説明

塗布装置および塗布方法、モールド製品

【課題】比重の違う混合材料の混合比を一定に保つことができる、塗布装置および塗布方法を提供する。
【解決手段】この塗布装置1は、比重の違う混合材料を収納するシリンジ2を備え、また、シリンジ2の内部に収納された混合材料の混合比を一定に保つための混合比調整部材としての、攪拌羽3および攪拌軸4からなる攪拌器と沈降抑制弁とを備える。攪拌器の攪拌効果によって、混合材料のうち比重のより大きい材料が沈降することを抑止できる。また他の混合比調整部材としての、冷却部材7を備える。粘性材料を含む混合材料を用いるときには、冷却部材7が混合材料を冷却させることにより粘性材料の粘度を高めることができるので、混合材料のうち比重のより大きい材料が沈降することを抑止できる。したがって、比重の違う混合材料の混合比を一定に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗布装置および塗布方法、および、当該塗布装置または塗布方法を用いて製作されたモールド製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体材料や粘性材料などの被塗布物を塗布する装置として、シリンジの内部に被塗布物を収納し、シリンジの先端に設けられたノズルから被塗布物を所定量ずつ吐出して塗布する塗布装置が使用されている。特に、粒状、粉状その他の添加剤を含む液体材料、または比重の違う複数の材料を混合した混合材料を塗布する場合には、シリンジ内部における混合材料の経時的な分離・沈降を抑制するために、シリンジ内部に攪拌器を配設する塗布装置が使用されている。
【0003】
図14は、従来の塗布装置の構成を示す模式図である。図14に示すように、この塗布装置は、内部に液体材料や粘性材料を収納するシリンジ32と、シリンジ32の内部に回転可能に配設された攪拌羽33を備える。攪拌羽33は、蓋部材39を貫通する攪拌軸34に連結しており、攪拌軸34はモータ38に連結されている。液体材料や粘性材料は、モータ38の駆動に伴う攪拌羽33の回転によって、シリンジ32の内部で攪拌される。その結果、シリンジ内部における液体材料や粘性材料の分離・沈降が抑制される。攪拌された液体材料や粘性材料は、螺合部材35によってシリンジ32に連結されているノズル36を経て吐出される。
【0004】
さらに、液体材料を外部へ吐出するためのノズルを可撓性ニードルとして構成した液体吐出装置において、たとえば攪拌器に対して可撓性ニードルを偏心配置することによって、可撓性ニードルのシリンジの内部側の端部を攪拌器に衝接可能とし、可撓性ニードルの端部における液体材料の乾燥固着を防止した液体吐出装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。また、シリンジ先端のノズルにニードル弁を開閉自在に設け、ノズルからの液ダレを抑止することができるダイボンディング装置が提案されている(たとえば特許文献2参照)。その他、温度制御機構を備え、樹脂などの粘性材料の温度を室温より高い温度、たとえば40℃程度に保つことによって、粘性材料の粘度を低下させ、樹脂塗布の際の樹脂切れを良好にすることができる装置もある。
【特許文献1】特開平6−126227号公報
【特許文献2】特開平9−115928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
比重の違う混合材料(以下、本明細書中では、混合材料と略称する)を塗布するための従来の塗布装置においては、シリンジの内部に攪拌器を配設していても、シリンジの内部における混合材料の攪拌を有効に行なうことのできる幅をもたない部分にある混合材料を攪拌することは困難である。たとえば、図14において、混合材料の一部が分離・沈降し、シリンジ32のノズル36側の先端部分、またはノズル36の内部に沈降すると、攪拌羽33を回転させても沈降した混合材料を十分攪拌することができない。その結果、所望の混合比と異なる混合比を有する混合材料を塗布することとなり、混合材料の混合比を一定に保つことができない原因となっていた。
【0006】
また、混合材料が、粘性材料と1つまたは複数の異種の材料である場合には、シリンジの内部における粘性材料の粘度は、周囲の温度により変化する。その結果、混合材料の混合状態、すなわち粘性材料よりも比重の大きい異種の材料がシリンジの内部において沈降する状態が周囲の温度変化により変化し続けるために、製品に塗布される混合材料の混合比を一定に保つことが困難であった。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、比重の違う混合材料の混合比を一定に保つことができる、塗布装置および塗布方法を提供することである。また、この発明の他の目的は、当該塗布装置または塗布方法を用いて製作された、製品の品質ばらつきを低減させ品質管理を容易とすることが可能なモールド製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る塗布装置は、比重の違う混合材料を収納するシリンジと、シリンジの内部に収納された混合材料の全体について混合材料の混合比を一定に保つための混合比調整部材とを備える。この場合は、混合比調整部材によって、シリンジの内部の混合材料の混合比を一定に保つことができ、シリンジの内部における混合材料の沈降を抑制することができる。たとえば、混合材料の混合比を所定の値に対し±3%未満、より好ましくは所定の混合比に対し±1%未満の範囲に、保つことができる。特に、大きく比重の違う混合材料を使用し、製品状態で混合材料が分離することが望ましい製品の製造過程において、この発明の塗布装置が有効である。
【0009】
好ましくは、混合比調整部材は、混合材料の粘度を増加させる粘度増加部材である。この場合は、混合材料として、粘性材料と1つまたは複数の異種の材料とを混合させて用いるときに、粘度増加部材によって粘性材料の粘度を増加させることができる。これにより、異種の材料の比重が粘性材料よりも大きい場合でも、異種の材料が沈降することを抑止することができる。
【0010】
また好ましくは、粘度増加部材は、混合材料を冷却する冷却部材である。この場合は、たとえばペルチェ素子のような温度調整できる装置を用いて混合材料を冷却することによって、液体状態の粘性材料の粘度を増加させることができる。
【0011】
また好ましくは、冷却部材は、塗布圧および塗布時間の設定値を一定とする条件において、混合材料の温度を、温度変化に対する混合材料の粘度変化による混合材料の塗布量の変化が2.5%以内となる温度範囲に保つように、混合材料を冷却する。この場合は、混合材料の塗布量に基づいて、冷却部材による混合材料の冷却を制御することができるので、混合材料の混合比を一定に保つことができる。
【0012】
また好ましくは、冷却部材は、混合材料の温度を、混合材料中に結露混入を起こさない温度範囲に保つように、混合材料を冷却する。混合材料の温度が低すぎると、周囲の大気中の水分が混合材料中に混合する可能性がある。混合材料の温度を混合材料中に結露混入を起こさない温度範囲に設定することによって、混合材料中への水分の混合を防止することができる。
【0013】
また好ましくは、塗布装置は、シリンジの内部に配設された攪拌器をさらに備える。冷却部材は、混合材料の温度を、攪拌器によって混合材料を攪拌するときに混合材料中に気泡が発生しない粘度となる温度範囲に保つように、混合材料を冷却する。混合材料への気泡の混入を抑制することによって、混合材料をより適した状態に保つことができる。
【0014】
上記塗布装置において好ましくは、シリンジは、混合材料を外部へ吐出するためのノズル部を含む。そして混合比調整部材は、シリンジの内部に配設された攪拌器と、ノズル部の内部への混合材料の沈降を抑制する沈降抑制弁とを含む。この場合は、攪拌器の攪拌効果によって、シリンジの内部において混合材料のうち比重のより大きい材料が沈降することを抑止することができる。
