説明

増強した熱衝撃抵抗性を有するセラミックハニカムフィルター

セラミックハニカム構造体の熱衝撃抵抗性が、セル壁接合部の改良によって向上される。壁接合部は、長手方向に延びる開口を作り出し、このような開口を通じて、この壁接合部で交差する2つ以上のセルを流体連絡するように改良することができる。このような場合、このような改良された壁接合部で交差する全ての壁が、その接合部で、少なくとも1か所の他の壁に結合されていなければならない。あるいは、壁接合部は、接合部を共有する2つ以上のセルからの接合部中に延びる応力集中切欠き(ノッチ)を提供することにより改良することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年12月18日出願された米国仮出願第61/138,743号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、増強した熱衝撃抵抗性を有するセラミックハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0003】
壁の薄い、末端開口セルを有するハニカム形構造体は、特に内燃機関を有する車両における、排出物質浄化装置(emission control device)などの用途に広く使用されている。これらの構造体は、触媒担体としても使用される。
【0004】
高温用途向けハニカム構造体はしばしば、不十分な熱衝撃抵抗性の問題を有する。熱衝撃抵抗性は、ハニカム構造体が、大きなかつ急速な温度変化および/または、その構造体内の異なる領域間の著しい温度こう配などの、熱衝撃事象に耐える能力である。熱衝撃抵抗性は、構成する材料の熱膨張率、およびその材料の臨界引張り歪み(critical tensile strain)に関連する。他の場合にはハニカム構造体を製造するための優れた候補である多くの材料が、幾分高い熱膨張率および低い臨界引張り歪みを示している。この材料を成形してハニカム構造体とする場合、この性状の組合せが不十分な熱衝撃抵抗性を招く可能性がある。
【0005】
針状ムライトは、このような材料の一例である。針状ムライトは、非常に優れた機械的強度を有し、さらに、結晶化して相互連結された針状物を形成するので、非常に高表面積の物体を形成する。しかし、針状ムライトの熱衝撃抵抗性は、所望されるものよりも低い傾向がある。
【0006】
これらのハニカム構造体の熱衝撃抵抗性を増大させる2つの取組みが存在する。第一の取組みは、構成する材料を変更することを考察する。これは通常、より高い熱膨張率および/またはより低い臨界引張り歪みを有する材料の選択を含む。この取組みについての問題は、熱衝撃抵抗性の改良が通常、他の望ましい性状を犠牲にしてもたらされる点である。いくつかの場合、気孔率または表面積が犠牲になる。さらに他の場合、安価な押出成形方法を使用し、新たな材料を加工して容易にハニカム構造体とすることができない。
【0007】
第二の取組みは、ハニカム構造体それ自体の改良を含む。その考え方は、いくつかの方法でセルの壁またはセルの形状を改良することによって、熱衝撃事象中に生じる応力をより良好に軽減することができるようになる可能性があり、したがって破壊を受け難くなるであろうということである。手短に言えば、この改良により構造体中に、より大きな可撓性を組み込み易くする。
【0008】
米国特許第3,983,283号は、正方形セルを有するハニカム構造体を記述している。いくつかのセルから隅部を無くして、ハニカム構造体中に不連続部分を形成している。この不連続部分により、構造体が急速な温度変化を受ける場合に作り出される圧縮および引張り力をより良く吸収することが可能になる。隅部を無くすると、4つ1組のセルが、互いに流体連絡される影響を有する。不連続部分を配置すると、構造体は、入口型流路と出口型流路とが分離される必要がある壁流濾過(wall flow filtration)に適合できなくなる。さらに、多くの壁部が、片持ちの「フリーな」端部を有する。これらの端部は、他方の構造体に接着されず、したがって一端が支持されていない。これらのフリーな端部は、損傷を受け易い。
【0009】
米国特許第4,127,691号および第4,448,828号は、正方形セル設計に基づくハニカム構造体を記述している。改良点は、特定の壁部が無くなり、したがって2つの隣接する正方形セルが結合されて、アスペクト比2:1を有するより大きな方形セルを形成する点である。残りのセル壁部を修正して、アスペクト比ほぼ2:1を保持しながら、六辺形セルを形成することができる。米国特許第4,448,828号では、構造体の中心部だけセル壁部を無くしている。この取組みでは、熱衝撃抵抗性が増大するが、セル壁部を無くするために著しい表面積の減少という犠牲を払っている。
【0010】
米国特許第4,323,614号において記述されるハニカム構造体は、幾分湾曲したセル壁部を有し、このことが構造体の熱衝撃抵抗性を増大させる助けになるが、流体圧抵抗が増大するという犠牲を払っている。
【0011】
米国特許第6,843,822号および第7,259,120号は、正方形セルを有するハニカム構造体を記述している。良好なガス流動速度を維持しながら、すす(soot)および灰の貯蔵容量を増加させるため、セルは、大きなセルと小さなセルが交互になるパターンで配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
所望されることは、高い熱衝撃抵抗性、高表面積を有するモノリシックなセラミックハニカム構造体であって、壁流濾過に適合できる、かつ、押出成形などの低コストの製造方法を用い作製することができる構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様において、本発明は、モノリシックなセラミックハニカム構造体であり、それぞれの壁接合部が少なくとも3つのセルに共通であるように交差する壁によって画定される、多数の長手方向に延びるセルを備えるハニカム構造体であって、
それらの壁接合部の一部が改良された壁接合部(modified wall joints)であり、それらの改良された壁接合部がそれぞれ長手方向に延びる開口を含むが、但し改良された壁接合部で交差する全ての壁が、その改良された壁接合部で少なくとも1つの他の壁に長手方向に結合するとの条件で、それぞれのこのような改良された壁接合部において、少なくとも2つの長手方向に延びるセルが、その長手方向に延びる開口を通じて流体連絡されるように、それらの改良された壁接合部がそれぞれ長手方向に延びる開口を含むハニカム構造体である。
【0014】
他の態様において、本発明は、モノリシックなセラミックハニカム構造体であり、それぞれの壁接合部が少なくとも3つのセルに共通であるように交差する壁によって画定される、多数の長手方向に延びるセルを備えるハニカム構造体であって、
