説明

塗装装置の噴射量制御方法及び装置

【課題】スプレーガンから吐出する塗料の流速を安定させて微流量の塗料を精度良く吐出できるようにする。
【解決手段】塗料供給タンク1に圧力を調整した圧送用エア3を供給することにより塗料供給タンク1内の塗料aをスプレーガン5に供給し、塗料aの一部をスプレーガン5から吐出することにより霧化用エア14により噴射させ、スプレーガン5から吐出されない塗料a'は戻り管7により回収するようにしている塗装装置の噴射量制御方法であって、戻り管7を気密の塗料回収タンク16に接続し、塗料回収タンク16内を減圧して塗料供給タンク1内の圧力と塗料回収タンク16内の圧力との圧力差を調節することによりスプレーガン5に供給する塗料aの流速を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーガンによって噴射する塗料の噴射量を精度良く調節できるようにした塗装装置の噴射量制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シャフトに耐熱コーティング膜を形成するための塗装を行う場合には、アルミニウム等の金属粉が混入された塗料をシャフトに噴射して塗装膜を形成し、その後、焼付けを行って塗装膜をシャフトに一体化させている。この種の塗料には、目的に応じて種々の溶媒に金属粉を混合した水系、溶剤系のものがあり、例えば重量比で数十%の金属粉を含む高濃度のものもある。
【0003】
上記したように金属粉が混入した塗料を用いてシャフトを塗装する際は、塗装後の焼付時に塗装膜がひび割れ等の問題を生じないように、薄く均一な厚さの塗装膜を形成することが厳しく要求されている。
【0004】
しかし、前記したような金属粉が混入した塗料は、粉体が分離して沈殿し易く、そのために詰まりを生じ易いという問題がある。更に、上記したような水系の塗料は塗布した際に液垂れを生じ易く、そのために少量ずつ噴射して薄い塗装膜を形成する必要がある。
【0005】
このため、前記シャフトを塗装する際には、10μm以下程度の薄く均一な厚さになるように塗装を行って乾燥した後、この塗装・乾燥の作業を例えば6〜7回繰り返して重ね塗りすることにより50〜60μm前後の塗装膜を形成するようにしている。
【0006】
上記したように、10μm以下程度の薄い厚さの塗装膜を均一に形成するには、極めて微流量の塗料を安定して噴射できる塗装装置が必要である。
【0007】
このような溶媒に粉体が混入された塗料を用いて塗装する塗装装置としては、塗料を循環供給することで粉体の沈殿を防ぐようにしたもの(特許文献1)、或いは、粉体と溶媒とを噴射直前に混合するようにしたもの(特許文献2)等がある。又、スプレーガンへ供給する塗料を循環させる際に、バイパス路を設けてバイパス流路の流量を絞ることで、スプレーガンへの塗料の流量を調整するようにしたもの(特許文献3)がある。
【0008】
しかし、上記特許文献1〜3は、いずれも供給ポンプによって塗料を供給するようにしているために、塗料の供給が脈動することが避けられず、前記したように微流量の塗料をスプレーガンから吐出させることは困難である。
【0009】
一方、図5は、本発明者等が実施した初期の塗装装置の一例を示すもので、塗料aが装入された塗料供給タンク1には圧送用エア供給装置2からの圧送用エア3が電空レギュレータ等の供給側圧力設定器4を介して供給されており、塗料供給タンク1の塗料aを圧送用エア3の圧力によって供給管6を介してスプレーガン5に供給するようにしている。スプレーガン5に供給された塗料aは、スプレーガン5に備えたニードル弁等の開閉手段15によって一部がスプレーガン5内に吐出され、吐出した塗料は霧化用エア供給装置13によって供給される霧化用エア14により霧化されてスプレーガン5の先端5aから噴射されるようになっている。一方、スプレーガン5に吐出されなかった残りの塗料a'は、戻り管7により塗料回収タンク8に回収されるようになっている。上記塗料回収タンク8の上部は開口9により大気開放されている。
【0010】
又、塗料供給タンク1と塗料回収タンク8には、攪拌用エア供給装置11からの攪拌用エア12により或いは電気的に回転されて前記塗料a,a'を攪拌することにより塗料の粉体が沈殿するのを防止するようにした攪拌機10を設けている。
【0011】
上記した如く、塗料供給タンクに圧送用エアを供給してエア圧力によって塗料をスプレーガンに供給するようにしたものとしては特許文献4がある。又、循環流路をスプレーガンの内部まで通すようにした循環式スプレーガンとしては特許文献5がある。
【0012】