【0015】
また好ましくは、攪拌器および沈降抑制弁は一体として、シリンジから分離可能に設けられている。この場合は、シリンジの交換による材料の補充、ならびに、攪拌器および沈降抑制弁の洗浄時の作業を、容易化することができる。
【0016】
また好ましくは、塗布装置は、攪拌器を貫通して設けられ、沈降抑制弁を動作させるように沈降抑制弁に連結されている軸をさらに含む。この場合は、攪拌器の攪拌運動に影響することなく、沈降抑制弁を動作させることができる。
【0017】
また好ましくは、沈降抑制弁は、攪拌器の先端に連結されている。この場合は、攪拌器を所定量以上、往復運動させることにより、沈降抑制弁を動作させることができる。
【0018】
また好ましくは、沈降抑制弁は、球状体を介在させて攪拌器に連結される。沈降抑制弁がノズル部に押し付けられた閉状態とされるとき、沈降抑制弁をノズル部に押し付ける力は、攪拌器から球状体を媒介して沈降抑制弁に伝達される。そして、沈降抑制弁が閉状態であるとき、攪拌器と球状体との接点および、沈降抑制弁と球状体との接点における摩擦力は、沈降抑制弁とノズル部との接点における摩擦力よりも小さい。この構成によれば、攪拌器の回転運動によって混合材料を攪拌する場合でも、沈降抑制弁が攪拌器の回転運動の影響を受けることがない。すなわち、沈降抑制弁をノズル部に押し付けた状態で、静止させておくことが可能となる。したがって、ノズル部に沈降抑制弁がこすれる不具合の発生を防止することができる。なお、上記接点とは、攪拌器と球状体(または沈降抑制弁と球状体、または沈降抑制弁とノズル部)とが、1点または複数の点において点接触している場合と、面接触している場合とを含むものとする。
【0019】
また好ましくは、沈降抑制弁は、弾性体を介在させて攪拌器に連結される。沈降抑制弁がノズル部に押し付けられた閉状態とされるとき、沈降抑制弁をノズル部に押し付ける力は、攪拌器から弾性体を媒介して沈降抑制弁に伝達される。そして、沈降抑制弁が閉状態であるとき、弾性体には所定値以上の圧縮応力が加えられている。この構成によれば、攪拌器の往復運動によって混合材料を攪拌する場合でも、沈降抑制弁が攪拌器の往復運動の影響を受けることがない。すなわち、沈降抑制弁をノズル部に押し付けた状態で、静止させておくことが可能となる。したがって、沈降抑制弁がノズル部から離れ、沈降抑制弁が開状態となる不具合の発生を防止することができる。
【0020】
また好ましくは、沈降抑制弁は、弾性体および球状体を介在させて攪拌器に連結される。沈降抑制弁がノズル部に押し付けられた閉状態とされるとき、沈降抑制弁をノズル部に押し付ける力は、攪拌器から弾性体および球状体を媒介して沈降抑制弁に伝達される。そして、沈降抑制弁が閉状態であるとき、弾性体には所定値以上の圧縮応力が加えられている。この構成によれば、攪拌器の回転運動と往復運動との両方によって混合材料を攪拌する場合でも、沈降抑制弁が攪拌器の回転運動または往復運動の影響を受けることがない。すなわち、沈降抑制弁をノズル部に押し付けた状態で、静止させておくことが可能となる。したがって、ノズル部に沈降抑制弁がこすれる、沈降抑制弁がノズル部から離れ開状態となる、などの不具合の発生を防止することができる。
【0021】
また好ましくは、攪拌器には磁石が固定される。沈降抑制弁には他の磁石が固定される。沈降抑制弁がノズル部に押し付けられた閉状態とされるとき、攪拌器に固定された磁石と沈降抑制弁に固定された他の磁石との相互作用力が、沈降抑制弁をノズル部に押し付ける力として沈降抑制弁に作用する。そして、沈降抑制弁が閉状態であるとき、沈降抑制弁には所定値以上の相互作用力が加えられている。なお、相互作用力とは、磁石と他の磁石とが反発し合う力、または引き合う力を示す。この構成によれば、攪拌器の回転運動と往復運動との両方によって混合材料を攪拌する場合でも、沈降抑制弁が攪拌器の回転運動または往復運動の影響を受けることがない。すなわち、沈降抑制弁をノズル部に押し付けた状態で、静止させておくことが可能となる。したがって、ノズル部に沈降抑制弁がこすれる、沈降抑制弁がノズル部から離れ開状態となる、などの不具合の発生を防止することができる。
【0022】
また好ましくは、ノズル部から混合材料を間欠的に吐出させる制御部をさらに備える。そして、沈降抑制弁がノズル部に押し付けられた閉状態であるとき、ノズル部の内部における混合材料の経路のうち沈降抑制弁により占有されていない部分の容積が、間欠的に吐出される混合材料の1回あたりの吐出体積以下となるように、シリンジが形成されている。この場合は、ノズル部の内部における混合材料の経路のうち沈降抑制弁により占有されていない部分に混合材料が沈降していたとしても、混合材料を吐出するときには、当該部分の容積以上の混合材料を塗布する。したがって、製品に塗布される混合材料の混合比の変動を抑制することができる。
【0023】
この発明に係る塗布方法は、混合材料を外部へ吐出するためのノズル部を含み、比重の違う混合材料を収納するシリンジ、ならびに、シリンジの内部に配設された攪拌器およびノズル部の内部への混合材料の沈降を抑制する沈降抑制弁によって構成されている、シリンジの内部に収納された混合材料の全体について混合材料の混合比を一定に保つための混合比調整部材を備える、塗布装置を用いる塗布方法である。そして、攪拌器によって、シリンジの内部の混合材料の攪拌を行なう工程を備える。また、塗布時以外は閉状態である沈降抑制弁を塗布時に開状態とし、所定の体積の混合材料をシリンジの内部からノズル部を経て吐出することにより、混合材料を塗布する工程を備える。この場合は、混合材料の攪拌を行なう工程において、シリンジの内部の混合材料の混合比を一定とすることができる。したがって、塗布する工程において、製品に塗布される混合材料の混合比を一定として、塗布することができる。
【0024】
好ましくは、所定の体積の混合材料を塗布する工程において、シリンジの内部に常時塗布圧を与え、塗布圧ならびに沈降抑制弁の開閉量および開閉時間をそれぞれ制御して、所定の体積の混合材料を塗布する。ここで塗布圧とは、シリンジの内部の混合材料が収納されていない空間に加えられる気体の圧力を示す。また開閉量とは、沈降抑制弁の開度を示し、沈降抑制弁の開度が大きいほど、単位時間あたりの、混合材料がシリンジの内部からノズル部を経て吐出される量が大きくなる。また開閉時間とは、沈降抑制弁が開状態に保たれている時間、すなわち、沈降抑制弁がノズル部から離れている時間を示す。この場合は、混合材料の水頭差の影響を小さくすることができる。したがって、シリンジの内部の混合材料の収納量の多少に関わらず、製品に塗布される混合材料の混合比を一定とすることができる。
【0025】
また好ましくは、シリンジの内部に収納した混合材料の攪拌を行なう工程の後、かつ混合材料を塗布する工程の前に、ノズル部の内部から混合材料を排出する工程を備える。シリンジの内部に混合材料を収納した直後には、混合材料の混合比は一定となっていない。そのため、シリンジの内部に混合材料を収納した直後に塗布を開始せず、まず混合材料の攪拌を行なう。さらに、ノズル部の内部に不均一な混合材料が残存している場合においても、混合材料を塗布する工程の前に、ノズル部の内部から混合材料を排出する工程を備えることによって、混合比を一定とした混合材料を製品に塗布することができる。
【0026】
