説明

増殖性障害およびBCR−ABL、C−KIT、DDR1、DDR2またはPDGF−Rキナーゼ活性によりもたらされる他の病態の治療方法

本発明は、式I


(式中、ラジカルは本明細書に定義される通りである。)のピリミジル−アミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩の投与レジメンであって、増殖性障害、特に固形腫瘍および液性腫瘍、およびBcr−Abl腫瘍性タンパク質、細胞膜貫通チロシンキナーゼ型受容体c−Kit、DDR1(ジスコイジンドメイン受容体1)、DDR2(ジスコイジンドメイン受容体2)またはPDGF−R(血小板由来増殖因子受容体)キナーゼ活性によりもたらされる他の病態の治療のための投与レジメンであり、式Iのピリミジルアミノベンズアミドと、場合により、薬学的に許容され得る担体とが、果実調製物に分散されている、投与レジメンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I:
【0002】
【化1】

[式中、
(a)Pyが3−ピリジルを示し、
が、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、もしくはフェニル−低級アルキルを表し、
が、水素、場合により1個もしくは複数個の同一もしくは異なるラジカルRで置換された低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表し、
が、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表す、または、
およびRが一緒になって、4個、5個もしくは6個の炭素原子を有し、場合により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルで一置換もしくは二置換されているアルキレン、4個もしくは5個の炭素原子を有するベンズアルキレン、1個の酸素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン、または1個の窒素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有し、窒素が置換されていないか、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルで置換されているアザアルキレンを表し、
が、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表す、
あるいは、
(b)Pyが5−ピリミジルを示し、Rが水素であり、Rが[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rがメチルである。]
のピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩の投与レジメンであって、
増殖性障害、特に固形腫瘍および液性腫瘍、ならびにBcr−Abl腫瘍性タンパク質、細胞膜貫通チロシンキナーゼ型受容体c−Kit、DDR1(ジスコイジンドメイン受容体1)、DDR2(ジスコイジンドメイン受容体2)またはPDGF−R(血小板由来増殖因子受容体)キナーゼ活性によりもたらされる他の病態を治療するための投与レジメンに関する。
【背景技術】
【0003】
式Iにおいて、Pyが3−ピリジルを示し、Rが水素を表し、Rが5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)−フェニルを表し、Rがメチルを表す化合物は、国際一般名「ニロチニブ(nilotinib)」として知られている。ニロチニブ(4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)−フェニル]ベンズアミド)は、その一塩酸塩一水和物の塩の形態で、商品名タシグナ(Tasigna)(商標)として、承認され、市販されている。ニロチニブは、Bcr−AblのATP競合的阻害剤であり、また臨床的に適当な濃度でc−Kit、DDR1、DDR2およびPDGF−Rキナーゼ活性も阻害する。タシグナ(商標)は、200mgの経口投与用硬ゼラチンカプセルとして、フィラデルフィア陽性慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期(CP)および移行期(AP)の治療のために、イマチニブを含む少なくとも1つの先行治療に対して抵抗性または不耐性の患者において利用できる。CMLの治療においては、一日用量800mgのニロチニブが、2回に分けて各400mgの用量で適用される。
【0004】
ニロチニブカプセル製剤の400mgの経口用量の薬物動態パラメータに対して、食物が与える効果が、ヒト被験体において試験された。ニロチニブを食物と同時投与すると、被験体への曝露が有意に増加した。当該試験において、投与30分前に、高脂肪の朝食を与えた後では、総曝露(AUC0−t)は82%であり、Cmaxは112%であったのに対し、軽い朝食を与えた後では、総曝露(AUC0−t)の増加は29%であり、Cmaxは55%であった。これらの知見を考慮すると、ニロチニブの生物学的利用能に対する食物の効果を最小化するために、ニロチニブは食事と共に摂取してはならないと勧告されている。この点に関する記述は、例えば、欧州医薬品庁(EMEA)により発行されたタシグナ(商標)の市販承認のSPC(製品特徴の概要)の節4.2、4.4および4.5に含められている。グレープフルーツジュースの同時摂取によっても、ニロチニブの吸収が穏やかに増加し、Cmaxは60%増加し、AUCは29%増加した(Yin OQ, Gallagher N, Li A, et al. J Clin Pharmacol. 2010; 50:188-194)。
【0005】
一定の患者、例えば高齢の患者または小児科の患者は、硬ゼラチンカプセルを丸ごと飲み込むことが困難な場合がある。増殖性障害、特に固形腫瘍および液性腫瘍障害、またはBcr−Abl、c−Kit、DDR1、DDR2もしくはPDGF−Rキナーゼ活性によりもたらされる他の病態に罹患している患者にとっては、ニロチニブの代替剤形が必要とされる。また小児科の患者に対しては、体重に応じた投与量の調節が可能となるように、投与量が変動可能であることも望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことに、ニロチニブを果実調製物に分散させて経口投与することにより、上記課題が解決し得ることが明らかになった。
