説明

塗料の供給装置

【課題】塗料の圧送を良好に行わせることができるとともに、製造コスト及びメンテナンスのためのコストを低減させることができる塗料の供給装置を提供する。
【解決手段】所定量の塗料を収容するとともに、当該塗料を外部に吐出可能な吐出口A、Bが形成された収容タンクTa、Tbと、収容タンクTa、Tb内に配設され、当該収容タンクTa、Tb内に収容された塗料を吐出口A、Bから圧送させる圧送手段とを具備した塗料の供給装置において、圧送手段は、複数の羽根が形成されたプロペラ状部材1、2を有し、当該プロペラ状部材1、2の回転により、吐出口A、Bから塗料を圧送しつつ収容タンクTa、Tb内で塗料を撹拌可能とされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定量の塗料を収容するとともに、当該塗料を外部に吐出可能な吐出口が形成された収容タンクと、該収容タンク内に配設され、当該収容タンク内に収容された塗料を吐出口から圧送させる圧送手段とを具備した塗料の供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所望の被塗布物に塗料を塗布する方法として、例えばスプレーガンを用いたスプレー塗装が汎用的である。かかるスプレー塗装においては、通常、所定量の塗料を収容した収容タンクとスプレーガンとをホース等を介して連通させるとともに、当該収容タンク内の塗料をスプレーガンに圧送させて当該プレーガンから塗料を噴出させ、被塗布物にスプレー塗装可能な塗料の供給装置が用いられていた。
【0003】
しかるに、従来の塗料の供給装置においては、収容タンクからスプレーガン等に対する塗料の供給方法として、送液用のポンプを用いて圧送するもの、収容タンク内に空気等を送り込んで圧力を加えることにより圧送するもの、或いは収容タンクを高所に配設して塗料の自重にて送液するもの等が挙げられる。また、従来の塗料の供給装置においては、収容タンク内の塗料の温度均一化や顔料等添加物の沈殿防止を図るべく、当該収容タンク内に撹拌手段を具備させていた。なお、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の塗料の供給装置においては、収容タンクから塗料を圧送させる圧送手段と、当該収容タンク内の塗料を撹拌させる撹拌手段とをそれぞれ別個に配設する必要があることから、製造コスト及びメンテナンスのためのコスト等が嵩んでしまうという問題があった。なお、収容タンクを高所に配設して塗料の自重にて送液するものの場合、圧送手段が不要とされるものの、高粘度の塗料を用いる場合、自重では圧送力不足が生じてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、塗料の圧送を良好に行わせることができるとともに、製造コスト及びメンテナンスのためのコストを低減させることができる塗料の供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、所定量の塗料を収容するとともに、当該塗料を外部に吐出可能な吐出口が形成された収容タンクと、該収容タンク内に配設され、当該収容タンク内に収容された塗料を前記吐出口から圧送させる圧送手段とを具備した塗料の供給装置において、前記圧送手段は、複数の羽根が形成されたプロペラ状部材を有し、当該プロペラ状部材の回転により、前記吐出口から塗料を圧送しつつ前記収容タンク内で塗料を撹拌可能とされたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の塗料の供給装置において、前記収容タンクは、前記吐出口に向かって漏斗状に形成されて成るとともに、当該吐出口近傍に前記プロペラ状部材が配設されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の塗料の供給装置において、前記収容タンクは、互いに異なる種類の塗料をそれぞれ収容すべく複数配設されるとともに、それぞれの収容タンク内のプロペラ状部材に単一の駆動手段が連結され、当該駆動手段にてそれぞれのプロペラ状部材が回転駆動可能とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の塗料の供給装置において、前記複