説明

塩基で活性化された炭素の製造方法

特に二重層コンデンサにおける使用に適した、活性化された炭素の製造方法は、以下の工程:a)好ましくは粉末状の炭素材料と、塩基と、前記塩基に対して化学的に不活性な親水性ポリマーとの混合物を製造する工程、b)工程a)において製造された混合物をブリケットにプレスする工程及びc)工程b)において製造されたブリケットを活性化させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に二重層コンデンサにおける使用に適した、活性化された炭素の製造方法に関する。
【0002】
活性化された炭素もしくは活性炭は、その高い多孔度に基づき、主に吸着材料として、特に望ましくない色素、味覚物質及び/又はにおい物質をガス及び液体から除去するため、例えば廃水浄化の際又は空気浄化の際に、使用される。その際に、活性化された前記炭素は、用途に応じて、粒状物(Granulat)、粉末又はペレットの形で使用されることができる。
【0003】
それとは別に、活性化された炭素は、同様にその高い多孔度に基づき、電極材料として、例えば二重層コンデンサにおいて使用され、これらのコンデンサは、それらの大きなエネルギー密度に基づき、ますます重要になってきている。そのような二重層コンデンサは、互いにセパレータにより隔てられ、それぞれ電解質で湿らされた2個の電極から構成されている。前記コンデンサの大きなエネルギー密度を達成するために、二重層コンデンサにおいて使用される電極は、高い多孔度に加え、できるだけ高い密度を有していなければならない。
【0004】
活性化された炭素の製造は、一般的に600〜1000℃での酸化的熱活性化により行われ、その間に前記炭素の一部が一酸化炭素に変換され、それにより前記炭素中に追加の細孔が生じ、それにより前記炭素の表面積が増大される。その際に、前記酸化的熱活性化は通常、強塩基、好ましくは水酸化カリウム又は他のアルカリ金属水酸化物の存在下で行われ、したがって、そのような方法を用いて製造された活性化された炭素は、アルカリ又は塩基で活性化された炭素とも呼ばれる。
【0005】
アルカリもしくは塩基、例えば水酸化カリウムで炭素を活性化する場合の問題は、塩基での炭素の前記酸化的熱処理の際に、前記塩基の還元生成物が、水酸化カリウムの場合に著しく腐食性であり、ひいては前記活性化が実施される装置の腐食をまねく金属カリウムが、形成されることにある。
【0006】
この腐食の問題点を低下させるために、欧州特許出願公開(EP-A1)第1 498 389号明細書には、活性化された炭素の製造方法が提案されており、前記方法の場合に、粉末状の炭素材料、例えば粉末化されたピッチ繊維が、水酸化カリウム粒子と混合された後、こうして製造された混合物が、少なくとも80℃の温度で及び好ましくは減圧下で、最大50mmの平均粒径を有する粒状物粒子の形成下に粒状化され、引き続き、前記粒状物粒子が、少なくとも200℃の温度で好ましくは減圧下で脱水され、かつ脱水された前記粒状物粒子が、ついで500〜900℃の温度で窒素流下で活性化される。引き続き、活性化された前記炭素粒子は、場合によりバインダー及び充填剤と共に、電極に成形されることができる。そのうえ、この刊行物には代替的な方法が記載されており、前記方法の場合に、まず最初に、粉末状の炭素材料及び水酸化カリウムの混合物が、最大300℃での熱処理にかけられた後、こうして処理された混合物が、加圧成形(Druckformen)により最大20mmの直径を有するペレットにプレスされ、これらのペレットが、ついで600〜1 000℃の温度で窒素流下に熱処理にかけられる。引き続き、前記ペレットは、水で、ついで希塩酸で、そしてまた水で洗浄され、例えば20μmの粒径を有する活性化された炭素粒子が得られる。
【0007】
欧州特許出願公開(EP-A1)第1 498 389号明細書に記載された方法の場合に、水酸化カリウム溶融物での前記活性化が行われる相応する方法と比較して、活性化された前記炭素が製造される装置のより少ない腐食が生じるにも拘わらず、これらの方法の場合にそれにも拘わらず腐食性カリウム蒸気が形成され、かつ前記活性化の際に窒素流により前記装置中に拡散されるので、前記カリウムは、前記装置のより冷たい領域内で豊富化し、そこで腐食をまねく。それとは別に、この方法は特に、好ましくは高められた温度で及び減圧下で行われる前記粒状物形成の必要性に基づいて、極めて費用がかかる。
【0008】