上記図5及び特許文献4、5の装置によれば、前記特許文献1〜3と比較するとスプレーガンから噴射される塗料の噴射量を安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−330119号公報
【特許文献2】特開2003−033681号公報
【特許文献3】特開平06−047330号公報
【特許文献4】特開2000−325837号公報
【特許文献5】特開2006−055736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図5及び特許文献4、5に示した装置において、圧送用エア3のエア圧力により塗料供給タンク1の塗料aをスプレーガン5に供給して噴射させる際には、図6に示すように、塗料供給タンク1の供給圧P1(塗料の循環速度と相関関係にある)の塗料aは供給管6及び戻り管7を通る間に圧力が低下し、塗料回収タンク8に回収されると大気圧P0となる。そして、前記塗料供給タンク1の供給圧P1と大気圧P0との間における比較的高い吐出圧P2において塗料はスプレーガン5から吐出される。この吐出圧P2はスプレーガン5から吐出される塗料の吐出速度(流量)と相関関係にある。ここで、スプレーガン5による塗料の噴射量を制御するには、スプレーガン5内に対する塗料の吐出圧を精度良く制御する必要がある。
【0015】
従って、スプレーガン5から微流量の塗料を吐出するためには、破線Aで示すように前記塗料供給タンク1の供給圧P1を低く設定して、スプレーガン5の吐出圧P2を低く調節することになるが、このように供給圧P1を低く調節すると、スプレーガン5における塗料の吐出部の流速が小さくなることによってスプレーガン5における塗料の吐出が不安定になる問題がある。即ち、流速が小さくなると粉体が分離し易くなると共に、供給圧P1が低いことにより供給管6の流路抵抗等による圧力の変動が起こることにより塗料の吐出は不安定となり、特に微流量を吐出する際にはこの現象が更に顕著になるという問題があった。
【0016】
このように、スプレーガン5に微流量の塗料を吐出する際に安定した吐出ができないことにより、スプレーガン5から微流量の塗料を噴射して薄い均一な塗装膜を精度良く形成することは困難であった。
【0017】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、スプレーガンに吐出する塗料の流速を安定させて微流量の塗料を精度良く吐出させられるようにした塗装装置の噴射量制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、塗料供給タンクに圧力を調整した圧送用エアを供給することにより塗料供給タンク内の塗料をスプレーガンに供給し、塗料の一部をスプレーガンから吐出することにより霧化用エアにより噴射させ、スプレーガンから吐出されない塗料は戻り管により回収するようにしている塗装装置の噴射量制御方法であって、
前記戻り管を塗料回収タンクに接続し、
該塗料回収タンクの圧力を設定して前記塗料供給タンク内の圧力と塗料回収タンク内の圧力との圧力差を調節することによりスプレーガンに供給する塗料の流速を調節する
ことを特徴とする塗装装置の噴射量制御方法、に係るものである。
【0019】
上記塗装装置の噴射量制御方法において、前記塗料回収タンクを減圧するようにしたことは好ましい。
【0020】
又、上記塗装装置の噴射量制御方法において、前記スプレーガンの塗料の吐出圧と大気圧との圧力差が吐出差圧設定値になるように前記圧力差を調節することは好ましい。
【0021】
又、上記塗装装置の噴射量制御方法において、前記スプレーガンに吐出される塗料の吐出量を計測し、計測した塗料の吐出量に基づいて前記圧送用エアの圧力を調整することは好ましい。
【0022】
又、上記塗装装置の噴射量制御方法において、前記塗料回収タンクの塗料を塗料供給タンクに戻して循環使用することは好ましい。
【0023】
又、上記塗装装置の噴射量制御方法において、前記スプレーガンと、塗料供給タンクと、塗料回収タンクを防爆ブース内に備えるようにしてもよい。
【0024】
本発明は、塗料を収容する塗料供給タンクと、該塗料供給タンクに供給する圧送用エアの圧力を設定する供給側圧力設定器と、圧送用エアにより塗料供給タンクから供給される塗料の一部を吐出させ吐出しない塗料は戻り管に流動させるスプレーガンとを有する塗装装置の噴射量制御装置であって、
前記戻り管に接続された気密の塗料回収タンクと、
該塗料回収タンクに備えた回収側圧力設定手段と、
タンク間差圧設定値に基づき塗料供給タンクと塗料回収タンクの圧力差を制御する制御器と、
を有することを特徴とする塗装装置の噴射量制御装置、に係るものである。
