増強された血中安定性を有する脂質キャリア組成物
【課題】封入された薬剤の最適な循環寿命および保持を示すリポソームを提供すること。
【解決手段】少なくとも10モル%の、非双性イオン部分に結合された負に荷電した脂質を含むリポソームは、血中において安定である。少なくとも1モル%のこのような脂質を含むリポソームは、安全に凍結に凍結され得る。本発明は、以下を含むリポソームを提供する:親水性部分および疎水性部分を有する負に荷電した脂質であって、中性の非双性イオン部分が、この脂質の親水性部分に結合している。特定の実施形態において、本発明のリポソームは、コレステロールを実質的に含まない。このリポソームは、代表的に、生物学的に活性な薬剤を含む。本発明のリポソームは、驚くべきことに、血流中での増強された循環寿命を示す。
【解決手段】少なくとも10モル%の、非双性イオン部分に結合された負に荷電した脂質を含むリポソームは、血中において安定である。少なくとも1モル%のこのような脂質を含むリポソームは、安全に凍結に凍結され得る。本発明は、以下を含むリポソームを提供する:親水性部分および疎水性部分を有する負に荷電した脂質であって、中性の非双性イオン部分が、この脂質の親水性部分に結合している。特定の実施形態において、本発明のリポソームは、コレステロールを実質的に含まない。このリポソームは、代表的に、生物学的に活性な薬剤を含む。本発明のリポソームは、驚くべきことに、血流中での増強された循環寿命を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許出願番号60/394,271(2002年7月9日出願)および米国特許出願番号60/331,248(2001年11月13日出願)の利益を主張する。これらの出願の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、循環中にて長い寿命を有するリポソーム組成物に関する。これらのリポソームは、双性イオンを含まない負に荷電した脂質の取り込みを含む。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
リポソームは、中心の水性コアを囲む1つ以上の二重層へと配置された両親媒性脂質の水性分散物から調製される送達ビヒクルである。溶質は、内部水性区画中に閉じ込められ、それによって、血液成分との反応からこの溶質を保護し得る。閉じ込められた薬剤を標的部位に効果的に送達するために、リポソームは、封入された薬剤の最適な循環寿命および保持を示すことが所望される。
【0004】
リポソームの薬理学的特性は、膜中に取り込まれた脂質の型を変化させることによって、変動され得る。中性(正味の荷電なし)の脂質から構成されるリポソームは、血液区画中に存在する多数のタンパク質、炭水化物および脂質成分への曝露の際に安定であるので、このようなリポソームが一般に使用される。リポソーム組成物中に負に荷電した脂質(例えば、ホスファチジルセリン)を取り込むことは、リポソームの認識および循環からのリポソームのクリアランスの増大を生じた。Kirbyら、Biochem.J.(1980)186:591−598。従って、疾患部位への薬物送達は低減される。Allenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)85:8061−8071。
【0005】
ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピンおよびホスファチジルセリンを含むリポソームの循環寿命の比較により、ホスファチジルセリンリポソームが循環から迅速に排除される一方で、カルジオリピンリポソーム、ホスファチジルグリセロールリポソームおよびホスファチジルイノシトールリポソームは、ラットにおいて減少した速度で排除されることが明らかとなった(Kao,Yら、J.Pharm.Sci.(1980)69:1338−1349)。
【0006】
特定の負に荷電したリポソームが、インビボ適用において有用性を有し得ることは知られていたが、長い循環特性を付与するためのこれらのリポソームの使用は、ごく最近認識された。W099/59547。これらの研究により、コレステロール/DPPC含有リポソームへのホスファチジルグリセロールの取り込みが、血中安定性の増強を導いたことが明らかとなっている。しかし、これらの調査により、10モル%未満のDMPGで調製されたコレステロール/DPPCリポソームが、10モル%より高いDMPGで調製されたコレステロール/DPPCリポソームと比較して、増大した血中安定性特性を示す場合、脂質ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)のモル%取り込みが、キャリアの循環特性に対して影響を有したこともまた明らかとなった。脂質成分(例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC))が、所望でない特性を有し、従って、これらの処方物中に含まれなかったことにも留意すべきであった。
【0007】
さらなるビヒクル形成脂質に加えてホスファチジルグリセロールを含むリポソーム調製物は、Brodt,P.ら、Cancer Immunol,Immunother.(1989)28:54−58およびHopeら、米国特許第6,139,871号に記載される。しかし、これらの調製物において、非双性イオン性の親水性部分に連結された負に荷電した脂質(例えば、PG)は、10モル%未満の量で存在する。同様に、WO99/59547に記載されたリポソームは、10モル%未満のPGを含む。Akhtar,S.,ら、Nucleic Acids Res.(1991)19:5551−5559およびAhl,P.L.ら、Biochim.Biophys.Acta(1997)1329:370−382およびFarmer,M.C.,ら、Meth.Enzymol.(1987)149:184−200に記載されるリポソームは、本発明のリポソームとは異なり、かなりの量のコレステロールを含む。さらに、Akhtarのリポソームは、使用されるリン脂質中に含まれるアシル鎖が18個未満の炭素原子を含むので、38度よりも低い転移温度を示す。
【0008】
米国特許第5,415,869号は、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールを含み得るリポソーム中に含まれるタキソール処方物を記載する。これらのリポソームが、延長された循環寿命を有するという示唆は存在せず、そして38℃より高い転移温度が好ましいということも示されない。
【0009】
米国特許第4,769,250号は、アニオン性リン脂質および中性リン脂質(DSPGおよびDSPCを含む)の混合物から作製された処方物を記載しているが、これらのリポソームは、45〜55nmの寸法を有するSUVである。
【0010】
凍結および凍結乾燥(freeze−drying(lyophilization))に起因する有害な影響を防止するために、リポソーム調製物に凍結防止剤が添加されてきた。ジサッカリド(例えば、トレハロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、スクロース、マルトデキストリンおよびデキストラン)は、最も一般的に使用される凍結防止剤である(WO01/05372および米国特許第5,077,056号を参照のこと)。
【0011】
膜結合凍結防止剤が、凍結および凍結乾燥による損傷に対する耐性をさらに改善する目的で利用されてきた。特に、1〜3個の反復単位からなるオリゴ(エチレンオキシド)リンカーを介してリポソーム膜表面に結合した糖は、凍結保護的であることが報告されている(Bendasら、Eur.J.Pharma.Sci.(1996)4:211−222;Goodrich,ら、Biochemistry(1991)30:5313−5318;米国特許第4,915,951号)。Baldeschwielerらは、末端糖基の非存在下で、オリゴエチレンオキシドリンカー自体で調製されたリポソームが、凍結に続く融合に対して保護できないことを報告した(米国特許第4,915,951号を参照のこと)。
【0012】
リポソーム膜中にコレステロールを含めることは、静脈内投与後に薬物の放出を低減することが示されている(例えば、米国特許第4,756,910号、同第5,077,056号および同第5,225,212号;Kirby,C.ら、Biochem.J.(1980)186:591−598;ならびにOgihara−Umeda,I.ら、Eur.J.Nucl.Med.(1989)15:617を参照のこと)。一般に、コレステロールは、二重層の厚さおよび流動性を増加させるが、一方で、リポソームの膜透過性、タンパク質相互作用およびリポタンパク質不安定化を減少させる。リポソーム処方物への従来のアプローチは、かなりの量(例えば、30〜45モル%)のコレステロールまたは等価な膜硬直化剤(例えば、他のステロール)をリポソーム中に含めることを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の開示)
従って、本発明は、以下を含むリポソームを提供する:親水性部分および疎水性部分を有する負に荷電した脂質であって、中性の非双性イオン部分が、この脂質の親水性部分に結合している。特定の実施形態において、本発明のリポソームは、コレステロールを実質的に含まない。このリポソームは、代表的に、生物学的に活性な薬剤を含む。本発明のリポソームは、驚くべきことに、血流中での増強された循環寿命を示す。
【0014】
負に荷電した脂質は、代表的に、リン脂質またはスフィンゴリン脂質である。好ましくは、この脂質は、リン脂質である;すなわち、2つのアシル基が結合したグリセロールであり、ここで、第三のヒドロキシルは、リン酸に結合している。非双性イオン部分は、この負に荷電した脂質に、好ましくはリン酸基に結合している。好ましくは非双性イオン部分は中性であり、その結果、本発明において使用される脂質上の正味の負の電荷は、この脂質成分の負の電荷のみに起因する。
【0015】
非双性イオン部分は、脂質に対して所望の親水性を付与する官能基を含み得、このような基は、アルコール、ケトン、カルボン酸、エーテルおよびアミンから選択される。好ましい非双性イオン部分は、短鎖アルコール(例えば、グリセロール)もしくは環状アルコール(例えば、イノシトール)またはポリアルキレンオキシド(例えば、PEG)である。
【0016】
1実施形態において、このリポソームは、10モル%より多い、1以上の上記の通りの凝集防止脂質(すなわち、非双性イオン部分を含む、負に荷電した脂質);および90モル%までの1以上の小胞形成脂質(ここで、このリポソームは、コレステロールを実質的に含まない)を含む。好ましくは、この非双性イオン部分は、短鎖アルコール(例えば、グリセロール)であるか、またはシクリトール(例えば、イノシトール)もしくはポリアルキレンオキシドである。最も好ましくは、このリポソームを構成する小胞形成脂質は、このリポソームの相転移温度が少なくとも38℃、好ましくは少なくとも40℃よりも高いように選択される。好ましくは、このリポソームの寸法は、80nm〜200nm±25nmの桁である。凍結による損傷に対する保護に関して、1モル%程度の少ない凝集防止脂質が存在し得る。
【0017】
保存に関して、本発明のリポソームは、凍結または凍結乾燥され得、そして凍結防止剤を含み得る。用いられる凍結防止剤の量は、凍結防止剤の型および保護されるべきリポソームの特徴に依存する。当業者は、種々の凍結防止剤の型および濃度を容易に試験して、どの凍結防止剤の型および濃度が特定のリポソーム調製物について最良に作用するかを決定し得る。一般に、100mM以上の桁の糖濃度は、最大レベルの保護を達成するに必要であることが見出されている。数モルの膜リン脂質に関して、100mMの桁のミリモル濃度レベルは、1モルのリン脂質あたり約5モルの糖に対応する。
【0018】
本発明のリポソームは、凍結防止剤を実質的に含まなくてもよい。用語「凍結防止剤を実質的に含まない」とは、20mM未満の凍結防止剤または10mM未満の凍結防止剤を含む、リポソームをいう。異なる濃度の凍結防止剤が、このリポソームの内側および外側に存在する場合、外側または内側に存在する最大濃度が、これらの定義において言及される濃度であると解釈される。
【0019】
本発明のリポソームが凍結されるべきである場合、リポソームがコレステロールを実質的に含まず、親水性ポリマー脂質結合体(特に、約125ダルトンよりも大きい親水性ポリマー脂質結合体)を含むことが好ましいが、必要とはされない。なぜなら、これらのリポソームは、凍結後の因子の融合および漏出に耐性であるからである。従って、リポソームが凍結されるべき場合、これらは、約1モル%〜約30モル%の1以上の親水性ポリマー結合体化脂質および約99モル%までの1以上の小胞形成脂質を含み、コレステロールを実質的に含まない。好ましくは、この親水性ポリマー−脂質結合体は、PEG脂質結合体である。このリポソームはまた、凍結防止剤(例えば、トレハロース、マルトース、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストランまたはアミノ配糖体)を含み得る。特に好ましいのはグルコースである。
このリポソームは、約−5℃まで、好ましくは、約−10℃未満まで、そしてより好ましくは約−20℃未満まで凍結され得る。これらは、凍結される場合、凍結乾燥され得る。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
リポソームを含む組成物であって、該リポソームは、少なくとも1つの小胞形成脂質;少なくとも1モル%の凝集防止剤;および少なくとも1つの生物学的に活性な因子を含み、そしてコレステロールを実質的に含まず;ここで、該リポソームは、80〜200nm+/−25nmの間の平均直径を有し;そして該リポソームは、少なくとも38℃の転移温度(Tc)を有する、組成物。
(項目2)
前記リポソームが、少なくとも18個の炭素原子の鎖長のアシル基を含む小胞形成脂質を含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記凝集防止剤が、PEG化両親媒性脂質またはホスファチジルグリセロール(PG)もしくはホスファチジルイノシトール(PI)である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記凝集防止剤が、PGまたはPIである、項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記リポソームが、少なくとも10モル%の前記凝集防止剤を含む、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記リポソームが、凍結防止剤をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目7)
低温で安定である、項目1に記載の組成物。
(項目8)
凍結または凍結乾燥形態である、項目1に記載の組成物。
(項目9)
項目1に記載の組成物であって、前記リポソームが、10モル%のPIまたは10モル%のPGを含み、そして前記小胞形成脂質が、ジステアロイルホスファチジルコリンである、組成物。
(項目10)
前記生物学的に活性な因子が、FUDRおよび/またはCPT11および/またはカルボプラチンを含む、項目1に記載の組成物。
(項目11)
薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目12)
生物学的因子を必要とする被験体に、該因子を投与する方法であって、該方法は、項目1に記載の組成物の有効量を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目13)
項目1に記載の組成物を、凍結する工程または凍結乾燥する工程を包含する、リポソーム組成物を保存する方法。
(項目14)
項目6に記載の組成物を、凍結する工程または凍結乾燥する工程を包含する、リポソーム組成物を保存する方法。
(項目15)
項目7に記載の組成物を、凍結する工程または凍結乾燥する工程を包含する、リポソーム組成物を保存する方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1Aは、90:10(黒丸)、80:20(白丸)および70:30(逆三角形)のモル比でDSPC/DSPGを含むダウノルビシン充填リポソームの静脈内投与後に血中に残っている、注射した脂質のパーセントを示す、グラフである。
【図1B】図1Bは、90:10(黒丸)、80:20(白丸)および70:30(逆三角形)のモル比でDSPC/DSPGを含むダウノルビシン充填リポソームの静脈内投与後に血中に残っている、注射したダウノルビシンのパーセントを示す、グラフである。
【図2】図2は、FUDRに受動的に封入された、DSPC/DSPG(80:20のモル比)およびDSPC/Chol(55:45のモル比)のリポソームの静脈内投与後の種々の時点でのFUDR−対−脂質の比を示す、グラフである。
【図3】図3は、FUDRおよびイリノテカン(irinotecan)を共充填(co−load)したDSPC/DSPGリポソームの静脈内投与後のFUDR−対−脂質の初期の比のパーセントに対するコレステロール含有量の種々の時点での効果を示す、グラフである。このリポソームは、5モル%(黒丸)、10モル%(白丸)、15モル%(黒い逆三角形)および20モル%(白い逆三角形)でコレステロールを含んでおり、そしてDSPGレベルを、20モル%に一定に保持した。
【図4】図4は、90:10(黒丸)、80:20(白丸)および70:30(逆三角形)のモル比でDSPC/DPPGを含むリポソームの静脈内投与後に血液中に残っている、注射した脂質のパーセントを示す、グラフである。
【図5】図5は、90:10(黒丸)、80:20(白丸)および70:30(逆三角形)のモル比でDSPC/PI(水素化植物)を含むリポソームの静脈内投与後に血液中に残っている注射した脂質のパーセントを示す、グラフである。
【図6A】図6Aは、両方の薬物を充填した後の凍結前の、−20℃にて24時間凍結し、続いて室温で解凍した後の、および−70℃にて24時間凍結し、続いて室温で解凍した後の、FUDRおよびイリノテカンを共充填したDSPC/DSPG(80:20モル比)リポソームのサイズを示す、ヒストグラムである。
【図6B】図6Bは、両方の薬物を充填した後の、凍結前の、−20℃で24時間凍結し、続いて室温で融解した後の、および−70℃で24時間凍結し、続いて室温で融解した後の、FUDRおよびイリノテカン(irinotecan)を共充填したDSPC/DSPG(80:20モル比)リポソームのFUDR対脂質比を示すヒストグラムである。
【図6C】図6Cは、両方の薬物を充填した後の、凍結前の、−20℃で24時間凍結し、続いて室温で融解した後の、および−70℃で24時間凍結し、続いて室温で融解した後の、FUDRおよびイリノテカンを共充填したDSPC/DSPGリポソーム(80:20モル比)のイリノテカン対脂質比を示すヒストグラムである。
【図7】図7は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方に300mMのクエン酸緩衝液を含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソーム、DPPC/コレステロール(55:45モル%)からなるリポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図8】図8は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方に300mMのクエン酸緩衝液を含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソーム、DSPC/コレステロール(55:45モル%)からなるリポソームおよびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図9】図9は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソーム、DPPC/コレステロール(55:45モル%)からなるリポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図10】図10は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソーム、DSPC/コレステロール(55:45モル%)からなるリポソームおよびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図11】図11は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG750(95:5モル%)からなるリポソームおよびDSPC/DSPE−PEG750(95:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図12】図12は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソームの大きさを示すヒストグラムである。DAPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図13】図13は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側にpH4.0のクエン酸を含みかつ外側にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)およびからなるリポソームDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図14】図14は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側にpH4.0のクエン酸を含みかつ外側にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームおよびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図15】図15は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、封入されたグルコースを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図16】図16は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、リポソーム中へのグルコースの封入パーセントを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図17】図17は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、封入されたドキソルビシンを含むDPPC/DSPE−PEG2000リポソームのサイズを示すヒストグラムであり(左パネル)、ドキソルビシン保持パーセントを示すヒストグラムである(右パネル)。
【図18】図18は、充填の間のDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソーム中へのドキソルビシンの封入パーセントを、時間の関数として示すグラフである。充填を、凍結前(黒丸)および凍結後(白丸)に実施した。
【図19】図19は、充填の間のDSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソーム中へのドキソルビシンの封入パーセントを、時間の関数として示すグラフである。充填を、凍結前(黒丸)および凍結後(白丸)に実施した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明を実施する形態)