本発明の課題は、故に、単純に実施されうる活性化された炭素の製造方法を提供することであり、前記方法の場合に、前記炭素が活性化される装置中での腐食が確実に防止され、かつ前記方法を用いて、二重層コンデンサにおける使用に卓越して適した密度及び多孔度を有する活性化された炭素が得られる。
【0009】
本発明によれば、この課題は、以下の工程:
a)炭素材料と、塩基と、前記塩基に対して化学的に不活性な親水性ポリマーとの混合物を製造する工程、
b)工程a)において製造された混合物をブリケットにプレスする工程及び
c)工程b)において製造されたブリケットを活性化させる工程
を含む、活性化された炭素の製造方法により解決される。
【0010】
この解決手段は、まず最初に、好ましくは粉末状の炭素材料と、塩基と、前記塩基に対して化学的に不活性な親水性ポリマーとの混合物が製造され、かつブリケットにプレスされた後、このブリケットが酸化的に熱活性化される方法によって、前記活性化が実施される装置中での前記塩基の還元生成物、例えば蒸気カリウムの形成及び分布が、確実に回避されるという意外な知見に基づく。このことは、一方では、前記活性化中及び前記活性化後に、ブリケットと比較して質量あたりのその高い表面積に基づき前記活性化の際に支配的な高い温度の間に容易にカリウム蒸気が漏出しうる粉末が取り扱われないことにある。そのうえ、前記混合物をプレスする際に前記親水性ポリマーの前記添加により、特に前記活性化の際に支配的な高い温度の間にも形状安定で緻密なブリケットが得られる、それというのも、前記ポリマーは、意外なことにバインダーとして作用する、すなわち、前記炭素材料粒子及び塩基粒子を互いに結合させるからである。この理由から、前記ブリケットの崩壊は、前記活性化の際に支配的な高い温度の間にも確実に防止される。安定な前記ブリケットにより、前記活性化中に前記試薬との緊密な接触が可能になり、かつそれにより、前記活性化中に、より高い反応性もしくは使用される前記塩基の高い利用が達成されるので、本発明による方法の場合に、比較的少ない量の塩基のみが使用されることが必要になる。さらに、本発明による方法の場合に、前記活性化は、ガス流、例えば窒素流下に、行われる必要はない;むしろ、前記活性化中の不活性化は、前記炭素材料及び前記親水性ポリマーの熱分解ガスにより自発的に行われるので、前記装置中に存在しているカリウム蒸気は、前記装置中で拡散されることができない。本発明による方法のさらなる利点は、前記ブリケットの自由に選択可能なサイズにあり、このことは、前記方法に、大きなフレキシビリティーを付与する。そのうえ、この方法を用いて、特に極めて大きなプレートも製造されることができ、このことは、その炉空間の効率的な負荷を可能にする。
【0011】
本発明による方法の処理工程a)において使用される炭素材料とは、本発明の意味で、多量の炭素を含有するあらゆる材料、特に、少なくとも70質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%及び極めて特に好ましくは少なくとも90質量%が炭素からなる材料であると理解される。
【0012】
そのうえ、本発明の意味で、親水性ポリマーとは、23℃で10g/lの水への溶解度を有する23℃で液状のポリマーであるか又は90°未満の水に対する接触角を有する23℃で固形のポリマーであると理解される。そのうえ、本発明の意味でのポリマーという概念は、狭義のポリマーに加えて、オリゴマーも包含する。
【0013】
使用される前記塩基に対して化学的に不活性なポリマーとは、本発明の意味で、これが200℃で24時間、前記塩基と接触して存在する場合に、前記塩基と反応せず、かつ特に分解、特に鎖の短縮を受けないポリマーであると理解される。そのうえ、化学的に不活性な前記ポリマーは好ましくは、これが200℃で24時間、前記塩基と接触して存在する場合に、結合特性の損失を受けない。
【0014】
好ましくは、処理工程a)、b)及びc)は、直接続けて、すなわち別の中間工程なしに行われ、すなわち処理工程a)において製造された混合物及び処理工程b)において製造されたブリケットも、中間工程なしに、特に脱水工程及び/又は粒状化工程なしに、処理工程b)にもしくは処理工程c)にかけられる。それにより、単純に、迅速にかつ費用がかからずに、活性化された炭素が製造されることができる。
【0015】
本発明によれば、処理工程a)において、使用される前記塩基に対して化学的に不活性なあらゆる親水性オリゴマー又はポリマーが使用されることができる。良好な結果は、例えば、親水性ポリマーとしてポリエーテル又は好ましくはポリエーテルポリオールが使用される場合に、達成される。
【0016】
