説明

塗料組成物及び塗膜形成方法

水酸基価が80〜200mgKOH/g、重量平均分子量が2500〜40000である水酸基含有樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及びジオール成分として、炭素数が2〜10のジオールをカルボニル化剤と反応させて得られる50℃における粘度が10000mPa・s以下である数平均分子量400〜2500のポリカーボネートジオール化合物(C)を含有する塗料組成物。耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性及び仕上り性のいずれにも優れる硬化塗膜を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性及び仕上り性に優れる塗膜を与える塗料組成物およびこの組成物を用いる塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体等の被塗物に塗装される塗料には、耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性、仕上り性等の塗膜性能に優れることが要求されている。
【0003】
従来、上記被塗物用の塗料として、メラミン架橋系塗料が汎用されている。メラミン架橋系塗料は、水酸基含有樹脂及び架橋剤であるメラミン樹脂を含有する塗料であり、加熱硬化時の架橋密度が高く、耐擦り傷性、仕上り性等の塗膜性能に優れている。しかし、この塗料には、メラミン架橋結合が酸性雨により加水分解され易く、塗膜の耐酸性が劣るという問題がある。
【0004】
特開平6−220397号号公報は、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有オリゴエステル及びイソシアネートプレポリマーからなる二液型ウレタン架橋系塗料組成物を開示している。この塗料は、ウレタン架橋結合が加水分解され難いため塗膜の耐酸性に優れる。しかし、塗膜の耐擦り傷性は不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性、仕上り性のいずれにも優れる硬化塗膜を形成することができる塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、特定の水酸基価及び平均分子量を有する水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物、並びにジオール成分として、炭素数が2〜10のジオールをカルボニル化剤と反応させて得られる特定範囲の粘度及び数平均分子量を有するポリカーボネートジオール化合物を含有する塗料組成物により上記の課題を解決することができることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、水酸基価が80〜200mgKOH/g、重量平均分子量が2500〜40000である水酸基含有樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及びジオール成分として、炭素数が2〜10のジオールをカルボニル化剤と反応させて得られる50℃における粘度が10000mPa・s以下である数平均分子量400〜2500のポリカーボネートジオール化合物(C)を含有する塗料組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、被塗物に順次、少なくとも1層の着色ベースコート塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として上記記載の塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
上記した特定の構成を有する本発明の塗料組成物によれば、前記ポリカーボネートジオール化合物が水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物との相溶性が良好であることから、仕上り性の良好な塗膜を得ることができる。また、このポリカーボネートジオール化合物により機械的強度等の塗膜物性を向上させることができ、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物との反応によるウレタン架橋結合及びカーボネート結合が酸による耐加水分解性に優れることから、耐擦り傷性、耐酸性及び耐汚染性のいずれにも優れた硬化塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の塗料組成物(以下、「本塗料」ということがある)及び複層塗膜形成方法の好ましい態様について説明するが、本発明はこれらの態様のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0011】
本発明の塗料組成物は、特定の水酸基価及び平均分子量を有する水酸基含有樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)、並びにジオール成分として、炭素数が2〜10のジオールをカルボニル化剤と反応させて得られる特定範囲の粘度及び数平均分子量を有するポリカーボネートジオール化合物(C)を含有する塗料組成物である。
【0012】
水酸基含有樹脂(A)
本発明の塗料組成物に用いられる水酸基含有樹脂(A)は、水酸基価が80〜200mgKOH/g、重量平均分子量が2500〜40000の水酸基含有樹脂である。
【0013】
水酸基含有樹脂(A)は、水酸基価が80〜200mgKOH/g、重量平均分子量が2500〜40000の範囲内であれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、好ましいものとして水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0014】
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有不飽和単量体(M−1)及びその他の共重合可能な不飽和単量体(M−2)を常法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0015】
水酸基含有不飽和単量体(M−1)は、1分子中に水酸基と不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物であり、この水酸基は主として架橋剤と反応する官能基として作用するものである。この単量体としては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。さらに、この単量体として、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンなどのラクトン類との開環重合付加物等を挙げることもできる。具体的には、例えば、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(以上、いずれもダイセル化学(株)製、商品名)等を挙げることができる。
【0016】
上記のうち、炭素原子数4以上の水酸基含有炭化水素基を有する水酸基含有不飽和単量体(1a)を、塗膜の耐擦り傷性を向上させる観点から好適に使用することができる。単量体(1a)を構成成分とすることにより、得られる塗膜の高架橋密度化を図ることができることから、塗膜の耐擦り傷性向上の効果を得ることができる。
【0017】
炭素原子数4以上の水酸基含有炭化水素基を有する水酸基含有不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数4〜10の2価アルコールとのモノエステル化物、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物などを挙げることができる。
