説明

増肉プレス方法

【課題】ブランク材の板状縁部から部分的に板厚方向に突出した肉厚突部を、境界線を明確にして成形可能な増肉プレス方法を提供する。
【解決手段】本発明の増肉プレス方法によれば、ブランク材31の板状縁部31Aから両側部を切り離された増肉成形片21を設けておき、その増肉成形片21自体の素材で増肉成形片21を増肉して肉厚突部24を成形するので、肉厚突部24がその周囲の壁部から独立して増肉され、境界線R1が明確になると共に、素材の流動性が向上し、肉厚突部24の形状が安定する。しかも、増肉成形片21の先端の両エッジが増肉成形金型40に備えた1対の傾斜押圧壁43A,43Bに当接して押し潰されることで、増肉成形片21の素材がこれら傾斜押圧壁43A,43Bに案内されてスムーズに流動するので、この点においても肉厚突部24の形状が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランク材の板状縁部から部分的に板厚方向に突出した肉厚突部を成形する増肉プレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている増肉プレス方法として、プレスによりブランク材の所定部位の素材を他の所定部位に流動させて増肉する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−320021号公報(請求項1、第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来の増肉プレス方法では、ブランク材の所定部位の素材が、成形金型のうち角部を成形する部分でスムーズに流動せず、ブランク材が成形金型の形状通りに成形されない、所謂、ダレが生じ得る。このため、従来の増肉プレス方法を用いて、ブランク材の板状縁部から部分的に板厚方向に突出した肉厚突部を成形した場合には、その肉厚突部と板状縁部との境界線が明確にならないという問題が生じていた。なお、肉厚突部と板状縁部との境界線が明確にならないと、例えば肉厚突部を用いた位置決めや位置検出等の精度が悪くなるという問題が発生する。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ブランク材の板状縁部から部分的に板厚方向に突出した肉厚突部を、境界線を明確にして成形可能な増肉プレス方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る増肉プレス方法は、ブランク材(31)の板状縁部(31A)から部分的に板厚方向に突出した肉厚突部(24)を成形する増肉プレス方法において、板状縁部(31A)の先端部から内側に向かって延びた複数の切断面(32)又は溝(32V)を形成して、それら切断面(32)同士又は溝(32V)同士の間に挟まれた短冊状の増肉成形片(21)を設けると共に、増肉成形片(21)の両側に切断面(32)又は溝(32V)を介して隣接しかつ増肉成形片(21)に比べて基端部から先端部までの長さが短い側方隣接壁(22)を設ける予備工程と、増肉成形金型(40)により増肉成形片(21)を先端部から基端部に向けて押圧して板厚方向に増肉させると共に、増肉成形片(21)の基端部を両側方に膨出させて側方隣接壁(22)に押し付ける増肉工程とを行うところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の増肉プレス方法において、予備工程では、板状縁部(31A)を剪断により切断するところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の増肉プレス方法において、予備工程では、増肉成形片(21)と側方隣接壁(22)との間に溝(32V)を形成すると共に、溝(32V)を横切る折り曲げ線(32S)で溝(32V)の開口を内側にして、増肉成形片(21)と側方隣接壁(22)とを曲げ起こし、増肉工程では、増肉成形片(21)の先端部の素材を内側に流動させて増肉させるところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の増肉プレス方法において、増肉成形金型(40)のうち増肉成形片(21)の先端部を押圧する部分に、その押圧方向の前方に向かって増肉成形片(21)の板厚方向に開脚しかつ互いに直交した1対の傾斜押圧壁(43A,43B)を形成しておき、増肉工程では、1対の傾斜押圧壁(43A,43B)に増肉成形片(21)の先端の両エッジをそれぞれ当接させるところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載の増肉プレス方法において、増肉成形金型(40)に、増肉成形片(21)の屈曲部(21K)に対して外側から宛がわれかつ押圧方向に対して傾斜した傾斜受部(41B)を設けておき、増肉工程では、増肉成形片(21)を押圧して傾斜受部(41B)に押し付けるところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の増肉プレス方法において、ブランク材(31)を円形にして、その円形の周方向に沿って増肉成形片(21)及び側方隣接壁(22)を交互に配置して複数形成するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1及び2の発明]
