説明

塗布装置、及び液溜まり除去方法

【課題】ノズルの液溜まりを簡便に除去することができる塗布装置、及び液溜まり除去方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る塗布装置は、ペースト状物質を吐出するノズル24と、ノズル24からのペースト状物質22を加熱する加熱ブロック21と、加熱ブロック21によって加熱されたペースト状物質22を受ける受け部材23と、を備えるものである。この構成を備えることによって、ノズルの液溜まりを簡便に除去することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び液溜まり除去方法に関し、特に詳しくは、ペースト状物質を塗布する塗布装置、及びノズルへの液溜まりを除去する液溜まり除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂などを塗布する場合、樹脂を供給するノズルが使用される(特許文献1)。また、特許文献1では、樹脂を低粘度化するため、ノズルにヒータが設けられている。ヒータにより樹脂を低粘度化することで、塗布を容易にしている。
【0003】
このような塗布ノズルでは、塗布対象物への塗布を実施する前に、ノズル先端に溜まった液剤を取り除く必要がある。すなわち、ノズル先端に液剤が溜まっている場合、溜まり分の液剤が余分となってしまう。従って、塗布量安定化のために、塗布前には、毎回溜まっている液剤を吐出する処理を実行する。すなわち、塗布する前には、毎回、ノズルの液溜まりを除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−101268号公報
【特許文献2】特開2004−66093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗布装置1において、ノズル6の先端の液剤を除去するため、例えば、液剤を受け用の平板14に吐出することができる(図7)。この場合、液剤を吐出した位置と同じ位置に、再度液剤を吐出してしまうと、ノズル先端に、液剤が再付着してしまうことがある。従って、毎回、別箇所に液剤を吐出する必要が生じてしまう。このため、平板の大型化、あるいは平板の交換を頻繁の行う必要が生じてしまう。平板14の材質を布状のものやスポンジ状のもの等、液剤を吸収できる素材とすることも可能である。この場合、低粘度のエポキシ樹脂であれば常に同位置で液剤吐出を行うことができる。しかしながら、高粘度のエポキシ樹脂の場合には吸収されにくくなるため、常に同位置での液剤吐出を行うことができなくなる。よって、平板14の交換頻度は増えてしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡便にノズルの液溜まりを除去することができる塗布装置、及び液溜まり除去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る塗布装置は、ペースト状物質を吐出するノズルと、前記ノズルからの前記ペースト状物質を加熱する加熱ブロックと、前記加熱ブロックによって加熱されたペースト状物質を受ける受け部材と、を備えるものである。
【0008】
本発明に係る液溜まり除去方法は、ペースト状物質を吐出するノズルの液溜まりを除去する液溜まり除去方法であって、前記ノズルから、前記ペースト状物質を加熱ブロックに吐出するステップと、前記加熱ブロックの熱によって、前記ノズルからのペースト状物質の粘度を低下させるステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルの液溜まりを簡便に除去することができる塗布装置、及び液溜まり除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる塗布装置を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる塗布装置の全体構成を示す斜視図である。
【図3】塗布装置に用いられる除去ユニットの構成を示す図である。
【図4】塗布装置に用いられる耐熱ブロックの構成を示す図である。
【図5】塗布装置に用いられる加熱ブロックの構成を示す図である。
【図6】除去ユニットにおいて、液剤を除去する様子を示す側面図である。
【図7】平板を用いた塗布装置の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは必ずしも一致しない。
【0012】
