説明

塗工紙の製造方法

【課題】本発明の目的は、塗工物のスジ状欠陥の問題を解決することにあり、安定した品質と操業性を併せ持つ塗工紙の製造方法を提供するものである。
【解決手段】ブレードコーターに用いられる塗工用ブレードが、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢する、先端部とは異なる素材のブレード母材とから構成されており、該先端部がフッ素樹脂である塗工用ブレードを用いてウェブ上に塗工液を塗工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工紙の製造方法に関し、更に詳しくは、塗工用ブレードの寿命が長く、操業安定性に優れた塗工紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷用紙、電子写真用記録紙、白板紙、インクジェット用紙、感熱紙、感圧紙、圧着紙などの塗工紙について高性能化が進み、画像再現性や圧着の均一性などについても高いレベルの品質が求められるようになってきた。
【0003】
しかしながら、従来の金属製ブレード、セラミックブレード(例えば、特許文献1参照)、メッキコーティングブレード(例えば、特許文献2参照)などブレードによる塗工では、ブレード直下における親水性の凝集物や異物に起因するストリークが発生し安定した操業性が得られなかった。この為、印刷用紙、電子写真用記録紙、白板紙、インクジェット用紙、感熱紙、感圧紙などでストリークによる画像面のスジ状欠陥の発生が避けられず、市場の要求に応える充分な品質が得られなかった。
【0004】
ここでストリークとは、ウェブ(塗工紙)にファウンテンアプリケーターやロールアプリケーターで過剰に塗布された塗工液を板状のブレードで掻きおとすブレードコーターにおいて、ブレードの先端部とウェブの間に、異物もしくは塗工液の固形化した凝集体が堆積し、ウエブの流れ方向にスジ状の欠陥を生じる現象であり、塗工紙の画像再現性に大きな欠陥を生じる。
【0005】
また、ウェブにロールアプリケーターで塗布された過剰な塗工液をエアで掻きおとす塗工方式であるエアナイフ塗工や、スロットダイ等から塗工液の液膜をカーテン状に押しだし走行するウエブに塗布するカーテン塗工をした場合、前者ではエアナイフムラ、後者では塗工中の同伴空気によるカーテンムラ等の問題点が発生する為、不均一な原紙被覆性しか得られなかった。
【0006】
さらに、ブレードをバッキングロールに押しつけていく一般的な方法としては、ブレードの保持部材に移動装置を取り付け、その移動距離により、ブレードのたわみを制御する方法が行われている。しかしながら、従来の金属製ブレード、セラミックブレード、メッキコーティングブレードなど硬度の高いブレードにおいては、ストリークの発生頻度が高いため、たわみの制御範囲が著しく限定され、良好な品質の塗工紙を製造する事が困難だった。
【特許文献1】特開平9−173943号公報
【特許文献2】特開2002−254014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記塗工物のスジ状欠陥の問題を解決することにあり、安定した品質と操業性を併せ持つ塗工紙の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、先端部とブレード母材の異なる素材から構成される塗工用ブレードを用いた塗工紙の製造方法を発明するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ブレードコーターに用いられる塗工用ブレードが、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢する、先端部とは異なる素材のブレード母材とから構成されており、該先端部がフッ素樹脂である塗工用ブレードを用いることを特徴とするものである。
【0010】
塗工用ブレードの先端部が先端角度で3〜40°の角度を有すると好ましい。
【0011】
さらに好ましくは、ブレード母材をバッキングロール方向への押し付け手段として、ブレード母材の保持部材に駆動装置を付設し、ブレード母材のたわみを制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗工欠陥が発生し難い製造方法により安定した品質と操業性を併せ持つ塗工紙を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る塗工用ブレードを使用した塗工紙の製造方法について、移動するウェブ上へ塗工液を塗布することに関連して、図を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る塗工用ブレードは、図1に示すように、ウェブ3と接して塗工液6を掻き取る先端部2と、この先端部2をウェブ3に付勢する、先端部2とは異なる素材のブレード母材1とから構成されており、ブレード母材1はスチールその他の形状安定材料からなり、このブレード母材1には、ウェブ3に接触させて過剰の塗工液を掻き取ることを意図した、ブレード母材1とは異なる素材で構成される先端部2を備えている。この先端部2を備えたブレード母材1の先端部2とは反対部分をブレード保持部材であるクランプ7に設置し、このクランプ7をバッキングロール4の方向に向かって移動することによりブレード母材1がたわみ、その反力としてウェブ3に係接触した先端部2に押しつけ圧が発生して塗工液6を掻き落とし、塗工量の計量を行う。ファウンテン・アプリケーター5で、塗工液6をウェブ3に付着させる。