請求項1の増肉プレス方法では、予備工程において、板状縁部(31A)の先端部から内側に向かって延びた複数の切断面(32)又は溝(32V)を形成して、短冊状の増肉成形片(21)とその両側に隣接しかつ比較的短い側方隣接壁(22)とを形成する。次いで、増肉工程では、増肉成形金型(40)により増肉成形片(21)を先端部から基端部に向けて押圧する。これにより、増肉成形片(21)が先端部から基端部に亘って板厚方向に増肉され、ブランク材(31)の板状縁部(31A)から部分的に板厚方向に突出した肉厚突部(24)が成形される。そして、肉厚突部(24)の側面(24A)と側方隣接壁(22)との間が段差状になる。また、増肉成形片(21)は板厚方向への膨出のみならず両側方にも膨出し、その両側方への膨出により、肉厚突部(24)の側面(24A)に側方隣接壁(22)が押し付けられる。これにより、肉厚突部(24)と側方隣接壁(22)との間の段差部分に明確な境界線(R1)が形成される。このように本発明の増肉プレス方法によれば、ブランク材(31)の板状縁部(31A)から、両側部が切断面(32)又は溝(32V)によって少なくとも部分的に切り離された増肉成形片(21)を設けておき、その増肉成形片(21)自体の素材で増肉成形片(21)を増肉して肉厚突部(24)を成形するので、肉厚突部(24)がその周囲の壁部から独立して増肉され、境界線(R1)が明確になる。
【0012】
なお、予備工程では、板状縁部(31A)にスリットを形成して切断してもよいし、請求項2の発明のように、板状縁部(31A)を剪断により切断してもよい。
【0013】
[請求項3の発明]
請求項3の増肉プレス方法では、増肉成形片(21)の先端部の素材を内側に流動させて増肉するので、溝(32V)の底壁(32W)によって増肉成形片(21)と側方隣接壁(22)とが接続されていても、側方隣接壁(22)とは別に増肉成形片(21)のみを増肉することができる。
【0014】
[請求項4の発明]
請求項4の増肉プレス方法によれば、増肉成形片(21)の先端の両エッジが増肉成形金型(40)に備えた1対の傾斜押圧壁(43A,43B)に当接して押し潰され、増肉成形片(21)の素材がこれら傾斜押圧壁(43A,43B)に案内されてスムーズに流動する。
【0015】
[請求項5の発明]
請求項5の増肉プレス方法によれば、増肉成形片(21)が屈曲部(21K)側から徐々に増肉成形金型(40)の傾斜受部(41B)に押し付けられるように押し倒される。そして、増肉成形片(21)が傾斜受部(41B)に押し付けられた側と反対側に増肉されていく。
【0016】
[請求項6の発明]
請求項6の増肉プレス方法によれば、ブランク材(31)を円形にして、その円形の周方向に沿って前記増肉成形片(21)及び前記側方隣接壁(22)を交互に配置して複数形成することで、周面全体に複数の肉厚突部(24)を有する歯車又は歯車状の部品(20)を成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る増肉プレス方法を用いたクランクシャフトタイミングローター20(以下、単に「タイミングローター20」という)の製造方法について、図1〜図9を参照して説明する。図1において符号10は、エンジンであって、このエンジン10に備えたクランクシャフト11の一端部にタイミングローター20が取り付けられている。タイミングローター20は円板状をなし、周縁部に複数の肉厚突部24を備えている。図2に拡大して示すように、肉厚突部24は、タイミングローター20の周縁部から径方向の側方に突出すると共に板厚方向にも突出している。なお、肉厚突部24,24同士の間隔は、図1に示すように、タイミングローター20の周方向の1箇所で比較的広くなっており、それ以外の箇所では均一になっている。
【0018】
タイミングローター20の側方には、磁気センサー15がエンジン10に固定して設けられ、この磁気センサー15がタイミングローター20の周縁部近傍に磁界を発生させ、その磁気抵抗の変化に基づいて、図示しない検出回路がクランクシャフト11の回転位置を検出するようになっている。なお、クランクシャフト11にはタイミングローター20と共にスプロケット12が固定され、このスプロケット12と図示しない動力伝達軸との間がチェーン13で連結されている。
【0019】
