説明

塗料組成物

【課題】 環境のために規制されている揮発性有機化合物を実質的に含むことなく塗装作業性や仕上がり性が良好で、耐水性、付着性等に優れた塗膜を形成するのに適すると共にメタリック塗装の場合、メタリック顔料の配向性が乱されることなく良好な仕上り性の塗膜を形成することができる塗料組成物を提供する。
【解決手段】 ベース塗料(I)並びに希釈剤(II)を含んでなる塗料組成物であって、ベース塗料(I)が、セルロース誘導体(A)、アクリル樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)並びにエステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤(D)を含んでなり、セルロース誘導体(A)を成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分重量中に5〜75重量%含有し、希釈剤(II)が、脂肪族炭化水素系有機溶剤(E)を、希釈剤(II)中に5〜90重量%含有し、好ましくは該ベース塗料がメタリックベース塗料であることを特徴とする塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
環境に対する影響のために使用が抑制されつつあるトルエン、キシレン等の揮発性有機化合物を実質的に含むことなく、仕上がり性、乾燥性、硬度、付着性等に優れた塗膜を形成するのに適する塗料組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車補修用塗料の分野では、常温乾燥又は強制乾燥の条件で塗膜を乾燥させることから、アクリルラッカー、アクリルウレタン塗料が主に用いられている。
この分野においてラッカータイプの塗料が用いられる場合には、塗膜の乾燥性の点からポリエステル樹脂とセルロースアセテートブチレート(CABということがある)をブレンドしたもの、アクリル樹脂にポリエステル樹脂とCABをブレンドしたもの等をビヒクル主成分とした塗料が採用されてきたが、各成分の相溶性が不十分であるために仕上がり性に悪影響を及ぼしたり、またメタリック塗装において、塗装後の塗膜における顔料の配向状態が乱れる現象(フキムラということがある)、顔料を含む塗膜上にクリヤー塗料を塗り重ねたときに、顔料の配向状態が乱れる現象(モドリムラということがある)が生じて仕上がり性が低下するなどの不具合があった。
【0003】
こうした問題に対して本出願人は、特許文献1及び2においてCABのグラフト共重合体、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂を特定割合で使用してなる塗料組成物を提案した。該組成物によれば、これら各成分の相溶性が向上し、メタリック塗装においてもフキムラ、モドリムラが生じることなく、良好な仕上がり性を有する塗膜を形成し得るものであるが、塗料中及び塗料粘度を調整するための希釈シンナー中にトルエン、キシレン等の有機溶剤を配合するものであった。
【0004】
一般に塗料製造者によって調整された塗料は高粘度であるなどによりそのままでは塗装に供せられず、塗料製造者は希釈シンナーとともに販売業者に出荷する。塗装業者は販売業者からその両製品を購入して、目的に応じた粘度や塗装作業性に調整するために、塗料と希釈シンナーを配合して塗装に供する。
近年、揮発性有機化合物の環境に与える影響が問題となっており、従来塗料分野において通常に配合されてきたトルエン、キシレン等の有機溶剤は環境汚染物質として規制対象物質(例えば、環境汚染物質排出移動登録(POLLUTANT RELEASE AND TRANSFER REGISTER(以下、PRTRと略記することがある。))など)とされ、塗料及び希釈シンナーとも
にこれら有機溶剤を削減或いは実質的に含まないことが求められている。
【0005】
ところで、特許文献3には特定の(メタ)アクリル系共重合体、ポリイソシアネート化合物及び特定量の有機溶剤からなり、該有機溶剤が脂肪族系もしくは芳香族系炭化水素溶剤で特定の溶解性パラメータおよび特定の沸点を有するものであることを特徴とする自動車補修用塗料組成物が開示されている。この塗料組成物をメタリック塗装におけるクリヤー塗料として使用すると、モドリムラの発生を抑制することができ、良好な外観のメタリック仕上げが得られるものであるが、この組成物をベース塗料として使用した場合、形成塗膜の仕上がり性、乾燥性、付着性が十分とはいえず、また、トルエン、キシレン等の有機溶剤が塗料中に配合されているという問題が残っている。
【0006】
上記した問題に対する方策として、例えば従来のメタリック塗装に使用されるベースコートやクリヤー等の塗料組成物において、トルエン、キシレン等の有機溶剤を塗料又は希釈シンナーから排除し、エステル系有機溶剤等の塗料中の樹脂を溶解する有機溶剤に全部置き換えると、ベースコート塗装後にクリヤー塗料を塗装したときに発生するモドリムラ
現象だけでなく、ベースコートを塗装した段階でもフキムラ現象等が発生し、特にベースコートを塗り重ねる時にこれらの有機溶剤によって塗膜の再溶解が起こり、溶剤を置き換えたことによる仕上がり性の低下が著しいという問題がある。
【特許文献1】特開2000−178500号公報
【特許文献2】特開2002−129090号公報