【0015】
発明によれば、ブレード塗工において先端部2をフッ素樹脂で構成される塗工用ブレードを使用する。また、ブレード母材の素材としては、金属材料としてSUS304、高炭素鋼(JIS記号ではSK−4)、リン青銅を、また、プラスチック材料として、紙繊維(基材)強化フェノール樹脂、ガラス繊維(基材)強化エポキシ樹脂、ポリエチレン、超高子量ポリエチレン、炭素繊維強化超高分子量ポリエチレンを用いることができる。好ましくは、高炭素鋼を用いることが好ましい。
【0016】
本発明に係る塗工用ブレードは図1に示すように移動するウェブ3に接触している先端部2がフッ素樹脂で構成されている事によって、そのフッ素樹脂が有する撥水性、防汚性を持つため、該先端部直下で発生する塗工液中成分に起因する親水性凝集物や親水性異物が先端部に付着し難くなる。また、フッ素樹脂の有する表面摩擦係数の低さが、これらの異物を先端部直下に留まらせ難くするため、ストリークが発生し難くなる。
【0017】
また、塗工開始時には塗工液6がウェブ3に塗布される前に先端部2が移動するウェブ3と接触する、いわゆるドライタッチの状態が発生し、金属ブレードではこの際に発生する摩擦熱によってブレードが変形する問題が発生するが、本発明ではフッ素樹脂の有する耐熱性によって、ブレード自体の変形の問題は発生しない。
【0018】
また、フッ素樹脂の有する耐摩耗性や耐薬品性により、金属やセラミックのブレードに比べ、ブレードの寿命が長くなる。
【0019】
本発明では、ブレード母材1をバッキングロール4方向に押し付ける方法としては、ブレード母材を保持するクランプ7にステッピングモーターで駆動する移動装置を取り付け、そのステッピングモーターのパルス数(1パルスあたり1〜10μm程度移動し、以下、ステッピングパルスとする)が移動距離を示し、この数値でブレード母材1のたわみを制御する。
【0020】
ブレード母材1にたわみを発生させると、ブレード母材1に設置された先端部2がウェブ3に接触する圧力分布が変化する。すなわち、たわみが少ない状態に制御された場合、先端部2の上端の角部が主にウェブ3と接触するため、上端部の圧力が極端に高く下端部が低い状態となる。この状態では上端部側の圧力によって塗工液の脱水が促進されるために凝集物を発生させやすくなり、結果としてストリークの発生確率が増える。逆にたわみが大きすぎると下端部の圧力が極端に高くなり、先端部の圧力が下がるため、下端部で塗工液の脱水が促進されるために凝集物を発生させやすくなり、結果としてストリークの発生確率が増える。このため、たわみを制御するステッピングパルスを適性な領域に制御することが必要となる。
【0021】
しかしながら、従来の金属製、セラミック、メッキコーティング等の硬度の高いブレードを使用した場合、ストリークの発生頻度が高いため、たわみの制御範囲が著しく限定され、良好な品質の塗工紙を製造することが困難であったが、本発明に係る塗工用ブレードを使用した場合、たわみの最適な制御範囲が広く、安定的に良好な塗工紙を製造することができる。
【0022】
本発明のコーティング・ブレードに設置される先端部2の先端角度8は、3〜40°が好ましい。3°〜40°の形状としたブレードで製造した塗工紙は、先端部2とウェブ3の間にかかる圧力の最大値が減少しつつ全体の圧力分布がより均一化され、異物等が堆積しにくい為、ストリークの発生の少ない良好な画像再現性を持つ塗工紙を製造することができる。先端角度が3°より小さい場合、ストリークの発生頻度が多くなる傾向がある。また、先端角度40°より大きい場合はブリーディングの発生頻度が大きくなる傾向がある。
【0023】
本発明における先端部2として適用するフッ素樹脂(括弧内に略号を示した)としては、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、トリフルオロクロロエチレン重合体(CTFE)、トリフルオロクロロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)およびポリビニリデンフルオライド(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上の重合体であることが好ましい。
【0024】
上記した熱可塑性フッ素樹脂は、触媒乳化重合、懸濁重合、触媒溶液重合、気相重合および電離性放射線照射重合などの各種重合方式が製造段階で採用できる。
【0025】
以上の条件に該当する代表例としては、PFAである三井・デュポンフロロケミカル社製:PFA MP10、FEPである三井・デュポンフロロケミカル社製:テフロン(R)FEP100、ETFEである旭硝子社製:アフロンCOP、CTFEであるダイキン工業社製:ネオフロンCTFE、PVDFである呉羽化学社製:KFポリマー、PVFであるデュポン社製:Tedlar等が挙げられる。
【0026】
本発明における先端部2として以下に示すフッ素ゴムでも良い。フッ素ゴムとは、平均して1個以上のフッ素原子を含む単位モノマーの重合体または共重合体であって、ガラス転移点が室温以下であり、室温でゴム状弾性を有するものであれば、特に限定されるものでなく、広範囲のものを使用することができる。
