説明

境界ブロック

【課題】強い衝撃があってもブロック本体が潰れたり、アンカーピン等の地面への係止手段が損傷するといった不都合が回避でき、信頼性が改善される境界ブロックを提供する。歩道等の水溜りを早期に解消できる等、排水機能を改善させることも目的である。
【解決手段】車道1と歩道2との区分又は車止め用の手段として機能すべく、係止手段4を用いて地面5に係止可能なブロック6を有して成る境界ブロックAであって、ブロック6が、コンクリート製のブロック本体7と、ブロック本体7が載置固定され、かつ、係止手段4によって地面5に係止可能なゴム製の基礎部8とで構成される。基礎部8を左右に貫通する排水路12が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道とその他の部位との区分又は車止め用の手段として機能すべく、係止手段を用いて地面に係止可能なブロックを有して成る境界ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路とその他の部位、例えば歩道や車道とを区分するための境界ブロックの従来例としては、特許文献1において開示されたものが知られている。これは、側面視の形状が略三角形で全体として長方形を為すコンクリート製のものであり、モルタル等を介して多数連設することにより、車道とその他の部位とを区分する凸条帯を構成している。
【0003】
車止め用ブロックの従来例としては、特許文献2において開示されたものが知られている。これは、全体として長方形の車止めブロックを、これを上下に通す一対のアンカーピンを使って地面に係止固定させる技術を示している。車止めブロックのタイヤ当接側の角は、タイヤとの当りを円滑に行わせるべく斜めにカットしたような形状としてある。
【0004】
上記いずれの境界ブロックであっても地面に直接に固着されているため、自動車等が強く当った場合にはブロックが潰れたり、アンカーピンやボルトが折れ曲がったり引き抜かれたりする不都合が生じ易い傾向があるとともに、ホイールが凹む等、自動車側に損傷が出るおそれもあった。このように、従来の境界ブロックでは、強い衝撃時の諸問題をクリヤーするには改善の余地が残されているものであった。
【0005】
また、図5に示すように、排水用の貫通路12を有する排水用境界ブロックAhを境界ブロックAの所々に組み込むことにより、歩道2に溜った雨水r等を車道1の側脇に形成されている排水用の側溝3に導くようにする排水促進構造を有する車歩道境界ブロック群Gも知られている。しかしながら、排水用境界ブロックAhは設置強度が弱くて多用し難いことから、その間隔が比較的空くものとなるため、排水用境界ブロックAhの近くにできる水溜り(雨水)rは、貫通路12を通って速やかに排水され易いが、貫通路12から離れた水溜りRは依然として排水されず、長く残ってしまう不都合がある。そのため、歩道の水捌けを良くする点でも改善の余地が残されている。
【特許文献1】特開2004−011265号公報
【特許文献2】特開2006−200336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、強い衝撃が加えられても、ブロック本体が潰れたり、アンカーピン等の地面への係止手段が損傷するといった不都合が回避可能となり、信頼性が改善される境界ブロックを提供する点にある。また、それに加えて、歩道等の水溜りを早期に解消できる等、排水機能も改善される境界ブロックを実現させることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車道1とその他の部位2との区分又は車止め用の手段として機能すべく、係止手段4を用いて地面5に係止可能なブロック6を有して成る境界ブロックにおいて、
前記ブロック6が、硬質部材製のブロック本体7と、前記ブロック本体7が載置固定され、かつ、前記係止手段4によって地面5に係止可能な弾性材製の基礎部8とで構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の境界ブロックにおいて、前記基礎部8が、前記ブロック本体7が載置係止される上硬質フランジ板9と、前記係止手段4によって地面5に係止される下硬質フランジ板10と、これら上下の硬質フランジ板9,10の上下間に介装される弾性材製の弾性部11とを有して構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の境界ブロックにおいて、前記基礎部8は、複数の弾性層13と硬質板14とが交互に積層されて成る積層ゴム構造を有していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の境界ブロックにおいて、前記基礎部8に、これを左右に貫通する排水路12が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ブロック本体が弾性部を介して地面に弾性懸架されているので、自動車自体やそのタイヤ等が強くブロック本体に衝突することがあっても、衝突による衝撃が緩和されてブロック本体が欠けたり潰れたりすることや、係止手段が損傷する不都合がまず生じないようになる効果がある。また、境界ブロックの弾性懸架により、自動車等のぶつかった側の損傷も軽減される効果もある。その結果、強い衝撃が加えられても、ブロック本体が潰れたり、アンカーピン等の地面への係止手段が損傷するといった不都合が回避可能となり、信頼性が改善される境界ブロックを提供することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、基礎部が上下の硬質フランジ板とその間に介装される弾性部とで成るサンドイッチ構造に構成されており、ブロック本体を強固に一体化することや、係止手段を強固に一体化することを可能としながら、ブロック本体を弾性懸架できる合理的な境界ブロックを提供することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、基礎部は、複数の弾性層と硬質板とを交互に積層して成る積層ゴム構造を有しているので、ブロック本体の弾性懸架作用を得ながらも、揺れ動き易いといったことなく強度十分にブロック本体を弾性部に強固に支持できる利点がある。