それらの壁接合部の一部が切欠き(ノッチ)のある(notched)接合部であり、これらの切欠きのある接合部が、2つの、長手方向に延びる亀裂指向性の応力集中切欠きを有し、それぞれの集中切欠きが、異なるセルからの切欠きのある接合部の中に延び、一部ではその厚さを貫通して延びるハニカム構造体である。
【0015】
特定の実施形態において、ハニカム構造体は、それぞれの上記の態様の特徴を組み合わせて、いくつかのセル間で開口を画定する改良された接合部と、亀裂指向性の応力集中切欠きを有する、切欠きのある接合部との両方を含むことができる。このような実施形態において、改良された壁接合部は構造体の1つまたは複数の不連続部分に集中させることができ、切欠きのある壁接合部は構造体の1つまたは複数の異なる部分に集中させることができる。特に好ましい配置において、切欠きのある接合部を有する周縁部分が、改良された接合部を有する中心部分を一部もしくは全体的に取り囲むように、改良された壁接合部は構造体の中心部分に存在し、切欠きのある接合部は構造体のより周縁の部分に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のハニカム構造体の一実施形態であり、長手方向に延びる開口を有する改良された壁接合部を有する実施形態の、一部断面図である等尺図である。
【図1A】図1のハニカム構造体の、拡大上面図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の他の実施形態であり、切欠きのある壁接合部を有する実施形態の等尺図である。
【図3】本発明のハニカム構造体の他の実施形態であり、長手方向に延びる開口を有する改良された壁接合部を有する実施形態を示す断面の上面図である。
【図4】本発明の三角形ハニカム構造体からのセル6個の断面の上面図である。
【図5】本発明のハニカム構造体の他の実施形態であり、構造体の種々の断面において種々の集中度(concentration)(すなわち、所与の構造体断面における壁接合部が、改良された壁接合部である確率)の改良された壁接合部を有する実施形態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、モノリス1は、多数の水平方向に延びるセル4および5から構成され、それぞれ壁(壁のいくつかが、参照番号6により示される。)によって画定される。壁6は、改良されない接合部(そのいくつかが、参照番号7により示される。)および改良された接合部(そのいくつかが、参照番号8により示される。)と交差する。それぞれの改良された接合部8は、長手方向の開口を有し、その開口を通じて、このような改良された接合部8を共有する2つ以上のセル4または2つ以上のセル5が流体連絡される。
【0018】
長手方向に延びるモノリス1の全体にわたって、それぞれのセル4、セル5、壁6、改良されない接合部7、および改良された接合部8が、実質的に均一な寸法を有するように、壁6、改良されない接合部7、および改良された接合部8は、それぞれ、モノリス1を通って長手方向に延びる。したがって、長手方向に伸びるものと垂直な方向に取ったモノリス1の任意の断面の表面は、本質的に同一のプロフィルを有するであろう。図1において、長手方向に延びるモノリス1の方向を、矢印10により示している。
【0019】
図1および1Aに示すように、改良された接合部8と交差する全ての壁6は、改良された接合部で少なくとも1つの他の壁と結合する。この壁の結合は、改良された接合部8の長手方向の長さ全体にわたって延びている。全ての壁が、それぞれの改良された接合部8で少なくとも1つの他の壁と結合されるので、この構造体は、構造的に弱い恐れがある片持ちのまたは「フリーな」壁端部を全く有しない。
【0020】
モノリス1の周囲は、外板(skin)9で被覆され、モノリス1の側面から流体が流出するのを防止する役割を果たす。外板9は、構造体の残部を構成するものと同一のセラミック材料から形成され、それらと同時に成形されることが好ましい一体化した外板とすることができる。別法として、外板9は、セル構造体が成形された後にモノリス1に適用される、金属外被(wrap)などの後付け材料とすることができる。
【0021】
改良された接合部8における開口の存在は、ハニカム構造体の剛性を低下させることにより、その熱衝撃抵抗性を増大させ、そのため構造体は、急速な温度変化および/または構造体内の大きな温度こう配などの熱衝撃事象により良く適応することが可能となる。いくらかの機械的強度の低下が見られるが、この機械的強度の低下は、熱衝撃抵抗性における利得よりも比例的に小さい傾向がある。多くの実際的用途において、モノリスがより良好な熱衝撃抵抗性を有する場合、いくらかの機械的強度の低下は許容することができる。
【0022】
いくつかの壁間の接合部を無くするよりも、むしろ改良して、開口を作り出すと、いくつかの利点をもたらす。ハニカム構造体が、容易に損傷させることができる、片持ちの「フリーな」壁端部を有しないので、接合部を単に無くする場合よりも機械的強度は良好である可能性がある。改良された接合部の存在により、壁面領域が最小限の影響を受け、または全く影響を受けない点がより意義深い。第3の利点は、いくつかの接合部に開口を設ける結果として、セルの大きさおよび形状が精々僅かに変化を受けるだけであることである。このため、流体圧抵抗にはほとんどまたは全く影響がない。
【0023】
本発明のモノリシックなハニカム構造体は、特定の機能を実行する1組のセル、および異なる機能を実行する少なくとも1組の他のセルを有することができる。例えば、濾過および/または触媒用途において、1組のセルが入口型セルとして機能して、ハニカム構造体を使用する場合その中に流体が導入され、他の1組のセルが出口型セルとして機能して、それを通って流体がハニカム構造体から引き出されるのが通常である。したがって、例えば、図1および1A中のセル4は、しばしばセル5と異なった機能を有するであろう。いずれにしても、改良された接合部8を通じて流体連絡される任意のセルの組合せは、モノリスにおいて、例えば、入口型セルであるとか、または出口型セルであるとか同一の機能を実行すべきである。図1および1Aにおいて示される実施形態において、例えば、セル4は、入口型セルとして機能でき、セル5は、出口型セルとして機能できる。異なる機能を有するセルを、図1および図1Aにおける改良された接合部8などの改良された接合部を通じて流体連絡することは、一般にされないであろう。
【0024】
図1および1Aにおいて示される実施形態において、セル4もまたはセル5も、改良された接合部8を通じて、2つ以上の他のセルと流体連絡されることはない。
【0025】