タイミングローター20は、本発明に係る増肉プレス方法を用いた製造方法により、以下のようして製造される。この製造方法では、まず、本発明に係る「予備工程」を行う。即ち、図3に示すように、板金30から打ち抜かれた円板状のブランク材31を切断用の金型(図示せず)にセットする。そして、図4に示すように、ブランク材31の板状縁部31Aを複数箇所で径方向に沿って所定範囲で剪断し、肉厚突部24を対応した複数の増肉成形片21と、肉厚突部24,24間の壁部に対応した複数の側方隣接壁22とを形成する。
【0020】
次いで、図5に示すように、増肉成形片21の中間部を直角曲げして先端寄り部分をブランク材31の内側部分に対して曲げ起こす。これと同時に、側方隣接壁22のうち増肉成形片21の屈曲部21Kより先端側部分を切除する。
【0021】
次いで、図6に示すように、ブランク材31のうち増肉成形片21及び側方隣接壁22の基端部より内側部分を絞って薄皿部36を成形すると共に、側方隣接壁22を増肉成形片21の屈曲部21Kと同じ位置で直角曲げして、増肉成形片21と同じ方向に曲げ起こす。これにより、増肉成形片21と側方隣接壁22とが剪断面32を介して隣接した状態になる。以上により予備工程が完了する。
【0022】
次いで、このブランク材31を図7及び図8に示した増肉成形金型40にセットして、本発明に係る「増肉工程」を行う。図8に示すように、増肉成形金型40の固定型41には、ブランク材31の薄皿部36を嵌合可能な凹部41Dが形成され、その凹部41Dの外側には、凹部41Dの底面と平行な成形面を有した上段受部41Aが備えられている。また、その上段受部41Aより外側部分には、上段受部41Aの成形面に対して45度の傾斜角で傾斜した成形面を有する傾斜受部41Bが設けられている。なお、傾斜受部41Bの成形面には、滑り止め用の複数の係止突条41Cが波形状に形成されている。
【0023】
増肉成形金型40の可動型44は、押さえ型42と突片押圧型43とからなり、全体が固定型41に対して図8の上下方向に直動する。押さえ型42は、ブランク材31の各増肉成形片21に対応した部分に増肉成形溝を備え、それら各増肉成形溝の内部に突片押圧型43がそれぞれ収容されている。押さえ型42の下端部には、薄皿部36の内側に嵌合される嵌合突部42Aが備えられている。また、押さえ型42のうち増肉成形溝内には、嵌合突部42Aの側面の上端部から45度の傾斜角で外側に張り出し、傾斜受部41Bと平行な成形面を有する傾斜対向部42Bが形成されている。なお、この傾斜対向部42Bは、可動型44の可動方向において、上段受部41Aの内縁寄り位置に対向している。また、押さえ型42のうち側方隣接壁22に対応した部分には、各側方隣接壁22を傾斜受部41Bに押し付けかつ、増肉成形片21の側方への膨出を規制するための側部規制壁42Cが形成されている。
【0024】
突片押圧型43は、押さえ型42が上死点から下死点に至る途中位置までは押さえ型42と一体になって直動し、押さえ型42が下死点に到達してから、さらに固定型41に接近するように直動する。また、突片押圧型43には、その可動方向の前方に向かって増肉成形片21の板厚方向に開脚しかつ互いに直交した1対の傾斜押圧壁43A,43Bが形成されている。その一方の傾斜押圧壁43Aは、突片押圧型43の可動方向に対して内向きに45度傾斜して傾斜受部41Bの成形面に対して略平行になっており、他方の傾斜押圧壁43Bは、突片押圧型43の可動方向に対して外向きに45度傾斜し、傾斜受部41Bの成形面に対して直交している。これにより、増肉成形金型40を閉じたときには、傾斜押圧壁43A,43Bと傾斜受部41Bと側部規制壁42C,42Cとに囲まれた略直方体状の成形空間が増肉成形金型40内に形成される。
【0025】
この増肉成形金型40を用いて、増肉工程は以下のように行われる。即ち、増肉成形金型40にブランク材31をセットし、増肉成形金型40を閉じると、固定型41と押さえ型42との間にブランク材31の薄皿部36が挟持される。そして、押さえ型42の側部規制壁42Cが、各側方隣接壁22の先端に当接して側方隣接壁22を固定型41の傾斜受部41B側に押し倒す。このとき、各側部規制壁42Cが増肉成形片21の先端部に両側方から隣接し、各増肉成形片21が両側方への膨出を規制された状態になる。この状態で、突片押圧型43が増肉成形片21を先端部から基端部に向けて押圧する。すると、増肉成形片21が屈曲部21K側から固定型41の傾斜受部41B側に徐々に押し倒される。このとき、突片押圧型43に備えた傾斜押圧壁43A,43Bが増肉成形片21の先端部の両エッジに当接し、増肉成形片21の先端部の素材(肉)がこれら傾斜押圧壁43A,43Bに案内されて基端側に流動する。そして、増肉成形片21が傾斜受部41Bに押し付けられた側と反対側に増肉されていく(図7参照)。即ち、増肉成形片21における屈曲部の内側部分が隆起していく。
