説明

塗装方法及び塗装装置

【課題】 塗装工程後のマスキング部材の取り外しを必要とせずに製造性を向上させると共に、良好な製品仕上がりを確保できる塗装方法、及びこの実施に使用する塗装装置を提供する。
【解決手段】 無電極放電灯用の中空棒状の管材1の側外面1aに対して蛍光体または保護膜で構成される塗装膜をスプレーノズル11からのスプレー塗装で被着させる塗装方法である。管材1の非塗装域3とスプレーノズル11との間にマスキング部材12を非接触状態にして配置し、管材1を軸周りに回動させつつ、塗料を噴射するスプレーノズル11を管材1の軸方向に平行に移動させることで、スプレーノズル11から噴射して非塗装域3に向かう塗料をマスキング部材12で遮断するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装方法及びこの方法の実施に使用される塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、棒状材の側外面に対して非塗装域を残して塗装域にのみ塗装を施すには、棒状材の非塗装域にのみマスキング部材を付着させて被覆し、棒状材をその軸周りに回転させると共に、塗料を噴射するスプレーノズルを棒状材の軸方向に沿って移動させることで行われている。これによると、棒状材の側外面の塗装域にのみ塗料を被着させることができる。
【0003】
しかしながら、棒状材の非塗装域に付着させたマスキング部材は塗装後に剥がし取らねばならず、塗装工程後のマスキング部材の取り外し工程によって製造性を低下させるばかりか、その取り外し時に棒状材に傷を付けたりして不良品を発生させる恐れもあった。
【特許文献1】特開2002−66407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塗装工程後のマスキング部材の取り外しを必要とせずに製造性を向上させると共に、良好な製品仕上がりを確保できる塗装方法、及びこの実施に使用する塗装装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1に係る塗装方法にあっては、無電極放電灯用の中空棒状の管材1の側外面1aに対して蛍光体または保護膜で構成される塗装膜をスプレーノズル11からのスプレー塗装で被着させる塗装方法であって、管材1の非塗装域3とスプレーノズル11との間にマスキング部材12を非接触状態にして配置し、管材1を軸周りに回動させつつ、塗料を噴射するスプレーノズル11を管材1の軸方向に平行に移動させることで、スプレーノズル11から噴射して非塗装域3に向かう塗料をマスキング部材12で遮断するようにしたことを特徴とする。
【0006】
これによると、スプレーノズル11から噴射された塗料は、非塗装域3に向かう塗料のみがマスキング部材12で遮断されるから、無電極放電灯用の中空棒状の管材1の側外面1aにおいて、非塗装域3には上記塗料が至らずに塗装膜を被着させず、塗装域2にのみ上記塗料が至って塗装膜を被着させるようにできるのであり、また、このときマスキング部材12は管材1の非塗装域3とスプレーノズル11との間に非接触状態にして配置されるから、無電極放電灯用の中空棒状の管材1の塗装後に従来のようにマスキング部材12を管材1から取り外す必要もなく、良好な製造性で塗装を行うことができるのである。更に言うと、従来のようにマスキング部材12を管材1から取り外す必要を無くしたことによると、マスキング部材12の管材1から取り外し工程時に管材1に傷を作ってしまうことを回避でき、管材1の良好な製造仕上がりを確保できる。
【0007】
また、請求項2に係る塗装方法にあっては、請求項1において、マスキング部材12と管材1の非塗装域3との隙間S1に、管材1の塗装域2に向けて気流Aを流すことを特徴とする。
【0008】
これによると、マスキング部材12と管材1との隙間S1に廻り込んで管材1の非塗装域3に向かおうとする塗料を、マスキング部材12と管材1の非塗装域3との隙間S1に管材1の塗装域2に向けて流した気流Aに乗せて、管材1の塗装域2に向けて流すようにでき、塗料の管材1の非塗装域3への被着を防止できて管材1の塗装仕上がりを良好にできる。
【0009】
