説明

塗装工法

【課題】工場などの建造物の屋根や外壁などの外壁に、防止塗料を塗布して防水塗膜を形成し、該防水塗膜上に遮熱塗膜を形成する防水・遮熱塗装工法において、その作業、とりわけ遮熱塗膜の形成作業の簡略化を図り、かつ、その遮熱塗膜の厚さの均一化がもたらされるよう塗装工法を提供することである。
【解決手段】建造物の外壁に塗布して形成した防水塗膜上に、前記防止塗料にセラミック粉末を混入してなる遮熱塗料を剥離シートに塗布・乾燥して予め形成した遮熱塗膜シートから、該剥離シートを剥離して、遮熱塗膜を前記防水塗膜上に積層することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は塗装工法に関し、特に、建造物の屋根や側壁などの外壁の防水・遮熱塗装工法に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などの建造物の屋根や側壁などの外壁に遮熱塗装することが行われており、特に昨今では、省エネルギーの観点からその必要性が強く望まれている。
しかして、従来においては、この遮熱塗装に際しては、まず建造物外壁に防水塗料を塗布し、該防水塗料が乾燥した後に、遮熱塗料を塗布して乾燥させる塗装工法が一般的に採用されている。
例えば、特開平10−110538号公報などがこれである。
【0003】
図2にこのような塗装工法を示す。図2(A)において、屋根や側壁など建造物の外壁1の外表面に防水塗料を塗布し、これを1〜2時間程度放置して乾燥させて防水塗膜2を形成する。次いで、図2(B)に示すように、乾燥した防止塗膜2の上に、遮熱塗料を塗布し乾燥させて一次防水塗膜3aを形成する。そして、図2(C)に示すように、該一次塗膜3aが乾燥した後に、防止塗料を重ね塗りし、乾燥させて二次防止塗膜3bを積層形成する。
この作業を必要に応じて数回、通常は2〜3回繰り返し、全体として所望の厚さを有する遮熱塗膜3を形成するものである。
【0004】
しかるに、上記のような防止・遮熱塗装工法では、防水塗料を塗布し、これを乾燥させた後に、遮熱塗料を複数回にわたって塗布・乾燥するものであるために、その作業時間が長時間に及び、しかも専門の作業員による高所での煩雑な作業が必要となるという問題があった。
その上、塗膜、なかでも遮熱機能を左右する遮熱塗膜の厚さが不均一になり易く、一様な遮熱効果を期待し難いという不具合もある。とりわけ、垂直な外壁への遮熱塗装においては、塗装後の乾燥時に塗料が下方に流下してしまうので、この厚さの不均一がより顕著なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−110538号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、工場などの建造物の屋根や側壁などの外壁に防水塗膜および遮熱塗膜を形成する防止・遮熱塗装工法において、防止樹脂と体質顔料を主成分とする防水塗料を塗布して形成した防止塗膜上に、均一な一定の厚さの遮熱塗膜を容易に積層形成できる塗装工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る防水・遮熱塗装工法は、建造物の外壁に防水塗料を塗布して防止塗膜を形成し、その後に、前記防止塗料にセラミック粉末を混入してなる遮熱塗料を剥離シートに積層・乾燥して予め形成した遮熱塗膜シートから、該剥離シートを剥離して、遮熱塗膜を前記防水塗膜上に積層することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成とすることにより、予め剥離シートに積層・形成された遮熱塗膜は、剥離シートを剥離して防水塗膜上に貼付するだけでよいので、その作業がきわめて簡便になり、しかも、該遮熱塗膜はその厚さが均一であるという効果を奏する。
また、防水塗膜を塗布した後に、その乾燥を待たずに直ちに防水塗膜を貼付するので、作業時間の大幅な短縮が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る防水・遮熱塗装工法を示す説明図。
【図2】本発明に使用される遮熱塗膜シートの断面図。
【図3】従来の防水・遮熱塗装工法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(A)に示すように、工場などの建造物の屋根や側壁などの外壁1に防水・遮熱塗装を行うに際しては、まず、上記従来技術と同様に、防水塗料をスプレーガンなどにより吹き付け塗装する。こうして塗布・乾燥された防水塗膜2は、例えば150μm程度の厚さに形成される。この防水塗膜2は、150%程度の伸縮性を有し、外気の温度変化に対して耐久性を担保できる。