【0018】
アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数4〜10の2価アルコールとのモノエステル化物の好ましい例としては、上記したもののうちで、特に4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0019】
アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物の好ましい例としては、上記したもののうちで、特に「プラクセルFA−2」及び「プラクセルFM−3」を挙げることができる。
【0020】
また、塗膜の耐酸性を低下させることなく耐擦り傷性を向上させる観点から、シクロヘキシル環及び水酸基を併有する不飽和単量体を好適に使用することもでき、具体的にはCHDMMA(日本化成社製、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート)等を挙げることができる。
【0021】
シクロヘキシル環及び水酸基を併有する不飽和単量体としては、例えば、分子両末端にヒドロキシシクロヘキシル基又はメチロールシクロヘキシル基を有するポリエステルオリゴマーと、ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートの(等モル)反応物とを反応させて得られるマクロモノマー等を使用することもできる。上記ポリエステルオリゴマーとしては、例えば、フレキソレッズ148、フレキソレッズ188(いずれも商品名、米国、キング・インダストリイズ社製)等を挙げることができる。
【0022】
また、上記シクロヘキシル環及び水酸基を併有する不飽和単量体を共重合成分とすることにより得られる、シクロヘキシル環及び水酸基を併有するアクリル樹脂は、例えば、水酸基を有するアクリル樹脂と、シクロヘキシル環を有する酸無水物(例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸)を付加反応させ、さらにこの付加反応により生成したカルボン酸に、エポキシ基及び水酸基を併有する化合物(例えば、グリシドール等)を酸・エポキシ反応で付加反応させて末端水酸基とする方法等によっても得ることができる。
【0023】
水酸基含有不飽和単量体(M−1)の配合割合は、単量体混合物全量に基づいて20〜50質量%、特に、25〜45質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0024】
水酸基含有不飽和単量体(M−1)の配合割合が20質量%未満であると、硬化塗膜の架橋が不十分となって、所定の耐擦り傷性が得られにくくなる場合がある。一方、50質量%を超えると、その他の共重合可能な不飽和単量体(M−2)との相溶性や共重合反応性が低下し、さらに得られる水酸基含有アクリル樹脂の他成分(ポリイソシアネート化合物(B)及びポリカーボネートジオール化合物(C))との相溶性が低下することにより、塗膜の仕上り外観が低下する場合がある。
【0025】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0026】
その他の共重合可能な不飽和単量体(M−2)は、上記水酸基含有不飽和単量体(M−1)以外の、1分子中に1個の不飽和結合を有する化合物であり、その具体例を以下の(1)〜(8)に列挙する。
【0027】
(1)酸基含有不飽和単量体:1分子中に1個以上の酸基と1個の不飽和結合とを有する化合物で、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などの如きカルボキシル基含有不飽和単量体;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどの如きスルホン酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクロイルオキシエチルフェニルリン酸などの酸性リン酸エステル系不飽和単量体など。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記酸基含有不飽和単量体は(A)成分が架橋剤と架橋反応する時の内部触媒としても作用することができるものであり、その使用量は水酸基含有アクリル樹脂を構成するモノマー混合物全量に基づいて、0〜5質量%、特に0.1〜3質量%の範囲内であることが好ましい。
【0029】
(2)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート,tert−ブチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシルメタアクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等。
【0030】
上記のうち、炭素原子数10〜20の有橋脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体及び/又は炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体(2a)を塗膜の耐汚染性を向上させる観点から好適に使用することができる。単量体(2a)を構成成分とすることにより、得られる樹脂のTgが上昇し、極性が低下することから、表面の平滑化による仕上り性の向上及び耐水性、耐汚染性の向上の効果を得ることができる。
【0031】
炭素原子数10〜20の有橋脂環式炭化水素基の代表例としては、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。
【0032】
炭素原子数10〜20の有橋脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体の具体例としては、上記したもののうち、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシルメタアクリレート等を挙げることができる。
【0033】
炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体の具体例としては、上記したもののうち、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0034】
単量体(2a)を構成成分とする場合、その配合割合は、単量体混合物全量に基づいて3〜50質量%、特に10〜40質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0035】
また、上記のうち、分枝構造を有する炭素原子数8以上の炭化水素基を有する不飽和単量体(2b)を塗膜の耐擦り傷性を向上させる観点から好適に使用することができる。単量体(2b)を構成成分とすることにより、得られる樹脂のTg及び極性が低下することから、柔軟性付与による塗膜の耐擦り傷性の向上及び表面の平滑化による仕上り性の向上効果を得ることができる。また、分枝構造を有していることから、直鎖状の炭素原子数8以上の炭化水素基を有する不飽和単量体を構成成分とする場合にくらべて塗膜のTgの低下を抑えることができるため、耐酸性の向上の観点からも有利である。
【0036】
分枝構造を有する炭素原子数8以上の炭化水素基を有する不飽和単量体の具体例としては、上記したもののうち、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名)を挙げることができる。
【0037】
単量体(2b)を構成成分とする場合、その配合割合は、単量体混合物全量に基づいて3〜50質量%、特に10〜40質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0038】