【0007】
より詳細には、実施例に示されるように、400mgのニロチニブ(200mgのニロチニブカプセル2つの内容物)を、それぞれ茶匙1杯のアップルソースに分散させた1回の経口投与は、400mgのニロチニブをカプセルそのもの(intact capsule)として与える1回の経口投与と、生物学的に同等である。しかし、同じ量を無脂肪のプレーンヨーグルトに分散させたものは、生物学的に同等でないことが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、増殖性障害またはBcr−Abl、c−Kit、DDR1、DDR2もしくはPDGF−Rキナーゼ活性によりもたらされる他の病態の治療方法であって、有効量の式I
【0009】
【化2】

(式中、各ラジカルは上記のような意味を有する。)のピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩と、場合により、薬学的に許容され得る担体とを、果実調製物に分散させて、それを必要とするヒト患者に経口投与することを含む、治療方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の上記または下記で使用される一般用語は、別途示されない限り、本開示の文脈内で、好ましくは以下の意味を有する。
【0011】
接頭辞の「低級」とは、7個以下、特に4個以下の炭素原子を有するラジカルを示し、対象となるラジカルは、直鎖状であるか、1個または複数個の分岐を有する分枝鎖である。
【0012】
化合物、塩などについて複数形が使用される場合、1つの化合物、塩なども意味すると解する。
【0013】
低級アルキルは、好ましくは、炭素数が1以上7以下、好ましくは1以上4以下のアルキルであって、直鎖または分岐鎖である。好ましくは、低級アルキルは、ブチル(n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなど)、プロピル(n−プロピルもしくはイソプロピルなど)、エチル、またはメチルである。好ましくは、低級アルキルは、メチル、プロピル、またはtert−ブチルである。
【0014】
低級アシルは、好ましくは、ホルミル、または低級アルキルカルボニルであり、特にアセチルである。
【0015】
アリール基は、ラジカルの芳香環炭素原子に位置する結合を介して当該分子に結合している芳香族ラジカルである。好ましい実施形態において、アリールは、6〜14個の炭素原子を有する芳香族ラジカルであって、特に、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニルまたはフェナントレニルであり、置換されていないか、または、1個もしくは複数個、好ましくは3個まで、特に1個もしくは2個の置換基、特にアミノ、一置換もしくは二置換アミノ、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、フェニル、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、アルカノイル、ベンゾイル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、スルホ、低級アルキルチオ、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、低級アルキルフェニルチオ、低級アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニル、フェニル−低級アルキルスルフィニル、低級アルキルフェニルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルホニル、低級アルキルフェニルスルホニル、ハロゲン−低級アルキルメルカプト、ハロゲン−低級アルキルスルホニル(特に、トリフルオロメタンスルホニルなど)、ジヒドロキシボラニル(−B(OH))、ヘテロシクリル、単環式もしくは二環式ヘテロアリール基、および環の隣接C原子に結合した低級アルキレンジオキシ(メチレンジオキシなど)から選択される置換基で置換されている。アリール基は、より好ましくは、フェニル、ナフチル、またはテトラヒドロナフチルであり、いずれの場合も、置換されていないか、または、独立して、ハロゲン(特に、フッ素、塩素もしくは臭素)、ヒドロキシ、低級アルキル(例えばメチル)、ハロゲン−低級アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、もしくはフェニルによってエーテル化されたヒドロキシ、2個の隣接C原子に結合した低級アルキレンジオキシ(例えば、メチレンジオキシ)、低級アルキル(例えば、メチルもしくはプロピル)、ハロゲン−低級アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ−低級アルキル(例えば、ヒドロキシメチルもしくは2−ヒドロキシ−2−プロピル)、低級アルコキシ−低級アルキル(例えば、メトキシメチルもしくは2−メトキシエチル)、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル(例えば、メトキシ−カルボニルメチル)、低級アルキニル(1−プロピニルなど)、エステル化カルボキシ(特に、低級アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニルもしくはイソ−プロポキシカルボニル))、N−一置換カルバモイル、特に低級アルキル(例えば、メチル、n−プロピルもしくはイソ−プロピル)により一置換されたカルバモイル、アミノ、低級アルキルアミノ(例えば、メチルアミノ)、ジ−低級アルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノもしくはジエチルアミノ)、低級アルキレンアミノ(例えば、ピロリジノもしくはピペリジノ)、低級オキサアルキレン−アミノ(例えば、モルホリノ)、低級アザアルキレン−アミノ(例えば、ピペラジノ)、アシルアミノ(例えば、アセチルアミノもしくはベンゾイルアミノ)、低級アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、スルファモイル、またはフェニルスルホニルを含む群から選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている。