【特許文献3】特開平6−256715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、規制されている揮発性有機化合物を実質的に含むことなく塗装作業性や仕上がり性が良好で、しかも耐水性、付着性等に優れた塗膜を形成するのに適する塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、特定の樹脂組成物及び有機溶剤を含むベース塗料に特定の有機溶剤を特定量含む希釈剤を含んでなる特定の塗料組成物が上記した問題点を解決することを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、ベース塗料(I)並びに希釈剤(II)を含んでなる塗料組成物であって、ベース塗料(I)が、セルロース誘導体(A)、アクリル樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)並びにエステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤(D)を含んでなり、セルロース誘導体(A)を成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分重量中に5〜75重量%含有し、希釈剤(II)が、脂肪族炭化水素系有機溶剤(E)を、希釈剤(II)中に5〜90重量%含有し、好ましくは該ベース塗料がメタリックベース塗料であることを特徴とする塗料組成物、及び該塗料組成物を用いる塗装方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物によれば、規制されている揮発性有機化合物を実質的に含まず、環境及び人体に対して配慮がされており、また、特定の樹脂及び有機溶剤を含有するベース塗料は、各成分の相溶性が良好であることから貯蔵安定性が良好であることができ、該ベース塗料に特定の溶剤を特定量含む希釈剤を配合することで、塗装時の塗料組成物は特定の溶剤組成を有することができ、常温乾燥又は強制乾燥の条件でも、仕上がり性、耐水性、付着性等に優れる塗膜を形成することができる。また、該塗料組成物によれば、塗り重ね時の再溶解を抑制し、フキムラ、モドリムラ等の現象が生じやすいメタリック塗装の場合でも、メタリック顔料の配向性が乱されることなく、良好な仕上がり性の塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
セルロース誘導体(A)
本発明においてセルロース誘導体(A)は、セルロースを構成単位として含有する化合物であり、例えば、セルロースの水酸基が脂肪酸や硝酸等の酸によりエステル化したセルロースのエステル化物、該セルロースのエステル化物に重合性不飽和基を導入して得られる重合性不飽和基含有セルロースエステル化物を重合性不飽和モノマーと反応してなる共重合体(F)等を挙げることができる。
【0011】
セルロースのエステル化物としては例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのうちセルロースアセテートブチレートが好適に使用できる。
セルロースアセテートブチレートは、セルロースの部分アセチル化物をさらにブチルエステル化して得られるものであり、好ましくはアセチル基含有量が一般に1〜30重量%
で、ブチル基含有量が一般に16〜60重量%である。具体的には、例えば「CAB−381−0.5」、「CAB−381−0.1」、「CAB−381−2.0」、「CAB−551−0.2」(以上、米国イーストマン ケミカル社製、商品名)などが例示できる。
【0012】
上記セルロース誘導体(A)により、得られる塗膜の乾燥性、付着性を向上させることができ、また本発明の塗料組成物がアルミニウム粉などの光輝性顔料を含有する場合に、塗膜中における光輝性顔料の配向性を向上させることができる。
上記セルロースアセテートブチレートの数平均分子量としては、15,000〜100,000、特に20,000〜35,000の範囲であることが好ましい。この範囲内であると、アクリル樹脂又はポリエステル樹脂との相溶性を維持しながら本発明の塗料組成物を塗装した際におけるフキムラ、モドリムラ現象を抑制させ、良好な仕上がり性の塗膜を形成させることができる。
【0013】
本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、商品名、「HLC8120GPC」)で測定した数平均分子量をポリスチレンの数平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0014】
本発明において上記セルロース誘導体(A)は、上記セルロースのエステル化物及び該エステル化物に重合性不飽和基を導入して得られる重合性不飽和基含有セルロースエステル化物と重合性不飽和モノマーを反応してなる共重合体(F)を含むことができる。
本発明においては特に、セルロースのエステル化物と該共重合体(F)を併用することで、ベース塗料(I)中に含まれる各樹脂同士の相溶性を向上させ、形成塗膜の仕上がり性を向上させることができる。
【0015】
上記共重合体(F)としては、例えば、セルロースのエステル化物とイソシアネート基含有重合性不飽和モノマーを反応させて得られる重合性不飽和基含有セルロースエステル化物と重合性不飽和モノマーを共重合することにより製造することができる。
上記重合性不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有する全ての重合可能なモノマーが使用でき、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)等の炭素数が1〜18の直鎖状もしくは分岐状の炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマー;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基を有する重合性不飽和モノマー;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、(2−メタクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2
−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのC〜Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコ−ル、上記C〜Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体などの水酸基を有する(メタ)アクリレート;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート等;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル等;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等のアミノ基含有重合性不飽和モノマー;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレート、テトラメチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェート等の4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
