説明

基礎用アンカーボルトの支持装置、及びこれを使用したアンカーボルトの基礎内への施工方法

【課題】基礎が幅の狭いものであっても、また、配筋された、あるいは配筋される鉄筋に邪魔されることなく、基礎用アンカーボルトを確実に施工することのできる基礎用アンカーボルトの支持装置を提供すること。
【解決手段】基礎30が施工される場所に固定される基台11と、この基台11上に立設される支柱12と、この支柱12に設けられて、アンカーボルト20の下部を保持する下側保持部材13と、アンカーボルト20の中間部を保持する上側保持部材14とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の基礎中に埋設されて、この基礎から上端部が突出される基礎用アンカーボルトを、基礎製造前に設置場所に支持するための装置、及びこれを使用したアンカーボルトの基礎内への施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の木造住宅やプレコン住宅等の建物にあっては、その基礎にアンカーボルトが使用されるが、この基礎用アンカーボルトは、建物の剛性や耐震性を高めるために、太くて長いものが採用されることがある。
【0003】
この種の基礎用アンカーボルトを所定場所に設置するには、従来は、例えば特許文献1にて提案されているように、基礎となる生コンクリートを打設するための型枠に所定の取付金具を取り付けて、この取付金具にアンカーボルトを設置するようにしていた。しかし、この設置方法では、基礎用アンカーボルトを取り付けるときには配筋及び型枠の設置が完了している必要がある。
【0004】
それだけでなく、断面形状が複雑になってきている近年の基礎にあっては、基礎の幅や高さが様々で、しかもアンカーボルトの径や取付位置も様々になるから、上記の取付金具自体も、形や大きさあるいはアンカーボルトの取付穴の位置や大きさも様々となり、様々な種類の取付金具を用意しておかなければならないことになって、非効率的となる。
【0005】
一方、この種の基礎用アンカーボルトは、基礎を形作る鉄筋を配筋する前に設置しなければならない場合も増加してきている。基礎を形作る鉄筋を細かく入れて、基礎自体の強度を増加したいからである。そして、この鉄筋は、現場で直接施工することもあるが、予め所定形状のものに組んでおいて、これらの複数を施工現場でさらに組み込むことも行われている。
【0006】
以上の状況の中で、この種の基礎用アンカーボルトを効率的に施工するのに、特許文献2にて提案されているような「柱脚用アンカー装置」が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−211514号公報
【特許文献2】特開2007−107383号公報、要約、代表図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2で提案されている「柱脚用アンカー装置」は、「より簡素な構成によりアンカーボルトの定着部自体の曲げ剛性を効果的に向上させ、アンカー装置としての定着耐力を改善したアンカー装置を提供する」を目的としてなされたもので、図8にも示すように、「定着フレーム2を水平部と垂直部とから構成される断面形状が略U字形又は略ネジボルト14b字形からなる直線状の定着フレーム部材同士を垂直部が周方向の全周に渡って配設されるように一体的に連結することにより形成する」ものであり、上記目的が達成されたものである。
【0009】
しかしながら、この特許文献2で提案されている「柱脚用アンカー装置」は、「定着フレーム部材同士を垂直部が周方向の全周に渡って配設されるように一体的に連結する」必要があることから、図10に示したような、大きな形状のものとなって、複雑に組み込まなければならない鉄筋間に設置するには、困難を伴うと考えられる。
【0010】
そこで、本発明者等は、配筋された鉄筋に邪魔されることなく、確実にこの種の基礎用アンカーボルトを支持するにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0011】
すなわち、本発明の目的とするところは、基礎が幅の狭いものであっても、また、配筋された、あるいは配筋される鉄筋に邪魔されることなく、基礎用アンカーボルトを確実に支持することのできる基礎用アンカーボルトの支持装置、及びこれを使用したアンカーボルトの基礎内への施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「基礎30内に埋設されるアンカーボルト20を支持する支持装置10であって、