この発明に係るモールド製品は、上記の塗布装置または塗布方法を用いて、比重の違う混合材料を塗布して製作される。比重の違う混合材料を塗布して製作されるモールド製品においては、混合材料の沈降が好ましくない場合がある。たとえば、励起光に対する発色の異なる複数の蛍光体を塗布する場合には、発光の色むらを発生させないようにするために、複数の蛍光体を樹脂中に均等に混合させるべきである。その場合、上記の塗布装置または塗布方法を用いることによって、シリンジの内部の混合材料の混合比を一定として、混合材料を製品に塗布することができる。したがって、製品の品質ばらつきを低減させ品質管理を容易としたモールド製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、この発明に係る塗布装置および塗布方法では、比重の違う混合材料の混合比を一定に保つことができる。そして、当該塗布装置または塗布方法を用いて、製品の品質ばらつきを低減させ品質管理を容易としたモールド製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1の塗布装置の構成を示す模式図である。図2は、図1の領域II付近を拡大して示す模式図である。図1に示すように、この塗布装置1は、比重の違う混合材料を収納するシリンジ2を備える。シリンジ2は、底部(図1の下側)と開口部(図1の上側)を有する容器であり、たとえば円筒形状に成形される。シリンジ2の開口部には、蓋部材10が覆設されている。
【0030】
混合材料には、たとえば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの透光性樹脂と、透光性樹脂よりも比重の大きい蛍光体とが混合された材料を用いることができる。蛍光体は、青から近紫外光の波長範囲内にピークをもつ一次光により励起されて、一次光よりも長い波長を放出する材料である。たとえば、2価のユーロピウムで賦活された珪酸塩黄色系発光蛍光体(Sr,Ba)SiO;Euなどがある。また、混合させる蛍光体は1種類に限らず、複数の種類の蛍光体を混合させても構わない。
【0031】
シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの透光性樹脂の比重は、約1である。また、蛍光体としてたとえばユーロピウム賦活アルカリ土類金属オルト珪酸塩を用いることができ、その比重は、たとえば約5.4である。混合材料の混合比としては、たとえば、透光性樹脂の体積を4としたときに蛍光体の体積を1とする混合比(すなわち、式により示せば、透光性樹脂の体積:蛍光体の体積=4:1)とすることができる。
【0032】
塗布装置1は、シリンジ2の内部に配設された攪拌器を備える。図1に示すように、蓋部材10を貫通して設けられた攪拌軸4と、攪拌軸4に固定された複数の攪拌羽3とによって、攪拌器が構成されている。また、図2に示すように、シリンジ2は、その底部に、混合材料を外部へ吐出するためのノズル部6を含む。ノズル部6には、シリンジ2の内部と、塗布装置1の外部とを連通するノズル6aが形成されている。さらに、ノズル6aの内部の一部を占有するように、ノズル部6の内部への混合材料の沈降を抑制する沈降抑制弁5が配されている。沈降抑制弁5は、攪拌軸4を貫通して設けられる沈降抑制弁軸12に連結されている。攪拌器と、沈降抑制弁5とは、一の混合比調整部材を構成する。
【0033】
攪拌軸4は、シリンジ2の開口部側の外部において、プーリ15に保持される。プーリ15は、モータ13と連結している。モータ13は制御部9からの信号を受けて回転運動し、モータ13の回転運動はベルト16を介在させて攪拌軸4に伝動されて、攪拌軸4を回転させる。攪拌軸4の回転運動によって、攪拌羽3は、攪拌軸4の回転軸を中心とした円軌道を描くように運動する。この攪拌羽3の運動によって、シリンジ2の内部の混合材料の攪拌を有効に行なうことのできる幅をもつ部分、すなわち沈降抑制弁5によって仕切られたノズル6aの内部を除いたシリンジ2の内部において、混合材料が攪拌される。
【0034】
また、塗布装置1は、シリンジ2の側壁の外周を覆うように設けられた、冷却部材7を備える。また、シリンジ2の内部に、混合材料の温度を計測するための測温体8が設けられる。制御部9は、測温体8によって計測された混合材料の温度に基づいて、冷却部材7を制御する。冷却部材7を運転することにより、混合材料を冷却する。混合材料として、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの粘性材料と、1つまたは複数の異種の材料を混合させた、混合材料を用いる場合には、混合材料を冷却することによって、液体状態の混合材料の粘度を増加させることができる。すなわち、混合材料を冷却する冷却部材7は、混合材料の粘度を増加させる粘度増加部材として機能する。粘度増加部材としての冷却部材7は、他の混合比調整部材を構成する。なお、粘度増加部材としては、冷却部材7を設ける他に、たとえば煙霧状シリカ(乾式シリカ)などの添加剤を樹脂材料に添加する部材を設けてもよい。またたとえば、一定以上の温度に上げると硬化反応が始まる性質を有する樹脂材料を用いてもよい。
【0035】
冷却部材7には、たとえば、直流電流を流すことにより冷却を行なうペルチェ素子を用いることができる。またたとえば、冷却部材7の内部に設けられた配管に冷却水を供給することにより冷却を行なう水冷ジャケットを用いることができる。またたとえば、シリンジ2の側壁の外周にフィンを設け、ファンによって冷却用の風を供給する構成を用いることができる。また、冷却部材は、シリンジ2の側壁の外周に設けられる構造に限られず、たとえば攪拌軸4や攪拌羽3を冷却させることによって混合材料を冷却しても構わない。
【0036】
塗布圧および塗布時間の設定値を一定とする条件において混合材料を塗布する場合、混合材料の温度変化によって、混合材料の粘度が変化すると、塗布量も変化する。つまり、混合材料の粘度が高いと塗布量は少なくなり、粘度が低いと塗布量は多くなる。そこで、混合材料の温度を、温度変化に対する混合材料の粘度変化による混合材料の塗布量の変化が2.5%以内となる温度範囲に保つように、混合材料を冷却することができる。塗布量の変化が2.0%以上2.2%以下となる温度範囲に保つことができれば、より好ましい。これにより、混合材料の塗布量に基づいて、冷却部材7による混合材料の冷却を制御することができ、その結果、混合材料の混合比を一定に保つことができる。なお、混合材料の塗布量は、たとえば白色LED照明パッケージのキャビティのような凹形状の内部を完全に充填するように塗布する場合、混合材料表面の表面張力による凹凸を、当該凹形状を有する部材の傾きを変えて目視することにより、確認することができる。また、混合材料が塗布される部材の、塗布前後の重量を測定し、その重量差によって塗布量を得ることもできる。
【0037】
混合材料の温度の変化と粘度の変化との関係は、混合材料の組成によって異なる。混合材料の組成に応じて、塗布圧および塗布時間の設定値を一定とする条件において混合材料の塗布量の変化をたとえば2%以内にできる粘度変化量ΔVを導出する。ペルチェ素子などには温度制御幅があり、たとえば上記温度制御幅が±1℃の場合、混合材料の温度と粘度変化との関係に基づいて、2℃の温度範囲において粘度変化量をΔV以下とすることができる温度Tを決定することができる。混合材料の沈降を抑制するためには、混合材料の粘度は高いほうがよいため、上記温度Tは可能な限り、粘度を高める側、すなわち低温側として決定すると、より好ましい。
【0038】
また、混合材料の温度を、混合材料中に結露混入を起こさない温度範囲に保つように、混合材料を冷却することができる。混合材料の温度が低すぎると、シリンジ2の外部の大気温度と混合材料の温度との温度差によって、結露が発生し、周囲の大気中の水分が混合材料に混合する可能性がある。たとえば、シリンジ2の内部において発生した結露が混合材料に混入する場合や、シリンジ2の外部において発生した結露が混合材料の塗布時に混合材料に混入する場合が考えられる。そこで、混合材料の温度を混合材料中に結露混入を起こさない温度範囲に設定することによって、混合材料中への水分の混合を防止することができる。
