説明

塩溶融炉

【課題】 下流側の成形型に溶融させた塩を連続して供給できるようにする。
【解決手段】 粒状または粉状の塩を溶融させるための塩溶融炉1であって、供給された塩を溶融した状態で貯留できる坩堝25と、該坩堝25を加熱する加熱手段35と、軸線方向に昇降自在に設けられると共に、坩堝25の底部27に鉛直方向に形成された排出孔28に、先端部が離接して該排出孔28を開閉する棒41とを備え、坩堝25の内面25aにケイ酸質の材料で構成すると共に、棒41の少なくとも表面をケイ酸質の材料で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩を溶融させるための塩溶融炉に関し、より詳しくは、タイルや、枕、足置き等の各種成型品を塩で成形すべく、成形型に流し込む材料としての塩を溶融させる塩溶融炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室の内面(床面、壁面、天井面)に塩製のパネル或いはタイル(以下、これらを総称して塩タイルということとする)を敷き詰めた塩サウナと称されるサウナ風呂が知られている。
【0003】
かかる塩サウナは、浴室の内面に塩タイルを敷き詰めることで、新陳代謝を活性化させると言われている(例えば、特許文献1参照)が、浴室内が高温多湿に設定されるため、一般的に知られているサウナ風呂と同様に、利用者の体への負担が大きく、長時間に亘って利用できない(浴室内に滞在できない)といった問題がある。
【0004】
そこで、本発明者は、部屋を画定する床面、壁面、天井面の全てに塩タイルを敷き詰め、その部屋内の温度を体温よりも僅かに高い温度(例えば、41℃)で且つ湿度を低湿度(例えば、45%)に設定したソルトルームを提案している。
【0005】
かかるソルトルームは、これまでのサウナ風呂の常識に反し、部屋内の温度及び湿度が非常に低く設定されているため、利用者の体への負担が小さく、長時間に亘って部屋内に滞在することができる。
【0006】
かかるソルトルームは、利用者が部屋内に長時間滞在できることや、塩と部屋内の温度及び湿度との調和が図れていること(塩による効能を最大限に発揮できる温度と湿度に設定されていること)等が起因し、新陳代謝の活性等が従来の塩サウナに比して非常に高まることが確認されている。
【0007】
さらに、本発明者は、塩タイルの背面側に配置した光源(RGB三色のLED等)からの光をソルトルーム内に透過させることで幻想的な環境を作り出し、癒し効果等も高めたリラクゼーションシステムをさらに提案している。なお、本発明者は、リラクゼーションシステムとして、上述のような光の照射に加え、ソルトルーム内に音楽や自然の音(波の音や、小鳥のさえずり、水の流れる音など)等を流し、聴覚的にも癒し効果を高めたものも提案している。
【0008】
そして、リラクゼーションシステム(ソルトルーム)は、上述の如く、利用者が部屋内に長時間に亘って滞在できるため、利用者が部屋内でリラックスした姿勢で滞在できるように、枕や、足置き、座等が設置されることがあるが、塩の効能をできるだけ多く得られるように、枕や、足置き、座等についても、塩タイルと同様に塩から形成するようにしている。
【0009】
ところで、前記塩タイルや、枕、足置き、座等は、塊状の岩塩等から削り出して作製することも可能であるが、これらは大量に使用されるため量産する必要があり、岩塩から削り出して製造することは、製造作業が繁雑である上に、岩塩の無駄が発生したり、完成品の形態にバラツキが発生したりするため、量産には不向きである。
【0010】
特に、天然岩塩には不純物が含まれているため、天然岩塩から削り出して塩タイルを作製すると、塩タイルの背面側に配置した光源(RGB三色のLED等)からの光をソルトルーム内に照射させたときに、光源からの光が良好に透過せず、癒し効果を高めるための演出の効果が半減してしまうといった問題がある。
【0011】
このような問題に鑑み、本発明者は、塩を溶融させ、その溶融した塩を成形型に流し込んで冷却固化させて成型品(塩タイルや枕等)を製造することを提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
