説明

塗布組成物、硬化物、光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置

【課題】高い耐擦傷性を有する塗膜を形成できる塗布組成物、これを用いた耐擦傷性の向上された硬化物、光学フィルム、反射防止フィルム、該光学フィルムもしくは該反射防止フィルムを有する偏光板及び画像表示装置を提供すること。
【解決手段】下記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物により表面処理された無機微粒子を少なくとも1種含有する塗布組成物。
一般式(A)


(式中、R1は光及び/又は熱によりラジカルが発生する重合開始部位を有する置換アルキル基を表し、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、又は不飽和結合を有する重合性基を有する置換アルキル基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を、nは0〜2の整数を、pは1〜3の整数を表す。mとnとpの合計は4である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐擦傷性を有する塗膜を形成できる塗布組成物、これを用いた硬化物、光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料・無機材料を配合して、接着剤、外装塗料、ハードコート、反射防止フィルムなどの用途において、耐擦傷性、硬化物の強度、接触した他の素材との密着などを向上させることが検討されている。中でも、重合硬化系の有機材料との組み合わせにおいて、重合性基を含有するアルコキシシラン及び/又はその加水分解縮合物が注目されている。
【0003】
例えば、特定のポリアルコキシポリシロキサンと重合性シランカップリング剤との併用が提案されているが、ポリアルコキシポリシロキサンと重合性シランカップリング剤との反応が十分に行いにくく、重合性基の導入率が低いために、硬化物の耐擦傷性や強度は十分ではない(特許文献1)。また、有機官能基を含むアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの部分共加水分解縮合物が報告されているが、液の保存性は十分なものではなかった(特許文献2)。
【0004】
反射防止フィルムはディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層への密着性が必要である。一般に、反射防止フィルムは、支持体上に高屈折率層、さらにその上に適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。
【0005】
材料の屈折率を下げるには、(1)フッ素原子を導入する、(2)密度を下げる(空隙を導入する)という手段があるがいずれも皮膜強度および密着性が損なわれ耐擦傷性が低下する方向であり、低い屈折率と高い耐傷性の両立は困難な課題であった。
【0006】
特定の構造を有するオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物によって表面処理された無機微粒子が有機溶媒中に分散してなる無機微粒子分散物が開示され、これら粒子を低屈折率層に用いて耐擦傷性を改良する試みがなされており、一定の効果があることが示されている(特許文献3)。ディスプレイはますます使用される態様が多様化しており、取り扱い性に優れた、さらに耐擦傷性が向上された塗膜を形成できる塗布組成物が求められている。
【特許文献1】特開平9−169847号公報
【特許文献2】特開平9−40909号公報
【特許文献3】特開2005−307158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い耐擦傷性を有する塗膜を形成できる塗布組成物、これを用いた耐擦傷性の向上された硬化物、光学フィルム、反射防止フィルム、該光学フィルムもしくは該反射防止フィルムを有する偏光板及び画像表示装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、重合開始部位を有し、水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接結合している、オルガノシラン化合物の加水分解
物および/またはその部分縮合物を用いて表面処理された少なくとも1種の無機微粒子を含有する塗布組成物を使用することにより、塗膜形成時に迅速に硬化でき、耐擦傷性に優れた塗膜が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
[1] 下記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物により表面処理された無機微粒子を少なくとも1種含有する塗布組成物。
【0010】
一般式(A)
【化1】

【0011】
(式中、R1は光及び/又は熱によりラジカルが発生する重合開始部位を有する置換アルキル基を表し、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、又は不飽和結合を有する重合性基を有する置換アルキル基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を、nは0〜2の整数を、pは1〜3の整数を表す。mとnとpの合計は4である。)
[2] 前記無機微粒子がケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、マグネシウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物微粒子又はフッ化マグネシウムを含有する微粒子である[1]に記載の組成物。
[3] 前記無機微粒子が中空の酸化物微粒子又は中空の微粒子である[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] さらに光及び/又は熱エネルギーにより硬化する皮膜形成化合物を含む[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] さらに一般式(A)以外のオルガノシラン化合物で表面処理された無機微粒子
を含有し、無機微粒子が下記群Aから選ばれる[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
(群A)
ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、亜鉛、錫、アンチモンおよびケイ素からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物微粒子、又はフッ化マグネシウムを含有する微粒子。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の組成物を硬化してなる硬化物。
[7] 透明支持体上に[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物を塗布形成してなる層を有する光学フィルム。
[8] 透明支持体上に低屈折率層を有する反射防止フィルムであって、低屈折率層が[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物を塗布形成してなる層である反射防止フィルム。
[9] 偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムとを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、[7]に記載の光学フィルム及び[8]に記載の反射防止フィルムのいずれかである偏光板。
[10] [7]に記載の光学フィルム、[8]に記載の反射防止フィルム、[9]に記載の偏光板のいずれかを有する画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗布組成物は、一般式(A)で表される重合開始部位を有し、水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接結合している、オルガノシラン化合物の加水分解物および
/またはその部分縮合物を用いて表面処理された少なくとも1種の無機微粒子を含有するので、塗膜形成時に該微粒子近傍の迅速な硬化が可能であり、これにより得られる塗膜の耐擦傷性がより向上する。このため、本発明の塗布組成物を使用した光学フィルムおよび反射防止フィルムは、十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性がより向上されたものとなる。
【0013】
また本発明の塗布組成物では、光及び/又は熱エネルギーにより硬化する皮膜形成化合物をさらに含有する場合、一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物により表面処理された無機微粒子(以下、本発明の無機微粒子と称することがある。)の重合開始部位が皮膜形成化合物の重合部位近傍に配置されて重合開始剤として作用すると考えられる。その結果、有効に架橋反応が進行し結合性の向上が図れ、優れた耐擦傷性を奏すると考えられる。
【0014】
さらに本発明の塗布組成物では、一般式(A)以外のオルガノシラン化合物(好ましくは重合性基を有するオルガノシロキサン化合物)で表面処理された無機微粒子をさらに含有する場合、本発明の無機微粒子の重合開始部位が一般式(A)以外のオルガノシラン化合物の(重合部位)近傍に配置されて重合開始剤として作用すると考えられる。その結果、上記と同様な効果を奏するものと考えられる。
【0015】
さらに本発明の塗布組成物では、重合開始部位が無機微粒子表面に固定されているため、耐揮散性・耐拡散性が向上しているので、塗膜を硬化する際に高温の工程を経ても重合開始部位が膜外に揮散することが抑制されたり、隣接層を塗布した場合に隣接層へ抽出拡散されることが抑制されるため、塗膜形成時に該微粒子近傍を確実に硬化することが可能であり、これにより得られる塗膜の耐擦傷性がより向上する。
【0016】
さらに本発明によれば、該光学フィルム、該反射防止フィルム、これらを用いた偏光板をディスプレイ装置に配置することにより、優れた耐擦傷性とともに外光の映り込みや背景の映りこみを防止することができ、極めて高い視認性を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
【0018】
〔塗布組成物〕
本発明の塗布組成物は、重合開始部位を有する下記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物を用いて表面処理された少なくとも1種の無機微粒子を含有する。
【0019】
一般式(A)
【化2】

【0020】
式中、R1は光及び/又は熱によりラジカルが発生する重合開始部位を有する置換アルキル基を表し、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、又は不飽和結合を有する重合性基を有する置換アルキル基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数
を、nは0〜2の整数を、pは1〜3の整数を表す。mとnとpの合計は4である。
【0021】
なお、本明細書において、前記の一般式(A)、および/または一般式(A)以外で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物を、ゾル成分またはオルガノシランゾルと総称することがある。
【0022】
本発明の塗布組成物は、上記の表面処理された無機微粒子を構成成分とし、更に被膜形成化合物及び/又は一般式(A)以外のオルガノシラン化合物で表面処理された無機微粒子を含むことが好ましい。優れた耐擦傷性のためには、被膜形成化合物及び一般式(A)以外のオルガノシラン化合物で表面処理された無機微粒子を含むことが好ましい。
【0023】
一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物について説明する。
R1は重合開始部位を有する置換アルキル基である。置換アルキル基としては、炭素数が2〜6のアルキル基の末端に酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を介して重合開始部位が連結された基であることが好ましい。特に、炭素原子数3のアルキル基の末端にウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、エステル結合を介して重合開始部位が連結された基であることが好ましい。なお、式中、R1を構成する重合開始部位については後述する。
【0024】
R2を構成するアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、t−ブチル、sec−ブチル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アル
キル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。R2を構成するアリール基としては、フェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0025】
R2を構成するアルキル基又はアリール基の置換基としては、特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
これら置換基のうち特に好ましい置換基は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、さらに好ましくはエポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミノ基である。
【0026】
R2を構成する不飽和結合を有する重合性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミノ基等が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましく用いられる。
【0027】
Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。加水分解可能な基として、例えばアルコキ
シ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、またはR21COO(R21は水素原子
または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙げ
られる)が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
【0028】
mは1〜3の整数を、nは0〜2の整数を表す。R1、R2もしくはXが複数存在するとき、複数
のR1、R2もしくはXはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。mとして好ましくは1
、2、3であり、より好ましくは1、2であり、特に好ましくは1である。
pは1〜3の整数を表し、mとnとpの合計は4である。
【0029】
[重合開始部位]
R1は光及び/又は熱によりラジカルが発生する重合開始部位を有する置換アルキル基を表す。重合開始部位は、光及び/又は熱によりラジカルが発生する部位(例えば、分子内結合解離エネルギーが低い化学結合部位が解裂してラジカルが発生する部位)であれば特に構造に限定されない。
【0030】
一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物は、光及び/又は熱によりラジカルを発生する重合開始部位を有する化合物(例えば、R1−H;Hは水素原子を意味する。)と、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を有するケイ素化合物(例えば、OH-Si(R2)nXp;OHは水酸基を意味する。)とを用いて形成される。重合開始部位としては、以下に述べる光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤から誘導される部位が挙げられ、これらの骨格を有した化合物であれば限定されない。
【0031】
本発明の塗布組成物は、光及び/又は熱により硬化することがきる。本発明の塗布組成物を光硬化する場合、波長は特に限定されないが、100nm以上500nm以下が好ましく、100nm以上400nm以下がより好ましい。光照射のための光源として、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、クセノンランプ、カーボンアーク灯等が用いられる。熱硬化する場合は、30〜200℃の範囲が好ましく、60〜180℃の範囲がより好ましい。なお、光又は熱を併用して硬化させることも可能である。
【0032】
光ラジカル重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号公報等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類、活性ハロゲン化合物、また下記で示される各種化合物などが挙げられる。
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾ
イル-4'-メチルジフェニルサルファイド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−
ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
活性エステル類の例には、IRGACURE OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)] チバスペシャリティーケミカルス製)、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。
具体的には特開2000−80068号公報記載の実施例記載化合物1〜21が特に好ましい。
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
ボレート塩としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、および、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proce
eding April 19〜22頁,1998年,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、特開2002−116539号明細書の段落番号[0022]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられ、具体例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
更に、活性ハロゲン類としては、具体的には、若林等の“Bull Chem.Soc
Japan"42巻、2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細
書、特開平5−27830号、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1巻(3号),(1970年)等に記載の化合物が挙げ
られ、特に、トリハロメチル基が置換した、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも一つのモノ、ジまたはトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。具体的には特開昭58−15503号公報のp14〜p30、特開昭55−77742号公報のp6〜p10、特公昭60−2767号公報のp287記載のNo.1〜No.8、特開昭60−239736号公報のp443〜p444のNo.1〜No.17、米国特許第4701339号明細書のNo.1〜19などの化合物が特に好ましい。
【0033】
無機錯体の例にはビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6−ジフルオ
ロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。
クマリン類の例には3−ケトクマリンが挙げられる。
これらの開始剤は単独でも混合して用いても良い。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)および、「紫外線硬化システム」 加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行、p.65〜148にも種々の光ラジカル重合開始剤の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,819、907、1870(CGI-403/Irg184=7/3混合開始剤)、500,369,1173,2959,4265,4263など)、O
XE01等、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX-S,BP-100,BDMK,CTX,BMS,2-EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)等およびそれらの組み合わせも好ましい例として挙げられる。
【0034】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾおよびジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビ
ス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジ
アゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
好ましい開始剤骨格としては活性ハロゲン系、アセトフェノン系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、ホスフィンオキシド系、有機アゾ系が好ましく、特には活性ハロゲン系、アセトフェノン系、オキサゾール系、オキサジアゾール系が好ましい。
【0035】
一般式(A)で表される化合物は、例えば、重合開始剤と加水分解可能な基がケイ素に直接結合しているオルガノシラン化合物を用いたウレタン結合形成反応、アミド結合形成反応、エーテル化、エステル化、或いはアルキル化反応など、公知の合成法により合成することができ、用いる試薬の組み合わせには特に制限は無い。特に好ましい結合基は、アルコール部位とイソシアネート化合物の結合より形成されるアミド基が好ましい(例えば化合物1−4参照。)。
【0036】
上記重合開始部位の具体例及びR1、R2の具体例としては、下記のオルガノシラン化合物の具体例に記載した部位を挙げることができる。
【0037】
以下に一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
上述した各化合物の中でも特に、化合物番号1−4、2−1、3−3、4−2などの化合物が好ましく用いられる。
【0045】
[一般式(A)以外のオルガノシラン化合物]
本発明においては、無機微粒子の表面処理に際して、上記の重合開始部位を有する上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物と、一般式(A)以外のオルガノシラン化合物(例えば、後述する水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接結合している、下記一般式(B)で表されるオルガノシラン化合物等)を併用できる。
【0046】
一般式(B)
(R3m−Si(Y)4-m
【0047】
(式中、R3は置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基、又は重合性基を表す
。Yは水酸基又は加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
【0048】
一般式(B)においてR3は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の
アリール基又は重合性基を表す。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、t−ブチル、sec−ブチル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙
げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。重合性基としては(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が挙げられる。
【0049】
Yは水酸基または加水分解可能な基を表し、加水分解可能な基として、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げ
られる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、またはR2COO(R2は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙
げられる)が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
mは1〜3の整数を表す。R3もしくはYが複数存在するとき、複数のR3もしくはYはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。mとして好ましくは1、2、3であり、より好ましくは1、2であり、特に好ましくは1である。
【0050】
3に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原
子、臭素原子等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
これらのうちで好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、さらに好ましくはエポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミノ基である。
【0051】
本発明において、一般式(B)で表されるオルガノシラン化合物のうち、R3が複数ある
場合は、複数のR3の少なくとも一つが、置換アルキル基もしくは置換アリール基である
ことが好ましく、R3が重合性置換基、とくにラジカル重合性基を有することがさらに好
ましい。
併用されるオルガノシラン化合物としては、中でも、一般式(B)で表されるオルガノシラン化合物から加水分解・縮合物として得られる、一般式(C)で表されるビニル重合性の置換基を有する化合物が好ましい。
【0052】
一般式(C)
【化9】

