説明

塗布装置およびそれを用いた塗布方法

【課題】塗布液の塗布液溜への供給(補給)に際し塗布液に乱流や気泡が発生せず、塗布液溜内の塗布液面の水位を均一に一定にし、塗布膜にピンホールや厚さの不均一、変化のないようにする塗布装置および塗布方法の提供にある。
【解決手段】回転するコーティングロール17に捲回されて走行するウエブ14と、円筒状のコンマ型ドクターブレード12と、傾斜して配置されたバックプレート16aと該バックプレートの両端縁に配置されたサイドプレート16bとでなる塗布液堰16と、で形成される塗布液溜10の塗布液20を、ウエブ14に塗布する塗布装置1において、前記塗布液溜10の塗布液20が塗布液堰16を構成するバックプレート16aの下部に設けられた塗布液供給口36から供給される塗布装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンマ型ドクターブレードを用いた塗布装置およびそれを用いた塗布方法に関するものであり、特に、供給される塗布液を貯留するための塗布液溜を有する塗布装置およびそれを用いた塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば紙、布、プラスチックフィルム等の走行する帯状被塗布物(以下ウエブという)に接着剤、感光剤等各種塗布液を塗布する装置として、各種公知のものが知られ、例えばグラビアコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、含浸コーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、フローティングナイフコーター等が挙げられ、塗布液の物性、ウエブの種類、塗布量、要求される塗布面質などにより適宜選択できるものである。
【0003】
これら塗布装置のうち、例えば、20cps以上の粘度で比較的塗布量が多く、かつ塗布膜厚が均一で、平滑な塗布面を得る塗布装置として、近年、塗布液を貯留する塗布液溜が連続走行するウエブと円筒状のコンマ型ドクターブレードと塗布液堰(傾斜しているバックプレートとその両端縁のサイドプレートでなる)とで形成され、この塗布液の供給が前記塗布液溜の上からパイプにてなされている塗布装置(コンマコーターともいう)がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開昭63−69568号公報 しかし、上記円筒状のコンマ型ドクターブレードを用いた塗布装置では、この塗布液の供給が塗布液溜の上からなされるので塗布液溜の塗布液に乱流や気泡が発生しやすく、そのためウエブに供給される塗布液の量が一定せず、その結果ウエブ上の膜厚が不均一になったり、高粘度では供給位置の液面が高くなり膜厚が変化してしまうことがあるという問題点があった。
【0005】
上記問題点を解決しようとしたものに、例えば、図5の側面図に示すように、塗布液(20)を貯留する塗布液溜(10)が回転するコーティングロール(17)上に捲回されて連続走行するウエブ(14)と円筒状のコンマ型ドクターブレード(12)と塗布液堰(16)とで形成され、この塗布液(20)の供給が塗布液堰(16)を構成する、傾斜して配置されるバックプレート(16a)の上部にある塗布液供給口(36)から流下面上に流下せしめるようにした塗布方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献2】特開平11−169781号公報 また、同様に上記問題点解決しようとしたものに、特に図示しないが、例えば塗布液堰の傾斜して配置されるバックプレートの上部に塗布液を供給する塗布液供給口を有し、この塗布液供給口の下部に塗布液供給量調整板で、前記塗布液供給口より供給される塗布液を貯留する第2K塗布液堰を備えた塗布装置(コンマコータ)がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献3】特開2003−265995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記いずれの従来技術においても、塗布液の供給を上方から行うことによって、塗布液で外気を巻き込み気泡が生じ易く、塗布膜にピンホールが発生し易いという問題点があった。
【0009】