本明細書中で使用される場合、「リポソーム」は、水相を封入する1つ以上の同心に整列された脂質二重層から構成される小胞を意味する。これらの小胞の形成は、二重層構造をとり得るかまたは二重層構造に取り込まれ得る両親媒性脂質である「小胞形成脂質」の存在を必要とする。これとしては、単独でまたは別の脂質と組み合わせた場合、二重層を形成し得るような脂質が挙げられる。両親媒性脂質は、二重膜の内部の疎水性領域と接触するその疎水性部分および膜の外側の極性表面に向いたその極性頭部部を有することによって脂質二重層に組み込まれる。ほとんどのリン脂質は、小胞形成脂質の前者の型に属するのに対して、コレステロールは、後者の型の代表である。
【0022】
本発明のリポソームまたは脂質キャリアに組込まれ得る適切な小胞形成脂質は、種々の両親媒性脂質(代表的には、ホスファチジルコリン(PC)のようなリン脂質およびスフィンゴミエリンのようなスフィンゴリピドを含む)から選択され得る。本明細書中において、脂質について用語「嵩高い」または「構造的」は、リポソームの構造に寄与する小胞形成脂質を意味する。
【0023】
本発明に従って調製されたリポソームは、小胞を調製するために使用される従来の技術によって調製され得る。これらの技術としては、エーテル注入法(Deamerら、Acad.Sci.(1978)308:250)、界面活性剤法(Brunnerら、Biochim.Biophys.Acta(1976)455:322)、凍結融解法(Pickら、Arch.Biochim.Biophys.(1981)212:186)、逆相エバポレーション法(Szokaら、Biochim.Biophys.Acta(1980)601:559−571)、超音波処理法(Huangら、Biochemistry(1969)8:344)、エタノール注入法(Kremerら、Biochemistry(1977)16:3932)、押し出し法(Hopeら、Biochim.Biophys.Acta(1985)812:55−65)、およびフレンチプレス法(Barenholzら、FEBS Lett.(1979)99:210)が挙げられる。これらのプロセスは、組み合わせて使用され得るかまたは改変され得る。小さな単層小胞(SUV)は、超音波処理法、エタノール注入法およびフレンチプレス法によって調製され得る。好ましくは、多層小胞(MLV)は、逆相エバポレーション法によって、または水を脂質フィルムに単に添加した後、機械的攪拌により分散することによって調製される(Banghamら、J.Mol.Biol.(l965)13:238−252)。
【0024】
本発明の実施において使用され得る特に適切なリポソーム調製物は、大きな単層小胞(LUV)である。LUVは、エーテル注入法、界面活性剤法、凍結融解法、逆相エバポレーション法、フレンチプレス法または押し出し法のいずれかによって調製され得る。好ましくは、LUVは、押し出し法に従って調製される、押し出し法は、まず、クロロホルム中で、脂質を所望のモル比を得るように合わせる工程を包含する。脂質マーカーは、必要に応じて、脂質調製物に添加され得る。得られた混合物は、窒素ガス流下で乾燥され、溶媒が実質的に除去されるまで真空ポンプ中に配置される。次いで、サンプルを、適切な緩衝液または治療剤の混合物中で水和する。次いで、混合物は、押し出し装置を通され、規定の平均サイズのリポソームが得られる。平均リポソームサイズは、例えば、NICOMPTM 370サブミクロン粒径測定器を使用して632.8nmの波長で準弾性光散乱によって決定され得る。
【0025】
「実質的にコレステロールを含まない」リポソームは、リポソームの相転移特性を有意に変化させるのに十分ではない量のコレステロール(代表的には、20モル%未満のコレステロール)を含み得る。20モル%以上のコレステロールは、相転移が生じる温度の範囲を広くする。相転移は、より高いコレステロールレベルでは消失する。好ましくは、コレステロールを実質的に有さないリポソームは、約15モル%以下のコレステロール、より好ましくは約10モル%以下のコレステロールを有し、より好ましくは、約5モル%以下のコレステロールまたは約2モル%以下のコレステロールまたは1モル%以下のコレステロールを有する。また、「コレステロール非含有」リポソームを調製する場合、コレステロールは、存在しなくても添加されなくてもよい。
【0026】
用語「生理的pHで負に荷電した脂質」または「負に荷電した脂質」は、生理的pHで1つ以上の負電荷を有する小胞形成脂質をいう。本発明での使用のための適切な負に荷電した脂質は、リン脂質またはスフィンゴリン脂質であり得る。非双性イオン部分を含む負に荷電した脂質は、5〜95モル%で、より好ましくは10〜50モル%で、そして最も好ましくは15〜30モル%で、リポソームに組込まれ得る。「非双性イオン部分」は、生理的pHで反対の電荷を有さないが、親水性である部分をいう。
【0027】
本発明で使用される脂質における正味の負電荷は、単に負に荷電した脂質上(例えば、リン酸基上)の電荷の存在から生じ得るか、またはさらなる負電荷は、非双性イオン部分上に存在する1つ以上の負に荷電した基の存在に起因し得る。好ましくは、正味の負電荷は、単に脂質上の1つ以上の負に荷電した基の存在から生じ、この場合において、非双性イオン部分は、中性基である。好ましくは、非双性イオン部分は、2〜6の炭素原子を含む。
【0028】
適切な非双性イオン部分は、ヘッド基に親水性特性を付与する電子吸引性官能基を含む。このような官能基は、アルコール、酸、ケトン、エステル、エーテル、アミド、およびアルデヒドからなる群から選択され得る。サッカリドもまた、このことについて使用され得る。
【0029】
モノサッカリドとしては、アラビノース、フコース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、リボースおよびキシロースが挙げられる。ジサッカリドとしては、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、ゲンチオビオース、およびマルトースが挙げられる。リポソームの循環からのクリアランスの増加が、細胞表面へのリポソームの結合から生じ得るので、細胞レセプターに結合しないモノサッカリドおよびジサッカリドが、好ましい。
【0030】
非双性イオン部分が、生理的pHで中性であるように選択される場合、イオン化不可能基(例えば、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミドおよびアルデヒド)の組込みが選択される。
【0031】
本発明の1つの実施形態において、非双性イオン部分は、短鎖アルコールであり、好ましいアルコールは、2つ以上のヒドロキシル基を含む。アルコールは、グリセロールが一例である直鎖ポリオールであり得、グリセロール分子の末端ヒドロキシル基を介してリン脂質のリン酸に結合して、得られた分子は、ホスファチジルグリセロール(PG)と呼ばれる。好ましくは、ホスファチジルグリセロールの脂肪酸鎖は、独立して、カプロイル(6:0)、オクタノイル(8:0)、カプリル(10:0)、ラウロイル(12:0)、ミリストイル(14:0)、パルミトイル(16:0)、ステアロイル(18:0)、アラキドイル(20:0)、ベヘノイル(22:0)、リグノセロイル(lingnoceroyl)(24:0)またはフィタノイルであり、これらは、シス配座またはトランス配座のこれらの脂肪酸鎖の不飽和バージョン(例えば、オレオイル(18:1)、リノレオイル(18:2)、アラキドノイル(20:4)、およびドコサヘキサエノイル(22:6))を含む。14〜18炭素原子の2つのアシル鎖を有するリン脂質が、好ましい。いずれにせよ、1つの実施形態において、負に荷電した脂質の疎水性置換基の性質は、リポソームの相転移温度が、約38℃より高く、好ましくは約40℃より高いというような性質である。
【0032】
別の実施形態において、非双性イオン部分は、環構造であり、好ましくは、シクリトールである。このような化合物は、分子に所望の水溶性を付与する種々の基で誘導体化され得る。好ましくは、シクリトールは、リン酸基を介してリン脂質に結合されたイノシトールであり、得られた化合物は、ホスファチジルイノシトールである。好ましくは、ホスファチジルイノシトールの脂肪酸鎖は、独立に選択され、それは、上記の通りである。
【0033】
別の実施形態では、非双性イオン部分は、「親水性ポリマー−脂質結合体」を形成するポリマーであり得る。これは、その極性頭部部分で親水性ポリマーに共有結合された小胞形成脂質をいい、そしてポリマーに付着させるために、極性頭部部分に反応性官能基を有する脂質から代表的には形成される。適切な反応性官能基は、例えば、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、またはホルミルである。この脂質は、このような結合体において使用することについて当該分野で記載される任意の脂質であり得る(例えば、リン脂質、スフィンゴ脂質、およびセラミド)。好ましくは、この脂質は、種々の不飽和度の長さ約6個〜約24個の間の炭素原子を含む2つのアシル鎖を有するリン脂質(例えば、PC、PE、PAまたはPI)である。結合体における脂質は、例えば、PEであり得、好ましくは、ジステアロイル形態である。ポリマーは、リポソームの均一な表面範囲を生じる十分な可撓性で、ポリマー鎖を、リポソーム表面から効果的に伸長することを可能にする、水における溶解度により特徴付けられる生体適合性ポリマーである。好ましくは、ポリマーは、ポリアルキルエーテル(ポリメチレングリコール、ポリヒドロキシプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアクリル酸、およびそれらのコポリマー、ならびに米国特許第5,013,556号および第5,395,619号に開示されたものを含む)である。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。結合体は、放出可能な脂質ポリマー結合(例えば、ペプチド結合、エステル結合、またはジスルフィド結合)を含むように調製され得る。結合体はまた、標的化リガンドを含み得る。結合体の混合物は、本発明において使用するためのリポソームに取り込まれ得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「PEG結合体化脂質」は、ポリマーがPEGである、上記に規定した親水性ポリマー−脂質結合体をいう。
【0035】
親水性ポリマー−脂質結合体または他の非双性イオン含有負荷電脂質は、一旦所望の生体分布が達成されれば、LUVキャリア表面を露出するように選択的な生理条件下で開裂され得る放出可能な脂質−ポリマー結合(例えば、ペプチド結合、エステル結合、またはジスルフィド結合)を含むように調製され得る。例えば、米国特許第6,043,094号、またはKirpotinら、FEBS Letters(1996)388:115−188において開示される。
【0036】
親水性ポリマー−脂質結合体はまた、特定の細胞にリポソームを指向させるために、ポリマーの遊離末端に付着された標的化リガンドを含み得る。標的化リガンドの結合体化を可能にするポリエチレングリコールの誘導体は、例えば、メトキシ(ヒドラジド)ポリエチレングリコールおよびビス(ヒドラジド)ポリエチレングリコールである。
【0037】
負荷電脂質は、天然供給源から得られ得るか、または化学合成され得る。脂質の頭部基に化合物を共有結合するための方法は、当該分野で周知であり、そして脂質頭部基の末端部の官能基を、付着される部分上の官能基と反応させることを包含する。非双性イオン親水性部分の化学的付着のために適切な負荷電脂質は、反応性化学基で終結する極性頭部基を有する脂質(例えば、ホスフェート、アミン)を含む。特に適切な脂質の例は、反応性アミノ基を含むので、ホスファチジルエタノールアミンである。ホスファチジルエタノールアミン誘導体を調製するための方法は、Ahl,P.ら、Biochim.Biophys.Acta(1997)1329:370−382に記載されている。既に非双性イオン部分を含む天然供給源から得られた負荷電脂質の例としては、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルイノシトール(これらはそれぞれ、卵、植物供給源から得られる)が挙げられる。
【0038】
本発明のリポソームは、周囲環境における温度の上昇に感受性であるように調製され得る。このようなリポソームの温度感受性は、(高体温の臨床手順におけるように)熱されたか、または(炎症におけるように)身体の残りの部分よりも固有に高い温度である標的部位でのリポソームの内部水性腔内に捕捉された化合物の放出、および/または脂質二重奏と結合した化合物の放出を可能にする。温度依存様式で化合物の放出を可能にするリポソームは、「温度感受性リポソーム」と呼ばれ、そして低レベルのコレステロールを含有する。本発明のリポソームは、高体温の範囲で(例えば、約38℃から約45℃の範囲)でのゲル−液体結晶転移温度を有する脂質を含む。約38℃から約45℃の相転移温度を有するリン脂質が好ましく、そしてアシル基が飽和されているリン脂質がより好ましい。特に好ましいリン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。
【0039】
本発明の温度感受性リポソームは、比較的水溶性の界面活性剤(例えば、リゾ脂質(lysolipid))を、主に比較的水溶性の分子で構成される二重層(例えば、二鎖リン脂質(例えば、DPPC))に組み込み得る。主要脂質成分のゲル相における界面活性剤の組み込みは、主要脂質のゲル−液結晶相転移温度に加熱された場合に、得られたリポソームからの内容物の放出を増強する。好ましい界面活性剤は、リゾ脂質であり、そして特に好ましい界面活性剤は、モノパルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)である。適切な界面活性剤は、二重層の主要脂質と適合性であり、そして液体が液相へ融解する場合に脱着する界面活性剤である。リン脂質二重層における使用のためのさらなる適切な界面活性剤としては、パルミトイルアルコール、ステアロイルアルコール、モノパルミチン酸パルミトイル、モノパルミチン酸ステアロイル、モノパルミチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、およびモノアシル化脂質(例えば、スフィンゴシンおよびスフィンガミン(sphingamine))が挙げられる。
【0040】
本発明のリポソームはまた、液晶転移温度が45℃より高くなるように調製され得る。この場合、リポソームを構成する小胞形成脂質は、PCまたはPEのようなリン脂質である。好ましいリン脂質は、PCである。罹患脂質を選択する際、これらの脂質のアシル鎖の長さが4つ以上のメチレン基だけ異なる場合、相分離が起こり得るので注意されるべきである。好ましくは、脂質は、2つの飽和脂肪酸を有する(これらのアシル鎖は、以下からなる群から独立して選択される:ステアロイル(18:0)、ノナデカノイル(19:0)、アラキドイル(20:0)、ヘンイコサノイル(heniecosanoyl)(21:0)、ベヘノイル(22:0)、トリコサノイル(23:0)、リングセロイル(lingnoceroyl)(24:0)およびセロトイル(cerotoyl)(26:0))。好ましくは、少なくとも1つ(おとびより好ましくは両方)のアシル鎖が18:0、またはそれより長い。
【0041】
本発明の実施形態は、感熱性の適用について有用である相転移温度より高い相転移温度(例えば、約45℃以上)を有するコレステロールを実質的に含まないリポソームを使用し得、これは、2001年11月15日に公開されたPCT/CA01/00655(本明細書中に参考として援用される)に記載されるような増強された薬物保持を示す。このようなリポソームは、18より多い炭素原子の少なくとも1つのアシル鎖を有する少なくとも60mol%のリン脂質を有するコレステロールを含まないリポソームを含む。
【0042】
本発明の実施形態は、コレステロールを実質的に含まないリポソームを使用し得、約200mM未満の内部負荷緩衝濃度で、pH勾配負荷技術に従って負荷される場合、試薬の増加した全身保持を提供する。このようなリポソームは、2001年11月13日に出願されたU.S.60/331,249(本明細書中に参考として援用される)に記載される。コステロールを含まないリポソームにおいて乏しい全身保持を示す試薬は、本実施形態に従ってより安定に保持され得る。
【0043】
本発明の実施形態は、注射によって投与される場合、内部緩衝液の浸透圧が、リポソームが存在する媒体の浸透圧に近くなるように選択される場合、封入された治療剤の増加した全身保持を示すコレステロールを含まないリポソームを使用し得る。このようなリポソームは、2001年11月13日に出願されたU.S.60/331,249(本明細書中に参考として援用される)に記載される。従って、この実施形態は、コレステロールを含まないリポソームおよびリポソーム内部緩衝液が媒体の溶質浸透圧に適合するコレステロールを含まないリポソームを含む注入媒体を含む低溶質の使用を含む。
【0044】
本発明の実施形態は、患者に適用され得る温度(例えば、約45℃以下)で不安定化する「感熱性」リポソームを使用し得、2001年12月14日に出願されたU.S.60/339,405(本明細書中に参考として援用される)に記載されたものを含む。従って、本実施形態は、被験体に、活性剤を含む感熱性リポソームを投与することによって被験体の目的の部位に試薬を送達するための方法の使用を含み得るか、またはその使用から生じ得、目的の部位へのリポソームの局在化についての延長した時間可能にし、続いてリポソーム含量の放出を引き起こす目的の部位で恒温動物の処置を施す。
【0045】
本発明の実施形態はまた、脂質に結合体化した親水性部分を含むコレステロールを含まないリポソームを使用し得る。このようなリポソームは、凍結後の試薬の融合および漏出、引き続くに耐性であり、そして2001年11月13日に出願されたU.S.60/331,248(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0046】
本発明の1つの局面において、コレステロールを含まないリポソームが提供され、ここで、負に荷電した脂質は、10mol%より多くリポソーム中に取り込まれる。本発明のこの局面において、非双性イオン性の部分は、好ましくは、グリセロールのような単鎖アルコールである。最も好ましくは、本発明の本実施形態ににおけるリポソームを構成する小胞形成脂質は、リポソームの相転移温度が約40℃より高くなるように選択される。本発明のこの局面についての全ての他の好ましい性質および条件は、一般的に上記に記載される通りである。
【0047】
リポソームの循環寿命の測定は、当該分野で公知の手段によって行われ得る。これらの手段としては、試験動物への静脈内投与および血液レベルのモニタリングを含む、以下の実施例において記載される方法が挙げられる。この測定は、静脈内投与のために意図されるリポソームについて、静脈内投与に適切なビヒクルまたは希釈剤中でリポソームまたは脂質キャリアを処方し、この処方物を投与し、そして血液レベルをモニタリングすることによって、行われ得る。この測定は、罹患した動物モデルへの投与後の構成成分(例えば、リポソームまたは脂質キャリア中に存在する放射標識)の量を測定することによって行われ得る。
【0048】
本発明の実施形態は、コレステロールを含まないリポソームを使用し得る。このコレステロールを含まないリポソームは、脂質に結合体化された親水性部分の組み込みを介して、コレステロール含有脂質と同等に挙動するように選択されるかまたはそのように作製される(例えば、U.S.60/339,404(2001年12月14日出願)(これは、本明細書中で参考として援用される)に開示される)。本発明のこのような実施形態は、試験形式(この形式は、被験体の体温に対してわずかに体温上昇である相転移温度を有する、コレステロールを含まないリポソームの循環寿命と、同等のコレステロール含有リポソームの循環寿命との比較に基づく)を使用して、リポソームを調製する方法または選択する方法の使用を包含し得るかまたはその使用に起因する。このように選択されたリポソーム組成物は、リポソーム安定性および薬物保持特性の増強を可能にする。
【0049】
本発明のリポソームは、送達薬物に有用であり、従って生物学的に活性な因子を含むように処方される。
【0050】
多様な因子が、本発明のリポソームに封入され得る。本発明のリポソームはまた、封入された因子と共に凍結され得るか、あるいはこの因子は、凍結に続いて封入され得る。用語「因子」は、治療適用および診断適用において使用され得る化学的部分をいう。本明細書中で使用される場合、用語「治療剤」および「薬物」は、治療において使用される化学的部分をいい、リポソームベースの薬物送達が望ましい。本発明のリポソームは、治療剤(例えば、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤および抗菌剤)で封入され得る。本明細書中で使用される場合、用語「抗菌剤」および「抗ウイルス剤」は、微生物およびウイルスの、成長、増殖および生存のそれぞれに関する効果を有する化学部分をいう。抗菌剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ペニシリンG、ストレプトマイシン、アンピシリン、ペニシリン、カルベニシリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、アンホテリシンB、バンコマイシン、ならびにフロキサシン(floxacin)およびフロキサシン誘導体(シクロフロキサシン(ciprofloxacin)、ノルフロキサシン(norfloxacin)、ガトリフロキサシン(gatrifloxacin)、レボフロキサシン(levofloxacin)、モキフロキサシン(moxifloxacin)およびトロバフロキサシン(trovafloxacin))。抗ウイルス剤としては、AZTが挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「抗腫瘍剤」は、新生細胞または腫瘍の、成長、増殖、侵襲性または生存に関する効果を有する化学部分をいう。抗腫瘍治療剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗物質薬、細胞傷害性抗生物質および種々の植物アルカロイドならびにそれらの誘導体が挙げられる。
【0051】
薬剤は、当該分野において公知の受動的充填技術により本発明のリポソームの内側に封入され得る。リポソーム中に治療剤を封入する受動的方法は、リポソームの合成の間に薬剤を包埋する工程を包含する。この方法において、この薬剤は、捕捉された水性空間内に会合または包埋された膜であり得る。これは、Banghamら、J.Mol.Biol.(1965)12:238により記載される受動的捕捉方法を含み、ここで、目的の薬剤を含む水相は、反応容器の壁に沈着した、乾燥した小胞形成脂質の層と接触される。機械的手段による撹拌の際、脂質の膨張が生じ、そして多層小胞(multilammellar vesicle)(MLV)が形成される。押出しを用いて、MLVが、超音波処理後に、大単層小胞(large unilamellar vesicle)(LUV)または小単層小胞(small unilamellar vesicle)(SUV)に変換され得る。用いられ得る受動的充填の別の方法としては、Deamerら、Biochim.Biophys.Acta(1976)443:629に記載される方法が挙げられる。この方法は、エーテル中に小胞形成脂質を溶解する工程を包含し、そして最初にエーテルをエバポレートして表面に薄層を形成する(その後、この薄層が、封入される水相と接触される)代わりに、このエーテル溶液が直接この水相に注入され、そしてその後エーテルがエバポレートされ、これにより、封入された薬剤を有するリポソームが得られる。使用され得るさらなる方法は、Szokaら、P.N.A.S.(1978)75:4194により記載される逆相エバポレーション(REV)法であり得、この方法において、水不溶性有機溶媒中の脂質の溶液が、水性キャリア相に乳化され、そして引き続き、有機溶媒が減圧下で除去される。
【0052】