【0025】
上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記回収側圧力設定手段が、塗料回収タンクの圧力を負圧に調節するための減圧装置であることは好ましい。
【0026】
又、上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記制御器が、スプレーガン内の吐出圧と大気圧との圧力差を吐出差圧設定値に調節するようにしたことは好ましい。
【0027】
又、上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記スプレーガンから塗料を吐出させた時の吐出量を検出する吐出量検出装置を備え、該吐出量検出装置の吐出量検出値を前記制御器に入力して該吐出量検出値に基づき前記圧送用エアの圧力を調節するようにしたことは好ましい。
【0028】
又、上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記塗料回収タンクの塗料を塗料供給タンクに戻す循環流路によって塗料回収タンクと塗料供給タンクの間を接続したことは好ましい。
【0029】
又、上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記塗料回収タンクに前記圧送用エアを供給して塗料回収タンクの塗料を塗料供給タンクに戻すようにしたことは好ましい。
【0030】
又、上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記塗料回収タンクを昇降可能に構成し、該塗料回収タンクを上昇させることにより塗料回収タンク内の塗料を重力によって塗料供給タンクに戻すようにしたことは好ましい。
【0031】
又、上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記スプレーガンと、塗料供給タンクと、塗料回収タンクは防爆ブース内に備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の塗装装置の噴射量制御方法及び装置によれば、戻り管を気密の塗料回収タンクに接続し、塗料回収タンク内を減圧して塗料供給タンク圧力と塗料回収タンク圧力との圧力差を調節することによりスプレーガンに供給する塗料の流速を調節するようにしたので、スプレーガン内における塗料の流速を安定させることができ、これにより、粉体が沈殿する問題を防止すると共に、スプレーガンに吐出する塗料の吐出を安定させることができるという優れた効果を奏し得る。
【0033】
更に、大気圧とスプレーガンの吐出圧力との圧力差を調節するようにしたので、塗料の吐出量に関連する吐出速度を任意に設定することができ、よって、スプレーガンに微流量の塗料を安定して精度良く吐出し、微流量の塗料の噴射により薄い均一な塗装膜を精度良く形成できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における塗装装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の塗装装置における塗料供給タンクの供給圧と、塗料回収タンク圧と、吐出圧の関係を示す線図である。
【図3】本発明の塗装装置を更に具体化した一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の塗装装置を更に具体化した他の例を示すブロック図である。
【図5】本発明者等が実施した初期の塗装装置の一例を示すブロック図である。
【図6】図5の塗装装置における塗料供給タンクの供給圧と、塗料回収タンク圧と、吐出圧の関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0036】
図1は図5に示した装置に適用した本発明の塗装装置の一実施例を示すもので、図5と同様に、圧送用エア供給装置2からの圧送用エア3が供給側圧力設定器4を介して塗料供給タンク1に供給されており、塗料供給タンク1の塗料aは圧送用エア3の圧力によって供給管6を介してスプレーガン5に供給されている。スプレーガン5に供給された塗料aはスプレーガン5内に備えられたニードル弁等の開閉手段15によって一部がスプレーガン5内に吐出されて霧化用エア14により先端5aから噴射され、スプレーガン5内に吐出されなかった残りの塗料a'は戻り管7により回収されている。
【0037】
上記構成において、図1に示す実施例では、気密構造の塗料回収タンク16を設け、該塗料回収タンク16を戻り管7に気密に接続している。
【0038】