また、セルロースのエステル化物に重合性不飽和基を導入させるためのイソシアネート基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、イソシアナトエチルアクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有ビニルモノマー、あるいはジイソシアネートと上記水酸基含有重合性不飽和モノマーを付加反応して得られた生成物等が使用できる。
【0017】
上記重合性不飽和モノマーと重合性不飽和基含有セルロースのエステル化物との共重合反応は、有機過酸化物等のラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合法等によって行うことができる。
上記共重合体(F)において、重合性不飽和モノマー/セルロースのエステル化物の使用割合としては5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10の範囲内であることが好適である。
【0018】
アクリル樹脂(B)
本発明において、アクリル樹脂(B)は、主として被膜形成成分として、また顔料分散樹脂としても用いることができる成分であり、重合性不飽和モノマーを有機溶剤の存在下、重合開始剤を用いて共重合することにより得られる樹脂を挙げることができる。
かかる重合性不飽和モノマーとしては、上記セルロース誘導体(A)の説明で列記したものの中から適宜選択して使用することができる。
【0019】
本発明において上記アクリル樹脂(B)は、形成塗膜の付着性、耐水付着性及び研磨作業性の点から、アクリル樹脂(B)を構成する重合性不飽和モノマーからなる共重合体のガラス転移温度が、0〜80℃、好ましくは5〜75℃の範囲内であることが望ましい。
本明細書において、ガラス転移温度(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
【0020】
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
式中、W、W・・・Wは各モノマーの重量%〔=(各モノマーの配合量/モノマー全重量)×100〕であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、Polymer Hand Book (4th Edition)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成したものを試料とし、示差走査型熱分析「DSC−50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜+100℃の範囲
で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を使用する。
【0021】
上記アクリル樹脂(B)における好適な共重合成分としては、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーを挙げることができ、該モノマーの使用量としては、アクリル樹脂(B)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中0.1〜35重量%、好ましくは1〜30重量%の範囲内であることが形成塗膜の付着性、耐水性の点から好適である。該モノマーを共重合することにより、最終的に得られる塗料組成物から形成される塗膜の付着性を向上させることができ、またクリヤー塗料中に含まれる硬化剤と反応させることも可能となり望ましい。
【0022】
また形成塗膜の付着性又は顔料分散性の点から、アクリル樹脂(B)はカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分として含有することが望ましい。かかるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量としては、アクリル樹脂(B)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中0.05〜10重量%、好ましくは0.07〜5.0重量%の範囲内であることができる。
【0023】
また、アクリル樹脂(B)は、顔料分散性と本発明の塗料組成物による塗膜上にクリヤー塗料を塗装した際の複層塗膜の外観、特にツヤ感が向上する点からアミノ基含有重合性不飽和モノマーを含んでなることが望ましい。かかるアミノ基含有重合性不飽和モノマーの使用量としては、アクリル樹脂(B)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%の範囲内であることができる。
【0024】
本発明において上記アクリル樹脂(B)の製造に使用される重合開始剤としては、溶液重合法で使用される従来公知のものが制限なく使用でき、例えばベンゾイルパーオキシド
、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキシド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記重合開始剤の使用量としては、アクリル樹脂(B)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーの合計重量を基準にして、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜8重量%の範囲内であることが望ましい。
本発明において、上記の通り得られるアクリル樹脂(B)は、形成塗膜の付着性、顔料分散性の点から、重量平均分子量が5,000〜80,000、好ましくは6,000〜70,000の範囲内であることができる。