本発明思想のさらなる展開において、処理工程a)において、親水性ポリマーとして、一般式I:
HO(−R−O−)nH (I)
[式中、
nは、2〜100 000、好ましくは2〜1 000及び特に好ましくは100〜600の整数であり、かつRは、直鎖状又は分枝鎖状の、場合により1個又はそれ以上のヒドロキシル基で置換されたアルキレン基、好ましくは場合により1個又はそれ以上のヒドロキシル基で置換されたC1〜C15−アルキレン基及び特に好ましくは場合により1個又はそれ以上のヒドロキシル基で置換されたC1〜C10−アルキレン基である]によるポリエーテルポリオールを使用することが提案される。これら全てのポリエーテルポリオールは、通常の塩基に対して化学的に不活性であり、かつ本発明による方法にとって十分な親水性を有する。
【0017】
一般式Iによる特に好ましいポリエーテルポリオールは、基Rとして、場合により1個又はそれ以上のヒドロキシル基で置換されているC1〜C6−アルキレン基を有するもの、すなわちポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンチレングリコール、ポリヘキシレングリコール、ポリグリセリン及び前記の化合物2種又はそれ以上の任意の混合物からなる群から選択されるものである。本発明に特に適したポリグリセリンは、一般式II:
【化1】

[式中、
nは、2〜100 000、好ましくは2〜1 000及び特に好ましくは100〜600の整数である]による化合物である。
【0018】
本発明の特に好ましい一実施態様によれば、処理工程a)において、親水性ポリマーとして、ポリプロピレングリコール及び/又はポリエチレングリコールが使用され、その際に、特に液状のポリプロピレングリコール及び/又はポリエチレングリコール及び特に200〜600g/モルの質量平均分子量(Mw)を有するポリエチレングリコールが特に適していることが判明している。固形のポリプロピレングリコール及び/又はポリエチレングリコールが使用される場合には、これは好ましくは、0.1〜1 000μmの平均粒径、特に好ましくは0.5〜50μmの平均粒径及び極めて特に好ましくは1〜10μmの平均粒径を有する微細粉末として使用されるので、固形の前記ポリプロピレングリコール及び/又はポリエチレングリコールは、前記炭素材料と均質に混合されることができる。このパラメーターの通常の定義に一致して、平均粒径とは、d50値、すなわち存在している粒子の50%が下回る粒径の値であると理解され、すなわち存在している全ての粒子の50%は、d50値よりも小さな粒径を有する。
【0019】
特に処理工程a)において液状の親水性ポリマーが使用されている場合に、前記ポリマー中への前記塩基の溶解を回避するために、まず最初に前記親水性ポリマーを前記炭素材料と混合した後に、引き続き前記塩基がこうして製造された混合物に添加され、かつこの混合物と混合されることが好ましい。好ましくは、このためには、混合機としてインテンシブミキサーが使用される。
【0020】
原則的に、処理工程a)において、炭素の酸化的な化学的活性化に適している全ての塩基が使用されることができ、その際にこのためには、特にアルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属炭酸塩、例えば好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム及び極めて特に好ましくは水酸化カリウムが適している。
【0021】
前記塩基も、これが室温で固体であることが好ましい場合には、好ましくは粉末として添加され、その際に、前記塩基の平均粒径は好ましくは0.1〜1 000μm及び特に好ましくは0.5〜100μmである。
【0022】
原則的に、処理工程a)において、全ての炭素材料が使用されることができ、その際に特に炭、石油又は木材の熱分解生成物、例えばピッチ及びコークスを用いて、良好な結果が得られる。特に良好な結果は、処理工程a)において、炭素材料として生コークス、すなわち10〜15%の揮発分を有する未仮焼コークスが使用される場合に得られる。その際に、本発明には、全ての種類の生コークス、例えば等方性コークス、電極コークス及びニードルコークス、及び極めて特に好ましくは0.1〜1 000μmの平均粒径を有する粉末状の生コークスが適している。処理工程a)において使用される生コークスの具体的に好ましい粒径は、活性化された前記炭素の後での使用の種類に依存する。吸着材料としての使用のためには、例えば約500μmの平均粒径が好ましいのに対し、電極材料としての使用のためには、より小さな平均粒径、特に0.5〜50μmの平均粒径及び特に好ましくは1〜10μmの平均粒径が好ましい。活性化された前記炭素が、二重層コンデンサにおいて使用されるべきである場合には、処理工程a)において使用される生コークスの平均粒径は最も好ましくは5〜10μmである。