基礎30が施工される場所に固定される基台11と、この基台11上に立設される支柱12と、この支柱12に設けられて、アンカーボルト20の下部を保持する下側保持部材13と、アンカーボルト20の中間部を保持する上側保持部材14とを備えたことを特徴とする基礎用アンカーボルト20の支持装置10」
である。
【0013】
すなわち、この請求項1に係る支持装置10は、基礎30内に埋設されるアンカーボルト20を支持するものであり、特に、基礎30が施工される場所に、この基礎30内に埋設される鉄筋40が施工される前に設置されるものである。そのために、この支持装置10は、基礎30が施工される場所に固定される基台11と、この基台11上に立設される支柱12と、この支柱12に設けられて、アンカーボルト20の下部を保持する下側保持部材13と、アンカーボルト20の中間部を保持する上側保持部材14とを備えたものである。
【0014】
この支持装置10は、その基台11を利用して、図1〜図3に示すように、基礎30が施工される場所に設置されるものであるが、支柱12自体が文字通り柱状になっているし、この支柱12に下側保持部材13及び上側保持部材14が取り付けられているから、これらの下側保持部材13及び上側保持部材14が鉄筋40の邪魔にならない。このため、鉄筋40を現場施工する場合も、これが予め組まれたものであっても、この支持装置10設置後に設計通り配筋することは十分可能になっている。
【0015】
さて、以上のような支持装置10を、基礎30が施工されるべき場所上に設置するのであるが、それには基台11を、図3または図4に示すように、地面あるいはその上に施工した捨てコンクリート30a上に固定する。そうすれば、この基台11から支柱12が真っ直ぐ上方に立ち上がるから、この支柱12に下側保持部材13や上側保持部材14が取り付けられていても、当該支持装置10の周囲には鉄筋40を配筋するための空間が十分存在することになる。
【0016】
そこで、当該支持装置10の周囲に、図5〜図7に示すように、鉄筋40を配筋する。勿論、鉄筋40を基礎30が施工されるべき場所上に配筋した後に、この支持装置10を設置するようにしてもよい。この配筋後の支持装置10の設置時においても、当該支持装置10が真っ直ぐ立ち上がった形態のものであるから、その設置作業は無理なく行えるのである。
【0017】
支持装置10の設置及び鉄筋40の組み立てが済めば、例えば図1の(b)に示すように、アンカーボルト20の上部及び中間部を、下側保持部材13及び上側保持部材14によって取り付けるのである。これによって、当該支持装置10による鉄筋40間でのアンカーボルト20の支持が完了するのである。勿論、このアンカーボルト20の支持装置10に対する取付は、鉄筋40の組立て前に行っても良いことは言うまでもない。
【0018】
なお、この支持装置10によるアンカーボルト20の上下方向の支持位置は、例えば図5に示すように、当該アンカーボルト20の上端部21が完成後の基礎30から突出し得るように調整する。また、この支持装置10によるアンカーボルト20の垂直方向の支持位置は、上側保持部材14における挿入穴14a内での当該アンカーボルト20の位置調整、及び上側保持部材14自体の、後述する第2長穴15bでの位置調整によって行う。
【0019】
その後は、図5に示すように、当該支持装置10、これによって支持したアンカーボルト20、及び配筋した鉄筋40の周囲に必要な型枠50を組み立てて、この型枠50内に生コンクリートを打設することにより、基礎30が完成されるのである。この生コンクリートの打設の際、この生コンクリートの流れ等による力がアンカーボルト20に掛かるが、このアンカーボルト20は支持装置10によってしっかりと支持されているのであるから、その支持位置や直立状態に変化が与えられることはないのは言うまでもない。
【0020】
従って、この請求項1の支持装置10は、基礎30が幅の狭いものであっても、また、配筋された、あるいは配筋される鉄筋40に邪魔されることなく、基礎用アンカーボルト20を確実に支持し得るものとなっているのである。
【0021】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の基礎用アンカーボルト20の支持装置10について、
「下側保持部材13または上側保持部材14の何れか少なくとも一方を、支柱12に対して取り外し可能にしたこと」
である。
【0022】