【0026】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0027】
ポリエステル樹脂(C)
本発明においてポリエステル樹脂(C)は、多塩基酸と多価アルコールとを主成分として常法に従って共重合することにより得ることができる樹脂を挙げることができる。多塩基酸としては、例えばアジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられ、多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。さらに必要に応じて、脱水ひまし油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ト−ル油脂肪酸などの脂肪酸や安息香酸などの一塩基酸、油脂類を共重合成分として使用することができる。
【0028】
本発明の塗料組成物によれば上記ポリエステル樹脂(C)を含有することにより、本発明の塗料組成物から形成される塗膜の付着性、特に硬化剤を含有するクリヤー塗料からの硬化剤成分の染み込みを促進することができ、クリヤー塗膜との付着性を向上させることができる。
上記ポリエステル樹脂(C)としては、形成塗膜の付着性の点から、重量平均分子量が5,000〜100,000、好ましくは10,000〜70,000の範囲内、水酸基価が5〜150mgKOH/g、好ましくは10〜140mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0029】
また、上記ポリエステル樹脂(C)のガラス転移温度としては−70〜0℃、好ましくは−65〜−5℃の範囲内であることができる。ここで、ポリエステル樹脂(C)のガラス転移温度は、示差走査型熱分析「DSC−50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜+100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化
点を使用する。
【0030】
有機溶剤(D)
本発明において有機溶剤(D)としては、形成塗膜の乾燥性や塗装環境に悪影響を及ぼ
さない有機溶剤であることが望ましく、また、本発明の塗料組成物中の樹脂、特にセルロース誘導体(A)を溶解させ、且つ各樹脂同士を相溶させることが可能な有機溶剤であり、具体的にはエステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を挙げることができる。
【0031】
該有機溶剤(D)におけるエステル系有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられ、ケトン系有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルイソアミルケトン、ジイソブイチルケトン、メチルヘキシルケトン、イソホロンなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
上記有機溶剤(D)としては、分子量が58〜220、特に72〜200の範囲内の有機溶剤であることが望ましく、特にエステル系有機溶剤には、ベース塗料(I)の貯蔵安定性、及び後述の脂肪族炭化水素系有機溶剤(E)との相溶性を向上させる効果があり、好適である。
上記有機溶剤(D)は、ベース塗料(I)の製造のいずれの段階において混合することができ、また、塗料中に含まれる樹脂の製造において、反応溶媒又は希釈溶媒として配合することもできる。
【0033】
脂肪族炭化水素系有機溶剤(E)
本発明において、脂肪族炭化水素系有機溶剤(E)としては、高引火点、高沸点であり、環境や人体に悪影響を及ぼさない化合物であることが望ましく、例えば、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン等の直鎖状アルカン;2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、3,4−ジエチルヘキサン、2,6−ジメチルオクタン、3,3−ジメチルオクタン、3,5−ジメチルオクタン、4,4−ジメチルオクタン、3−エチル−3−メチルヘプタン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、5−メチルノナン、2−メチルウンデカン、3−メチルウンデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン等の分岐状アルカン;シクロペンタン、t−デカリン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,2−メチルエチルシクロヘキサン、1,3−メチルエチルシクロヘキサン、1,4−メチルエチルシクロヘキサン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサンおよび1,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の環状アルカン等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明においては、本発明の塗料組成物が例えば光輝性顔料を有するメタリック塗料である場合など、形成塗膜のムラの発生を抑制でき、仕上がり性を良好に向上させることができる点から、該有機溶剤(E)としては、炭素数が5〜12、特に6〜10のアルカン、特に環状アルカン、さらに特にアルキルシクロヘキサンを使用することが好適である。
かかるアルキルシクロヘキサンとしては、例えば、メチルシクロヘキサン、エチルシク
ロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,2−メチルエチルシクロヘキサン、1,3−メチルエチルシクロヘキサン、1,4−メチルエチルシクロヘキサン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサンおよび1,3,5−トリメチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