かかる方法によれば、定型的な成形型に溶融した塩を流し込んで冷却固化させるため、成型品の形態やサイズにバラツキが少なく、また、塩の融点が非常に高温(約800℃)であることから、塩を溶融させることで、天然岩塩に含まれる不純物が消失してしまい、光透過性も良好となる。
【0013】
そして、塩の成型品を作製するに当たって塩を溶融させる必要があるため、本発明者は、塩を溶融するための溶融炉の開発に取り組んだ結果、粒状又は粉状の塩を貯留可能に構成され、下部に排出部を備えたタンク状の炉本体と、該排出部を開閉するバルブと、炉本体内を加熱するためのヒーターとを備えた溶融炉を開発した。
【0014】
かかる溶融炉は、ヒータによって炉本体内の塩を溶融させた上で、排出部に設けたバルブを開き、該排出部の下方に設置された成形型に溶融した塩を供給するようになっている。これにより、塩製のパネルや、タイルのみならず、各種形態のグッズについても効率や品質を向上させた上で量産できるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−194861号公報
【特許文献2】特開2007−092514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記構成の塩溶融炉は、溶融塩が排出部から排出されている場合は、排出部近傍が高温になっているため、バルブの開閉は円滑に行えるが、溶融塩の排出が完了して排出部近傍の温度が下がってしまうと、排出部の内壁に付着した溶融塩が固化されてしまい、バルブの開閉ができなくなり、炉本体を繰り返し使用することができなくなるという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、繰り返し使用することのできる塩溶融炉を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る塩溶融炉は、粒状または粉状の塩を溶融させるための塩溶融炉であって、供給された塩を溶融した状態で貯留できる坩堝25と、該坩堝25を加熱する加熱手段35と、軸線方向に昇降自在に設けられると共に、坩堝25の底部27に鉛直方向に形成された排出孔28に、先端部が離接して該排出孔28を開閉する棒41とを備えたことを特徴とする。
【0019】
この場合、坩堝25の底部27に鉛直方向に排出孔28が形成されると共に、この排出孔28に対して、棒41が軸線方向に離接するため、棒41の先端部が排出孔28から離脱すると、排出孔28と坩堝25内部とが連通した状態になり、坩堝25内部の溶融塩が排出孔28から迅速且つ円滑に流出されるようになる。このため、排出孔28の周縁部または内面に溶融塩が残留することがない。したがって、棒41の先端部が繰り返し確実に離接することができ、排出孔28を繰り返し開閉できる。つまり、坩堝25を繰り返し使用できる。
【0020】
また、本発明によれば、前記棒41の先端部にテーパ42を形成するような構成を採用することもできる。
【0021】
この場合、熱と溶融塩によって、棒41の先端部と坩堝25の排出孔28との当接部位、即ち坩堝25の排出孔28の周縁部が浸食されたとしても、棒41の先端部は、そのテーパ42によって、排出孔28を常に液密に閉塞でき、溶融塩が外部に漏れ出ることを防止することができる。
【0022】
また、本発明によれば、前記棒41の少なくとも表面を、ケイ酸質の材料で構成するようにしてもよい。
【0023】
この場合、棒41の少なくとも表面が、ケイ酸質の材料で構成されているので、棒41が高温で加熱されても、溶融塩に対して、棒41自体の材料による色の付着がない。即ち、溶融塩に悪影響を及ぼさない。
【0024】
前記坩堝25の少なくとも内面25aを、ケイ酸質の材料で構成するようにしてもよい。
【0025】
この場合、坩堝25の少なくとも内面25aが、ケイ酸質の材料で構成されているので、高温で加熱されても、溶融塩に対して、坩堝25自体の材料による色の付着がなく、前記と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、坩堝の底部に鉛直方向に排出孔を形成すると共に、該排出孔を軸線方向から開閉するようにしたので、液状の溶融塩を自重で全て排出することができる。溶融塩を排出孔から全て排出できることから、溶融塩が排出孔の内壁に付着することもなく、坩堝を繰り返し使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係る塩溶融炉の構成を示す断面図。