【0053】
上記一般式(C)において、R2は水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカル
ボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
【0054】
3〜R5は、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基、もしくは無置換のアルキル基を表す。R3〜R5は塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基もしくはメトキシ基が特に好ましい。
【0055】
6は水素原子、アルキル基を表す。R6は水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子もしくはメチル基が特に好ましい。
【0056】
7は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。ア
ルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基か好ましく、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。R7に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。置換基としてビニル重合性基以外の重合性官能基、例えばエポキシ基、イソシアナート基なども好ましい。R7の置換基としては、水酸基もしくは無置換のアルキル基が更に好ましく、水酸基もしくは炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましく、水酸基もしくはメチル基が特に好ましい。
【0057】
Yは単結合もしくは*−COO−**、*−CONH−**または*−O−**を表し、単結合
、*−COO−**および*−CONH−**が好ましく、単結合および*−COO−**が更に
好ましく、*−COO−**が特に好ましい。*は=C(R2)−に結合する位置を、**はL
に結合する位置を表す。
【0058】
Lは2価の連結鎖を表す。例えば、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
【0059】
lはl=100−mの数式を満たす数を表し、mは0〜50の数を表す。mは0〜40の数がより好ましく、0〜30の数が特に好ましい。mが50より多いと、固形分が生じたり、液が濁ったり、ポットライフが悪化したり、分子量の制御が困難(分子量の増大)であったり、重合性基の含有量が少ないために重合処理を行った場合の性能(例えば反射防止膜の耐傷性)の向上が得られにくいために好ましくない。
【0060】
一般式(C)の具体的化合物は、特開2004−170901号公報のp12〜21の一般式(2)の具体例で示されている化合物が好ましい。
【0061】
〔各化合物の配合割合〕
本発明の塗布組成物において、一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の使用量に特に制限はない。一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物と一般式(A)以外のオルガノシラン化合物(例えば上記の一般式(B)および/または一般式(C)で表される化合物)とを併用する場合、一般式(A)以外で表されるオルガノシラン化合物100質量部に対して、一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物0.01〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量部である。またこれらのオルガノシラン化合物は1種でも複数種を使用しても良いし、他の光増感剤などと併用して使用しても良い。
【0062】
光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。アジド化合物、チオ尿素化合物、メルカプト化合物などの助剤を1種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
〔無機微粒子の表面処理〕
本発明において、無機微粒子の表面処理は、一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物と、必要に応じて該オルガノシラン化合物と併用するその他のオルガノシラン化合物と、無機微粒子と、必要に応じて水とを、加水分解機能を有する触媒および/または縮合機能を有する金属キレート化合物の存在下に、無機微粒子と接触させることにより行われる。
【0064】
オルガノシラン化合物は、全部が加水分解されなくともよく、一部が加水分解されても良いし、加水分解後、部分縮合しても良い。オルガノシラン化合物は、加水分解に引き続いて部分縮合し、これが無機微粒子の表面を修飾することによって、分散性が向上し、安定した塗布組成物が得られる。
【0065】
次に掲げるオルガノシランゾルに関する値は、上記一般式(A)で表される化合物の加水分解物、その部分縮合物、またはこれらの混合物についての値である。一般式(B)および/または(C)の化合物を併用する場合も、一般式(A)で表される化合物の加水分解物、その部分縮合物、またはこれらの混合物について記載された下記の値を満たすことが好ましい。
オルガノシランゾルが縮合物を含む場合、その質量平均分子量は、分子量が300未満の成分を除いた場合に、1000〜20000が好ましく、1000〜10000がより好ましく、1100〜5000が更に好ましく、1200〜3000が更に好ましく、1200〜2000が特に好ましい。
オルガノシランゾルにおける分子量が300以上の成分のうち、分子量が20000より大きい成分はオルガノシランゾル全体の20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、6質量
%以下であることが更に好ましく、4質量%以下であることが特に好ましい。
また、オルガノシランゾルにおける分子量300以上の成分のうち、分子量1000〜20000の成分は80質量%以上であることが好ましい。分子量1000〜20000の成分が少なすぎると、そのようなオルガノシランゾルを含有する硬化性組成物を硬化させて得られる硬化皮膜は、透明性や基材フィルムとの密着性が劣る場合がある。
ここで、質量平均分子量および分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は3.0〜1.1が好ましく、2.5〜1.1がより好ましく、2.0〜1.1が更に好ましく、1.5〜1.1が特に好ましい。
【0066】
一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物及び一般式(A)以外のオルガノシラン化合物の使用量は、無機微粒子当たり1質量%〜300質量%が好ましく、更に好ましくは2質量%〜100質量%、最も好ましくは5質量%〜50質量%である。無機微粒子の表面の水酸基あたりでは1〜300モル%が好ましく、更に好ましくは5〜300モル%、最も好ましくは10〜200モル%である。オルガノシラン化合物の使用量が上記範囲であると、分散液の安定化効果が充分得られ、塗膜形成時に膜強度も大である。
【0067】
オルガノシラン化合物の加水分解および/または縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができる。溶媒を用いる場合はオルガノシランゾルの濃度を適宜に定めることができる。溶媒としては成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類などが好適である。
溶媒はオルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒が塗布液あるいは塗布液の一部として用いられることが工程上好ましく、含フッ素ポリマーなどのその他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
【0068】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコ
ール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0069】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
また、アミド類の具体例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。該反応における溶媒に対する固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1質量%〜90質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜70質量%の範囲である。
本発明においては、アルコール系溶媒で無機微粒子を分散した後に、分散性改良処理を行い、それに引き続いて分散溶媒を芳香族炭化水素溶媒やケトン系溶媒に置換することが好ましい。塗設時に併用するバインダーとの親和性や分散液自身の安定性の向上の点から
、ケトン系溶媒への置換が好ましい。
【0070】
オルガノシラン化合物の加水分解および/または縮合反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。
触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類等が挙げられるが、ゾル液の製造安定性やゾル液の保存安定性の点から、本発明においては、酸触媒(無機酸類、有機酸類)が用いられる。無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
オルガノシランの加水分解性基がアルコキシ基で酸触媒が有機酸の場合には、有機酸のカルボキシル基やスルホ基がプロトンを供給するために、水の添加量を減らすことができる。オルガノシランのアルコキシド基1モルに対する水の添加量は、0〜2モル、好ましくは0〜1.5モル、より好ましくは、0〜1モル、特に好ましくは、0〜0.5モルである。また、アルコールを溶媒に用いた場合には、実質的に水を添加しない場合も好適である。
【0071】
酸触媒の使用量は、酸触媒が無機酸の場合には加水分解性基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、酸触媒が有機酸の場合には、水の添加量によって最適な使用量が異なるが、水を添加する場合には加水分解性基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、実質的に水を添加しない場合には、加水分解性基に対して1〜500モル%、好ましくは10〜200モル%であり、より好ましくは20〜200モル%であり、更に好ましくは50〜150モル%であり、特に好ましくは50〜120モル%である。
反応は25〜100℃で撹拌することにより行われるがオルガノシラン化合物の反応性により調節されることが好ましい。
【0072】
オルガノシランゾルの製造に際して用いられる金属キレート化合物は、一般式R3OH
(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基を示す。)で表されるアルコールと一般式R4COCH2COR5(式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基を、R5は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。)で表される化合物とを配位子とした、Zr、TiまたはAlから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる金属キレート化合物は、一般式Zr(OR3)p1(R4
OCHCOR5)p2、Ti(OR3)q1(R4COCHCOR5)q2およびAl(OR3)r1(R4COCHCOR5)r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記(A)成分の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のR3およびR4は、同一または異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R5は、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1およびr2は、4あるいは6座配位となるように決定される整数を表す。
【0073】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセ
テートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、金属キレート化合物としては、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0074】
金属キレート化合物は、一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物100質量部に対し、好ましくは、0.01〜50質量部、より好ましくは、0.1〜50質量部、さらに好ましくは、0.5〜10質量部の割合で用いられる。金属キレート化合物成分が少なすぎると、一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の縮合反応が遅く、塗膜の耐久性が悪化するおそれがあり、一方多すぎると、一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物と金属キレート化合物成分を含有してなる組成物の保存安定性が悪化するおそれがあり好ましくない。
【0075】
このように無機微粒子の表面処理を行うことにより、無機微粒子の表面にオルガノシランゾルによる被膜が形成される。例えば、Siの固体NMRを測定することで、Siを含む粒子の表面状態を定量的に評価することが可能である。表面処理剤の種類および反応触媒の選択により、無機粒子を溶媒中に分散したときの安定性に優れ、塗膜を形成したときの耐擦傷性にも優れる微粒子が得られる。
【0076】
〔無機微粒子〕
無機微粒子は、塗布組成物により得られる皮膜の無色性の観点から、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、マグネシウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物微粒子又はフッ化マグネシウムを含有する微粒子であることが好ましい。
【0077】
酸化物微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の粒子を挙げることができる。中でも、高硬度の観点から、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンおよび酸化アンチモンの粒子が好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0078】
酸化物微粒子は、分散媒中に分散させた状態で表面処理することが好ましい。他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は有機溶剤であることが好ましく、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール
、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。
中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
【0079】
酸化物微粒子の数平均粒子径は、1nm〜2000nmが好ましく、3nm〜200nmがさらに好ましく、5nm〜100nmが特に好ましい。数平均粒子径が2000nmを超えると、硬化物としたときの透明性が低下したり、皮膜としたときの表面状態が悪化する傾向がある。また、粒子の分散性を改良するために各種の界面活性剤やアミン類を添加してもよい。
【0080】
更に具体的に説明すると、シリカとしては、ケイ素酸化物微粒子分散液(例えば、シリカ粒子)として市販されている商品を使用することができ、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製メタノ−ルシリカゾル、MA−ST−MS、IPA−ST、IPA−ST−MS、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL、IPA−ST−UP、EG−ST、NPC−ST−30、MEK−ST、MEK−ST−L、MIBK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等、触媒化成工業(株)製中空のシリカ微粒子CS60-IPA等を挙げることができる。また粉体シリカ
としては、日本アエロジル(株)製アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ−ク等を挙げることができる。
【0081】
また、アルミナとしては、その水分散品、日産化学工業(株)製アルミナゾル−100、−200、−520;アルミナのイソプロパノール分散品としては、住友大阪セメント(株)製AS−150I;アルミナのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製AS−150T;ジルコニアのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製HXU−110JC;アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製セルナックス;アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の粉末および溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製ナノテック;アンチモンドープ酸化スズの水分散ゾルとしては、石原産業(株)製SN−100D;ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品;酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製ニードラール等を挙げることができる。
【0082】
酸化物微粒子の形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状であり、好ましくは、球状または中空状(中空の微粒子)である。中空状のシリカ粒子については後述する。酸化物微粒子の比表面積(窒素を用いたBET比表面積測定法による)は、好ましくは、10〜1000m2/gであり、さらに好ましくは、100〜50
0m2/gである。これら酸化物微粒子は、乾燥状態の粉末を有機溶媒に分散することも
できるが、例えば上記の酸化物の溶剤分散ゾルとして当業界に知られている微粒子状の酸化物微粒子の分散液を直接用いることができる。
【0083】
前記無機微粒子としてシリカを用いる場合のシリカの平均粒径は、例えば反射防止フィルムの低屈折率層に本発明の組成物を用いる場合には、低屈折率層の厚みの10%以上150%以下が好ましく、より好ましくは20%以上80%以下、更に好ましくは30%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は10nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは25nm以上80nm以下、更に好ましくは、30nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0084】
次に、中空の微粒子について中空のシリカ微粒子を例に説明する。該中空のシリカ微粒子は屈折率が1.15〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.17〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空のシリカ微粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記数式(VIII)で表される空隙率xは、好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30
〜60%である。
【0085】
(数式VIII)
x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
【0086】
外殻の厚みが十分厚く、粒子の強度として強くなるため、耐擦傷性の観点から1.15以上の屈折率の粒子が好ましい。
【0087】
中空のシリカ微粒子の製造方法は、例えば特開2001−233611や特開2002−79616号の各公報に記載されている。特にシェルの内部に空洞を有している粒子で、そのシェルの細孔が閉塞されている粒子が特に好ましい。なお、これら中空のシリカ微粒子の屈折率は特開2002−79616号公報に記載の方法で算出することができる。
【0088】
中空のシリカ微粒子の平均粒径は、例えば反射防止フィルムの低屈折率層に本発明の組成物を用いる場合には、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空のシリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上100nm以下、更に好ましくは、40nm以上65nm以下である。
【0089】
中空のシリカ微粒子の粒径が小さすぎると、空腔部の割合が減り屈折率の低下が見込めず、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。中空のシリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子が好ましい。形状は球径が最も好ましいが不定形であってもよい。また、中空のシリカ微粒子は粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いることができる。中空のシリカ微粒子の平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0090】
本発明において中空のシリカ微粒子の比表面積は、20〜300m2/gが好ましく、
更に好ましくは30〜120m2/g、最も好ましくは40〜90m2/gである。表面積は窒素を用いBET法で求めることが出来る。
【0091】
中空シリカの塗設量は、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。少なすぎると、低屈折率化の効果や耐擦傷性の改良効果が減り、多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する。
【0092】
本発明においては、中空のシリカ微粒子と併用して空腔のないシリカ粒子を用いることができる。この場合の空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上100nm以下、最も好ましくは40nm以上80nm以下である。また平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することもできる。
【0093】
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
【0094】
次に本発明の塗布組成物の他の成分について説明する。
【0095】
〔皮膜形成化合物〕
本発明の塗布組成物は、光及び又は熱エネルギーにより硬化する皮膜形成化合物をさらに含むことが好ましい。皮膜形成化合物は、塗布組成物によって形成される層の種類により、適宜選択することができる。具体例は各層の説明において後記する。
【0096】
本発明の塗布組成物における各成分の配合割合は、特に制限されないが、皮膜形成化合物を含む場合、本発明の一般式(A)で表される化合物の誘導体により表面処理された無機微粒子100質量部に対して皮膜形成化合物は10〜200000質量部が好ましく、100〜500質量部がより好ましく、100〜300質量部がさらに好ましい。また、後述の反射防止フィルムの中屈折率層、高屈折率層、帯電防止層、低屈折率層において、その層に求められる屈折率や導電性など性能を付与するために粒子含有率を高めた場合には、本発明の一般式(A)で表される化合物の誘導体により表面処理された無機微粒子100質量部に対して皮膜形成化合物は5〜100質量部にすることができ、10〜50質量部の領域でも優れた耐擦傷性を付与することが可能となる。
また、上記の表面処理された無機微粒子100質量部に対して一般式(A)以外で表される化合物の誘導体により表面処理された無機微粒子は1〜3000質量部が好ましく、500〜2000質量部がより好ましい。皮膜形成化合物の配合割合を上述の範囲内とすることにより、耐擦傷性向上、低屈折率化の点で好ましく、その他無機微粒子の配合割合を上述の範囲内とすることにより、耐擦傷性向上の点で好ましい。
本発明の塗布組成物において、本発明の一般式(A)で表される化合物の誘導体により表面処理された無機微粒子(m1)、皮膜形成化合物(m2)、及び一般式(A)以外で表される化合物の誘導体により表面処理された無機微粒子(m3)を含有する場合、m1:m2:m3=1〜40質量部:500〜2000質量部:100質量部であることが好ましい。
【0097】
本発明の塗布組成物には、上述した各成分の他に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で他の成分を混合してもよい。
例えば、本発明においては、無機微粒子の凝集、沈降を抑制する目的で、分散安定化剤を併用することもできる。分散安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアミド、リン酸エステル、ポリエーテル、界面活性剤および、前記一般式(A)または(B)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物も含め、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を使用することができる。特にシランカップリング剤が硬化後の皮膜が強いため好ましい。分散安定化剤としてのシランカップリング剤の添加量は特に制限されるものではないが、例えば、無機微粒子100質量部に対して、1質量部以上の値とするのが好ましい。また、分散安定化剤の添加方法も特に制限されるものではないが、予め加水分解したものを添加することもできるし、あるいは、分散安定化剤であるシランカップリング剤と無機とを混合後、さらに加水分解および縮合する方法を採ることができるが、後者の方がより好ましい。
【0098】
本発明の塗布組成物の用途は、特に限定されないが、接着剤、外装塗料、ハードコート、光学フィルム、及び反射防止フィルムなどに用いることができ、ハードコート及び/又は光学フィルム形成用塗布組成物であることが好ましい。
【0099】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、透明支持体上に上記の塗布組成物を塗布形成してなる層を有する。
透明支持体としては、後述する本発明の反射防止フィルムにおいて用いられる透明支持体を用いることができる。
また、上記塗布組成物の塗布量は、固形分量で0.01〜30g/m2とするのが好ま
しく、また、層厚は、0.01〜35μmとするのが好ましい。
また、本発明の光学フィルムは、後述の本発明の反射防止フィルムの製造方法と同様にして製造することができ、また、偏光板や各種画像表示装置などに用いることができる。
本発明の塗布組成物は、ハードコート層の形成に用いられることが好ましい。また、本発明の塗布組成物を低屈折率層の形成に用いて、反射防止フィルムとすることも好ましい。
【0100】
〔反射防止フィルム〕
[反射防止フィルムの層構成]
また、本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に低屈折率層を有する反射防止フィルムであって、低屈折率層が上記の本発明の塗布組成物を塗布形成してなる層である。
前記低屈折率層は、熱硬化性および/または電離放射線硬化性の含フッ素ポリマーをバインダーポリマーとして形成されているのが好ましい。すなわち、本発明の反射防止フィルムにおいては、低屈折率層を、皮膜形成化合物としての後記含フッ素ポリマーを含有する本発明の塗布組成物を用いて形成されているのが好ましい。
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体(以後、基材フィルムと称することもある)上に、必要に応じて後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数および層順等を考慮して積層された反射防止層を有している構成でもかまわない。反射防止フィルムの最も単純な構成は、基材フィルム上に反射防止層としての低屈折率層のみを塗設したものである。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、基材フィルムよりも屈折率の高い高屈折率層と、基材フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、基材フィルム上にハードコート層を設け、さらに高屈折率層/低屈折率層の2層を設けたものや、ハードコート層上に、屈折率の異なる3層、すなわち中屈折率層(基材フィルムまたはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層したもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、基材フィルム上にハードコート層を設け、その上層に低屈折率層を積層した構成が好ましく、また、ハードコート層の上層に中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層をこの順で積層したものも好ましい。また、本発明の反射防止フィルムは防眩性層や帯電防止層等の機能性層を有していてもよい。
【0101】
本発明の反射防止フィルムの好ましい構成の例を下記に示す。概略図を図1〜5に示す。図1〜5において、符号(1)は支持体、(2)はハードコート層、(3)は中屈折率層、(4)は高屈折率層、(5)は低屈折率層である。
【0102】
基材フィルム/ハードコート層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/帯電防止含有高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/帯電防止含有中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/帯電防止含有低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/帯電防止含有低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/帯電防止層/低屈折率層。
【0103】
本発明の反射防止フィルムは、光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。高屈折率層は防眩性のない光拡散性層であってもよい。また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子または金属酸化物微粒子(例えば、SnO2、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布または大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
【0104】
本発明の反射防止フィルムにおいて、透明支持体上に必用に応じて設けられるハードコート層は、一層でも複数層でもよく、要求される性能に応じ、該ハードコートの一層を防眩性ハードコート層とした反射防止フィルムとすることができる。
本発明の反射防止フィルムでは膜強度を向上させる目的で防眩性ハードコート層の下層にさらに防眩性ではないハードコート層を設けることもできる。
【0105】
さらに透明支持体上の各層には、無機微粒子を添加することが好ましい。各層に添加する無機微粒子はそれぞれ同じでも異なっていても良く、各層の屈折率、膜強度、膜厚、塗布性などの必要性能に応じて、種類、添加量は調節されることが好ましい。
本発明に使用する無機微粒子形状は特に制限されるものではなく、例えば、球状、板状、繊維状、棒状、不定形、中空等のいずれも好ましく用いられるが、球状が分散性がよくより好ましい。また、無機微粒子の種類についても特に制限されるものではないが、非晶質のものが好ましく用いられ、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物が特に好ましい。金属原子としては、Zr、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、Mg、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNi等が挙げられる。無機微粒子の平均粒子径は、透明な硬化膜を得るためには、0.001〜0.2μmの範囲内の値とするのが好ましく、より好ましくは0.001〜0.1μm、さらに好ましくは0.001〜0.06μmである。ここで、粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
本発明における無機微粒子の使用方法は特に制限されるものではないが、例えば、乾燥状態で使用することができるし、あるいは水もしくは有機溶媒に分散した状態で使用することもできる。
【0106】
本発明において、無機微粒子の凝集、沈降を抑制する目的で、分散安定化剤を併用することも好ましい。分散安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアミド、リン酸エステル、ポリエーテル、界面活性剤および、本発明に係る前記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物または一般式(B)で表されるオルガノシラン化合物の、加水分解物および/またはその部分縮合物も含め、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を使用することができる。特にシランカップリング剤が硬化後の皮膜が強いため好ましい。分散安定化剤としてのシランカップリング剤の添加量は特に制限されるものではないが、例えば、無機微粒子100質量部に対して、1質量部以上の値とするのが好ましい。また、分散安定化剤の添加方法も特に制限されるものではないが、予め加水分解したものを添加することもできるし、あるいは、分散安定化剤であるシランカップリング剤と無機微粒子とを混合後、さらに加水分解および縮合する方法を採ることができるが、後者の方がより好ましい。
【0107】
また、本発明に係る前記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物または一般式(B)で表されるオルガノシラン化合物の、加水分解物および/またはその部分縮合物は、無機微粒子の分散安定化剤として用いられる以外に、さらに各層のバインダー構成成分の一部として、塗布液調製時の添加剤としても用いることが好ましい。
各層に適する無機微粒子についてはそれぞれ後述する。
【0108】
本発明の反射防止フィルムにおいて好ましく設けられるハードコート層について以下に説明する。
本発明では、ハードコート層に、水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接結合しているオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物、いわゆるゾル成分を含有していても、非含有でも好ましい。
含有する場合さらに好ましくは、オルガノシラン化合物が、前記の一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物であることが好ましい。一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物を用いることで、該化合物が有する重合開始部位により、例えば近傍の重合性基を効率的に重合させ、層間の結合をより効果的に強化できる為に、耐擦傷性をより向上させることができ、好ましい。前記本発明の塗布組成物を、該塗布組成物に含有される、無機微粒子、皮膜形成化合物を、後述の、ハードコート層に好適なものにすることで、ハードコート層形成用塗布組成物として、好適に用いることができる。
【0109】
本発明の反射防止フィルムにおいて好ましく設けられるハードコート層のうち、防眩性ハードコート層について以下に説明する。
防眩性ハードコート層は、皮膜形成化合物としてハードコート性を付与するためのバインダー、防眩性を付与するためのマット粒子、および高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラー、から形成される。
バインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。
また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0110】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)
アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0111】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0112】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル重合開始剤あるいは熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル重合開始剤あるいは熱ラジカル重合開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムの防眩性ハードコート層を形成することができる。
【0113】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製の商品名イルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0114】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾおよびジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス(イソブチロニトリル)、2−アゾ−ビス(プロピオニトリル)、2−アゾ−ビス(シクロヘキサンジニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0115】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して防眩性ハードコート層を形成することができる。
【0116】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0117】
防眩性ハードコート層には、防眩性付与の目的で、無機微粒子より大きな平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、無機微粒子として、前記〔塗布組成物〕に記載の微粒子が挙げられ、例えばシリカ粒子、TiO2粒子の無機化合物粒子が好ましい。有機微
粒子としては、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられ、なかでも架橋スチレン粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できる。
また、異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。
上記マット粒子は、形成された防眩性ハードコート層中のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは30〜100mg/m2となるように防眩性ハードコート層に含有される。
また、特に好ましい態様は、マット粒子として架橋スチレン粒子を用い、防眩性ハードコート層の膜厚の2分の1よりも大きい粒径の架橋スチレン粒子が、該架橋スチレン粒子全体の40〜100%を占める態様である。ここで、マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0118】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133dpi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィ
ルムを貼り付けた場合にギラツキと呼ばれる光学性能が要求される。これはフィルム表面に微妙に存在する凹凸により、画素が拡大もしくは縮小され、表示性能の均一性を失うことに由来するが、これは防眩性を付与するマット粒子よりも5〜50%粒子径の小さなマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0119】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが好ましく、全粒子の粒子径は同一に近ければ近いほどよい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径の異なる粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0120】
防眩性ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモン、ケイ素より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機微粒子が含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた防眩性ハードコート層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機微粒子と同じである。
防眩性ハードコート層に用いられる無機微粒子の具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO(インジウム−スズ酸化物)
とSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。
該無機微粒子は表面をシランカップリング処理またはチタンカップリング処理されることも好ましく、微粒子表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機微粒子の添加量は、防眩性ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このような微粒子は、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該微粒子が分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0121】
本発明の防眩性ハードコート層のバインダーおよび無機微粒子の混合物の合計の屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダーおよび無機微粒子の種類および量の割合を選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に知ることができる。
【0122】
本発明の防眩性ハードコート層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を抑制して面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を防眩性ハードコート層形成用塗布液中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、大日本インキ社製のメガファックF−171、F−172、F−173、F−176(いずれも商品名)等のパーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。シリコーン系の界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のオリゴマー等の各種の置換基で側鎖や主鎖の末端が変性されたポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0123】
防眩性ハードコート層の膜厚は1〜30μmが好ましく、1.2〜20μmがより好ま
しい。
【0124】
本発明の反射防止フィルムでは、フィルム強度向上の目的で防眩性ではないいわゆる平滑なハードコート層も好ましく用いられ、透明支持体と防眩性ハードコート層の間に塗設される。
平滑なハードコート層に用いる素材は防眩性付与のためのマット粒子を用いないこと以外は防眩性ハードコート層において挙げたものと同様であり、バインダーと無機微粒子から形成される。
本発明の平滑なハードコート層では無機微粒子としては強度および汎用性の点でシリカ、アルミナが好ましく、特にシリカが好ましい。また該無機微粒子は表面をシランカップリング処理されることが好ましく、微粒子表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機微粒子の添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。平滑なハードコート層の膜厚は1〜30μmが好ましく、1.2〜20μmがより好ましい。
【0125】
本発明の反射防止フィルムにおいて設けられる低屈折率層について以下に説明する。
本発明では、低屈折率層に、水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接結合しているオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物、いわゆるゾル成分を含有することが好ましい。
さらに好ましくは、オルガノシラン化合物が、前記の一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物であることが好ましい。一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物を用いることで、該化合物が有する重合開始部位により、例えば近傍の重合性基を効率的に重合させ、層間の結合をより効果的に強化できる為に、耐擦傷性をより向上させることができ、好ましい。前記本発明の塗布組成物を、該塗布組成物に含有される、無機微粒子、皮膜形成化合物、さらに添加してもよい無機微粒子を、低屈折率層に好適なものにすることで、低屈折率層形成用塗布組成物として、好適に用いることができる。
【0126】
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層は、上述の本発明の塗布組成物を塗布して形成されてなる層であり、その屈折率は、好ましくは1.32〜1.49であり、より好ましくは1.32〜1.44の範囲にある。
さらに、低屈折率層は下記数式(I)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
【0127】
数式(I)
mλ/4×0.7<n11<mλ/4×1.3
【0128】
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、上記数式(I)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(I)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0129】
本発明の塗布組成物を低屈折率層形成用塗布組成物として用いる場合には、前記皮膜形成化合物としては、熱硬化性および/または光硬化性(電離放射線硬化性)の含フッ素ポリマーが好ましく挙げられる。含フッ素ポリマーに含まれる含フッ素モノマー単位の構造には、特に制限なく、例えば含フッ素オレフィン(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、含フッ素アルキル基を有するビニルエーテル、(メタ)アクリレートまたは完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やM−2020(商品名、ダイキン製)等)などに基づく重合単位を挙げることができる。製造適性と、屈折率や膜強度など低屈折率層に必要とされる性質から、該含フッ素ポリマーは、含フッ素オレフィンとビニルエーテルとの共重合体であることが好ましく、ペルフルオロオレフィンとビニルエーテルとの共重合体であることがより好ましい。また、共重合成分として屈折率を低下させる目的でペルフルオロアルキルビニルエーテル、含フッ素アルキル基を有するビニルエーテルや(メタ)アクリレートなどを含んでいてもよい。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
【0130】
ペルフルオロオレフィンとしては、炭素数3〜7のものが好ましく、重合反応性の観点からはペルフルオロプロピレンまたはペルフルオロブチレンが好ましく、入手性の観点からペルフルオロプロピレンであることが特に好ましい。
【0131】
ポリマー中のペルフルオロオレフィンの含率は25〜75モル%である。素材の低屈折率化のためには、ペルフルオロオレフィンの導入率を高めることが望まれるが、重合反応性の点で一般的な溶液系ラジカル重合反応では50〜70モル%程度の導入が限界であり、これ以上は困難である。本発明においては、該含率は30%〜70モル%であることが好ましく、30%〜60モル%であることがより好ましく、35%〜60モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが特に好ましい。
【0132】
本発明では、低屈折率化のために、下記M2で表わされるペルフルオロアルキルビニルエーテルを共重合させてもよい。該共重合成分は、40モル%以下の範囲で重合体中に導入されていてよいが、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下であり、特に好ましくは15モル%以下の場合である。
【0133】
M2
【化10】