【0035】
本発明において、上記有機溶剤(E)はベース塗料(I)の長期の貯蔵安定性の点から後述の希釈剤(II)に配合されることが望ましく、該希釈剤(II)中に脂肪族炭化水素系有機溶剤(E)が5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%含まれていることが望ましい。該有機溶剤(E)の希釈剤(II)中における含有量が5重量%未満では、ベース塗料(I)に希釈剤(II)を配合して得た本発明の塗料組成物を塗装することにより得られる塗膜の仕上がり性にムラが発生することがあり、他方90重量%を超えると、ベース塗料(I)に対する希釈剤(II)の溶解性が不十分となり、両者を混合して粘度調製した塗料組成物の安定性や仕上がり性が低下するから好ましくない。
【0036】
ベース塗料(I)
本発明において、ベース塗料(I)は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を必須成分として含んでなり、セルロース誘導体(A)を成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分重量中に5〜75重量%、好ましくは10〜70重量%含有することを特徴とする。
【0037】
成分(A)が5重量%未満では、本発明の塗料組成物から形成される塗膜の乾燥性が低下し、一方75重量%を超えると、被塗面及びクリヤー塗膜との付着性が低下するので望ましくない。
また、上記アクリル樹脂(B)及びポリエステル樹脂(C)は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分重量中に、成分(B)が5〜90重量%、好ましくは10〜85重量%、成分(C)が5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%の範囲内で含まれることが望ましい。
【0038】
成分(B)が5重量%未満では、被塗面及びクリヤー塗膜との付着性が低下し、一方90重量%を超えると形成塗膜の乾燥性が低下することがあり、成分(C)が5重量%未満では、クリヤーからの架橋成分の染み込み性が不十分であり、一方45重量%を超えると塗膜硬度が低下することがある。
本発明において、上記ベース塗料(I)は、着色塗料又はクリヤー塗料のいずれであってもよいが、着色塗料、特に光輝性顔料含有塗料である場合に本発明の効果を最大限に発揮することができる。
【0039】
上記ベース塗料(I)に用いられる顔料としては、通常塗料分野で用いられる光輝性顔料、着色顔料、体質顔料等の顔料が特に制限なく使用できる。光輝性顔料として例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄等のメタリック顔料;マイカ、金属酸化物コーティング雲母粉、金属酸化鉄コーティングアルミナフレーク、金属酸化物コーティングシリカフレーク、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料を挙げることができ、着色顔料としては、酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッ
チングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;等をあげることができ、体質顔料としては、亜鉛粉、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などを挙げることができる。
【0040】
本発明の塗料組成物において顔料を配合する場合、その配合量は、顔料の種類に応じて適宜調整することができ、塗料中の樹脂固形分重量を基準にして、一般に1〜250重量%、好ましくは2〜240重量%の範囲内とするのが適当である。例えば、光輝性顔料含有塗料である場合、光輝性顔料を1〜60重量%、好ましくは2〜55重量%含むことができる。
【0041】
上記ベース塗料(I)には、さらに必要に応じて、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、顔料分散剤、硬化触媒などの塗料用添加剤を配合することができる。また、ベース塗料(I)の貯蔵安定性や最終的に得られる本発明の塗料組成物の乾燥性等を損なわない範囲で上記有機溶剤(E)又はその他の有機溶剤を含有することもできる。
【0042】
本発明におけるその他の有機溶剤としては、上記有機溶剤(D)及び有機溶剤(E)以外の有機溶剤であり、具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のエーテル系有機溶剤、メタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、セカンダリーブタノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系有機溶剤を挙げることができ、本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜の性能を損なわない範囲で使用することができる。
【0043】
希釈剤(II)
本発明において、希釈剤(II)は、塗装作業性を向上させるために塗料粘度を調整し、さらにフキムラ、モドリムラなどの影響の少ない良好な仕上がり性の塗膜を形成させるために上記ベース塗料(I)に配合されるものである。
上記希釈剤(II)において、ベース塗料(I)中に含まれる樹脂、特にセルロース誘導体(A)と希釈剤(II)の混合安定性を向上させ、本発明の塗料組成物により形成される塗膜の仕上がり性を向上させる点から、希釈剤(II)における特に好ましい有機溶剤組成の具体例としては、希釈剤(II)に含まれる全有機溶剤の重量を基準にして
脂肪族炭化水素系有機溶剤が5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、
エステル系有機溶剤が、8〜85重量%、好ましくは10〜80重量%
ケトン系有機溶剤が、2〜35重量%、好ましくは5〜30重量%
