説明

塗装装置

【課題】 簡単な構造でありながら、外壁材等の被塗装材の形状に応じた塗装ガンの切替え動作を正確且つ容易に行うことができ、塗装効率及び塗装精度を向上させることができる塗装装置を提供する。
【解決手段】 コンベア(50)等によって搬送される被塗装材(51)(52)に対して、塗装ガン(2)(2)…を被塗装材(51)(52)の搬送方向に対して略直交する横方向に向けて相対的に移動させながら塗装を行う塗装装置(1)において、前記塗装ガン(2)(2)…を支持するリンク機構(21)(21)と、このリンク機構(21)(21)を作動させて、塗装ガン(2)(2)…の鉛直方向に対する前記横方向への傾きが切り替わるように塗装ガン(2)(2)…を移動させるためのシリンダ(26)(26)と、このシリンダ(26)(26)の伸縮状態を切り替えるための操作部(39)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として、単一の塗装ラインによって搬送される平面用の外壁材とコーナー用の外壁材を塗装するのに適した塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の外壁材の塗装装置として、例えば下記の特許文献1に記載されているように、コンベアの上方に設けた塗装ガンを横方向に往復動させながら、コンベアによって搬送される外壁材を塗装するものが知られている。
【0003】
この種の塗装装置において、平面用の外壁材(平物)とコーナー用の外壁材(役物)とを同一のコンベアによって搬送して塗装する場合は、塗装ガンの位置や角度を固定したままにしていると、平物と役物とで塗装ガンからの距離や吹き付け角度が変わって、平物における塗装状態と役物における塗装状態が異なってしまうといった不具合を生じる。
【0004】
そこで、これら双方の塗装状態がほぼ同じになるように、平物塗装時と役物塗装時で、作業者が手動で塗装ガンの位置及び角度を適宜切り替えていた。このため、平物と役物とを同一のコンベアによって搬送して塗装する場合には、塗装効率の悪化を招いていた。また、手動による切替え作業では、塗装ガンの位置決めにバラツキが生じやすく、塗装精度が悪いといった不具合があった。
【0005】
これに対して、下記の特許文献2に記載された塗装装置では、多関節ロボットを複雑に制御させて、そのロボット先端の塗装ガンの位置や角度を自動的に切り替えながら塗装することで、同一のコンベアによって搬送される平物と役物の塗装に際して、塗装作業の効率化及び塗装精度の向上が図られている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−167314号公報
【特許文献2】特開平10−180178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の特許文献2のような多関節ロボットを使用した塗装装置は、極めて複雑な構造を有するため、設備費が高騰してしまう欠点があった。
【0008】
そこで、この発明は、上記のような不具合を解消して、簡単な構造でありながら、外壁材等の被塗装材の形状に応じた塗装ガンの切替え動作を正確且つ容易に行うことができ、塗装効率及び塗装精度を向上させることができる塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明における塗装装置は、コンベア等によって搬送される被塗装材に対して、塗装ガンを被塗装材の搬送方向に対して略直交する横方向に向けて相対的に移動させながら塗装を行う塗装装置であって、前記塗装ガンを支持するリンク機構と、このリンク機構を作動させて、塗装ガンの鉛直方向に対する前記横方向への傾きが切り替わるように塗装ガンを移動させるためのシリンダと、このシリンダの伸縮状態を切り替えるための操作部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、前記操作部の操作に伴って、塗装ガンからの塗料噴出量が切替え可能となっている。
【0011】
さらに、前記塗装ガンを鉛直方向に沿って上下動させるための上下動機構を備えている。
【0012】