【0134】
M2中、Rf112は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表わし、好ましくは炭素数
1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10の含フッ化アルキル基であり、炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。また、該フッ化アルキル基は置換基を有していてもよい。Rf112の具体例としては、−CF3{M2−(1)}、−CF2CF3{M2−(2)}、−CF2CF2CF3{M2−(3)}、−CF2CF(OCF2
CF2CF3)CF3{M2−(4)}などが挙げられる。
【0135】
(水酸基含有ビニルモノマー重合単位)
本発明で用いられる含フッ素ポリマーは、水酸基含有ビニルモノマー重合単位を含むことができ、その含率には特に制限はない。水酸基は架橋剤と反応して硬化する機能を有するため、水酸基の含有率が高いほど硬い膜を形成できて好ましく、その含有率は10モル%以上70モル%以下であることが好ましく、20モル%を超えて60モル%以下であることがより好ましく、25モル%以上55モル%以下であることが更に好ましい。
【0136】
水酸基含有ビニルモノマーは、前述した含フッ素ビニルモノマー重合単位と共重合可能なものであれば、ビニルエーテル類、(メタ)アクリレート類、スチレン類など、特に制
限なく使用することができる。例えば含フッ素ビニルモノマーとしてペルフルオロオレフィン(ヘキサフルオロプロピレンなど)を用いた場合には、共重合性が良好な水酸基含有ビニルエーテルを用いることが好ましく、具体的には2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、8−ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルビニルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
また、本発明では低屈折率化のために下記M1で表わされる含フッ素アルキル基を有するビニルエーテルを共重合させてもよい。該共重合成分は、40モル%以下の範囲で重合体中に導入されていてよいが、好ましくは30モル%以下であり、特に好ましくは20モル%以下の場合である。
【0138】
M1
【化11】