その他の有機溶剤が、0〜30重量%、好ましくは0〜25重量%
の範囲内であることが好適である。
【0044】
上記希釈剤(II)は、さらに必要に応じて、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、顔料分散剤、硬化触媒などの塗料用添加剤を含むことができる。
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、上記ベース塗料(I)及び上記希釈剤(II)を含んでなり、塗装作業性及び仕上がり性の点から、ベース塗料(I)中の樹脂固形分100重量部に対して有機溶剤(D)が100〜700重量部、好ましくは120〜690重量部、有機溶剤(E)が20〜340重量部、好ましくは25〜330重量部の範囲内となるようにすることが望ましい。
【0045】
本発明において、最終的に得られる本発明の塗料組成物に含まれる各樹脂同士の相溶性を向上させ、良好な仕上がり性の塗膜を形成させる点から、ベース塗料中の樹脂固形分100重量部に対して脂肪族炭化水素系有機溶剤(E)が、20〜340重量部、好ましくは25〜330重量部、エステル系有機溶剤が、90〜590重量部、好ましくは100〜580重量部、ケトン系有機溶剤が、10〜110重量部、好ましくは20〜110重量部の範囲内とすることができる。
【0046】
塗料調製は例えば塗装直前にベース塗料(I)と希釈剤(II)を攪拌混合することにより容易に行うことができる。尚、本明細書において、塗装直前とは、例えば、塗装を行う3時間前までの間を挙げることができる。
上記溶剤組成となりうるベース塗料(I)に対する希釈剤(II)の配合量としては、塗装作業性、調製後の塗料の安定性及び仕上がり性の点から、例えば、希釈剤(II)の配合量が、ベース塗料(I)の重量に対して一般に、20〜250重量%、好ましくは30〜200重量%の範囲内とすることができる。
【0047】
本発明の塗料組成物における塗料形態としては、特に制限されることはなく、ベース塗料(I)及び希釈剤(II)とからなる2液型組成物であることが望ましい。また、本発明の塗料組成物は、必要に応じて、さらにポリイソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤、メラミン硬化剤等の硬化剤を含んでいてもよく、塗料組成物が上記硬化剤を含んでなる場合においては、硬化剤の種類に応じて該塗料組成物の塗料形態を、ベース塗料(I)と希釈剤(II)と硬化剤との3液型とするか、ベース塗料(I)及び硬化剤を混
合したものを一液とし、このものと希釈剤(II)とを組み合わせる2液型とするか、希釈剤(II)と硬化剤を混合したものを一液とし、このものとベース塗料(I)とを組み合わせる2液型とするか等を適宜選択することができる。
【0048】
塗装
本発明は、被塗面に、上記本発明の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法である。
被塗面としては、従来公知の基材面や該基材に設けられた塗膜面を例示することができ、該基材としては、特に制限されるものではないが、例えば、鉄、アルミニウム等の金属;プラスチック等の有機基材;コンクリート、木材等の無機質基材等が挙げられ、また該基材に設けられる塗膜としては特に制限はないが、例えば自動車車体や電車等の車両などに設けられている着色ベース塗料によるベース塗膜及びクリヤー塗膜から形成されてなる複層塗膜を挙げることができ、該ベース塗膜の下層にプライマー塗膜、電着塗膜、中塗り塗膜等の塗膜が適宜設けられたものであってもよい。
【0049】
着色ベース塗料によるベース塗膜とは一般に、被塗面に美粧性を与える目的で塗装される着色顔料及び/又は光輝性顔料を含有する塗料により設けられる塗膜を表し、トップク
リヤー塗膜とは一般に、透明な塗膜を形成することができる最上層に設けられる塗膜を表す。プライマー塗膜とは一般に、付着性向上等の理由で基材面に直接設けられる塗料を表し、電着塗膜とは一般に、電着塗装に使用される塗料による塗膜を表し、中塗り塗膜とは一般に、プライマー塗膜あるいは電着塗膜のような下塗り塗膜による塗膜とベース塗膜あるいはトップクリヤー塗膜のような上塗り塗膜の間に設けられる塗膜を表す。
【0050】
本発明の塗料組成物を塗装する塗装手段としては、スプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装等特に制限はなく、乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよい。本明細書では40℃未満の乾燥条件を常温乾燥とし、40℃以上で且つ80℃未満の乾燥条件を強制乾燥とし、80℃以上の乾燥条件を加熱乾燥とする。
また、本発明は、被塗面に上記塗料組成物を塗装した後、該塗膜上にクリヤー塗料を塗装することを特徴とする塗装方法である。
【0051】
上記塗料組成物による塗膜はクリヤー塗料を塗装する前に硬化乾燥させてもよいし、該未硬化の塗膜上にクリヤー塗料を塗装し、両塗膜を乾燥させることもできる。
本発明方法に用いられるクリヤー塗料としては、従来公知のものが特に制限なく使用でき、例えば水酸基などの架橋性官能基を含有するアクリル樹脂やフッ素樹脂を主剤とし、ブロックポリイソシアネート、ポリイソシアネートやメラミン樹脂などを硬化剤として含有する硬化型塗料、あるいはセルロースアセテートブチレート変性のアクリル樹脂を主成分とするラッカー塗料などが好適に使用でき、さらに必要に応じて顔料類、繊維素誘導体類、添加樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、硬化触媒などの塗料用添加剤を含有することができる。このうちポリイソシアネート硬化剤を含有する塗料を用いた場合、クリヤー塗膜から塗料組成物による塗膜中にポリイソシアネート硬化剤が一部しみ込んでくるので、本発明の塗料組成物による塗膜が水酸基を含有する場合は、該水酸基と反応することができ、塗料組成物中に硬化剤成分を用いない或いは減量できる上、塗料組成物による塗膜とクリヤー塗膜間の付着性を向上させることができるので好適である。
【0052】