すなわち、この請求項2に係る支持装置10は、基礎30の施工場所上に設置した後に鉄筋40を組み立てる場合において、支柱12に取り付けてある下側保持部材13または上側保持部材14が邪魔になることがあり得る場合を想定したものであり、下側保持部材13及び上側保持部材14の何れか少なくとも一方を、支柱12から取り外せるようにしたものである。
【0023】
これらの下側保持部材13や上側保持部材14は、施工現場の状況あるいは鉄筋40配筋状況によって、どれが邪魔になるのか分からないので、支柱12に対する取り外しは、いずれか少なくとも一方としてある。
【0024】
従って、この請求項2の支持装置10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、設置された後に鉄筋40を配筋する場合の自由度が高まったものとなっている。
【0025】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の基礎用アンカーボルト20の支持装置10について
「下側保持部材13は、支柱12に形成した上下方向の第1長穴15aに対して上下動可能に取り付けたこと」
である。
【0026】
すなわち、この請求項3に係る支持装置10では、その下側保持部材13の支柱12に対する取付位置について、上下方向に調整可能としたものである。そのために、この請求項3に係る支持装置10では、図1の(a)に示すように、支柱12に上下方向の第1長穴15aを形成しておき、この第1長穴15aに対して下側保持部材13を、例えばネジボルト13bによって取り付けるようにしたものである。
【0027】
この結果、下側保持部材13は、ネジボルト13bを緩めれば第1長穴15aの上下方向に位置調整自在に移動できるのであり、適宜位置でこのネジボルト13bを締めれば、所定位置で下側保持部材13を支柱12に固定できることになる。
【0028】
この支持装置10によって支持されるアンカーボルト20は、前述したように、その上端部21が基礎30の表面から所定寸法突出していないと、これに対する土台の連結ができないのであるから、当然、その上下方向の位置調整が行えないといけない。勿論、上端部21の突出量の調整は、下側保持部材13に対するアンカーボルト20の固定位置の調整で行えるのではあるが、下側保持部材13にアンカーボルト20を固定した後に位置調整を行う必要が生じたときに、再び下側保持部材13からアンカーボルト20を外すことが困難な場合がある(例えば配筋された鉄筋40の間に手を入れて作業行う等)。その際に、下側保持部材13の支柱12に対する取付位置を調整した方が簡単で早い場合があるから、これに対処できるように、下側保持部材13自体の、支柱12に対する上下方向の位置調整が行えるようにしてあるのである。
【0029】
従って、この請求項3の支持装置10は、上記請求項1または2のそれと同様な機能を発揮する他、アンカーボルト20の上下方向の位置調整を下側保持部材13の位置調整によっても行えるようになっているのである。
【0030】
さらに、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の基礎30用アンカーボルト20の支持装置10について、
「上側保持部材14は、当該上側保持部材14または支柱12に形成した横方向の第2長穴15bに対して横移動可能に取り付けたこと」
である。
【0031】
この請求項4に係る支持装置10では、図1の(b)または図2に示すように、上側保持部材14または支柱12に横方向の第2長穴15bを形成したものであり、この第2長穴15bに対して上側保持部材14を横移動可能に取り付けたものである。勿論、この第2長穴15bに対する上側保持部材14の横移動可能な取り付けは、下側保持部材13の支柱12の上端部に対して横移動可能にするものであるため、第2長穴15bは、上側保持部材14に形成してあっても、また支柱12に形成してあってもよいものである。
【0032】
当該支持装置10の支柱12は、支持装置10の周囲への鉄筋40の配筋作業や、型枠50の組立て施工等によって、その垂直状態が狂うことがあり得る。このため、この支柱12に取り付けてある下側保持部材13及び上側保持部材14によって保持されているアンカーボルト20の垂直状態も狂うことがあるが、下側保持部材13が第2長穴15bによって支柱12の上端部に対して横移動可能になっているのであるから、下側保持部材13の取付位置の、横方向への調整を行うことによって、垂直状態の狂いはある程度解消できる。