【0014】
請求項4の発明によれば、基礎部に排水路が形成されているから、歩道上に溜る(又は溜ろうとする)雨水等の水を、車道端の排水路等といった排水手段に排水路を通して排出させることが可能になる。そして、排水部はブロック本体ではなく基礎部に形成されていてブロック本体の強度低下がないから、この排水路付の境界ブロックのみを連設可能となる。従って、境界ブロックの一方の側の水を、境界ブロックの長手方向の位置如何に拘らずに他方の側に容易に導くことができ、場所によっては排水性が悪いという従来の問題が解消されて、歩道や駐車場所等の水捌けが改善される効果も得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明による境界ブロックの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1,2は実施例1による境界ブロックの正面図,側面図、図3は境界ブロックの使用例を示す断面図、図4は別実施例による境界ブロックの断面図、図5は従来の境界ブロックの使用例を示す斜視図である。
【0016】
〔実施例1〕
実施例1よる境界ブロックAを図1〜図3に示す。この境界ブロックAは、図3に示すように、車道1と歩道2とを区分するためのものであり、車道1の長手方向に連続して多数並べられて車歩道境界ブロック群G(凸条帯であって図5参照)に構成されている。実施例1の境界ブロックAは、自動車のタイヤの乗り上げを規制しての車歩道の区分機能の他、歩道2に溜る雨水r等を車道1の側脇に形成されている排水溝3に導く排水路としての機能、即ち排水機能も発揮可能なものに構成されている。
【0017】
境界ブロックAは、図1,2に示すように、車道1と歩道(「その他の部位」の一例)との区分の手段として機能すべく、係止手段4を用いて地面5に係止可能なブロック6
を有して成っている。ブロック6は、コンクリート(板硬質部材の一例)製のブロック本体7と、ブロック本体6が載置固定され、かつ、係止手段4によって地面5に係止可能な弾性材製の基礎部8とで構成されている。
【0018】
ブロック本体7は、正面視が横長の矩形を呈し、かつ、側面視では台形を呈するコンクリートブロックで形成されている。基礎部8は、ブロック本体7が接着等の貼着によって載置係止される上硬質フランジ板9と、係止手段4によって地面5に係止される下硬質フランジ板10と、例えば鋼板で成るこれら上下の硬質フランジ板9,10の上下間に介装される弾性材製の弾性部11とを有して構成されるとともに、基礎部8を左右に貫通する排水路12が形成されている。係止手段4は、下硬質フランジ板10に固着される一対のアンカーボルト4A,4Aで構成されている。
【0019】
弾性部11は、上下2(複数の一例)層のゴム層(弾性層の一例)13,13と、中間鋼板(硬質板の一例)14とが交互に積層されて成る積層ゴム構造のものに構成されている。上下の硬質フランジ板9,10とゴム層13とは加硫接着によって強固に一体化されている。中間鋼板14は前後4箇所に分離されて設置されており、弾性部11における前後に相隣る中間鋼板14,14間のゴムのみで成る部分に、左右に貫通する断面矩形の貫通孔を設けることにより、計3箇所の排水路12が形成されている。つまり、排水路12は弾性部11を左右に刳り抜くように形成されている。弾性材がゴムであるから、生産性が良く安価であり性能も安定するようになる。
【0020】
上記のように構成される境界ブロックAの使用例を図3に示す。境界ブロックAは、車道1と歩道2とを区分すべく、歩道2の車道側端においてその長手方向に沿って多数が連設配置されている。車道1の歩道側端には専用の排水ブロック15が連設されており、その上部に下方に凹入される状態で形成されている排水用凹み15aの多数により排水溝3が形成されている。例えば、歩道2における車道側端の上面を若干低く形成することにより、境界ブロックAの排水路12の底面と歩道2の上面との高さレベルを互いに等しくしてあるが、ついでに車道1の高さレベルを同じにしても良い。
【0021】
ブロック本体7は、弾性部11を介して地面に固定、即ち、弾性懸架(弾性支持)されているので、自動車自体やそのタイヤ等が強くブロック本体7に衝突することがあっても、衝突による衝撃が緩和されてブロック本体7が欠けたり潰れたりすることや、アンカーボルト4Aが引き抜かれたり折れ曲がったりして損傷する不都合がまず生じないようになる効果がある。また、境界ブロックAの弾性懸架により、自動車側、即ちぶつかった側の損傷も軽減される効果もある。つまり、強い衝撃が加えられても変形や損傷が回避でき、強度上好ましいとともに耐久性(信頼性)に優れる境界ブロックAが実現されている。
【0022】