【図2】図1の上面断熱構造部の一部を除去した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る塩溶融炉について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、この塩溶融炉は、粒状又は粉状の塩の供給から該塩の溶融、溶融した塩の成形型への供給等の一連の工程を行うことのできる塩溶融設備の一部である。また、粒状又は粉状の塩は、図示しない定量供給装置によって、連続的に常に定量供給できるようになっている。
【0029】
本実施形態に係る塩溶融炉1は、図1及び図2に示す如く、底面断熱構造部Aと、該底面断熱構造部Aの周囲に設けられた側面断熱構造部Bと、底面断熱構造部A及び側面断熱構造部Bで形成される囲繞空間に内装される坩堝25と、該坩堝25の上面開口部26を閉塞するように設けられた上面断熱構造部Cと、側面断熱構造部Bに設けられた加熱手段35と、坩堝25の底部27から底面断熱構造部Aを経て外部に連通するように形成された排出路6を開閉する開閉手段40とで構成されている。
【0030】
底面断熱構造部Aは、上、中、下の複数段に積重された平面視正方形の板状の耐火煉瓦3,…で構成される基礎部2と、上段の耐火煉瓦3の上面に設けられた不定形の断熱材で構成される載置部(ギブラム)5とを備えている。そして、基礎部(各耐火煉瓦3,…)2及び載置部5の中央部に鉛直方向に排出路6が形成されている。また、載置部5としては、例えば、耐熱性及び断熱性を有するセメントが使用されている。この断熱材は、坩堝25の底面が密接した状態で載置されるように、坩堝25の底部27の形状に対応している。即ち、坩堝25の底部27中央が載置される部位は平坦面5aが形成され、側面から底面にかけて緩やかに湾曲した坩堝25の底部周縁が載置される部位は、曲面5bが形成されている。
【0031】
側面断熱構造部Bは、内、中、外の三層構造となっており、内構造10は、基礎部2の耐火煉瓦3の側縁部に、即ち基礎部2の最内側に、坩堝25の前後左右を囲むように立設された側面視矩形状の内断熱板11,…を有している。該内断熱板11,…の内部には、後述する加熱手段35としての棒状のヒータ36,…が所定の間隔をおいて配設されている。中構造15は、該内断熱板11,…の外側に隣接するようにして積重された角柱状の耐火煉瓦16,…を有している。外構造20は、各耐火煉瓦16,…の外側に、多層に配置された外断熱板を有している。該外断熱板は、内側及び外側に肉厚の外断熱板21a,21aが配置されると共に、該両外断熱板21a,21aの間に、薄肉の外断熱板21bが配置されている。
【0032】
坩堝25は、上面開口部26が正方形状を呈しており、底部27の中央に排出路6に連通する排出孔28が形成されている。この排出孔28に、後述する開閉手段40の棒41の先端部が圧接することによって液密に閉塞される。そして、底部27に平坦面27aが形成されると共に、底部27の周縁、即ち該平坦面27aの周縁部に緩やかに湾曲した曲面27bが形成されている。また、坩堝25の少なくとも内面25aは、ケイ酸質の材料で構成されており、溶融塩に対して、高温で加熱された坩堝25の内面25a自体の材料の色が付着されないようにしている。本実施形態においては、坩堝25全体がケイ酸質の材料で構成されている。
【0033】
上面断熱構造部Cは、坩堝25の上面開口部26及び側面断熱構造部Bの上面を覆うように積重された複数枚の断熱板を備えている。該断熱板の最下側の下断熱板30は、坩堝25の上面開口部26を閉塞するためのもので、二つに分割できるように構成された一対の蓋板30a,30aで構成されている。また、各蓋板30a,30aの接合部位は、中央部に開閉手段40の棒41の基端部が導出される導出孔31が形成されている。そして、下断熱板30を覆うように、中断熱板32と上断熱板33が順次積重され、これによって、坩堝25の上面開口部26が気密に閉塞されている。
【0034】