【0023】
さらに、本発明の範囲内で、処理工程a)において使用される炭素材料、好ましくは粉末状の生コークスが、10m2/g未満の極めて僅かな多孔度のみを有するか又は多孔度を有しない場合が有利であることが判明している。
【0024】
原則的に、処理工程a)における個々の前記成分は任意のあらゆる比で互いに使用されることができ、その際に前記塩基含量により、前記炭素の活性化の程度が調節されるが、但し、処理工程a)において製造された混合物中のより高い塩基含量が、活性化された前記炭素のより大きな比表面積を引き起こし、かつその際に前記親水性ポリマーの含量により、処理工程b)において製造されたブリケットの形状安定性が調節されるが、但し、より高いポリマー含量が、前記ブリケットのより大きな形状安定性を引き起こす。この理由から、前記混合物中の親水性ポリマーの割合が3〜10質量%であり、それに反して、炭素材料/塩基の比が好ましくは1:1.5〜1:2であることが好ましい。
【0025】
これらの傾向を考慮して、本発明思想の更なる展開において、処理工程a)において、炭素材料20〜50質量%、親水性ポリマー1〜15質量%及び塩基35〜79質量%、好ましくは炭素材料25〜40質量%、親水性ポリマー2〜10質量%及び塩基50〜73質量%及び特に好ましくは炭素材料30〜35質量%、親水性ポリマー3〜7質量%及び塩基58〜67質量%を含有する混合物を製造することが提案される。
【0026】
本発明の特に好ましい一実施態様において、処理工程a)において製造された混合物は、生コークス25〜40質量%、200〜600g/モルのMwを有するポリエチレングリコール2〜10質量%及び水酸化カリウム50〜73質量%及び特に好ましくは生コークス30〜35質量%、200〜600g/モルのMwを有するポリエチレングリコール3〜7質量%及び水酸化カリウム58〜67質量%を含有する。こうして、本発明による方法を用いて、1 500m2/gまで又はそれどころか2 000m2/gまでのBET表面積を有する活性化された炭素が得られることができる。
【0027】
処理工程b)において、本発明によれば、処理工程a)において製造された混合物は、ブリケットにプレスされる。ブリケット(Pressling)とは、本発明の意味で、少なくとも50mm、好ましくは少なくとも100mm、特に好ましくは少なくとも1cm及び極めて特に好ましくは少なくとも10cmの最長の次元、すなわち少なくとも本質的に球状のブリケットの場合には直径、又は多角形の場合には長さを有するプレス体であると理解される。このための一例は、それぞれ約50cmの長さ及び幅を有する直方形のブリケットである。
【0028】
原則的に、処理工程b)におけるプレスは、適したあらゆるプレス圧で行われることができ、その際に圧力が上昇するにつれて、前記ブリケットの密度が上昇し、ひいては活性化の際の最大炉負荷が高められる。この理由から、処理工程b)におけるプレスは、処理工程a)において製造された混合物が、少なくとも1g/cm3の密度を有する、好ましくは少なくとも1.25g/cm3の密度を有する、特に好ましくは少なくとも1.5g/cm3の密度を有する及び極めて特に好ましくは少なくとも1.7g/cm3の密度を有するブリケットにプレスされるように、好ましくは実施される。
【0029】
100kg/cm2のプレス圧を用いて、例えば約1g/cm3の密度を有するブリケットが製造されることができ、それに反して5トン/cm2のプレス圧を用いて、約1.7g/cm3の密度を有するブリケットが製造されることができる。この理由から、処理工程b)におけるプレスは好ましくは、ダイプレス中で少なくとも100kg/cm2の圧力で実施される。
【0030】
処理工程c)による熱処理を成功させるためには、まず第一に、前記熱処理中に達成される最高温度及びこの最高温度の保持時間が重要である。本発明によれば、処理工程a)における前記ブリケットの熱処理は、500〜1 500℃の最高温度で実施され、その際にこの温度は好ましくは700〜1 000℃に、特に好ましくは700〜900℃に及び極めて特に好ましくは850〜900℃に調節される。
【0031】