【0039】
飽和水蒸気圧は、近似的に、以下のTetensの式によって求めることができる。ただし、飽和水蒸気圧E(T)(単位:hPa)、温度T(単位:℃)とする。
【0040】
E(T)=6.11×10^{7.5×T/(T+237.3)}
たとえば、塗布装置1の周囲の雰囲気の温度が28℃の場合、飽和水蒸気圧を上式によって算出すると37.8hPaとなり、雰囲気の湿度が50%の場合、水蒸気圧は18.9hPaである。結露の発生を起こさないために、シリンジ2における湿度を85%以下にすると考えると、飽和水蒸気圧が22.3hPa(=18.9/0.85)である温度19.2℃が最低必要な温度となる。よって、ペルチェ素子の温度制御幅が±1℃の場合、温度設定値は20.2℃(=19.2+1)として、決定することができる。
【0041】
なお、塗布装置1を乾燥した環境内に維持するために、塗布装置1の周囲の雰囲気の温度および湿度を制御できる装置を別に備えることも可能である。混合材料中に結露混入を起こさない温度範囲は、塗布装置1の周囲の環境、すなわち塗布装置の周囲の雰囲気の温度および湿度によって異なる。つまり、塗布装置1を乾燥した環境内に維持できるのであれば、混合材料中に結露混入を起こさない温度を下げることができるので、混合材料をより低い温度に保ち、混合材料の粘度をより高めた状態で塗布装置1を運転することができる。
【0042】
また、混合材料の温度を、攪拌器によって混合材料を攪拌するときに混合材料中に気泡が発生しない粘度となる温度範囲に保つように、混合材料を冷却することができる。混合材料の温度を低下させすぎる、すなわち粘性材料の粘度を増加させすぎると、混合材料を攪拌するときに気泡が混合材料中へ混入する可能性がある。上記温度範囲は攪拌器の形状および回転数によって変化し得るものであるが、以下に一例を挙げる。たとえば、混合材料として有機変性系シリコーンと蛍光体を使用する場合、混合材料の温度の下限値を13℃に設定することによって、混合材料中への気泡の混入を抑制することができる。混合材料の温度の下限値を19℃に設定すれば、混合材料中への気泡の混入と結露の発生とをいずれも抑制でき、混合材料をより適した状態に保つことができる。
【0043】
なお、混合材料中への気泡の混入の有無の基準に関しては、気泡が全くなしが理想であるが、実際には、たとえば発光装置などの製品に塗布された混合材料を上面から顕微鏡観察することによって判定することができる。たとえば、気泡の最大径が200μm以下であり、かつ、気泡の合計体積が200μm径の球体の体積以下であることを基準として、判定することができる。なお上記基準値は、発光装置などの製品の大きさに依存して変化し得るものである。
【0044】
以上のように、一の混合比調整部材としての攪拌器および沈降抑制弁5と、他の混合比調整部材としての冷却部材7との作用によって、シリンジ2の内部に収納された混合材料の全体について、混合材料の混合比を一定に保つことができる。すなわち、沈降抑制弁5を閉とした状態において、攪拌器によって混合材料を攪拌して混合する効果を得ることができる。また、粘度増加部材としての冷却部材7によって混合材料を冷却して、混合材料の粘度を増加させることができる。これにより、粘性材料と、1つまたは複数の異種の材料とを混合させた、混合材料を用いる場合に、異種の材料の比重が粘性材料よりも大きい場合でも、異種の材料がシリンジ2の内部の底部に沈降することを抑止することができる。したがって、混合材料の混合比を一定に保つことができる。なお、粘性材料としてシリコーン樹脂を用いれば、粘度の高い樹脂なので、さらに混合材料の沈降が抑制できて好ましい。
【0045】
混合比調整部材によって混合比が一定となった混合材料は、ノズル6aを経由して、シリンジ2の外部に吐出される。沈降抑制弁5を開閉することによって、混合材料の吐出を制御することができる。この実施の形態においては、図1に示すように、沈降抑制弁5の開閉を制御するために、攪拌軸4を貫通して沈降抑制弁軸12が設けられる。沈降抑制弁軸12の一端は沈降抑制弁5に連結され、沈降抑制弁軸12の他端はシリンジ2の開口部側の外部においてアクチュエータ14に連結されている。アクチュエータ14は、制御部9からの信号を受け、沈降抑制弁軸12を軸方向に往復運動させる。沈降抑制弁軸12の往復運動によって、沈降抑制弁軸12の一端に連結されている沈降抑制弁5が開閉する。アクチュエータ14として、たとえばエアシリンダ、直動モータまたは偏心カムなどを用いることができる。
【0046】
沈降抑制弁軸12が設けられることにより、攪拌軸4の回転運動とは独立して沈降抑制弁5の開閉が制御される。すなわち、攪拌器の攪拌運動に影響することなく、沈降抑制弁5を動作させることができる。したがって、沈降抑制弁5が開状態においても、シリンジ2の内部の混合材料を攪拌することが可能であるため、混合材料を吐出する間にも混合材料の混合比を一定に保つことができる。なお、図1に示すように、攪拌軸4を貫通する沈降抑制弁軸12は、細く長いものである必要があるが、沈降抑制弁軸は攪拌軸の一部のみを貫通する構造とし、より短く強度を向上させた沈降抑制弁軸としても構わない。さらに、沈降抑制弁の動作を攪拌器の攪拌運動と独立して制御できればよいため、たとえば弾性体によって付勢されたピンなどの部材で沈降抑制弁を開状態とする構成を用いてもよい。またたとえば、電磁的駆動によって沈降抑制弁を動作させても構わない。
【0047】
また、図1に示すように、シリンジ2と蓋部材10とは複数のボルト11によって結合されている。ボルト11を取り外すことによって、シリンジ2と蓋部材10とを分離させることができる。シリンジ2と蓋部材10とは、ボルト11による結合に限られず、たとえばシリンジ2および蓋部材10にねじ加工が施され、シリンジ2が蓋部材10に直接螺合されて結合されてもよく、この場合、ボルト11を用いる必要がない。そして、シリンジ2を蓋部材10から分離させるとき、攪拌軸4、攪拌軸4を貫通して設けられた沈降抑制弁軸12、および、沈降抑制弁軸12の一端に連結された沈降抑制弁5は、蓋部材10と一体となって、シリンジ2から分離される。すなわち、攪拌器および沈降抑制弁5は、一体として、シリンジ2から分離可能に設けられている。したがって、混合材料をシリンジ2に補充するとき、混合材料が収納されたシリンジ2を交換する方法を用いることができる。また、塗布装置1のメンテナンス時には、シリンジ2を分離させた状態で攪拌器および沈降抑制弁5を洗浄することができるので、攪拌器および沈降抑制弁5の洗浄時の作業を容易化することができる。
【0048】
次に、上記の塗布装置を用いて、比重の違う混合材料を製品に塗布する塗布方法について説明する。図3は、塗布方法の一例を示す流れ図である。図3を参照しながら、塗布方法の一例について説明する。まず工程(S10)において、シリンジ2の内部に、たとえばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの透光性樹脂と、透光性樹脂よりも比重の大きい蛍光体とが混合された材料などの、混合材料を収納する。たとえば、混合材料が収納されたシリンジ2を蓋部材10にボルト11によって結合させることができる。またたとえば、蓋部材10に形成された供給路を通して混合材料をシリンジ2の内部に供給することができる。なお、冷却部材7については、混合材料をシリンジ2に収納する前に起動され連続的に運転されていてもよく、混合材料をシリンジ2に収納した後に起動されてもよい。
【0049】
次に工程(S20)において、攪拌を開始する。具体的には、モータ13を起動し、モータ13の回転運動をベルト16を介在させて攪拌軸4に伝動させて、攪拌軸4を回転させる。攪拌軸4の回転運動によって、攪拌羽3は、攪拌軸4の回転軸を中心とした円軌道を描くように運動する。この攪拌羽3の運動によって、シリンジ2の内部の混合材料が攪拌される。次に工程(S30)において、沈降抑制弁5を開状態とする。具体的には、アクチュエータ14によって、沈降抑制弁軸12をシリンジ2の開口部側へ移動させる。そして、沈降抑制弁軸12の一端に連結されている沈降抑制弁5が開状態となる。