数の収容タンクのそれぞれの吐出口からホースを延設させ、当該ホースの先端側に塗料を所望部位に向かって噴出させ得る噴出手段を接続させるとともに、当該複数の収容タンク内の互いに異なる種類の塗料を混合させつつ当該噴出手段にて噴出可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、圧送手段は、複数の羽根が形成されたプロペラ状部材を有し、当該プロペラ状部材の回転により、吐出口から塗料を圧送しつつ収容タンク内で塗料を撹拌可能とされたので、プロペラ状部材が塗料の圧送機能と撹拌機能とを兼ね備えることができ、塗料の圧送を良好に行わせることができるとともに、製造コスト及びメンテナンスのためのコストを低減させることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、収容タンクは、吐出口に向かって漏斗状に形成されて成るとともに、当該吐出口近傍にプロペラ状部材が配設されたので、より効率的に吐出口からの塗料の圧送及び撹拌を同時に行わせることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、収容タンクは、互いに異なる種類の塗料をそれぞれ収容すべく複数配設されるとともに、それぞれの収容タンク内のプロペラ状部材に単一の駆動手段が連結され、当該駆動手段にてそれぞれのプロペラ状部材が回転駆動可能とされたので、複数のプロペラ状部材の駆動手段を共用させることができ、製造コスト及びメンテナンスのためのコストをより低減させることができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、複数の収容タンクのそれぞれの吐出口からホースを延設させ、当該ホースの先端側に塗料を所望部位に向かって噴出させ得る噴出手段を接続させるとともに、当該複数の収容タンク内の互いに異なる種類の塗料を混合させつつ当該噴出手段にて噴出可能とされたので、より良好に複数の塗料を混合させつつ被塗布物に対する塗料の塗布を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る塗料の供給装置を示す模式図
【図2】同塗料の供給装置における収容タンク内の塗料の流れを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る塗料の供給装置は、被塗布物に塗布するための塗料を供給するためのもので、図1に示すように、収容タンクTa、Tbと、圧送手段としてのプロペラ状部材1、2と、駆動手段としてのモータ3と、加温手段4、5とを主に備え、噴出手段としてのスプレーガン6に対して塗料を供給可能とされたものである。
【0016】
収容タンクTa、Tbは、それぞれ異なる種類の塗料を所定量収容するためのタンクから成り、塗料を外部に吐出可能な吐出口A、Bが形成されたものである。本実施形態に係る収容タンクTa、Tbは、その底面が、下方に向かって縮径する如き漏斗状の部位Taa、Tbaとされており、その下端が開口して吐出口A、Bを形成している。なお、漏斗状の部位Taa、Tbaの勾配角度は、任意設定することができる。
【0017】
圧送手段としてのプロペラ状部材1、2は、収容タンクTa、Tb内に回転駆動可能に配設され、当該収容タンクTa、Tb内に収容された塗料を吐出口A、Bからスプレーガン6に対して圧送させるものである。具体的には、プロペラ状部材1、2は、複数の羽根が形成されたプロペラ状の部材から成り、シャフトL1、L2を介して駆動源としてのモータ3と連結されている。
【0018】
シャフトL1、L2は、上下一対のベアリングB1、B2、及びベアリングB3、B4にて回転自在に支持されているとともに、上端部にプーリP1、P2が形成されている。かかるプーリP1、P2には、モータ3の出力軸3aに形成されたプーリP3、P4と連結ベルトV1、V2を介して連結されており、モータ3の出力軸3aの回転力がシャフトL1、L2を介してプロペラ状部材1、2に伝達されるようになっている。
【0019】
