選択され,後に前記中空空間32に挿入される中子杭の体積分以上の量を注入充填する。
【0142】
ついで,中空杭と同様,PC,PHC,RC, 鋼管,鋼管巻コンクリート製で,中空杭30の内径より小径の外径を有し,杭内蓋体74上で前記中空杭頂部に上端が略達する長さの中子杭を前記中空空間32内に挿入する。
【0143】
前記中子杭の挿入により,前記モルタルは,中子杭の頂部から溢れ中空杭30内周と中子杭外周間の間隙に充満する。これにより,中空杭30と中子杭の固結が達成できる。
【0144】
杭頭部の被蓋
このようにして,補強筋33の配置,充填・硬化材の充填あるいは,中子杭の挿入が完了すると,必要に応じて中空杭30の杭頭部31を被蓋する蓋体を,例えば押し込み棒等で押し込むことで杭頭部31に被せ(図示省略),中空杭30の中空空間32内に土砂や泥水等が浸入することを防止する。
【0145】
この中空杭30の杭頭部31を被蓋する蓋体は,筒矢板60を掘削孔40内に挿入した状態で前記各作業を行う本実施形態にあっては,この筒矢板60の下部枠体62に形成された開口を塞ぐ,下部蓋体68によって行うものとしても良い。
【0146】
なお,前述したように,杭頭部31から掘削孔40の上端(地表)迄の距離が2m以下である場合等,前述の筒矢板60を使用せずに前記各作業を行った場合には,中空杭30の杭頭部31に直接,図示せざる杭頭蓋体を被せることもできる。
なお,この杭頭部31の被蓋は,例えば図23(A)に示すように杭頭部31より前述の補強筋33を突出させて上部に形成される構造物との連結を行うための連結用鉄筋33aとした場合等,杭頭部の被蓋を行うことができない場合等もあり,必ずしも行う必要はない。
【0147】
筒矢板上端の被蓋
このようにして,中空杭30の杭頭部31を被蓋した後,又は杭頭部31を被蓋することなしに,前記筒矢板60の上部枠体61に形成された開口を上部蓋体67によって被蓋し(図23(A)参照),この状態で筒矢板60は,根伐が完了する迄,中空杭30の杭頭部31上に載置される。
【0148】
このように,中空杭30の杭頭部31は,上部蓋体67,筒矢板60及び,必要に応じて下部蓋体68によって保護され,土砂や泥水等が中空杭30の中空空間32内に浸入することが防止されているだけでなく,杭頭部31上の空間が前記筒矢板60によって占められていることから,この筒矢板60が杭頭部31に対する一種の保護体として作用し,例えばバック−ホー等の掘削機を使用して根伐作業を行う際に,バック−ホーのバケット等との接触から杭頭部31を保護し,このような接触による杭頭の破損等を防止することができる。
【0149】
筒矢板,蓋体,吊り下げ筋等の除去
以上のようにして,基礎の形成位置の根伐が終了すると(図23(B)),筒矢板60の上部開口を覆う上部蓋体67が除去される(図23(C))。
【0150】
次いで,ジョイント34を介して行われていた補強筋33の上端と吊り下げ筋35の下端間の連結が解除され,吊り下げ筋35を筒矢板60より抜き取ると共に回収し(図23(D)),その後,筒矢板60の除去・回収が行われ(図23(E)),また,杭頭部を被蓋する下部蓋体が設けられている場合にはこれらについても除去回収される。
【0151】
このようにして,根伐底に中空杭30の杭頭部31が出現し,この杭頭部31上に上部構造物の基礎の施工が可能となっている(図23(F))。
【0152】
その他
以上のようにして形成された根伐内には,地固め,割栗の敷設,コンクリートパネルの設置,配筋等の必要な処理を行った後,コンクリートが打設され,これにより,前述の中空杭30によって形成された基礎杭上に,構造物の基礎が形成される。
【0153】
この際,中空杭30の杭頭部31より突出するように設けられた補強筋33の上端部分は,杭頭上に形成される構築物の基礎との接合に使用する接合用補強筋(連結用鉄筋33a)として使用し,この連結用鉄筋33aを上部構造物の基礎中に埋め込んで,杭頭31を基礎に固定しても良い。
【0154】
このようにして形成される基礎杭は,前述のように杭頭部31における中空空間32内から,スライムや,このスライム等の不純物を含むセメントミルクを除去すると共に,除去されたスライムやセメントミルクに代えて,硬化後の強度が比較的高い充填・硬化材を充填しているために,中空杭30の杭頭部31のみならず,杭全体は強化されたものとなる。
【0155】
その結果,杭頭部31の径を拡大することなく,又は,杭頭部31に鋼管を巻く等の補強を行うことなく,中空の既製杭を使用した既知の埋込み杭工法をベースとして,杭頭部の強化を容易に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の方法に使用する除去容器の平面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】排出補助手段上に除去容器を載置した状態の正面図。
【図5】排出補助手段上に除去容器を載置した状態の平面図
【図6】筒矢板60を示し,(A)は,筒矢板60の全体図,(B)は,部分断面図。
【図7】本発明の方法に使用する別の筒矢板の上面断面図。
【図8】図7のIX方向矢視図。
【図9】図7のX−X線断面図。
【図10】本発明の方法に使用する更に別の筒矢板の斜視図。