【0033】
従って、この請求項4の支持装置10は、上記請求項1〜3のいずれかに係るそれと同様な機能を発揮する他、支持したアンカーボルト20の垂直状態への調整も行えるものとなっている。
【0034】
上記課題を解決するために請求項5に係る発明の採った手段は、
「基礎30が施工される場所に固定される基台11と、この基台11上に立設される支柱12と、この支柱12に設けられて、基礎用アンカーボルト20の下部及び中間部をそれぞれ保持する下側保持部材13及び上側保持部材14とを備えた基礎用アンカーボルト20の支持装置10を使用して、次の各工程を経て、アンカーボルト20を基礎30内に施工する方法。
(1)基礎30が施工される場所に基台11を固定して、支持装置10を前記場所上に立設する工程;
(2)下側保持部材13及び上側保持部材14によってアンカーボルト20の下部及び中間部をそれぞれ保持する工程;
(3)基台11の上側及び支持装置10の周囲に鉄筋40を配筋する工程;
(4)基礎30が施工される場所に、支持装置10及びこれによって支持されたアンカーボルト20の上部21が露出するように、生コンクリートの打設を行う工程。」
である。
【0035】
この請求項5に係るアンカーボルト20の基礎30内への施工方法は、前述してきた請求項1〜請求項4のいずれかに係る支持装置10を使用して、アンカーボルト20を基礎30内に施工する方法であり、上述して来た支持装置10の説明において、当該支持装置10は勿論、行程(1)〜(3)は既に説明済みである。勿論、行程(4)で、基礎30が施工される場所に、支持装置10及びこれによって支持されたアンカーボルト20の上部21が露出するように、生コンクリートの打設を行うことは、基礎30をコンクリートによって構築する上で当然である。
【0036】
以上の、請求項5に係る施工方法を採用することによって、支持装置10及びこれによって支持したアンカーボルト20が、その設置位置に大きな変化をもたらすことなく基礎30内の設計された部分に埋設されることになり、アンカーボルト20の上端部21を設計した通りの位置に正確に突出させることができるのである。
【0037】
従って、この請求項5に係る施工方法によれば、支持装置10やこれによって支持されたアンカーボルト20の位置を変化させることなく、アンカーボルト20の基礎30内への埋設施工が行えるのである。
【発明の効果】
【0038】
以上、説明した通り、本発明の支持装置10は、
「基礎30内に埋設されるアンカーボルト20を支持する支持装置10であって、
基礎30が施工される場所に固定される基台11と、この基台11上に立設される支柱12と、この支柱12に設けられて、アンカーボルト20の下部を保持する下側保持部材13と、アンカーボルト20の中間部を保持する上側保持部材14とを備えたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、基礎30が幅の狭いものであっても、また、配筋された、あるいは配筋される鉄筋40に邪魔されることなく、基礎用アンカーボルト20を確実に支持することのできる基礎用アンカーボルトの支持装置10を提供することができるのである。
【0039】
また、本発明の施工方法は、
「基礎30が施工される場所に固定される基台11と、この基台11上に立設される支柱12と、この支柱12に設けられて、基礎用アンカーボルト20の下部及び中間部をそれぞれ保持する下側保持部材13及び上側保持部材14とを備えた基礎用アンカーボルト20の支持装置10を使用して、次の各工程を経て、アンカーボルト20を基礎30内に施工する方法。
(1)基礎30が施工される場所に基台11を固定して、支持装置10を前記場所上に立設する工程;
(2)下側保持部材13及び上側保持部材14によってアンカーボルト20の下部及び中間部をそれぞれ保持する工程;
(3)基台11の上側及び支持装置10の周囲に鉄筋40を配筋する工程;
(4)基礎30が施工される場所に、支持装置10及びこれによって支持されたアンカーボルト20の上部が露出するように、生コンクリートの第1打設を行う工程」
にその主たる特徴があり、これにより、上記支持装置10を使用して、アンカーボルト20を基礎30の所定位置内に埋設することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る支持装置10を示すもので、(a)はその側面図、(b)は側面図である。
【図2】同支持装置10を示す拡大平面図である。