すなわち、本実施形態においては、2つの収容タンクTa、Tbは、互いに異なる種類の塗料をそれぞれ収容すべく配設されるとともに、それぞれの収容タンクTa、Tb内のプロペラ状部材1、2に単一のモータ3(駆動手段)が連結され、当該モータ3にてそれぞれのプロペラ状部材1、2が回転駆動可能とされているのである。なお、本実施形態においては、単一のモータ3(駆動手段)にて2つのプロペラ状部材1、2を回転駆動させているが、それぞれのプロペラ状部材1、2を回転駆動させるための駆動手段を別個に具備したものとしてもよい。
【0020】
加温手段4、5は、通電により発熱して加温可能なものであり、図示しないバンド等によって収容タンクTa、Tbの外側壁面に取り付けられるとともに、当該収容タンクTa、Tb内に収容された塗料を加温して低粘度を維持するためのものである。なお、加温手段4、5は、サーモスタットを具備したものが好ましく、収容タンクTa、Tbに収容させる塗料の種類によっては配設が不要な場合もある。
【0021】
一方、吐出口A、Bには、それぞれ塗料を流通させ得る可撓性チューブ等から成るホースH1、H2がそれぞれ接続されており、これらホースH1、H2は、逆止弁7を介してスタティックミキサ等の混合手段8に接続されている。この混合手段8は、ホースH1、H2を介して圧送された2種類の塗料を混合して均一な状態とするもので、その混合した塗料を流通させ得る可撓性チューブ等から成るホースH3を介してスプレーガン6(噴出手段)と接続されている。
【0022】
スプレーガン6は、供給された塗料を所望部位に向かってスプレー状に噴出させ得るもので、本実施形態においては噴出口が1つ(単口)の二液混合タイプのもので構成されている。そして、作業者がスプレーガン6を把持しつつ噴出口を被塗布物に向けた状態で操作部を操作することにより、当該被塗布物に向かってスプレー状に塗料が噴出し、塗装が可能とされている。なお、スプレーガン6は、噴出口が2つ以上のものや一液のみ(1つの収容タンクから供給された塗料のみ)を噴出させるものとしてもよい。
【0023】
ここで、本実施形態においては、プロペラ状部材1、2は、収容タンクTa、Tb内の吐出口A、B近傍に配設されるとともに、その回転により、吐出口A、Bから塗料を圧送しつつ収容タンクTa、Tb内で塗料を撹拌可能とされている。すなわち、プロペラ状部材1、2が回転すると、図2に示すように、収容タンクTa、Tb内の塗料を吐出口A、Bに向かって流動させ、その一部が当該吐出口A、BからホースH1、H2側に流出する流れaとされ、その他が収容タンクTa、Tbの上部側に流入する流れbとされるのである。
【0024】
しかして、吐出口A、BからホースH1、H2側に流出した流れaにより、収容タンクT1、T2内の塗料を圧送することができるとともに、収容タンクTa、Tbの上部側に流入する流れbにより、収容タンクTa、Tb内で塗料を撹拌することができることから、塗料の圧送と撹拌とを同時に行わせることができる。なお、圧送のための流れaと撹拌のための流れbとは、必ずしも同等量でなくてもよく、その比率は漏斗状の部位Taa、Tbaの勾配角度やプロペラ状部材1、2の回転数、或いはプロペラ状部材1、2の羽根の形状等を変更することにより任意に設定することができる。
【0025】
特に、本実施形態においては、収容タンクTa、Tbは、吐出口A、Bに向かって漏斗状に形成されて成るとともに、当該吐出口A、B近傍にプロペラ状部材1、2が配設されているので、当該プロペラ状部材1、2の回転により塗料をより良好かつ円滑に吐出口A、B側に流動させることができ、圧送と撹拌とを確実に行わせることができるようになっている。なお、プロペラ状部材1、2は、漏斗状の部位Taa、Tbaが形成される境界部近傍に配設するのが好ましく、その羽根の先端と収容タンクTa、Tbとの内壁面との間に所定寸法の間隙を形成して流れbを確実に確保するのが好ましい。
【0026】
上記実施形態によれば、圧送手段は、複数の羽根が形成されたプロペラ状部材1、2を有し、当該プロペラ状部材1、2の回転により、吐出口A、Bから塗料を圧送しつつ収容タンクTa、Tb内で塗料を撹拌可能とされたので、プロペラ状部材1,2が塗料の圧送機能と撹拌機能とを兼ね備えることができ、塗料の圧送を良好に行わせることができるとともに、製造コスト及びメンテナンスのためのコストを低減させることができる。
【0027】