(3)アルコキシシラン基含有不飽和単量体:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等。
【0039】
これらのうちでは、好ましいアルコキシシラン基含有不飽和単量体として、ビニルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0040】
アルコキシシラン基含有不飽和単量体を構成成分とすることにより、水酸基とイソシアネート基との架橋結合に加え、アルコキシシラン基同士の縮合反応及びアルコキシシラン基と水酸基の反応による架橋結合を生成することができる。それにより、得られる塗膜の架橋密度が向上することから、耐酸性、耐汚染性の向上の効果を得ることができる。
【0041】
アルコキシシラン基含有不飽和単量体を構成成分とする場合、その配合割合は、単量体混合物全量に基づいて3〜50質量%、特に5〜35質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0042】
(4)芳香族系不飽和単量体:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
【0043】
芳香族系不飽和単量体を構成成分とすることにより、得られる樹脂のTgが上昇し、また高屈折率で疎水性の塗膜を得ることができることから、塗膜の光沢向上による仕上り性の向上、耐水性及び耐酸性の向上という効果を得ることができる。
【0044】
芳香族系不飽和単量体を構成成分とする場合、その配合割合は、単量体混合物全量に基づいて3〜50質量%、特に5〜40質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0045】
(5)グリシジル基含有不飽和単量体:1分子中にグリシジル基と不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物で、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等。
【0046】
(6)窒素含有不飽和単量体:例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等。
【0047】
(7)その他のビニル化合物:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステルであるベオバ9、ベオバ10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等。
【0048】
(8)不飽和結合含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0049】
これらの不飽和単量体(M−2)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
上記単量体(M−1)及び(M−2)からなる単量体混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂を得ることができる。
【0051】
耐擦り傷性、耐酸性及び耐汚染性の塗膜性能と塗膜の仕上り性のいずれにも優れた塗料組成物とするための水酸基含有アクリル樹脂として、以下の組成の単量体(M−1)及び(M−2)からなる単量体混合物を共重合して得られる水酸基含有アクリル樹脂を特に好ましいものとして挙げることができる。
【0052】
1.(イ)芳香族系不飽和単量体及び/又は炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体3〜40質量%、(ロ)炭素原子数10〜20の有橋脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体3〜40質量%、(ハ)水酸基含有不飽和単量体20〜50質量%及び(ニ)共重合可能なその他の不飽和単量体0〜60質量%からなる単量体混合物を共重合してなり、かつ、上記(イ)及び(ロ)成分の合計質量が前記単量体混合物100質量部を基準として20〜70質量部である水酸基含有アクリル樹脂(α)。
【0053】
2.(イ)芳香族系不飽和単量体及び/又は炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体3〜40質量%、(ロ)分岐構造を有する炭素原子数8以上の炭化水素基を有する不飽和単量体3〜40質量%、(ハ)炭素原子数4以上の水酸基含有炭化水素基を有する水酸基含有不飽和単量体3〜50質量%及び(ニ)共重合可能なその他の不飽和単量体0〜77重量%からなる単量体混合物を共重合してなり、かつ、上記(イ)及び(ロ)成分の合計質量が前記単量体混合物100質量部を基準として20〜70質量部である水酸基含有アクリル樹脂(β)。
【0054】
上記単量体混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂を得るための共重合方法としては、特に限定されるものではなく、それ自体既知の共重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、重合開始剤の存在下で重合を行なう溶液重合法を好適に使用することができる。
【0055】
上記溶液重合法において使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スワゾール1000(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)などの芳香族系溶剤;酢酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネートなどを挙げることができる。
【0056】
これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、本塗料に使用される水酸基含有アクリル樹脂は高い水酸基価を有するため、樹脂の溶解性の点から高沸点のエステル系溶剤もしくはケトン系溶剤を使用することが好ましい。また、さらに高沸点の芳香族系溶剤を好適に組み合わせて使用することもできる。
【0057】
水酸基含有アクリル樹脂の共重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのそれ自体既知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0058】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は80〜200mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは100〜170mgKOH/gの範囲内である。水酸基価が80mgKOH/g未満であると、架橋密度が低いために耐擦り傷性が不十分な場合がある。また、200mgKOH/gを超えると塗膜の耐水性が低下する場合がある。
【0059】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は2500〜40000の範囲内であり、好ましくは5000〜30000の範囲内である。重量平均分子量が2500未満であると耐酸性等の塗膜性能が低下する場合があり、また40000を超えると塗膜の平滑性が低下するため、仕上り性が低下する場合がある。
【0060】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフには、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0061】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は−40℃〜85℃、特に−30℃〜80℃の範囲内であるのが好ましい。ガラス転移温度が−40℃未満であると塗膜硬度が不十分な場合があり、また85℃を越えると塗膜の塗面平滑性が低下する場合がある。