用いられ得る受動捕捉の他の方法は、リポソームを連続的な脱水および再水和の処理、または凍結および解凍に供する工程を包含する。この技術は、Kirbyら、Biotechnology(1984)979〜984により開示される。また、Shewら、Biochim.Biophys.Acta(1985)816:1〜8は、超音波処理により調製されたリポソームが、水溶液中で、封入される溶質と混合され、そしてこの混合物が、回転フラスコ中、窒素下で乾燥される方法を記載する。再水和の際、有意な画分の溶質が封入されている大きなリポソームが生成される。
【0053】
薬剤は、能動的封入方法を用いて封入され得る。能動的充填は、リポソームが形成された後での治療薬剤の取り込みを誘導するための、リポソーム膜を通る膜内外勾配の使用を包含する。これは、Na+、K+、H+、および/またはプロトン化窒素部分を含む1以上のイオンの勾配を包含し得る。本発明に従って用いられ得る能動的充填技術としては、pH勾配充填、電荷誘引、およびこの薬物に結合し得る薬剤による薬物シャトリングが挙げられる。
【0054】
リポソームは、pH勾配充填技術に従って充填され得る。この技術に従って、選択されたpHの水相を封入するリポソームが形成される。水和したリポソームは、封入される薬物または他の薬剤上の電荷を除去または最小にするために選択された、異なるpHの水性環境中に配置される。一旦、この薬物がこのリポソームの内側に移動したら、この内部のpHは、荷電した薬物状態をもたらし、このことは、この薬物が脂質二重層を透過することを防止し、それにより、この薬物をこのリポソーム内に封入する。
【0055】
pH勾配を作製するために、元の外部媒体は、異なる濃度のプロトンを有する新たな外部媒体によって置換される。外部媒体の置換は、種々の技術によって(例えば、脂質小胞調製物を、(以下の実施例に記載したような)新たな媒体で平衡化したゲル濾過カラム(例えば、Sephadexカラム)に通過させることによって、または遠心分離技術、透析技術もしくは関連の技術によって)達成され得る。内部媒体は、外部媒体に対して酸性または塩基性のいずれであってもよい。
【0056】
pH勾配の確立後、pH勾配充填可能薬剤は、この混合物に添加され、そしてこのリポソーム中へのこの薬物の封入が、上記の通りに生じる。
【0057】
pH勾配を用いた充填は、本明細書中に参考として援用される米国特許第5,616,341号、同第5,736,155号および同第5,785,987号に記載される方法に従って実施され得る。
【0058】
pH勾配充填を用いて充填され得る治療薬剤は、中性形態のイオン化可能部分が、この薬物がこのリポソーム膜を横切ることを可能にし、そして荷電した形態へのこの部分の変換が、この薬物がこのリポソーム内に封入されたままであることを引き起こすように、1以上のイオン化可能部分を含み得る。イオン化可能部分は、アミン基、カルボン酸基およびヒドロキシル基を含み得るが、これらに限定されない。酸性内部に応答して充填される薬剤は、酸性環境に応答して荷電されるイオン化可能部分を含み得るのに対して、塩基性内部に応答して充填される薬物は、塩基性環境に応答して荷電される部分を含む。塩基性内部の場合、カルボン酸基またはヒドロキシル基を含むがこれらに限定されない、イオン化可能部分が利用され得る。酸性内部の場合、1級アミン基、2級アミン基および3級アミン基を含むがこれらに限定されない、イオン化可能部分が用いられ得る。好ましくは、pH勾配充填可能な薬剤は治療薬剤であり、そして最も好ましくは抗腫瘍性薬剤、抗微生物薬剤または抗ウイルス薬剤である。pH勾配充填法によってリポソーム中に充填され得、それゆえ、本発明において使用され得る治療薬剤の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アントラサイクリン抗生物質(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトザントロン、エピルビシン、アクラルビシンおよびイダルビシン);抗腫瘍性抗生物質(例えば、マイトマイシン、ブレオマイシンおよびダクチノマイシン);ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびナベルビン(navelbine));プリン誘導体(例えば、6−メルカプトプリンおよび6−チオグアニン);プリン誘導体およびピリミジン誘導体(例えば、5−フルオロウラシル);カンプトテシン(例えば、トポテカン、イリノテカン、ルートテカン(lurtotecan)、9−アミノカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシンおよび10−ヒドロキシカンプトテシン);シタラビン(例えば、シトシンアラビノシド);抗微生物剤(例えば、シプロフロキサシンおよびそれらの塩)。本発明は、現在入手可能な薬物に限定るべきでないが、未だ開発も市販もされておらずかつ膜内外pH勾配を用いて充填され得る他の薬物まで拡大される。
【0059】
リポソームに亘るpH勾配を達成し、そして維持するために種々の方法が、使用され得る。これは、そのリポソームが膜に入り込みそしてプロトンと交換で膜を横切ってイオンを輸送し得るイオン透過担体の使用を含み得る(例えば、米国特許第5,837,282号を参照のこと)。そのリポソーム膜を横切ってプロトンを輸送し、それによって、pH勾配を設定し得るリポソームの内側に封入された緩衝剤がまた、利用され得る(例えば、米国特許第5,837,282号を参照のこと)。これらの緩衝剤は、脱プロトン化しているときは中性であり、かつプロトン化したときは荷電している、イオン化可能部分を含む。この緩衝剤の中性の脱プロトン化形態(これは、プロトン化形態と平衡状態にある)は、リポソーム膜を横断することができ、従って、そのリポソームの内部にプロトンを残し、それによって、内部のpHを上昇させる。このような緩衝剤の例としては、塩化アンモニウムメチル、硫酸メチルアンモニウム、硫酸エチレンジアンモニウム(米国特許第5,785,987を参照のこと)および硫酸アンモニウムが挙げられる。塩基性の内部pHを達成し得る内部に充填された緩衝剤がまた、利用され得る。この場合において、この緩衝剤の中性形態が、プロトン化されて、その結果、プロトンが、リポソーム内部から輸送されて、塩基性の内部を達成する。このような緩衝剤の例は、酢酸カルシウムである(米国特許第5,939,096号を参照のこと)。
【0060】
電荷誘引法は、治療剤を能動的に充填するために使用され得る。薬物充填のための電荷誘引機構は、1以上の荷電した種について濃度勾配を生成することによって、膜を横切る膜貫通電位を生成することを含む。従って、イオン化したときに負に荷電した薬物について、膜貫通電位が、外側の電位に対して正である内側の電位を有する膜を横切って生じる。正に荷電した薬物について、反対の膜貫通電位が使用される。
【0061】
1つの実施形態において、調製に続いて、そのリポソームは、0℃より低い温度に供され、その結果、凍結状態で存在する。このリポソームは、以下によって凍結され得る:液体窒素への浸漬、ドライアイス、−20℃の従来型フリーザーまたは−80℃もしくは−70℃の従来型フリーザー。代替的実施例において、そのリポソームは、液体窒素中に凍結され得、その後、フリーザー内に浸漬させる。リポソームは、それらが使用されるまで長期期間におよんで凍結状態で安定に貯蔵され得る。凍結後に、このリポソームは、0℃より高い温度に供することによってさらなる使用のために解凍され得る。
【0062】
このリポソームは、0℃より低い温度に供される前に、封入された薬剤を含む。これは、上述の能動的充填技術および受動的充填技術を使用して、薬剤を予め形成されたリポソームにロードすることに関連する。このカプセルされた薬剤が治療薬である場合に、この解凍されたリポソームは、リポソーム封入薬剤を投与するための既知の手順に従って、治療において直接的に使用され得る。
【0063】
このリポソームには、凍結の後に、薬剤が能動的に充填され得る。これにより、凍結リポソームが非封入形態で薬物製造業者に提供されることが、可能になる。その製造業者は、その後、そのリポソームに、薬剤を能動的に充填し得る。好ましい能動的充填方法は、上記のpH勾配充填法である。リポソームは、膜を通るpH勾配を伴って凍結され得るか、またはこの勾配は、凍結後に生成され得る。
【0064】
この勾配が凍結後に生成される場合、外部緩衝液は、異なるプロトン濃度を有する新しい外部媒体により交換および置換され得る。この外部pHはまた、酸または塩基の添加によって調整され得る。この外部媒体の置換は、種々の技術によって達成され得、例えば、(以下の実施例において示されるように)新しい媒体ゲルで平衡化されたゲル濾過カラム(例えば、Sephadexカラム)に脂質小胞調製物を通すことによってか、または遠心分離技術、透析技術、もしくは関連技術によって、達成され得る。内部媒体は、この外部媒体に対して酸性または塩基性のいずれであってもよい。
【0065】
本発明のリポソームはまた、1回より多くの凍結および解凍のサイクルに供され得る。
【0066】
凍結後、そのリポソーム調製物は、そのリポソームが中に浸漬されている水性溶媒を除去することによって、脱水され得る。このリポソームは、好ましくは、標準的な凍結乾燥装置または等価な装置を使用して脱水される。すなわち、このリポソームは、好ましくは、減圧下で脱水される。使用前に、この乾燥リポソーム調製物は、そのリポソームが懸濁される適切な溶媒を添加することによって、再構成され得る。好ましくは、このリポソーム調製物は、減圧を導入することによって脱水される。減圧を適用するための手段としては、真空ポンプまたは等価な装置の使用が挙げられる。この脱水プロセスは、好ましくは、室温ではなく、低下した温度にて実行される。一旦このリポソームが脱水されると、このリポソームは、使用されるまで長期間にわたって保存され得る。
【0067】
本明細書における用語「低温安定な(cryostable)」とは、いくつかの望ましくない効果のうちの1つを引き起こすに十分である約0℃未満の温度に本リポソーム組成物を曝露した際に生じるこれらの望ましくない効果のうちのいずれか1つに対して実質的に抵抗性である、リポソームを指す。望ましくない効果としては、そのリポソームの凝集および/または融合に起因する、リポソームサイズの増加、そのリポソーム調製物のサイズ分布もしくは濁度の増加、ならびに封入された薬剤の損失が挙げられるが、これらに限定されない。代表的には、望ましくない副作用は、0℃未満の温度、−5℃未満の温度、なおより代表的には−10℃未満の温度で生じる。
【0068】
リポソームが低温安定であるか否かは、例えば、そのリポソームを0℃未満の温度に曝露することに関連する望ましくない効果を測定することによって、評価され得る。0℃未満の温度に供した前と後でのそのリポソームのサイズ変化を測定することは、準弾性光散乱(QELS)を使用して下記のように実行され得る。このリポソームの融合はまた、蛍光共鳴エネルギー転移を含む他の手段によっても、測定され得る。このことは、励起されたプローブと第2のプローブとの近接に起因する、その励起されたプローブから第2のプローブへのエネルギー転移の測定を包含する。凍結後の封入された薬剤の放出の測定は、以下に開示されるように実行され得る。封入された薬剤は、上記の能動的充填法または受動的充填法を使用して、このリポソーム中に組込まれ得る。捕捉された薬剤の漏出は、凍結前および凍結後に捕捉された薬剤の量を測定することによって、測定され得る。その薬剤は、放射性標識剤の場合にはシンチレーション計数によって、または定量のために検出可能な吸光度を含む薬剤の場合には分光法によって、定量され得る。あるいは、その薬剤は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、原子吸光技術および関連技術によって、定量され得る。
【0069】
リポソーム調製物もまた、凍結損傷の巨視的証拠(例えば、巨視的粒子の存在)について、および非凍結コントロールサンプルと比較した懸濁物の透明度または濁度について、視覚的に検査され得る。濁度は、650nmに設定した分光光度計を使用して、測定され得る。このリポソームはまた、大きな粒子、凝集物、またはそのリポソームが低温安定ではないことを示し得る他の変化について、遠心分離によって試験され得る。遠心分離後、その遠心管は、肉眼で観察され得るその管の底にある粒子の存在について、観察される。
【0070】
このリポソームを0℃未満の温度に曝露することに関係する望ましくない効果は、コレステロールを含む等価なリポソーム処方物と比較され得る。
【0071】
本発明はまた、本発明のリポソームを哺乳動物に投与する方法、および障害(例えば、癌)に罹患している哺乳動物または障害(例えば、癌)に対して感受性である哺乳動物または障害(例えば、癌)に罹患している疑いがある哺乳動物を処置する方法を包含する。本発明の組成物の医学的使用の例としては、癌の処置、心血管疾患(例えば、高血圧、心律動異常、および再狭窄)の処置、細菌感染の処置、真菌感染の処置、または寄生生物感染の処置、本発明の組成物をワクチンとして使用することを介する疾患の処置および/もしくは予防、炎症の処置、または自己免疫疾患の処置が挙げられるが、これらに限定されない。特に、本発明は、被験体にリポソームを投与する方法を包含し、この方法は、本発明のリポソームを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。処置方法または投与方法は、一般的には、その障害またはその症状を改善するに十分である投与量にて本発明の薬学的組成物を投与する工程を包含することが理解される。
【0072】
ヒトの病気を処置するために、有資格医師は、用量、スケジュール、および投与経路に関して本発明の組成物がどのように利用されるべきかを、確立されたプロトコルを使用して決定することが予期され得る。そのような適用はまた、本発明の送達ビヒクル組成物において封入された活性薬剤が被験体の健常組織に対して減少した毒性を示すのであれば、用量増大を利用し得る。
【0073】
本発明のリポソームを含む薬学的組成物は、標準的技術に従って調製され、そしてこの薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。一般に、通常の生理食塩水が、この薬学的に受容可能なキャリアとして使用される。他の適切なキャリアとしては、例えば、水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、5%デキストロースなどが挙げられ、安定性増加のための糖タンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)が挙げられる。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。生じる水溶液は、使用のために包装され得るか、または無菌条件下で濾過され凍結乾燥され得る。その凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌水溶液と合わされる。この組成物は、生理的条件に近づけるために必要である薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤など(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど))を含み得る。さらに、このリポソーム懸濁物は、保存の際に脂質をフリーラジカルおよび脂質過酸化損傷から保護する、脂質保護剤を含み得る。親油性フリーラジカルクエンチャー(例えば、αトコフェロールおよび水溶性鉄特異的キレーター(例えば、フェリオキサミン)が、適切である。
【0074】
この薬学的処方物中のリポソーム濃度は、広範に、すなわち、約0.05重量%未満から、通常は、少なくとも約2重量%〜5重量%から、10重量%〜30重量%程度まで変化し得、選択される特定の投与様式に従って、主に流体容積、粘度などによって選択される。例えば、その濃度は、処置に関連する流体負荷を低下させるために増加され得る。あるいは、刺激性脂質から構成されたリポソームは、投与部位の炎症を弱めるために、低濃度に希釈され得る。診断のために、投与されるリポソームの量は、使用される特定の標識、診断される疾患状態、および臨床家の判断に依存する。
【0075】
好ましくは、その薬学的組成物は、非経口投与、すなわち、動脈内投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、または筋肉内投与されるか、あるいはエアロゾルを介して投与される。エアロゾル投与法は、鼻内投与および肺投与を包含する。より好ましくは、この薬学的組成物は、ボーラス注入によって、静脈内投与または腹腔内投与される。例えば、Rahmanら、米国特許第3,993,754号;Sears、米国特許第4,145,410号;Papahadjopoulosら、米国特許第4,235,871号;Schneider、米国特許第4,224,179号;Lenkら、米国特許第4,522,803号;およびFountainら、米国特許第4,588,578号を参照のこと。この使用に適する特定の処方物は、Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,第17版(1985)に見出される。
【0076】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明を限定するために提供されない。
【実施例】
【0077】
(調製物A)
(大きな単膜リポソームの調製方法)
脂質を、クロロホルム溶液中に溶解し、その後、窒素ガス流下で乾燥し、真空ポンプ中に配置して溶媒除去した。微量レベルの放射性脂質3H−CHEまたは14C−CHEを添加して、処方プロセスの間および静脈内投与後の脂質を定量した。生じた脂質フィルムを、高真空下に最低限2時間は配置した。この脂質フィルムを示した溶液中で脱水して、単膜リポソーム(MLV)を形成した。生じた調製物を、押出し装置(Lipex Biomembranes,Vancouver,BC)を用いて、積み重ねたポリカーボネートフィルターに10回通して押出して、80nmと150nmとの間の平均リポソームサイズを達成した。全リポソーム構成脂質を、モル%で報告する。
【0078】
(調製物B)
(薬物充填の定量方法)
薬物充填開始後の種々の時点で、アリコートを取り出し、Sephadex G−50スピンカラムを通して、遊離薬物を封入された薬物から分離した。脂質レベルを、液体シンチレーション計数によって測定した。使用する場合、溶出物中に存在する放射標識ダウノルビシン(3H−ダウノルビシン)レベルおよびFUDR(3H−FUDR)レベルを、液体シンチレーション計数によって測定した。イリノテカンレベルを、遊離薬物の標準曲線に対して、370nmでの吸光度によって測定した。特定の容積の溶出物に、Triton X−100を添加して、イリノテカン含有リポソームを可溶化した。界面活性剤を添加した後、その混合物を100℃まで加熱し、そして吸光度測定前に室温まで冷却させた。
【0079】
(実施例1)
(DSPCリポソームの血中安定性は、ホスファチジルグリセロール(PG)含量の増加にともなって増加する)
種々のレベルのホスファチジルグリセロール(PG)がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を多量脂質成分として含むリポソームの血中残留時間を延長しそしてそのリポソームの薬物保持特性を増加する能力を、調査した。DSPCリポソームを、種々のレベルのジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)を用いて調製し、封入CuSO4に応じたダウノルビシンを充填した。その血漿中脂質レベルおよび薬物濃度を、マウスに投与した後に測定した。
【0080】
10モル%、20モル%および30モル%のDSPGを含むDSPCリポソームを、上記方法に記載されたようにして、クロロホルム中にDSPCを溶解し、クロロホルム/メタノール/水(16:8:1 v/v)中にDSPG脂質を溶解し、そしてこれらの調製物を、放射性マーカー14C−CHEと、モル比90:10、80:20および70:30で合わせることによって、調製した。脂質フィルムを真空下に一晩置いて、すべての残留溶媒を除去し、その後、150mM CuSO4、20mMヒスチジン(pH7.4)中で再水和した。その後、手持ち型のタンジェンシャルフロー透析カラムを使用して、これらのリポソームの緩衝液を生理食塩水に交換して、外部の銅を除去し、さらに300mMスクロース、20mM HEPES、5mM EDTA(SHE緩衝液)(pH7.4)に交換した。
【0081】
これらのDSPC/DSPGリポソーム中へのダウノルビシン(微量レベルの3H−ダウノルビシンを含む)の取り込みを、これらのリポソームを薬物とともに、薬物対脂質重量比0.1にてインキュベートすることによって、確立した。上記の方法において記載されたようにスピンカラム分析によって測定した完全な薬物充填を、60℃にてこの溶液をインキュベートした後に達成した。手持ち型タンジェンシャルフローカラムを使用して、その外部緩衝液を生理食塩水に交換した。得られたダウノルビシン充填DSPC/DSPGリポソームを、脂質用量100mg/kgおよび薬物用量10mg/kgにて、Balb/cマウス(1時点あたり3匹のマウス)に注射した。望ましい時点にて、心臓穿刺によって血液を収集し、EDTAコートした微小容器中に配置した。それらのサンプルを遠心分離し、血漿を注意深く別のチューブに移した。脂質および薬物の回収を、二重標識シンチレーション計数によってモニターした。データの点は、平均結果±標準偏差(SD)を示す。
【0082】
これらの結果は、リポソームの最適な血液耐性が、20モル%のDSPGの取り込みによって達成されたことを実証する(図1A)。対照的に、Mehtaらは、WO99/59547において、15モル%未満のDMPGで調製したDPPC/Cholリポソームが、20モル%のDMPGで調製したリポソームと比較して、延長された血中半減期を示したことを報告した。これらの以前の研究におけるリポソームは、本発明において使用される相転移温度よりも低い相転移温度を有するバルク脂質(DPPC)および安定化脂質としてのコレステロール(Chol)を利用した。従って、これらの結果は、ホスファチジルグリセロール含有リポソームを形成する脂質成分の性質が、キャリアの血漿安定性特性に影響を与え得ることを実証する。
【0083】
以前に、親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)および脂質(例えば、GM1)で調製したリポソームが、リポソームの循環寿命を延長させる能力を有することが実証されている。これらの結果は、ポリマーであるポリ(エチレングリコール)(PEG)が、血漿安定性のためには必要とされず、そして非双性イオン部分(例えば、頭部(head)基に結合したグリセロール)が、リポソームに長い循環特性を生じさせ得ることを示している。理論により束縛されることを望まないが、PG頭部基上のヒドロキシル基の存在は、リポソームを取り囲む水和シェルを作製する、外部媒体中の水分子との水素結合を促進し得る。
【0084】
図1Bに示される結果は、ダウノルビシンの血漿血中レベルがまた、DSPGのレベルの増加と共に増加することを示す。従って、このデータは、血液区画からのリポソームの排除を減少させることに加えて、DSPG含有リポソームが、インビボでの優れた薬物保持特性を示すことを実証する。
【0085】
(実施例2)
(5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(FUDR)の保持は、コレステロールを含まないPG含有リポソーム中に封入される場合に最適である)
受動的に内包された5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(FUDR)のインビボでの保持に対する、リポソーム処方物中のコレステロール(Chol)の取り込みの影響を試験し、そしてホスファチジルグリセロールを含むリポソーム中に封入されたFUDRの保持特性と比較した。これを、DSPC/Chol(55:45モル比)およびDSPC/DSPG(80:20モル比)からなるリポソーム中にFUDRを受動的に内包し、そしてマウスへの処方物の投与後に薬物対脂質の比率を比較して実施した。DSPC/Cholリポソームを、これらの研究についてのコントロールとして選択した。なぜなら、この処方物は、コレステロールの安定化効果に一部起因して、薬物を最適に保持するその能力に起因して当該分野で歴史的に利用されているからである。DSPGを、20モル%にてDSPCリポソーム中に取り込んだ。なぜなら、このレベルのPGは、実施例1において実証されるように、リポソームに最適な循環寿命を付与することが見出されているからである。