また、塗布液の流動によって、塗布液が塗布ギャップ(コンマ型ドクターブレードと走行するウエブとの間)を通過するものと通過できずに再び塗布液溜に戻るものがあるようになり、その際に塗布液同士がぶつかって小さな気泡が塗布液溜の塗布液面に浮遊し、この浮遊した小さな気泡群に、上部からの塗布液の供給によって、この小さな気泡群が塗布液とともに塗布ギャップを通過して塗布膜にピンホールが発生するようになるという問題点があった。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、塗布液を貯留する塗布液溜が走行するウエブと円筒状のコンマ型ドクターブレードと塗布液堰とで形成され、この塗布液の塗布液溜への供給(補給)に際し塗布液に乱流や気泡が発生せず、塗布液溜内の塗布液面の水位を均一に一定にし、塗布膜にピンホールや厚さの不均一、変化のないようにする塗布装置およびそれを用いた塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、回転するコーティングロールに捲回されて走行するウエブと、円筒状のコンマ型ドクターブレードと、傾斜して配置され下端縁が走行するウエブに近接したバックプレートと該バックプレートの両端縁に配置されたサイドプレートとでなる塗布液堰と、で形成される塗布液溜の塗布液を、前記走行するウエブに塗布する塗布装置において、前記塗布液溜の塗布液が塗布液堰を構成するバックプレートの下部より供給されることを特徴とする塗布装置としたものである。
【0012】
また、請求項2の発明では、前記請求項1記載の塗布装置を用い、塗布液溜に供給された塗布液を傾斜して配置され下端縁が走行するウエブに近接したバックプレートの上端縁よりオーバーフローさせながら塗布することを特徴とする塗布方法としたものである。
【0013】
また、請求項3の発明では、前記請求項1記載の塗布装置を用い、塗布液溜の塗布液面を検出するセンサーを配設し、該センサーの検出情報により塗布液供給量を調節しながら塗布することを特徴とする塗布方法としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0015】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、回転するコーティングロールに捲回されて走行するウエブと、円筒状のコンマ型ドクターブレードと、傾斜して配置され下端縁が走行するウエブに近接したバックプレートと該バックプレートの両端縁に配置されたサイドプレートとでなる塗布液堰と、で形成される塗布液溜の塗布液を、前記走行するウエブに塗布する塗布装置において、前記塗布液溜の塗布液を塗布液堰を構成するバックプレートの下部より供給するようにすることによって、塗布液溜の塗布液面に乱流や気泡の発生がなくなり、よってウエブ上の塗布膜の厚みが均一で、ピンホールの発生のない塗布装置を提供できる。
【0016】
さらにまた、塗布液が高粘度でも供給位置の液面が高くなることがなく、膜厚の変化もない塗布装置とすることができる。
【0017】
また、上記請求項2に係る発明によれば、上記請求項1記載の塗布装置を用い、塗布液溜に供給された塗布液を傾斜して配置され下端縁が走行するウエブに近接したバックプレートの上端縁よりオーバーフローさせながら塗布する塗布方法とすることによって、たとえ塗布液の流動によって、塗布液が塗布ギャップ(コンマ型ドクターブレードと走行するウエブとの間)を通過するものと通過できずに再び塗布液溜に戻るものがあり、その際に塗布液同士がぶつかって小さな気泡群が塗布液溜の塗布液面に浮遊したとしても、この小さな気泡群がバックプレートの上端縁よりのオーバーフローにより除去することができ、よって塗布膜へのピンホールの発生がない塗布方法とすることができる。
【0018】
さらにまた、上記請求項3に係る発明によれば、上記請求項1記載の塗布装置を用い、塗布液溜の塗布液面を検出するセンサーを配設し、該センサーの検出情報により塗布液供給量を調節しながら塗布する塗布方法とすることによって、塗布液溜内の塗布液面の水位を常に均一にかつ一定に保持するので、従来のような塗布液の流動による塗布ギャップを通過するものと通過できずに再び塗布液溜に戻るものがなくなり、その際に発生する小さな気泡もなくなり、よって塗布膜へのピンホールの発生がない塗布方法とすることができる。
【0019】
従って本発明は、コンマ型ドクターブレードを用いた塗布装置およびその塗布方法において、得られる塗布膜にピンホールや厚さの不均一、厚さに変化のないようにする塗布装置および塗布方法として、優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の塗布装置の一事例を示す側面図であり、図2は、図1の一部を示す斜視図である。また、図3および図4は、本発明の塗布装置の他の一事例を示す側面図である。
【0022】
上記本発明は、例えば、図1の側面図に示すように、塗布液溜(10)内の塗布液(20)を、円筒型のコンマ型ドクターブレード(12)と回転するコーティングロール(17)間に、この回転するコーティングロール(17)に捲回されて走行するウエブ(14)を通過させ、そのウエブ(14)の通過中に上記コンマ型ドクターブレード(12)のエッジ部(12a)によりウエブ(14)表面に塗布膜(20b)を形成する塗布装置(1)である。