また、請求項3に係る塗装方法にあっては、請求項1において、移動したスプレーノズル11が塗装域2と非塗装域3との境界部に達したときに、塗料噴射口11aを管材1の塗装域2側に向けるようにスプレーノズル11を塗料噴射口11aを中心にして回動させることを特徴とする。
【0010】
これによると、移動したスプレーノズル11が塗装域2と非塗装域3との境界部に達したときに塗料噴射口11aを管材1の塗装域2側に向けるようにスプレーノズル11を回動させたことで、スプレーノズル11から噴射された塗料を非塗装域3に向かわせないようにできるのであって、塗料の管材1の非塗装域3への被着を防止できるのであり、また、このスプレーノズル11の回動が塗料噴射口11aを中心にして行われることで、スプレーノズル11の塗料噴射口11aと管材1の側外面1aとの距離を略一定に保つことができるから塗装ムラを無くすることができるのであり、つまり、管材1の塗装仕上がりを良好にできる。
【0011】
また、請求項4に係る塗装方法にあっては、請求項1において、非塗装域3である管材1の先端底面1bと該先端底面1bに対向配置した整流板13との間の隙間S2にスプレーノズル11からの噴射流れを流すことで流速を高めた急流Bを形成し、スプレーノズル11から噴射されて管材1の先端底面1bに向かう塗料を上記急流Bに乗せて隙間S2の下流に流すようにしたことを特徴とする。
【0012】
これによると、非塗装域3である管材1の先端底面1bに整流板13をスプレーノズル11からの噴射流れを急流Bにして流す隙間S2を隔てて対向配置させるといった簡単な構造で、非塗装域3である管材1の先端底面1bにスプレーノズル11から噴射された塗料を至らせないようにできるのであり、簡単な構造で管材1の良好な塗装仕上がりを確保できる。
【0013】
また、請求項5に係る塗装装置にあっては、無電極放電灯の中空棒状の管材1の側外面1aに対して蛍光体または保護膜の塗装膜をスプレーノズル11からのスプレー塗装で被着させるための塗装装置10であって、塗装する管材1を設置する設置部14と、設置部14に設置した管材1の軸方向に移動しつつ塗料を噴射するスプレーノズル11と、設置部14に設置した管材1をその軸周りに回転させる回転機構15と、設置部14に設置した管材1の非塗装域3とスプレーノズル11との間に非接触状態にして配置されるマスキング部材12とを備えて成ることを特徴とする。
【0014】
これによると、設置部14に設置した無電極放電灯用の中空棒状の管材1の側外面1aに塗装を施すにあたり、スプレーノズル11から噴射された塗料のうち非塗装域3に向かう塗料のみをマスキング部材12で遮断させることができ、つまり、管材1の側外面1aにおいて非塗装域3には上記塗料が至らずに塗装膜を被着させず、塗装域2にのみ上記塗料が至って塗装膜を被着させるようにできるのであり、また、このときマスキング部材12は管材1の非塗装域3とスプレーノズル11との間に非接触状態にして配置されるから、無電極放電灯用の中空棒状の管材1の塗装後に従来のようにマスキング部材12を管材1から取り外す必要もないのであり、良好な製造性で塗装を行うことができるのである。更に言うと、従来のようにマスキング部材12を管材1から取り外す必要を無くしたことによると、マスキング部材12の管材1から取り外し工程時に管材1に傷を作ってしまうことを回避でき、管材1の良好な製造仕上がりを確保できる。
【0015】
また、請求項6に係る塗装装置にあっては、請求項5において、マスキング部材12と管材1の非塗装域3との隙間S1に管材1の塗装域2に向けて気流Aを流すエアノズル16と、移動したスプレーノズル11が塗装域2と非塗装域3との境界部に達したときに塗料噴射口11aを管材1の塗装域2側に向けるようにスプレーノズル11を塗料噴射口11aを中心にして回動させるスプレーノズル回動手段17と、非塗装域3である管材1の先端底面1bに隙間S2を隔てて対向配置され、該隙間Sにスプレーノズル11からの噴射流を流して流速を高めた急流Bを形成させて該急流Bに乗せてスプレーノズル11から噴射されて管材1の先端底面1bに向かう塗料を隙間S2の下流に流すための整流板13と、を備えて成ることを特徴とする。
【0016】