加熱手段35は、坩堝25の側面側、即ち内断熱板11に所定の間隔をおいて内装された、加熱部としての棒状のヒータ36と、上断熱構造部Cを貫通して外部へ導出された取付部37とを備えている。そして、ヒータ36は、坩堝25の深さ方向に沿って内断熱板11に挿入され、坩堝25の上面開口部26の前後左右に5本ずつ所定の間隔をおいて配設されている。そして、坩堝25の底面、側面及び上面開口部26が各断熱構造部A〜Cによって密接した状態で覆われているため、ヒータ36によって加熱された坩堝25内部の温度が常に一定に保持され、坩堝25内部に投入された粒状または粉状の塩が効率よく短時間で溶融されることになる。
【0035】
開閉手段40は、少なくとも表面がケイ酸質の材料で構成されている棒41を有しており、該棒41は、坩堝25内部に、先端部を下にして鉛直方向に挿入されている。また棒41の先端部には、円錐台状のテーパ42が形成されており、該テーパ42は、先端に向かうにしたがって細くなり、大径の外周面が坩堝25の排出孔28の開口部内面に圧接する。そして、棒41の基端部は上面断熱構造部Cを貫通して外部に導出されており、気密に昇降自在に設けられている。また、坩堝25の排出孔28から棒41のテーパ42が離脱すると、坩堝25内部と、排出孔28、排出路6とが連通し、坩堝25に貯留された液状の溶融塩に対して、排出孔28、排出路6を通して鉛直方向に重力が係り、全ての溶融塩を外部へ迅速且つ円滑に排出できるようになっている。本実施形態においては、棒41の全体がケイ酸質の材料で構成されている。
【0036】
また、粒状又は粉状の塩を溶融するようにしているので、不純物が消失されて、塩の成型品による効果が充分に得られるようになる。即ち、上述した塩サウナの塩パネルとして適用した場合、マイナスイオン効果や癒し効果が得られるようになる。また、塩パネルの背面側に熱光源を設置した場合は、光の透過性が良くなる。
【0037】
なお、本発明の塩溶融炉は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0038】
前記実施形態において、加熱手段35としてのヒータ36を、坩堝25の深さ方向に沿うように所定の間隔をおいて配設したが、坩堝25の外面に対して、環状のヒータを深さ方向に沿って配設するようにしてもよく、深さ方向に螺旋状にヒータを設けるようにしてもよい。
【0039】
また、前記実施形態の場合、坩堝25の上面開口部26を角形状としたが、円形または楕円形状にするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…塩溶融炉、2…基礎部、3…耐火煉瓦、5…載置部、5a…平坦面、5b…曲面、6…排出路、10…内構造、11…内断熱板、15…中構造、16…耐火煉瓦、20…外構造、21a,21b…外断熱板、25…坩堝、25a…内面、26…上面開口部、27…底部、27a…平坦面、27b…曲面、28…排出孔、30…下断熱板、30a…蓋板、31…導出孔、32…中断熱板、33…上断熱板、35…加熱手段、36…ヒータ、37…取付部、40…開閉手段、41…棒、42…テーパ、A…底面断熱構造部、B…側面断熱構造部、C…上面断熱構造部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状または粉状の塩を溶融させるための塩溶融炉であって、供給された塩を溶融した状態で貯留できる坩堝(25)と、該坩堝(25)を加熱する加熱手段(35)と、軸線方向に昇降自在に設けられると共に、坩堝(25)の底部(27)に鉛直方向に形成された排出孔(28)に、先端部が離接して該排出孔(28)を開閉する棒(41)とを備えたことを特徴とする塩溶融炉。
【請求項2】
前記棒(41)の先端部にテーパ(42)が形成されることを特徴とする請求項1に記載の塩溶融炉。
【請求項3】
前記棒(41)は、少なくとも表面がケイ酸質の材料で構成されることを特徴とする請求項2に記載の塩溶融炉。
【請求項4】
前記坩堝(25)は、少なくとも内面(25a)がケイ酸質の材料で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塩溶融炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−2156(P2011−2156A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145371(P2009−145371)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(503314716)
【Fターム(参考)】