【0023】
上記塗布装置(1)を構成する塗布液溜(10)は、回転するコーティングロール(17)に捲回されて走行するウエブ(14)と、円筒型のコンマ型ドクターブレード(12)と、塗布液堰(16)とで形成されている。
【0024】
この塗布液堰(16)は、例えば、図1の側面図および図2の斜視図に示すように、下端縁が回転するコーティングロール(17)上のウエブ(14)に近接したバックプレート(16a)と該バックプレート(16a)の両端縁に配置されたサイドプレート(16b、16b)とからなり、このバックプレート(16a)はコーティングロール(17)の軸と平行にウエブ(14)との間に均一な隙間を有するように設置されている塗布装置(1)、いわゆる円筒型のコンマ型ドクターブレードを有するコーター(コンマコーター)に関するものである。
【0025】
そこで、上記請求項1に係る発明は、例えば、図1の側面図に示すように、塗布液溜(10)の塗布液(20)が塗布液堰(16)を構成するバックプレート(16a)の下部より供給されるようにした塗布装置(1)で、具体的には、塗布液タンク(32)からの塗布液はポンプ(34)を介して、バックプレート(16a)の下部に取り付けられた塗布液供給口(36)より塗布液溜(10)内に供給されるようにした塗布装置(1)である。
【0026】
このように、塗布液溜(10)の塗布液(20)を、塗布液堰(16)を構成するバックプレート(16a)の下部に取り付けられた塗布液供給口(36)より供給するようにすることによって、塗布液溜(10)の塗布液(12)の液面(12a)に乱流や気泡の発生がなくなり、よってウエブ(14)上の塗布膜の厚みが均一で、かつピンホール等の発生のない塗布装置(1)とすることができる。
【0027】
また、塗布液溜(10)の塗布液(12)が高粘度のものであっても、供給位置の液面(12a)が高くなることがなく、よってウエブ((14)上の塗布膜の厚みに変化をもたらすことのないものとすることができる。
【0028】
また、上記請求項2に係る発明は、例えば、図3の側面図に示すように、塗布液溜(10)の塗布液(20)を塗布液堰(16)を構成するバックプレート(16a)の下部に取り付けられた塗布液供給口(36)より供給する塗布装置(1)を用い、塗布液溜(10)内に供給された塗布液(20)を、傾斜して配置され、下端縁がコーティングロール(17)上の走行するウエブ(14)に近接したバックプレート(16a)の上端縁よりオーバーフローさせながら塗布する塗布方法である。
【0029】
このオーバーフローした塗布液(20)は、バックプレート(16a)の上端縁に設けられた樋(16c)に溜められた後、塗布液供給タンク(32)に戻され、再度使用することができるようになっている。
【0030】
このように、例えば塗布液溜(10)に供給される塗布液(20)を、塗布される量よりもわずかに多く供給することで、傾斜して配置されているバックプレート(16a)の上端縁(16c)よりオーバーフローさせながら塗布する塗布方法とすることによって、たとえ塗布液(20)の流動によって、塗布液(20)が塗布ギャップ(コンマ型ドクターブレード(12)と走行するウエブ(14)との間)を通過するものと通過できずに再び塗布液溜(10)に戻るものがあり、その際に塗布液(20)同士がぶつかって小さな気泡群が塗布液溜(10)の塗布液面(20a)に浮遊したとしても、この小さな気泡群がバックプレート(16a)の上端縁に設けた樋(16c)にオーバーフローした塗布液(20)とともに除去することができ、よって塗布膜へのピンホールの発生がない塗布方法とすることができる。
【0031】
なお、バックプレート(16a)の上端縁に設けた樋(16c)の下部にメッシュフィルター(18)を設け、浮遊している小さな気泡群が塗布液供給タンク(32)に入り込まないようにすると、より好ましく気泡群を除去することができる。
【0032】
さらにまた、上記請求項3に係る発明は、例えば、図4の側面図に示すように、塗布液溜(10)の塗布液(20)を塗布液堰(16)を構成するバックプレート(16a)の下部に取り付けられた塗布液供給口(36)より供給する塗布装置(1)を用い、塗布液溜(10)内に供給された塗布液(20)の塗布液面(20a)を検出するセンサー(22)を配設し、このセンサー(22)の検出情報を制御装置(38)を介して塗布液供給量をポンプ(34)の回転で調節しながら塗布する塗布方法である。
【0033】