【0139】
M1中、Rf111は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表し、好ましくは炭素数1
〜20、特に好ましくは炭素数1〜15の含フッ素アルキル基であり、直鎖{例えば−CF2CF3、−CH2(CF2aH、−CH2CH2(CF2aF(a:2〜12の整数)な
ど}であっても、分岐構造{例えばCH(CF32、CH2CF(CF32、−CH(C
3)CF2CF3、−CH(CH3)(CF25CF2Hなど}を有していてもよく、また
脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)を有していてもよく、エーテル結合(例えば-CH2OCH2CF2CF3、-CH2CH2OCH2(CF2b
、-CH2CH2OCH2(CF2bF(b:2〜12の整数)、CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2Hなど)を有していてもよい。なおRf111で表される置換基はここで述べた
置換基に限られるものではない。
【0140】
M1で表わされる上記モノマーは、例えば、“Macromolecules”,32巻(21)、p.7122(1999年)、特開平2−721号公報等に記載のごとくビニロキシアルキルスルホネート、ビニロキシアルキルクロリド等の離脱基置換アルキルビニルエーテル類に対して、塩基触媒存在下含フッ素アルコールを作用させる方法;国際出願特許第92/05135号パンフレット記載のごとく、含フッ素アルコールとブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類をパラジウム触媒存在下混合してビニル基の交換を行う方法;米国特許第3420793号明細書記載のごとく、含フッ素ケトンとジブロモエタンをフッ化カリウム触媒存在化で反応させた後アルカリ触媒により脱HBr反応を行う方法;等により合成することができる。
【0141】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用
させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0142】
前記共重合体は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分として有するものも好ましい。これらの(メタ)アクリロイル基含有繰返し単位の組成比を高めれば皮膜強度は向上するが屈折率も高くなる。含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位の種類によっても異なるが、一般に(メタ)アクリロイル基含有繰返し単位は5〜90質量%を占めることが好ましく、30〜70質量%を占めることがより好ましく、40〜60質量%を占めることが特に好ましい。
【0143】
本発明に有用な共重合体では上記含フッ素モノマー単位から導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらの他のビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、他のビニルモノマーの使用量は、合計で共重合体中の65モル%以下の範囲で導入されていることが好ましく、40モル%以下の範囲であることがより好ましく、30モル%以下の範囲であることが特に好ましい。
【0144】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N、N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N、N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0145】
本発明において下記一般式1で記載される含フッ素ポリマーが好ましく用いられる。
【0146】
一般式1
【化12】