さらにまた、前記塗装ガンを前記横方向に往復動させるための移動機構を備え、前記リンク機構は、一端部が前記移動機構に連結された一対のリンク杆と、これらリンク杆の他端部同士を連結する連結杆とを備え、リンク杆の一端部が前記移動機構に回転自在に取り付けられ、リンク杆の他端部が連結杆に回転自在に取り付けられている。
【0013】
また、前記シリンダは、シリンダ本体又はロッドのうち一方が前記移動機構に回転自在に取り付けられ、他方が前記リンク機構に回転自在に取り付けられている。
【0014】
さらに、前記リンク機構が一対設けられ、それらリンク機構によって支持された塗装ガンを、相反する方向に傾けてある。
【0015】
さらにまた、前記塗装ガンにおける塗料噴出角度が、鉛直方向に対して前記横方向へ略25度傾いた第1の角度と、鉛直方向に対して前記横方向へ略45度傾いた第2の角度の少なくとも2段階で切替え可能となるように、前記塗装ガンを移動させるようにした。
【0016】
また、前記一対のリンク機構に支持された塗装ガン間の前記横方向の間隔が、前記第1の角度のときよりも前記第2の角度のときの方が大となるように、前記塗装ガンを移動させるようにした。
【発明の効果】
【0017】
この発明における塗装装置は、操作部を操作するだけで、塗装ガンの傾きと位置を正確且つ容易に切り替えることができる。従って、平面用の外壁材(平物)とコーナー用の外壁材(役物)等の形状の異なる被塗装材を同一の塗装ラインによって搬送しても、それら被塗装材の形状に応じた切替え動作を正確且つ容易に行うことができるため、塗装効率及び塗装精度の向上を図ることができる。
【0018】
しかも、リンク機構及びシリンダによって塗装ガンの傾きと位置を切り替えるため、多関節ロボットを用いるときと比べて、構造を簡単にすることができ、設備費を安価に抑えることができる。
【0019】
また、操作部の操作に伴って、塗装ガンからの塗料噴出量を切り替えたり、上下動機構によって塗装ガンを上下動させることで、被塗装材の塗装状態を微調整することができ、各種状況に柔軟に対応することができる。
【0020】
さらにまた、一対のリンク機構によって支持された塗装ガンを、相反する方向に傾けて設けることで、役物等の被塗装材における角度の異なる2つの塗装面に対して、塗着量がどちらかの塗装面に偏ることなく、良好に塗料を吹き付けることができる。
【0021】
また、塗装ガンにおける塗料噴出角度が、鉛直方向に対して横方向へ略25度傾いた例えば平物の塗装に適した第1の角度と、鉛直方向に対して横方向へ略45度傾いた例えば役物の塗装に適した第2の角度の少なくとも2段階で切替え可能となっている。したがって、塗料噴出角度を、平物の塗装時は第1の角度となるように、役物の塗装時は第2の角度となるように適宜切り替えることで、平物と役物のいずれについても最適な塗料噴出角度で良好に塗装できるとともに、平物と役物とで略同様の塗装状態を得ることができる。
【0022】
さらに、一対のリンク機構に支持された塗装ガン間の横方向の間隔が、第1の角度のときよりも第2の角度のときの方が大きくなるため、塗装ガンにおける塗料噴出角度が変わっても、それら塗装ガンから噴出される塗料を、横方向に拡がらないように被塗装材の塗装面に集中させて、効率の良い塗装が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る塗装装置(1)は、図2乃至図4に示すように、コンベア(50)によって搬送される被塗装材(51)(52)に対して、複数の塗装ガン(2)(2)…を被塗装材(51)(52)の搬送方向に略直交する横方向、すなわち左右方向(図に示す矢印A方向)に往復動させながら、塗装ガン(2)(2)…より塗料を噴出させて塗装を行うものである。なお、ここでいう略直交する横方向には、厳密に直交する方向に限られず、若干前後にずれた方向も含まれる。
【0024】
被塗装材(51)(52)は、平面用として用いられる平板状の外壁材(平物)(51)、及び入隅や出隅のコーナー用として用いられるL字状の外壁材(役物)(52)であって、これら平物(51)及び役物(52)が、同一のコンベア(50)によって搬送されるようになっている。なお、入隅用の役物(52)は、搬送方向から見て略V字状となるような状態で塗装を行うため、その状態で安定して搬送するための専用の支持台(55)上に載置され、嵩上げされた状態で搬送される。
【0025】