【0027】
フッ素ゴムは、その製造段階で塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、触媒重合、電離性放射線重合、レドックス重合などの重合方式を採用したものであってよい。
【0028】
以上の条件を満足するフッ素ゴムの市販品としては、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体である旭硝子社製:アフラス、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体であるデュポン・昭和電工社製:バイトン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体であるアウジモント社製:テクノフロン、フルオロシリコーン系エラストマーであるダウコーニング社製:シラスティックLS、フォスファゼン系フッ素ゴムであるファイアストーン社製:PNF、パーフルオロ系フッ素ゴムであるダイキン工業社製:ダイエルパーフロなどを挙げることができる。
【0029】
上記したフッ素樹脂及びフッ素ゴムは、弾性体としての特性を有し、この発明においてはさらに優れた摺動特性を付与するために低分子量含フッ素重合体を配合しても良い。
【0030】
ここで低分子量含フッ素重合体は、テトラフルオロエチレン(TFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフルオロオレフィン重合体、主要構造単位−Cn2n−O−(nは1〜4の整数)を有するフルオロポリエーテルなどが挙げられる。
【0031】
このような重合体としては、他の配合材料や添加剤に対する親和性(密着性)を向上させるために、イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基、エステル等の官能基を含む構造単位を有するものを使用してよい。
【0032】
なお、この発明の目的を損なわない範囲で、上記成分の他に各種添加剤が配合されていても良い。たとえば、フッ素ゴムの加硫剤としてイソシアネート、有機過酸化物等、ステアリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの酸化防止剤または受酸剤、カーボンなどの帯電防止剤、ホワイトカーボン(シリカ)、アルミナなどの充填剤、その他金属酸化物、着色剤、難燃剤などを便宜加えても良い。
【0033】
以上の各種原材料を混合する方法は、特に限定するものではなく、通常広く用いられている方法、例えば、主原料になるエラストマー、その他諸原料をそれぞれ個別に順次、または同時にロール混合機その他混合機により混合すれば良い。なお、このとき摩擦による発熱を防止する意味で温調器を設けることが望ましい。
【0034】
本発明による塗工用ブレードで使用されるブレード母材1は、適切には0.2〜2mmの範囲内にある厚さを有する。設置した先端部2は、適切には0.5〜5mmの範囲内にある厚さを有する。また、ブレードの平面でその長手方向に対して直角に見た先端部2の幅は、適切には5〜25mmであるが、この寸法は特に必須ではない。
【0035】
本発明において、「塗工液」とは、顔料塗被紙用塗布液として無機あるいは有機顔料を分散せしめたもの、インクジェット記録紙用塗布液、感熱記録紙用塗布液として発色剤と顕色剤を分散せしめたもの、感圧記録紙用塗布液として発色剤を含むマイクロカプセルあるいは顕色剤を分散せしめたものなどが挙げられる。
【0036】
本発明において、塗工液に用いられる顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、焼成カオリン、シリカ、アルミナ、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトポンなどの複合合成顔料、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナなどの半合成顔料、有機密実顔料、有機中空顔料などの合成樹脂顔料が挙げられる。
【0037】
塗工液に用いられる澱粉としては、通常の澱紛、酸化澱紛、エーテル化澱紛、エステル化澱紛、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉が挙げられる。
【0038】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0039】
塗工液に用いられる澱粉以外のバインダーとしては、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、尿素またはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。
【0040】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、カチオン化剤、滑剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0041】
本発明において塗工液を塗布するウェブである塗工用基材としては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかで抄造された紙を用いることができる。その他基材として合成紙、フィルム、不織布も用いることができる。