そして、図3に示すように、歩道2上に雨天や散水、洗浄等による水が溜るようなことが生じても、各境界ブロックA毎に形成されている排水路12を通して、車道端の排水路3に歩道上に溜った水rを速やかに排出させることが可能である。従って、場所によっては歩道上の水溜りRが捌け難く、歩行に伴う水撥ねや自転車走行によって歩行者に水はねが掛かるといった不都合が長時間続く、といった従来の不具合(図5参照)が解消され、境界ブロックAが歩道上面より立ち上がる状態に配置されても、歩道の水捌けがすこぶる良いという効果も得ている。
【0023】
弾性部11が、複数の弾性層13と硬質板14とを交互に積層して成る積層ゴム構造に構成されているので、前述の弾性懸架作用を得ながらも、揺れ動き易いといったことなく強度十分にブロック本体7を弾性部11に強固に支持できるものとなっている。そして、弾性部11が、鋼板とゴムという安価で入手し易い材料で形成されており、生産性やコストの点でも良好なものとなっている。
【0024】
そして、排水機能上で好都合な排水路12を弾性部11に形成してあるので、容易に排水路12を設けることができるとともに、ブロック本体7や硬質フランジ板9,10に排水路が形成される場合に比べて、支持強度に支障が出ず強度十分にブロック本体7の支持が行える利点がある。
【0025】
〔別実施例〕
境界ブロックAは、図4に示すように、前後に分離された下硬質フランジ板10と、ゴムのみから成る弾性部11と、前後の下硬質フランジ板10,10どうしの間における弾性部11を左右に貫通する単一で無底状の排水路12と、を有する構造の基礎部8を持つものである。図示のように、上下の硬質フランジ板9,10がゴム層11で覆われるようにすれば、防錆上で好都合である(実施例1の境界ブロックAにおいても可能である)。排水路12が下方に開放されているので、水捌け機能上、設置に当って予め下硬質フランジ板10の厚さ分、設置対象地面(歩道等)を掘下げる施工(図3参照)が不要となる利点がある。
【0026】
また、図示は省略するが、ゴム等の段西部11のみから成る基礎部8とブロック本体7とで成る境界ブロックAも可能である。この場合の係止手段4としては、基礎部8を地面に接着すること(接着剤が係止手段4である)や、アンカーボルト4Aを、基礎部8に埋設されている鉄板(鋼板)に溶着等で一体化して成るものを採択可能である。また、実施例1の境界ブロックAにおいて、下硬質フランジ板10を接着によって地面5に係止させる係止手段4も可能である。
【0027】
図示は省略するが、図1や図4に示す境界ブロックAを、それ単品又は複数連設することでショック吸収型の車止めとして用いることが可能である。この場合は、基礎部8に排水路12が無くても良いが、複数連ねて用いる場合には排水路12付の境界ブロックを用い、水が境界ブロックの向こう側に設けられている排水溝に流し易くして、駐車スペース部分の地面上の水捌けをも改善できるようにすれば好都合である。
【0028】
「車道とその他の部位」における『その他の部位』とは、歩道、公園、遊歩道、緑地帯、車道等種々のものを含む概念であると定義する。また、ブロック本体7を構成する硬質部材は、モルタル、合成樹脂、石、セラミック、金属等、種々のものが可能である。さらに、地面5とは、橋梁の走行面(歩行面)、立体駐車場の空中階の床面、金属板製の移動面等、境界ブロックが設置可能な種々の面を含むものと定義する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1による境界ブロックを示す正面図
【図2】図1の境界ブロックの側面図
【図3】歩道の排水作用を示す断面図
【図4】別実施例の境界ブロックを示す正面図
【図5】従来の歩道排水状況を示す斜視図
【符号の説明】
【0030】
1 車道
2 その他の部位
4 係止手段
5 地面
6 ブロック
7 ブロック本体
8 基礎部
9 上硬質フランジ板
10 下硬質フランジ板
11 弾性部
12 排水路
13 弾性層
14 硬質板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道とその他の部位との区分又は車止め用の手段として機能すべく、係止手段を用いて地面に係止可能なブロックを有して成る境界ブロックであって、
前記ブロックが、硬質部材製のブロック本体と、前記ブロック本体が載置固定され、かつ、前記係止手段によって地面に係止可能な弾性材製の基礎部とで構成されている境界ブロック。
【請求項2】
前記基礎部が、前記ブロック本体が載置係止される上硬質フランジ板と、前記係止手段によって地面に係止される下硬質フランジ板と、これら上下の硬質フランジ板の上下間に介装される弾性材製の弾性部とを有して構成されている請求項1に記載の境界ブロック。
【請求項3】
前記基礎部は、複数の弾性層と硬質板とが交互に積層されて成る積層ゴム構造を有している請求項1又は2に記載の境界ブロック。
【請求項4】
前記基礎部に、これを左右に貫通する排水路が形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の境界ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−127405(P2009−127405A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307426(P2007−307426)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】