長手方向に延びる開口を有する改良された接合部の最大集中度は、いかなる特定の場合でも、ハニカム構造体に機械的完全性をもたらす必要性によって、制約を受ける。さらに、ハニカム構造体について種々のセルが異なった機能を有する場合、改良された接合部の数は、一般に、同一の機能を有するセルだけが、改良された接合部中の開口を通じて流体連絡されるように、制約を受けるであろう。任意の所与の構造体についての改良された接合部の最大集中度は、ある程度セルの幾何学的配置によって決まるであろう。装置側面からの漏れを防止するため、通例、全て改良されない接合部でありまたはさもなければ閉塞される、モノリスの外部境界にある接合部を計算に入れないで、4つの壁が一緒になって接合部を形成するハニカムは、典型的に、改良された接合部を50%まで含むことができる。したがって、正方形、菱形、および三角六辺形(triangular hexagonal)ハニカムにおいて、50%までの接合部を、改良された接合部とすることができる。六辺形ハニカムまたは三角形ハニカムなどのいくつかのセル形状大きさについて、改良された接合部の最大集中度は、50%未満となる可能性がある。
【0026】
ハニカム構造体中の接合部を、任意の低い集中度で、長手方向に延びる開口を提供するものに改良することができる。すなわち、例えば、特定のハニカムにおいて1%という僅かな接合部を改良することができる。ハニカムの特定のセル形状大きさが与えられると、改良された接合部の数は、例えば、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも25%、改良することができる接合部の最大集中度までとすることができる。
【0027】
改良された接合部を、ハニカム構造体全体にわたって均一に分布させる必要はなく、いくつかの場合、不均一な分布を有する利点が存在しうる。図1および図1Aにおける接合部8などの改良された接合部は、急速な温度変化またはハニカム構造体内の大きな温度こう配などの熱衝撃事象の間、それらが最も強い圧縮力を経験するモノリスの領域に位置する場合、最も効果的に熱衝撃抵抗性を増大させる。多くの場合、構造体の周縁部によって中心部の熱膨張が抑えられるので、構造体の中心の近く(すなわち、構造体の長手軸中心に最も近い)で最も強い圧縮力が経験される。したがって、いくつかの実施形態において、改良された接合部は、専らもしくは主として、構造体の中心長手軸に最も近い、構造体の中心領域に集中され、他方、構造体の1つまたは複数の周縁領域は、改良された接合部を全く含まないか、さもなければより低い集中度で、改良された接合部を含むかのいずれかである。これらの場合、改良された接合部の集中度は、構造体の中心長手軸から周縁に向かって連続的に、または1つまたは複数の不連続的ステップで低下できる。
【0028】
モノリス内の一領域から他の領域への、改良されたもしくは切欠きのある壁接合部の連続的に増加もしくは減少する集中度分布は、有益なものとすることができる。それは、連続的に増加もしくは減少する分布は、ハニカム内の連続的な温度分布に、より良好に従い、こうして、構造体の強度全体を要求されるレベルに保持しながら、構造体内の熱応力を効果的に低下させることができる可能性があるからである。ハニカム構造体は、有限数の不連続的セルで作られ、改良されたもしくは切欠きのある壁接合部の実際の配置は、連続的に増加もしくは減少する分布に近似させることができるに過ぎない。改良されたかつ/もしくは切欠きのある壁接合部の不連続的分布を特定するために、これらの壁接合部の所望の連続的分布にぴったりと近似するディザ法(dithering)アルゴリズムを適用することができる。
【0029】
特定のハニカム構造体内の最適な壁接合部の分布は、例えば、特定のハニカム形状大きさ、ハニカムが使用されるであろう特定の用途、その用途において要求される全体的強度、ハニカムが耐えるように設計された熱衝撃事象の大きさおよび/または頻度などを含む、種々の因子によって決まるであろう。したがって、もっともらしい全ての場合に最適であろう壁接合部の1つの集中度分布を指定することは不可能である。ディザ法アルゴリズムは、これらの因子または他の関連因子を考慮して、最適化したもしくはバランスの取れた性状の組合せを有するハニカムをもたらす、改良されたかつ/もしくは切欠きのあるセルの不連続的分布を作成することができる。
【0030】
種々のディザ法アルゴリズムが知られ、種々のデジタルオーディオおよびデジタル写真用途に使用されている。これらのアルゴリズムは、種々の入力パラメータを受けて、ハニカム構造体内の改良されたかつ/もしくは切欠きのある壁接合部の不連続的分布を作成するのに適用することができる。閾値、ランダム、パターン形成および誤差拡散(error-diffusion)アルゴリズムは、全て有用である。誤差拡散アルゴリズムは、特に有用である。適切なディザ法アルゴリズムの例には、Floyd−Steinberg、Jarvis、Judice、Ninke、Stucki、Burkes、Scolorg、Sierra、2列(two-row)Sierra、Filter Lite、Atkinson、RiemersmaおよびHilbert−Peanoディザリング、ならびに均一階調スクリーニング(even-toned screening)が含まれる。他のディザ法アルゴリズムも知られており、やはり有用である。
【0031】
図5は、ハニカム構造体内で改良された接合部の集中度が変動する、本発明の一実施形態を示す。図5において、ハニカム構造体71には、セル72などのセルが含まれる。示される実施形態におけるそれぞれのセル72は、断面が実質的に正方形であり、4つの壁と4つの隅接合部を有する。接合部の部分は、参照番号73により示されるものなどの改良された接合部である。改良された接合部の集中度は、ハニカム構造体70の中心部において約50%である。この集中度は漸次低下し、ハニカム構造体70の周縁部でゼロになる。図5は、改良された接合部の好ましい配置を示し、接合部73などの改良された接合部のより高集中度を有する、構造体のより中心の領域が、それぞれ、接合部73などの改良された接合部のより低集中度を有する1つまたは複数の外側領域により取り囲まれている。
【0032】
図5に示される実施形態において、改良された接合部の集中度は、ハニカム構造体5の中心部から外側へ放射状に移るにつれて、この接合部がおよそ50%から0%まで約3ステップで低下する。他の実施形態において、ハニカム構造体の中心部から外側へ放射状に移るにつれて、改良された接合部の集中度は、連続的に、または任意のより多いもしくは少ないステップ数で低下できる。ハニカム構造体の全ての領域は、いくらかの集中度の、接合部73などの改良された接合部を含むことができる。他の実施形態において、異なる集中度の改良された接合部を含む種々の領域を、いくつかの他のパターンで、または無作為にでも配置できる。
【0033】
図1、1Aおよび5は、セルが2つ以上の改良された接合部を含まない好ましい配置を示す。顕著な数のセルが2つ以上の改良された接合部を含むハニカム構造体は、より不十分な機械的強度を有する傾向がある。
【0034】