【0062】
水酸基含有樹脂(A)として用いることのできる水酸基含有ポリエステル樹脂は、常法により、例えば、多塩基酸と多価アルコ−ルとのエステル化反応によって製造することができる。該多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びそれらの無水物などが挙げられ、また、該多価アルコ−ルは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、およびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール成分、並びに2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0063】
また、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステ)などのモノエポキシ化合物などを酸と反応させて、これらの化合物をポリエステル樹脂に導入しても良い。
【0064】
ポリエステル樹脂にカルボキシル基を導入する場合、例えば、水酸基含有ポリエステルに無水カルボン酸を付加し、ハーフエステル化することで導入することもできる。
【0065】
水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は80〜200mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは100〜170mgKOH/gの範囲内である。水酸基価が80mgKOH/g未満であると、耐擦り傷性が不十分な場合があり、また200mgKOH/gを超えると塗膜の耐水性が低下する場合がある。
【0066】
水酸基含有ポリエステル樹脂の重量平均分子量は2500〜40000の範囲内であり、好ましくは5000〜30000の範囲内である。重量平均分子量が2500未満であると耐酸性等の塗膜性能が低下する場合があり、また40000を超えると塗膜の塗面平滑性が低下する場合がある。
【0067】
水酸基含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度は−40℃〜85℃、特に−30℃〜80℃の範囲内であるのが好ましい。ガラス転移温度が−40℃未満であると塗膜硬度が不十分な場合があり、また85℃を超えると塗膜の塗面平滑性が低下する場合がある。
【0068】
また、水酸基含有樹脂(A)には、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂及びウレタン変性ポリエステル樹脂も包含される。
【0069】
水酸基含有ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる水酸基含有ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0070】
ポリオールとしては、例えば、低分子量のものとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの2価アルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価アルコールなどを挙げることができる。高分子量のものとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオールなどを挙げることができる。 ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、前記の2価アルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸などの2塩基酸との重縮合物、ポリカプロラクトンなどのラクトン系開環重合体ポリオール、ポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。また、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基含有ポリオールを使用することもできる。
【0071】
上記のポリオールと反応させるポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;などを挙げることができる。
【0072】
水酸基含有ポリウレタン樹脂の水酸基価は80〜200mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは100〜170mgKOH/gの範囲内である。水酸基価が80mgKOH/g未満であると、耐擦り傷性が不十分な場合があり、また200mgKOH/gを超えると塗膜の耐水性が低下する場合がある。
【0073】
水酸基含有ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は2500〜40000の範囲内であり、好ましくは5000〜30000の範囲内である。重量平均分子量が2500未満であると耐酸性等の塗膜性能が低下する場合があり、また40000を超えると塗膜の塗面平滑性が低下する場合がある。
【0074】
水酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は−40℃〜85℃、特に−30℃〜80℃の範囲内であるのが好ましい。ガラス転移温度が−40℃未満であると塗膜硬度が不十分な場合があり、また85℃を超えると塗膜の塗面平滑性が低下する場合がある。
【0075】
水酸基含有樹脂(A)はそれぞれ単独で又は2種以上を併用して使用することができ、水酸基含有樹脂(A)としては、水酸基含有アクリル樹脂又は水酸基含有ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。
【0076】
ポリイソシアネート化合物(B)
本発明の塗料組成物に用いられるポリイソシアネート化合物(B)は、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、従来からポリウレタンの製造に使用されているものを使用することができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0077】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0078】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0079】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0080】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0081】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDIなどを挙げることができる。
【0082】
これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。また、これらのポリイソシアネート化合物のうち、耐擦り傷性、耐候性等の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びそれらの誘導体を好適に使用することができる。
【0083】