【0016】
シクロアルキル基は、好ましくは、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであって、置換されていないか、またはアリールに対する置換基として上記で定義された群から選択される1個もしくは複数個、特に1個もしくは2個の置換基(最も好ましくは低級アルキル(メチルなど)、低級アルコキシ(メトキシもしくはエトキシなど)またはヒドロキシ)によって置換されていてもよく、さらにオキソによって置換されていてもよく、あるいはベンゾ環に縮合されていてもよい(ベンズシクロペンチルもしくはベンズシクロヘキシルなど)。
【0017】
置換アルキルは、先程定義したようなアルキルであって、特に低級アルキル、好ましくはメチルであり、1個もしくは複数個、特に3個までの置換基が存在し得る場合、主に、ハロゲン(特に、フッ素)、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、およびフェニル−低級アルコキシカルボニルから選択される群に由来する。トリフルオロメチルが特に好ましい。
【0018】
一置換または二置換アミノは、特に、低級アルキル(メチルなど)、ヒドロキシ−低級アルキル(2−ヒドロキシエチルなど)、低級アルコキシ低級アルキル(メトキシエチルなど)、フェニル−低級アルキル(ベンジルもしくは2−フェニルエチルなど)、低級アルカノイル(アセチルなど)、ベンゾイル、置換ベンゾイル(フェニルラジカルは、特に、ニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルおよびカルバモイルから選択される1個もしくは複数個、好ましくは1個または2個の置換基で置換されている)、およびフェニル−低級アルコキシカルボニル(フェニルラジカルは、置換されていないか、または特に、ニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルおよびカルバモイルから選択される1個もしくは複数個、好ましくは1個もしくは2個の置換基で置換されている)から互いに独立して選択される1個もしくは2個のラジカルによって置換されているアミノである。好ましくは、N−低級アルキルアミノ(N−メチルアミノなど)、ヒドロキシ−低級アルキルアミノ(2−ヒドロキシエチルアミノもしくは2−ヒドロキシプロピルなど)、低級アルコキシ低級アルキル(メトキシエチルなど)、フェニル−低級アルキルアミノ(ベンジルアミノなど)、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−フェニル−低級アルキル−N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルフェニルアミノ、低級アルカノイルアミノ(アセチルアミノなど)であるか、または、ベンゾイルアミノおよびフェニル−低級アルコキシカルボニルアミノ(フェニルラジカルは、いずれの場合も、置換されていないか、または特にニトロもしくはアミノによって、もしくはハロゲン、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、カルバモイルもしくはアミノカルボニルアミノによって置換されている)を含む群から選択される置換基である。また二置換アミノは、低級アルキレン−アミノ(例えば、ピロリジノ)、2−オキソピロリジノもしくはピペリジノ、低級オキサアルキレン−アミノ(例えば、モルホリノ)、もしくは低級アザアルキレン−アミノ(例えば、ピペラジノ)、またはN−置換ピペラジノ(N−メチルピペラジノもしくはN−メトキシカルボニルピペラジノなど)でもある。
【0019】
ハロゲンは、特に、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、特に、フッ素、塩素または臭素である。
【0020】
エーテル化ヒドロキシは、特に、C〜C20アルキルオキシ(n−デシルオキシなど)、低級アルコキシ(好ましい)(メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシもしくはtert−ブチルオキシなど)、フェニル−低級アルコキシ(ベンジルオキシ、フェニルオキシなど)、ハロゲン−低級アルコキシ(トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシもしくは1,1,2,2−テトラフルオロエトキシなど)、または1個もしくは2個の窒素原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリールによって置換されている低級アルコキシ、好ましくはイミダゾリル(1H−イミダゾール−1−イルなど)、ピロリル、ベンズイミダゾリル(1−ベンズイミダゾリルなど)、ピリジル(特に2−、3−もしくは4−ピリジル)、ピリミジニル(特に、2−ピリミジニル)、ピラジニル、イソキノリニル(特に、3−イソキノリニル)、キノリニル、インドリルまたはチアゾリルで置換されている低級アルコキシである。
【0021】
エステル化ヒドロキシは、特に、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、低級アルコキシカルボニルオキシ(tert−ブトキシカルボニルオキシなど)、またはフェニル−低級アルコキシカルボニルオキシ(ベンジルオキシカルボニルオキシなど)である。
【0022】
エステル化カルボキシは、特に、低級アルコキシカルボニル(tert−ブトキシカルボニル、イソ−プロポキシカルボニル、メトキシカルボニルもしくはエトキシカルボニルなど)、フェニル−低級アルコキシカルボニル、またはフェニルオキシカルボニルである。
【0023】
アルカノイルは、主に、アルキルカルボニル、特に低級アルカノイル(例えばアセチル)である。
【0024】