図1、1Aおよび5に示す実施形態において、改良された接合部を有するそれぞれのセルは、その改良された接合部を通じて他の1つのセルとだけ流体連絡される。これは、大抵のハニカム構造体、特に改良された接合部を共有するセルが4つに過ぎないハニカム構造体にとって好ましい配置である。しかし、セルが、ある特定の改良された接合部を通じて他の2つ以上のセルと流体連絡されることが可能である。6つ以上のセルが改良された接合部で交差するハニカム構造体では、改良された接合部で2つ以上のセルと流体連絡することを考えることができる。図4は、三角形ハニカム構造体において、改良された接合部で3つのセルを流体連絡することができる方法を示している。図4において、ハニカム構造体断面60は、6つの三角形セル61および62からなり、そのそれぞれが壁63および壁66で構成される。セル62および63は、改良された接合部64を共有し、それぞれが改良されない2つの接合部65を有する。それぞれのセル61の境界となる2つの壁は、セルの軸長に沿って、改良された接合部64で長手方向に接合され、そのためこの構造体には片持ちの「フリーな」壁は存在しない。改良された接合部64を通じて、3個のセル62が流体連絡され、一方セル61は、他のセルと流体連絡されない。セル62は全て、ハニカム構造体60内で同一の機能を行うべきである。セル61は、個別にセル62と同一の機能を行うことができ、または異なる機能を行うことができる。図4に示した実施形態は、改良された接合部64を通じて、2つのセルだけと流体連絡されるように修正することができる。
【0035】
図1、1Aおよび5は、他の好ましい特徴を示している。図1、1Aおよび5において、任意の種々の改良された接合部8における開口は、それぞれの最も近い周囲の改良された接合部8に対してある角度で配向している。この配置は、ハニカムの流路方向(長手軸)に平行な平面内で亀裂が伝播し、次には、モノリスの破壊または性能低下につながる恐れがあるリスクを最小限に留める助けになる。この角度は、それぞれの場合、30〜150°が好ましく、45〜135°がより好ましい。
【0036】
図1Aにおいて示される他の好ましい特徴は、改良された接合部8における、幾分丸みを帯びた隅部の存在である。改良された接合部8における丸みを帯びた隅部は、改良された接合部の、壁への機械的支持が少ない高度に局所的位置への応力集中を防止する助けになり、したがって改良された接合部の望ましくない亀裂を防止する助けになる。
【0037】
図2は、本発明の第2の態様を示している。モノリス31は、多数の長手方向に延びるセル34および35から構成され、それらはそれぞれ、この特定の実施形態において、4つの壁36によって画定される正方形セルである。壁36は、切欠きのない接合部39および切欠きのある接合部37と交差する。モノリス31が長手方向に延びるその全体にわたって、それぞれのセル34、セル35、壁36、切欠きのある接合部37、および切欠きのない接合部39が、実質的に均一な寸法を有するように、壁36、切欠きのない接合部37、および切欠きのある接合部37は、それぞれ、モノリス31を通って長手方向に延びる。したがって、長手方向に延びる方向と垂直な方向に取ったモノリス31の任意の断面は、本質的に同一のプロフィルを有するであろう。
【0038】
それぞれの切欠きのある接合部37は、2つの亀裂指向性の応力集中切欠き38を有する。応力集中切欠き38は、それぞれの接合部および隣接するセルが長手方向に延びる方に延びる。それぞれの応力集中切欠き38は、異なるセルからの切欠きのある接合部37の中へ、一部ではその厚さを貫通して延びる。
【0039】
特定の切欠きのある接合部37中に延びる相対する切欠き38は、お互いに対して30〜180度、好ましくはお互いに対して90〜180°の角度とすることができる。応力集中切欠き38は、壁36の厚さの約5〜75%、より好ましくは10〜50%の厚さを有することができる。応力集中切欠き38は、接合部内では出会うことはない。
【0040】
図2における切欠き38などの切欠きは、構造体内の全体の亀裂を防止することによるのではなく、その代わりハニカム構造体の機能を維持する亀裂形成パターンを助長することによって、モノリスの熱衝撃抵抗性を高めると考えられる。切欠きのある接合部37は、切欠きのない接合部39よりも機械的に弱く、ハニカム構造体の他の部分、特に切欠きのない接合部39が破壊される前に亀裂を生じ易いであろう。したがって、切欠きのある接合部37内に優先的に亀裂が形成される。したがって、応力は、全体としてモノリスを破壊もしくはその機能を損なうことなく、限定された形で逃がされる。
【0041】
さらに、応力集中切欠き38は、切欠きのある接合部37内に形成される亀裂の方向を決定することを助ける。モノリスが、切欠きのある接合部37内に亀裂を生じる場合、亀裂は相対する応力集中切欠きの一方から他方へ、接合部を通って広がり易いであろう。したがって、切欠きのある接合部37内に形成される亀裂は、限定された形で接合部内に形成され易いであろう。
【0042】
切欠きのある接合部37内に形成される亀裂は、主として、熱衝撃事象によって作り出される引張り応力による。したがって、切欠きのある接合部37は、少なくとも、これらの条件下で最大応力を経験するモノリスの領域内に位置させることが好ましい。
【0043】
切欠きのある接合部37内に形成される亀裂は、その亀裂により接続される隣接するセルを、互いに流体連絡される状態に置くことができる。この状態は、亀裂を含む領域が張力下にあるか、圧縮下にあるかに応じて、時間が経つと変化できる。亀裂が圧縮下にある領域内にある場合、亀裂はしっかり閉じたままであり、隣接するセル間に流体連絡される状態を、ほとんどもしくは全くもたらさない。しかし、亀裂が張力下にある領域内にある場合、亀裂のいずれかの末端で、セル間に開口が形成され、これらのセルは流体連絡される。したがって、切欠きのある接合部37などの切欠きのある接合部内に延びる切欠きは、ハニカム構造体を使用する間同一の機能が行われるセルからの切欠きのある接合部内に延びることが好ましく、したがって、切欠きのある接合部37内に形成される亀裂の結果としての、これらのセル間の何らかのこのような流体連絡は、モノリスの機能に悪影響があるとしても、それは最小限であろう。例えば、図2において、このような亀裂により接続される2つのセル34または2つのセル35は、入口型セルまたは出口型セルとすることができる。
【0044】
図2に示した実施形態において、長手方向に延びるセル34および35のいずれからも、2か所以上の集中切欠きが周囲の接合部に延びることはない。これは、好ましい場合を表しており、それは熱衝撃事象の間、この配置により、構造体のハニカム流路方向(長手軸)に平行な平面内の領域を通る広範な亀裂網目の形成に不利になるからである。
【0045】
さらに、図2に示した実施形態において、何らかの特定の切欠きのある接合部37内に形成される亀裂は、正確に2つのセル34または2つのセル35を接続し易いであろう。もう一度、これは、大抵の場合、特に切欠きのある接合部37で交差する壁が4つに過ぎない場合、好ましいことである。しかし、三角形ハニカム構造体におけるように、特に切欠きのある接合部で6つ以上の壁が交差する場合、3つのセルから接合部に伸びる応力集中切欠きを提供することは可能である。
【0046】