また、ポリイソシアネート化合物として、上記した1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0084】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものである。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、水酸基と容易に反応することができる。かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
【0085】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチルピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0086】
ポリイソシアネート化合物(B)は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。
【0087】
ポリカーボネートジオール化合物(C)
本発明の塗料組成物に用いられるポリカーボネートジオール化合物(C)は、ジオール成分として、炭素数が2〜10のジオールをカルボニル化剤と反応させて得られる50℃における粘度が10000mPa・s以下である数平均分子量400〜2500のポリカーボネートジオール化合物である。
【0088】
ポリカーボネートジオール化合物は、一般に、ジオールをカルボニル化剤の共存下に重縮合させることにより得られる。
【0089】
ポリカーボネートジオール化合物に用いられるジオールは、炭素数が2〜10、好ましくは4〜8の2価のアルコールである。具体的には、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族系;1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式系;p−キシレンジオール、p−テトラクロロキシレンジオール等の芳香族系;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジオールを挙げることができる。これらのジオールは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
本発明において、ポリカーボネートジオール化合物(C)としては、塗膜の耐久性及び硬度の観点から、ジオール成分として1,6−ヘキサンジオールを使用したものが好ましい。
【0091】
また、特に好ましいものとしては、1,6−ヘキサンジオールを必須ジオール成分として、ジオール成分を2種使用したものがあり、具体的には1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールの2種をジオール成分として反応させて得られるポリカーボネートジオール化合物を挙げることができる。
【0092】
カルボニル化剤としては、例えば、通常用いられるアルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート及びホスゲンを使用することができる。これらのうち好ましいものとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びジフェニルカーボネートを挙げることができる。
【0093】
ポリカーボネートジオール化合物は、エステル交換触媒の存在下又は不存在下に、上記したカルボニル化剤とジオール化合物をエステル交換させることによって合成することができる。
【0094】
本発明に用いられるポリカーボネートジオール化合物(C)は、50℃における粘度が10000mPa・s以下である数平均分子量が400〜2500のポリカーボネートジオール化合物である。ここで、50℃における粘度が10000mPa・s以下であることが重要であって、数平均分子量が400〜2500の範囲内であっても50℃における粘度が10000mPa・sを超えると取り扱いが困難となり、また水酸基含有樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)との相溶性が不良となるため、塗膜の光沢低下又は白濁等が生じることにより塗膜の仕上り性が不良となるので本塗料のポリカーボネートジオール化合物としては好ましくない。
【0095】
ポリカーボネートジオール化合物(C)の粘度は50℃において、10000mPa・s以下であり、好ましくは8000mPa・s以下、より好ましくは5000mPa・s以下である。なお、粘度は50℃でB型粘度計を用いて6rpmの条件で測定した値である。
【0096】
ポリカーボネートジオール化合物(C)の数平均分子量は、400〜2500であり、好ましくは500〜2000、より好ましくは800〜1500の範囲内である。
【0097】
ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフには、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0098】
数平均分子量が400未満であると塗膜の耐擦り傷性、硬度、耐候性等が低下する場合がある。また、数平均分子量が2500を超えると水酸基含有樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)との相溶性が低下し、仕上り性が低下する場合がある。
【0099】
ポリカーボネートジオール化合物(C)の水酸基価は好ましくは45〜280mgKOH/g、さらに好ましくは55〜225mgKOH/gである。水酸基価が45未満であると、塗膜の耐擦り傷性、硬度、耐候性等が低下する場合があり、280を超えると塗膜の仕上り性、耐擦り傷性、耐候性等が低下する場合がある。
【0100】
ポリカーボネートジオール化合物(C)としては、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ社製のT−5650J(ジオール成分:1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオール)、T−4671、T−4672(いずれもジオール成分:1,6−ヘキサンジオール及び1,4−ブタンジオール);宇部興産社製のUM−CARB90(ジオール成分:1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール)などを挙げることができる。
【0101】
本発明の塗料組成物において、塗膜の硬化性や耐擦り傷性等の観点から、水酸基含有樹脂(A)及びポリカーボネートジオール化合物(C)の水酸基とポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は好ましくは0.5〜2.0、さらに好ましくは0.8〜1.5の範囲内である。
【0102】
本発明の塗料組成物中の水酸基含有樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びポリカーボネートジオール化合物(C)の量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分合計100質量部を基準として、不揮発分として、水酸基含有樹脂(A)が好ましくは30〜75質量%、より好ましくは40〜65質量%、ポリイソシアネート化合物(B)が好ましくは20〜65質量%、より好ましくは30〜55質量%、ポリカーボネートジオール化合物(C)が好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは10〜20質量%の範囲内であるのがよい。
【0103】
その他の成分
本塗料は、前記水酸基含有樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びポリカーボネートジオール化合物(C)を必須成分とする塗料組成物であって、通常、有機溶剤を含有し、さらに必要に応じて、その他の硬化触媒、顔料、顔料分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤などの、通常塗料の分野で用いられる塗料用添加剤を含有することができる。