【0086】
14C−CHEで標識したDSPC/Chol脂質薄層およびDSPC/DSPG脂質薄層を、実施例1に記載されるように調製し、そして微量レベルの3H−FUDRを含むHBS(pH7.4)中のFUDRからなる溶液中で水和した。押出し後、リポソームを、接線流(tangential flow)透析の使用によって通常の生理食塩水へと緩衝液交換した。FUDR充填したリポソームを、Balb/cマウス(1時点当たり3匹のマウス)に、20μmole/kgのFUDR用量で投与し、得られた脂質用量は200μmole/kgであった。示された時点において、血液を、心臓穿刺によって収集し、EDTAコーティングした微量容器(microtainer)中に配置した。サンプルを遠心分離し、そして血漿を別のチューブへ注意深く移した。脂質回収および血漿薬物濃度を、液体シンチレーション計数によって決定した。データ点は、3点からの平均+/−SDである。
【0087】
図2の結果は、FUDRが、DSPC/Chol(55:45モル比)処方物と比較して、DSPC/DSPG(80:20モル比)処方物において最適に保持されたことを実証する。これらの結果は、コレステロールの代わりに安定化脂質としてPGが使用される場合に、増強されたFUDR保持が実現されることを示唆する。
【0088】
(実施例3)
(コレステロール含量の減少は、イリノテカンを含むPG含有リポソーム中のFUDRの増大した保持を生じる)
PG含有リポソーム中に受動的に内包され、その後イリノテカンを充填されたFUDRの保持に対するコレステロールの影響を、2種の封入薬物を含む処方物中のFUDRの保持に対するコレステロールの影響を試験するために、調査した。本発明者らは、インビボでの2種の薬物の相乗的相互作用が、これら2種の薬物の放出速度が匹敵する場合に、最適に生じることを以前に実証している。薬物の保持は、パラメータ(例えば、構成要素の脂質のアシル鎖長、コレステロール含量およびリポソームの内部区画の浸透圧)を制御することによって、調節され得る。これらの研究を、両方の薬物の協調した放出を達成する最終目的で、コレステロールが二重充填されたリポソーム中の1種の薬物の放出速度を調節する能力を調査するために実施した。受動的に内包されたFUDRの保持に対する漸増レベルのコレステロールの影響を決定するために、DSPG含有リポソームを、5モル%、10モル%、15モル%および20モル%のコレステロールで調製し、そして血漿の薬物対脂質比率を、マウスへの静脈内投与後に測定した。上記の実施例のように、PGを、20モル%にてリポソーム中に取り込んだ。なぜなら、このレベルのPGは、DSPCリポソームに対して長期循環特性を最適に付与することが見出されているからである。
【0089】
5モル%、10モル%、15モル%および20モル%で取り込まれたコレステロール、ならびに20モル%で一定に維持されたPGと共に、DSPC/Chol/DSPGからなる脂質薄層を、DSPCおよびコレステロールをクロロホルム中に溶解させ、そしてDSPGをクロロホルム/メタノール/水中に溶解させ、そしてこれらの調製物を適切なモル比で合わせることによって、実施例1に記載されるように調製した。溶媒の除去後、脂質薄層を、クロロホルム中に再溶解させ、そして再び乾燥し、その後、25mg/mLのFUDRを微量レベルの3H−FUDRと共に含む、250mMのCuSO4からなる溶液中に水和した。押出し後、リポソームを、300mMスクロース、20 HEPES、30mM EDTA(pH7.4)中に、手持ち式接線流透析カラムを使用して、緩衝液交換した。緩衝液交換後、これらのサンプルを、0.1:1の薬物対脂質モル比にて50℃でイリノテカンと共に充填し、そして手持ち式接線流透析カラムを使用して、HBS(pH7.4)へと交換した。得られた二重充填リポソームを、脂質340μmole/kg、FUDR34μmole/kgおよびイリノテカン34μmole/kgにて、Balb/cマウスに投与した。血液を、示された時点にて心臓穿刺によって回収し、そしてEDTAコーティングした微量容器中に配置した;3匹のマウスを各時点について使用した(上記実施例のように、データ点は、平均+/−SDである)。これらのサンプルを遠心分離し、そして血漿を、別のチューブに注意深く移した。脂質濃度およびFUDR濃度を、液体シンチレーション計数によって決定し、イリノテカン濃度を、HPLC分析によって決定した。
【0090】
図3の結果は、20モル%のDSPGを含むDSPCリポソーム中のコレステロール含量が増加するにつれて、最初のFUDR対脂質比%に付随する減少が存在することを実証する。従って、これらの結果は、コレステロールが、第二の薬物を充填されたPG含有リポソームからの薬物放出反応速度論を制御するために使用され得ることを実証する。
【0091】
(実施例4)
(リポソームの血中安定性は、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびホスファチジルイノシトール(PI)の取り込みによって増強され得る)
これらの脂質がまた、DSPGについて観察された特性と同様の長期循環特性をこれらのリポソームに付与するか否かを決定するために、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびホスファチジルイノシトール(PI)を含むDSPCリポソームの血漿残留時間を試験した。DSPGおよびDPPGは共に、グリセロール頭部基を含むが、DSPGのアシル鎖が、18個の飽和炭素原子を有し、一方でDPPGのアシル鎖が、16個の飽和炭素原子のみを含む点で異なる。PGおよびPIは、これらが共に親水性中性部分によって遮蔽された、負に荷電したリン酸基を含む点で、共通の化学的特徴を共有する。
【0092】
10モル%、20モル%および30モル%のDPPGを含むDPPGリポソームを、実施例1に示されるように調製した(但し、DPPG脂質を、クロロホルム/メタノール(94:6 v/v)に溶解させ、そして3H−CHEを脂質標識として使用した)。得られた脂質薄層を、HBS(pH7.4)で水和し、そして押出し後、これらのリポソームを、100mg/kgの脂質用量でBalb/cマウス(1つの時点当たり3匹のマウス)に注射した。示された時点において、血液を心臓穿刺によって収集し、そしてEDTAコーティングした微量容器中に配置した。これらのサンプルを遠心分離し、そして血漿を別のチューブに注意深く移した。脂質の回収を、液体シンチレーション計数によってモニタリングし、そしてこれらのデータ点は、平均結果+/−SDを示す。
【0093】
DSPC/PIリポソームを、クロロホルム中にDSPC脂質を溶解させ、そして水素化植物PIをクロロホルム/メタノール/水(8:4:1 v/v)中に溶解させることによって調製した。次いで、これらの脂質を、90:10、80:20および70:30のDSPC対PIモル比で、適切な量の3H−CHEと一緒に合わせた。温度を、溶媒がほとんどなくなるまで70℃で維持しながら、N2ガス流の下で、クロロホルムを除去した。得られた脂質薄層を、減圧下におき、大部分の溶媒を除去した。これらの薄層を、メタノールを含むクロロホルムの溶液中に再溶解し、その後、上記のように溶媒を除去した。これらの脂質薄層を減圧ポンプ下に一晩おいて、残りの溶媒を除去し、その後、HBS(pH7.4)中で再水和した。押出し後、得られたLUVを、100mg/kgの脂質用量でBalb/cマウス(1つの時点当たり3匹のマウス)に注射した。示された時点において、血液を心臓穿刺によって収集し、そしてEDTAコーティングした微量容器中に配置した。これらのサンプルを遠心分離し、そして血漿を別のチューブに注意深く移した。脂質の回収を、液体シンチレーション計数によってモニタリングし、そしてこれらのデータ点は、平均結果+/−標準偏差を示す。
【0094】
図4に要約される結果は、DPPG脂質が、DSPCリポソームに長期循環特性を付与することを示す。このように、2つのメチレン基の除去によってPG脂質のアシル鎖成分の長さを減少させることは、これらの脂質がリポソームに長期循環特性を付与する能力に実質的に影響を与えないようである。
【0095】
図5に示される結果は、PG含有リポソームと同様に、PIで調製した処方物が、延長した循環寿命を示すことを実証する。従って、PIのイノシトール頭部基は、PGのグリセロール頭部基と同じ様式で、リポソームの血漿安定性を増強するように作用するようである。
【0096】
(実施例5)
(低レベルのコレステロールを含むホスファチジルグリセロールリポソームは、凍結の有害な影響に対向する)
リポソーム調製物は、これらの組成物が特定の使用のためのものであるように、延長した化学的安定性特性および物理的安定性特性を示すことが好ましい。これは、しばしば、不安定な薬物および/または脂質成分の分解を回避するために、凍結または凍結乾燥(freeze−dried(lyophilized))生成物形式の使用を必要とする。凍結防止剤を使用しない場合、リポソームは、一般に、解凍/再水和プロセスの間に、機械的破断、凝集および融合しやすい。FUDRおよびイリノテカンで同時充填され、そして20モル%未満のコレステロールで調製されたホスファチジルグリセロール含有リポソームが、凍結の有害な影響に対して耐性であるか否かを試験するために、DSPCリポソームを、0モル%、5モル%、10モル%、15モル%および20モル%のコレステロールで調製し、そして−20℃および−70℃の温度に供した。リポソームサイズを、薬物の充填および凍結後の解凍によって誘導されるリポソーム凝集の程度を測定するために、凍結の前後および薬物充填の前後に測定した。
【0097】
0〜20モル%のコレステロール、DSPGおよびDSPC、ならびに微量レベルの14C−CHEを有する脂質薄層を、これらの方法に記載されるように調製した。これらの脂質薄層を、100mMのFUDRを微量レベルの3H−FUDRと共に含む250mMのCuSO4で再水和した。押出し後、これらのリポソームを、生理食塩水で緩衝液交換し、次いで、手持ち型接線流カラムを使用して、300mMのスクロース、20mM HEPES、30mM EDTA(SHE緩衝液)(pH7.4)へと緩衝液交換した。次いで、このサンプルを、300mMのスクロース、20mM HEPES(pH7.4)へと交換して、外部緩衝液中のいずれのEDTAをも除去した。0.1:1の薬物対脂質モル比で、5分間にわたって50℃で薬物と共にリポソームをインキュベートすることによって、これらのリポソームにイリノテカンを充填した。遊離の薬物を接線流を使用するHSBへの緩衝液交換によってサンプルから除去した。NICOMP粒子寸法測定器を使用して、薬物充填の前後に、サンプルの寸法を測定した。凍結研究について、これらのサンプルを、24時間にわたって−20℃および−70℃で凍結した。凍結後、これらのサンプルを室温まで解凍し、次いでサンプルのアリコートを、Sephadex G−50スピンカラムに流し込み、次いで遠心分離した。スピンカラム溶出液についての薬物対脂質のモル比を、液体シンチレーション計数を使用して生成して、脂質および5−FUDRの濃度を決定し、そして標準曲線に対する370nmでの吸収を決定して、イリノテカン濃度を決定した。溶出したリポソームの粒子寸法決定もまた、準弾性光散乱を使用して決定した。リポソームサイズ測定値についての標準偏差値は、凍結前のリポソームについて24%〜34%の範囲であり、−20℃での凍結後では31%〜61%の範囲であり、そして−70℃での凍結後では32%〜47%の範囲であった。全てのχ二乗値は、1未満であった。
【0098】
図6Aに要約される結果は、FUDRおよびイリノテカンを同時封入されたリポソームが、リポソームサイズが、凍結前後に実質的に変化しなかったという観察によって証明されるように、−70℃での凍結の後に最適な安定性を示すことを示す。−20℃および−70℃での凍結の前後の、二重充填リポソームにおけるFUDRおよびイリノテカンの保持の試験により、FUDRが、凍結/解凍プロセスを通じて十分保持されることが明らかとなった(図6B)。同様の知見が、−20℃および−70℃での凍結の前後に、イリノテカンの保持について観察された(図6C)。累積的に、これらの結果は、安定化脂質(例えば、ホスファチジルグリセロール)が、凍結防止剤の存在を必要とせずに、凍結の有害な影響に対してリポソームを保護するために使用され得ることを実証する。
【0099】
(実施例6 pH勾配の非存在下で調製された、コレステロールを含まないリポソームは凍結後の凝集に耐える)
脂質をクロロホルム中で調製し、その後窒素ガスの流れにおいて乾燥させ、減圧ポンプ内に一晩置いた。次いで、これらのサンプルを、300mMシトレート緩衝液(pH4.0)またはHEPES緩衝化生理食塩水(HBS)(pH7.4)で水和し、そして押出装置(Lipex Biomembranes,Vancouver,BC)(80nmポリカーボネートフィルタおよび100nmポリカーボネートフィルタを有する)に、10回通した。平均リポソームサイズを、NICOMP 370サブミクロン粒子寸法測定器を632.8nmの波長で用いて、準弾性光散乱(QELS)によって決定した。リポソームを、24時間、液体窒素(−196℃)中で凍結させ、室温で解凍してNICOMP粒子寸法測定器を用いる平均リポソームサイズの決定に供した。
【0100】
図7は、300mMシトレート中で水和したDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソーム(コレステロールを含まないリポソーム)のサイズが、凍結の前後でサイズの実質的な変化を示さなかったことを示す。対照的に、DPPC/chol(55:45モル%)リポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)リポソームはまた、300mMシトレート中で水和され、凍結後に約10倍、サイズが増加した。同じ傾向が、図8に例示されるように、シトレート中で水和されたDSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソーム、DSPC/chol(55:45モル%)リポソームおよびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)リポソームによって示された。
【0101】
HBS中で水和したDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームのサイズはまた、図9において示されるように、凍結後に実質的なサイズ変化を示さなかった。対照的に、DPPC/chol(55:45モル%)リポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)リポソームはまた、HBS中で水和され、凍結後に実質的なサイズ変化を示した(また図9)。
【0102】
図10は、HBS中で水和したDSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームのサイズは凍結後に変化しなかったが、一方、HBSで水和し、かつDSPC/コレステロール(55:45モル%)およびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームはまた、図9と同じ傾向であったことを示す。
【0103】
図11は、DPPC/DSPE−PEG750(95:5モル%)およびDSPC/DSPE−PEG750(95:5モル%)からなり、かつHBS中で水和されたリポソームもまた、凍結後にサイズ変化しないことを示し、従って、低分子量の親水性ポリマーもまた、コレステロールを含まない系における、凍結に起因するリポソームの凝集に対して保護することを実証する。
【0104】
図12は、DAPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなり、かつHBS中で水和されたリポソームもまた、凍結後に実質的なサイズ変化をしなかったことを示し、従って、アシル鎖長の増加は、凍結安定特性に影響しないことを実証する。
【0105】
(実施例7 コレステロールを含まない、pH勾配PEG化リポソームは凍結後の凝集を防ぐ)
DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)およびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを、押出およびサイズ決定の後にHBSで平衡化したSephadex G50カラムを通してpH勾配を生じさせたことを除いて、実施例7の方法(水和緩衝液としてシトレートを使用する)に従って調製した。得られたリポソームを、24時間、液体窒素(−196℃)中で凍結させ、室温で解凍し、その後、平均リポソームサイズの第2の決定に供した。
【0106】
図13は、DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)pH勾配リポソームのサイズが、凍結後に実質的なサイズ変化を示さなかったことを示す。対照的に、DPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)pH勾配リポソームはまた、300mMシトレート中で水和され、凍結後に約3倍、サイズが大きくなった。同様に、図14に例示されるように、DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるpH勾配リポソームは、凍結後のサイズ変化を実証しなかったが、DSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000リポソームは実証した。
【0107】
(実施例8 封入されたグルコースを含む、コレステロールを含まないリポソームおよびコレステロール含有リポソームの凍結安定性)
リポソームを、20mM HEPES、150mM NaCl、50mMグルコース(pH7.4)の溶液中で水和を実施したこと(14C−グルコースの追跡を伴う)を除いて、実施例7に従って調製した。得られた(受動的に封入されたグルコースを含む)リポソームのサイズをはかり、次いでHBS中、10mL G50 Sephadexカラムに通して外部の媒体からグルコールを除去した。グルコース内包の割合を、液体シンチレーション計数によって測定した。リポソームを、−196℃で凍結させ、室温で解凍して、その後QELS分析を使用するサイズの決定に供した。封入したグルコースの割合を、凍結後に、HBSで平衡化した1mL G50 Sephadexスピンカラムにリポソームを通し、その後の溶離液のシンチレーション計数によって測定した。
【0108】
図15は、内包されたグルコースを含むDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームが、凍結によって誘導される凝集に対して耐性であることを示す。他方、DPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)は、凍結工程後にサイズが増加する。慣用的な方法は、リポソームの内表面および外表面の両方において凍結保護剤の存在を必要とする。これらの結果は、リポソームの内側における凍結保護剤の存在が、凍結/解凍の保護にとって十分であることを示す。
【0109】
凍結前後のグルコース封入の割合を、図16に示す。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームは、凍結後にグルコースの損失を示さなかった。対照的に、凍結後のグルコースの漏出は、DPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームで生じた。
【0110】
(実施例9 封入ドキソルビシンを含む、コレステロールを含まないリポソームの凍結安定性)
膜貫通型のpH勾配を有するリポソームを、実施例8のように調製した。ドキソルビシンを、0.2:1のドキソルビシン:脂質の比率でリポソーム混合物に添加し、そしてDPPC/DSPE−PEG2000リポソームのために37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、この混合物を、HBSで平衡化した1mL G50 Sephadexスピンカラムに通した。溶離液の脂質濃度を、液体シンチレーション計数によって測定した。ドキソルビシンレベルの測定のために、この溶離液の規定容積を、100μLに調整し、その後、900μLの1% TritonX−100を添加し、リポソーム膜を溶解した。このサンプルを、外観上濁るまで加熱し、そしてAbs480を室温で平衡化後に測定した。ドキソルビシンの濃度を、検量線を調製することによって計算した。
【0111】
ドキソルビシン封入リポソームを、HBS(pH7.4)中で10 mL Sephadex G50カラムに通し、外部緩衝液をHBSで交換した。脂質およびドキソルビシンのレベルを、上記の通り決定した。リポソームを、−196℃で24時間凍結させ、室温で解凍し、その後QELS分析を行って、リポソームの新たなサイズを決定した。次にリポソームを、HBSで平衡化したG50 Sephadexスピンカラムに通し、脂質およびドキソルビシンの濃度を、上記の通り決定した。
【0112】
図17に示されるように、ドキソルビシンを封入したDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームは、凍結後にサイズを増加しなかった。ドキソルビシンはまた、凍結後にこの処方物中に維持された。
【0113】
(実施例10 凍結後に薬物を充填した、凍結安定性の、コレステロールを含まないリポソーム)
リポソームを実施例6のとおり調製し、−196℃で24時間凍結した。サンプルのサブセットに、凍結前にドキソルビシンを充填(「新たな充填(loaded fresh))し、別のサブセットは凍結後に充填した。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)の充填を、DSPC/DSPE−PEG2000リポソームに対して37℃で2時間および60℃で15分間、実施した。ドキソルビシン封入の割合の決定を、実施例10のように実施した。コレステロール含有リポソームは、凝集が原因で充填できなかった。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームには、37℃でのインキュベーションによって充填したが、DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームには、60℃でのインキュベーションによって充填した。
【0114】
図18および19は、凍結の前後に充填されたDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームおよびDSPC/DSPE−PEG2000リポソームが、同様の充填プロフィールを提示することを示す。
【0115】
これらの結果は、コレステロールを含まないリポソームが、凍結後に薬剤を能動的に充填され得ることを実証する。これは、凍結されたリポソームが、薬剤を充填した後に、封入されていない形状で提供されることを可能にする。
【0116】
多くの改変が、前述の系に対して、それらの基本的教示から逸脱することなくなされ得る。本発明は、1つ以上の特定の実施形態を参照することによってかなり詳細に記載されているものの、当業者は、変更が本明細書中に詳細に開示される実施形態に対してなされ得、これらの実施形態および改良がなお、添付の特許請求の範囲に記載されるような、本発明の範囲および精神の範囲内であることを認識する。本明細書中に引用される、全ての特許出願または特許書類は、このような特許出願または書類の各々が参考として本明細書中に、特定にかつ個々に援用されるかのように、本明細書中に参考として援用される。
【0117】