【0147】
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
好ましい例としては、*−(CH22−O−**,*−(CH22−NH−**,*−(CH24−O−**,*−(CH26−O−**,−(CH22−O−(CH22−O−**,*−CONH−(CH23−O−**,*−CH2CH(OH)CH2−O−**
,*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表わす。
【0148】
一般式1中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0149】
一般式1中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
【0150】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0151】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。ただし、x+y+z=100である。
【0152】
本発明に用いられる共重合体の特に好ましい形態として一般式2及び3が挙げられる。
【0153】
一般式2
【化13】

【0154】
一般式2においてX、x、yは一般式1と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表し、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。例としては、前記一般式1におけるAの例として説明したものが当てはまる。
z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表わし、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ま
しく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。ただし、x+y+z1+z2=100である。
【0155】
一般式3
【化14】

【0156】
一般式3においてRは炭素数1〜10のアルキル基、又は(メタ)アクリロイルオキシ基でもよい。
mは1≦m≦10の整数を表わし、1≦m≦6であることが好ましく、1≦m≦4であることが特に好ましい。
nは2≦n≦10の整数を表わし、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。また、シリコーン部位を含んでいても良い。
x、y、z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表わし、x及びyは、それぞれ30≦x≦60、0≦y≦70を満たすのが好ましく、更に好ましくは、35≦x≦55、0≦y≦60の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、0≦y≦55の場合である。z1及びz2については、1≦z1≦65、1≦z2≦65を満たすのが好ましく、更に好ましくは1≦z1≦40、1≦z2≦10であることが好ましく、1≦z1≦30、1≦z2≦5であることが特に好ましい。ただし、x+y+z1+z2=100である。
【0157】
一般式1から3で表される共重合体は、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
【0158】
本発明で有用な共重合体は特開2004−45462号公報の[0043]〜[0047]に示すものが好ましい。
【0159】
本発明に用いられる共重合体は特開2004−45462号公報に記載の方法により合成することができる。また、本発明に用いられる共重合体の合成は、上記以外の種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することによって行なうこともできる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。
【0160】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、電離放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二,「高分子合成方法」改定版,日刊工業新聞社,1971年や大津隆行、木下雅悦共著,「高分子合成の実験法」,化学同人,昭和47年,124〜154頁に記載されている。
【0161】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(
MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
【0162】
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
【0163】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kPa、特に、1〜30kPa程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0164】
得られたポリマーの再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0165】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。
【0166】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0167】
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%の場合である。
【0168】
また本発明の含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号に記載のごとくシリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特
に好ましくは1〜5質量%である。
【0169】
防汚性付与に対しては上記以外にも反応性基含有ポリシロキサン(例えばKF-100T, X-
22-169AS, KF-102, X-22-3701IE, X-22-164B, X-22-5002, X-22-173B, X-22-174D,
X-22-167B, X-22-161AS(以上商品名、信越化学工業社製)、AK-5, AK-30, AK-32(以上商品名、東亜合成社製)、サイラプレーンFM0725, サイラプレーンFM0721(以上商品名、チッソ社製)等)を添加する手段も好ましい。この際これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.5〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0170】
低屈折率層に用いられる無機微粒子は、〔塗布組成物〕の項に前記したものを好適に用いることができる。
低屈折率層に用いられる無機微粒子としては低屈折率のものが好ましく用いられ、好ましい無機微粒子は、中空シリカ微粒子およびフッ化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1つであり、とくに無機微粒子としてシリカ、中空シリカ、フッ化マグネシウムが好ましく、さらに中空シリカが好ましい。
本発明では、無機微粒子の少なくとも1種が、前記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物で表面処理される。また、塗布組成物は、前記一般式(B)で表されるオルガノシラン化合物で表面処理されている無機微粒子を含んでいてもよい。さらには、低屈折率層形成用塗布組成物は、無機微粒子にさらに無機微粒子を含んでいることが好ましく、該無機微粒子は、前記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物で表面処理されていても、前記一般式(A)以外で表されるオルガノシラン化合物で表面処理されていてもよい。
【0171】
該無機微粒子の平均粒径は0.001〜0.2μmであることが好ましい。無機微粒子の粒径はなるべく均一(単分散)であることが好ましい。
【0172】
低屈折率層の膜厚は、70〜130μmとするのが好ましく、80〜110μmとするのが更に好ましい。
特に本発明の反射防止フィルムにおいては、本発明の塗布組成物の中でも特に下記の成分の組み合わせ配合割合による塗布組成物を用いて低屈折率層を構成するのが好ましい。
表面処理された無機微粒子;シリカ微粒子、中空シリカ、フッ化マグネシウム等;1〜
40質量部、
皮膜形成化合物;熱架橋性含フッ素ポリマー、含フッ素共重合体等;500〜2000質量部、
無機微粒子;シリカ粒子、中空シリカ、フッ化マグネシウム、酸化ジルコニウム等;100質量部。
【0173】
本発明に係るハードコート層、低屈折率層を形成するために用いる塗布液の溶媒組成としては、単独および混合のいずれでもよく、混合のときは、全溶媒中、沸点が100℃以下の溶媒が50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、さらに好ましくは100質量%である。沸点が100℃以下の溶媒が少なすぎると、乾燥速度が非常に遅くなり、塗布面状が悪化し、塗布膜厚にもムラが生じるため、反射率などの光学特性も悪化するおそれがあり好ましいものではない。本発明では、沸点が100℃以下の溶媒を多く含む塗布液を用いる事により、この問題を解決することができる。
【0174】
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)な
どのエーテル類、ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類、アセトン(56.1)、2−ブタノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類、メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2)、などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0175】
沸点が100℃以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン(=MIBK、115.9)、1−ブタノール(117.7)、N,N−ジメチルホルムアミド(153)、 N,N−ジメチルアセトアミド(166)、ジメチルスルホキシド(189)、などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノン、である。
【0176】
本発明に係るハードコート層、低屈折率層成分を前述の組成の溶媒で希釈することにより、それらの層用塗布液が調製される。塗布液濃度は、塗布液の粘度、層素材の比重などを考慮して調節される事が好ましいが、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0177】
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム社製商品名TAC−TD80U、TD80U、TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
トリアセチルセルロースは、単層または複数の層からなる。単層のトリアセチルセルロースは、特開平7−11055号等で開示されているドラム流延、あるいはバンド流延等により作成され、後者の複数の層からなるトリアセチルセルロースは、公開特許公報の特開昭61−94725号、特公昭62−43846号等で開示されている、いわゆる共流延法により作成される。すなわち、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(ドープと称する)を、水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(ダイと称する)により流延する際、単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。
【0178】
上記のような、トリアセチルセルロースを溶解するための溶剤としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし地球環境や作業環境の観点から、溶剤はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機
溶剤中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。ジクロロメタン等を実質的に含まない溶剤を用いてトリアセチルセルロースのドープを調製する場合には、後述するような特殊な溶解法が必須となる。
【0179】
第一の溶解法は、冷却溶解法と称され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加する。次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、トリアセチルセルロースと溶剤の混合物は固化する。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、溶剤中にトリアセチルセルロースが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
【0180】
第二の方法は、高温溶解法と称され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加される。本発明のトリアセチルセルロース溶液は、各種溶剤を含有する混合溶剤中にトリアセチルセルロースを添加し予め膨潤させることが好ましい。本法において、トリアセチルセルロースの溶解濃度は30質量%以下が好ましいが、フィルム製膜時の乾燥効率の点から、なるべく高濃度であることが好ましい。次に有機溶剤混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で70〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましく100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶剤の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却はトリアセチルセルロース溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアセテートフィルムおよびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されている。
本発明の反射防止フィルムをディスプレイ装置、例えば液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。該透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0181】
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用することができる。このような場合には、十分に接着させるためには透明支持体上に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜(偏向膜)との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付
着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に偏光膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が4
0゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0182】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の2つから選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で下記(1)が優れているが、反射防止層まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、下記(2)が優れる。
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止層を形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0183】
[反射防止フィルムの形成]
多層構成の反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができるが、ダイコート法で塗布することが好ましく、更には後述する新規ダイコーターを用いて塗布を行うことがより好ましい。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著「コーティング工学」朝倉書店(1973)253頁に記載がある。
【0184】
本発明の反射防止フィルムを連続的に製造するためには、例えば、ロール形態の基材フィルムを連続的に巻き出す工程、塗布液を塗布・乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する基材フィルムを巻き取る工程が行われる。
具体的には次のように行うことができる。
ロール形態の基材フィルムから基材フィルムがクリーン室に連続的に巻き出され、クリーン室内で、基材フィルムに帯電している静電気を静電除電装置により除電し、引き続き基材フィルム上に付着している異物を、除塵装置により除去する。引き続きクリーン室内に設置されている塗布部で塗布液が基材フィルム上に塗布され、塗布された基材フィルムは乾燥室に送られて乾燥される。
乾燥した塗布層を有する基材フィルムは乾燥室から熱硬化部へ送られ、加熱されて硬化したのちに放射線硬化室へ送り出され、放射線が照射されて塗布層に含有されるモノマーが重合して硬化する。場合によっては直接放射線硬化室へ送り出され、放射線が照射されて塗布層に含有されるモノマーが重合して硬化を完結させ、硬化が完結した層を有する基材フィルムは巻き取られてロール形態となる。
【0185】
本発明では、より高い生産速度の観点から、塗布方法として、ダイコート法が好ましく用いられる。ダイコート法は、生産性と塗布ムラのない面状を高次元で両立できるため、好ましく用いられる。
本発明の反射防止フィルムの製造方法としては、このようなダイコート法を用いた以下の塗布方法が好ましい。
すなわち、バックアップロールによって支持されて連続走行するウェッブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、先端リップのスロットから塗布液を塗布する塗布工程を有する製造方法であり、本発明では、スロットダイのウェッブ進行方向側の先端リップのウェッブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であるスロットダイを有し、スロットダイを塗布位置にセットしたときに、ウェッブの進行方向とは逆側の先端リップとウェッブとを、両者の隙間が、ウェッブ進行方向側の先端リッ
プとウェッブとの隙間よりも30μm以上120μm以下(以下、この数値限定については「オーバーバイト長さ」と称する)大きくなるように設置した塗布装置を用いて塗布することが好ましい。
【0186】
[皮膜の硬化方法]
本発明では、乾燥後に加熱硬化させ更に電離放射線を照射して硬化させても、あるいは乾燥後に直接電離放射線を照射して硬化させても良い。いずれの場合でも電離放射線を照射して硬化させる場合、酸素濃度3体積%以下の雰囲気で電離放射線を照射しかつ電離放射線照射開始から0.5秒以上の間酸素濃度3体積%以下の雰囲気に維持する工程によって硬化する。不活性ガスを電離放射線照射室に供給し、かつ照射室のウェッブ入り口側にやや吹き出す条件にすることで、ウェッブ搬送にともなう導搬エアーを排除し反応室の酸素濃度を有効に下げられるとともに、酸素による硬化阻害の大きい極表面の実質の酸素濃度を効率よく低減することができる。照射室のウェッブ入り口側での不活性ガスの流れの方向は、照射室の給気、排気のバランスを調整することなどで制御できる。
不活性ガスをウェッブ表面に直接吹き付けることも、導搬エアーを除去する方法として好ましく用いられる。
特に最外層であり、かつ膜厚が薄い低屈折率層がこの方法で硬化されることが好ましい。
【0187】
また前記反応室の前に前室を設け、事前にウェッブ表面の酸素を排除することで、より硬化を効率よく進めることができる。また電離放射線反応室または前室のウェッブ入口側を構成する側面は、不活性ガスを効率的に使用するために、ウェッブ表面とのギャップは0.2〜15mmが好ましく、より好ましくは、0.2〜10mmとするのがよく、0.2〜5mmとするのがもっとも好ましい。しかし、ウェッブを連続製造するには、ウェッブを接合して繋げていく必要があり、接合には接合テープなどで貼る方法が広く用いられている。このため、電離放射線反応室または前室の入口面とウェッブのギャップをあまり狭くすると、接合テープなど接合部材が引っかかる問題が生じる。このためギャップを狭くするためには、電離放射線反応室または前室の入口面の少なくとも一部を可動とし、接合部が入るときは接合厚み分ギャップを広げるのが好ましい。この実現のためには、電離放射線反応室または前室の入口面を進行方向前後に可動にしておき、接合部が通過する際に前後に動いてギャップを広げるやり方や、電離放射線反応室または前室の入口面をウェッブ面に対し、垂直方向に可動にし、接合部が通過する際に上下に動いてギャップを広げるやり方を取ることができる。
【0188】
電離放射線を照射する時の雰囲気の酸素濃度は3体積%以下であり、1体積%以下が好ましく、0.5体積%以下がさらに好ましい。必要以上に酸素濃度を低減するためには、窒素などの不活性ガスの多量の使用量が必要であり、製造コストの観点から好ましくない。酸素濃度を低下させる手段としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の不活性気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
本発明では、透明支持体上に積層された少なくとも一層が、酸素濃度3体積%以下の雰囲気で電離放射線照射され、かつ電離放射線照射開始から0.5秒以上、酸素濃度3体積%以下の雰囲気に維持されている。0.7秒以上60秒以下が好ましく、0.7秒以上10秒以下がより好ましい。0.5秒以下では、硬化反応が完了することができず、十分な硬化を行うことができない。また長時間低酸素条件を維持することは、設備が大型化し、多量の不活性ガスが必要であり好ましくない。
本発明では、透明支持体上に積層された少なくとも一層を複数回の電離放射線により硬化することができる。この場合、少なくとも2回の電離放射線が酸素濃度20体積%を超えることのない連続した反応室で行われることが好ましい。複数回の電離放射線照射を同一の低酸素濃度の反応室で行うことにより、硬化に必要な反応時間を有効に確保すること
ができる。
特に高生産性のため製造速度をあげた場合には、硬化反応に必要な電離放射線のエネルギーを確保するために複数回の電離放射線照射が必要となり、硬化反応に必要な反応時間の確保とあわせ、上記の態様が有効である。
【0189】
本発明における電離放射線種は特に制限されるものではなく、皮膜を形成する硬化性組成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができる。本発明では紫外線による照射が好ましい。重合速度が早く設備をコンパクトにできる、選択できる化合物種が豊富でかつ低価格であることから紫外線硬化が好ましい。
紫外線の場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等が利用できる。また電子線照射の場合は、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出される50〜1000keVのエネルギーを有する電子線が用いられる。
【0190】
〔偏光板〕
本発明の偏光板は、偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムとを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、上記の本発明の光学フィルム及び反射防止フィルムのいずれかである。
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の光学フィルム又は反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の光学フィルム又は反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0191】
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。
【0192】
特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0193】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
偏光子の2枚の保護フィルムのうち、反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ましい。
【0194】
〔画像表示装置〕
本発明の画像表示装置は、上記の本発明の光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板のいずれかを有する。
すなわち、本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のようなディスプレイ装置に用いられる。
【0195】
(1)液晶表示装置
本発明の光学及び反射防止フィルム、偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、ディスプレイの最表層に用いることが好ましい。
液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板を有し、液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。さらに、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置されることもある。
【0196】
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0197】
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモードまたはECBモードであることが好ましい。
【0198】
<TNモード>
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60〜120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0199】
<VAモード>
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of Tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0200】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを本発明の光学フィルムと組み合わせて作成した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0201】
<OCBモード>
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(OpticallyCompensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0202】
<IPSモード>
IPSモードの液晶セルは、ネマチック液晶に横電界をかけてスイッチングする方式であり、詳しくはProc.IDRC(Asia Display ’95),p.577−580および同p.707−710に記載されている。
【0203】
<ECBモード>
ECBモードの液晶セルは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向している。ECBモードは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
【0204】
また、ECBモードは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献また、ECBモードは、最も単純な構造を有する液晶表示モードの一つであって、例えば特開平5−203946号公報に詳細が記載されている。
【0205】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【0206】
(2)液晶表示装置以外のディスプレー
【0207】
<PDP>
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、一般に、ガス、ガラス基板、電極、電極リード材料、厚膜印刷材料、蛍光体により構成される。ガラス基板は、前面ガラス基板と後面ガラス基板の二枚である。二枚のガラス基板には電極と絶縁層を形成する。後面ガラス基板には、さらに蛍光体層を形成する。二枚のガラス基板を組み立てて、その間にガスを封入する。
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、既に市販されている。プラズマディスプレイパネルについては、特開平5−205643号、同9−306366号の各公報に記載がある。
【0208】
前面板をプラズマディスプレイパネルの前面に配置することがある。前面板はプラズマディスプレイパネルを保護するために充分な強度を備えていることが好ましい。前面板は、プラズマディスプレイパネルと隙間を置いて使用することもできるし、プラズマディスプレイ本体に直貼りして使用することもできる。
プラズマディスプレイパネルのような画像表示装置では、光学フィルターをディスプレイ表面に直接貼り付けることができる。また、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)または裏側(ディスプレイ側)に光学フィルターを貼り付けることもできる。
【0209】
<タッチパネル>
本発明の光学及び反射防止フィルムは、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載されるタッチパネルなどに応用することができる。
【0210】
<有機EL素子>
本発明の光学及び反射防止フィルムは、有機EL素子等の基板(基材フィルム)や保護フィルムとして用いることができる。
本発明の光学及び反射防止フィルムを有機EL素子等に用いる場合には、特開平11−335661号、特開平11−335368号、特開2001−192651号、特開2001−192652号、特開2001−192653号、特開2001−335776号、特開2001−247859号、特開2001−181616号、特開2001−181617号、特開2002−181816号、特開2002−181617号、特開2002−056976号等の各公報記載の内容を応用することができる。また、特開2001−148291号、特開2001−221916号、特開2001−231443号の各公報記載の内容と併せて用いることが好ましい。
【0211】
各種特性値
以下に本発明に関する各種測定法と、好ましい特性値を示す。
【0212】
(1)反射率
鏡面反射率および色味の測定は、分光光度計「V−550」[日本分光(株)製]にアダプター「ARV−474」を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角−5゜の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価することができる。
【0213】
(2)色味
本発明の反射防止能付き偏光板は、CIE標準光源D65の、波長380nmから780nmの領域における入射角5゜の入射光に対して、正反射光の色味、すなわちCIE1976L***色空間のL*、a*、b*値を求めることで色味を評価することができる。
*、a*、b*値は、それぞれ3≦L*≦20、−7≦a*≦7、且つ、−10≦b*≦10の範囲内であることが好ましい。この範囲とすることで、従来の偏光板で問題となっていた赤紫色から青紫色の反射光の色味が低減され、さらに3≦L*≦10、0≦a*≦5、且つ、−7≦b*≦0の範囲内とすることで大幅に低減され、液晶表示装置に適用した場合、室内の蛍光灯のような、輝度の高い外光が僅かに映り込んだ場合の色味がニュートラルで、気にならない。詳しくはa*≦7であれば赤味が強くなりすぎることがなく、a*≧−7であればシアン味が強くなりすぎることがなく好ましい。またb*≧−7であれば青味が強くなりすぎることがなく、b*≦0であれば黄味が強くなりすぎることがなく好ましい。
【0214】
更には、反射光の色味均一性は、反射光の380nm〜680nmの反射スペクトルにより求めたL***色度図上でのa**より、下記の数式21に従って色味の変化率と
して得ることができる。
【0215】
数式21
【数1】