更に、前記塗料回収タンク16内の上部には、電空レギュレータ等による回収側圧力設定器17を介し塗料回収タンク16内を吸引して所定の設定圧に調節するようにした減圧装置18'(真空装置)を接続して、回収側圧力設定手段18を構成した場合を示している。尚、回収側圧力設定手段18は、上記減圧装置18'を備えて圧力を設定する他に、塗料回収タンク16を大気に開放することによって塗料回収タンク16内を大気圧に設定する方式、或いは加圧装置によって塗料回収タンク16内を所定の正圧に加圧して設定圧に設定する方式等を用いてもよい。
【0039】
更に、前記供給側圧力設定器4に制御信号19を送って塗料供給タンク1内を正圧に制御すると共に、回収側圧力設定器17に制御信号20を送って塗料回収タンク16内を負圧(設定圧)に制御する制御器21を設けている。
【0040】
前記制御器21には、スプレーガン5内の塗料圧を検出する圧力計22からの圧力信号22aが入力されている。この時、スプレーガン5に上記圧力計22が設置できない場合には、供給管6におけるスプレーガン5に近い位置に設けた圧力計22'によってスプレーガン5に供給する塗料の圧力を検出し、その圧力信号22aを制御器21に入力してもよい。
【0041】
又、前記制御器21には、塗料供給タンク1に設けた圧力計23からの圧力信号23aと、塗料回収タンク16に設けた圧力計24からの圧力信号24aとが入力されている。 更に、前記制御器21には、前記圧力信号22aに基づいてスプレーガン5内に吐出される塗料の吐出圧と大気圧との圧力差である吐出差圧設定値25が入力されていると共に、塗料供給タンク1と塗料回収タンク16との間の圧力差を設定するためのタンク間差圧設定値26が入力されている。
【0042】
以下に上記図1の実施例の作動を説明する。
【0043】
圧送用エア供給装置2からの圧送用エア3は供給側圧力設定器4により調節されて塗料供給タンク1に供給され、塗料供給タンク1内が加圧される。すると、塗料供給タンク1の塗料aは圧送用エア3のエア圧力によって供給管6を介してスプレーガン5に供給され、スプレーガン5に供給された塗料aの一部は開閉手段15の調節によりスプレーガン5内から吐出され、スプレーガン5で吐出されなかった残りの塗料a'は戻り管7により塗料回収タンク16に回収される。
【0044】
この時、霧化用エア供給装置13から霧化用エア14をスプレーガン5に供給すると、前記スプレーガン5に吐出された塗料は霧化用エア14により霧化されて先端5aから噴射されて塗装が行われる。この時、塗料供給タンク1及び塗料回収タンク16に備えた攪拌機10を攪拌用エア12により駆動して各タンク1,16内の塗料a,a'を攪拌しておくことにより、塗料a,a'の粉体が沈殿して分離する問題を生じることはない。
【0045】
上記したように圧送用エア3のエア圧力によって塗料aをスプレーガン5に供給している状態において、圧力計22からの圧力信号22aを入力している制御器21は、スプレーガン5内での塗料の吐出圧と大気圧との圧力差が所定の吐出差圧設定値25になるように、供給側圧力設定器4に制御信号19を送って、塗料供給タンク1の圧力を調整する。
【0046】
更に、制御器21は、圧力計23,24からの圧力信号23a,24aに基づいて、塗料供給タンク1と塗料回収タンク16との圧力差が所定のタンク間差圧設定値26になるように回収側圧力設定器17に制御信号20を送って塗料回収タンク16の圧力(負圧)を調節する。
【0047】
塗料回収タンク16内を負圧に調整すると、戻り管7内は吸引されるようになるため、塗料供給タンク1から圧送用エア3により加圧されてスプレーガン5に供給される塗料aの流速と、戻り管7が吸引されることによるスプレーガン5からの塗料の流速が制御されるようになり、スプレーガン5内部の塗料の流速を高めることができる。このように、塗料回収タンク16内の負圧によってスプレーガン5内部の塗料の流速を高める調節を行う際には、制御器21は、前記吐出差圧設定値25が維持されるように、前記回収側圧力設定手段18に制御信号19を送って塗料回収タンク16の圧力を設定圧になるように調整すると共に、供給側圧力設定器4に制御信号19を送って塗料供給タンク1の圧力の調整を行う。
【0048】
図2に示すように、塗料回収タンク16の圧力が大気圧P0以下の負圧P3となるため、塗料供給タンク1の供給圧P1(塗料の循環速度と相関関係にある)と前記塗料回収タンク16の負圧P3との間における大気圧P0との差である吐出圧P2'は、小さく設定できるようになる。
【0049】