【0042】
本発明に係る紙においては、ノーサイズプレス紙、澱紛、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた紙などを用いることができる。また、必要とする紙の密度、平滑度を得るために各種カレンダー処理を施す場合も有る。また、一連の操業で、塗工、乾燥されたオフセット輪転印刷用塗工紙は、必要に応じて各種カレンダー処理が施される。
【0043】
本発明において、塗工量としては、乾燥質量として、1〜40g/m2であり、好ましくは2〜30g/m2である。
【0044】
また、本発明において、塗工層の層構造は特に単層に限定されるものではなく、必要に応じて、2層以上の塗工層であってもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお実施例中の部および%は、特に指定のない限り、すべて質量部および質量%を示す。
【0046】
実施例1
<パルプ配合>
LBKP(広葉樹漂白クラフトパルプ 濾水度440mlcsf) 70部
NBKP(針葉樹漂白クラフトパルプ 濾水度490mlcsf) 30部
【0047】
<内添薬品>
炭酸カルシウム(*紙中灰分で表示) *8部
カチオン化澱粉 1.0部
カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で1%スラリーに調整し、長網抄紙機により、坪量70g/m2の紙を抄造した。
【0048】
<塗工液の配合>
微粒カオリンクレー 20部
一級カオリンクレー 50部
重質炭酸カルシウム 30部
ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
ラテックスバインダー(スチレン・ブタジエン) 10部
燐酸エステル澱粉 5部
上記配合に水を加えて、塗工液濃度が60%になるように調整し、10%水酸化ナトリウム溶液を用いて、塗工液をpH9.6に調製した。
【0049】
<ブレードの仕様>
ブレード母材の幅 81mm
ブレード母材の厚さ 0.4mm
ブレード母材の素材 高炭素鋼SK4
先端部の厚さ 0.2mm
先端部の幅 15mm
先端部の先端角度 10°
先端部の素材 テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
【0050】
上記により得られた原紙に対して、塗工液を上記の配合により調製し、ファウンテンアプリケーション/ベントブレード方式塗工機を用いて、塗工速度350m/分で塗工液を片面10g/m2塗工し、乾燥して塗工紙を得た。
【0051】
この状態で塗工後の塗工紙(カレンダー処理の前)をサンプリングし、ISO8791−4に準拠して測定したエアリーク式紙平滑度試験器パーカープリントサーフで動的平滑度(単位はμm)を測定した。この値を確認し、塗工装置のステッピング・パルスの条件を調整して、動的平滑度が2μm程度となるよう条件を設定した上で再度塗工し、塗工紙を得た。
【0052】
得られた塗工紙に対し、オフラインでスーパーカレンダー装置(段数:10段、剛性ロール:外径400mmのチルドロール、弾性ロール:外径400mmのコットンロール、線圧:220kN/m)を用いてカレンダリング処理を施し、実施例1の塗工紙を製造した。
【0053】
実施例2
実施例1における、先端部の先端角度を1°にした以外は実施例1と同様にして、実施例2の塗工紙を製造した。
【0054】
実施例3
実施例1における、先端部の先端角度を43°にした以外は実施例1と同様にして、実施例3の塗工紙を製造した。
【0055】
比較例1
実施例1における塗工用ブレードに替えて以下に示す仕様の先端部と母材が一体となった金属ブレードを使用し、塗工装置の条件を調整して動的平滑度が最も小さくなるよう条件を設定した以外は実施例1と同様にして、比較例1の塗工紙を製造した。
<金属ブレードの仕様>
ブレードの幅 81mm
ブレードの厚さ 0.4mm
金属の素材 高炭素鋼SK4
先端角度 10°
【0056】
比較例2
実施例1における塗工用ブレードに替えて以下に示す仕様の塗工用ブレードを使用し、塗工装置の条件を調整して動的平滑度が最も小さくなるよう条件を設定した以外は実施例1と同様にして、比較例2の塗工紙を製造した。
<塗工用ブレードの仕様>
ブレード母材の幅 81mm
ブレード母材の厚さ 0.4mm
ブレード母材の素材 高炭素鋼SK4
先端部の厚さ 0.2mm
先端部の幅 15mm
先端部の先端角度 0°
先端部の素材 クロムメッキ
【0057】
上記実施例1〜3および比較例1〜2により得られた印刷用塗工紙について、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
【0058】
<評価方法>
(1)印刷光沢
RI印刷適性試験機を用い、藍色、紅色、黄色(インキ量各0.2cc)の重色ベタ印刷を施した後、グロスメーターにて、光沢を60°−60°反射率で評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):印刷光沢が70%以上
○(良好) :印刷光沢が65%以上で70%未満
△(普通) :印刷光沢が55%以上で65%未満