図2に示したように、何らかの特定の切欠きのある接合部37のための集中切欠き38は、それぞれの最も近い周囲の改良された接合部37の集中切欠き38に対してある角度で配向することができる。第1の態様におけるように、集中切欠きのジグザグ(千鳥)形(staggered)の配向は、大きな亀裂が、多くの隣接するセルを通して形成されるのを防止する助けになる。この角度は、それぞれの場合、30〜150°が好ましく、45〜135°がより好ましい。
【0047】
切欠きのある接合部37を、構造体全体にわたって一様に分布させる必要はない。多くの場合、熱衝撃事象のため見られる最も強い引張り力は、構造体の周縁部近くで経験される。したがって、いくつかの実施形態において、切欠きのある接合部は、専らもしくは主として、構造体の周縁領域に集中され、他方、構造体のより中心(すなわち、中心長手軸に最も近い)領域は、切欠きのある接合部を全く含まないか、さもなければより低い集中度で、切欠きのある接合部を含むかのいずれかである。切欠きのある接合部37を含むこの周縁領域は、構造体の中心部分を一部もしくは全体的に取り囲むことができる。このような実施形態が、図2において示される。図2において、セル34および35の一部分だけが、切欠きのある接合部37を有する。図2において切欠きのある接合部37は、モノリス31の周縁近くだけに現れ、一方モノリス31の中心近くの(すなわち、中心長手軸に近い)セル34および35は、切欠きのある接合部37を含まず、その代わり切欠きのない接合部39だけを有する。切欠きのある接合部の集中度は、これらの場合、構造体の中心長手軸から周縁部に向かって漸次、または1つもしくは複数の不連続的ステップで増加する。
【0048】
周縁部分および中心部分の両方において、構造体全体にわたって出現する切欠きのある接合部を有することも、本発明の範囲内である。
【0049】
本発明のある実施形態において、ハニカム構造体は、本発明の両態様の特徴を組み合わせることができる。すなわち、本ハニカム構造体は、図1および1Aにおける接合部7ならびに図3における接合部39などの両方とも改良のないかつ切欠きのない接合部である接合部を含むことができ、図1および1Aにおける改良された接合部8などの改良された壁接合部である接合部を含むことができ、図2における切欠きのある壁接合部37などの切欠きのある壁接合部である接合部を含むことができる。
【0050】
このような実施形態において、(1)1つのセルは、2つ以上の改良された接合部、または2つ以上の切欠きのある接合部を含まず、(2)1つのセルは、改良された接合部および切欠きのある接合部を両方含まないように、改良された接合部および切欠きのある接合部が配置されることが一般に好ましい。しかし、いくつかのセルが少なくとも2つの改良された接合部、2つの切欠きのある接合部、または1つの改良された接合部および1つの切欠きのある接合部を含むように、改良された接合部および切欠きのある接合部を配置することが可能である。
【0051】
ハニカム構造体の構造完全性および機能に見合った、それぞれの型の壁接合部の任意の配置を有することができる。図1および1Aにおける改良された接合部8などの改良された接合部は、熱衝撃事象の間、圧縮応力が支配的であると予想されるモノリスの部分に位置することが好ましく、一方図3の切欠きのある接合部37などの切欠きのある接合部は、熱衝撃事象の間、引張り応力が支配的であると予想されるモノリスの部分に位置することが好ましい。既に言及したように、圧縮応力は、モノリス構造体の中心部分、すなわち中心長手軸の近くで支配的でありかつその最大となる傾向があり、一方引張り応力は、モノリス構造体の周縁により近い所で支配的である傾向がある。したがって、好ましい型の配置において、モノリスの中心部分における壁接合部の部分は、前述の改良された接合部とし、モノリスの周縁部分における壁接合部の部分は、前述の切欠きのある接合部とする。中心部分内では、開口をもたらすように改良された壁接合部の集中度を一定にすることができ、または変動できる。いくつかの実施形態において、中心部分における改良された壁接合部の集中度を、構造体の中心長手軸から周縁に向かう方向に沿って、連続的にまたは1つもしくは複数のステップで低下させ、モノリス内のいくつかの場所では、改良された壁接合部の集中度をゼロまで低下させることができる。同様に、周縁部分については、切欠きのある壁接合部の集中度を一定にすることができ、または変動させることができ、この場合、モノリスの周縁部から中心長手軸に向かって、切欠きのある壁接合部の集中度が低下してゼロになるまでモノリスの周縁部から、連続的にまたはステップ的に低下させることが好ましい。改良された壁接合部を含む中心部分と、切欠きのある壁接合部を含む周縁部分とを収容するモノリスは、改良された壁接合部も、切欠きのある壁接合部も含まない中間帯域を有する。
【0052】
図は、例示の目的で大きく拡大されている。多くの濾過または触媒用途の典型的なハニカムは、セル25〜1000個/断面積平方インチ(長手方向に対して直角)、または約4〜150個/断面積平方センチメートルを収容するであろう。壁厚は、典型的に0.05〜10mm、好ましくは0.2〜1mmであり、但しより大きいもしくはより小さい壁厚が使用できる。
【0053】
図1および1Aにおいて、セル4および5に対する改良された接合部8の開口の大きさは、例示の目的で誇張され、全てのその後の図において誇張されている。図1および2における改良された接合部8の開口は、セル4および5の寸法に対して適切に小さい。改良された接合部8の任意の開口の幅は、それが接続するセルの最長断面寸法の適切に0.01〜0.5倍、好ましくは0.1〜0.25倍である。切欠きのある接合部に形成される亀裂は、さらに薄い可能性があり、切欠きのある接合部が圧縮下にあると実質的に全く閉じることができる。
【0054】
図1および2は、ハニカム構造体内の場合によるセル配置を示し、構造体内において、異なる機能を有することができるセルが交互のパターンを形成する。図1において、セル4を画定する全ての壁6は、種々の隣接するセル5と共有され、セル5を画定する全ての壁は、種々の隣接するセル4と共有される。この型のパターンにおいて、それぞれのセル4は、構造体の周縁にあるものを除いて、全ての側面がセル5との境界になり、それぞれのセル5は、再び構造体の周縁にあるものを除いて、全ての側面がセル4との境界になっている。図2において、セル34および35は、同様なパターンを示している。このような配置は、隣接するセル間の多孔質壁を通る流体の浸透に依存する濾過用途に適している。このような設計において、セル4および34は、それぞれセル5および35と異なる機能を有するであろう。例えば、セル4および34は入口型セルとすることができ、セル5および35は出口型セルとすることができる。
【0055】