上記の刊行物または書類の引用は、前述の全てが関連する従来技術であるという承認として意図されも、これらの刊行物または書類の内容またはその日時に関していかなる承認も構成しない。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許出願番号60/394,271(2002年7月9日出願)および米国特許出願番号60/331,248(2001年11月13日出願)の利益を主張する。これらの出願の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、循環中にて長い寿命を有するリポソーム組成物に関する。これらのリポソームは、双性イオンを含まない負に荷電した脂質の取り込みを含む。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
リポソームは、中心の水性コアを囲む1つ以上の二重層へと配置された両親媒性脂質の水性分散物から調製される送達ビヒクルである。溶質は、内部水性区画中に閉じ込められ、それによって、血液成分との反応からこの溶質を保護し得る。閉じ込められた薬剤を標的部位に効果的に送達するために、リポソームは、封入された薬剤の最適な循環寿命および保持を示すことが所望される。
【0004】
リポソームの薬理学的特性は、膜中に取り込まれた脂質の型を変化させることによって、変動され得る。中性(正味の荷電なし)の脂質から構成されるリポソームは、血液区画中に存在する多数のタンパク質、炭水化物および脂質成分への曝露の際に安定であるので、このようなリポソームが一般に使用される。リポソーム組成物中に負に荷電した脂質(例えば、ホスファチジルセリン)を取り込むことは、リポソームの認識および循環からのリポソームのクリアランスの増大を生じた。Kirbyら、Biochem.J.(1980)186:591−598。従って、疾患部位への薬物送達は低減される。Allenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)85:8061−8071。
【0005】
ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピンおよびホスファチジルセリンを含むリポソームの循環寿命の比較により、ホスファチジルセリンリポソームが循環から迅速に排除される一方で、カルジオリピンリポソーム、ホスファチジルグリセロールリポソームおよびホスファチジルイノシトールリポソームは、ラットにおいて減少した速度で排除されることが明らかとなった(Kao,Yら、J.Pharm.Sci.(1980)69:1338−1349)。
【0006】
特定の負に荷電したリポソームが、インビボ適用において有用性を有し得ることは知られていたが、長い循環特性を付与するためのこれらのリポソームの使用は、ごく最近認識された。W099/59547。これらの研究により、コレステロール/DPPC含有リポソームへのホスファチジルグリセロールの取り込みが、血中安定性の増強を導いたことが明らかとなっている。しかし、これらの調査により、10モル%未満のDMPGで調製されたコレステロール/DPPCリポソームが、10モル%より高いDMPGで調製されたコレステロール/DPPCリポソームと比較して、増大した血中安定性特性を示す場合、脂質ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)のモル%取り込みが、キャリアの循環特性に対して影響を有したこともまた明らかとなった。脂質成分(例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC))が、所望でない特性を有し、従って、これらの処方物中に含まれなかったことにも留意すべきであった。
【0007】
さらなるビヒクル形成脂質に加えてホスファチジルグリセロールを含むリポソーム調製物は、Brodt,P.ら、Cancer Immunol,Immunother.(1989)28:54−58およびHopeら、米国特許第6,139,871号に記載される。しかし、これらの調製物において、非双性イオン性の親水性部分に連結された負に荷電した脂質(例えば、PG)は、10モル%未満の量で存在する。同様に、WO99/59547に記載されたリポソームは、10モル%未満のPGを含む。Akhtar,S.,ら、Nucleic Acids Res.(1991)19:5551−5559およびAhl,P.L.ら、Biochim.Biophys.Acta(1997)1329:370−382およびFarmer,M.C.,ら、Meth.Enzymol.(1987)149:184−200に記載されるリポソームは、本発明のリポソームとは異なり、かなりの量のコレステロールを含む。さらに、Akhtarのリポソームは、使用されるリン脂質中に含まれるアシル鎖が18個未満の炭素原子を含むので、38度よりも低い転移温度を示す。
【0008】
米国特許第5,415,869号は、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールを含み得るリポソーム中に含まれるタキソール処方物を記載する。これらのリポソームが、延長された循環寿命を有するという示唆は存在せず、そして38℃より高い転移温度が好ましいということも示されない。
【0009】
米国特許第4,769,250号は、アニオン性リン脂質および中性リン脂質(DSPGおよびDSPCを含む)の混合物から作製された処方物を記載しているが、これらのリポソームは、45〜55nmの寸法を有するSUVである。
【0010】
凍結および凍結乾燥(freeze−drying(lyophilization))に起因する有害な影響を防止するために、リポソーム調製物に凍結防止剤が添加されてきた。ジサッカリド(例えば、トレハロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、スクロース、マルトデキストリンおよびデキストラン)は、最も一般的に使用される凍結防止剤である(WO01/05372および米国特許第5,077,056号を参照のこと)。
【0011】
膜結合凍結防止剤が、凍結および凍結乾燥による損傷に対する耐性をさらに改善する目的で利用されてきた。特に、1〜3個の反復単位からなるオリゴ(エチレンオキシド)リンカーを介してリポソーム膜表面に結合した糖は、凍結保護的であることが報告されている(Bendasら、Eur.J.Pharma.Sci.(1996)4:211−222;Goodrich,ら、Biochemistry(1991)30:5313−5318;米国特許第4,915,951号)。Baldeschwielerらは、末端糖基の非存在下で、オリゴエチレンオキシドリンカー自体で調製されたリポソームが、凍結に続く融合に対して保護できないことを報告した(米国特許第4,915,951号を参照のこと)。
【0012】
リポソーム膜中にコレステロールを含めることは、静脈内投与後に薬物の放出を低減することが示されている(例えば、米国特許第4,756,910号、同第5,077,056号および同第5,225,212号;Kirby,C.ら、Biochem.J.(1980)186:591−598;ならびにOgihara−Umeda,I.ら、Eur.J.Nucl.Med.(1989)15:617を参照のこと)。一般に、コレステロールは、二重層の厚さおよび流動性を増加させるが、一方で、リポソームの膜透過性、タンパク質相互作用およびリポタンパク質不安定化を減少させる。リポソーム処方物への従来のアプローチは、かなりの量(例えば、30〜45モル%)のコレステロールまたは等価な膜硬直化剤(例えば、他のステロール)をリポソーム中に含めることを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の開示)
従って、本発明は、以下を含むリポソームを提供する:親水性部分および疎水性部分を有する負に荷電した脂質であって、中性の非双性イオン部分が、この脂質の親水性部分に結合している。特定の実施形態において、本発明のリポソームは、コレステロールを実質的に含まない。このリポソームは、代表的に、生物学的に活性な薬剤を含む。本発明のリポソームは、驚くべきことに、血流中での増強された循環寿命を示す。
【0014】
負に荷電した脂質は、代表的に、リン脂質またはスフィンゴリン脂質である。好ましくは、この脂質は、リン脂質である;すなわち、2つのアシル基が結合したグリセロールであり、ここで、第三のヒドロキシルは、リン酸に結合している。非双性イオン部分は、この負に荷電した脂質に、好ましくはリン酸基に結合している。好ましくは非双性イオン部分は中性であり、その結果、本発明において使用される脂質上の正味の負の電荷は、この脂質成分の負の電荷のみに起因する。
【0015】
非双性イオン部分は、脂質に対して所望の親水性を付与する官能基を含み得、このような基は、アルコール、ケトン、カルボン酸、エーテルおよびアミンから選択される。好ましい非双性イオン部分は、短鎖アルコール(例えば、グリセロール)もしくは環状アルコール(例えば、イノシトール)またはポリアルキレンオキシド(例えば、PEG)である。
【0016】
1実施形態において、このリポソームは、10モル%より多い、1以上の上記の通りの凝集防止脂質(すなわち、非双性イオン部分を含む、負に荷電した脂質);および90モル%までの1以上の小胞形成脂質(ここで、このリポソームは、コレステロールを実質的に含まない)を含む。好ましくは、この非双性イオン部分は、短鎖アルコール(例えば、グリセロール)であるか、またはシクリトール(例えば、イノシトール)もしくはポリアルキレンオキシドである。最も好ましくは、このリポソームを構成する小胞形成脂質は、このリポソームの相転移温度が少なくとも38℃、好ましくは少なくとも40℃よりも高いように選択される。好ましくは、このリポソームの寸法は、80nm〜200nm±25nmの桁である。凍結による損傷に対する保護に関して、1モル%程度の少ない凝集防止脂質が存在し得る。
【0017】
保存に関して、本発明のリポソームは、凍結または凍結乾燥され得、そして凍結防止剤を含み得る。用いられる凍結防止剤の量は、凍結防止剤の型および保護されるべきリポソームの特徴に依存する。当業者は、種々の凍結防止剤の型および濃度を容易に試験して、どの凍結防止剤の型および濃度が特定のリポソーム調製物について最良に作用するかを決定し得る。一般に、100mM以上の桁の糖濃度は、最大レベルの保護を達成するに必要であることが見出されている。数モルの膜リン脂質に関して、100mMの桁のミリモル濃度レベルは、1モルのリン脂質あたり約5モルの糖に対応する。
【0018】
本発明のリポソームは、凍結防止剤を実質的に含まなくてもよい。用語「凍結防止剤を実質的に含まない」とは、20mM未満の凍結防止剤または10mM未満の凍結防止剤を含む、リポソームをいう。異なる濃度の凍結防止剤が、このリポソームの内側および外側に存在する場合、外側または内側に存在する最大濃度が、これらの定義において言及される濃度であると解釈される。
【0019】
本発明のリポソームが凍結されるべきである場合、リポソームがコレステロールを実質的に含まず、親水性ポリマー脂質結合体(特に、約125ダルトンよりも大きい親水性ポリマー脂質結合体)を含むことが好ましいが、必要とはされない。なぜなら、これらのリポソームは、凍結後の因子の融合および漏出に耐性であるからである。従って、リポソームが凍結されるべき場合、これらは、約1モル%〜約30モル%の1以上の親水性ポリマー結合体化脂質および約99モル%までの1以上の小胞形成脂質を含み、コレステロールを実質的に含まない。好ましくは、この親水性ポリマー−脂質結合体は、PEG脂質結合体である。このリポソームはまた、凍結防止剤(例えば、トレハロース、マルトース、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストランまたはアミノ配糖体)を含み得る。特に好ましいのはグルコースである。
このリポソームは、約−5℃まで、好ましくは、約−10℃未満まで、そしてより好ましくは約−20℃未満まで凍結され得る。これらは、凍結される場合、凍結乾燥され得る。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
リポソームを含む組成物であって、該リポソームは、少なくとも1つの小胞形成脂質;少なくとも1モル%の凝集防止剤;および少なくとも1つの生物学的に活性な因子を含み、そしてコレステロールを実質的に含まず;ここで、該リポソームは、80〜200nm+/−25nmの間の平均直径を有し;そして該リポソームは、少なくとも38℃の転移温度(Tc)を有する、組成物。
(項目2)
前記リポソームが、少なくとも18個の炭素原子の鎖長のアシル基を含む小胞形成脂質を含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記凝集防止剤が、PEG化両親媒性脂質またはホスファチジルグリセロール(PG)もしくはホスファチジルイノシトール(PI)である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記凝集防止剤が、PGまたはPIである、項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記リポソームが、少なくとも10モル%の前記凝集防止剤を含む、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記リポソームが、凍結防止剤をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目7)
低温で安定である、項目1に記載の組成物。
(項目8)
凍結または凍結乾燥形態である、項目1に記載の組成物。
(項目9)
項目1に記載の組成物であって、前記リポソームが、10モル%のPIまたは10モル%のPGを含み、そして前記小胞形成脂質が、ジステアロイルホスファチジルコリンである、組成物。
(項目10)
前記生物学的に活性な因子が、FUDRおよび/またはCPT11および/またはカルボプラチンを含む、項目1に記載の組成物。
(項目11)
薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目12)
生物学的因子を必要とする被験体に、該因子を投与する方法であって、該方法は、項目1に記載の組成物の有効量を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目13)
項目1に記載の組成物を、凍結する工程または凍結乾燥する工程を包含する、リポソーム組成物を保存する方法。
(項目14)
項目6に記載の組成物を、凍結する工程または凍結乾燥する工程を包含する、リポソーム組成物を保存する方法。
(項目15)
項目7に記載の組成物を、凍結する工程または凍結乾燥する工程を包含する、リポソーム組成物を保存する方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1Aは、90:10(黒丸)、80:20(白丸)および70:30(逆三角形)のモル比でDSPC/DSPGを含むダウノルビシン充填リポソームの静脈内投与後に血中に残っている、注射した脂質のパーセントを示す、グラフである。
【図1B】図1Bは、90:10(黒丸)、80:20(白丸)および70:30(逆三角形)のモル比でDSPC/DSPGを含むダウノルビシン充填リポソームの静脈内投与後に血中に残っている、注射したダウノルビシンのパーセントを示す、グラフである。
【図2】図2は、FUDRに受動的に封入された、DSPC/DSPG(80:20のモル比)およびDSPC/Chol(55:45のモル比)のリポソームの静脈内投与後の種々の時点でのFUDR−対−脂質の比を示す、グラフである。
【図3】図3は、FUDRおよびイリノテカン(irinotecan)を共充填(co−load)したDSPC/DSPGリポソームの静脈内投与後のFUDR−対−脂質の初期の比のパーセントに対するコレステロール含有量の種々の時点での効果を示す、グラフである。このリポソームは、5モル%(黒丸)、10モル%(白丸)、15モル%(黒い逆三角形)および20モル%(白い逆三角形)でコレステロールを含んでおり、そしてDSPGレベルを、20モル%に一定に保持した。
【図4】図4は、90:10(黒丸)、80:20(白丸)および70:30(逆三角形)のモル比でDSPC/DPPGを含むリポソームの静脈内投与後に血液中に残っている、注射した脂質のパーセントを示す、グラフである。
【図5】図5は、90:10(黒丸)、80:20(白丸)および70:30(逆三角形)のモル比でDSPC/PI(水素化植物)を含むリポソームの静脈内投与後に血液中に残っている注射した脂質のパーセントを示す、グラフである。
【図6A】図6Aは、両方の薬物を充填した後の凍結前の、−20℃にて24時間凍結し、続いて室温で解凍した後の、および−70℃にて24時間凍結し、続いて室温で解凍した後の、FUDRおよびイリノテカンを共充填したDSPC/DSPG(80:20モル比)リポソームのサイズを示す、ヒストグラムである。
【図6B】図6Bは、両方の薬物を充填した後の、凍結前の、−20℃で24時間凍結し、続いて室温で融解した後の、および−70℃で24時間凍結し、続いて室温で融解した後の、FUDRおよびイリノテカン(irinotecan)を共充填したDSPC/DSPG(80:20モル比)リポソームのFUDR対脂質比を示すヒストグラムである。
【図6C】図6Cは、両方の薬物を充填した後の、凍結前の、−20℃で24時間凍結し、続いて室温で融解した後の、および−70℃で24時間凍結し、続いて室温で融解した後の、FUDRおよびイリノテカンを共充填したDSPC/DSPGリポソーム(80:20モル比)のイリノテカン対脂質比を示すヒストグラムである。
【図7】図7は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方に300mMのクエン酸緩衝液を含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソーム、DPPC/コレステロール(55:45モル%)からなるリポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図8】図8は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方に300mMのクエン酸緩衝液を含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソーム、DSPC/コレステロール(55:45モル%)からなるリポソームおよびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図9】図9は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソーム、DPPC/コレステロール(55:45モル%)からなるリポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図10】図10は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソーム、DSPC/コレステロール(55:45モル%)からなるリポソームおよびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図11】図11は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側および外側の両方にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG750(95:5モル%)からなるリポソームおよびDSPC/DSPE−PEG750(95:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図12】図12は、24時間の凍結の前(黒色棒)および後(灰色棒)の、リポソームの大きさを示すヒストグラムである。DAPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図13】図13は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側にpH4.0のクエン酸を含みかつ外側にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)およびからなるリポソームDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図14】図14は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、リポソーム膜の内側にpH4.0のクエン酸を含みかつ外側にHBSを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームおよびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図15】図15は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、封入されたグルコースを含むリポソームのサイズを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図16】図16は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、リポソーム中へのグルコースの封入パーセントを示すヒストグラムである。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを試験した。
【図17】図17は、24時間の凍結の前(黒色棒)および凍結の後(灰色棒)の、封入されたドキソルビシンを含むDPPC/DSPE−PEG2000リポソームのサイズを示すヒストグラムであり(左パネル)、ドキソルビシン保持パーセントを示すヒストグラムである(右パネル)。
【図18】図18は、充填の間のDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソーム中へのドキソルビシンの封入パーセントを、時間の関数として示すグラフである。充填を、凍結前(黒丸)および凍結後(白丸)に実施した。
【図19】図19は、充填の間のDSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソーム中へのドキソルビシンの封入パーセントを、時間の関数として示すグラフである。充填を、凍結前(黒丸)および凍結後(白丸)に実施した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明を実施する形態)
本明細書中で使用される場合、「リポソーム」は、水相を封入する1つ以上の同心に整列された脂質二重層から構成される小胞を意味する。これらの小胞の形成は、二重層構造をとり得るかまたは二重層構造に取り込まれ得る両親媒性脂質である「小胞形成脂質」の存在を必要とする。これとしては、単独でまたは別の脂質と組み合わせた場合、二重層を形成し得るような脂質が挙げられる。両親媒性脂質は、二重膜の内部の疎水性領域と接触するその疎水性部分および膜の外側の極性表面に向いたその極性頭部部を有することによって脂質二重層に組み込まれる。ほとんどのリン脂質は、小胞形成脂質の前者の型に属するのに対して、コレステロールは、後者の型の代表である。
【0022】
本発明のリポソームまたは脂質キャリアに組込まれ得る適切な小胞形成脂質は、種々の両親媒性脂質(代表的には、ホスファチジルコリン(PC)のようなリン脂質およびスフィンゴミエリンのようなスフィンゴリピドを含む)から選択され得る。本明細書中において、脂質について用語「嵩高い」または「構造的」は、リポソームの構造に寄与する小胞形成脂質を意味する。
【0023】