塗装装置(1)は、図1に示すように、塗装ガン(2)(2)…を左右方向に往復動させるための移動機構(3)と、塗装ガン(2)(2)…を鉛直方向に沿って上下動させるための上下動機構(4)と、塗装ガン(2)(2)…の傾きを調節する傾き調節機構(5)とを備えている。
【0026】
移動機構(3)は、工場内の天板(60)の上側に設けられた走行体(10)と、その走行体(10)によって上下動自在に支持されるとともに、天板(60)の横溝(61)を貫通した左右一対の縦材(11)(11)と、それら縦材(11)(11)の下端に跨って取り付けられた横材(12)とを備えている。
【0027】
走行体(10)は、図示しない駆動モータによって駆動されて、天板(60)上面に設けられた左右方向のレール溝(62)(62)に沿って往復動するようになっている。なお、移動機構(3)は、このような構造のものだけに限定されるものではない。
【0028】
上下動機構(4)は、走行体(10)に設けられた駆動モータ(15)と、この駆動モータ(15)の駆動軸(16)に連結されたピニオン(17)と、このピニオン(17)に噛み合うように一方の縦材(11)の側面に設けられたラック(18)とからなる。
【0029】
そして、駆動モータ(15)によりピニオン(17)を回転駆動させることで、ピニオン(17)に噛み合うラック(18)が上下方向に移動して、縦材 (11)が走行体(10)に対して上下動することで、塗装ガン(2)(2)を鉛直方向に沿って上下動させることができるようになっている。なお、上下動機構(4)は、このような構造のものだけに限定されるものではない。
【0030】
傾き調節機構(5)は、塗装ガン(2)(2)…を支持する左右一対のリンク機構(21)(21)と、これらリンク機構(21)(21)を作動させて、塗装ガン(2)(2)…の鉛直方向に対する左右方向への傾きが切り替わるように塗装ガン(2)(2)…を移動させるためのシリンダ(26)(26)とからなる。
【0031】
一対のリンク機構(21)(21)のうち一方のリンク機構(21)は、図2及び図3に示すように、移動機構(3)の横材(12)における搬送方向から見た中央より左側の部分に連結され、他方のリンク機構(21)は、横材(12)の中央より右側の部分に連結されている。
【0032】
それぞれのリンク機構(21)は、一端部が移動機構(3)に連結された左右一対のリンク杆(22)(22)と、これらリンク杆(22)(22)の他端部同士を連結する連結杆(23)とを備え、リンク杆(22)(22)の一端部が、移動機構(3)の横材(12)に対して回転自在に取り付けられ、リンク杆(22)(22)の他端部が、連結杆(23)に対して回転自在に取り付けられている。
【0033】
左側のリンク機構(21)を作動させるシリンダ(26)は、シリンダ本体(27)が移動機構(3)における横材(12)の右端部に回転自在に取り付けられ、ロッド(28)が左側のリンク機構(21)における右側のリンク杆(22)中央に回転自在に取り付けられている。
【0034】
他方、右側のリンク機構(21)を作動させるシリンダ(26)は、シリンダ本体(27)が移動機構(3)における横材(12)の左端部に回転自在に取り付けられ、ロッド(28)が右側のリンク機構(21)における左側のリンク杆(22)中央に回転自在に取り付けられている。
【0035】
なお、これらシリンダ(26)(26)は、ロッド(28)(28)が移動機構(3)に取り付けられ、シリンダ本体(27)(27)がリンク機構(21)(21)に取り付けられるようにしても良い。
【0036】
そして、搬送方向から見て左側のリンク機構(21)およびこれを作動させるシリンダ(26)と、右側のリンク機構(21)およびこれを作動させるシリンダ(26)とは、互いに前後にずらした位置に設けられ、左右のリンク機構(21)(21)及びシリンダ(26)(26)が、互いに干渉しないようになっている。また、一対のシリンダ(26)(26)は、搬送方向から見てX字状に交差した取付け状態となっている。
【0037】