N−一置換またはN,N−二置換カルバモイルは、特に、低級アルキル、フェニル−低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、または、場合により末端窒素原子で置換されている低級アルキレン、オキサ−低級アルキレン、もしくはアザ−低級アルキレンから独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている。
【0025】
0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子とを含み、いずれの場合も、置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている、単環式または二環式ヘテロアリール基とは、式Iの分子の残部にヘテロアリールラジカルを結合させている環が不飽和であるヘテロ環部分を指し、結合環において、さらに、場合により任意のアニール環(annealed ring)においても、少なくとも1個の炭素原子が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられており、結合環が、好ましくは、5〜12個、より好ましくは5個もしくは6個の環原子を有しており、置換されていないか、またはアリールに対する置換基として上記で定義した群から選択される1個もしくは複数個、特に1個もしくは2個の置換基(最も好ましくは低級アルキル(メチルなど)、低級アルコキシ(メトキシもしくはエトキシなど)またはヒドロキシ)によって置換されていてもよい環であることが好ましい。好ましくは、単環式または二環式ヘテロアリール基は、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キノリニル、プテリジニル、インドリジニル、3H−インドリル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選択される。より好ましくは、単環式または二環式ヘテロアリール基は、ピロリル、イミダゾリル(1H−イミダゾール−1−イルなど)、ベンズイミダゾリル(1−ベンズイミダゾリルなど)、インダゾリル(特に、5−インダゾリル)、ピリジル(特に、2−、3−、または4−ピリジル)、ピリミジニル(特に、2−ピリミジニル)、ピラジニル、イソキノリニル(特に、3−イソキノリニル)、キノリニル(特に4−または8−キノリニル)、インドリル(特に3−インドリル)、チアゾリル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルからなる群から選択される。本発明の1つの好ましい実施形態において、ピリジルラジカルは、窒素原子に対してオルトの位置でヒドロキシによって置換されており、したがって少なくとも部分的に、対応する互変異性体であるピリジン−(1H)2−オンの形態で存在する。別の好ましい実施形態において、ピリミジニルラジカルは、2位および4位の両方がヒドロキシで置換されており、幾つかの互変異性体の形態、例えば、ピリミジン−(1H,3H)2,4−ジオンとして存在する。
【0026】
ヘテロシクリルは、特に、窒素、酸素および硫黄を含む群から選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する、5、6または7員のヘテロ環系であり、不飽和、または完全飽和もしくは部分飽和でもよく、置換されていないか、または、特に、低級アルキル(メチルなど)、フェニル−低級アルキル(ベンジルなど)、オキソ、もしくはヘテロアリール(2−ピペラジニルなど)で置換されている。ヘテロシクリルは、特に、2−もしくは3−ピロリジニル、2−オキソ−5−ピロリジニル、ピペリジニル、N−ベンジル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−ピペラジニル、モルホリニル(例えば、2−もしくは3−モルホリニル)、2−オキソ−1H−アゼピン−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、または2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イルである。
【0027】
式Iの範囲内であって、pyが3−ピリジルであるピリミジルアミノベンズアミドおよびその製造方法は、参照により本出願に組み込まれるWO04/005281に開示されている。
【0028】
Pyが5−ピリミジルを示し、Rが水素であり、Rが[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rがメチルである、式Iのピリミジルアミノベンズアミドは、INNO−406としても知られている。当該化合物、その製造、およびその投与に好適な医薬組成物は、EP1533304Aに開示されている。
【0029】
pyが3−ピリジルである式Iのピリミジルアミノベンズアミドの薬学的に許容され得る塩は、特に、WO2007/015871に開示されているものである。1つの好ましい実施形態において、ニロチニブは、その一塩酸塩一水和物の形態で利用される。WO2007/015870は、本発明に有用なニロチニブのある種の多形およびその薬学的に許容され得る塩を開示する。ニロチニブ一塩酸塩一水和物の投与のための好適な製剤は、WO2008/037716に記載されている。
【0030】
本明細書で使用する場合、表現「増殖性障害またはBcr−Abl、c−Kit、DDR1、DDR2もしくはPDGF−Rキナーゼ活性によってもたらされる他の病態」の活性は、黒色腫、特にc−KIT変異を内部に持つ黒色腫、乳癌、結腸の癌、肺癌、前立腺の癌またはカポジ肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、急性骨髄性白血病(AML)、Ablチロシンキナーゼ活性の阻害に反応する白血病(慢性骨髄性白血病(CML)およびフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)など)、中皮腫、全身性肥満細胞症、好酸球増加症候群(HES)、線維症(特に肝線維症および腎線維症)、リウマチ性関節炎、多発性関節炎、強皮症、紅斑性狼瘡、移植片対宿主病、神経線維腫症、肺高血圧症(特に、肺動脈高血圧症)、アルツハイマー病、精上皮腫、未分化胚細胞腫、および乾癬を意味する。好ましくは、本明細書に記載されるレジメンは、以下の障害および状態:GIST、CML、Ph+ALL、全身性肥満細胞症、HES、線維症、強皮症、神経線維腫症および肺動脈高血圧症、に適用される。