本発明にかかる塗布装置は、図1に示すように、ペースト状物質22を吐出するノズル24と、ノズル24からのペースト状物質22を加熱する加熱ブロック21と、加熱ブロック21によって加熱されたペースト状物質22を受ける受け部材23と、を備えている。ノズル24から、ペースト状物質22を加熱ブロック21に吐出する。そして、加熱ブロック21の熱によって、ノズル24からのペースト状物質22の粘度を低下させる。これにより、簡便に液溜まりを除去することができる。
【0013】
本発明の実施形態にかかる塗布装置の構成について、図2を用いて説明する。図2は、塗布装置の全体構成を示す斜視図である。図2に示すように塗布装置1は、X軸2、Y軸3、及びZ軸4を備えた汎用の3軸ロボットである。そして、Z軸4には、樹脂を貯蔵するシリンジ5が取り付けられている。例えば、シリンジ5には、例えば、エポキシ樹脂などのペースト状物質が貯蔵されている。
【0014】
そして、シリンジ5の下端には、ノズル6が設けられている。塗布装置1が、X軸2、Y軸3、及びZ軸4を駆動することで、シリンジ5の先端に取り付けられたノズル6が所定の塗布位置まで移動する。このように、ノズル6はXY方向(水平方向)とZ方向(鉛直方向)に移動自在に設けられている。例えば、所定の塗布位置でシリンジ5側からノズル6に空気を供給することで、ノズル6から樹脂が吐出される。また、塗布装置1のステージ上には、除去ユニット7と樹脂受け8が設置されている。除去ユニット7は、ノズル6の液溜まりを除去するためのものである。樹脂受け8は、除去ユニット7から滴下する樹脂を受けるためのものである。樹脂受け8として、必要に応じた適当な大きさの容器を用いることができる。例えば、樹脂受け8として、適当な大きさを有する受け皿や平板を用いることができる。
【0015】
図3〜5を用いて本実施形態にかかる塗布装置の特徴部分の一つである除去ユニット7の構成を説明する。図3は、除去ユニット7の構成を示す図であり、上側に上面図が示され、下側に側面断面図が示されている。図4は、除去ユニット7に設けられた耐熱ブロック9の構成を示す図であり、上側に上面図が示され、下側に側面断面図が示されている。図5は、除去ユニット7に設けられた加熱ブロック10の構成を示す図であり、上側に上面図が示され、下側に側面断面図が示されている。
【0016】
除去ユニット7は耐熱ブロック9と加熱ブロック10とを備えている。加熱ブロック10は耐熱ブロック9に圧入されている。例えば、耐熱ブロック9は直方体状のブロックであり、その中央に、円筒状の穴が設けられている。この円筒状の穴に加熱ブロック10が挿入される。加熱ブロック10は、例えば、熱伝導率の高い材料で設けられている。これにより、加熱ブロック10全体が均一に加熱される。また、耐熱ブロック9は熱伝導率の低い材料で形成されている。
【0017】
加熱ブロック10の下面には、ヒータ11と熱電対12を設置するための穴が2つ設けられている。それぞれの穴に、ヒータ11と熱電対12が挿入される。ヒータ11は、例えば、カートリッジヒータである。ヒータ11に電流を供給して発熱させることで、加熱ブロック10が加熱される。また、熱電対12は、温度を測定するための温度センサである。熱電対12は、ヒータ11、又はヒータ11近傍の温度を測定する。そして、熱電対12での測定温度に応じて、塗布装置1がヒータ11に供給する電流を制御する。これにより、加熱ブロック10が所定の温度まで加熱される。
【0018】
さらに、加熱ブロック10の中央には、円形の貫通穴10aが設けられている。貫通穴10aは上下方向(Z方向)に加熱ブロック10を貫通している。貫通穴10aは2つのヒータ11の中間に形成されている。また、貫通穴10aは、テーパ状に形成されている。すなわち、上側では貫通穴10aの開口径が大きくなっており、下側に行くほど、開口径が小さくなっている。さらに、本実施形態では、2段階のテーパ形状になっている。すなわち、貫通穴10aの側面(テーパ面)の傾斜角度が、厚さ方向の途中で変わっている。上側のテーパ面の傾斜角度はなだらかになっており、下側のテーパ面の角度が急峻になっている。このようにすることで、樹脂を流れ落ちやすくできるとともに、ノズル6の位置調整を容易に行うことができる。そして、X軸2、Y軸3、及びZ軸4によって、加熱ブロック10のテーパ部がノズル6の真下になるように配置される。ノズル6は、テーパ面に向けて樹脂を吐出する。これにより、テーパ面に樹脂が付着される。
【0019】