【0216】
ここで、a*maxおよびa*minは、それぞれa*値の最大値および最小値;b*maxおよび
*minは、それぞれb*値の最大値および最小値;a*avおよびb*avは、それぞれa*値お
よびb*値の平均値である。色の変化率は、それぞれ30%以下であることが好ましく、
20%以下であることがより好ましく、8%以下であることが最も好ましい。
【0217】
また、本発明の光学及び反射防止フィルムは、耐候性試験前後の色味の変化であるΔEwが15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下である
ことが最も好ましい。この範囲において、低反射と反射光の色味の低減を両立することができるため、例えば画像表示装置の最表面に適用した場合、室内の蛍光灯のような、輝度の高い外光が僅かに映り込んだ場合の色味が、ニュートラルで、表示画像の品位が良好となり、好ましい。
【0218】
上記の色味の変化ΔEwは、下記の数式(22)に従って求めることができる。
【0219】
数式(22):
ΔEw=[(ΔLw2+(Δaw2+(Δbw21/2
【0220】
ここで、ΔLw,Δaw,Δbwは、耐候性試験前後のL*値,a*値,b*値それぞれの変化量である。
【0221】
(3)透過画像鮮明度
透過画像鮮明度は、JIS K 7105に従い、スガ試験機(株)製の写像性測定器(ICM−2D型)にて、スリット幅が0.5mmの光学櫛を用いて測定できる。
【0222】
本発明の光学及び反射防止フィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。透過画像鮮明度は好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
【0223】
(4)表面粗さ
中心線平均粗さ(Ra)の測定は、JIS−B0601に準じて行なうことができる。
【0224】
(5)ヘイズ
本発明の光学及び反射防止フィルムのヘイズは日本電色工業(株)製の濁度計「NDH−1001DP」を用いて測定したヘイズ=(拡散光/全透過光)×100(%)として自動計測される値を用いた。
1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下がさらに好ましく、1.0%以下が最も好ましい。
【0225】
(6)ゴニオフォトメータ散乱強度比
自動変角光度計GP−5型((株)村上色彩技術研究所製)を用いて、入射光に対して反射防止フィルムを垂直に配置し、全方位に渡って散乱光プロファイルを測定した。出射角0°の光強度に対する出射角30°の散乱光強度から求めることができる。
【0226】
(7)耐擦傷性
<スチールウール耐傷性評価>
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなうことで、耐擦傷性の指標とすることが出来る。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、ゲレードNo.0000)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定。
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:500g/cm2、および200g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察したり、擦った部分以外との反射光量との差によって評価する。
【0227】
<消しゴム擦り耐傷性評価>
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなうことで、耐擦傷性の指標とすることが出来る。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:プラスチック消しゴム((株)トンボ鉛筆性 MONO)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に固定
移動距離(片道):4cm、
こすり速度:2cm/秒、
荷重:500g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:100往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察したり、擦った部分以外との反射光量との差によって評価する。
【0228】
<テーパー試験>
JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量から擦傷性を評価することができる。
この摩耗量が少ないほど好ましい。
【0229】
(8)硬度
<鉛筆硬度>
本発明の光学及び反射防止フィルムの強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で評価することが出来る。
鉛筆硬度はH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0230】
<表面弾性率>
本発明における表面弾性率は微小表面硬度計((株)フィッシャー・インスツルメンツ製:フィッシャースコープH100VP−HCU)を用いて求めた値である。具体的には、ダイヤモンド製の四角錐圧子(先端対面角度;136°)を使用し、押し込み深さが1μmを超えない範囲で、適当な試験荷重下での押し込み深さを測定し、除荷重時の荷重と変位の変化から求められる弾性率である。
また、前述の微小表面硬度計を用いて表面硬度をユニバーサル硬度として求めることもできる。ユニバーサル硬度は四角錐圧子の試験荷重下での押し込み深さを測定し、試験荷重をその試験荷重で生じた圧痕の幾何学的形状から計算される圧痕の表面積で割った値である。上記の表面弾性率とユニバーサル硬度の間には、正の相関を有することが知られている。
【0231】
(9)防汚性試験
<マジック拭き取り性>
フィルムをガラス面上に粘着剤で固定し、25℃60RH%の条件下で黒マジック「マッキー極細(商品名:ZEBRA製)」のペン先(細)にて直径5mmの円形を3周書き込み、5秒後に10枚重ねに折り束ねたベンコット(商品名、旭化成(株))でベンコットの束がへこむ程度の荷重で20往復拭き取る。マジック後が拭き取りで消えなくなるまで前記の書き込みと拭き取りを前記条件で繰り返し、拭き取りできた回数により防汚性を評価することが出来る。
消えなくなるまでの回数は5回以上であることが好ましく、10回以上であることが更に好ましい。
【0232】
黒マジックについてはマジックインキ No.700(M700―T1 黒)極細を用い試料の上に直径1cmの円を描いて塗りつぶし、24時間放置後にベンコット(旭化成(株)製)で擦り、マジックがふき取れるかによっても評価することができる。
【0233】
(10)表面張力
本発明で測定、評価する表面張力は、機能層を形成する塗布液の表面張力を温度25℃の環境下で表面張力計(協和界面科学製、KYOWA CBVP SURFACE TENSIOMETER A3)を用いて測定することができる。
【0234】
(11)接触角
接触角計[「CA−X」型接触角計、協和界面科学(株)製]を用い、乾燥状態(20℃/65%RH)で、液体として純水を使用して直径1.0mmの液滴を針先に作り、これをフィルムの表面に接触させてフィルム上に液滴を作った。フィルムと液体とが接する点における、液体表面に対する接線とフィルム表面がなす角で、液体を含む側の角度を接触角とする。
【0235】
(12)表面自由エネルギー
表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」,リアライズ社,1989.12.10発行に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
【0236】
本発明のフィルムの表面自由エネルギー(γsv:単位、mN/m)とはD.K.Ow
ens:J.Appl.Polym.Sci.,13,1741(1969)を参考に、反射防止フィルム上で実験的に求めた純水H2Oとヨウ化メチレンCH22のそれぞれの
接触角θH2O、θCH2I2から以下の連立方程式a,bより求めたγsdとγshの和で表される値γsv(=γsd+γsh)で定義する反射防止フィルムの表面張力を表す。このγsvが小さく、低表面自由エネルギーであるほど表面のはじき性が高く、一般に防汚性に優れる。
a. 1+cosθH2O
2√γsd(√γH2Od/γH2Ov)+2√γsh(√γH2Oh/γH2Ov
b. 1+cosθCH2I2
2√γsd(√γCH2I2d/γCH2I2v)+2√γsh(√γCH2I2h/γCH2I2v
γH2Od=21.8、γH2Oh=51.0、γH2Ov=72.8、
γCH2I2d=49.5、γCH2I2h=1.3、γCH2I2v=50.8で、接触角の測定はフィルムを25℃60%の条件下で1時間以上調湿した後に、協和界面科学(株)製、自動接触角計CA−V150型を用いて2μlの液滴をフィルム上に滴下してから30秒後に接触角を求めた。
【0237】
本発明の光学及び反射防止フィルムの表面自由エネルギーは25mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以下であることが特に好ましい。
【0238】
(13)カール
カールの測定は、JISK7619−1988の「写真フィルムのカールの測定法」中の方法Aのカール測定用型板を用いて行われる。
測定条件は25℃、相対湿度60%、調湿時間10時間である。
本発明の光学及び反射防止フィルムは、カールを以下の数式で表したときの値が、マイナス15〜プラス15の範囲に入っていることが好ましく、マイナス12〜プラス12の範囲がより好ましく、さらに好ましくはマイナス10〜プラス10である。このときのカールの試料内測定方向は、ウェッブ形態での塗布の場合、基材の搬送方向について測ったものである。
【0239】
(数式) カール=1/R Rは曲率半径(m)
【0240】
これは、フィルムの製造、加工、市場での取り扱いで、ひび割れ、膜はがれを起こさないための重要な特性である。カール値が前記範囲にあり、カールが小さいことが好ましい。
ここで、カールがプラスとはフィルムの塗設側が湾曲の内側になるカールを言い、マイナスとは塗設側が湾曲の外側になるカールをいう。
【0241】
また、本発明におけるフィルムは、上記したカール測定法に基づいて、相対湿度のみを80%と10%に変更したときの各カール値の差の絶対値が、24〜0が好ましく、15〜0がさらに好ましく、8〜0が最も好ましい。これはさまざまな湿度下でフィルムを貼り付けたときのハンドリング性や剥がれ、ひび割れに関係する特性である。
【0242】
(14)密着性評価
フィルムの層間、あるいは支持体と塗布層との密着性は以下の方法により評価することが出来る。
塗布層を有する側の表面にカッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを1mm間隔で入れて合計100個の正方形の升目を刻み、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(NO.31B)を圧着し、24時間放置後引き剥がす試験を同じ場所で繰り返し3回行い、剥がれの有無を目視で観察する。
【0243】
100個の升目中、剥がれが10升以内であることが好ましく、2升以内であることが更に好ましい。
【0244】
(15)脆性試験(耐ひび割れ性)
耐ひび割れ性は、フィルムの塗布、加工、裁断、粘着剤の塗布、種々の物体への貼りつけ等のハンドリングで割れ欠陥を出さないための重要な特性である。
フィルム試料を35mm×140mmに切断し、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、筒状に丸めたときにひび割れが発生し始める曲率直径を測定し、表面のひび割れを評価することができる。
【0245】
本発明の光学及び反射防止フィルムの耐ひび割れ性は、塗布層側を外側にして丸めたときに、ひび割れが発生する曲率直径が、50mm以下であることが好ましく、40mm以下がより好ましく、30mm以下が最も好ましい。エッジ部のひび割れについては、ひび割れがないか、ひび割れの長さが平均で1mm未満であることが好ましい。
【0246】
(16)表面抵抗
本発明の光学及び反射防止フィルム表面抵抗は、超絶縁抵抗/微小電流計“TR8601”{(株)アドバンテスト製}を用いて、25℃、相対湿度60%RHの条件下で測定することができる。表面抵抗(Ω/□)の常用対数をとり、logSRの値を算出する。
【0247】
(17)塵埃除去性
本発明の光学及び反射防止フィルムをモニターに張り付け、モニター表面に塵埃(布団、衣服の繊維屑)を振りかけ、クリーニングクロスで塵埃を拭き取り、塵埃除去性を評価することができる。
6回の拭取りで完全に取除けることが好ましく、3回以内の拭き取りで塵埃が完全に取り除けることが更に好ましい。
【0248】
(18)液晶表示装置の描画性能
以下に、本発明の光学及び反射防止フィルムを表示装置上に用いたときの描画特性の評価方法と好ましい状況について記載する。
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(TH−15TA2、松下電器産業(株)製)に設けられている視認側の偏光板を剥がし、代わりに本発明のフィルムあるいは偏光板を、塗布面が視認側に、且つ偏光板の透過軸が製品に貼られていた偏光板と一致するように粘着剤を介して貼り付ける。500luxの明室にて、液晶表示装置を黒表示にして、種々の視角から目視により以下の各種描画特性を評価することができる。
【0249】
<描画画像のムラ、色味評価>
測定機(「EZ−Contrast 160D」ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラや色味変化を複数の観察者により目視評価する。
10人が評価し、ムラ、左右色味変化、温湿度による色味変
化、白ボケを認識できるものが3人以下であることが好ましく、1人も認識できないことがより好ましい。
また、外光の映り込みは蛍光灯を用いて行い、目視にて映り込みの変化を相対的に評価することができる。
【0250】
<黒表示の光漏れ>
液晶表示装置正面からの方位方向45゜、極角方向70゜における黒表示の光漏れ率を測定する。光漏れ率が0.4%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましい。
【0251】
<コントラスト、および視野角>
コントラストおよび視野角は、測定機(「EZ−Contrast 160D」ELDIM社製)を用いて、コントラスト比および左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲の広さ)を調べることができる。
【実施例】
【0252】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0253】
(ゾル液a−1の調製)
温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた1,000mlの反応容器に、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン187g(0.80mol)、メチルトリメトキシシラン27.2g(0.20mol)、メタノール320g(10mol)とKF0.06g(0.001mol)を仕込み、攪拌下室温で水15.1g(0.86mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後室温で3時間攪拌した後、メタノール還溜下2時間加熱攪拌した。この後、低沸分を減圧留去し、更にろ過することによりゾル液a−1を120g得た。このようにして得た物質をGPC測定した結果、質量平均分子量は1500であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は30%であった。
また1H−NMRの測定結果から、得られた物質の構造は、以下の一般式で表される構
造であった。
【0254】
【化15】