【0031】
本発明の一実施形態において、障害は、CMLおよびPh+ALL、より好ましくはCMLから選択される。
【0032】
本発明の別の一実施形態において、障害は、GISTおよび黒色腫、特にc−KIT変異を内部に持つ黒色腫から選択される。
【0033】
本発明の別の一実施形態において、障害は、全身性肥満細胞症およびHESから選択される。
【0034】
本発明のさらなる一実施形態において、障害は、全身性強皮症、神経線維腫症および肺動脈高血圧症から選択される。
【0035】
本明細書で使用する場合、表現「Cmax」は、血漿における最大ピーク濃度を意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、表現「AUC」は、血漿濃度曲線下面積を意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、語句「果実調製物に分散された式Iのピリミジルアミノベンズアミドの経口投与」は、好ましくは、式Iの化合物が、単独でまたは少なくとも1種の好適な薬学的担体と共に、果実調製物に分散されて、好ましくは手で、ヒト患者の口に、適切な器具(例えば、匙)を用いて、投与されることを意味する。所望であれば、100〜250mlの水を、果実調製物と共に摂取することができる。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「果実調製物」は、果実、より好ましくはリンゴ、西洋ナシ、またはモモ、最も好ましくはリンゴから調製された、ジュース、ソースまたはピューレを意味する。本発明の好ましい一実施形態において、利用される果実調製物は、アップルソースである。好適なアップルソースは、商品名アンドロス(Andros)(登録商標)アップルソース、モッツ(Mott's)(登録商標)アップルソース、およびオーデンヴァルトアプフェルムス(Odenwald Apfelmus)(Odenwald-Fruchte GmbH、Germany)として利用可能である。グレープフルーツは、ヒト患者において、薬物の取り込み速度に影響を与えることが知られている。したがって、用語「果実調製物」には、グレープフルーツから調製される任意のジュース、ソースまたはピューレは含まれない。
【0039】
本発明の目的のために、ニロチニブの一日の総用量は、特に治療される疾患および治療中の患者の疾患状態に応じた患者の必要性に適合させることができる。但し、いかなる場合でも、一日の総用量は800mgを超えない。
【0040】
本発明の一実施形態においては、WO2008/037716に開示されるような200mgのニロチニブカプセル2つの内容物が、それぞれ茶匙1杯のアップルソースに分散されて、400mgのニロチニブの1回の経口投与となる。
【0041】
好ましくは、式Iの化合物を果実調製物に分散した混合物は、調製後すぐに摂取すべきである。ここで本発明の目的のための「すぐに」とは、調製後30分以内、好ましくは15分以内、より好ましくは5分以内、および最も好ましくは2分以内の時間枠を意味する。
【0042】
本発明は、さらに、本明細書で定義されるような式Iのピリミジルアミノベンズアミド(例えば、ニロチニブ)を、式Iのピリミジルアミノベンズアミド(例えば、ニロチニブ)を果実調製物に分散させるための使用説明書と共に含有する、コマーシャルパッケージ(パッケージ商品;commercial package)を提供する。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、式I:
【0044】
【化3】

[式中、
(a)Pyが3−ピリジルを示し、
が、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、もしくはフェニル−低級アルキルを表し、
が、水素、場合により1個もしくは複数個の同一もしくは異なるラジカルRで置換された低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も、置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表し、
が、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も、置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表す、または、
およびRが一緒になって、4個、5個もしくは6個の炭素原子を有し、場合により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルで一置換もしくは二置換されているアルキレン、4個もしくは5個の炭素原子を有するベンズアルキレン、1個の酸素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン、または1個の窒素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有し、窒素が置換されていないか、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルで置換されているアザアルキレンを表し、
が、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表す、
あるいは、
(b)Pyが5−ピリミジルを示し、Rが水素であり、Rが[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rがメチルである。]
のピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩であって、
増殖性障害、またはBcr−Abl、c−Kit、DDR1、DDR2もしくはPDGF−Rキナーゼ活性によりもたらされる他の病態の治療のためのものであり、
式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、場合により、薬学的に許容され得る担体とが、果実調製物に分散されている、
式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩に関する。
【0045】
さらに、本発明は、式I:
【0046】