その際に、前記最高温度が、少なくとも0.5時間、特に好ましくは少なくとも1時間、極めて特に好ましくは少なくとも2時間及び最も好ましくは少なくとも3時間、保持されることが好ましい。
【0032】
好ましい加熱速度は、その炉中の材料量に依存し、その際に多い材料量の均一な加熱のためには、少ない材料量の均一な加熱のためよりも、より低い加熱速度が好都合である。その炉中の材料量に依存して、前記加熱速度が1〜100℃/分、好ましくは2〜50℃/分及び特に好ましくは5〜25℃/分である場合に、原則的に良好な結果が達成される。
【0033】
本発明思想のさらなる展開において、前記ブリケットを処理工程c)において最高温度での前記保持後に、室温に急速に冷却することが提案され、このことは好都合には、前記ブリケットがまず最初に前記炉中で約150℃までに冷却された後、前記ブリケットがついで好ましくは水中で急冷されるようにして行われることができる。
【0034】
本発明のさらに好ましい一実施態様によれば、前記活性化されたブリケットは、前記熱処理後に、処理工程d)において、活性化された前記炭素から不純物を除去するために洗浄される。その際に、前記洗浄過程は好ましくは、鉱酸、例えば塩化水素又は硫酸での少なくとも1度の洗浄工程、それに続いて中性までの蒸留水での繰り返しの洗浄を含む。
【0035】
本発明のさらなる対象は、前記の方法を用いて得ることができる、活性化された炭素である。
【0036】
そのような活性化された炭素は好ましくは、1 500〜2 000m2/gのBET表面積を有する。
【0037】
本発明のさらなる対象は、吸着材料として又は電極として及び好ましくは二重層コンデンサにおける電極としての、前記の活性化された炭素の使用である。
【0038】
以下に、本発明は、実施例に基づいてさらに記載されるが、この例は本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0039】
Eirich社のインテンシブミキサー中へ、3μmの平均粒径を有するSasol Synfuel Ltd.社の生コークス1666g(等方性ピッチコークス)及び200g/モルのMwを有するポリエチレングリコール166gを充填し、10分間混合した。引き続き、この混合物に約10μmの平均粒径を有する水酸化カリウム3166gを添加し、この混合物を改めて15分間混合した。前記混合過程の終了時に、約3μmの平均粒径を有する均質な混合物が得られた。
【0040】
前記混合物を、ついで50cm×50cm×10cmのダイサイズを有するWickert社、型式WKP2000Sのプレス中へ充填し、室温で95kg/cm2の圧力で、1.0g/cm3の密度を有するブリケットにプレスした。
【0041】
引き続き、前記ブリケットを炉中へ配置し、5℃/分の加熱速度、850℃の最高温度及び1時間の保持時間での熱処理にかけた後、活性化された前記ブリケットを水中で急冷し、引き続き鉱酸、すなわち硫酸で洗浄し、それに続いて蒸留水で中性まで繰り返し洗浄した。
【0042】
こうして製造された活性化された炭素から、各約10mgの質量を有する10mmの直径を有する円形ペレットの形の電極を成形し、30μmの厚さを有するセパレータ"Whatman"ガラス繊維セパレータを備え、電解質としてアセトニトリル中1Mテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムを有するスウェージロック(Swagelok)セル中で測定した。その二重層コンデンサは、2.3V及び500mA/gの充電電流で、前記電極を基準として146F/gの比電気容量を達成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化された炭素の製造方法であって、以下の工程:
a)炭素材料と、塩基と、前記塩基に対して化学的に不活性な親水性ポリマーとの混合物を製造する工程、
b)工程a)において製造された混合物をブリケットにプレスする工程及び
c)工程b)において製造されたブリケットを活性化させる工程
を含む、活性化された炭素の製造方法。
【請求項2】
工程a)において、親水性ポリマーとして、ポリエーテル、好ましくはポリエーテルポリオール及び特に好ましくは一般式I:
HO(−R−O−)nH (I)
[式中、
nは、2〜100 000、好ましくは2〜1 000及び特に好ましくは100〜600の整数であり、かつ