クリヤー塗料を塗装する塗装手段としては、スプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装等特に制限はなく、乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
ポリエステル樹脂溶液の製造
製造例1
加熱装置、温度計、攪拌機、精留塔及び水分離器の付属した還流冷却器を備えた容量4リットルの反応器に下記成分を仕込み、160℃に加熱し、3時間かけて160℃から230℃まで昇温させた。
【0054】
ヘキサヒドロ無水フタル酸 29.7部
アジピン酸 25.4部
ネオペンチルグリコ−ル 5.3部
1,6−ヘキサンジオ−ル 39.6部
これを230℃で1時間保ち、生成した縮合水(7.4部)を精留塔を用いて留去させた。次いでキシレンを5部加え、キシレンと縮合水を還流させ水分離器を用いて水を取り除いた。キシレン添加の2時間後から、酸価を測定し始め、酸価が2mgKOH/g以下になったところで減圧し、キシレンをほぼ完全に留去させた。その後、120℃まで冷却して、酢酸ブチルで不揮発分70%となるよう希釈し、ポリエステル樹脂酢酸ブチル溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は20,000、水酸基価は32mgKOH/g、ガ
ラス転移温度は−52℃であった。
【0055】
アクリル樹脂溶液の製造
製造例2
温度計、攪拌機、還流冷却器及び滴下用ポンプを備えた容量4リットルの反応器に、酢酸ブチル68部を仕込み、攪拌しながら110℃まで昇温し、下記モノマー混合物と重合開始剤の混合液を、110℃で約3時間かけて一定速度で滴下した。
【0056】
イソブチルメタクリレート 59.75部
メチルメタクリレート 10部
「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製) 10部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 19部
ジメチルアミノエチルメタクリレート 1部
メタクリル酸 0.25部
アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 0.2部
滴下終了後1時間110℃に保ち、攪拌を続けた。その後、追加触媒としてアゾビスジメチルバレロニトリル0.5部を酢酸ブチル14部に溶解させたものを1時間かけて一定速度で滴下した。そして、滴下終了後1時間110℃に保ち、反応を終了した。得られたアクリル樹脂溶液は、不揮発分55.0%、均一で透明な溶液であり、該樹脂の重量平均分子量は50,000、水酸基価は92mgKOH/g、ガラス転移温度は57℃であった。
【0057】
CABグラフトアクリル樹脂溶液の製造
製造例3
温度計、攪拌機、還流冷却器及び滴下ロートを備えた容量4リットルの反応器に下記成分を仕込み、窒素ガス雰囲気下で加熱し、約4時間かけて110℃まで昇温した。
酢酸ブチル 600部
「CAB−381−0.5」(注1) 200部
110℃に昇温後、「CAB−381−0.5」(注1)が完全に溶解したことを確認した後、加熱を停止し、減圧下で酢酸ブチルを133部を留去させた。反応器内の温度は87℃であった。この温度を維持しながらイソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの等mol付加反応物の90%酢酸ブチル溶液を11.1部、重合
禁止剤としてp−t−ブチルカテコール0.02部、およびウレタン化触媒としてジブチ
ルスズジラウレート0.02部を反応器に投入し、87℃で7時間、乾燥空気下で熟成さ
せて、不飽和基含有セルロースアセテートブチレート溶液を得た。次いで反応温度を115℃に昇温し、下記の重合性不飽和モノマーと重合開始剤の混合溶液を2時間にわたって滴下した。
【0058】
酢酸ブチル 130部
メチルメタクリレート 58.2部
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 2部
滴下終了後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.5部、酢酸ブチル20部の混合溶液を1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下で115℃1時間熟成した。不揮発分30%のCABグラフトアクリル樹脂溶液を得た。
(注1)「CAB−381−0.5」:商品名、イーストマン ケミカル社製、セルロースアセテートブチレート、ブチル基含有量38%、数平均分子量30,000。
【0059】
ベース塗料の作成
製造例4〜8
表1の配合組成で、反応容器に「アルミペーストMC−606」(商品名、旭化成メタ
ルズ社製、アルミペースト、アルミニウム粉/ミネラルスピリット/C9級芳香族炭化水素系有機溶剤重量比=60/19.5/19.5、アミン1%)及び製造例2で得られた55%アクリル樹脂溶液を入れ攪拌分散し、25%「CAB551−0.2」溶液(注2)、製造例1で得られた70%ポリエステル樹脂溶液及び30%CABグラフトアクリル樹脂溶液を夫々配合し、さらに、酢酸ブチルを同表に示す配合で加え、ディスパーで約20分間撹拌し、メタリックベース塗料(I−1)〜(I−5)を作成した。
【0060】
【表1】

【0061】
(注2)25%「CAB551−0.2」溶液:「CAB551−0.2」(商品名、イーストマン ケミカル社製、セルロースアセテートブチレート、ブチル基含有量55%、数平均分子量30,000)を酢酸ブチルで固形分25%溶液に調整した。
希釈剤の作成
製造例9〜26
反応容器に表2に示す配合組成で溶剤を配合し、ディスパーで約10分撹拌して希釈剤(II−1)〜(II−18)を作成した。
【0062】
【表2】

【0063】
塗料組成物の調製
実施例1
メタリックベース塗料(I−1)100重量部に対し、希釈剤(II−1)を100重量部混合攪拌し、塗料組成物を得た。
実施例2〜16及び比較例1〜9
上記実施例1において、配合組成を表3に示す通りとする以外は実施例1と同様にして塗料組成物を得た。
【0064】
【表3】

【0065】
塗装