【0026】
さらに、突片押圧型43が降下すると、増肉成形片21が先端部から基端部に亘って板厚方向に増肉され、図9に示すように、ブランク材31の板状縁部31Aから部分的に板厚方向に突出した肉厚突部24が成形される。なお、各肉厚突部24は、傾斜押圧壁43A,43Bと傾斜受部41Bと側部規制壁42C,42Cとに囲まれた略直方体状に成形される。そして、図2に示すように、肉厚突部24の側面24Aと側方隣接壁22との間が段差状になる。また、増肉成形片21の基端部は、板厚方向への膨出のみならず両側方にも膨出し、その膨出により、肉厚突部24の側面24Aに側方隣接壁22が押し付けられる。これにより、肉厚突部24と側方隣接壁22との間に明確な境界線R1が形成される。
【0027】
このように本実施形態の増肉プレス方法によれば、ブランク材31の板状縁部31Aから両側部を切り離された増肉成形片21を設けておき、その増肉成形片21自体の素材で増肉成形片21を増肉して肉厚突部24を成形するので、肉厚突部24がその周囲の壁部から独立して増肉され、境界線R1が明確になると共に、素材の流動性が向上し、肉厚突部24の形状が安定する。しかも、増肉成形片21の先端の両エッジが増肉成形金型40に備えた1対の傾斜押圧壁43A,43Bに当接して押し潰されることで、増肉成形片21の素材がこれら傾斜押圧壁43A,43Bに案内されてスムーズに流動するので、この点においても肉厚突部24の形状が安定する。
【0028】
[第2実施形態]
本実施形態は、図10〜図12に示されており、前記第1実施形態の剪断面32の代わりに溝32Vによって増肉成形片21と側方隣接壁22とを部分的に切り離している点が相違する。以下、第1実施形態と相違する点のみを説明する。
【0029】
本実施形態では、予備工程において、図10に示すようにブランク材31の板状縁部31Aに、径方向に延びた複数の溝32Vを形成する。なお、これら溝32Vは、例えば、板金30からブランク材31を打ち抜く際のプレス機によって成形する。
【0030】
次いで、図11に示すように、打ち抜き用のプレス機から別のプレス機にブランク材31を移動し、各側方隣接壁22の先端部を切除すると共に、溝32V群を横切る折り曲げ線32Sで、溝32Vの開口を内側にして、増肉成形片21と側方隣接壁22とを曲げ起こす。
【0031】
次いで、このブランク材31を前記第1実施形態で説明した増肉成形金型40にセットして、本発明に係る「増肉工程」を行う。ここで、図12(A)には、増肉成形金型40にセットされたブランク材31を、図11におけるA−A切断面で切断して径方向から見た状態が示されている。その図12(A)に示すように、本実施形態では、増肉成形片21の側面21Aと増肉成形金型40における側部規制壁42Cとの間にクリアランスCが設けられている。
【0032】
さて、突片押圧型43が降下して増肉成形片21を先端部から基端部に向けて押圧すると、第1実施形態で説明したように、増肉成形片21の先端側の素材(肉)が突片押圧型43の傾斜押圧壁43A,43B(図7参照)に案内されて増肉成形片21における屈曲部分の内側へ流動し、図12(B)に示すように増肉成形片21の内側部分が側方隣接壁22より隆起していく。
【0033】
このとき、増肉成形片21は、板厚方向への膨出のみならず両側方にも膨出して溝32V内の対向面が密着してその溝32Vが塞がれる。また、増肉成形片21は、溝32Vの底壁32Wと反対に増肉されていくので、その底壁32Wによって増肉成形片21と側方隣接壁22とが接続されていても、側方隣接壁22とは別に増肉成形片21のみを増肉することができる。そして、第1実施形態と同様に、増肉成形片21から肉厚突部24が成形された状態で、肉厚突部24の側面24Aと側方隣接壁22とが段差状になりかつ、その側面24Aに側方隣接壁22が密着して、肉厚突部24と側方隣接壁22との間に明確な境界線R1が形成される。
【0034】
なお、本実施形態のように溝32Vにて増肉成形片21と側方隣接壁22とを部分的に切り離せば、切断面により増肉成形片21と側方隣接壁22とを完全に切り離す場合に比べて、加工が容易になる。
【0035】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0036】
(1)前記第1実施形態では、板状縁部31Aを剪断により切断していたが、板状縁部31Aにスリットを形成して切断してもよい。
【0037】
(2)前記第1及び第2の実施形態では、タイミングローター20の製造方法に本発明に係る増肉プレス方法を利用した場合を例示したが、スプロケットや歯車の製造方法に本発明に係る増肉プレス方法を利用してもよい。
【0038】