Rは、直鎖又は分枝鎖状の、非置換又は1個もしくはそれ以上のヒドロキシル基で置換されたアルキレン基、好ましくは非置換又は1個もしくはそれ以上のヒドロキシル基で置換されたC1〜C15−アルキレン基、特に好ましくは非置換又は1個もしくはそれ以上のヒドロキシル基で置換されたC1〜C10−アルキレン基及び極めて特に好ましくは非置換又は1個もしくはそれ以上のヒドロキシル基で置換されたC1〜C6−アルキレン基である]によるポリエーテルポリオールを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)において、親水性ポリマーとして、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンチレングリコール、ポリヘキシレングリコール、ポリグリセリン及び前記の化合物2種又はそれ以上の任意の混合物からなる群から選択されるポリマーを使用し、かつ特に好ましくは200〜600g/モルの質量平均分子量を有するポリプロピレングリコール及び/又は200〜600g/モルの質量平均分子量を有するポリエチレングリコールを使用する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、まず最初に、前記親水性ポリマーを前記炭素材料と混合した後、引き続き前記塩基をこうして製造された混合物に添加し、かつこの混合物と混合する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、塩基として、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属炭酸塩、好ましくは水酸化カリウムを使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、炭素材料として、コークス、好ましくは生コークス及び特に好ましくは1〜10μmの平均粒径d50を有する生コークスを使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程a)において、炭素材料20〜50質量%、親水性ポリマー1〜15質量%及び塩基35〜79質量%、好ましくは炭素材料25〜40質量%、親水性ポリマー2〜10質量%及び塩基50〜73質量%及び特に好ましくは炭素材料30〜35質量%、親水性ポリマー3〜7質量%及び塩基58〜67質量%を含有する混合物を製造する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程b)におけるプレスを、ダイプレス中で少なくとも100kg/cm2の圧力で実施し、及び/又は工程b)において、工程a)において製造された混合物を、少なくとも1g/cm3の密度を有するブリケットにプレスする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程a)における活性化が、500〜1 500℃、好ましくは700〜1 000℃、特に好ましくは700〜900℃及び極めて特に好ましくは850〜900℃の温度での前記ブリケットの熱処理を含み、かつ好ましくは工程c)における前記熱処理の際の最高温度を、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、特に好ましくは少なくとも2時間及び極めて特に好ましくは少なくとも3時間保持する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法により得られ、1 500〜2 000m2/gのBET表面積を有し、かつ吸着材料として又は電極として及び好ましくは二重層コンデンサにおける電極として使用される、活性化された炭素。

【公表番号】特表2013−521218(P2013−521218A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556481(P2012−556481)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053442
【国際公開番号】WO2011/110543
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(512298708)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (11)
【氏名又は名称原語表記】SGL Carbon SE
【住所又は居所原語表記】Soehnleinstr. 8, D−65201 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】