このような塗装工法に用いられる防止塗料としては、防水性とともに、建造物の外壁への密着性の観点から、ポリスチレンなどの防水樹脂と、タルクや炭酸カルシウムなどの体質顔料とからなる塗料が用いられる。
【0011】
一方、該防水塗膜2上に積層される遮熱塗膜を形成する遮熱塗料は、前記防水塗料に種々の粒径からなるセラミック粉末を混入させたものが用いられる。このセラミック粉末により遮熱機能がもたらされて熱反射効果が生じる。また、防水塗膜との密着性が良好である。
本発明において使用される遮熱塗膜は、図2に示すように、予め剥離シート5上に遮熱塗料を塗布して乾燥させて遮熱塗膜6を形成した遮熱塗膜シート4を用意しておく。この遮熱塗膜シート4の形成方法は以下の通りである。
【0012】
図2において、例えば厚さ50〜100μm程度のポリエチレン・シートからなる剥離シート5上にフローコート法によって前記した遮熱塗料を塗布し、これを80℃程度の温度雰囲気中で数分間乾燥させることによって遮熱塗膜6を形成する。この遮熱塗膜6の厚さは、例えば350μ程度である。
こうして得られた遮熱塗膜シート4は、適宜の形状、例えば、90cm×90cm、あるいは、90cm×120cmなどの4角形状に切断したものが用いられる。
この遮熱塗膜6は、前記したように、セラミック粉末を混入するために伸縮性は減少するが、なお一定程度の伸縮性は担保されているので、剥離シート上で乾燥させても一定程度の柔軟性は有し、遮熱塗膜シートもそれ自体柔軟性を有するものである。
【0013】
このような遮熱塗膜6を、上記したように、建造物の外壁1に防水塗料を塗布して形成した防水塗膜2上に積層する。
図1(B)に示すように、前記防水塗膜2の乾燥を待つことなく、粘着性が維持されている間に、前記遮熱塗膜シート4の剥離シート5を剥離して、図1(C)に示すように、該遮熱塗膜6を前記防水塗膜2の上に貼付して積層する。この作業を繰り返し行うことによって、建造物の外壁1全体に遮熱塗膜6を形成するものである。
このとき、先に塗布した防止塗膜2が乾燥していないので、遮熱塗膜6は該防水塗膜2の粘着力によって容易にその上に貼付できる。また、遮熱塗膜6が柔軟性を有することから、その貼付作業も円滑に遂行でき、建造物外壁1の凹凸にも対応でき、かつ防水塗膜2の更なる伸縮性とあいまって全体としてその伸縮性や柔軟性が担保されるものである。
なお、建造物の外壁とは、上記してきたように、屋根や側壁などの外気にさらされる構造物部分をいう。
【0014】
以上説明したように、本発明に係る防水・遮熱塗装工法によれば、予め剥離シート上に遮熱塗料を塗布し乾燥させた遮熱塗膜シートを用いるので、防水塗膜上に遮熱塗膜を積層する際には、該遮熱塗膜シートの剥離シートを剥離して遮熱塗膜を前記防水塗膜上に貼付するだけでよいので、専門家による大掛かりな装置を用いた作業と比べて、その作業が極めて簡単となり、かつ、短時間で済むという効果を奏するものである。
しかも、防水塗膜の乾燥を待つことがないので、作業時間が一層短縮されるとともに、防水塗膜の粘着力を利用して遮熱塗膜を容易に貼り付けることができるものである。
加えて、予め遮熱塗膜シートにおいては、その遮熱塗膜は一定の厚さのものが得られるので、建造物上での遮熱塗膜の厚さも必然的に一定なものとなり、高機能な遮熱効果が得られる。
また、遮熱塗料として防止塗料にセラミックス粉末を混入したものを使用するので、遮熱塗膜と防止塗膜との密着性が良好である。
【符号の説明】
【0015】
1 建造物(屋根、外壁)
2 防水塗膜
4 遮熱塗膜シート
5 剥離シート
6 遮熱塗膜




【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の屋根や側壁などの外壁上に防水塗料を塗布して防止塗膜を形成し、前記防止塗料にセラミック粉末を混入してなる遮熱塗料を剥離シートに塗布・乾燥して予め形成した遮熱塗膜シートから、該剥離シートを剥離して、遮熱塗膜を前記防水塗膜上に積層することを特徴とする防水・遮熱塗装工法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−125774(P2011−125774A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284712(P2009−284712)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(304045147)株式会社染めQテクノロジィ (1)
【Fターム(参考)】