各リンク機構(21)(21)の連結杆(23)(23)には、搬送方向に沿った水平シャフト(31)(31)がそれぞれ連結されている。これら水平シャフト(31)(31)は互いに平行に配され、各水平シャフト(31)(31)には、吊下げシャフト(32)(32)を介して例えば一対の塗装ガン(2)(2)がそれぞれ吊り下げ支持されている。それら一対の塗装ガン(2)(2)は、搬送方向に間隔を空けた状態で、且つ、高さ及び鉛直方向に対する左右方向への傾きが互いに略等しい状態で配置されている。ただし、それぞれのリンク機構(21)に支持される塗装ガン(2)の個数は、特に限定されるものではない。
【0038】
また、左右両側の塗装ガン(2)(2)…は、図4に示すように、上方から見て千鳥状に配置され、左側のリンク機構(21)に支持された塗装ガン(2)(2)と、右側のリンク機構(21)に支持された塗装ガン(2)(2)とは、図2及び図3に示すように、高さが互いに略等しく、相反する方向に傾けられた状態となっている。
【0039】
すなわち、左側の塗装ガン(2)(2)からの塗料噴出角度と、右側の塗装ガン(2)(2)からの塗料噴出角度とは、鉛直方向に対する左右方向への傾きが互いに略等しくなっている。それら左右の塗装ガン(2)(2)から噴出した塗料は、搬送方向から見ると下方に向かうに連れて集束するような状態で、コンベア(50)に搬送された外壁材(51)(52)に吹き付けられるようになっている。
【0040】
また、例えばコンベア(50)の横に設置された操作ボックス(40)には、図5に示すように、上記の移動機構(3)の駆動モータを作動させるための操作スイッチ(36)と、上下動機構(4)の駆動モータ(15)を作動させるための上昇用及び降下用の操作スイッチ(37)(38)と、傾き調節機構(5)のシリンダ(26)(26)の伸縮状態を切り替えるための操作部としての操作スイッチ(39)とが設けられている。
【0041】
なお、傾き調節機構(5)用の操作スイッチ(39)は、シリンダ(26)(26)への油圧の供給を切り替える図示しない電磁弁に接続されており、操作スイッチ(39)を操作して電磁弁を作動させることで、シリンダ(26)(26)のロッド(28)(28)が伸長又は収縮するようになっている。
【0042】
この操作スイッチ(39)の操作によって、シリンダ(26)(26)のロッド(28)(28)を収縮させた状態では、図2に示すように、左右のリンク機構(21)(21)の左右方向の間隔が狭くなって、左右の塗装ガン(2)(2)…が比較的近接した状態となり、その塗料噴出角度が、鉛直方向に対して左右方向へ略25度傾いた第1の角度(α)となる。
【0043】
この第1の角度(α)は、平物(51)の塗装に適した角度となっている。塗装ガン(2)(2)…の傾きを第1の角度(α)にした状態で平物(51)を塗装する際は、コンベア(50)に搬送される平物(51)の塗装面に対して、左右の塗装ガン(2)(2)…から噴出される塗料が、左右方向に拡がらないように集中して塗着されるようになっている。
【0044】
他方、操作スイッチ(39)の操作によって、シリンダ(26)(26)のロッド(28)(28)を伸長させた状態では、図3に示すように、左右のリンク機構(21)(21)の左右方向の間隔が拡がって、左右の塗装ガン(2)(2)…が比較的離間した状態となり、その塗料噴出角度が、鉛直方向に対して左右方向へ略45度傾いた第2の角度(β)となる。
【0045】
この第2の角度(β)は、役物(52)の塗装に適した角度となっている。塗装ガン(2)(2)…の傾きを第2の角度(β)にした状態で入隅用の役物(52)を塗装する際は、コンベア(50)に搬送される役物(52)の2つの塗装面(53)(54)のうち一方の塗装面(53)が、右側の塗装ガン(2)(2)から噴出される塗料によってのみ塗装され、他方の塗装面(54)が、左側の塗装ガン(2)(2)から噴出される塗料によってのみ塗装される。
【0046】
このとき、左右の塗装ガン(2)(2)…間の左右方向の間隔は、第1の角度(α)のときよりも大きくなっている。したがって、平物(51)塗装時と同様に、コンベア(50)に搬送される役物(52)の塗装面(53)(54)に対して、左右の塗装ガン(2)(2)…から噴出される塗料が、左右方向に拡がらないように集中して塗着されるようになっている。
【0047】