【化4】

[式中、
(a)Pyが3−ピリジルを示し、
が、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、もしくはフェニル−低級アルキルを表し、
が、水素、場合により1個もしくは複数個の同一もしくは異なるラジカルRで置換された低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も、置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表し、
が、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も、置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表す、または、
およびRが一緒になって、4個、5個もしくは6個の炭素原子を有し、場合により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルで一置換もしくは二置換されているアルキレン、4個もしくは5個の炭素原子を有するベンズアルキレン、1個の酸素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン、または1個の窒素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有し、窒素が置換されていないか、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルで置換されているアザアルキレンを表し、
が、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表す、
あるいは、
(b)Pyが5−ピリミジルを示し、Rが水素であり、Rが[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rがメチルである。]
のピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、
増殖性障害またはBcr−Abl、c−Kit、DDR1、DDR2もしくはPDGF−Rキナーゼ活性によりもたらされる他の病態を治療する医薬の製造のための使用であり、
医薬が、場合により、薬学的に許容され得る担体と共に、果実調製物に分散されて、必要とするヒト患者に経口投与するように設計されている、
式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩の使用に関する。
[実施例]
【実施例1】
【0047】
インビトロ安定性試験
WO2008/037716に開示されるように調製されたニロチニブカプセルの内容物を、ヨーグルトまたはアップルソースに分散させる。ニロチニブは室温で15分間安定であって、ニロチニブの平均回収率が97.6〜99.9%であることが示されていた。
【実施例2】
【0048】
カプセルそのもの、または、ヨーグルトもしくはアップルソースと混合したカプセル内容物として、健常ボランティア(HV)に投与したときのニロチニブの生物学的利用能について比較する、48人の健常被験体における無作為、非盲検の三期クロスオーバー単一施設試験
18歳〜65歳のHVに対し、絶食条件下で、200mgのニロチニブカプセルそのもの2つを用いた400mgのニロチニブの1回経口投与(治療A)、200mgのニロチニブカプセル2つの内容物をそれぞれ茶匙1杯の無脂肪プレーンヨーグルトに分散させた400mgのニロチニブの1回経口投与(治療B)、または200mgのニロチニブカプセル2つの内容物をそれぞれ茶匙1杯のアップルソースに分散させた400mgのニロチニブの1回経口投与(治療C)のいずれかを行った。血清ニロチニブ濃度を決定するために、一連の血液試料を、各ニロチニブの投与後72時間まで収集する。全ての治療は、少なくとも10時間の一晩の絶食後、朝に、240mLの水で投与した。被験体には、投与後4時間まで絶食を続けさせた。ニロチニブの投与から4時間後(昼食)および10時間後(夕食)に、標準化した食事を供給した。試験の開始から48時間以内は、グレープフルーツ、グレープフルーツジュース、または任意のカフェイン含有飲料の消費を禁止した。
【0049】
1、13および25日目に、ニロチニブ投与前(0時間)およびニロチニブ投与後の0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、24、36、48および72時間後に収集した血液試料から、血清ニロチニブ濃度を決定した。各時点において、2.5mLの全血液を、血清分離器バキュテナー(Vacutainer)(登録商標)(Becton、Dickinson and Company, Franklin Lakes, New Jersey, USA)管を使用して抜き取った。管を、室温で30分間、直立させて静置し、その後、5℃で10分間、1100gで遠心分離した。遠心分離後すぐに、上部の血清試料を移し、試料分析用の分析場所に運ぶまで、−15℃以下で凍結して保存した。
【0050】
ニロチニブの血清濃度は、先に記述された有効な液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC−MS/MS)アッセイに、わずかな修正を加えて測定した(Larson RA、le Coutre PD, Reiffers J et al. J Clin Oncol 28:7s、2010(suppl; abstr 6501))。ニロチニブおよび内部標準[M+4]ニロチニブは、700μLのメチル第三級−ブチルエーテル(MTBE)を用いて、100μLの血清試料から抽出した。MTBE層を移し、蒸発させて乾燥させ、400μLのアセトニトリルと0.2%ギ酸との混合物(40:60、v/v)により再溶解した。クロマトグラフィーは、室温に保持したフェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergi)(商標)Polar-RPカラム(粒径4μm、50mm×2mm内径)(Phenomenex, Inc, Torrance, California)を使用して実施した。分析物は、定組成溶離を使用し、流速0.5mL/分で、移動相として10mMギ酸アンモニウム水溶液中0.2%ギ酸:アセトニトリル中0.2%ギ酸(60:40、v/v)を用いて溶離した。検出は、MS/MSによって、陽イオンモードで、Sciex API4000質量分析計(Applied Biosystem, USA)を用いて行い、ニロチニブについてはm/z 530→289、内部標準については534→293の多重反応モニタリングを行った。ニロチニブの定量の下限は、100μL血清試料を用いて2.50ng/mLであった。各QCレベルでのアッセイ精度は、11%未満であり、正確度は95.2%〜104.3%の範囲であった。