【0050】
次に工程(S40)において、混合材料を塗布する。具体的には、沈降抑制弁5の開度(沈降抑制弁5を何%開とするのか)を所定値とする。すなわち、アクチュエータ14によって沈降抑制弁軸12をシリンジ2の開口部へ移動させる、移動距離を所定の値とする。また、沈降抑制弁5を開状態に保つ時間を、所定の時間とする。沈降抑制弁5が開状態にあれば、重力の作用によって混合材料をシリンジ2の内部からノズル6aを経て吐出することができる。よって、沈降抑制弁5の開度および開状態に保つ時間の制御により、所定の体積の混合材料を製品に塗布することができる。塗布される混合材料の粘度や比重などの物性値に応じて、混合材料の吐出される体積と沈降抑制弁5の制御設定値との関係を予め求めておき、沈降抑制弁5の制御設定値を定めることができる。これにより、製品製作のために必要とされる所定の体積の混合材料を精度よく製品に塗布することができる。
【0051】
次に工程(S50)において、沈降抑制弁5を閉状態とする。具体的には、アクチュエータ14によって、沈降抑制弁軸12をシリンジ2の底部側へ移動させる。そして、沈降抑制弁軸12の一端に連結されている沈降抑制弁5を、シリンジ2の底部側のノズル部6に押し付け、ノズル6aを塞ぐことによって、沈降抑制弁5が開状態となる。次に工程(S60)において、攪拌を停止する。具体的には、モータ13を停止させることによって、攪拌軸4の回転運動、すなわち、攪拌羽3の運動を停止させる。
【0052】
以上説明した塗布方法では、シリンジ2の内部において、混合材料が冷却部材7により冷却され、また攪拌器(すなわち攪拌羽3と攪拌軸4)により攪拌されるので、混合材料の混合比を一定とすることができる。したがって、製品に塗布される混合材料の混合比を一定として、混合材料を製品に塗布することができる。なお、混合材料の攪拌に関し、攪拌器を連続的に運転させることも可能であるが、混合材料の沈降を発生させない程度に間隔をおいて攪拌器を間欠的に運転させることも可能である。
【0053】
図4は、塗布方法の変形例を示す流れ図である。図4を参照しながら、塗布方法の変形例について説明する。図4に示す塗布方法と、上述した図3に示す塗布方法とは、基本的に同様の工程を備えている。しかし、図4に示す塗布方法の変形例においては、工程(S21)、(S22)および(S51)が追加されている点で、図3に示す塗布方法とは異なっている。
【0054】
具体的には、図4に示すように、工程(S20)において攪拌を開始した後、工程(S21)において、シリンジ2の内部に、加圧気体を供給する。たとえば、蓋部材10に通気路を形成し、当該通気路を経由して加圧気体を供給することができる。たとえば、加圧気体の供給源と上記通気路とを連通する経路において弁を設け、当該弁を開とすることで加圧気体を供給することができる。加圧気体の供給によって、シリンジ2の内部には、塗布圧が与えられる。ここで塗布圧とは、シリンジの内部の混合材料が収納されていない空間に加えられる気体の圧力を示す。
【0055】
次に工程(S22)において、ノズル部6の内部から混合材料を排出する。具体的には、製品に混合材料を塗布する前に、沈降抑制弁5を開とする。そして、ノズル部6の内部から混合材料を排出する(すなわち、ノズル6aの内部に残存していた混合材料を排出する)ために定められた所定の時間、沈降抑制弁5を所定の開度に保ち、その後沈降抑制弁5を閉とする。その後、工程(S30)において、製品に混合材料を塗布するために沈降抑制弁5を開状態とする。
【0056】
また、工程(S50)において沈降抑制弁5を閉状態とした後、工程(S51)において、加圧気体を停止する。たとえば、加圧気体の供給源と蓋部材10に形成された通気路とを連通する経路において設けられた弁を閉とすることで、加圧気体を停止することができる。その後、工程(S60)において、攪拌を停止する。なお、図4に示すその他の工程については、図3において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
【0057】
以上説明した塗布方法の変形例では、シリンジ2の内部に塗布圧を与えることによって、混合材料の水頭差の影響を小さくすることができる。すなわち、シリンジ2の内部における混合材料の収納量の多少に関わらず、製品に塗布される混合材料の混合比を一定とすることができる。沈降抑制弁5が閉状態であれば、シリンジ2の内部に塗布圧を与えても混合材料が吐出されることがないため、常時加圧気体を供給し続けることが可能である。なお、シリンジ2と蓋部材10との結合箇所にパッキンを設置すれば、加圧気体の漏れを防止することができる。また、製品に混合材料を塗布する前に、ノズル6aの内部から混合材料を排出することによって、ノズル6aの内部に不均一な混合材料が残存している場合においても、混合比を一定とした混合材料を製品に塗布することができる。ノズル6aの内部から混合材料を排出するときには、シリンジ2の内部に収納された混合材料は、冷却および攪拌によって既に十分混合されている。そのため、工程(S22)後にノズル6aの内部に混合材料が残存していたとしても、ノズル6aの内部に残存した混合材料は製品に塗布される混合比と同一の混合比を有する。したがって、製品に塗布される混合材料の混合比に影響を与えることがない。すなわち、混合比を一定とした混合材料を製品に塗布することができる。
【0058】
なお、図2に示すように、沈降抑制弁5は、ノズル部6に押し付けられた閉状態であるとき、ノズル6aの内部の一部を占有するように配されている。このとき、ノズル部6の内部における混合材料の経路であるノズル6aの内部のうち、沈降抑制弁5により占有されていない部分の容積が、間欠的に吐出される混合材料の1回あたりの吐出体積以下となるように、シリンジ2を形成することができる。このようにシリンジ2を形成すれば、ノズル6aの内部のうち沈降抑制弁により占有されていない部分に混合材料が沈降していたとしても、混合材料を吐出するときには、当該部分の容積以上の混合材料を塗布することができる。すなわち、ノズル6aの内部に沈降していた混合材料が、製品に塗布される混合材料の混合比に影響を与える程度を少なくできる。したがって、製品に塗布される混合材料の混合比の変動を一層抑制することができる。
【0059】
以上説明したように、この実施の形態の塗布装置および塗布方法においては、シリンジ2の内部における攪拌器の攪拌効果によって、混合材料のうち比重のより大きい材料が沈降することを抑止することができる。粘性材料と1つまたは複数の異種の材料とを混合させた混合材料を用いるときには、粘度増加部材によって粘性材料の粘度を高めることができるので、異種の材料の比重が粘性材料よりも大きい場合でも、異種の材料が沈降することを抑止することができる。したがって、シリンジ2の内部に収容された比重の違う混合材料の混合比を一定に保つことができる。すなわち、シリンジ2の内部において、混合材料の沈降、すなわち、比重のより大きい材料のシリンジ2の底部側への滞留を、抑制することができる。たとえば、混合材料の混合比を所定の値に対し±3%未満、より好ましくは所定の混合比に対し±1%未満の範囲に、保つことができる。特に、大きく比重の違う混合材料を使用し、製品状態で混合材料が分離することが望ましい製品の製造過程において、この実施の形態の塗布装置が有効である。
【0060】