本発明に従って調製されたリポソームは、小胞を調製するために使用される従来の技術によって調製され得る。これらの技術としては、エーテル注入法(Deamerら、Acad.Sci.(1978)308:250)、界面活性剤法(Brunnerら、Biochim.Biophys.Acta(1976)455:322)、凍結融解法(Pickら、Arch.Biochim.Biophys.(1981)212:186)、逆相エバポレーション法(Szokaら、Biochim.Biophys.Acta(1980)601:559−571)、超音波処理法(Huangら、Biochemistry(1969)8:344)、エタノール注入法(Kremerら、Biochemistry(1977)16:3932)、押し出し法(Hopeら、Biochim.Biophys.Acta(1985)812:55−65)、およびフレンチプレス法(Barenholzら、FEBS Lett.(1979)99:210)が挙げられる。これらのプロセスは、組み合わせて使用され得るかまたは改変され得る。小さな単層小胞(SUV)は、超音波処理法、エタノール注入法およびフレンチプレス法によって調製され得る。好ましくは、多層小胞(MLV)は、逆相エバポレーション法によって、または水を脂質フィルムに単に添加した後、機械的攪拌により分散することによって調製される(Banghamら、J.Mol.Biol.(l965)13:238−252)。
【0024】
本発明の実施において使用され得る特に適切なリポソーム調製物は、大きな単層小胞(LUV)である。LUVは、エーテル注入法、界面活性剤法、凍結融解法、逆相エバポレーション法、フレンチプレス法または押し出し法のいずれかによって調製され得る。好ましくは、LUVは、押し出し法に従って調製される、押し出し法は、まず、クロロホルム中で、脂質を所望のモル比を得るように合わせる工程を包含する。脂質マーカーは、必要に応じて、脂質調製物に添加され得る。得られた混合物は、窒素ガス流下で乾燥され、溶媒が実質的に除去されるまで真空ポンプ中に配置される。次いで、サンプルを、適切な緩衝液または治療剤の混合物中で水和する。次いで、混合物は、押し出し装置を通され、規定の平均サイズのリポソームが得られる。平均リポソームサイズは、例えば、NICOMPTM 370サブミクロン粒径測定器を使用して632.8nmの波長で準弾性光散乱によって決定され得る。
【0025】
「実質的にコレステロールを含まない」リポソームは、リポソームの相転移特性を有意に変化させるのに十分ではない量のコレステロール(代表的には、20モル%未満のコレステロール)を含み得る。20モル%以上のコレステロールは、相転移が生じる温度の範囲を広くする。相転移は、より高いコレステロールレベルでは消失する。好ましくは、コレステロールを実質的に有さないリポソームは、約15モル%以下のコレステロール、より好ましくは約10モル%以下のコレステロールを有し、より好ましくは、約5モル%以下のコレステロールまたは約2モル%以下のコレステロールまたは1モル%以下のコレステロールを有する。また、「コレステロール非含有」リポソームを調製する場合、コレステロールは、存在しなくても添加されなくてもよい。
【0026】
用語「生理的pHで負に荷電した脂質」または「負に荷電した脂質」は、生理的pHで1つ以上の負電荷を有する小胞形成脂質をいう。本発明での使用のための適切な負に荷電した脂質は、リン脂質またはスフィンゴリン脂質であり得る。非双性イオン部分を含む負に荷電した脂質は、5〜95モル%で、より好ましくは10〜50モル%で、そして最も好ましくは15〜30モル%で、リポソームに組込まれ得る。「非双性イオン部分」は、生理的pHで反対の電荷を有さないが、親水性である部分をいう。
【0027】
本発明で使用される脂質における正味の負電荷は、単に負に荷電した脂質上(例えば、リン酸基上)の電荷の存在から生じ得るか、またはさらなる負電荷は、非双性イオン部分上に存在する1つ以上の負に荷電した基の存在に起因し得る。好ましくは、正味の負電荷は、単に脂質上の1つ以上の負に荷電した基の存在から生じ、この場合において、非双性イオン部分は、中性基である。好ましくは、非双性イオン部分は、2〜6の炭素原子を含む。
【0028】
適切な非双性イオン部分は、ヘッド基に親水性特性を付与する電子吸引性官能基を含む。このような官能基は、アルコール、酸、ケトン、エステル、エーテル、アミド、およびアルデヒドからなる群から選択され得る。サッカリドもまた、このことについて使用され得る。
【0029】
モノサッカリドとしては、アラビノース、フコース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、リボースおよびキシロースが挙げられる。ジサッカリドとしては、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、ゲンチオビオース、およびマルトースが挙げられる。リポソームの循環からのクリアランスの増加が、細胞表面へのリポソームの結合から生じ得るので、細胞レセプターに結合しないモノサッカリドおよびジサッカリドが、好ましい。
【0030】
非双性イオン部分が、生理的pHで中性であるように選択される場合、イオン化不可能基(例えば、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミドおよびアルデヒド)の組込みが選択される。
【0031】
本発明の1つの実施形態において、非双性イオン部分は、短鎖アルコールであり、好ましいアルコールは、2つ以上のヒドロキシル基を含む。アルコールは、グリセロールが一例である直鎖ポリオールであり得、グリセロール分子の末端ヒドロキシル基を介してリン脂質のリン酸に結合して、得られた分子は、ホスファチジルグリセロール(PG)と呼ばれる。好ましくは、ホスファチジルグリセロールの脂肪酸鎖は、独立して、カプロイル(6:0)、オクタノイル(8:0)、カプリル(10:0)、ラウロイル(12:0)、ミリストイル(14:0)、パルミトイル(16:0)、ステアロイル(18:0)、アラキドイル(20:0)、ベヘノイル(22:0)、リグノセロイル(lingnoceroyl)(24:0)またはフィタノイルであり、これらは、シス配座またはトランス配座のこれらの脂肪酸鎖の不飽和バージョン(例えば、オレオイル(18:1)、リノレオイル(18:2)、アラキドノイル(20:4)、およびドコサヘキサエノイル(22:6))を含む。14〜18炭素原子の2つのアシル鎖を有するリン脂質が、好ましい。いずれにせよ、1つの実施形態において、負に荷電した脂質の疎水性置換基の性質は、リポソームの相転移温度が、約38℃より高く、好ましくは約40℃より高いというような性質である。
【0032】
別の実施形態において、非双性イオン部分は、環構造であり、好ましくは、シクリトールである。このような化合物は、分子に所望の水溶性を付与する種々の基で誘導体化され得る。好ましくは、シクリトールは、リン酸基を介してリン脂質に結合されたイノシトールであり、得られた化合物は、ホスファチジルイノシトールである。好ましくは、ホスファチジルイノシトールの脂肪酸鎖は、独立に選択され、それは、上記の通りである。
【0033】
別の実施形態では、非双性イオン部分は、「親水性ポリマー−脂質結合体」を形成するポリマーであり得る。これは、その極性頭部部分で親水性ポリマーに共有結合された小胞形成脂質をいい、そしてポリマーに付着させるために、極性頭部部分に反応性官能基を有する脂質から代表的には形成される。適切な反応性官能基は、例えば、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、またはホルミルである。この脂質は、このような結合体において使用することについて当該分野で記載される任意の脂質であり得る(例えば、リン脂質、スフィンゴ脂質、およびセラミド)。好ましくは、この脂質は、種々の不飽和度の長さ約6個〜約24個の間の炭素原子を含む2つのアシル鎖を有するリン脂質(例えば、PC、PE、PAまたはPI)である。結合体における脂質は、例えば、PEであり得、好ましくは、ジステアロイル形態である。ポリマーは、リポソームの均一な表面範囲を生じる十分な可撓性で、ポリマー鎖を、リポソーム表面から効果的に伸長することを可能にする、水における溶解度により特徴付けられる生体適合性ポリマーである。好ましくは、ポリマーは、ポリアルキルエーテル(ポリメチレングリコール、ポリヒドロキシプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアクリル酸、およびそれらのコポリマー、ならびに米国特許第5,013,556号および第5,395,619号に開示されたものを含む)である。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。結合体は、放出可能な脂質ポリマー結合(例えば、ペプチド結合、エステル結合、またはジスルフィド結合)を含むように調製され得る。結合体はまた、標的化リガンドを含み得る。結合体の混合物は、本発明において使用するためのリポソームに取り込まれ得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「PEG結合体化脂質」は、ポリマーがPEGである、上記に規定した親水性ポリマー−脂質結合体をいう。
【0035】
親水性ポリマー−脂質結合体または他の非双性イオン含有負荷電脂質は、一旦所望の生体分布が達成されれば、LUVキャリア表面を露出するように選択的な生理条件下で開裂され得る放出可能な脂質−ポリマー結合(例えば、ペプチド結合、エステル結合、またはジスルフィド結合)を含むように調製され得る。例えば、米国特許第6,043,094号、またはKirpotinら、FEBS Letters(1996)388:115−188において開示される。
【0036】
親水性ポリマー−脂質結合体はまた、特定の細胞にリポソームを指向させるために、ポリマーの遊離末端に付着された標的化リガンドを含み得る。標的化リガンドの結合体化を可能にするポリエチレングリコールの誘導体は、例えば、メトキシ(ヒドラジド)ポリエチレングリコールおよびビス(ヒドラジド)ポリエチレングリコールである。
【0037】
負荷電脂質は、天然供給源から得られ得るか、または化学合成され得る。脂質の頭部基に化合物を共有結合するための方法は、当該分野で周知であり、そして脂質頭部基の末端部の官能基を、付着される部分上の官能基と反応させることを包含する。非双性イオン親水性部分の化学的付着のために適切な負荷電脂質は、反応性化学基で終結する極性頭部基を有する脂質(例えば、ホスフェート、アミン)を含む。特に適切な脂質の例は、反応性アミノ基を含むので、ホスファチジルエタノールアミンである。ホスファチジルエタノールアミン誘導体を調製するための方法は、Ahl,P.ら、Biochim.Biophys.Acta(1997)1329:370−382に記載されている。既に非双性イオン部分を含む天然供給源から得られた負荷電脂質の例としては、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルイノシトール(これらはそれぞれ、卵、植物供給源から得られる)が挙げられる。
【0038】
本発明のリポソームは、周囲環境における温度の上昇に感受性であるように調製され得る。このようなリポソームの温度感受性は、(高体温の臨床手順におけるように)熱されたか、または(炎症におけるように)身体の残りの部分よりも固有に高い温度である標的部位でのリポソームの内部水性腔内に捕捉された化合物の放出、および/または脂質二重奏と結合した化合物の放出を可能にする。温度依存様式で化合物の放出を可能にするリポソームは、「温度感受性リポソーム」と呼ばれ、そして低レベルのコレステロールを含有する。本発明のリポソームは、高体温の範囲で(例えば、約38℃から約45℃の範囲)でのゲル−液体結晶転移温度を有する脂質を含む。約38℃から約45℃の相転移温度を有するリン脂質が好ましく、そしてアシル基が飽和されているリン脂質がより好ましい。特に好ましいリン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。
【0039】
本発明の温度感受性リポソームは、比較的水溶性の界面活性剤(例えば、リゾ脂質(lysolipid))を、主に比較的水溶性の分子で構成される二重層(例えば、二鎖リン脂質(例えば、DPPC))に組み込み得る。主要脂質成分のゲル相における界面活性剤の組み込みは、主要脂質のゲル−液結晶相転移温度に加熱された場合に、得られたリポソームからの内容物の放出を増強する。好ましい界面活性剤は、リゾ脂質であり、そして特に好ましい界面活性剤は、モノパルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)である。適切な界面活性剤は、二重層の主要脂質と適合性であり、そして液体が液相へ融解する場合に脱着する界面活性剤である。リン脂質二重層における使用のためのさらなる適切な界面活性剤としては、パルミトイルアルコール、ステアロイルアルコール、モノパルミチン酸パルミトイル、モノパルミチン酸ステアロイル、モノパルミチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、およびモノアシル化脂質(例えば、スフィンゴシンおよびスフィンガミン(sphingamine))が挙げられる。
【0040】
本発明のリポソームはまた、液晶転移温度が45℃より高くなるように調製され得る。この場合、リポソームを構成する小胞形成脂質は、PCまたはPEのようなリン脂質である。好ましいリン脂質は、PCである。罹患脂質を選択する際、これらの脂質のアシル鎖の長さが4つ以上のメチレン基だけ異なる場合、相分離が起こり得るので注意されるべきである。好ましくは、脂質は、2つの飽和脂肪酸を有する(これらのアシル鎖は、以下からなる群から独立して選択される:ステアロイル(18:0)、ノナデカノイル(19:0)、アラキドイル(20:0)、ヘンイコサノイル(heniecosanoyl)(21:0)、ベヘノイル(22:0)、トリコサノイル(23:0)、リングセロイル(lingnoceroyl)(24:0)およびセロトイル(cerotoyl)(26:0))。好ましくは、少なくとも1つ(おとびより好ましくは両方)のアシル鎖が18:0、またはそれより長い。
【0041】
本発明の実施形態は、感熱性の適用について有用である相転移温度より高い相転移温度(例えば、約45℃以上)を有するコレステロールを実質的に含まないリポソームを使用し得、これは、2001年11月15日に公開されたPCT/CA01/00655(本明細書中に参考として援用される)に記載されるような増強された薬物保持を示す。このようなリポソームは、18より多い炭素原子の少なくとも1つのアシル鎖を有する少なくとも60mol%のリン脂質を有するコレステロールを含まないリポソームを含む。
【0042】
本発明の実施形態は、コレステロールを実質的に含まないリポソームを使用し得、約200mM未満の内部負荷緩衝濃度で、pH勾配負荷技術に従って負荷される場合、試薬の増加した全身保持を提供する。このようなリポソームは、2001年11月13日に出願されたU.S.60/331,249(本明細書中に参考として援用される)に記載される。コステロールを含まないリポソームにおいて乏しい全身保持を示す試薬は、本実施形態に従ってより安定に保持され得る。
【0043】
本発明の実施形態は、注射によって投与される場合、内部緩衝液の浸透圧が、リポソームが存在する媒体の浸透圧に近くなるように選択される場合、封入された治療剤の増加した全身保持を示すコレステロールを含まないリポソームを使用し得る。このようなリポソームは、2001年11月13日に出願されたU.S.60/331,249(本明細書中に参考として援用される)に記載される。従って、この実施形態は、コレステロールを含まないリポソームおよびリポソーム内部緩衝液が媒体の溶質浸透圧に適合するコレステロールを含まないリポソームを含む注入媒体を含む低溶質の使用を含む。
【0044】
本発明の実施形態は、患者に適用され得る温度(例えば、約45℃以下)で不安定化する「感熱性」リポソームを使用し得、2001年12月14日に出願されたU.S.60/339,405(本明細書中に参考として援用される)に記載されたものを含む。従って、本実施形態は、被験体に、活性剤を含む感熱性リポソームを投与することによって被験体の目的の部位に試薬を送達するための方法の使用を含み得るか、またはその使用から生じ得、目的の部位へのリポソームの局在化についての延長した時間可能にし、続いてリポソーム含量の放出を引き起こす目的の部位で恒温動物の処置を施す。
【0045】
本発明の実施形態はまた、脂質に結合体化した親水性部分を含むコレステロールを含まないリポソームを使用し得る。このようなリポソームは、凍結後の試薬の融合および漏出、引き続くに耐性であり、そして2001年11月13日に出願されたU.S.60/331,248(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0046】
本発明の1つの局面において、コレステロールを含まないリポソームが提供され、ここで、負に荷電した脂質は、10mol%より多くリポソーム中に取り込まれる。本発明のこの局面において、非双性イオン性の部分は、好ましくは、グリセロールのような単鎖アルコールである。最も好ましくは、本発明の本実施形態ににおけるリポソームを構成する小胞形成脂質は、リポソームの相転移温度が約40℃より高くなるように選択される。本発明のこの局面についての全ての他の好ましい性質および条件は、一般的に上記に記載される通りである。
【0047】
リポソームの循環寿命の測定は、当該分野で公知の手段によって行われ得る。これらの手段としては、試験動物への静脈内投与および血液レベルのモニタリングを含む、以下の実施例において記載される方法が挙げられる。この測定は、静脈内投与のために意図されるリポソームについて、静脈内投与に適切なビヒクルまたは希釈剤中でリポソームまたは脂質キャリアを処方し、この処方物を投与し、そして血液レベルをモニタリングすることによって、行われ得る。この測定は、罹患した動物モデルへの投与後の構成成分(例えば、リポソームまたは脂質キャリア中に存在する放射標識)の量を測定することによって行われ得る。
【0048】
本発明の実施形態は、コレステロールを含まないリポソームを使用し得る。このコレステロールを含まないリポソームは、脂質に結合体化された親水性部分の組み込みを介して、コレステロール含有脂質と同等に挙動するように選択されるかまたはそのように作製される(例えば、U.S.60/339,404(2001年12月14日出願)(これは、本明細書中で参考として援用される)に開示される)。本発明のこのような実施形態は、試験形式(この形式は、被験体の体温に対してわずかに体温上昇である相転移温度を有する、コレステロールを含まないリポソームの循環寿命と、同等のコレステロール含有リポソームの循環寿命との比較に基づく)を使用して、リポソームを調製する方法または選択する方法の使用を包含し得るかまたはその使用に起因する。このように選択されたリポソーム組成物は、リポソーム安定性および薬物保持特性の増強を可能にする。
【0049】
本発明のリポソームは、送達薬物に有用であり、従って生物学的に活性な因子を含むように処方される。
【0050】
多様な因子が、本発明のリポソームに封入され得る。本発明のリポソームはまた、封入された因子と共に凍結され得るか、あるいはこの因子は、凍結に続いて封入され得る。用語「因子」は、治療適用および診断適用において使用され得る化学的部分をいう。本明細書中で使用される場合、用語「治療剤」および「薬物」は、治療において使用される化学的部分をいい、リポソームベースの薬物送達が望ましい。本発明のリポソームは、治療剤(例えば、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤および抗菌剤)で封入され得る。本明細書中で使用される場合、用語「抗菌剤」および「抗ウイルス剤」は、微生物およびウイルスの、成長、増殖および生存のそれぞれに関する効果を有する化学部分をいう。抗菌剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ペニシリンG、ストレプトマイシン、アンピシリン、ペニシリン、カルベニシリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、アンホテリシンB、バンコマイシン、ならびにフロキサシン(floxacin)およびフロキサシン誘導体(シクロフロキサシン(ciprofloxacin)、ノルフロキサシン(norfloxacin)、ガトリフロキサシン(gatrifloxacin)、レボフロキサシン(levofloxacin)、モキフロキサシン(moxifloxacin)およびトロバフロキサシン(trovafloxacin))。抗ウイルス剤としては、AZTが挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「抗腫瘍剤」は、新生細胞または腫瘍の、成長、増殖、侵襲性または生存に関する効果を有する化学部分をいう。抗腫瘍治療剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗物質薬、細胞傷害性抗生物質および種々の植物アルカロイドならびにそれらの誘導体が挙げられる。
【0051】
薬剤は、当該分野において公知の受動的充填技術により本発明のリポソームの内側に封入され得る。リポソーム中に治療剤を封入する受動的方法は、リポソームの合成の間に薬剤を包埋する工程を包含する。この方法において、この薬剤は、捕捉された水性空間内に会合または包埋された膜であり得る。これは、Banghamら、J.Mol.Biol.(1965)12:238により記載される受動的捕捉方法を含み、ここで、目的の薬剤を含む水相は、反応容器の壁に沈着した、乾燥した小胞形成脂質の層と接触される。機械的手段による撹拌の際、脂質の膨張が生じ、そして多層小胞(multilammellar vesicle)(MLV)が形成される。押出しを用いて、MLVが、超音波処理後に、大単層小胞(large unilamellar vesicle)(LUV)または小単層小胞(small unilamellar vesicle)(SUV)に変換され得る。用いられ得る受動的充填の別の方法としては、Deamerら、Biochim.Biophys.Acta(1976)443:629に記載される方法が挙げられる。この方法は、エーテル中に小胞形成脂質を溶解する工程を包含し、そして最初にエーテルをエバポレートして表面に薄層を形成する(その後、この薄層が、封入される水相と接触される)代わりに、このエーテル溶液が直接この水相に注入され、そしてその後エーテルがエバポレートされ、これにより、封入された薬剤を有するリポソームが得られる。使用され得るさらなる方法は、Szokaら、P.N.A.S.(1978)75:4194により記載される逆相エバポレーション(REV)法であり得、この方法において、水不溶性有機溶媒中の脂質の溶液が、水性キャリア相に乳化され、そして引き続き、有機溶媒が減圧下で除去される。
【0052】
用いられ得る受動捕捉の他の方法は、リポソームを連続的な脱水および再水和の処理、または凍結および解凍に供する工程を包含する。この技術は、Kirbyら、Biotechnology(1984)979〜984により開示される。また、Shewら、Biochim.Biophys.Acta(1985)816:1〜8は、超音波処理により調製されたリポソームが、水溶液中で、封入される溶質と混合され、そしてこの混合物が、回転フラスコ中、窒素下で乾燥される方法を記載する。再水和の際、有意な画分の溶質が封入されている大きなリポソームが生成される。
【0053】
薬剤は、能動的封入方法を用いて封入され得る。能動的充填は、リポソームが形成された後での治療薬剤の取り込みを誘導するための、リポソーム膜を通る膜内外勾配の使用を包含する。これは、Na+、K+、H+、および/またはプロトン化窒素部分を含む1以上のイオンの勾配を包含し得る。本発明に従って用いられ得る能動的充填技術としては、pH勾配充填、電荷誘引、およびこの薬物に結合し得る薬剤による薬物シャトリングが挙げられる。
【0054】
リポソームは、pH勾配充填技術に従って充填され得る。この技術に従って、選択されたpHの水相を封入するリポソームが形成される。水和したリポソームは、封入される薬物または他の薬剤上の電荷を除去または最小にするために選択された、異なるpHの水性環境中に配置される。一旦、この薬物がこのリポソームの内側に移動したら、この内部のpHは、荷電した薬物状態をもたらし、このことは、この薬物が脂質二重層を透過することを防止し、それにより、この薬物をこのリポソーム内に封入する。