【図11】図10のXII−XII線断面斜視図。
【図12】図11のXIII−XIII線断面図。
【図13】筒矢板の上下蓋体の平面図であり,(A)は図6を参照して説明した筒矢板の上部蓋体,(B)は図6を参照して説明した筒矢板の下部蓋体,(C)は図7〜9を参照して説明した筒矢板の上部蓋体。
【図14】洗浄装置の斜視図。
【図15】洗浄装置の平面図。
【図16】図15のXVII−XVII線断面図。
【図17】杭基礎の施工状態の説明図(本発明の方法を行う前の状態)。
【図18】不要物の除去工程の説明図であり,(A)は除去容器を沈降させている状態,(B)は上昇させている状態。
【図19】除去容器からの不要物の排出の様子を説明する説明図であり,(A)は除去容器を排出補助手段に載置する前の状態,(B)は排出補助手段上に載置した状態。
【図20】中空杭内の洗浄工程の説明図であり,(A)は洗浄開始直後,(B)は洗浄終了直前の状態を示す。
【図21】杭内蓋体及び補強筋の配置状態を示す説明図。
【図22】充填・硬化材の充填状態を示す説明図であり,(A)は充填開始直後,(B)は充填終了直前の状態を示す。
【図23】充填・硬化材を充填した後の作業工程を示す説明図であり,それぞれ(A)筒矢板に蓋体をして養生した状態,(B)根伐を行った状態,(C)筒矢板の蓋体を除去・回収した状態,(D)吊り下げ筋を除去・回収した状態,(E)筒矢板を除去回収する状態,及び(F)各機器の回収後の状態である。
【符号の説明】
【0157】
10 除去容器
11 除去容器本体
12 回収空間
13 開口
14 蓋板
15 ヒンジ
18 スクリューロッド
19 連結部(継手)
20 洗浄装置
21 支持材
22 上部ケーシング
23 下部ケーシング
24 膨出部
25 支持板
26 払拭体
27 噴射室
28 導入路
30 中空杭
31 杭頭部
32 中空空間
33 補強筋
33a 連結用鉄筋
34 ジョイント
35 吊り下げ筋
40 堀削孔
50 排出補助手段
51 脚部
52,53,54 横架材
55 基台
56 係合突起
57a〜57d 規制片
58 吊下リング
60 筒矢板
61 上部枠体
62 下部枠体
61a,62a 嵌合部
62b 止水部
63,63’ 保持杆
64,64 ガイド片
65 挿入部
67,67’ 上部蓋体(60の)
68 下部蓋体(60の)
69 クランプ
70 筒体
71 ジョイント
72 支持片
73 突設部
74 杭内蓋体
S ストッパ
81

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の既製杭を使用した埋込み杭工法において,
掘削孔内に建て込んだ中空杭の中空空間内に存在するスライムやセメントミルク等から成る不要物が液状又はゲル状にあるときに,杭頭部から任意の深さ迄,除去容器を挿入し,前記中空空間内の前記不要物を収容し,これを外部に排出除去する工程と,
前記中空空間内の中空杭内周壁を洗浄する工程と,
前記中空杭内に充填・硬化材を充填する工程を含むことを特徴とする基礎杭の施工方法。
【請求項2】
前記洗浄がされた中空空間の前記充填・硬化材の充填範囲の下限位置に蓋体を配置する工程と,前記蓋体上に前記充填・硬化材を充填する工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の基礎杭の施工方法。
【請求項3】
前記充填・硬化材が生コンクリート又はモルタルである請求項1又は2記載の基礎杭の施工方法。
【請求項4】
前記中空空間内に充填・硬化材を充填し,前記中空杭内に,該中空杭の内径より小径の外径を有し,前記中空杭頂部に上端が略達する長さの中子杭を挿入することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の基礎杭の施工方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の基礎杭の施工方法に用いる洗浄装置であって,
中空杭の中空空間内に挿入可能な外径を有する天板及び底板を複数の支持板により所定の間隙を介して上下に連結し,前記支持板により画成される複数の噴射室を形成すると共に,一端をスクリューロッド内の中空部に連通し,他端を前記噴射室に臨ませて成る洗浄水の導入路を備えることを特徴とする中空杭内周壁の洗浄装置。
【請求項6】
前記底板を,その中心部を下方に膨出する円板状としたことを特徴とする請求項5記載の中空杭内周壁の洗浄装置。
【請求項7】
前記中空杭内での昇降及び/又は回転時,少なくとも先端が前記中空杭内周壁に摺接する払拭体を設けたことを特徴とする請求項5又は6記載の中空杭内周壁の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−223337(P2008−223337A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63368(P2007−63368)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(506019290)株式会社播磨商事 (7)
【出願人】(506019304)
【Fターム(参考)】