そして、この実施の形態の塗布装置および塗布方法を用いて、比重の違う混合材料を塗布して、モールド製品を製作することができる。図10は、モールド製品の例としての、白色照明の外観を示す模式図である。図10に示す白色照明27を製作する過程において、混合材料塗布部28の底側に図示しない青色LEDを予め設置し、その後、蛍光体を含む混合材料29を塗布する。これにより、白色照明27を点灯させるとき、青色LEDにより励起された蛍光体からの黄色の光とLEDの青色の光とを同時に見ることにより、白色に見えるので、白色の発光色を得ることができる。蛍光体を含む混合材料29を塗布するときに、この実施の形態の塗布装置および塗布方法を用いることによって、混合材料の混合比を一定に保つことができる。その結果、白色照明27の品質ばらつきを低減させ、品質管理を容易とすることが可能となる。
【0061】
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2の塗布装置の構成を示す模式図である。図5に示すように、実施の形態2の塗布装置1においては、沈降抑制弁5は、攪拌器を構成する攪拌軸4の一端に連結されている。攪拌軸4の他端は、シリンジ2の開口部側の外部においてモータ13に連結されている。また、アクチュエータ14によって、攪拌軸4が軸方向に往復運動可能であるように、構成されている。
【0062】
モータ13が制御部からの信号を受けて回転運動するとき、モータ13に連結された攪拌軸4も回転する。攪拌軸4の回転運動によって、攪拌羽3は、攪拌軸4の回転軸を中心とした円軌道を描くように運動する。この攪拌羽3の運動によって、シリンジ2の内部の混合材料が攪拌される。また、アクチュエータ14は、制御部からの信号を受けて、攪拌軸4を軸方向に往復運動させる。攪拌軸4の往復運動によって、攪拌軸4の一端に連結されている沈降抑制弁5が開閉する。したがって、この実施の形態の塗布装置1は、実施の形態1の塗布装置と比べ、簡単な構造によって、混合材料の攪拌および沈降抑制弁の動作を行なうことができるので、装置の製造コストを低減することができる。なお、塗布装置1のその他の構成については、図5に図示されていない冷却部材などを含めて、実施の形態1において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
【0063】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3の塗布装置の、沈降抑制弁まわりの構成を示す模式図である。実施の形態3の塗布装置と、上述した実施の形態2の塗布装置とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態3では、沈降抑制弁まわりの構成が図6に示すような構成となっている点で実施の形態2とは異なっている。具体的には、図6に示すように、攪拌軸4の内部に空間を形成し、空間の内部に球状体21を含む。沈降抑制弁5は、シリンジ2の開口部側(図6の上側)の端部において、球状体21と接触している。沈降抑制弁5は、球状体21を介在させて、攪拌軸4に連結されている。
【0064】
図6に示すように、沈降抑制弁5がノズル部6に押し付けられた閉状態とされるとき、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付ける力は、攪拌器を構成する攪拌軸4から、球状体21を媒介して、沈降抑制弁5に伝達される。そして、沈降抑制弁5が閉状態であるとき、攪拌軸4と球状体21との接点24および、沈降抑制弁5と球状体21との接点25における摩擦力は、沈降抑制弁5とノズル部6との接点26における摩擦力よりも小さくなるように構成する。たとえば、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付けるために必要となる力の大きさに対応して、最適な球状体21の表面粗さや材質などを選択することができる。
【0065】
実施の形態3の塗布装置の構成によって、攪拌軸4の回転運動によって混合材料を攪拌する場合でも、沈降抑制弁5が攪拌軸4の回転運動の影響を受けることがない。すなわち、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付けた状態で、静止させておくことが可能となる。したがって、ノズル部6に沈降抑制弁5がこすれ、沈降抑制弁5またはノズル部6が摩耗する不具合の発生を防止することができる。
【0066】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4の塗布装置の、沈降抑制弁まわりの構成を示す模式図である。実施の形態4の塗布装置と、上述した実施の形態3の塗布装置とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態4では、図6に示すように、球状体に替えてバネ22が配設され、沈降抑制弁5はバネ22を介在させて攪拌軸4に連結されている点で、実施の形態3とは異なっている。
【0067】
図7に示すように、沈降抑制弁5がノズル部6に押し付けられた閉状態とされるとき、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付ける力は、攪拌器を構成する攪拌軸4から、バネ22を媒介して、沈降抑制弁5に伝達される。そして、沈降抑制弁5が閉状態であるとき、バネ22には所定値以上の圧縮応力が加えられるように構成する。たとえば、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付けるために必要となる力の大きさ、および、バネ22の設置されている空間のバネ22の伸縮方向の長さに対応して、最適なバネ定数を選択することができる。なお、たとえばゴムなどの弾性体を、バネ22に替えて使用することも可能である。
【0068】
実施の形態4の塗布装置の構成によって、攪拌軸4の往復運動によって混合材料を攪拌する場合でも、バネ22に圧縮応力が加えられた状態を維持できる範囲内で攪拌軸4を往復運動させるようにすれば、沈降抑制弁5が攪拌軸4の往復運動の影響を受けることがない。すなわち、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付けた状態で、静止させておくことが可能となる。したがって、沈降抑制弁5がノズル部6から離れ、沈降抑制弁5が開状態となり、混合材料がノズル6aから漏洩する不具合の発生を防止することができる。
【0069】
(実施の形態5)
図8は、実施の形態5の塗布装置の、沈降抑制弁まわりの構成を示す模式図である。実施の形態5の塗布装置と、上述した実施の形態3の塗布装置とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態5では、図8に示すように、球状体21に加えてバネ22が配設され、沈降抑制弁5は球状体21およびバネ22を介在させて攪拌軸4に連結されている点で、実施の形態3とは異なっている。
【0070】
沈降抑制弁5がノズル部6に押し付けられた閉状態とされるとき、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付ける力は、攪拌軸4からバネ22および球状体21を媒介して沈降抑制弁5に伝達される。そして、沈降抑制弁5が閉状態であるとき、沈降抑制弁5と球状体21との接点における摩擦力は、沈降抑制弁5とノズル部6との接点における摩擦力よりも小さくなるように、かつ、バネ22には所定値以上の圧縮応力が加えられるように、塗布装置を構成する。
【0071】