【0051】
200mgのカプセルそのものを2つとした400mgニロチニブの1回経口投与の後、ニロチニブの血清濃度ピークが中位時間(tmax)4.0時間で生じ、Cmax値は平均して398ng/mLであった。ニロチニブの平均t1/2は、19.8時間であった。これらの結果は、カプセルそのものとして同じ400mgの経口用量のニロチニブを健常ボランティアに摂取させて行った先行する試験の観察結果と一致する。200mgのカプセルそのもの2つとして400mgのニロチニブを投与する場合(治療A)と比較して、カプセル2つの内容物(400mg)をヨーグルトに混合したものとしてニロチニブを投与した(治療B)後は、ニロチニブの全身曝露が一般に高いことが分かった。ニロチニブのCmax、AUC0−tlast、およびAUC0−infの幾何平均値は、それぞれ、31%、11%および8%増加した。ニロチニブCmax、AUC0−tおよびAUC0−∞の幾何平均比率(治療B対治療A)の90%Clは、それぞれ、1.22〜1.41、1.05〜1.06および1.02〜1.15であった。
【0052】
ニロチニブカプセル2つの内容物(400mg)をアップルソースに分散させた投与(治療C)は、カプセルそのものでのニロチニブの投与(治療A)と比較して、同様の曝露を示した。ニロチニブCmax、AUC0−tlast、およびAUC0−infの幾何平均比率(治療C対治療A)は、それぞれ0.95、0.99および0.97であり、対応する90%Clは、それぞれ、0.88〜1.02、0.94〜1.04、および0.90〜1.03であった。
【0053】
結果を表1にまとめた。
【0054】
【表1】

【0055】
この試験から以下の結論が得られた。
・200mgのニロチニブカプセル2つの内容物をそれぞれ茶匙1杯の無脂肪プレーンヨーグルトに分散させた400mgのニロチニブの1回経口投与は、カプセルそのものとして与える400mgのニロチニブの1回経口投与と、生物学的に同等ではない。
・200mgのニロチニブカプセル2つの内容物をそれぞれ茶匙1杯のアップルソースに分散させた400mgのニロチニブの1回経口投与は、カプセルそのものとして与える400mgのニロチニブの1回経口投与と、生物学的に同等である。
【0056】
またこの試験は、果実調製物中のニロチニブの投与が、ヒト被験体に対して安全であり、十分許容されるものであることも示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖性障害またはBcr−Abl、c−Kit、DDR1、DDR2もしくはPDGF−Rキナーゼ活性によりもたらされる他の病態の治療方法であって、有効量の式(I):
【化5】

[式中、
(a)Pyが3−ピリジルを示し、
が、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、もしくはフェニル−低級アルキルを表し、
が、水素、場合により1個もしくは複数個の同一もしくは異なるラジカルRで置換された低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表し、
が、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表す、または、
およびRが一緒になって、4個、5個もしくは6個の炭素原子を有し、場合により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルで一置換もしくは二置換されているアルキレン、4個もしくは5個の炭素原子を有するベンズアルキレン、1個の酸素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン、または1個の窒素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有し、窒素が置換されていないか、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルで置換されているアザアルキレンを表し、
が、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表す、
あるいは、
(b)Pyが5−ピリミジルを示し、Rが水素であり、Rが[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rがメチルである。]
のピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩と、場合により、薬学的に許容され得る担体とを、果実調製物に分散させて、それを必要とするヒト患者に経口投与することを含む、前記治療方法。
【請求項2】
ピリミジルアミノベンズアミドが、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)−フェニル]ベンズアミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ピリミジルアミノベンズアミドが、その塩酸塩一水和物の形態で利用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
増殖性障害または他の病態が、黒色腫、乳癌、結腸の癌、肺癌、前立腺の癌もしくはカポジ肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、急性骨髄性白血病(AML)、Ablチロシンキナーゼ活性の阻害に反応する白血病、中皮腫、全身性肥満細胞症、好酸球増加症候群(HES)、線維症、リウマチ性関節炎、多発性関節炎、強皮症、紅斑性狼瘡、移植片対宿主病、神経線維腫症、肺高血圧症、アルツハイマー病、精上皮腫、未分化胚細胞腫、および乾癬から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