このように、例えば、塗布液溜(10)の塗布液面(20a)を検出するセンサー(22)を配設し、このセンサー(22)の検出情報により塗布液供給量を調節しながら塗布する塗布方法とすることによって、塗布液溜(10)内の塗布液面(20a)の水位を常に均一にかつ一定に保持することができ、従来のような塗布液(20)の流動による塗布ギャップ(コンマ型ドクターブレード(12)と走行するウエブ(14)との間)を通過するものと通過できずに再び塗布液溜(10)に戻るものがなくなり、その際に発生する小さな気泡の発生もなくなり、よって塗布膜へのピンホールの発生がない塗布方法とすることができる。
【0034】
上記本発明の塗布装置(1)の塗布液溜(10)を形成する塗布液堰(16)としては、金属またはプラスチックからなる充分な剛性を有するバックプレート(16a)および両サイドプレート(16b、16b)で構成されている。
【0035】
また、本発明に使用されるウエブ(14)としては、紙、プラスチックフィルム、金属箔、合成紙などがあり、その中のプラスチックフィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル系重合体、6.6−ナイロン、6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロースアセテートなどが挙げられる。金属ウエブとしては、例えばアルミニウム箔などが使用される。
【0036】
また、本発明に使用される塗布液(20)としては、その用途に応じて種々の液組成のものがあり、例えば写真感光材料のような感光乳剤、下塗り液(アンカーコート剤)、保護層用液(オーバーコート材)、あるいは磁気記録材料のような磁性塗料、下塗り液(アンカーコート剤)、保護層用液(オーバーコート材)、接着剤、あるいは感熱転写リボンのような感熱転写材として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック領域を形成する各顔料インキ(熱可塑性アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のバインダーに各色顔料が分散したもの)などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の塗布装置の一実施の形態を側面で表した説明図である。
【図2】本発明の塗布装置の一実施の形態を示すものでその一部を説明する斜視図である。
【図3】本発明の塗布装置の他の一実施の形態を側面で表した説明図である。
【図4】本発明の塗布装置の他の一実施の形態を側面で表した説明図である。
【図5】従来の塗布装置の一事例を側面で表した説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1‥‥塗布装置
10‥‥塗布液溜
12‥‥コンマ型ドクターブレード
12a‥‥コンマ型ドクターブレードのエッジ
14‥‥ウエブ
16‥‥塗布液堰
16a‥‥バックプレート
16b‥‥サイドプレート
16c‥‥樋
16d‥‥バックプレートの上端縁
17‥‥コーティングロール
18‥‥メッシュフィルター
16‥‥塗布液堰
20‥‥塗布液
20a‥‥塗布液面
20b‥‥塗布膜
22‥‥センサー
32‥‥塗布液供給タンク
34‥‥ポンプ
36‥‥塗布液供給口
38‥‥制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するコーティングロールに捲回されて走行するウエブと、円筒型のコンマ型ドクターブレードと、傾斜して配置され下端縁が走行するウエブに近接したバックプレートと該バックプレートの両端縁に配置されたサイドプレートとでなる塗布液堰と、で形成される塗布液溜の塗布液を、前記走行するウエブに塗布する塗布装置において、前記塗布液溜の塗布液が塗布液堰を構成するバックプレートの下部より供給されることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記請求項1記載の塗布装置を用い、塗布液溜に供給された塗布液を傾斜して配置され下端縁が走行するウエブに近接したバックプレートの上端縁よりオーバーフローさせながら塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項3】
前記請求項1記載の塗布装置を用い、塗布液溜の塗布液面を検出するセンサーを配設し、該センサーの検出情報により塗布液供給量を調節しながら塗布することを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−81956(P2006−81956A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266359(P2004−266359)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】