従って、スプレーガン5からの吐出圧P2'を小さく保持しつつ、供給管6内の塗料aの流速を高い速度に保持することができので、供給管6内での塗料aの流動が安定し、よって、スプレーガン5から微流量の塗料を安定して吐出できるようになる。更に、供給管6内の塗料aの流速が高く保持されることにより、供給管6内での塗料aの沈殿が防止される。
【0050】
更に、戻り管7を吸引することによりスプレーガン5内部での塗料の流速が安定するようになるので、従来における塗料aの圧力変動といった問題が低減されて、スプレーガン5に微流量の塗料を更に安定して吐出できるようになる。
【0051】
上記したように、スプレーガン5に微流量の塗料を安定して精度良く吐出できるようになるので、スプレーガン5から微流量の塗料を噴射させて薄い塗装膜を重ね塗りするような場合の塗装品質を大幅に向上することができる。
【0052】
図3は、本発明の塗装装置を更に具体化した一例を示すものであり、図3では、前記スプレーガン5と、塗料供給タンク1と、塗料回収タンク16を防爆ブース27内に備えた場合を示している。又、前記塗料回収タンク16を吸引する減圧装置18'及び回収側圧力設定器17からなる回収側圧力設定手段18は防爆ブース27の外部に設けている。
【0053】
又、図3では、前記塗料供給タンク1と塗料回収タンク16との間は開閉弁28を有する循環流路29によって接続してあり、塗料供給タンク1と塗料回収タンク16には夫々レベル計50,51を設けている。更に、前記塗料供給タンク1には開閉弁30を有する洗浄水流路31によって洗浄水32が供給されるようになっており、更に、前記戻り管7には3方弁33を介して洗浄排水管34が接続されている。7'は3方弁33とスプレーガン5との間の戻り管、35は排水タンクである。
【0054】
又、前記スプレーガン5の塗料を噴射する先端5aの下部には、霧化用エア供給装置13からの霧化用エア14の供給が停止された状態で、スプレーガン5から塗料を吐出させた時に落下する塗料の液滴Xの滴下を検出するようにした投光器36と受光器37からなる光センサ38が設けてあり、この光センサ38によって検出した液滴Xの滴下信号38aは前記制御器21に入力されており、制御器21は液滴Xの滴下間隔に基づいてスプレーガン5から吐出される塗料の吐出量を計測するようになっている。
【0055】
又、防爆ブース27の外部に設けたエアパネル39には、工場エア40を取入れてドライヤ、エアフィルタ、ミストセパレータ等の浄化器41等を経た後、圧送用エア3として供給する前記圧送用エア供給装置2が構成されている。圧送用エア供給装置2の圧送用エア3は、前記供給側圧力設定器4を経た後、開閉弁42、流量計43を介してソレノイドバルブからなる切換弁44に導かれ、圧送用エア3は切換弁44によって前記塗料供給タンク1と塗料回収タンク16へ切り換えて供給できるようになっている。
【0056】
前記浄化器41からのエアの一部は、霧化用エア供給装置13の霧化用エア14としてスプレーガン5に供給されるようになっていると共に、シリンダ駆動エア45としてスプレーガン5に供給してニードル弁の位置を調節する開閉手段15を制御するようになっている。
【0057】
更に、前記浄化器41からのエアの一部は、切換弁46,47,48を介して弁操作エア49として前記開閉弁28,30及び3方弁33に供給されて弁の切り換えを行なうようになっている。又、前記工場エア40を取入れて浄化器41'等を経たエアは、前記攪拌用エア供給装置11の攪拌用エア12として攪拌機10に供給されて攪拌機10を駆動するようになっている。
【0058】
図3の構成において、前記塗料供給タンク1の塗料aをエア圧によってスプレーガン5に供給してスプレーガン5に吐出すると共に、霧化用エア供給装置13からの霧化用エア14をスプレーガン5に供給し、スプレーガン5から塗料を噴射させることにより塗装作業を行う。この時、スプレーガン5から吐出される塗料は僅かであって、大半の塗料は戻り管7により塗料回収タンク16に回収されるため、前記塗料供給タンク1内の塗料aのレベルは低くなる。塗料供給タンク1内の塗料aのレベルはレベル計50によって検出されているので、検出レベルが所定値まで低下した場合には、塗料回収タンク16の塗料a'を塗料供給タンク1に戻す循環を行う。
【0059】
循環を行うには、前記切換弁44を切り換えて前記塗料供給タンク1に供給していた圧送用エア3を塗料回収タンク16に供給するようにすると共に、開閉弁28を開いて循環流路29により塗料回収タンク16と塗料供給タンク1を連通させる。すると、塗料回収タンク16内が圧送用エア3によって加圧されることにより塗料回収タンク16の塗料a'は塗料供給タンク1に戻されるようになる。レベル計50による検出レベルが所定値まで上昇すると、前記循環は停止され、再び塗装作業を行う。