実施の形態5の塗布装置の構成によって、攪拌軸4の回転運動と往復運動との両方によって混合材料を攪拌する場合でも、沈降抑制弁5が攪拌軸4の回転運動または往復運動の影響を受けることがない。すなわち、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付けた状態で、静止させておくことが可能となる。したがって、ノズル部6に沈降抑制弁5がこすれる、沈降抑制弁5がノズル部6から離れ開状態となる、などの不具合の発生を防止することができる。なお、図8においては、球状体21とバネ22とは、球状体21が沈降抑制弁5に接触しバネ22が攪拌軸4に接触するように配置されているが、球状体21とバネ22との配置を転換し、球状体21が攪拌軸4に接触しバネ22が沈降抑制弁5に接触するように配置されていても構わない。
【0072】
(実施の形態6)
図9は、実施の形態6の塗布装置の、沈降抑制弁まわりの構成を示す模式図である。実施の形態6の塗布装置と、上述した実施の形態5の塗布装置とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態6では、図9に示すように、球状体およびバネに替えて、着磁方向を互いに逆にした一対の永久磁石23が配設され、永久磁石23の一方は回転軸4に固定され、永久磁石23の他方は沈降抑制弁5に固定されている点で実施の形態5とは異なっている。
【0073】
沈降抑制弁5がノズル部6に押し付けられた閉状態とされるとき、攪拌軸4に固定された一方の永久磁石23と沈降抑制弁5に固定された他方の永久磁石23との相互作用力が、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付ける力として沈降抑制弁5に作用する。そして、沈降抑制弁5が閉状態であるとき、沈降抑制弁5には所定値以上の相互作用力が加えられるように、塗布装置を構成する。すなわち、永久磁石23の相互作用力が所定値以上となる範囲内を振幅として、攪拌軸4は軸方向に往復運動する。図9においては、一方の永久磁石23と他方の永久磁石23とが反発し合う力が、相互作用力として作用している。なお、永久磁石の配置を変更する(たとえば、攪拌軸4の内部に形成された空間の、シリンジ2の底部側に一方の永久磁石を配置する)ことによって、永久磁石が引き合う力を相互作用力として作用させることもできる。
【0074】
実施の形態6の塗布装置の構成によって、攪拌軸4の回転運動と往復運動との両方によって混合材料を攪拌する場合でも、永久磁石23の相互作用力を維持できる範囲内で攪拌軸4を往復運動させるようにすれば、沈降抑制弁5が攪拌軸4の回転運動または往復運動の影響を受けることがない。すなわち、沈降抑制弁5をノズル部6に押し付けた状態で、静止させておくことが可能となる。したがって、ノズル部6に沈降抑制弁5がこすれる、沈降抑制弁5がノズル部6から離れ開状態となる、などの不具合の発生を防止することができる。
【実施例1】
【0075】
以下、この発明の実施例1について説明する。この発明の塗布装置および塗布方法によって、青色LEDと蛍光体とを使用した白色照明を製作する実験を行なった。透光性樹脂としてシリコーン樹脂を使用し、蛍光体として2価のユーロピウムで賦活された珪酸塩黄色系発光蛍光体(Sr,Ba)SiO;Euを使用し、透光性樹脂の体積を4としたときに蛍光体の体積を1とする混合比(透光性樹脂の体積:蛍光体の体積=4:1)において、シリンジに収納した。ペルチェ素子を用いて、透光性樹脂と蛍光体との混合材料の温度を23℃に保つように制御した。そして、混合材料を青色LEDの上に塗布して製作した発光装置(約3900個)の色度ばらつきを調査した。
【0076】
図11は、発光装置の色度をxy色度図にプロットしたグラフである。図11の横軸は色度座標x、縦軸は色度座標yを示す。図11において、(a)は混合材料を23℃に保つように制御して製作した発光装置の色度である。また比較例として、ペルチェ素子を用いた温度制御を行なわずに製作した発光装置の色度を(b)に、混合材料を40℃に保つように制御して製作した発光装置の色度を(c)に、それぞれ示す。なお、図11のグラフ中には、発光装置の色度の、白色照明として用いることのできる仕様ランクを、目標枠として示した。
【0077】
図11(a)に示すように、混合材料を23℃に保つように制御して製作した発光装置の色度をプロットした結果、目標枠の中央付近に入っていた。そして、図11(b)と比較して一定の曲線上から外れる色度のプロットがより少なくなっていた。また図11(c)のように、色度のプロットがなす曲線が非常に広い範囲に伸びて広がる傾向も示していなかった。この結果から、混合材料を最適に温度制御することによって、混合比を一定とした混合材料を製品に塗布することができ、そのため発光装置の製品ばらつきを低減できたことが確認された。
【実施例2】
【0078】
以下、この発明の実施例2について説明する。透光性樹脂としてシリコーン樹脂を使用し、蛍光体として2価のユーロピウムで賦活された珪酸塩黄色系発光蛍光体(Sr,Ba)2SiO4;Euを使用し、透光性樹脂の体積を4としたときに蛍光体の体積を1とする混合比(透光性樹脂の体積:蛍光体の体積=4:1)とした混合材料を準備した。この場合における、混合材料の温度変化および粘度変化の関係、および、混合材料の粘度変化および塗布量の変化の関係を明らかにした。
【0079】
図12は、混合材料の温度変化および粘度変化の関係を示すグラフである。図12において、横軸は混合材料の温度(単位℃)、縦軸は混合材料の粘度(単位mPa・s)を示す。図12に示すように、混合材料の温度が低くなるに従って、粘度は増加している。また、粘度の変化は、一定の温度幅であっても、温度域によって変化量が異なっている。つまり、混合材料の温度が低くなると、一定の温度幅における粘度の変化量が大きくなっている。図13は、塗布条件(たとえば塗布圧、塗布時間、塗布装置の塗布サイクル(すなわち、下降速度・下端停止時間・塗布タイミング・上昇速度・上昇距離などの工程)、および塗布ノズルの特性など)が一定である場合の、混合材料の粘度と塗布量との関係を示すグラフである。図13において、横軸は混合材料の粘度、縦軸は混合材料の塗布量を示す。図13に示すように、塗布条件が一定である場合、混合材料の粘度が高いほど塗布量は少なくなり、粘度が高いほど塗布量は多くなる。
【0080】
上記の関係に基づいて、混合材料の温度と塗布量との関係を求めた。目標塗布量範囲が決まっている場合、混合物の沈まない、または混合物の沈降の許容できる粘度以上の粘度で塗布条件が決定され、塗布条件と粘度との関係で使用粘度範囲が決まる。この使用粘度範囲になるように、温度設定を行なうことができる。たとえば、混合材料の塗布量の変化を2%以内にできる粘度変化量ΔVは、約67mPa・sである。ペルチェ素子の温度制御幅を±1℃と考えると、2℃の温度範囲において粘度変化量ΔVを約67mPa・s以下とできる温度範囲を決定すればよい。かかる温度範囲は、19℃以上21℃以下であることが導出された。
【0081】
なお、この発明の塗布装置および塗布方法は、白色照明などのモールド製品に限らず、種々の用途に使用することができる。たとえば、ダイボンドペーストを用いて半導体を基板などにボンディングする用途、接着剤・シーリング材・塗料・インクなどを定量吐出する用途などに、使用することができる。
【0082】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の実施の形態1の塗布装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1の領域II付近を拡大して示す模式図である。
【図3】塗布方法の一例を示す流れ図である。
【図4】塗布方法の変形例を示す流れ図である。
【図5】実施の形態2の塗布装置の構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態3の塗布装置の、沈降抑制弁まわりの構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態4の塗布装置の、沈降抑制弁まわりの構成を示す模式図である。