ブリキ板上に、「KARプラサフ グレー」(商品名、関西ペイント、ラッカープライマーサーフェーサー)を乾燥膜厚が40μmとなるように塗装し、20℃にて30分間乾燥後に#400耐水研磨紙で研磨した。この上に上記実施例及び比較例で粘調した各塗料組成物を乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、20℃で10分乾燥後、該塗膜面にクリヤー塗料(注3)を乾燥膜厚で40μmになるようにスプレー塗装し、温度20℃で24時間乾燥させて、試験塗板を得た。クリヤー塗料を塗装する前後の試験塗板について下記性能試験を行った。結果を表3に示す。
【0066】
(注3)クリヤー塗料:「レタンPGマルチクリヤーHX(Q)ベース」(関西ペイント社製、水酸基含有アクリル樹脂含有クリヤー塗料)100重量部に対して「レタンPGマルチクリヤーHXスタンダード硬化剤」(関西ペイント社製、(ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤)50重量部を添加してなるものを希釈剤(II−1)で13〜14秒
(フォ−ドカップ#4/25℃)に希釈、粘調した。
(*1)乾燥性
上記各塗料組成物を、温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室中で、塗装膜厚100μmとなるようにドクターブレードにてガラス板に塗装し、指で触って塗料が指に付かなくなるまでの指触乾燥時間を測った。結果を下記のとおり評価した。
◎:乾燥時間10分未満、○:乾燥時間10以上12分未満、△:12以上且つ15分未満、×:15分以上。
(*2)フキムラ
クリヤー塗料を塗装する前の試験塗板の塗膜中における顔料の配向状態を目視で観察した。結果を下記のとおり評価した。
◎:ムラなし、○:ムラ僅かにあるが実用レベル、△:ムラ僅かにあり、×:ムラが著しい。
(*3)モドリムラ
クリヤー塗料を塗装し、乾燥させた試験塗板の塗膜中における顔料の配向状態を目視で観察した。結果を下記のとおり評価した。
◎:ムラなし、○:ムラわずかにあるが実用レベル、△:ムラ僅かにあり、×:ムラが著しい。
(*4)付着性
クリヤー塗料を塗装し、乾燥させた試験塗板を20℃雰囲気中で、塗板の対角線上にナイフで素地に達するようにクロスカットし、粘着テ−プによる剥離試験を行った。結果を下記のとおり評価した。
○:剥離なし、△:僅かに剥離あり、×:かなり剥離あり。
(*5)PRTR対応
上記実施例及び比較例で得られた各塗料組成物中に含まれるトルエン及びキシレンの含有量を算出し、下記基準で評価した。(○:PRTR規制対象物質含有量1%未満、×:PRTR規制対象物質含有量1%以上)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース塗料(I)並びに希釈剤(II)を含んでなる塗料組成物であって、ベース塗料(I)が、セルロース誘導体(A)、アクリル樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)並びにエステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤(D)を含んでなり、セルロース誘導体(A)を成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分重量中に5〜75重量%含有し、希釈剤(II)が、脂肪族炭化水素系有機溶剤(E)を、希釈剤(II)中に5〜90重量%含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
該ベース塗料(I)がメタリックベース塗料である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
セルロース誘導体(A)が、セルロースアセテートブチレートを含む請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
セルロース誘導体(A)が、セルロースのエステル化物及び該エステル化物に重合性不飽和基を導入して得られる重合性不飽和基含有セルロースエステル化物と重合性不飽和モノマーを反応せしめてなる共重合体(F)を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
有機溶剤(E)が、アルキルシクロヘキサンである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
希釈剤(II)が、有機溶剤(D)を希釈剤(II)中に10〜95重量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
ベース塗料(I)中の樹脂固形分100重量部を基準にして、有機溶剤(D)を100〜700重量部、有機溶剤(E)を20〜340重量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
希釈剤(II)の配合量がベース塗料(I)の重量に対して20〜250重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし7項のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項9】
被塗面に、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。
【請求項10】
被塗面に、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装した後、該塗面上にクリヤー塗料を塗装することを特徴とする塗装方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の塗装方法により得られる塗装物品。

【公開番号】特開2006−152259(P2006−152259A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308944(P2005−308944)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】