【0060】
又、上記塗装作業が終了して洗浄を行う場合には、先ず、開閉弁28を閉、開閉弁30を開、3方弁33が戻り管7,7'を連通させた状態として、洗浄水32を塗料供給タンク1に供給する。次に、開閉弁30を閉じた後、切換弁44により圧送用エア3を塗料供給タンク1に供給し、塗料供給タンク1を加圧することにより洗浄水をスプレーガン5を経て塗料回収タンク16に供給する。これにより、塗料供給タンク1とスプレーガン5は洗浄される。
【0061】
次に、開閉弁28を開、3方弁33が戻り管7を閉じた状態として、切換弁44により圧送用エア3を塗料回収タンク16に供給し、塗料回収タンク16を加圧することにより洗浄水を循環流路29を経て塗料供給タンク1に戻す。これにより塗料回収タンク16は洗浄される。続いて、開閉弁28を閉、開閉弁30を閉、3方弁33が戻り間7'と洗浄排水管34を連通させた状態として、切換弁44により圧送用エア3を塗料供給タンク1に供給し、塗料供給タンク1を加圧することにより塗料供給タンク1の洗浄水を供給管6、戻り管7'を経て洗浄排水管34から排水タンク35に排水する。又、上記洗浄操作が終了した後には、洗浄操作における洗浄水32の供給を停止した状態で、圧送用エア3を前記洗浄操作と同様に塗料供給タンク1と塗料回収タンク16に送ることにより、塗料供給タンク1、塗料回収タンク16、供給管6、戻り管7,7'等を乾燥させる乾燥操作を行うことができる。
【0062】
一方、図3の構成においては、スプレーガン5から滴下する液滴Xの滴下を検出する光センサ38を備えて、その滴下信号38aを制御器21に入力しているので、制御器21では、液滴Xの滴下間隔によって、スプレーガン5から吐出される塗料の吐出量を計測することができ、よって、図1の構成による作用に加え、計測した塗料の吐出量に基づいて前記塗料供給タンク1を加圧する圧力を調節することにより、スプレーガン5から吐出する塗料の吐出量を更に正確に制御することができる。
【0063】
尚、図3では省略したが、塗料回収タンク16の塗料a'を前記塗料供給タンク1に戻す循環制御、及び洗浄制御、更には霧化用エア14の供給制御、シリンダ駆動エア45の供給制御、攪拌用エア12の供給制御等を、前記制御器21によって一括して制御するようにしてもよい。
【0064】
図3の構成では、前記スプレーガン5と、塗料供給タンク1と、塗料回収タンク16を防爆ブース27内に備え、更に、塗料の供給をエア圧にて行うと共に、エアの供給を制御する切換弁44,46,47,48及び制御器21等を防爆ブース27の外部に設けるようにしているので、引火性の塗料を用いた塗装作業も安全に行うことができる。
【0065】
図4は、本発明の塗装装置を更に具体化した他の例を示すものであり、図3と異なる点は、前記塗料回収タンク16を昇降手段52により昇降可能に構成した塗料回収タンク16aとし、該塗料回収タンク16aを前記塗料供給タンク1より高い位置に上昇させることにより、塗料回収タンク16a内の塗料を重力によって塗料供給タンク1に戻すようにした点にある。従って、図4の構成では、図3における圧送用エア3によって塗料回収タンク16a内の塗料を塗料供給タンク1に戻すための構成は省略されている。図4の構成によれば、塗料回収タンク16a内の塗料を塗料供給タンク1に戻すための操作が容易になる。
【0066】
尚、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
1 塗料供給タンク
2 圧送用エア供給装置
3 圧送用エア
4 供給側圧力設定器
5 スプレーガン
6 供給管
7 戻り管
13 霧化用エア供給装置
14 霧化用エア
16 塗料回収タンク
16a 塗料回収タンク
17 回収側圧力設定器
18 回収側圧力設定手段
18' 減圧装置
19 制御信号
20 制御信号
21 制御器
25 吐出差圧設定値
26 タンク間差圧設定値
27 防爆ブース
29 循環流路
52 昇降手段
a 供給側の塗料
a' 戻り側の塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料供給タンクに圧力を調整した圧送用エアを供給することにより塗料供給タンク内の塗料をスプレーガンに供給し、塗料の一部をスプレーガンから吐出することにより霧化用エアにより噴射させ、スプレーガンから吐出されない塗料は戻り管により回収するようにしている塗装装置の噴射量制御方法であって、
前記戻り管を塗料回収タンクに接続し、
該塗料回収タンクの圧力を設定して前記塗料供給タンク内の圧力と塗料回収タンク内の圧力との圧力差を調節することによりスプレーガンに供給する塗料の流速を調節する