(3)前記第2実施形態では、増肉成形片21の側面21Aと側部規制壁42Cとの間にクリアランスCを設けて、増肉成形片21の先端部も側方隣接壁22側に膨出可能にしていたが、図13(A)に示すように、前記クリアランスCを設けずに増肉成形片21の側面21Aと側部規制壁42Cとを隣接させてもよい。この場合、増肉成形片21を加圧して増肉したときに、図13(B)に示すように、増肉成形片21の基端部のみが側方隣接壁22側に膨出して、溝32Vを塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態のタイミングローターの側面図
【図2】タイミングローターの部分拡大斜視図
【図3】ブランク材の斜視図
【図4】予備工程におけるブランク材の部分拡大斜視図
【図5】予備工程におけるブランク材の部分拡大斜視図
【図6】予備工程完了時のブランク材の部分拡大斜視図
【図7】増肉工程の途中段階における増肉成形金型の断面図
【図8】増肉工程の終了段階における増肉成形金型の断面図
【図9】増肉工程が完了し完成したタイミングローターの部分拡大斜視図時のブランク材の部分拡大斜視図
【図10】第2実施形態のブランク材の部分拡大斜視図
【図11】予備工程完了時のブランク材の部分拡大斜視図
【図12】増肉成形金型の断面図
【図13】変形例の増肉成形金型の断面図
【符号の説明】
【0040】
20 クランクシャフトタイミングローター
21 増肉成形片
21K 屈曲部
22 側方隣接壁
24 肉厚突部
31 ブランク材
31A 板状縁部
32 剪断面(切断面)
32V 溝
32S 折り曲げ線
40 増肉成形金型
41B 傾斜受部
42C 側部規制壁
43A,43B 傾斜押圧壁
R1 境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク材(31)の板状縁部(31A)から部分的に板厚方向に突出した肉厚突部(24)を成形する増肉プレス方法において、
前記板状縁部(31A)の先端部から内側に向かって延びた複数の切断面(32)又は溝(32V)を形成して、それら切断面(32)同士又は溝(32V)同士の間に挟まれた短冊状の増肉成形片(21)を設けると共に、前記増肉成形片(21)の両側に前記切断面(32)又は前記溝(32V)を介して隣接しかつ前記増肉成形片(21)に比べて基端部から先端部までの長さが短い側方隣接壁(22)を設ける予備工程と、
増肉成形金型(40)により前記増肉成形片(21)を先端部から基端部に向けて押圧して板厚方向に増肉させると共に、前記増肉成形片(21)の基端部を両側方に膨出させて前記側方隣接壁(22)に押し付ける増肉工程とを行うことを特徴とする増肉プレス方法。
【請求項2】
前記予備工程では、前記板状縁部(31A)を剪断により切断することを特徴とする請求項1に記載の増肉プレス方法。
【請求項3】
前記予備工程では、前記増肉成形片(21)と前記側方隣接壁(22)との間に溝(32V)を形成すると共に、前記溝(32V)を横切る折り曲げ線(32S)で前記溝(32V)の開口を内側にして、前記増肉成形片(21)と前記側方隣接壁(22)とを曲げ起こし、
前記増肉工程では、前記増肉成形片(21)の先端部の素材を内側に流動させて増肉させることを特徴とする請求項1に記載の増肉プレス方法。
【請求項4】
前記増肉成形金型(40)のうち前記増肉成形片(21)の先端部を押圧する部分に、その押圧方向の前方に向かって前記増肉成形片(21)の板厚方向に開脚しかつ互いに直交した1対の傾斜押圧壁(43A,43B)を形成しておき、
前記増肉工程では、前記1対の傾斜押圧壁(43A,43B)に前記増肉成形片(21)の先端の両エッジをそれぞれ当接させることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の増肉プレス方法。
【請求項5】
前記増肉成形金型(40)に、前記増肉成形片(21)の屈曲部(21K)に対して外側から宛がわれかつ前記押圧方向に対して傾斜した傾斜受部(41B)を設けておき、前記増肉工程では、前記増肉成形片(21)を押圧して前記傾斜受部(41B)に押し付けることを特徴とする請求項4に記載の増肉プレス方法。
【請求項6】
前記ブランク材(31)を円形にして、その円形の周方向に沿って前記増肉成形片(21)及び前記側方隣接壁(22)を交互に配置して複数形成することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の増肉プレス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−229700(P2008−229700A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76053(P2007−76053)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】