【0104】
上記硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機金属触媒、第三級アミンなどを挙げることができる。
【0105】
硬化触媒として上記したこれらの化合物はそれぞれ単独で又は2種以上の混合物として用いてもよい。硬化触媒の量はその種類により異なるが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分合計100質量部に対し、通常、0〜5質量部、好ましくは0.1〜4質量部程度である。
【0106】
顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの着色顔料(D);タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイトなどの体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末などのメタリック顔料などを挙げることができる。
【0107】
上記したこれらの顔料はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。顔料の含有量はその種類により異なるが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分合計100質量部に対し、通常、0〜200質量部、好ましくは1〜100質量部程度である。
【0108】
また、着色顔料の含有量はその種類により異なるが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分合計100質量部に対し、通常、0〜150質量部、好ましくは1〜100質量部程度である。
【0109】
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0110】
紫外線吸収剤の塗料組成物中の含有量は、通常、樹脂固形分総合計量100質量部に対して、0〜10質量部、特に0.2〜5質量部、とりわけ0.3〜2質量部の範囲内であるのが耐侯性、耐黄変性の面から好ましい。
【0111】
光安定剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0112】
光安定剤の塗料組成物中の含有量は、通常、樹脂固形分総合計量100質量部に対して、0〜10質量部、特に0.2〜5質量部、とりわけ0.3〜2質量部の範囲内であるのが耐侯性、耐黄変性の面から好ましい。
【0113】
本発明の塗料組成物は、(B)成分であるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基がブロック化されていないものである場合には、貯蔵安定性から、水酸基含有樹脂(A)及びポリカーボネートジオール化合物(C)と、ポリイソシアネート化合物(B)とが分離した2液型塗料であり、使用直前に両者を混合して使用することが好適である。
【0114】
塗料組成物の塗装方法
本塗料を適用する被塗物としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体であるのが好ましい。また、これらの車体を形成する冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等であってもよい。
【0115】
また、被塗物としては、上記車体や金属基材の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物としては、上記車体、金属基材等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。
【0116】
本塗料の塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの塗装方法が挙げられ、これらの方法によりウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法では、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうちでは、エアスプレー塗装が特に好ましい。本塗料の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0117】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行う場合には、本塗料の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップ#No.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0118】
被塗物に本塗料を塗装してなるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行われ、加熱は公知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用することができる。加熱温度は、60〜180℃、好ましくは90〜150℃の範囲内にあるのがよい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、15〜30分間の範囲内であるのが好適である。
【0119】
本塗料は、耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性及び仕上り性のいずれにも優れる硬化塗膜を得ることができることから、上塗りトップクリヤコート塗料として好適に用いることができる。本塗料は、自動車用塗料として特に好適に用いることができる。
【0120】
複層塗膜形成方法
本塗料が上塗りトップクリヤコート塗料として塗装される複層塗膜形成方法としては、被塗物に順次、少なくとも1層の着色ベースコート塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として本発明の塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法を挙げることができる。
【0121】
具体的には、例えば、電着塗装及び/又は中塗り塗装が施された被塗物上に、溶剤型又は水性のベースコート塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、必要に応じてベースコート塗料中の溶媒の揮散を促進させるために、例えば、40〜90℃で3〜30分間程度のプレヒートを行い、この未硬化のベースコート塗膜上にクリヤコート塗料として本塗料の塗装を行った後、ベースコートとクリヤコートを一緒に硬化させる、2コート1ベーク方式の複層塗膜形成方法を挙げることができる。
【0122】
また、本塗料を3コート2ベーク方式又は3コート1ベーク方式の上塗り塗装におけるトップクリヤコート塗料としても好適に使用することができる。
【0123】
上記で用いられるベースコート塗料としては、従来から公知の通常の熱硬化型ベースコート塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂系などの基体樹脂にアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等の硬化剤を基体樹脂が含有する反応性官能基と適宜組み合わせてなる塗料を使用することができる。
【0124】
また、ベースコート塗料としては、環境問題、省資源等の観点から、有機溶剤の使用量の少ないハイソリッド型のものが望ましく、更に水性塗料又は粉体塗料を用いることもできる。
【0125】