これによると、マスキング部材12と管材1との隙間S1に廻り込んで管材1の非塗装域3に向かおうとする塗料は、マスキング部材12と管材1の非塗装域3との隙間S1に管材1の塗装域2に向けてエアノズル16から流した気流Aに乗せて、管材1の塗装域2に向けて流すようにできるのであり、また、移動したスプレーノズル11が塗装域2と非塗装域3との境界部に達したときに、塗料噴射口11aをスプレーノズル回動手段17によって管材1の塗装域2側に向けて塗料噴射口11aを中心にしてスプレーノズル11を回動させたことで、スプレーノズル11から噴射された塗料を非塗装域3に向かわせないようにできると共に、スプレーノズル11の塗料噴射口11aと管材1の側外面1aとの距離を略一定に保って塗装ムラを無くするようにでき、また、非塗装域3である管材1の先端底面1bにスプレーノズル11からの噴射流れを急流Bにして流す隙間S2を隔てて整流板13を対向配置させるという簡単な構造で、急流Bとなるスプレーノズル11からの噴射流れを利用して非塗装域3である管材1の先端底面1bにスプレーノズル11から噴射された塗料を至らせないようにできるのであり、すなわち、管材1の良好な塗装仕上がりを確保できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、無電極放電灯の中空棒状の管材の側外面に塗装を施すにあたって、塗装工程後のマスキング部材の取り外しを必要とせずに製造性を向上させると共に、良好な製品(塗装)仕上がりを確保できる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0019】
図1乃至図7に示す塗装装置10は、無電極放電灯の中空棒状の管材1の側外面1aに対し、蛍光体または保護膜の塗装膜をスプレーノズル11からのスプレー塗装で被着させる、すなわち塗装を施すための装置である。ここで、無電極放電灯の中空棒状の管材1は図8のように先端に有底端面(以下、先端底面1bと言う)を備えた円筒状のキャビティ部4を有し、その管軸に沿って細管状の排気管6が一体に形成されると共に、キャビティ部4の基端には拡径するフレア部5が形成されている。なお、排気管6はその先端がキャビティ部4の先端底面1bに至っており、その基端はキャビティ部4の基端よりも先端から離れる方向に突設されている。
【0020】
本例の塗装装置10は、図2のように、塗装する無電極放電灯の中空棒状の管材1を設置する設置部14と、設置部14に設置した管材1の軸方向に移動しつつ塗料を噴射するスプレーノズル11と、設置部14に設置した管材1をその軸周りに回転させる回転機構15と、塗装装置10の駆動制御を行う制御部(図示せず)とを備えている。
【0021】
詳しくは、塗装装置10のフレーム10aにはレール部18が略水平に設けられており、このレール部18に沿ってスプレーノズル11を備えた可動ユニット19が走行自在に備えられている。なお、可動ユニット19は制御部の制御によってレール部18の長さ方向の所定範囲で走行可能にされている。ここで、可動ユニット19は、上部にレール部18に沿って走行する走行部20が設けられ、下部にスプレーノズル11を備えた塗装部21が設けられている。スプレーノズル11にはスプレー用エア供給ライン22と塗液供給ライン23が接続され、スプレーノズル11の下端に設けた塗料噴射口11aから塗料がスプレー状に所定範囲に噴射可能にされている(なお、図中Tに噴射された塗料を示している)。
【0022】
上記塗装部21には、スプレーノズル11を塗料噴射口11aを中心にして管材1の軸線上で上下に回動させるスプレーノズル回動手段17が備えられている。スプレーノズル回動手段17は、図3のように、塗装部21のフレーム21aに設置された、駆動モータ24と、駆動モータ24に接続されたノズル駆動用第1プーリ25と、ノズル駆動用第1プーリ25とタイミングベルト26によって接続されたノズル駆動用第2プーリ27とを有している。駆動モータ24の回転駆動に応じてノズル駆動用第1プーリ25、タイミングベルト26を介して回転駆動されるノズル駆動用第2プーリ27には、ノズルブラケット28を介してスプレーノズル11が配置されると共にスリットカム29が設けられている。ノズル駆動用第2プーリ27の回転と共に回転するスリットカム29のスリットを塗装部21のフレーム21aに設置されたフォトセンサ30によって検知し、制御部のフィードバック制御によって駆動モータ24の駆動制御を行うことで、ノズル駆動用第2プーリ27の回転と共に回転するスプレーノズル11の回転角度の制御が可能にされている。ここで、スプレーノズル11はその塗料噴射口11aを中心にして回動可能にされている。なお、本例の塗装部21は走行部20に設けたエアシリンダ31によって上下に移動可能にされている。