【図8】実施の形態5の塗布装置の、沈降抑制弁まわりの構成を示す模式図である。
【図9】実施の形態6の塗布装置の、沈降抑制弁まわりの構成を示す模式図である。
【図10】白色照明の外観を示す模式図である。
【図11】発光装置の色度をxy色度図にプロットしたグラフである。
【図12】混合材料の温度変化および粘度変化の関係を示すグラフである。
【図13】混合材料の粘度と塗布量との関係を示すグラフである。
【図14】従来の塗布装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0084】
1 塗布装置、2 シリンジ、3 攪拌羽、4 攪拌軸、5 沈降抑制弁、6 ノズル部、6a ノズル、7 冷却部材、8 測温体、9 制御部、10 蓋部材、11 ボルト、12 沈降抑制弁軸、13 モータ、14 アクチュエータ、15 プーリ、16 ベルト、21 球状体、22 バネ、23 永久磁石、24,25,26 接点、27 白色照明、28 混合材料塗布部、29 混合材料、32 シリンジ、33 攪拌羽、34 攪拌軸、35 螺合部材、36 ノズル、38 モータ、39 蓋部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重の違う混合材料を収納するシリンジと、
前記シリンジの内部に収納された前記混合材料の全体について前記混合材料の混合比を一定に保つための混合比調整部材とを備える、塗布装置。
【請求項2】
前記混合比調整部材は、前記混合材料の粘度を増加させる粘度増加部材である、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記粘度増加部材は、前記混合材料を冷却する冷却部材である、請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記冷却部材は、塗布圧および塗布時間の設定値を一定とする条件において、前記混合材料の温度を、温度変化に対する前記混合材料の粘度変化による前記混合材料の塗布量の変化が2.5%以内となる温度範囲に保つように、前記混合材料を冷却する、請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記冷却部材は、前記混合材料の温度を、前記混合材料中に結露混入を起こさない温度範囲に保つように、前記混合材料を冷却する、請求項3に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記シリンジの内部に配設された攪拌器をさらに備え、
前記冷却部材は、前記混合材料の温度を、前記攪拌器によって前記混合材料を攪拌するときに前記混合材料中に気泡が発生しない粘度となる温度範囲に保つように、前記混合材料を冷却する、請求項3に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記シリンジは、前記混合材料を外部へ吐出するためのノズル部を含み、
前記混合比調整部材は、
前記シリンジの内部に配設された攪拌器と、
前記ノズル部の内部への前記混合材料の沈降を抑制する沈降抑制弁とを含む、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記攪拌器および前記沈降抑制弁は一体として、前記シリンジから分離可能に設けられている、請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記攪拌器を貫通して設けられ、前記沈降抑制弁を動作させるように前記沈降抑制弁に連結されている軸をさらに含む、請求項7または請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記沈降抑制弁は、前記攪拌器の先端に連結されている、請求項7または請求項8に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記沈降抑制弁は、球状体を介在させて前記攪拌器に連結され、
前記沈降抑制弁が前記ノズル部に押し付けられた閉状態とされるとき、前記沈降抑制弁を前記ノズル部に押し付ける力は、前記攪拌器から前記球状体を媒介して前記沈降抑制弁に伝達され、
前記閉状態であるとき、前記攪拌器と前記球状体との接点および、前記沈降抑制弁と前記球状体との接点における摩擦力は、前記沈降抑制弁と前記ノズル部との接点における摩擦力よりも小さい、請求項10に記載の塗布装置。
【請求項12】
前記沈降抑制弁は、弾性体を介在させて前記攪拌器に連結され、
前記沈降抑制弁が前記ノズル部に押し付けられた閉状態とされるとき、前記沈降抑制弁を前記ノズル部に押し付ける力は、前記攪拌器から前記弾性体を媒介して前記沈降抑制弁に伝達され、
前記閉状態であるとき、前記弾性体には所定値以上の圧縮応力が加えられている、請求項10に記載の塗布装置。
【請求項13】
前記沈降抑制弁は、弾性体および球状体を介在させて前記攪拌器に連結され、
前記沈降抑制弁が前記ノズル部に押し付けられた閉状態とされるとき、前記沈降抑制弁を前記ノズル部に押し付ける力は、前記攪拌器から前記弾性体および前記球状体を媒介して前記沈降抑制弁に伝達され、
前記閉状態であるとき、前記弾性体には所定値以上の圧縮応力が加えられている、請求項10に記載の塗布装置。
【請求項14】
前記攪拌器には磁石が固定され、
前記沈降抑制弁には他の磁石が固定され、
前記沈降抑制弁が前記ノズル部に押し付けられた閉状態とされるとき、前記磁石と前記他の磁石との相互作用力が、前記沈降抑制弁を前記ノズル部に押し付ける力として前記沈降抑制弁に作用し、
前記閉状態であるとき、前記沈降抑制弁には所定値以上の前記相互作用力が加えられている、請求項10に記載の塗布装置。
【請求項15】
前記ノズル部から前記混合材料を間欠的に吐出させる制御部をさらに備え、
前記沈降抑制弁が前記ノズル部に押し付けられた閉状態であるとき、前記ノズル部の内部における前記混合材料の経路のうち前記沈降抑制弁により占有されていない部分の容積が、前記間欠的に吐出される前記混合材料の1回あたりの吐出体積以下となるように、前記シリンジが形成されている、請求項7から請求項14のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項16】
請求項7から請求項15のいずれかに記載の塗布装置を用いる塗布方法であって、
前記攪拌器によって、前記シリンジの内部の前記混合材料の攪拌を行ない、
前記沈降抑制弁は、塗布時以外は閉状態であり、塗布時には開状態とされ所定の体積の前記混合材料を前記シリンジの内部から前記ノズル部を経て吐出することにより、前記混合材料を塗布する、塗布方法。
【請求項17】
前記シリンジの内部に常時塗布圧を与え、
前記塗布圧ならびに前記沈降抑制弁の開閉量および開閉時間を、それぞれ制御して、所定の体積の前記混合材料を塗布する、請求項16に記載の塗布方法。
【請求項18】
前記シリンジの内部に前記混合材料を収納し、前記混合材料を攪拌した後、前記混合材料を塗布する前に、前記ノズル部の内部から前記混合材料を排出する、請求項16または請求項17に記載の塗布方法。
【請求項19】
請求項1から請求項15のいずれかに記載の塗布装置を用いて、比重の違う混合材料を塗布して製作されたモールド製品。
【請求項20】
請求項16から請求項18のいずれかに記載の塗布方法を用いて、比重の違う混合材料を塗布して製作されたモールド製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−126208(P2008−126208A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317311(P2006−317311)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】