【0255】
更に、29Si−NMR測定による縮合率αは0.56であった。この分析結果から、本シランカップリング剤ゾルは直鎖状構造部分が大部分であることが分かった。
また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料の3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは5%以下の残存率であった。
【0256】
(本明細書記載の化合物1−4の合成)
化合物A 5.27g、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン 2.97gを、2−ブタノン 25cm3に溶解し、二酢酸ジ−n−ブチルすず 25mgを加え、50℃にて10時間加熱撹拌した。その後室温に冷却し、ろ過した後にヘキサン 300cm3に滴下した。析出した結晶を減圧濾過し、ヘキサンで洗浄した後真空乾燥して一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物であるシランカップリング基含有光ラジカル発生剤(化合物No.1−4) 3.90gを得た。得られた化合物の分析結果を以下に示す。
【0257】
1H−NMR(DMSO−d6):0.60(m、2H)、1.17(t、J=9.4Hz、9H)、1.55(m、2H)、3.07(m、2H)、3.77(q、J=9.4Hz、6H)、7.29(d、J=11.2Hz、2H)、7.92(t、,J=7.5Hz、1H)、8.03(d、J=11.6Hz、2H)、8.13(d、J=11.6Hz、2H)、8.58(d、J=12.0Hz、2H)、10.76(s、1H)。融点:177.2〜180.0℃。
【0258】
化合物A
【化16】