次に、図6を用いて、塗布装置1の動作について説明する。ここでは、ノズル6の先端の液溜まりを除去する除去方法を説明する。まず、Z軸4を降下して、ノズル6を加熱ブロック10に近づけていく。これによって、ノズル6の先端が、貫通穴10aの側面に対して近接する。すなわち、加熱ブロック10のテーパ部の真上にノズル6の先端が配置される。ノズル6が上側のテーパ面に対して近接する。ここで、ノズル6と加熱ブロック10のテーパ面との距離は、液剤の粘度や吐出量に応じて、任意のものとされている。すなわち、加熱ブロックとノズル6との距離を、液剤の粘度と吐出量に応じて調整する。
【0020】
次に、ノズル6から樹脂13を吐出する。これにより、ノズル6の先端に液溜まりとして付着していた樹脂13が加熱ブロック10に接触する。例えば、ノズル6にシリンジ5側から空気を供給する。これにより、加熱ブロック10のテーパ部に樹脂13が滴下される。ここで、加熱ブロック10は所定の温度まで加熱されているため、樹脂13の粘度が低下する。樹脂13は、テーパ部を下方向に流れていく。すなわち、粘度の低下した樹脂13が、貫通穴10aを通って、滴下される。これにより、樹脂13が、加熱ブロック10に残ることなく、樹脂受け8に落下する。
【0021】
このように加熱ブロック10で樹脂13を加熱することで、樹脂13の流動性を高くしている。よって、樹脂受け8にスポンジ状のものや、布状のものを用いる必要がなくなる。さらに、樹脂受け8の同じ箇所に、樹脂を滴下することができる。よって、樹脂受け8のサイズを小さくすることができる。また、加熱温度、テーパ角度を変えることで、さまざまな樹脂に適用することができる。さらに、加熱ブロック10に表面摩擦抵抗値の低い表面処理を施してもよい。これにより、より樹脂13が落下しやすくなる。よって、様々な粘度の樹脂に採用することが可能にある。ノズル6より除去された液剤が加熱により低粘度化される。よって、加熱ブロック10に残ることなく、樹脂受け8に溜まっていく。このため、樹脂受け8のサイズ次第では樹脂受け8の交換頻度を少なくすることが可能となる。
【0022】
このように、構成が単純でかつ、除去後の溶剤の処理を容易に行うことができる。また、粘度に左右されずに、ノズル先端に付着した樹脂を除去することができる。よって、ノズル先端の液溜まりを容易に除去することができる。さらに、加熱ブロック10の加熱温度を、はんだの溶融温度まで上昇させることで、はんだ塗布装置にも適用可能である。すなわち、温度によって粘度が変化するペースト状物質を塗布する塗布装置であれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 塗布装置
2 X軸
3 Y軸
4 Z軸
5 シリンジ
6 ノズル
7 除去ユニット
8 受け皿
9 耐熱ブロック
10 加熱ブロック
10 貫通穴
11 ヒータ
12 熱電対
13 樹脂
14 平板
21 加熱ブロック
22 ペースト状物質
23 受け部材
24 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状物質を吐出するノズルと、
前記ノズルからの前記ペースト状物質を加熱する加熱ブロックと、
前記加熱ブロックによって加熱されたペースト状物質を受ける受け部材と、を備える塗布装置。
【請求項2】
前記加熱ブロックが前記受け部材の上方に配置されたテーパ状の貫通穴が設けられ、
前記貫通穴のテーパ面によって前記ペースト状物質が加熱されることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記貫通穴が2段階のテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
ペースト状物質を吐出するノズルの液溜まりを除去する液溜まり除去方法であって、
前記ノズルから、前記ペースト状物質を加熱ブロックに吐出するステップと、
前記加熱ブロックの熱によって、前記ノズルからのペースト状物質の粘度を低下させるステップと、を備える液溜まり除去方法。
【請求項5】
前記ペースト状物質の粘度に応じて前記加熱ブロックの温度を調整する請求項4に記載の液溜まり除去方法。
【請求項6】
前記加熱ブロックから落下する前記ペースト状物質が受け部材の同じ位置に滴下されることを特徴とする請求項4、又は5に記載の液溜まり除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−173056(P2011−173056A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38443(P2010−38443)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】