このように、塗装ガン(2)(2)…における塗料噴出角度が、第1の角度(α)と第2の角度(β)の2段階で切替え可能となっており、塗料噴出角度の切替えに伴って、左右の塗装ガン(2)(2)…間の左右方向の間隔が切り替わるため、同一のコンベア(50)で平物(51)と役物(52)を搬送しても、それらの外壁材(51)(52)の形状に応じて、塗装ガン(2)(2)の位置と、塗装ガン(2)(2)…からの塗料噴出方向とを適宜切り替えることができるため、いずれの外壁材(51)(52)も適切に塗装できるようになっている。
【0048】
なお、第1の角度(α)及び第2の角度(β)は、必ずしも上記のように25度及び45度に設定しなくても良く、平物(51)や役物(52)の塗装が適切に行える角度であれば良い。また、塗装ガン(2)(2)…における塗料噴出角度は、2段階に切替え可能なだけでなく、外壁材の形状に応じて3段階以上に切替え可能としても良い。
【0049】
また、傾き調節機構(5)用の操作スイッチ(39)を操作すると、塗装ガン(2)(2)…への塗料の供給量が切り替えられて、塗装ガン(2)(2)…からの塗料噴出量が切り替えられるようになっている。
【0050】
具体的には、塗料噴出量は、塗料噴出角度が第2の角度(β)であるときに、第1の角度(α)であるときの略2倍となるように切り替わるようになっている。したがって、役物(52)を塗装する際は、その役物(52)における左右それぞれの塗装面(53)(54)が、上記のように左右の一方の塗装ガン(2)(2)によってのみ塗装されるが、塗料噴出量が、平物(51)を塗装する場合に比べて略2倍となっているため、単位面積当たりの塗着量が、平物(51)を塗装する場合と略等しくなるようになっている。
【0051】
このように、傾き調節機構(5)用の操作スイッチ(39)を操作すると、塗料噴出方向が切替わるのに伴って、塗装ガン(2)(2)…からの塗料噴出量も切り替わるようになっているため、平物(51)と役物(52)とで略同じ塗装状態で良好に塗装できるようになっている。
【0052】
以下、上記の塗装装置(1)を用いて外壁材(51)(52)を塗装する方法について説明する。なお、図4及び図5に示すように、塗装装置(1)の搬送方向上流側には画像センサ(41)が設けられ、この画像センサ(41)により、コンベア(50)の上方から外壁材(51)(52)が撮影されて、その撮影された画像の濃淡により外壁材(51)(52)の左右方向の幅寸法が検出されるようになっている。また、コンベア(50)には、搬送方向における画像センサ(41)と塗装装置(1)との間に、外壁材(51)(52)の通過を検知するための検知センサ(42)(42)が設けられている。
【0053】
先ず、コンベア(50)によって流されてくる外壁材が、平物(51)であるか又は役物(52)であるかを、作業者が目視により確認する。
【0054】
そして、平物(51)が流れてきた場合は、傾き調節機構(5)用の操作スイッチ(39)を操作して、塗料噴出角度が第1の角度(α)となるように、塗装ガン(2)(2)…の傾き及び位置を切り替えるとともに、必要に応じて、上下機構(4)用の操作スイッチ(37)(38)を操作して、塗装ガン(2)(2)…の高さを微調節する。ただし、塗料噴出角度が予め第1の角度(α)となっている場合は、傾き調節機構(5)用の操作スイッチ(39)を操作する必要はない。
【0055】
その後、平物(51)が画像センサ(41)の位置まで流れると、画像センサ(41)により平物(51)の左右方向の幅寸法が検出されて、平物(51)の幅寸法に応じた所定の塗装タイミングが設定される。そして、検知センサ(42)(42)により平物(51)の通過が検知されると、所定時間経過後に、左右方向に往復動している塗装ガン(2)(2)…から塗料が噴出される。
【0056】
この塗装の際、塗装ガン(2)(2)…からは、平物(51)の幅寸法に応じた所定のタイミングで断続的に塗料が噴出され、無駄な塗料の噴出が避けられるようになっている。そして、平物(51)の塗装面は、搬送方向に間隔を空けて設けられた4つの塗装ガン(2)(2)…によって重ね塗りされるようになっている。
【0057】
他方、役物(52)が流れてきた場合は、操作スイッチ(39)を操作して、塗料噴出角度が第2の角度(β)となるように、塗装ガン(2)(2)…の傾き及び位置を切り替えるとともに、必要に応じて、上下機構(4)用の操作スイッチ(37)(38)を操作して、塗装ガン(2)(2)…の高さを微調節する。
【0058】