セル4および5(図1および1A)、セル34および35(図2)ならびにセル72(図5)は正方形で示されるが、セルは、製造および用途の制約に見合った、任意の望ましい形状とすることができる。適切なセル配置の例には、正方形、菱形(ダイヤモンド形)、八辺形(octasquare)、六辺形、三角形(図4に示す)、および三角六辺形が含まれる。図3は、三角六辺形セル構造における、改良されないおよび改良された壁接合部の可能な配置を例示する。図3において、モノリス41は、六辺形セル45および三角形セル46を収容し、それぞれ多面壁43により画定される。壁43は、改良されない壁接合部47および改良された壁接合部48と交差する。図3において、それぞれの六辺形セル45が、共有している改良された壁接合部48の開口を通じて1つの隣接する六辺形セル45と流体連絡されるように、また、それぞれの三角形セル46が、共有する改良された壁接合部48の開口を通じて1つの隣接する三角形セルと流体連絡されるように、壁接合部の50%が改良されている。図3において例示されるものなどの配置において、六辺形セル45は、入口型または出口型であるなど、1つの機能を行うことができ、三角形セル46は、異なる機能を行うことができる。例えば、六辺形セル45は入口型セルとすることができ、三角形セル46は出口型セルとすることができ、または逆の場合もある。それぞれの結合された六辺形セル45の一対が三角形セル46によって囲まれ、それぞれの結合された三角形セル45の一対が六辺形セル45によって囲まれている点に注目されたい。上記のように、この交互のセル配置は、壁流濾過用途に適している。やはり上記のように、共有する改良された接合部48の開口を通じて流体連絡されるセルは、それぞれ同一の機能を行うべきである。
【0056】
一般的な配置では、モノリス内のあるセルは1つの機能を行い、一方モノリス内の他の組のセルは、第2の機能を行うであろう。第1の組のセルは入口型セルとして機能することができ、他の組のセルは出口型セルとして機能することができる。したがって、図1および1Aでは、セル4は入口型セルとして機能することができ、セル5は出口型セルとして機能することができる。このような場合、モノリスは通例キャップを含み、これらはモノリス1のセル4の出口端12にもしくは出口端12の近くに、またセル5の入口端11にもしくは入口端11の近くに提供される。このキャッピングの配置により、装置を通過する流れの方向が確立される。操作の間、流体は、入口端13でモノリス1のセル4に入り、セル4の壁6を透過して隣接するセル5に入り、モノリス1の出口端12でセル5を出る。同様なキャッピングのスキームを、図2、3、4および5に示されるモノリス構造体に適用して、装置を通過する流れの方向を決め、セルのあるものを入口型セルとし、他のものを出口型セルとすることができる。ハニカム構造体内において、改良された接合部の開口を通じて、または切欠きのある接合部の亀裂を通じて、互いに流体連絡されるセルは、同一の機能を行うべきである。
【0057】
ハニカム構造体は、セラミック材料で作られる。使用されるセラミック材料の特性は、ある程度ハニカム構造体が意図される特定の最終用途によって決まる可能性がある。セラミック材料は、粉末化原料から作られるものであることが好ましく、それから可塑化混合物を形成し、押出してハニカム構造体を成形し、次いで脱バインダーおよび焼成される。押出成形は、最も一般的なハニカム構造体の成形方法である。しかし、他のハニカム成形方法、例えばセラミック前駆体の波形板(corrugated sheet)のプリーティング(ひだ付け)(pleating)、積重ね(stacking)または折りたたみ(folding)などを用いて、本発明において記述されるハニカム構造体を成形することができる。針状ムライト、コージライト、コージライト−スピネル、スポジュメン(spodumeme)、炭化ケイ素、米国特許第7,259,120号に記載されるチタン酸アルミニウム系材料、および他のセラミックスは全て有用である。本発明は、針状ムライトなどのある程度高い熱膨張率を有するセラミック体を作製することが特に考察の対象である。
【0058】
図1および1Aにおける壁6、図2における壁36、ならびに図3の壁43などのセル壁は、いくつかの用途のため多孔質とすることができる。濾過用途では気孔率が重要であり、壁自体がフィルターとして作用し、流体がセル壁内の気孔を通過するときに粒子を捕捉するからである。気孔率はまた、触媒用途のために利用可能な表面積を増加させる。針状ムライト、または針状ムライトおよび、コージライトなどの他のセラミック材料を含有する混合物は、多孔質のセル壁を有するハニカム構造体を作るために特に有用な材料である。
【0059】
ハニカム構造体は、可塑化前駆体材料を押出成形し、次いでこれを焼成してセラミックをもたらすステップにより製造されることが好ましい。可塑化前駆体材料は、種々のセル、壁、改良された壁および切欠きのある壁を画定するダイを通過させて押出成形される。ダイを設計する一般的方法はよく知られ、例えば、第3,983,283号中に記述されている。これらの方法は、所望の改良された壁接合部および/または切欠きのある壁接合部をもたらすのに必要とされる修正を伴い、本明細書において一般に有用である。
【0060】
一連のアングルドシート(angled sheets)を押出成形し、または他の方法で成形し、これらのシートを積重ねて、改良されない接合部、改良された接合部および/または切欠きのある接合部を有する所望のセル構造体を形成し、次いで、積重ねた集合体を脱バインダーおよび焼成するステップにより、ハニカム構造体を成形することも可能である。例えば、図3におけるシート50、51、52、53、54および55を別々に押出成形し、または他の方法で成形し、一緒に積重ねて、示されているハニカム構造体を形成し、次いで、脱バインダーおよび焼成して、モノリス41をもたらすことができる。
【0061】
開口を有する改良された壁接合部が存在すると、本モノリスのコンプライアンスが、その全体強度を犠牲にして高くなる。次に、コンプライアンスが高くなると、熱衝撃抵抗性が高くなる傾向がある。一般に、改良された壁接合部の集中度が高くなると、コンプライアンスが高くなり、全体強度が低下するであろう。驚くべきことに、全体強度が低下するよりも速やかにコンプライアンスが増大する。したがって、コンプライアンスのこの増加分により、全体強度の観点から驚くべき低コストでモノリスの熱衝撃抵抗性が高められる。
【0062】
本モノリスは、微粒子フィルターとして、特に動力装置(power plant)(移動または固定の)排気ガスからの粒子状物質を除去するために使用することができる。この型の特定的用途は、内燃機関、特にディーゼル機関向けのすす(soot)フィルターである。
【0063】
種々の方法を使用して、本複合体に機能材料を適用することができる。機能材料は有機性または無機性とすることができる。無機機能材料、特に金属および金属酸化物は、これらの多くが望ましい触媒性状、収着剤としての機能を有し、または他の必要とされる機能を行うので興味深い。本複合体上に金属または金属酸化物を導入する一方法は、金属の塩もしくは酸の溶液を本複合体に含浸させ、次いで加熱もしくは他の方法で溶媒を除去し、かつ必要な場合仮焼もしくは他の方法でこの塩もしくは酸を分解して、所望の金属または金属酸化物を形成するステップによる。
【0064】