【0023】
また、設置部14は塗装装置10内における塗装部21の下方空間がこれを構成している。この設置部14に塗装する管材1を設置するには、図2のように、回転機構15の出力端に設けたチャック15aに管材1の排気管6の基端を取り付けることで行われる。本例の塗装装置10は、回転機構15を作動させて管材1をその軸周りに回動させつつ、塗料を噴射するスプレーノズル11を管材1の軸方向に平行に移動させることで、管材1の側外面1aに塗装が施されるのであるが、詳しくは管材1のフレア部5近傍を除いた側外面1aの部位にのみ塗装を施すようにしてある。すなわち、管材1のフレア部5近傍の側外面1aの部位(管材1の基端から先端に向けた5〜10mmの領域)は非塗装域3であり、上記フレア部5近傍を除いた管材1の側外面1aの部位(図中のクロスハッチング部分)が塗装域2とされている。無論、管材1の側外面1aではない管材1の先端底面1bも非塗装域3である。本例の塗装装置10には、下記に詳述するように、非塗装域3に塗料を付着させず塗装域2にのみ塗料を付着させて管材1の良好な塗装仕上がりを確保するための工夫が施されている。
【0024】
本例の塗装装置10には、管材1のフレア部5近傍の非塗装域3に塗料を付着させないために、図1のように、設置部14に設置した管材1の非塗装域3とスプレーノズル11との間の空間に両者に非接触状態にして配置されるマスキング部材12と、マスキング部材12と管材1の非塗装域3との隙間S1に管材1の塗装域2に向けて気流Aを流すエアノズル16とが備えられている。ここで、エアノズル16にはエア供給ライン32が接続されている。なお、図中32aはブロアである。
【0025】
本例のマスキング部材12は板状部材であり、その上面が塗装域2側ほど下方となるように傾斜させて配置されている。このマスキング部材12によると、スプレーノズル11から噴射された塗料のうち非塗装域3に向かう塗料のみを遮断させることができるから、無電極放電灯用の中空棒状の管材1の側外面1aにおいて、非塗装域3には上記塗料が至らずに塗装膜を被着させず、塗装域2にのみ上記塗料が至って塗装膜を被着させ得るようになっている。ここで、マスキング部材12は管材1の非塗装域3とスプレーノズル11との間に非接触状態にして配置されるから、無電極放電灯用の中空棒状の管材1の塗装後に従来のようにマスキング部材12を管材1から取り外す必要もなく、良好な製造性を確保して塗装を行うことが可能である。従来のようにマスキング部材12を管材1から取り外す必要を無くしたことによると、マスキング部材12の管材1から取り外し工程時に管材1に傷を作ってしまうことを回避でき、管材1の良好な製造仕上がりを確保できる利点も有する。なお、マスキング部材12は経年使用後の取替を可能とするべく塗装装置10に対して着脱可能にされている。
【0026】
また、本例ではマスキング部材12と無電極放電管の非塗装域3との隙間S1は塗装域2に近接するにつれて狭小に形成されており、この隙間S1に図4のようにマスキング部材12の略全幅に亙るようにエアノズル16が配置されている。なお、上記隙間S1の狭小幅は5mm以下に形成するのが好ましい。このエアノズル16からのエア噴射によってマスキング部材12と管材1の非塗装域3との隙間S1に管材1の塗装域2に向けて流れる気流Aを形成したことによると、マスキング部材12と管材1との隙間S1に廻り込んで管材1の非塗装域3に向かおうとする塗料を上記気流Aに乗せて管材1の塗装域2に向けて流すようにできるのであって、塗料の管材1の非塗装域3への被着を防止できるから、管材1の塗装仕上がりを向上させている。