【図3】下側保持部材13及び上側保持部材14を取り付けたままの同支持装置10を基礎30の施工場所に設置した状態の斜視図である。
【図4】下側保持部材13及び上側保持部材14を外した同支持装置10を基礎30の施工場所に設置した状態の斜視図である。
【図5】同支持装置10にアンカーボルト20を支持させて形成した基礎30の第1例を示す部分縦断面図である。
【図6】同支持装置10にアンカーボルト20を支持させて形成した基礎30の第2例を示す部分縦断面図である。
【図7】同支持装置10にアンカーボルト20を支持させて形成した基礎30の第3例を示す部分縦断面図である。
【図8】特許文献2に示された装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態である支持装置10について説明するが、施工方法については、この実施形態の支持装置10にアンカーボルト20を支持する手順、及びこの支持装置10に支持したアンカーボルト20の周囲に基礎30を施工する実施形態に従って説明していくこととする。
【0042】
図1には、本発明に係る支持装置10の正面図(a)及び側面図(b)が示してあるが、この支持装置10は、主として、基礎30が施工される場所に固定される基台11と、この基台11上に立設される支柱12と、この支柱12に設けられて、アンカーボルト20の下部を保持する下側保持部材13と、アンカーボルト20の中間部を保持する上側保持部材14とを備えている。
【0043】
これらの基台11、支柱12は、同一のL型アングル材を所定寸法に切断することによって形成したものであり、下側保持部材13及び上側保持部材14は、共有L型アングル形状に曲げ加工したものであって、同一材料を効果的に使用するようにしたものである。L型アングル材は、少ない材料で大きな剛性、及び曲げ弾性率を確保できるものであるため、太くて長いアンカーボルト20を支持する部材を構成する材料としては優れたものである。
【0044】
基台11は、アンカーボルト20を支持した支持装置10全体を最下端で支えるものであり、例えば、図2から図4に示したように形成したものである。つまり、この基台11は、所定寸法に切断した2本のL型アングル材を互いに直交するように溶接したものであり、各L型アングル材の水平面には、当該基台11を地面あるいは後述する捨てコンクリート30a上にネジや釘によって固定するための固定穴11aが形成してある。
【0045】
また、この基台11の一部には、図3に示したように、目印11bが形成してあるが、この目印11bは、当該支持装置10によって支持したアンカーボルト20の直下位置の概略を示すものである。そして、図3にも示したように、この基台11の、両L型アングル材が交差している内側に支柱12が立設してあるのである。
【0046】
支柱12は、図8にも示したように、基礎30内に完全に埋設され得る長さ(高さ)を有したもので、本実施形態にあっては、図1の(a)にも示したように、下側保持部材13の取付位置を調整自在にするための第1長穴15aが形成してある。なお、本実施形態の支柱12はL型アングル材によって形成したものであるから、図1の(b)にも示したように、この支柱12の第1長穴15aを形成した面に直交する方向に、後述する下側保持部材13及び上側保持部材14が突出するようになされるものである。
【0047】
また、この支柱12の上部には、図1の(b)あるいは図2にも示したように、後述する上側保持部材14の取付位置を調整するための第2長穴15bが形成してあるが、この第2長穴15bは、当該支持装置10を立てたとき、その長穴方向が水平方向に位置することになるものである。
【0048】
下側保持部材13は、アンカーボルト20の下側部分を支持あるいは保持するものであり、本実施形態のものにあっては、例えば図2に示したように、その水平部に挿入穴13aを形成したものである。つまり、この下側保持部材13は、図1の(b)中の仮想線にて示したように、その挿入穴13a内にアンカーボルト20の下側部分を挿通してから、上下のナットによってアンカーボルト20の下側部分を固定するようにしているものである。なお、この下側保持部材13の、支柱12に対する固定は、図1の(a)及び(b)に示したように、ネジボルト13bの締結によって、第1長穴15aの適宜位置で行うようにしたものである。
【0049】