したがって、例えば、触媒もしくは収着剤材料をその上に堆積させることができる高表面積をもたらすために、アルミナコーティングまたは他の金属酸化物のコーティングがしばしば施される。アルミナは、コロイド状アルミナを本複合体に含浸させ、続いて、典型的には含浸体中にガスを通過させることにより乾燥するステップによって堆積させることができる。必要に応じて、この手順を繰り返すことにより、所望量のアルミナを堆積させることができる。チタニアなどの他のセラミックコーティングを、同様な形で施すことができる。
【0065】
本複合体(本複合体にアルミナまたは他の金属酸化物を被覆していることが好ましい。)に、例えば、硝酸白金、塩化金、硝酸ロジウム、硝酸テトラアミンパラジウム、ギ酸バリウムなどの金属の可溶塩を含浸させ、続いて乾燥し、好ましくは仮焼するステップによって、バリウム、白金、パラジウム、銀、金などの金属を、本複合体上に堆積させることができる。こういう形で、特に車両向けの、動力装置排気ガス流向け触媒コンバーターを、本複合体から調製することができる。
【0066】
針上ムライト体上に種々の無機材料を堆積させる適切な方法が、例えば、US205/0113249およびWO2001045828において記述されている。これらの方法は、一般に、本発明の複合体に関連するものである。
【0067】
特に好ましい実施形態において、1つまたは複数のステップで、アルミナおよび白金、アルミナおよびバリウム、またはアルミナ、バリウムおよび白金を、本複合体上に堆積させて、車両エンジンからなど、動力装置排気ガスから、すす、NO化合物、一酸化炭素および炭化水素などの微粒子を除去することが可能なフィルターを形成することができる。
【実施例1】
【0068】
本発明をモデル化するため、大規模なハニカム構造体を作製している。このハニカム構造体は、本発明に従うものであり、図1および1Aに示した一般的配置で作製している。本ハニカムは、一辺が10cmの正方形の形態にある。1平方センチメートル当りおよそ6.4個のセルが存在する。ハニカム構造体の周縁にあるものを含む、壁接合部の50%が、図1に示した改良された壁接合部である。本ハニカムは、Z Corporationによる3D急速プロトタイプ作成プリンターZPrinter(登録商標)310Plusを使用し、石膏系粉末に印刷することにより作製している。この粉末には、シアノアクリレート接合用接着剤(glue)を含浸し、硬化させている。
【0069】
比較のため、全てのセルが正方形で、全ての壁接合部が改良されていないという点を除いて同一の方法で、ハニカムを作製している。
【0070】
それぞれの試料を、1kNロードセルを有するInstron5543試験フレームで圧縮している。本発明のハニカムの真コンプライアンスは、0.207mm/kgfである。最大破壊荷重(maximum load to failure)は2.57mm/kgfであり、破壊変位(displacement at failure)は0.64mmである。
【0071】
比較用ハニカムの真コンプライアンスは、0.005mm/kgfであるに過ぎない。したがって、本発明のハニカムの真コンプライアンスは、比較用ハニカムのそれの約41倍である。比較用ハニカムの最大破壊荷重は63kgfであり、または本発明のそれの約24.4倍である。コンプライアンス増加対強度低下の比率は1.68であり、このことは改良された構造体が、全ての他の点が等しい、改良されない構造体と比較して、熱衝撃事象の間に生じる実質的に、より高い不均一な熱歪みに対して、破壊されずに適応できることを示している。比較用ハニカムについての破壊変位は0.48mmに過ぎない。改良された構造体の破壊変位と改良されない構造体の破壊変位との比率(0.64/0.48=1.33)は、構造体が破壊せずに適応することができる最大負荷全体(ハニカム壁における局所歪みに対する)等軸圧縮歪みの比率に等しい。このことは、全ての他の点が等しい、改良されないハニカム構造体と比較して、およそ33%高い中心部と周縁部の間の温度差に、改良されたハニカム構造体が破壊されずに耐えることができる、と言い換えられる。
【0072】
実施例1の構造体全体にわたって集中度が高い接合部は、改良された接合部であるので、また構造体の周囲に外板または外被がないので、改良された壁接合部の存在が、この実施例における強度およびコンプライアンスに非常に大きな効果を有する。外板もしくは外被の存在、または低い集中度での改良された接合部の存在は、コンプライアンスの増加に関しても、また最大破壊荷重の低下においても、改良された接合部の効果を軽減する傾向があるであろう。しかし、コンプライアンスにおける利点は、強度の低下よりも、大きいままで残るであろう。さらに、所与の構成材料について、改良された接合部の数および配置を修正して、コンプライアンスと強度とをバランスさせることができる。
【実施例2】
【0073】
50部のボールクレーと、50部のカッパ−アルミナとを乾式混合し、次いでsigmaブレードミキサー内でメチルセルロース7部と混合する。48部の10重量%メチレングリコール/水溶液を、混合しながらゆっくり添加する。27℃未満に温度を保持しながら、均質なペーストを形成するまで混合物をブレンドする。このペーストを、密閉容器内において室温で4時間熟成させ、10分間再ブレンドし、次いで押出し機に装填する。これを、1.5インチ×1.5インチ(3.8cm×3.8cm)正方形ダイを通過させて押出成形して、図1に示したダンベルパターンとして配置したセルを有する成形体を形成する。押出し物の長さは7インチ(18cm)である。1インチ当り約15個(1センチメートル当り約6個)のセルが存在する。押出し物を焼成して、セル壁が多孔質である針状ムライト体をもたらしている。この針状ムライト体は、濾過および触媒担体用途に適している。
【符号の説明】
【0074】
1 モノリス
4,5 セル
6 壁
7 改良されない壁接合部
8 改良された壁接合部
37 切欠きのある接合部
38 応力集中切欠き
39 切欠きのない接合部
60、71 ハニカム構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックモノリシックなセラミックハニカム構造体であり、それぞれの壁接合部が少なくとも3つのセルに共通であるように交差する壁によって画定される、多数の長手方向に延びるセルを備えるハニカム構造体であって、
前記壁接合部の一部が改良された壁接合部であり、それらの改良された壁接合部が、それぞれ長手方向に延びる開口を含むが、但し改良された壁接合部で交差する全ての壁が、前記改良された壁接合部で少なくとも1つの他の壁に長手方向に結合するとの条件で、それぞれのこのような改良された壁接合部において、少なくとも2つの長手方向に延びるセルが、前記長手方向に延びる開口を通じて流体連絡されるように、それらの改良された壁接合部がそれぞれ長手方向に延びる開口を含むハニカム構造体。
【請求項2】