なお、本例のマスキング部材12は、噴射された塗料が付着する上面が管材1の塗装域2側ほど下方となるように傾斜しているので、マスキング部材12における管材1の塗装域2側の端部から塗料が滴り落ちることも考えられるが、この滴下する塗料も上記気流Aによって管材1の塗装域2に流すようにできて、管材1の非塗装域3に塗料を付着させず、管材1の良好な塗装仕上がりの確保を図ることが可能にされている。更に言うと、エアノズル16からのエア噴射は、スプレーノズル11の塗料の噴射域内に管材1の非塗装域3が含まれる位置に可動ユニット19が達したときに、制御部によって作動させてもよく、この場合にはエアノズル16からのエア噴射を必要時にのみ行わせることができて、塗装装置10の省力化を図り得る。
【0027】
また、本例の塗装装置10では、管材1の先端底面1bの非塗装域3に塗料を付着させないために、非塗装域3である管材1の先端底面1bに隙間S2を隔てて対向配置された整流板13が備えられている。この整流板13によると、図7のように、管材1の先端底面1bとの隙間S2にスプレーノズル11からの噴射流れを流して流速を高めた急流Bを形成させ、該急流Bに乗せてスプレーノズル11から噴射されて管材1の先端底面1bに向かう塗料を隙間S2の下流に流すようにできるのであり、これにより管材1の先端底面1bの非塗装域3に塗料を付着させないようにできる。つまり、非塗装域3である管材1の先端底面1bに整流板13をスプレーノズル11からの噴射流れを急流Bにして流す隙間S2を隔てて対向配置させるといった簡単な構造で、非塗装域3である管材1の先端底面1bにスプレーノズル11から噴射された塗料を至らせないようにできたのであり、簡単な構造で管材1の良好な塗装仕上がりを確保できたものである。
【0028】
また、本例の塗装装置10では、制御部によるスプレーノズル回動手段17の制御を、図5のように、移動したスプレーノズル11が塗装域2と非塗装域3との境界部に達したときに、塗料噴射口11aを管材1の塗装域2側に向けるように回動させるようにさせている。このように、移動したスプレーノズル11が塗装域2と非塗装域3との境界部に達したときに塗料噴射口11aを管材1の塗装域2側に向けるようにスプレーノズル11を回動させたことで、スプレーノズル11から噴射された塗料を非塗装域3に向かわせないようにできるのである。また、このスプレーノズル11の回動は塗料噴射口11aを中心にして行われるので、スプレーノズル11の塗料噴射口11aと管材1の側外面1aとの距離を略一定に保つことができ、塗装ムラを無くすることができるのである。つまり、管材1の良好な塗装仕上がりの確保が図られているのである。
【0029】
詳しくは、管材1の軸方向に沿って移動するスプレーノズル11が管材1の塗装域2の上方に位置しているときには、図5(b)のように、スプレーノズル11の回動位置はその塗料噴射口11aの開口方向が管材1の側外面1aに略直交し続けるように保持される。そして、移動したスプレーノズル11が管材1のフレア部5近傍の非塗装域3と塗装域2との境界部に達したときには、図6のように、まず、管材1の側外面1aに略直交していたスプレーノズル11の噴射範囲にマスキング部材12が臨む位置でスプレーノズル11を管材1の塗装域2に向けて回動させ(矢印a)、次いで、管材1の塗装域2に向けて回動された状態のスプレーノズル11を、スプレーノズル11の噴射範囲の基端側がマスキング部材12を超えない程度に、管材1の基端側(フレア部5側)にスライドさせる(矢印b)、といった動作が制御部によって行われる。一方、移動したスプレーノズル11が管材1の先端底面1bの非塗装域3と塗装域2との境界部に達したときには、図7のように、スプレーノズル11の噴射範囲の基端側が管材1の側端面における先端部位に位置する位置でスプレーノズル11を管材1の塗装域2に向けて回動させる、といった動作が制御部によって行われる。なお、管材1の側外面1aの塗装は、スプレーノズル11を管材1の軸方向の一方向に移動させることで終了させてもよいし、スプレーノズル11を管材1の軸方向に往復移動させて終了させてもよい。前者では塗装時間を短縮でき、後者では厚塗りが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の例の塗装装置の要部の概略側面図である。