上側保持部材14は、図1及び図2に示したように、支柱12の上端部に連結されるものであり、前述したように、当該上側保持部材14自体または支柱12側に第2長穴15bが形成してあって、この第2長穴15bに対してはネジボルト14bによって取付られるものである。勿論、この上側保持部材14の、支柱12の上端部に対する連結位置は、上述したように、第2長穴15bの長さ範囲内で自由に決定できるものである。
【0050】
また、この上側保持部材14の水平部分には、図2にも示したように、挿入穴14aが形成してあって、この挿入穴14aに挿通したアンカーボルト20の上部(実質的には中間部になることが多い)を、当該上側保持部材14に対してナット等によって固定するようにしてある。
【0051】
上述した下側保持部材13の挿入穴13a及び上側保持部材14の挿入穴14aは、それぞれ「円」及びこの円を含む「長円」に形成されて、図2に示したように、平面視で重なるものであるが、その大きさは支持すべきアンカーボルト20の直径に合わせられる。円である挿入穴13aは、アンカーボルト20の下部を殆どズレさせることなく位置決めでき、長穴である挿入穴14aは、その長穴の範囲内でアンカーボルト20の支持位置の調整を行えるようにしている。
【0052】
特に、上側保持部材14の挿入穴14aの周囲には、図1及び図2に示したように、2つの支持板を、これらが互いに対向するように打ち抜き加工によって上側保持部材14に直立させてあり、これらにネジボルト14cがそれぞれ螺着してある。これらのネジボルト14cを螺進螺退させることにより、長穴である挿入穴14a内に挿通してあるアンカーボルト20の挿入穴14a内での位置調整と固定が行えるのである。換言すれば、この挿入穴14aの長軸方向でのアンカーボルト20の位置調整を行うことによって、アンカーボルト20の垂直方向への位置調整が行えるのである。
【0053】
さて、以上のような支持装置10は、基礎30が施工されるべき場所上に設置するのであるが、その前に、当該支持装置10を設置すべき場所に、例えば、図3または図4に示したように、ほぼ水平な捨てコンクリート30aを施工しておくとよい。捨てコンクリート30aを施工しておけば、この捨てコンクリート30aに対して支持装置10の基台11を固定したとき、支柱12の垂直方向への立設状態を容易に実現することができるからである。勿論、捨てコンクリート30aが存在していれば、これに対して、基台11の各固定穴11aを通した釘やネジの打ち込みが容易に行え、基台11の、地面あるいはその上に施工した捨てコンクリート30a上への固定が容易に行えるからである。
【0054】
以上のようにして、基台11の、地面あるいはその上に施工した捨てコンクリート30a上への固定がなされれば、図3に示したように、この基台11から細い支柱12が真っ直ぐ上方に立ち上がるから、この支柱12に下側保持部材13や上側保持部材14が取り付けられていても、当該支持装置10の周囲には鉄筋40を配筋するための空間が十分存在することになる。勿論、このとき、もし下側保持部材13や上側保持部材14の少なくとも一方が鉄筋40配筋の邪魔になるようであれば、図4に示したように、これら下側保持部材13や上側保持部材14を取り外しておけばよい。
【0055】
次いで、当該支持装置10の周囲に、例えば図5〜図7に示したように、基礎30内に埋設すべき鉄筋40を配筋するのであるが、支持装置10の周囲には鉄筋40の配筋空間が十分存在しているから、予め組まれたものを採用した場合であっても、現場施工で組まれるものであっても十分配筋できる。
【0056】
支持装置10の設置及び鉄筋40の組み立てが済めば、あるいは支持装置10の設置後に、例えば図1の(b)に示したように、アンカーボルト20の上部及び中間部を、下側保持部材13及び上側保持部材14によって取り付けるのである。これによって、当該支持装置10による鉄筋40間でのアンカーボルト20の支持が完了するのであるが、このアンカーボルト20の上下方向の支持位置は、図5に示したように、当該アンカーボルト20の上端部21が完成後の基礎30から突出し得るように調整しておくことは当然である。
【0057】
その後は、例えば図5に示したように、当該支持装置10、これによって支持したアンカーボルト20、及び配筋した鉄筋40の周囲に必要な型枠50を組み立てて、この型枠50内に生コンクリートを打設することにより、基礎30が完成されるのである。この生コンクリートの打設の際、この生コンクリートの流れ等による力がアンカーボルト20に掛かるが、このアンカーボルト20は支持装置10によってしっかりと支持されているのであるから、その支持位置や直立状態に変化が与えられることはないのは言うまでもない。
【0058】