複層塗膜形成方法において、クリヤコートを2層以上塗装する場合、本塗料以外に、クリヤコート塗料として、従来から公知の通常の熱硬化型クリヤコート塗料を使用することもできる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとし、また塗膜の膜厚はいずれも硬化塗膜に基づくものである。
【0127】
水酸基含有樹脂の製造例
製造例1〜16
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにエトキシエチルプロピオネート31部を仕込み、窒素ガス通気下で155℃に昇温した。155℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記の表1に示すモノマーと重合開始剤からなる組成配合のモノマー混合物を4時間かけて滴下した。次いで、155℃で窒素ガスを通気しながら2時間熟成させた後、100℃まで冷却し、酢酸ブチル32.5部(製造例16のみ7.5部)で希釈することにより、固形分60%の塗料用樹脂を得た。得られた水酸基含有樹脂の質量固形分濃度(%)及び樹脂性状値を併せて表1に示す。
【0128】
表1におけるガラス転移温度(℃)は、下記式によって算出したものである。
【0129】
1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・・・
Tg(℃)=Tg(K)−273
各式中、W1、W2、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの質量分率、T1、T2、・・はそれぞれの単量体のホモポリマ−のTg(K)を表わす。なお、T1、T2、・・は、Polymer Handbook(Second Edition,J.Brandup・E.H.Immergut編)による値である。
【0130】
なお、製造例12の水酸基含有樹脂のガラス転移温度は、セイコー電子工業製DSC220U(示差走査型熱量計)により測定した値である。測定は、試料50mgを専用のサンプル皿に所定量秤取し、130℃で3時間乾燥させた後、不活性気体中で−50℃から10℃/分のスピードで150℃まで昇温し、得られた熱量変化カーブの変曲点の温度を読み取ることにより行った。
また、表中のマクロモノマー(1)溶液は下記の製造方法により得たものである。
【0131】
マクロモノマー(1)溶液の製造
撹拌装置、温度計、冷却管、酸素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、酢酸ブチル58.7部とイソホロンジイソシアネート32部をフラスコに仕込み、80℃に加熱保持し、攪拌下に酸素を吹き込みながら、プラクセルFM3X(ダイセル化学工業社製、商品名、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(ヒドロキシエチルメタクリレート1モルに対し、ε−カプロラクトンを3モル開環重合付加反応させた反応生成物)の溶液、固形分80%)85部と酢酸ブチル24.3部とを徐々に添加した。その後、3時間反応させることにより、付加生成物(A)溶液を得た。
【0132】
次に、別の撹拌装置、温度計、冷却管、酸素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、酢酸ブチル58.5部とフレキソレッズ188(商品名、米国、キング・インダストリイズ社製、両末端にメチロールシクロヘキシル基を有するポリエステルオリゴマー)58.5部を仕込み、70℃に加熱保持し、攪拌下に酸素を吹き込みながら、上記付加生成物(A)溶液83部を滴下した。その後、5時間反応させることにより、固形分50%のマクロモノマー(1)溶液を得た。
【0133】
【表1】

【0134】
塗料組成物の製造
実施例1〜18及び比較例1〜9
上記製造例1〜16で得られた水酸基含有樹脂及び下記の表2に記載の原材料を用い、表2に示す配合にて、ディスパーを用いて攪拌して混合し、塗料化を行い、各塗料組成物を得た。なお、表2に示す塗料組成物の配合は各成分の固形分質量比である。
【0135】
表2における(*1)〜(*12)は、それぞれ下記の意味を有し、粘度は50℃でB型粘度計を用いて6rpmの条件で測定した値である。
【0136】
(*1)N−3300:住化バイエルウレタン社製ヘキサメチレンジイソシアネート、固形分100%、NCO含有率21.8%。
【0137】
(*2)タケネートD160N:武田薬品工業社製ヘキサメチレンジイソイシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、固形分75%、NCO含量率12.6%。
【0138】
(*3)T−5650J:旭化成ケミカルズ社製1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、数平均分子量800、粘度860mPa・s、水酸基価140mgKOH/g、固形分100%。
【0139】
(*4)T−4671:旭化成ケミカルズ社製1,6−ヘキサンジオール及び1,4−ブタンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、数平均分子量1000、粘度2400mPa・s、水酸基価112mgKOH/g、固形分100%。
【0140】
(*5)PC−M:ジオール成分として1,6−ヘキサンジオール及び3−メチルペンタンジオール、カルボニル化剤としてジフェニルカーボネートを用いて合成したポリカーボネートジオール、数平均分子量2000、粘度7000mPa・s、水酸基価56mgKOH/g、固形分100%。
【0141】
(*6)UM−CARB90:宇部興産社製1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、数平均分子量900、粘度7000mPa・s、水酸基価124mgKOH/g、固形分100%。
【0142】
(*7)UV1164:チバガイギー社製紫外線吸収剤。
(*8)HALS292:チバガイギー社製光安定剤。
【0143】
(*9)T−4672:旭化成社製1,6−ヘキサンジオール及び1,4−ブタンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、数平均分子量2000、粘度20000mPa・s、水酸基価112mgKOH/g、固形分100%。
【0144】
(*10)PC−L:ジオール成分として1,6−ヘキサンジオール及び3−メチルペンタンジオール、カルボニル化剤としてジフェニルカーボネートを用いて合成したポリカーボネートジオール、数平均分子量380、粘度120mPa・s、水酸基価295mgKOH/g、固形分100%。
【0145】
(*11)PC−H:ジオール成分として1,6−ヘキサンジオール及び3−メチルペンタンジオール、カルボニル化剤としてジフェニルカーボネートを用いて合成したポリカーボネートジオール、数平均分子量2800、粘度15000mPa・s、水酸基価40mgKOH/g、固形分100%。
【0146】
(*12)PC−012:ジオール成分として1,6−ヘキサンジオール及び1,2−ドデカンジオール、カルボニル化剤としてジフェニルカーボネートを用いて合成したポリカーボネートジオール、数平均分子量1000、粘度20000mPa・s、水酸基価112mgKOH/g、固形分100%。
【0147】
上記実施例1〜18及び比較例1〜9で得られた各塗料組成物は、酢酸ブチルを添加し、フォードカップ#No.4を用いて20℃で25秒の粘度に調整した。
【0148】
試験板の作成
実施例1〜18及び比較例1〜9で得られた上記各塗料組成物の粘度調整したものを使用して、それぞれについて以下の様にして試験板を作製した。
【0149】
リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させ、その上にTP−65−2(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料)を膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた。該塗膜上に水性メタリックベースコートWBC713T#202(関西ペイント社製、アクリル・メラミン樹脂系自動車用上塗ベースコート塗料、黒塗色)を膜厚15μmとなるように塗装し、室温で5分間放置してから、80℃で10分間プレヒートを行った後、未硬化の該塗膜上に上記実施例及び比較例にて製造・粘度調整した各塗料組成物を膜厚35μmとなるように塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱してこの両塗膜を一緒に硬化させることにより試験板を得た。得られたそれぞれの試験板を常温で7日間放置してから下記の塗膜性能試験を行った。
【0150】
性能試験方法
耐擦り傷性:ルーフにニチバン社製耐水テープにて試験板を貼りつけた自動車を、20℃の条件下に、洗車機で15回洗車を行った後の試験板の20度鏡面反射率(20°光沢値)を測定し、試験前の20°光沢値に対する光沢保持率(%)により評価した。該光沢保持率が高いほど耐擦り傷性が良好であることを表わす。洗車機としては、ヤスイ産業社製「PO20 FWRC」を用いた。
【0151】
耐酸性:40%硫酸を各試験板の塗膜上に0.4cc滴下し、60℃に加熱したホットプレート上で15分間加熱した後、試験板を水洗した。硫酸滴下箇所のエッチング深さ(μm)を表面粗度計(東京精密社製、表面粗さ形状測定機「サーフコム570A」)を用いて、カットオフ0.8mm(走査速度0.3mm/sec、倍率5000倍)の条件で測定することにより耐酸性の評価を行った。エッチング深さが小さいほど耐酸性が良好であることを表わす。
【0152】
仕上り性(光沢):試験板の20度鏡面反射率(20°光沢値)を測定して評価した。
【0153】
耐汚染性:各試験塗板をサンシャインウエザオメーター(スガ試験機社製、促進耐侯性試験機)中で600時間試験後、各試験塗板に、泥土、カーボンブラック、鉱油及びクレーの混合物からなる汚染物質をネルに付着させて各試験塗板の塗面に軽くこすりつけた。これを20℃で75%RHの恒温恒湿室中に24時間放置後、塗面を流水で洗浄し、塗膜の汚染度を塗板の明度差(ΔL)により下記の基準により評価した。ΔL値が小さいほど耐汚染性は良好である。ΔLは以下の式で求めた。
ΔL=(耐汚染性試験前のL値)−(耐汚染性試験後のL値)
L値はCR−200(ミノルタカメラ社製の色差計)を用いて測定した。
【0154】
◎:ΔL<0.2
○:0.2≦ΔL<1
△:1≦ΔL<2
×:2≦ΔL
【0155】
なお、汚染性の試験においては、リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させ、その上にTP−65−2(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料、白塗色)を膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた塗膜上に、上記実施例及び比較例にて製造・粘度調整した各塗料組成物を膜厚35μmとなるように塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱して硬化させることにより得られた試験板を使用し、同様にそれぞれの試験板を常温で7日間放置してから耐汚染性の試験を行った。
上記性能試験結果を併せて表2に示す。
【0156】
【表2】

【0157】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性及び仕上がり性に優れる塗膜を与える塗料組成物を提供するので、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価が80〜200mgKOH/g、重量平均分子量が2500〜40000である水酸基含有樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及びジオール成分として、炭素数が2〜10のジオールをカルボニル化剤と反応させて得られる50℃における粘度が10000mPa・s以下である数平均分子量400〜2500のポリカーボネートジオール化合物(C)を含有する塗料組成物。
【請求項2】
ポリカーボネートジオール化合物(C)がジオール成分として1,6−ヘキサンジオールを使用したものである、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
水酸基含有樹脂(A)が水酸基含有アクリル樹脂である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
水酸基含有アクリル樹脂が、炭素原子数4以上の水酸基含有炭化水素基を有する水酸基含有不飽和単量体を含有する単量体混合物を共重合して得られる水酸基含有アクリル樹脂である、請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
水酸基含有アクリル樹脂が、炭素原子数10〜20の有橋脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体及び/又は炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基を有する不飽和単量体を含有する単量体混合物を共重合して得られる水酸基含有アクリル樹脂である、請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項6】
水酸基含有アクリル樹脂が、分枝構造を有する炭素原子数8以上の炭化水素基を有する不飽和単量体を含有する単量体混合物を共重合して得られる水酸基含有アクリル樹脂である、請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項7】
水酸基含有アクリル樹脂が、アルコキシシラン基含有不飽和単量体を含有する単量体混合物を共重合して得られる水酸基含有アクリル樹脂である、請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項8】
水酸基含有アクリル樹脂が、シクロヘキシル環及び水酸基を併有する不飽和単量体を含有する単量体混合物を共重合して得られる水酸基含有アクリル樹脂である、請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項9】
ポリイソシアネート化合物(B)が、脂肪族ジイソシアネート及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項10】
さらに着色顔料(D)を含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項11】
被塗物に順次、少なくとも1層の着色ベースコート塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として請求項1〜10のいずれかに記載した塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法。

【公表番号】特表2009−530425(P2009−530425A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518533(P2008−518533)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/JP2007/054144
【国際公開番号】WO2007/119305
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】