前記長手方向に延びるセルが、第1の機能を行う第1の組のセル、および第2の機能を行う少なくとも1組の他の組のセルを含み、特定の改良された壁接合部において長手方向に延びる開口を通じて流体連絡される全ての長手方向に延びるセルが、同一の機能を行う、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
いかなるセルも、改良された壁接合部における長手方向に延びる開口を通じて、2つ以上の他のセルと流体連絡されることがない、請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
改良された接合部の集中度が、前記ハニカム構造体内において変動する、請求項1、2または3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記構造体の中心長手方向軸に最も近い少なくとも1つの領域、および中心領域を一部もしくは全体的に取り囲む少なくとも1つのより周縁の領域を含み、前記中心領域における改良された接合部の集中度が、少なくとも1つの周縁領域におけるよりも高い、請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
セラミックモノリシックなセラミックハニカム構造体であり、それぞれの壁接合部が少なくとも3つのセルに共通であるように交差する壁によって画定される、多数の長手方向に延びるセルを備えるハニカム構造体であって、
前記壁接合部の一部が切欠きのある接合部であり、これらの切欠きのある接合部が、2つの、長手方向に延びる亀裂指向性の応力集中切欠きを有し、それぞれの前記応力集中切欠きが、異なるセルからの切欠きのある接合部の中に延び、一部ではその厚さを貫通して延びるハニカム構造体。
【請求項7】
任意の特定の切欠きのある接合部中に延びる切欠きが、同一の機能を行うセルからの前記切欠きのある接合部中に延びる、請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
長手方向に延びるセルのいずれかから、1つ以下の応力集中切欠きが延びる、請求項6または7に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
切欠きのある接合部の集中度が、前記ハニカム構造体内において変動する、請求項6、7または8に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記構造体の中心長手方向軸に最も近い少なくとも1つの領域、および、中心領域を一部または全体的に取り囲む少なくとも1つのより周縁の領域を含み、前記中心領域における切欠きのある接合部の集中度が、少なくとも1つの周縁領域におけるよりも低い、請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
モノリシックなセラミックハニカム構造体であり、それぞれの壁接合部が少なくとも3つのセルに共通であるように交差する壁によって画定される、多数の長手方向に延びるセルを備えるハニカム構造体であって、
前記セルの第1の部分において、それらの壁接合部の一部が改良された壁接合部であり、それらの改良された壁接合部がそれぞれ長手方向に延びる開口を含むが、但し改良された壁接合部で交差する全ての壁が、前記改良された壁接合部で少なくとも1つの他の壁に結合するとの条件で、それぞれのこのような改良された壁接合部において、2つの長手方向に延びるセルが、前記長手方向に延びる開口を通じて流体連絡されるように、それらの改良された壁接合部がそれぞれ長手方向に延びる開口を含み、
またさらに、前記セルの第2の部分において、前記壁接合部の一部が切欠きのある壁接合部であり、これらの切欠きのある接合部がそれぞれ、2つの、長手方向に延びる、亀裂指向性の応力集中切欠きを有し、それぞれの前記集中切欠きが、異なるセルからの壁接合部中に、一部では前記壁接合部の厚さを貫通して、延びるハニカム構造体。
【請求項12】
前記長手方向に延びるセルが、第1の機能を行う第1の組のセル、および第2の機能を行う少なくとも1組の他の組のセルを含み、特定の改良された壁接合部において長手方向に延びる開口を通じて流体連絡される任意の長手方向に延びるセルが、同一の機能を行い、任意の特定の切欠きのある接合部中に延びる切欠きが、同一の機能を行うセルからの切欠きのある接合部中に延びる、請求項11に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
前記第1の部分が中心部分であり、前記第2の部分が、前記中心部分を一部もしくは全体的に取り囲む周縁部分である、請求項11または12に記載のハニカム構造体。
【請求項14】
前記第1の部分において、いかなるセルも、改良された壁接合部における長手方向に延びる開口を通じて、2つ以上の他のセルと流体連絡されず、前記第2の部分において、いかなる長手方向に延びるセルからも2つ以上の集中切欠きが延びることはない、請求項11,12または13に記載のハニカム構造体。
【請求項15】
改良された接合部の集中度が、前記ハニカム構造体の第1の部分内において変動する、請求項11から14のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項16】
切欠きのある接合部の集中度が、前記ハニカム構造体の第2の部分内において変動する、請求項11から15のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項17】
前記セルが、正方形、菱形、八辺形、六辺形、三角形または三角六辺形である、前記請求項のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項18】
前記セラミックが、針状ムライト、コージライト、コージライト−スピネル、スポジュメン、炭化ケイ素、またはチタン酸アルミニウム系材料である、前記請求項のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項19】
前記壁が多孔質である、前記請求項のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載のハニカム構造体を備えるフィルター。
【請求項21】
内燃機関向けのすすフィルターのためのフィルターである、請求項20に記載のフィルター。
【請求項22】
担体が、請求項1から19のいずれかに記載のハニカム構造体を含む、担持された触媒。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−512745(P2012−512745A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542353(P2011−542353)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/068153
【国際公開番号】WO2010/080412
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】