ことを特徴とする塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項2】
前記塗料回収タンクを減圧することを特徴とする請求項1に記載の塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項3】
前記スプレーガンの塗料の吐出圧と大気圧との圧力差が吐出差圧設定値になるように前記圧力差を調節することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項4】
前記スプレーガンに吐出される塗料の吐出量を計測し、計測した塗料の吐出量に基づいて前記圧送用エアの圧力を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項5】
前記塗料回収タンクの塗料を塗料供給タンクに戻して循環使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項6】
前記スプレーガンと、塗料供給タンクと、塗料回収タンクは防爆ブース内に備えられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項7】
塗料を収容する塗料供給タンクと、該塗料供給タンクに供給する圧送用エアの圧力を設定する供給側圧力設定器と、圧送用エアにより塗料供給タンクから供給される塗料の一部を吐出させ吐出しない塗料は戻り管に流動させるスプレーガンとを有する塗装装置の噴射量制御装置であって、
前記戻り管に接続された塗料回収タンクと、
該塗料回収タンクに備えた回収側圧力設定手段と、
タンク間差圧設定値に基づき塗料供給タンクと塗料回収タンクの圧力差を制御する制御器と、
を有することを特徴とする塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項8】
前記回収側圧力設定手段が、塗料回収タンクの圧力を負圧に調節するための減圧装置であることを特徴とする請求項7に記載の塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項9】
前記制御器が、スプレーガン内の吐出圧と大気圧との圧力差を吐出差圧設定値に調節するようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載の塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項10】
前記スプレーガンから塗料を吐出させた時の吐出量を検出する吐出量検出装置を備え、該吐出量検出装置の吐出量検出値を前記制御器に入力して該吐出量検出値に基づき前記圧送用エアの圧力を調節するようにしたことを特徴とする請求項7〜9に記載の塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項11】
前記塗料回収タンクの塗料を塗料供給タンクに戻す循環流路によって塗料回収タンクと塗料供給タンクの間を接続したことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載の塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項12】
前記塗料回収タンクに前記圧送用エアを供給して塗料回収タンクの塗料を塗料供給タンクに戻すようにしたことを特徴とする請求項11に記載の塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項13】
前記塗料回収タンクを昇降可能に構成し、該塗料回収タンクを上昇させることにより塗料回収タンク内の塗料を重力によって塗料供給タンクに戻すようにしたことを特徴とする請求項11に記載の塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項14】
前記スプレーガンと、塗料供給タンクと、塗料回収タンクは防爆ブース内に備えられていることを特徴とする請求項7〜13のいずれか1つに記載の塗装装置の噴射量制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−255079(P2009−255079A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80056(P2009−80056)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】