【0055】
pH勾配を作製するために、元の外部媒体は、異なる濃度のプロトンを有する新たな外部媒体によって置換される。外部媒体の置換は、種々の技術によって(例えば、脂質小胞調製物を、(以下の実施例に記載したような)新たな媒体で平衡化したゲル濾過カラム(例えば、Sephadexカラム)に通過させることによって、または遠心分離技術、透析技術もしくは関連の技術によって)達成され得る。内部媒体は、外部媒体に対して酸性または塩基性のいずれであってもよい。
【0056】
pH勾配の確立後、pH勾配充填可能薬剤は、この混合物に添加され、そしてこのリポソーム中へのこの薬物の封入が、上記の通りに生じる。
【0057】
pH勾配を用いた充填は、本明細書中に参考として援用される米国特許第5,616,341号、同第5,736,155号および同第5,785,987号に記載される方法に従って実施され得る。
【0058】
pH勾配充填を用いて充填され得る治療薬剤は、中性形態のイオン化可能部分が、この薬物がこのリポソーム膜を横切ることを可能にし、そして荷電した形態へのこの部分の変換が、この薬物がこのリポソーム内に封入されたままであることを引き起こすように、1以上のイオン化可能部分を含み得る。イオン化可能部分は、アミン基、カルボン酸基およびヒドロキシル基を含み得るが、これらに限定されない。酸性内部に応答して充填される薬剤は、酸性環境に応答して荷電されるイオン化可能部分を含み得るのに対して、塩基性内部に応答して充填される薬物は、塩基性環境に応答して荷電される部分を含む。塩基性内部の場合、カルボン酸基またはヒドロキシル基を含むがこれらに限定されない、イオン化可能部分が利用され得る。酸性内部の場合、1級アミン基、2級アミン基および3級アミン基を含むがこれらに限定されない、イオン化可能部分が用いられ得る。好ましくは、pH勾配充填可能な薬剤は治療薬剤であり、そして最も好ましくは抗腫瘍性薬剤、抗微生物薬剤または抗ウイルス薬剤である。pH勾配充填法によってリポソーム中に充填され得、それゆえ、本発明において使用され得る治療薬剤の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アントラサイクリン抗生物質(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトザントロン、エピルビシン、アクラルビシンおよびイダルビシン);抗腫瘍性抗生物質(例えば、マイトマイシン、ブレオマイシンおよびダクチノマイシン);ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびナベルビン(navelbine));プリン誘導体(例えば、6−メルカプトプリンおよび6−チオグアニン);プリン誘導体およびピリミジン誘導体(例えば、5−フルオロウラシル);カンプトテシン(例えば、トポテカン、イリノテカン、ルートテカン(lurtotecan)、9−アミノカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシンおよび10−ヒドロキシカンプトテシン);シタラビン(例えば、シトシンアラビノシド);抗微生物剤(例えば、シプロフロキサシンおよびそれらの塩)。本発明は、現在入手可能な薬物に限定るべきでないが、未だ開発も市販もされておらずかつ膜内外pH勾配を用いて充填され得る他の薬物まで拡大される。
【0059】
リポソームに亘るpH勾配を達成し、そして維持するために種々の方法が、使用され得る。これは、そのリポソームが膜に入り込みそしてプロトンと交換で膜を横切ってイオンを輸送し得るイオン透過担体の使用を含み得る(例えば、米国特許第5,837,282号を参照のこと)。そのリポソーム膜を横切ってプロトンを輸送し、それによって、pH勾配を設定し得るリポソームの内側に封入された緩衝剤がまた、利用され得る(例えば、米国特許第5,837,282号を参照のこと)。これらの緩衝剤は、脱プロトン化しているときは中性であり、かつプロトン化したときは荷電している、イオン化可能部分を含む。この緩衝剤の中性の脱プロトン化形態(これは、プロトン化形態と平衡状態にある)は、リポソーム膜を横断することができ、従って、そのリポソームの内部にプロトンを残し、それによって、内部のpHを上昇させる。このような緩衝剤の例としては、塩化アンモニウムメチル、硫酸メチルアンモニウム、硫酸エチレンジアンモニウム(米国特許第5,785,987を参照のこと)および硫酸アンモニウムが挙げられる。塩基性の内部pHを達成し得る内部に充填された緩衝剤がまた、利用され得る。この場合において、この緩衝剤の中性形態が、プロトン化されて、その結果、プロトンが、リポソーム内部から輸送されて、塩基性の内部を達成する。このような緩衝剤の例は、酢酸カルシウムである(米国特許第5,939,096号を参照のこと)。
【0060】
電荷誘引法は、治療剤を能動的に充填するために使用され得る。薬物充填のための電荷誘引機構は、1以上の荷電した種について濃度勾配を生成することによって、膜を横切る膜貫通電位を生成することを含む。従って、イオン化したときに負に荷電した薬物について、膜貫通電位が、外側の電位に対して正である内側の電位を有する膜を横切って生じる。正に荷電した薬物について、反対の膜貫通電位が使用される。
【0061】
1つの実施形態において、調製に続いて、そのリポソームは、0℃より低い温度に供され、その結果、凍結状態で存在する。このリポソームは、以下によって凍結され得る:液体窒素への浸漬、ドライアイス、−20℃の従来型フリーザーまたは−80℃もしくは−70℃の従来型フリーザー。代替的実施例において、そのリポソームは、液体窒素中に凍結され得、その後、フリーザー内に浸漬させる。リポソームは、それらが使用されるまで長期期間におよんで凍結状態で安定に貯蔵され得る。凍結後に、このリポソームは、0℃より高い温度に供することによってさらなる使用のために解凍され得る。
【0062】
このリポソームは、0℃より低い温度に供される前に、封入された薬剤を含む。これは、上述の能動的充填技術および受動的充填技術を使用して、薬剤を予め形成されたリポソームにロードすることに関連する。このカプセルされた薬剤が治療薬である場合に、この解凍されたリポソームは、リポソーム封入薬剤を投与するための既知の手順に従って、治療において直接的に使用され得る。
【0063】
このリポソームには、凍結の後に、薬剤が能動的に充填され得る。これにより、凍結リポソームが非封入形態で薬物製造業者に提供されることが、可能になる。その製造業者は、その後、そのリポソームに、薬剤を能動的に充填し得る。好ましい能動的充填方法は、上記のpH勾配充填法である。リポソームは、膜を通るpH勾配を伴って凍結され得るか、またはこの勾配は、凍結後に生成され得る。
【0064】
この勾配が凍結後に生成される場合、外部緩衝液は、異なるプロトン濃度を有する新しい外部媒体により交換および置換され得る。この外部pHはまた、酸または塩基の添加によって調整され得る。この外部媒体の置換は、種々の技術によって達成され得、例えば、(以下の実施例において示されるように)新しい媒体ゲルで平衡化されたゲル濾過カラム(例えば、Sephadexカラム)に脂質小胞調製物を通すことによってか、または遠心分離技術、透析技術、もしくは関連技術によって、達成され得る。内部媒体は、この外部媒体に対して酸性または塩基性のいずれであってもよい。
【0065】
本発明のリポソームはまた、1回より多くの凍結および解凍のサイクルに供され得る。
【0066】
凍結後、そのリポソーム調製物は、そのリポソームが中に浸漬されている水性溶媒を除去することによって、脱水され得る。このリポソームは、好ましくは、標準的な凍結乾燥装置または等価な装置を使用して脱水される。すなわち、このリポソームは、好ましくは、減圧下で脱水される。使用前に、この乾燥リポソーム調製物は、そのリポソームが懸濁される適切な溶媒を添加することによって、再構成され得る。好ましくは、このリポソーム調製物は、減圧を導入することによって脱水される。減圧を適用するための手段としては、真空ポンプまたは等価な装置の使用が挙げられる。この脱水プロセスは、好ましくは、室温ではなく、低下した温度にて実行される。一旦このリポソームが脱水されると、このリポソームは、使用されるまで長期間にわたって保存され得る。
【0067】
本明細書における用語「低温安定な(cryostable)」とは、いくつかの望ましくない効果のうちの1つを引き起こすに十分である約0℃未満の温度に本リポソーム組成物を曝露した際に生じるこれらの望ましくない効果のうちのいずれか1つに対して実質的に抵抗性である、リポソームを指す。望ましくない効果としては、そのリポソームの凝集および/または融合に起因する、リポソームサイズの増加、そのリポソーム調製物のサイズ分布もしくは濁度の増加、ならびに封入された薬剤の損失が挙げられるが、これらに限定されない。代表的には、望ましくない副作用は、0℃未満の温度、−5℃未満の温度、なおより代表的には−10℃未満の温度で生じる。
【0068】
リポソームが低温安定であるか否かは、例えば、そのリポソームを0℃未満の温度に曝露することに関連する望ましくない効果を測定することによって、評価され得る。0℃未満の温度に供した前と後でのそのリポソームのサイズ変化を測定することは、準弾性光散乱(QELS)を使用して下記のように実行され得る。このリポソームの融合はまた、蛍光共鳴エネルギー転移を含む他の手段によっても、測定され得る。このことは、励起されたプローブと第2のプローブとの近接に起因する、その励起されたプローブから第2のプローブへのエネルギー転移の測定を包含する。凍結後の封入された薬剤の放出の測定は、以下に開示されるように実行され得る。封入された薬剤は、上記の能動的充填法または受動的充填法を使用して、このリポソーム中に組込まれ得る。捕捉された薬剤の漏出は、凍結前および凍結後に捕捉された薬剤の量を測定することによって、測定され得る。その薬剤は、放射性標識剤の場合にはシンチレーション計数によって、または定量のために検出可能な吸光度を含む薬剤の場合には分光法によって、定量され得る。あるいは、その薬剤は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、原子吸光技術および関連技術によって、定量され得る。
【0069】
リポソーム調製物もまた、凍結損傷の巨視的証拠(例えば、巨視的粒子の存在)について、および非凍結コントロールサンプルと比較した懸濁物の透明度または濁度について、視覚的に検査され得る。濁度は、650nmに設定した分光光度計を使用して、測定され得る。このリポソームはまた、大きな粒子、凝集物、またはそのリポソームが低温安定ではないことを示し得る他の変化について、遠心分離によって試験され得る。遠心分離後、その遠心管は、肉眼で観察され得るその管の底にある粒子の存在について、観察される。
【0070】
このリポソームを0℃未満の温度に曝露することに関係する望ましくない効果は、コレステロールを含む等価なリポソーム処方物と比較され得る。
【0071】
本発明はまた、本発明のリポソームを哺乳動物に投与する方法、および障害(例えば、癌)に罹患している哺乳動物または障害(例えば、癌)に対して感受性である哺乳動物または障害(例えば、癌)に罹患している疑いがある哺乳動物を処置する方法を包含する。本発明の組成物の医学的使用の例としては、癌の処置、心血管疾患(例えば、高血圧、心律動異常、および再狭窄)の処置、細菌感染の処置、真菌感染の処置、または寄生生物感染の処置、本発明の組成物をワクチンとして使用することを介する疾患の処置および/もしくは予防、炎症の処置、または自己免疫疾患の処置が挙げられるが、これらに限定されない。特に、本発明は、被験体にリポソームを投与する方法を包含し、この方法は、本発明のリポソームを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。処置方法または投与方法は、一般的には、その障害またはその症状を改善するに十分である投与量にて本発明の薬学的組成物を投与する工程を包含することが理解される。
【0072】
ヒトの病気を処置するために、有資格医師は、用量、スケジュール、および投与経路に関して本発明の組成物がどのように利用されるべきかを、確立されたプロトコルを使用して決定することが予期され得る。そのような適用はまた、本発明の送達ビヒクル組成物において封入された活性薬剤が被験体の健常組織に対して減少した毒性を示すのであれば、用量増大を利用し得る。
【0073】
本発明のリポソームを含む薬学的組成物は、標準的技術に従って調製され、そしてこの薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。一般に、通常の生理食塩水が、この薬学的に受容可能なキャリアとして使用される。他の適切なキャリアとしては、例えば、水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、5%デキストロースなどが挙げられ、安定性増加のための糖タンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)が挙げられる。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。生じる水溶液は、使用のために包装され得るか、または無菌条件下で濾過され凍結乾燥され得る。その凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌水溶液と合わされる。この組成物は、生理的条件に近づけるために必要である薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤など(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど))を含み得る。さらに、このリポソーム懸濁物は、保存の際に脂質をフリーラジカルおよび脂質過酸化損傷から保護する、脂質保護剤を含み得る。親油性フリーラジカルクエンチャー(例えば、αトコフェロールおよび水溶性鉄特異的キレーター(例えば、フェリオキサミン)が、適切である。
【0074】
この薬学的処方物中のリポソーム濃度は、広範に、すなわち、約0.05重量%未満から、通常は、少なくとも約2重量%〜5重量%から、10重量%〜30重量%程度まで変化し得、選択される特定の投与様式に従って、主に流体容積、粘度などによって選択される。例えば、その濃度は、処置に関連する流体負荷を低下させるために増加され得る。あるいは、刺激性脂質から構成されたリポソームは、投与部位の炎症を弱めるために、低濃度に希釈され得る。診断のために、投与されるリポソームの量は、使用される特定の標識、診断される疾患状態、および臨床家の判断に依存する。
【0075】
好ましくは、その薬学的組成物は、非経口投与、すなわち、動脈内投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、または筋肉内投与されるか、あるいはエアロゾルを介して投与される。エアロゾル投与法は、鼻内投与および肺投与を包含する。より好ましくは、この薬学的組成物は、ボーラス注入によって、静脈内投与または腹腔内投与される。例えば、Rahmanら、米国特許第3,993,754号;Sears、米国特許第4,145,410号;Papahadjopoulosら、米国特許第4,235,871号;Schneider、米国特許第4,224,179号;Lenkら、米国特許第4,522,803号;およびFountainら、米国特許第4,588,578号を参照のこと。この使用に適する特定の処方物は、Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,第17版(1985)に見出される。
【0076】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明を限定するために提供されない。
【実施例】
【0077】
(調製物A)
(大きな単膜リポソームの調製方法)
脂質を、クロロホルム溶液中に溶解し、その後、窒素ガス流下で乾燥し、真空ポンプ中に配置して溶媒除去した。微量レベルの放射性脂質3H−CHEまたは14C−CHEを添加して、処方プロセスの間および静脈内投与後の脂質を定量した。生じた脂質フィルムを、高真空下に最低限2時間は配置した。この脂質フィルムを示した溶液中で脱水して、単膜リポソーム(MLV)を形成した。生じた調製物を、押出し装置(Lipex Biomembranes,Vancouver,BC)を用いて、積み重ねたポリカーボネートフィルターに10回通して押出して、80nmと150nmとの間の平均リポソームサイズを達成した。全リポソーム構成脂質を、モル%で報告する。
【0078】
(調製物B)
(薬物充填の定量方法)
薬物充填開始後の種々の時点で、アリコートを取り出し、Sephadex G−50スピンカラムを通して、遊離薬物を封入された薬物から分離した。脂質レベルを、液体シンチレーション計数によって測定した。使用する場合、溶出物中に存在する放射標識ダウノルビシン(3H−ダウノルビシン)レベルおよびFUDR(3H−FUDR)レベルを、液体シンチレーション計数によって測定した。イリノテカンレベルを、遊離薬物の標準曲線に対して、370nmでの吸光度によって測定した。特定の容積の溶出物に、Triton X−100を添加して、イリノテカン含有リポソームを可溶化した。界面活性剤を添加した後、その混合物を100℃まで加熱し、そして吸光度測定前に室温まで冷却させた。
【0079】
(実施例1)
(DSPCリポソームの血中安定性は、ホスファチジルグリセロール(PG)含量の増加にともなって増加する)
種々のレベルのホスファチジルグリセロール(PG)がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を多量脂質成分として含むリポソームの血中残留時間を延長しそしてそのリポソームの薬物保持特性を増加する能力を、調査した。DSPCリポソームを、種々のレベルのジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)を用いて調製し、封入CuSO4に応じたダウノルビシンを充填した。その血漿中脂質レベルおよび薬物濃度を、マウスに投与した後に測定した。
【0080】
10モル%、20モル%および30モル%のDSPGを含むDSPCリポソームを、上記方法に記載されたようにして、クロロホルム中にDSPCを溶解し、クロロホルム/メタノール/水(16:8:1 v/v)中にDSPG脂質を溶解し、そしてこれらの調製物を、放射性マーカー14C−CHEと、モル比90:10、80:20および70:30で合わせることによって、調製した。脂質フィルムを真空下に一晩置いて、すべての残留溶媒を除去し、その後、150mM CuSO4、20mMヒスチジン(pH7.4)中で再水和した。その後、手持ち型のタンジェンシャルフロー透析カラムを使用して、これらのリポソームの緩衝液を生理食塩水に交換して、外部の銅を除去し、さらに300mMスクロース、20mM HEPES、5mM EDTA(SHE緩衝液)(pH7.4)に交換した。
【0081】
これらのDSPC/DSPGリポソーム中へのダウノルビシン(微量レベルの3H−ダウノルビシンを含む)の取り込みを、これらのリポソームを薬物とともに、薬物対脂質重量比0.1にてインキュベートすることによって、確立した。上記の方法において記載されたようにスピンカラム分析によって測定した完全な薬物充填を、60℃にてこの溶液をインキュベートした後に達成した。手持ち型タンジェンシャルフローカラムを使用して、その外部緩衝液を生理食塩水に交換した。得られたダウノルビシン充填DSPC/DSPGリポソームを、脂質用量100mg/kgおよび薬物用量10mg/kgにて、Balb/cマウス(1時点あたり3匹のマウス)に注射した。望ましい時点にて、心臓穿刺によって血液を収集し、EDTAコートした微小容器中に配置した。それらのサンプルを遠心分離し、血漿を注意深く別のチューブに移した。脂質および薬物の回収を、二重標識シンチレーション計数によってモニターした。データの点は、平均結果±標準偏差(SD)を示す。
【0082】
これらの結果は、リポソームの最適な血液耐性が、20モル%のDSPGの取り込みによって達成されたことを実証する(図1A)。対照的に、Mehtaらは、WO99/59547において、15モル%未満のDMPGで調製したDPPC/Cholリポソームが、20モル%のDMPGで調製したリポソームと比較して、延長された血中半減期を示したことを報告した。これらの以前の研究におけるリポソームは、本発明において使用される相転移温度よりも低い相転移温度を有するバルク脂質(DPPC)および安定化脂質としてのコレステロール(Chol)を利用した。従って、これらの結果は、ホスファチジルグリセロール含有リポソームを形成する脂質成分の性質が、キャリアの血漿安定性特性に影響を与え得ることを実証する。
【0083】
以前に、親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)および脂質(例えば、GM1)で調製したリポソームが、リポソームの循環寿命を延長させる能力を有することが実証されている。これらの結果は、ポリマーであるポリ(エチレングリコール)(PEG)が、血漿安定性のためには必要とされず、そして非双性イオン部分(例えば、頭部(head)基に結合したグリセロール)が、リポソームに長い循環特性を生じさせ得ることを示している。理論により束縛されることを望まないが、PG頭部基上のヒドロキシル基の存在は、リポソームを取り囲む水和シェルを作製する、外部媒体中の水分子との水素結合を促進し得る。
【0084】
図1Bに示される結果は、ダウノルビシンの血漿血中レベルがまた、DSPGのレベルの増加と共に増加することを示す。従って、このデータは、血液区画からのリポソームの排除を減少させることに加えて、DSPG含有リポソームが、インビボでの優れた薬物保持特性を示すことを実証する。
【0085】
(実施例2)
(5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(FUDR)の保持は、コレステロールを含まないPG含有リポソーム中に封入される場合に最適である)
受動的に内包された5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(FUDR)のインビボでの保持に対する、リポソーム処方物中のコレステロール(Chol)の取り込みの影響を試験し、そしてホスファチジルグリセロールを含むリポソーム中に封入されたFUDRの保持特性と比較した。これを、DSPC/Chol(55:45モル比)およびDSPC/DSPG(80:20モル比)からなるリポソーム中にFUDRを受動的に内包し、そしてマウスへの処方物の投与後に薬物対脂質の比率を比較して実施した。DSPC/Cholリポソームを、これらの研究についてのコントロールとして選択した。なぜなら、この処方物は、コレステロールの安定化効果に一部起因して、薬物を最適に保持するその能力に起因して当該分野で歴史的に利用されているからである。DSPGを、20モル%にてDSPCリポソーム中に取り込んだ。なぜなら、このレベルのPGは、実施例1において実証されるように、リポソームに最適な循環寿命を付与することが見出されているからである。
【0086】
14C−CHEで標識したDSPC/Chol脂質薄層およびDSPC/DSPG脂質薄層を、実施例1に記載されるように調製し、そして微量レベルの3H−FUDRを含むHBS(pH7.4)中のFUDRからなる溶液中で水和した。押出し後、リポソームを、接線流(tangential flow)透析の使用によって通常の生理食塩水へと緩衝液交換した。FUDR充填したリポソームを、Balb/cマウス(1時点当たり3匹のマウス)に、20μmole/kgのFUDR用量で投与し、得られた脂質用量は200μmole/kgであった。示された時点において、血液を、心臓穿刺によって収集し、EDTAコーティングした微量容器(microtainer)中に配置した。サンプルを遠心分離し、そして血漿を別のチューブへ注意深く移した。脂質回収および血漿薬物濃度を、液体シンチレーション計数によって決定した。データ点は、3点からの平均+/−SDである。