【図2】同上の塗装装置の概略側面図である。
【図3】同上の塗装装置の塗装部であり、(a)は概略側面図であり、(b)は概略正面図である。
【図4】同上の塗装装置の要部の概略斜視図である。
【図5】(a)(b)(c)は同上の塗装装置における塗装動作を順に説明する説明図である。
【図6】同上の要部での塗装動作を説明する説明図である。
【図7】同上の他の要部での塗装動作を説明する説明図である。
【図8】同上の塗装装置で塗装を施す無電極放電灯の中空棒状の管材の概略側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 管材
1a 側外面
1b 先端底面
2 塗装域
3 非塗装域
10 塗装装置
11 スプレーノズル
11a 塗料噴射口
12 マスキング部材
13 整流板
14 設置部
15 回転機構
16 エアノズル
17 スプレーノズル回動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電極放電灯用の中空棒状の管材の側外面に対して蛍光体または保護膜で構成される塗装膜をスプレーノズルからのスプレー塗装で被着させる塗装方法であって、管材の非塗装域とスプレーノズルとの間にマスキング部材を非接触状態にして配置し、管材を軸周りに回動させつつ、塗料を噴射するスプレーノズルを管材の軸方向に平行に移動させることで、スプレーノズルから噴射して非塗装域に向かう塗料をマスキング部材で遮断するようにしたことを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
マスキング部材と管材の非塗装域との隙間に、管材の塗装域に向けて気流を流すことを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項3】
移動したスプレーノズルが塗装域と非塗装域との境界部に達したときに、塗料噴射口を管材の塗装域側に向けるようにスプレーノズルを塗料噴射口を中心にして回動させることを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項4】
非塗装域である管材の先端底面と該先端底面に対向配置した整流板との間の隙間にスプレーノズルからの噴射流れを流すことで流速を高めた急流を形成し、スプレーノズルから噴射されて管材の先端底面に向かう塗料を上記急流に乗せて隙間の下流に流すようにしたことを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項5】
無電極放電灯の中空棒状の管材の側外面に対して蛍光体または保護膜の塗装膜をスプレーノズルからのスプレー塗装で被着させるための塗装装置であって、塗装する管材を設置する設置部と、設置部に設置した管材の軸方向に移動しつつ塗料を噴射するスプレーノズルと、設置部に設置した管材をその軸周りに回転させる回転機構と、設置部に設置した管材の非塗装域とスプレーノズルとの間に非接触状態にして配置されるマスキング部材とを備えて成ることを特徴とする塗装装置。
【請求項6】
マスキング部材と管材の非塗装域との隙間に管材の塗装域に向けて気流を流すエアノズルと、移動したスプレーノズルが塗装域と非塗装域との境界部に達したときに塗料噴射口を管材の塗装域側に向けるようにスプレーノズルを塗料噴射口を中心にして回動させるスプレーノズル回動手段と、非塗装域である管材の先端底面に隙間を隔てて対向配置され、該隙間にスプレーノズルからの噴射流を流して流速を高めた急流を形成させて該急流に乗せてスプレーノズルから噴射されて管材の先端底面に向かう塗料を隙間の下流に流すための整流板と、を備えて成ることを特徴とする請求項5記載の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−264736(P2008−264736A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114688(P2007−114688)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】