また、収容タンクTa、Tbは、吐出口A、Bに向かって漏斗状に形成されて成るとともに、当該吐出口A、B近傍にプロペラ状部材1、2が配設されたので、より効率的に吐出口A、Bからの塗料の圧送及び撹拌を同時に行わせることができる。さらに、収容タンクTa、Tbは、互いに異なる種類の塗料をそれぞれ収容すべく複数配設されるとともに、それぞれの収容タンクTa、Tb内のプロペラ状部材1、2に単一の駆動手段としてのモータ3が連結され、当該モータ3にてそれぞれのプロペラ状部材1、2が回転駆動可能とされたので、複数のプロペラ状部材1、2の駆動手段をモータ3にて共用させることができ、製造コスト及びメンテナンスのためのコストをより低減させることができる。
【0028】
また更に、複数の収容タンクTa、Tbのそれぞれの吐出口A、BからホースH1、H2を延設させ、当該ホースH1、H2の先端側に(逆止弁7及び混合手段8を介して)塗料を所望部位に向かって噴出させ得るスプレーガン6(噴出手段)を接続させるとともに、当該複数の収容タンクTa、Tb内の互いに異なる種類の塗料を混合させつつ当該スプレーガン6にて噴出可能とされたので、より良好に複数の塗料を混合させつつ被塗布物に対する塗料の塗布を行わせることができる。
【0029】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば単一の収容タンクを有したもの、或いは3つ以上の収容タンク(それぞれが互いに異なる種類の塗料を収容させた収容タンク)を有したものとしてもよい。また、本実施形態においては、噴出手段としてスプレーガン6が用いられているが、収容タンク内から圧送された塗料を所望部位に向かって噴出させ得るものであれば他の形態のものであってもよい。なお、本実施形態に係るモータ3に代えてプロペラ状部材1、2を回転駆動させ得る他の駆動手段としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
圧送手段は、複数の羽根が形成されたプロペラ状部材を有し、当該プロペラ状部材の回転により、吐出口から塗料を圧送しつつ収容タンク内で塗料を撹拌可能とされた塗料の供給装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1、2 プロペラ状部材
3 モータ(駆動手段)
4、5 加温手段
6 スプレーガン(噴出手段)
Ta、Tb 収容タンク
A、B 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の塗料を収容するとともに、当該塗料を外部に吐出可能な吐出口が形成された収容タンクと、
該収容タンク内に配設され、当該収容タンク内に収容された塗料を前記吐出口から圧送させる圧送手段と、
を具備した塗料の供給装置において、
前記圧送手段は、複数の羽根が形成されたプロペラ状部材を有し、当該プロペラ状部材の回転により、前記吐出口から塗料を圧送しつつ前記収容タンク内で塗料を撹拌可能とされたことを特徴とする塗料の供給装置。
【請求項2】
前記収容タンクは、前記吐出口に向かって漏斗状に形成されて成るとともに、当該吐出口近傍に前記プロペラ状部材が配設されたことを特徴とする請求項1記載の塗料の供給装置。
【請求項3】
前記収容タンクは、互いに異なる種類の塗料をそれぞれ収容すべく複数配設されるとともに、それぞれの収容タンク内のプロペラ状部材に単一の駆動手段が連結され、当該駆動手段にてそれぞれのプロペラ状部材が回転駆動可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の塗料の供給装置。
【請求項4】
前記複数の収容タンクのそれぞれの吐出口からホースを延設させ、当該ホースの先端側に塗料を所望部位に向かって噴出させ得る噴出手段を接続させるとともに、当該複数の収容タンク内の互いに異なる種類の塗料を混合させつつ当該噴出手段にて噴出可能とされたことを特徴とする請求項3記載の塗料の供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−78899(P2013−78899A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220312(P2011−220312)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(300082966)
【Fターム(参考)】