増殖性障害または他の病態が、GIST、CML、Ph+ALL、全身性肥満細胞症、HES、線維症、強皮症、神経線維腫症、および肺動脈高血圧症から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヒト患者が、高齢の患者または小児科の患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
果実調製物が、果実から調製されたジュース、ソース、またはピューレである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
果実調製物がアップルソースである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式I:
【化6】

[式中、
(a)Pyが3−ピリジルを示し、
が、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、もしくはフェニル−低級アルキルを表し、
が、水素、場合により1個もしくは複数個の同一もしくは異なるラジカルRで置換された低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表し、
が、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表す、または、
およびRが一緒になって、4個、5個もしくは6個の炭素原子を有し、場合により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルで一置換もしくは二置換されているアルキレン、4個もしくは5個の炭素原子を有するベンズアルキレン、1個の酸素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン、または1個の窒素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有し、窒素が置換されていないか、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルで置換されているアザアルキレンを表し、
が、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表し、
接頭辞の「低級」は、最大7個までの炭素原子を有するラジカルを示す、
あるいは、
(b)Pyが5−ピリミジルを示し、Rが水素であり、Rが[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rがメチルである。]
のピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩のそれぞれを、前記式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩を果実調製物に分散させるための使用説明書と共に含有する、コマーシャルパッケージ。
【請求項10】
式I:
【化7】

[式中、
(a)Pyが3−ピリジルを示し、
が、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、もしくはフェニル−低級アルキルを表し、
が、水素、場合により1個もしくは複数個の同一もしくは異なるラジカルRで置換された低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表し、
が、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0個、1個、2個もしくは3個の環窒素原子と0個もしくは1個の酸素原子と0個もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基であって、いずれの場合も置換されていないか、または一置換もしくは多置換されている基を表す、または、
およびRが一緒になって、4個、5個もしくは6個の炭素原子を有し、場合により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルで一置換もしくは二置換されているアルキレン、4個もしくは5個の炭素原子を有するベンズアルキレン、1個の酸素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン、または1個の窒素原子と3個もしくは4個の炭素原子を有し、窒素が置換されていないか、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルで置換されているアザアルキレンを表し、
が、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表す、
あるいは、
(b)Pyが5−ピリミジルを示し、Rが水素であり、Rが[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rがメチルである。]
のピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩であって、
増殖性障害、またはBcr−Abl、c−Kit、DDR1、DDR2もしくはPDGF−Rキナーゼ活性によりもたらされる他の病態を治療のするためのものであり、
式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、場合により、薬学的に許容され得る担体とを、果実調製物に分散させている、
前記式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはその薬学的に許容され得る塩。

【公表番号】特表2013−511524(P2013−511524A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539982(P2012−539982)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/056926
【国際公開番号】WO2011/062927
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】