【0259】
化合物1−4
【化17】

【0260】
[無機微粒子の安定化処理]
(分散液A−1の調製)
シリカ微粒子ゾル(日産化学工業(株)製メタノールシリカゾル、平均粒子径12nm、粒子表面ラフネスR=1.0、シリカ濃度30%)を分散液Aとする。分散液Aを用いて、総液量がほぼ一定になるようにメチルエチルケトン(MEK)を添加しながら25℃で減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節して分散液A−1を調製した。
【0261】
(分散液A−2の調製)
上記分散液A(シリカ濃度30%)333部に、トリメチルメトキシシラン 10部を加え混合した後に、イオン交換水9部を加え25℃で7日間反応させた。総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節して分散液A−2を調製した。
【0262】
(分散液A−3の調製)
シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、日産化学工業(株)製 IPA−ST−L、平均粒子系45nm、シリカ濃度30%)333部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート 1.5部加え混合した後に、イオン交換水 9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、分散液A−3を得た。
【0263】
(分散液A−4の調製)
シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、日産化学工業(株)製 IPA−ST−L、平均粒子系45nm、シリカ濃度30%)333部に、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物1−4を30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート 1.5部加え混合した後に、イオン交換水 9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、オルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液A−4を得た。
【0264】
(分散液B−1の調製)
シリカ微粒子ゾル(日産化学工業(株)製 メタノールシリカゾル、平均粒子系12nm、シリカ濃度30%)333部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート 1.5部加え混合した後に、イオン交換水 9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、分散液B−1を得た。
【0265】
(分散液B−2の調製)
シリカ微粒子ゾル(日産化学工業(株)製 メタノールシリカゾル、平均粒子系12nm、シリカ濃度30%)333部に、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物1−4を30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート
1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、オルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液B−2を得た。
【0266】
(分散液C−1の調製)
中空のシリカ微粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート 1.5部加え混合した後に、イオン交換水 9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、分散液C−1を得た。
【0267】
(分散液C−2の調製)
中空のシリカ微粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物1−4を30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート 1.5部加え混合した後に、イオン交換水 9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、オルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液C−2を得た。
【0268】
(分散液C−3の調製)
中空のシリカ微粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物5−2を30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート 1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、オルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液C−3を得た。
【0269】
(分散液C−4の調製)
特開2002−79616号公報の調製例4から調製時の条件を変更して、内部に空洞を有するシリカ微粒子を作製した。最終ステップで水分散液状態からメタノールに溶媒置換し、20%シリカ分散液とし、平均粒子径50nm、シェル厚み約10nm、粒子表面ラフネスR=1.1、シリカ粒子の屈折率1.29の粒子が得られた。これを分散液Cと
する。分散液Cを用いて、総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら25℃で
減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節して分散液C−4を調製した。
【0270】
(分散液C−5の調製)
上記分散液C−4の500部に対して分散液pHが3.5になるまで0.1N塩酸を添加した。ここで分散液のpHとは、分散液と等質量の蒸留水を混合してpH電極を用いて25℃で測定した値を言う。この分散液に対して、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 30部を加え混合した後に、イオン交換水 9部を加え25℃で7日間反応させた。その後総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節して分散液C−5を調製した。
【0271】
(分散液C−6の調製)
上記分散液C−4の500部に対して分散液pHが3.5になるまで0.1N塩酸を添加した。ここで分散液のpHとは、分散液と等質量の蒸留水を混合してpH電極を用いて
25℃で測定した値を言う。この分散液に対して、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物1−4 30部を加え混合した後に、イオン交換水を9部を加え25℃で7日間反応させた。その後総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節してオルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液C−6を調製した。
【0272】
(分散液C−7の調製)
上記分散液C−4の500部に対して分散液pHが3.5になるまで0.1N塩酸を添加した。ここで分散液のpHとは、分散液と等質量の蒸留水を混合してpH電極を用いて25℃で測定した値を言う。この分散液に対して、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物2−1 30部を加え混合した後に、イオン交換水を9部を加え25℃で7日間反応させた。その後総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節してオルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液C−7を調製した。
【0273】
(分散液C−8の調製)
上記分散液C−4の500部に対して分散液pHが3.5になるまで0.1N塩酸を添加した。ここで分散液のpHとは、分散液と等質量の蒸留水を混合してpH電極を用いて25℃で測定した値を言う。この分散液に対して、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物3−3 30部を加え混合した後に、イオン交換水を9部を加え25℃で7日間反応させた。その後総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節してオルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液C−8を調製した。
【0274】
(分散液C−9の調製)
上記分散液C−4の500部に対して分散液pHが3.5になるまで0.1N塩酸を添加した。ここで分散液のpHとは、分散液と等質量の蒸留水を混合してpH電極を用いて25℃で測定した値を言う。この分散液に対して、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物4−1 30部を加え混合した後に、イオン交換水を9部を加え25℃で7日間反応させた。その後総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節してオルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液C−9を調製した。
【0275】
(分散液D−1の調製)
酸化ジルコニウム微粒子ゾル(メチルエチルケトン酸化ジルコニウムゾル、住友大阪セメント(株)製、平均粒子径10nm、酸化ジルコニウム濃度30%)333部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート 1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、分散液D−1を得た。
【0276】
(分散液D−2の調製)
酸化ジルコニウム微粒子ゾル(メチルエチルケトン酸化ジルコニウムゾル、住友大阪セメント(株)製、平均粒子径10nm、酸化ジルコニウム濃度30%)333部に、上記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物である化合物1−4を30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート 1.5部加え混合した後に、イオン交換水
9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン 1.8部を添加し、オルガノシランゾルで表面処理された無機微粒子が分散されてなる分散液D−2を得た。
【0277】
(ハードコート層形成用塗布液Aの調製)
DPHA 150.0g
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50 206.0g
イルガキュア184 7.5g
メチルエチルケトン 49.0g
【0278】
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層形成用塗布液Aを調製した。
【0279】
(ハードコート層形成用塗布液Bの調製)
DPHA 150.0g
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50 206.0g
MEK−ST 333.0g
イルガキュア184 7.5g
メチルエチルケトン 49.0g
【0280】
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層形成用塗布液Bを調製した。
【0281】
(ハードコート層形成用塗布液Cの調製)
DPHA 150.0g
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50 206.0g
分散液A-4 333.0g
イルガキュア184 7.5g
メチルエチルケトン 49.0g
【0282】
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層形成用塗布液Cを調製した。
【0283】
(ハードコート層形成用塗布液Dの調製)
PETA 50.0g
イルガキュア184 2.0g
SX−350(30%) 1.7g
架橋アクリル−スチレン粒子(30%) 13.3g
FP−132 0.75g
KBM−5103 10.0g
トルエン 38.5g
【0284】
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層形成用塗布液Dを調製した。
【0285】
(ハードコート層用塗布液Eの調製)
PETA 285.0g
「イルガキュア184」 15.0g
ゾル液(a−1) 25.8g
凝集性シリカ(二次粒子系1.0μm−30質量%) 1.7g
フッ素系レベリング剤R−30 0.5g
メチルイソブチルケトン 175.0g
【0286】
上記混合液を、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層
形成用塗布液Eを調製した。
【0287】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
MEK−ST(日産化学社製シリカ粒子、平均粒径15nm)
イルガキュア184:重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
SX−350:平均粒径3.5μm架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、綜研化学(株)製、30%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用)。
架橋アクリル−スチレン粒子:平均粒径3.5μm(屈折率1.55、綜研化学(株)製、30%トルエン分散液)
“KBM−5103”:シランカップリング剤、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製。
【0288】
FP−132:フッ素系表面改質剤
【化18】

【0289】
凝集性シリカ(二次粒子系1.0μm)、日本シリカ製
フッ素系レベリング剤R−30 大日本インキ化学工業製(市販品)
【0290】
実施例1
〔本発明の塗布組成物の実施例(低屈折率層形成用塗布液の調製)〕
下記表−1に示した混合液を孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して本発明の塗布組成物溶液(低屈折率層形成用塗布液)Ln−1〜Ln−19を各々調製した。
【0291】
【表1】

【0292】
上記にそれぞれ使用した化合物を以下に示す。
J−1:熱架橋性含フッ素ポリマー組成物(特開平11−189621の実施例1に記載の含フッ素熱硬化ポリマー80g、硬化剤としてサイメル303(日本サイテックインダストリーズ製)を20g、硬化触媒としてキャタリスト4050(日本サイテックインダストリーズ製)をMEKに溶解して6%にしたものを使用した。屈折率1.42、固形分濃度6%)
P−3:特開2004−45462号公報に記載の含フッ素共重合体P−3(重量平均分子量約50000、固形分濃度23.8%/MEK)
RMS−033:反応性シリコーン(Gelest(株)製)
MP-トリアジン:光重合開始剤((株)三和ケミカル製)
【0293】
〔本発明の反射防止フィルムの実施例〕
ハードコート層用塗布液A〜E、低屈折率層用塗布液Ln−1〜19をそれぞれを以下のようにして塗布し、反射防止フィルム試料を得た。積層の組み合わせは、表2、3に記載のとおりに行った。
【0294】
(1)ハードコート層の塗設
透明支持体としての80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TD80U、商品名、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、上記のハードコート層用塗布液を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50m
mのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度10m/分の条件で塗布し、120℃、2分で乾燥の後、酸素濃度0.1
%以下の窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量110mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6.0μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
【0295】
(2)低屈折率層の塗設−1(熱硬化+電離放射線硬化系)
該ハードコート層を塗設したトリアセチルセルロースフイルムを再び巻き出して、上記低屈折率層形成用塗布液を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有
する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度10m/分の条件で塗布し、80℃で2分乾燥の後、11
0℃、10分間、加熱硬化させ、さらに窒素パージ下(酸素濃度200ppm以下)で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ95nmの低屈折率層を形成し巻き取った(試料No.101−119)。
【0296】
【表2】

【0297】
(3)低屈折率層の塗設−2(電離放射線硬化系)
該ハードコート層を塗設したトリアセチルセルロースフイルムを再び巻き出して、上記低屈折率層形成用塗布液をダイコーターを用いて、25m/分の塗布速度で塗布した。1
20℃で70秒乾燥の後、さらに窒素パージ下(酸素濃度200ppm以下)で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射し厚さ95nmの低屈折率層を形成し巻き取った(試料No.201−217)。
【0298】
【表3】

【0299】
得られたフィルムに対して、以下の項目の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0300】
[鏡面反射率]
分光硬度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着して380〜780nmの波長領域において入射角5度における出射角−5度の鏡面反射率を測定し、450nm〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。
【0301】
[鉛筆硬度]
JIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。反射防止フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS S 6006に規定するH〜5Hの試験用鉛筆を用いて、500gの荷重にて以下のとおりの判定で評価し、OKとなる最も高い硬度を評価値とした。
n=5の評価において傷なし〜傷1つ :OK
n=5の評価において傷が3つ以上 :NG
【0302】
[スチールウール擦り耐性]
#0000のスチールウールに500g/cm2の荷重をかけ10往復したときの傷の
状態を観察して、以下の5段階で評価した。
◎:傷が全くつかなかったもの
○:ほとんど見えない傷が少しついたもの
△:明確に見える傷がついたもの
×:明確に見える傷が顕著についたもの
××:膜の剥離が生じたもの
【0303】
【表4】

【0304】
本発明の一般式(A)で表される重合開始部位を有する下記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物を用いて表面処理された少なくとも1種の無機微粒子を含有する組成物を使用することで、反射防止フィルムは十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性にも優れた膜になることがわかる。
【0305】
[実施例2]
(偏光板用保護フィルムの作製)
1.5 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を50℃に保温した鹸化液を調製した。
さらに、0.005mol/Lの希硫酸水溶液を調製した。
実施例1で作製した反射防止フィルムにおいて、それぞれ本発明の低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面を上記鹸化液を用いて鹸化処理した。
鹸化処理した透明支持体表面の水酸化ナトリウム水溶液を、水で十分に洗浄した後、上
記の希硫酸水溶液で洗浄し、さらに希硫酸水溶液を水で十分に洗浄し、100℃で十分に乾燥させた。
反射防止フィルムの低屈折率層を有する側とは反対側の、鹸化処理した透明支持体の表面の水に対する接触角を評価したところ、40度以下であった。このようにして、偏光板用保護フィルムを作製した。
【0306】
(偏光板の作製)
膜厚75μmのポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製)を水1000質量部、ヨウ素7質量部、ヨウ化カリウム105質量部からなる水溶液に5分間浸漬し、ヨウ素を吸着させた。
次いで、このフィルムを4質量%ホウ酸水溶液中で、4.4倍に縦方向に1軸延伸をした後、緊張状態のまま乾燥して偏光膜を作製した。
接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に本発明の反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の鹸化処理したトリアセチルセルロース面を貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には上記と同様にして鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルムを同じポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。
【0307】
(画像表示装置の評価)
このようにして作製した本発明の偏光板を反射防止フィルムがディスプレイの最表面になるように装着したTN,STN,IPS,VA,OCBのモードの透過型、反射型、または、半透過型の液晶表示装置は、反射防止性能に優れ、極めて視認性が優れていた。特にVAモードにおいてその効果は顕著であった。
【0308】
[実施例3]
(偏光板の作製)
光学補償層を有する光学補償フィルム(ワイドビューフィルムSA 12B、富士写真フイルム(株)製)において、光学補償層を有する側とは反対側の表面を実施例2と同様の条件で鹸化処理した。
実施例2で作製した偏光膜に、接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に、実施例1で作製した反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の鹸化処理したトリアセチルセルロース面をそれぞれ貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には鹸化処理した光学補償フィルムのトリアセチルセルロース面を同じポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。
【0309】
(画像表示装置の評価)
このようにして作製した本発明の偏光板を反射防止フィルムがディスプレイの最表面になるように装着したTN,STN,IPS,VA,OCBのモードの透過型、反射型、または、半透過型の液晶表示装置は、光学補償フィルムを用いていない偏光板を装着した液晶表示装置よりも明室でのコントラストに優れ、上下左右の視野角が非常に広く、さらに、反射防止性能に優れ、極めて視認性と表示品位が優れていた。
特にVAモードにおいてその効果は顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【0310】
【図1】本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図2】本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図3】本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図4】本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図5】本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0311】
(1)支持体
(2)ハードコート層
(3)中屈折率層
(4)高屈折率層
(5)低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物により表面処理された無機微粒子を少なくとも1種含有する塗布組成物。
一般式(A)
【化1】

(式中、R1は光及び/又は熱によりラジカルが発生する重合開始部位を有する置換アルキル基を表し、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、又は不飽和結合を有する重合性基を有する置換アルキル基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を、nは0〜2の整数を、pは1〜3の整数を表す。mとnとpの合計は4である。)
【請求項2】
前記無機微粒子がケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、マグネシウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物微粒子又はフッ化マグネシウムを含有する微粒子である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記無機微粒子が中空の酸化物微粒子又は中空の微粒子である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに光及び/又は熱エネルギーにより硬化する皮膜形成化合物を含む請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
さらに一般式(A)以外のオルガノシラン化合物で表面処理された無機微粒子を含有し
、無機微粒子が下記群Aから選ばれる請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
(群A)
ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、亜鉛、錫、アンチモンおよびケイ素からなる群から選択された少なくとも1つの酸化物微粒子、又はフッ化マグネシウムを含有する微粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
透明支持体上に請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を塗布形成してなる層を有する光学フィルム。
【請求項8】
透明支持体上に低屈折率層を有する反射防止フィルムであって、低屈折率層が請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を塗布形成してなる層である反射防止フィルム。
【請求項9】
偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムとを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、請求項7に記載の光学フィルム及び請求項8に記載の反射防止フィルムのいずれかである偏光板。
【請求項10】
請求項7に記載の光学フィルム、請求項8に記載の反射防止フィルム、請求項9に記載の偏光板のいずれかを有する画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−121011(P2008−121011A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272717(P2007−272717)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】