以上の施工方法を採用することによって、支持装置10及びこれによって支持したアンカーボルト20が、その設置位置に大きな変化をもたらすことなく基礎30内の設計された部分に埋設されることになり、アンカーボルト20の上端部21を設計した通りの位置に正確に突出させることができる。
【0059】
この施工方法にあっては、特に、下側保持部材13及び上側保持部材14によってアンカーボルト20の下部及び中間部をそれぞれ保持するにあたって、下側保持部材13及び上側保持部材14の支柱12に対する位置調整、及び下側保持部材13及び上側保持部材14に対するアンカーボルト20の位置調整を行うとよい。
【0060】
勿論、上述した施工方法によれば、基本的には、支持装置10やこれによって支持しているアンカーボルト20の位置ズレは発生しないのであるが、生コンクリートを打設する前に、下側保持部材13及び上側保持部材14の支柱12に対する位置調整、及び下側保持部材13及び上側保持部材14に対するアンカーボルト20の位置調整を行っておけば、アンカーボルト20の上端部21を、基礎30の上面の設計された箇所から突出させるために予め確認するためにも意味がある。しかも、これらの位置調整は、生コンクリートが打設される前に行った方が、生コンクリートに邪魔されながら行うよりも簡単に行えることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
10 支持装置
11 基台
11a 固定穴
11b 目印
12 支柱
13 下側保持部材
13a 挿入穴
13b ネジボルト
14 上側保持部材
14a 挿入穴
14b・14c ネジボルト
15a 第1長穴
15b 第2長穴
20 アンカーボルト
21 上端部
30 基礎
30a 捨てコンクリート
31 ベタ基礎
32 布基礎
40 鉄筋
50 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎内に埋設されるアンカーボルトを支持する支持装置であって、
前記基礎が施工される場所に固定される基台と、この基台上に立設される支柱と、この支柱に設けられて、前記アンカーボルトの下部を保持する下側保持部材と、前記アンカーボルトの中間部を保持する上側保持部材とを備えたことを特徴とする基礎用アンカーボルトの支持装置。
【請求項2】
前記下側保持部材または上側保持部材の何れか少なくとも一方を、前記支柱に対して取り外し可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の基礎用アンカーボルトの支持装置。
【請求項3】
前記下側保持部材は、前記支柱に形成した上下方向の第1長穴に対して上下動可能に取り付けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基礎用アンカーボルトの支持装置。
【請求項4】
前記上側保持部材は、当該上側保持部材または前記支柱に形成した横方向の第2長穴に対して横移動可能に取り付けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の基礎用アンカーボルトの支持装置。
【請求項5】
基礎が施工される場所に固定される基台と、この基台上に立設される支柱と、この支柱に設けられて、基礎用アンカーボルトの下部及び中間部をそれぞれ保持する下側保持部材及び上側保持部材とを備えた基礎用アンカーボルトの支持装置を使用して、次の各工程を経て、前記アンカーボルトを前記基礎内に施工する方法。
(1)前記基礎が施工される場所に前記基台を固定して、前記支持装置を前記場所上に立設する工程;
(2)前記下側保持部材及び上側保持部材によって前記アンカーボルトの下部及び中間部をそれぞれ保持する工程;
(3)前記基台の上側及び前記支持装置の周囲に鉄筋を配筋する工程;
(4)前記基礎が施工される場所に、前記支持装置及びこれによって支持されたアンカーボルトの上部が露出するように、生コンクリートの打設を行う工程。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−251388(P2012−251388A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126141(P2011−126141)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【出願人】(000128038)株式会社エヌ・エス・ピー (33)
【Fターム(参考)】