×(不良) :印刷光沢が55%未満
【0059】
(2)燃焼テスト
燃焼テストは、塗工紙を約10%塩化アンモニウム溶液で湿らせ、炉内で塗工紙を300〜400℃まで加熱したときに、この化学薬品によってセルロース繊維が黒くなる。それ故、黒い基体とは対照的に白い塗工層が現れ、この均一性を官能評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):白い塗工層がほぼ完全に均一
○(良好) :黒い繊維部分が若干認められるが全体的に均一
△(普通) :黒い繊維部分が全面積の約1/3を占め、部分的に不均一
×(不良) :黒い繊維部分が全面積の半分以上を占め全面不均一
【0060】
(3)印刷ムラ
印刷光沢の評価時と同様に単色印刷を施して製造した印刷用塗工紙における印刷ムラを目視観察した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):印刷ムラが全く観察されない。
○(良好) :印刷ムラがごく僅かに観察されるが、製品として良好。
△(普通) :印刷ムラが観察されるが製品として可のレベル。
×(不良) :印刷ムラが観察され、製品として使用不可。
【0061】
(4)ブレード耐久性試験
使用したブレードが塗工紙の動的平滑度に悪影響を及ぼさず塗工可能だったウエブ長さで評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):100000m以上
○(良好) :50000m以上、100000m未満
△(普通) :20000m以上、50000m未満
×(不良) :20000m未満
【0062】
(5)ストリーク特性
操業中、10000mあたりに発生したストリークの本数。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):1本未満
○(良好) :1本以上、3本未満
△(普通) :3本以上、10本未満
×(不良) :10本以上
【0063】
(6)ブリーディング特性
操業中、ブレード背面に発生したブリーディングの程度を目視評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):全く発生なし。
○(良好) :一部分もしくはごく僅かに発生する。
△(普通) :部分的に発生する。
×(不良) :全面に発生する。
【0064】
【表1】

【0065】
評価:
実施例1では、非常に良好な印刷光沢、原紙被覆性を示すと共に、ブレード耐久性、ストリーク特性、ブリーディング特性などの操業性について非常に良好であった。実施例2は先端部の先端角度が1°と低くなった為、ストリークでやや評価が下がるが、充分良好な原紙被覆性、操業性を示した。実施例3は先端部の先端角度が43°と高くなった為、ブリーディングでやや評価が下がるが、充分良好な原紙被覆性、操業性を示した。比較例1は金属ブレードを使用した以外は実施例1と同様の条件で実施したが、ブレード耐久性、ストリーク特性が明らかに実施例1〜3に劣っていた。比較例2は先端部にクロムメッキを設けた塗工用ブレードを使用した以外は実施例1と同様の条件で実施したが、ブレード耐久性、ストリーク特性、ブリーディング特性が実施例1〜3に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、塗工紙において安定した品質と操業性を合わせ持つことから良好で安定した画像再現性を有する製品を生産することができる製造方法であるので、印刷用塗工紙、白板紙、電子写真用記録紙、インクジェット用紙、感熱紙、感圧紙など塗工紙に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】塗工用ブレードがブレードコーターに設置され塗工している状態を示す断面図。
【図2】塗工用ブレードに設けられた先端角度を示す断面図。
【符号の説明】
【0068】
1 ブレード母材
2 先端部
3 ウェブ
4 バッキングロール
5 ファウンテン・アプリケーター
6 塗工液
7 クランプ
8 先端角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードコーターに用いられる塗工用ブレードが、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢する、先端部とは異なる素材のブレード母材とから構成されており、該先端部がフッ素樹脂である塗工用ブレードを用いてウェブ上に塗工液を塗工することを特徴とする塗工紙の製造方法。
【請求項2】
該先端部が先端角3〜40°の角度を有することを特徴とする請求項1記載の塗工紙の製造方法。
【請求項3】
ブレード母材をバッキングロール方向への押し付け手段として、ブレード母材の保持部材に駆動装置を付設し、ブレード母材のたわみを制御することを特徴とする請求項1または2記載の塗工紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−191824(P2007−191824A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11847(P2006−11847)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】