【0087】
図2の結果は、FUDRが、DSPC/Chol(55:45モル比)処方物と比較して、DSPC/DSPG(80:20モル比)処方物において最適に保持されたことを実証する。これらの結果は、コレステロールの代わりに安定化脂質としてPGが使用される場合に、増強されたFUDR保持が実現されることを示唆する。
【0088】
(実施例3)
(コレステロール含量の減少は、イリノテカンを含むPG含有リポソーム中のFUDRの増大した保持を生じる)
PG含有リポソーム中に受動的に内包され、その後イリノテカンを充填されたFUDRの保持に対するコレステロールの影響を、2種の封入薬物を含む処方物中のFUDRの保持に対するコレステロールの影響を試験するために、調査した。本発明者らは、インビボでの2種の薬物の相乗的相互作用が、これら2種の薬物の放出速度が匹敵する場合に、最適に生じることを以前に実証している。薬物の保持は、パラメータ(例えば、構成要素の脂質のアシル鎖長、コレステロール含量およびリポソームの内部区画の浸透圧)を制御することによって、調節され得る。これらの研究を、両方の薬物の協調した放出を達成する最終目的で、コレステロールが二重充填されたリポソーム中の1種の薬物の放出速度を調節する能力を調査するために実施した。受動的に内包されたFUDRの保持に対する漸増レベルのコレステロールの影響を決定するために、DSPG含有リポソームを、5モル%、10モル%、15モル%および20モル%のコレステロールで調製し、そして血漿の薬物対脂質比率を、マウスへの静脈内投与後に測定した。上記の実施例のように、PGを、20モル%にてリポソーム中に取り込んだ。なぜなら、このレベルのPGは、DSPCリポソームに対して長期循環特性を最適に付与することが見出されているからである。
【0089】
5モル%、10モル%、15モル%および20モル%で取り込まれたコレステロール、ならびに20モル%で一定に維持されたPGと共に、DSPC/Chol/DSPGからなる脂質薄層を、DSPCおよびコレステロールをクロロホルム中に溶解させ、そしてDSPGをクロロホルム/メタノール/水中に溶解させ、そしてこれらの調製物を適切なモル比で合わせることによって、実施例1に記載されるように調製した。溶媒の除去後、脂質薄層を、クロロホルム中に再溶解させ、そして再び乾燥し、その後、25mg/mLのFUDRを微量レベルの3H−FUDRと共に含む、250mMのCuSO4からなる溶液中に水和した。押出し後、リポソームを、300mMスクロース、20 HEPES、30mM EDTA(pH7.4)中に、手持ち式接線流透析カラムを使用して、緩衝液交換した。緩衝液交換後、これらのサンプルを、0.1:1の薬物対脂質モル比にて50℃でイリノテカンと共に充填し、そして手持ち式接線流透析カラムを使用して、HBS(pH7.4)へと交換した。得られた二重充填リポソームを、脂質340μmole/kg、FUDR34μmole/kgおよびイリノテカン34μmole/kgにて、Balb/cマウスに投与した。血液を、示された時点にて心臓穿刺によって回収し、そしてEDTAコーティングした微量容器中に配置した;3匹のマウスを各時点について使用した(上記実施例のように、データ点は、平均+/−SDである)。これらのサンプルを遠心分離し、そして血漿を、別のチューブに注意深く移した。脂質濃度およびFUDR濃度を、液体シンチレーション計数によって決定し、イリノテカン濃度を、HPLC分析によって決定した。
【0090】
図3の結果は、20モル%のDSPGを含むDSPCリポソーム中のコレステロール含量が増加するにつれて、最初のFUDR対脂質比%に付随する減少が存在することを実証する。従って、これらの結果は、コレステロールが、第二の薬物を充填されたPG含有リポソームからの薬物放出反応速度論を制御するために使用され得ることを実証する。
【0091】
(実施例4)
(リポソームの血中安定性は、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびホスファチジルイノシトール(PI)の取り込みによって増強され得る)
これらの脂質がまた、DSPGについて観察された特性と同様の長期循環特性をこれらのリポソームに付与するか否かを決定するために、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびホスファチジルイノシトール(PI)を含むDSPCリポソームの血漿残留時間を試験した。DSPGおよびDPPGは共に、グリセロール頭部基を含むが、DSPGのアシル鎖が、18個の飽和炭素原子を有し、一方でDPPGのアシル鎖が、16個の飽和炭素原子のみを含む点で異なる。PGおよびPIは、これらが共に親水性中性部分によって遮蔽された、負に荷電したリン酸基を含む点で、共通の化学的特徴を共有する。
【0092】
10モル%、20モル%および30モル%のDPPGを含むDPPGリポソームを、実施例1に示されるように調製した(但し、DPPG脂質を、クロロホルム/メタノール(94:6 v/v)に溶解させ、そして3H−CHEを脂質標識として使用した)。得られた脂質薄層を、HBS(pH7.4)で水和し、そして押出し後、これらのリポソームを、100mg/kgの脂質用量でBalb/cマウス(1つの時点当たり3匹のマウス)に注射した。示された時点において、血液を心臓穿刺によって収集し、そしてEDTAコーティングした微量容器中に配置した。これらのサンプルを遠心分離し、そして血漿を別のチューブに注意深く移した。脂質の回収を、液体シンチレーション計数によってモニタリングし、そしてこれらのデータ点は、平均結果+/−SDを示す。
【0093】
DSPC/PIリポソームを、クロロホルム中にDSPC脂質を溶解させ、そして水素化植物PIをクロロホルム/メタノール/水(8:4:1 v/v)中に溶解させることによって調製した。次いで、これらの脂質を、90:10、80:20および70:30のDSPC対PIモル比で、適切な量の3H−CHEと一緒に合わせた。温度を、溶媒がほとんどなくなるまで70℃で維持しながら、N2ガス流の下で、クロロホルムを除去した。得られた脂質薄層を、減圧下におき、大部分の溶媒を除去した。これらの薄層を、メタノールを含むクロロホルムの溶液中に再溶解し、その後、上記のように溶媒を除去した。これらの脂質薄層を減圧ポンプ下に一晩おいて、残りの溶媒を除去し、その後、HBS(pH7.4)中で再水和した。押出し後、得られたLUVを、100mg/kgの脂質用量でBalb/cマウス(1つの時点当たり3匹のマウス)に注射した。示された時点において、血液を心臓穿刺によって収集し、そしてEDTAコーティングした微量容器中に配置した。これらのサンプルを遠心分離し、そして血漿を別のチューブに注意深く移した。脂質の回収を、液体シンチレーション計数によってモニタリングし、そしてこれらのデータ点は、平均結果+/−標準偏差を示す。
【0094】
図4に要約される結果は、DPPG脂質が、DSPCリポソームに長期循環特性を付与することを示す。このように、2つのメチレン基の除去によってPG脂質のアシル鎖成分の長さを減少させることは、これらの脂質がリポソームに長期循環特性を付与する能力に実質的に影響を与えないようである。
【0095】
図5に示される結果は、PG含有リポソームと同様に、PIで調製した処方物が、延長した循環寿命を示すことを実証する。従って、PIのイノシトール頭部基は、PGのグリセロール頭部基と同じ様式で、リポソームの血漿安定性を増強するように作用するようである。
【0096】
(実施例5)
(低レベルのコレステロールを含むホスファチジルグリセロールリポソームは、凍結の有害な影響に対向する)
リポソーム調製物は、これらの組成物が特定の使用のためのものであるように、延長した化学的安定性特性および物理的安定性特性を示すことが好ましい。これは、しばしば、不安定な薬物および/または脂質成分の分解を回避するために、凍結または凍結乾燥(freeze−dried(lyophilized))生成物形式の使用を必要とする。凍結防止剤を使用しない場合、リポソームは、一般に、解凍/再水和プロセスの間に、機械的破断、凝集および融合しやすい。FUDRおよびイリノテカンで同時充填され、そして20モル%未満のコレステロールで調製されたホスファチジルグリセロール含有リポソームが、凍結の有害な影響に対して耐性であるか否かを試験するために、DSPCリポソームを、0モル%、5モル%、10モル%、15モル%および20モル%のコレステロールで調製し、そして−20℃および−70℃の温度に供した。リポソームサイズを、薬物の充填および凍結後の解凍によって誘導されるリポソーム凝集の程度を測定するために、凍結の前後および薬物充填の前後に測定した。
【0097】
0〜20モル%のコレステロール、DSPGおよびDSPC、ならびに微量レベルの14C−CHEを有する脂質薄層を、これらの方法に記載されるように調製した。これらの脂質薄層を、100mMのFUDRを微量レベルの3H−FUDRと共に含む250mMのCuSO4で再水和した。押出し後、これらのリポソームを、生理食塩水で緩衝液交換し、次いで、手持ち型接線流カラムを使用して、300mMのスクロース、20mM HEPES、30mM EDTA(SHE緩衝液)(pH7.4)へと緩衝液交換した。次いで、このサンプルを、300mMのスクロース、20mM HEPES(pH7.4)へと交換して、外部緩衝液中のいずれのEDTAをも除去した。0.1:1の薬物対脂質モル比で、5分間にわたって50℃で薬物と共にリポソームをインキュベートすることによって、これらのリポソームにイリノテカンを充填した。遊離の薬物を接線流を使用するHSBへの緩衝液交換によってサンプルから除去した。NICOMP粒子寸法測定器を使用して、薬物充填の前後に、サンプルの寸法を測定した。凍結研究について、これらのサンプルを、24時間にわたって−20℃および−70℃で凍結した。凍結後、これらのサンプルを室温まで解凍し、次いでサンプルのアリコートを、Sephadex G−50スピンカラムに流し込み、次いで遠心分離した。スピンカラム溶出液についての薬物対脂質のモル比を、液体シンチレーション計数を使用して生成して、脂質および5−FUDRの濃度を決定し、そして標準曲線に対する370nmでの吸収を決定して、イリノテカン濃度を決定した。溶出したリポソームの粒子寸法決定もまた、準弾性光散乱を使用して決定した。リポソームサイズ測定値についての標準偏差値は、凍結前のリポソームについて24%〜34%の範囲であり、−20℃での凍結後では31%〜61%の範囲であり、そして−70℃での凍結後では32%〜47%の範囲であった。全てのχ二乗値は、1未満であった。
【0098】
図6Aに要約される結果は、FUDRおよびイリノテカンを同時封入されたリポソームが、リポソームサイズが、凍結前後に実質的に変化しなかったという観察によって証明されるように、−70℃での凍結の後に最適な安定性を示すことを示す。−20℃および−70℃での凍結の前後の、二重充填リポソームにおけるFUDRおよびイリノテカンの保持の試験により、FUDRが、凍結/解凍プロセスを通じて十分保持されることが明らかとなった(図6B)。同様の知見が、−20℃および−70℃での凍結の前後に、イリノテカンの保持について観察された(図6C)。累積的に、これらの結果は、安定化脂質(例えば、ホスファチジルグリセロール)が、凍結防止剤の存在を必要とせずに、凍結の有害な影響に対してリポソームを保護するために使用され得ることを実証する。
【0099】
(実施例6 pH勾配の非存在下で調製された、コレステロールを含まないリポソームは凍結後の凝集に耐える)
脂質をクロロホルム中で調製し、その後窒素ガスの流れにおいて乾燥させ、減圧ポンプ内に一晩置いた。次いで、これらのサンプルを、300mMシトレート緩衝液(pH4.0)またはHEPES緩衝化生理食塩水(HBS)(pH7.4)で水和し、そして押出装置(Lipex Biomembranes,Vancouver,BC)(80nmポリカーボネートフィルタおよび100nmポリカーボネートフィルタを有する)に、10回通した。平均リポソームサイズを、NICOMP 370サブミクロン粒子寸法測定器を632.8nmの波長で用いて、準弾性光散乱(QELS)によって決定した。リポソームを、24時間、液体窒素(−196℃)中で凍結させ、室温で解凍してNICOMP粒子寸法測定器を用いる平均リポソームサイズの決定に供した。
【0100】
図7は、300mMシトレート中で水和したDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソーム(コレステロールを含まないリポソーム)のサイズが、凍結の前後でサイズの実質的な変化を示さなかったことを示す。対照的に、DPPC/chol(55:45モル%)リポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)リポソームはまた、300mMシトレート中で水和され、凍結後に約10倍、サイズが増加した。同じ傾向が、図8に例示されるように、シトレート中で水和されたDSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソーム、DSPC/chol(55:45モル%)リポソームおよびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)リポソームによって示された。
【0101】
HBS中で水和したDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームのサイズはまた、図9において示されるように、凍結後に実質的なサイズ変化を示さなかった。対照的に、DPPC/chol(55:45モル%)リポソームおよびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)リポソームはまた、HBS中で水和され、凍結後に実質的なサイズ変化を示した(また図9)。
【0102】
図10は、HBS中で水和したDSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームのサイズは凍結後に変化しなかったが、一方、HBSで水和し、かつDSPC/コレステロール(55:45モル%)およびDSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームはまた、図9と同じ傾向であったことを示す。
【0103】
図11は、DPPC/DSPE−PEG750(95:5モル%)およびDSPC/DSPE−PEG750(95:5モル%)からなり、かつHBS中で水和されたリポソームもまた、凍結後にサイズ変化しないことを示し、従って、低分子量の親水性ポリマーもまた、コレステロールを含まない系における、凍結に起因するリポソームの凝集に対して保護することを実証する。
【0104】
図12は、DAPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなり、かつHBS中で水和されたリポソームもまた、凍結後に実質的なサイズ変化をしなかったことを示し、従って、アシル鎖長の増加は、凍結安定特性に影響しないことを実証する。
【0105】
(実施例7 コレステロールを含まない、pH勾配PEG化リポソームは凍結後の凝集を防ぐ)
DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)およびDPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームを、押出およびサイズ決定の後にHBSで平衡化したSephadex G50カラムを通してpH勾配を生じさせたことを除いて、実施例7の方法(水和緩衝液としてシトレートを使用する)に従って調製した。得られたリポソームを、24時間、液体窒素(−196℃)中で凍結させ、室温で解凍し、その後、平均リポソームサイズの第2の決定に供した。
【0106】
図13は、DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)pH勾配リポソームのサイズが、凍結後に実質的なサイズ変化を示さなかったことを示す。対照的に、DPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)pH勾配リポソームはまた、300mMシトレート中で水和され、凍結後に約3倍、サイズが大きくなった。同様に、図14に例示されるように、DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるpH勾配リポソームは、凍結後のサイズ変化を実証しなかったが、DSPC/コレステロール/DSPE−PEG2000リポソームは実証した。
【0107】
(実施例8 封入されたグルコースを含む、コレステロールを含まないリポソームおよびコレステロール含有リポソームの凍結安定性)
リポソームを、20mM HEPES、150mM NaCl、50mMグルコース(pH7.4)の溶液中で水和を実施したこと(14C−グルコースの追跡を伴う)を除いて、実施例7に従って調製した。得られた(受動的に封入されたグルコースを含む)リポソームのサイズをはかり、次いでHBS中、10mL G50 Sephadexカラムに通して外部の媒体からグルコールを除去した。グルコース内包の割合を、液体シンチレーション計数によって測定した。リポソームを、−196℃で凍結させ、室温で解凍して、その後QELS分析を使用するサイズの決定に供した。封入したグルコースの割合を、凍結後に、HBSで平衡化した1mL G50 Sephadexスピンカラムにリポソームを通し、その後の溶離液のシンチレーション計数によって測定した。
【0108】
図15は、内包されたグルコースを含むDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームが、凍結によって誘導される凝集に対して耐性であることを示す。他方、DPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)は、凍結工程後にサイズが増加する。慣用的な方法は、リポソームの内表面および外表面の両方において凍結保護剤の存在を必要とする。これらの結果は、リポソームの内側における凍結保護剤の存在が、凍結/解凍の保護にとって十分であることを示す。
【0109】
凍結前後のグルコース封入の割合を、図16に示す。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームは、凍結後にグルコースの損失を示さなかった。対照的に、凍結後のグルコースの漏出は、DPPC/コレステロール/DSPE−PEG2000(50:45:5モル%)からなるリポソームで生じた。
【0110】
(実施例9 封入ドキソルビシンを含む、コレステロールを含まないリポソームの凍結安定性)
膜貫通型のpH勾配を有するリポソームを、実施例8のように調製した。ドキソルビシンを、0.2:1のドキソルビシン:脂質の比率でリポソーム混合物に添加し、そしてDPPC/DSPE−PEG2000リポソームのために37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、この混合物を、HBSで平衡化した1mL G50 Sephadexスピンカラムに通した。溶離液の脂質濃度を、液体シンチレーション計数によって測定した。ドキソルビシンレベルの測定のために、この溶離液の規定容積を、100μLに調整し、その後、900μLの1% TritonX−100を添加し、リポソーム膜を溶解した。このサンプルを、外観上濁るまで加熱し、そしてAbs480を室温で平衡化後に測定した。ドキソルビシンの濃度を、検量線を調製することによって計算した。
【0111】
ドキソルビシン封入リポソームを、HBS(pH7.4)中で10 mL Sephadex G50カラムに通し、外部緩衝液をHBSで交換した。脂質およびドキソルビシンのレベルを、上記の通り決定した。リポソームを、−196℃で24時間凍結させ、室温で解凍し、その後QELS分析を行って、リポソームの新たなサイズを決定した。次にリポソームを、HBSで平衡化したG50 Sephadexスピンカラムに通し、脂質およびドキソルビシンの濃度を、上記の通り決定した。
【0112】
図17に示されるように、ドキソルビシンを封入したDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームは、凍結後にサイズを増加しなかった。ドキソルビシンはまた、凍結後にこの処方物中に維持された。
【0113】
(実施例10 凍結後に薬物を充填した、凍結安定性の、コレステロールを含まないリポソーム)
リポソームを実施例6のとおり調製し、−196℃で24時間凍結した。サンプルのサブセットに、凍結前にドキソルビシンを充填(「新たな充填(loaded fresh))し、別のサブセットは凍結後に充填した。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)の充填を、DSPC/DSPE−PEG2000リポソームに対して37℃で2時間および60℃で15分間、実施した。ドキソルビシン封入の割合の決定を、実施例10のように実施した。コレステロール含有リポソームは、凝集が原因で充填できなかった。DPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームには、37℃でのインキュベーションによって充填したが、DSPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)からなるリポソームには、60℃でのインキュベーションによって充填した。
【0114】
図18および19は、凍結の前後に充填されたDPPC/DSPE−PEG2000(95:5モル%)リポソームおよびDSPC/DSPE−PEG2000リポソームが、同様の充填プロフィールを提示することを示す。
【0115】
これらの結果は、コレステロールを含まないリポソームが、凍結後に薬剤を能動的に充填され得ることを実証する。これは、凍結されたリポソームが、薬剤を充填した後に、封入されていない形状で提供されることを可能にする。
【0116】
多くの改変が、前述の系に対して、それらの基本的教示から逸脱することなくなされ得る。本発明は、1つ以上の特定の実施形態を参照することによってかなり詳細に記載されているものの、当業者は、変更が本明細書中に詳細に開示される実施形態に対してなされ得、これらの実施形態および改良がなお、添付の特許請求の範囲に記載されるような、本発明の範囲および精神の範囲内であることを認識する。本明細書中に引用される、全ての特許出願または特許書類は、このような特許出願または書類の各々が参考として本明細書中に、特定にかつ個々に援用されるかのように、本明細書中に参考として援用される。
【0117】
上記の刊行物または書類の引用は、前述の全てが関連する従来技術であるという承認として意図されも、これらの刊行物または書類の内容またはその日時に関していかなる承認も構成しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−18632(P2010−18632A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242896(P2009−242896)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【分割の表示】特願2003−543568(P2003−543568)の分割
【原出願日】平成14年11月13日(2002.11.13)
【出願人】(509291264)セレーター ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【分割の表示】特願2003−543568(P2003−543568)の分割
【原出願日】平成14年11月13日(2002.11.13)
【出願人】(509291264)セレーター ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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