その後、役物(52)が画像センサ(41)の位置まで流れると、上記と同様に、役物(52)の左右方向の幅寸法が検出されて、その役物(52)の幅寸法に応じた所定のタイミングで塗装が行われ、役物(52)の2つの塗装面(53)(54)が、それぞれ搬送方向に間隔を空けて設けられた2つの塗装ガン(2)(2)…によって重ね塗りされるようになっている。
【0059】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、この発明の塗装装置は、外壁材に限られず、外壁材以外の建材や、建材以外の被塗装材を塗装するのに用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の一実施形態に係る塗装装置を示す斜視図である。
【図2】塗料噴出角度を第1の角度にした状態の塗装装置を示す正面図である。
【図3】塗料噴出角度を第2の角度にした状態の塗装装置を示す正面図である。
【図4】塗装装置を示す平面図である。
【図5】塗装装置を横方向からみた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0061】
(1) 塗装装置
(2) 塗装ガン
(3) 移動機構
(4) 上下動機構
(21) リンク機構
(22) リンク杆
(23) 連結杆
(26) シリンダ
(27) シリンダ本体
(28) ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア等によって搬送される被塗装材に対して、塗装ガンを被塗装材の搬送方向に対して略直交する横方向に向けて相対的に移動させながら塗装を行う塗装装置であって、前記塗装ガンを支持するリンク機構と、このリンク機構を作動させて、塗装ガンの鉛直方向に対する前記横方向への傾きが切り替わるように塗装ガンを移動させるためのシリンダと、このシリンダの伸縮状態を切り替えるための操作部とを備えていることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記操作部の操作に伴って、塗装ガンからの塗料噴出量が切替え可能となっている請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
前記塗装ガンを鉛直方向に沿って上下動させるための上下動機構を備えている請求項1又は2記載の塗装装置。
【請求項4】
前記塗装ガンを前記横方向に往復動させるための移動機構を備え、前記リンク機構は、一端部が前記移動機構に連結された一対のリンク杆と、これらリンク杆の他端部同士を連結する連結杆とを備え、リンク杆の一端部が前記移動機構に回転自在に取り付けられ、リンク杆の他端部が連結杆に回転自在に取り付けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項5】
前記シリンダは、シリンダ本体又はロッドのうち一方が前記移動機構に回転自在に取り付けられ、他方が前記リンク機構に回転自在に取り付けられている請求項4記載の塗装装置。
【請求項6】
前記リンク機構が一対設けられ、それらリンク機構によって支持された塗装ガンを、相反する方向に傾けてある請求項1乃至5のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項7】
前記塗装ガンにおける塗料噴出角度が、鉛直方向に対して前記横方向へ略25度傾いた第1の角度と、鉛直方向に対して前記横方向へ略45度傾いた第2の角度の少なくとも2段階で切替え可能となるように、前記塗装ガンを移動させるようにした請求項6記載の塗装装置。
【請求項8】
前記一対のリンク機構に支持された塗装ガン間の前記横方向の間隔が、前記第1の角度のときよりも前記第2の角度のときの方が大となるように、前記塗装ガンを移動させるようにした請求項7記載の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−175395(P2006−175395A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373136(P2004−373136)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】