説明

壁の上部構造

【課題】 本発明は、胴縁を外壁材の外部に配設する構成において、胴縁が熱伸縮した場合であっても、胴縁を安定して保持することが出来る壁の上部構造を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 長手方向にガイド部12が形成される胴縁10と、該ガイド部12を長手方向に摺動可能に把持する把持部21が形成される保持部材20と、該保持部材20を外壁材60の壁面60aに対して固定するプレート30、開脚釘40、ブラケット50からなる固定手段とを有する胴縁固定具1によって、胴縁10のガイド部12が把持部21に沿って摺動可能となるように、胴縁10が外壁材60の壁面60aに対して固定され、胴縁10に壁の上部に設けられる捨て板4が固定され、該捨て板4の外側に配置される外装材9が胴縁10に固定され、壁の天部に設けられる笠木材7と、捨て板4とがシーリング部材8を介して接続された構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁の上部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート等の外壁材と、当該外壁材に埋め込まれるアンカーボルト等の金属製の固定部材は、それらの線膨張率がほぼ同じであったため、特に熱伸縮による対策はとられていなかった。
【0003】
しかし、最近では、金属製の胴縁を、胴縁を固定する固定手段によりコンクリート等の外壁材の外部に固定する構成がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、外壁板に固定された胴縁に外装パネルの上端を覆う張出見切り部材が取り付けられ、外壁板の天部に設けられた笠木から落ちる水滴を受けて外装パネルの外側へ排水するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−251031
【特許文献2】特開2000−054649
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1のように、胴縁が外壁材の外に配設されることとなると、胴縁は外壁材よりも熱容量が小さいため、熱の影響を受けやすくなる。また、特許文献2の技術では笠木が孤立しているため外壁板と外装パネルとの間に雨水が浸入しないように張出見切り部材を別途必要としていた。
【0007】
熱伸縮の影響が現れやすい比較的大規模な建築物であっても固定方法について必ずしも外側の構造と内側の構造の熱伸縮の差が考慮されているわけではなかったことが、近年の台風により外側の構造が脱落した際に、固定手段及びその周辺が胴縁の熱伸縮により損傷していたことが発覚したことから分かった。このため、このままでは、胴縁が熱伸縮すると、外壁材がコンクリートのような硬質の材料の場合は胴縁の固定手段自体が損傷したり、外壁材がALC(軽量気泡コンクリート)のような軟質の材料の場合は胴縁の固定手段が外壁材を傷めるおそれがある。
【0008】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、胴縁を外壁材の外部に配設する構成において、胴縁が熱伸縮した場合であっても、胴縁を安定して保持することが出来る壁の上部構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明に係る壁の上部構造の第1の構成は、長手方向にガイド部が形成される胴縁と、前記ガイド部を長手方向に摺動可能に把持する把持部が形成される保持部材と、前記保持部材を壁面に対して固定する固定手段とを有する胴縁固定具によって、前記胴縁の前記ガイド部が前記把持部に沿って摺動可能となるように、前記胴縁が壁面に対して固定され、前記胴縁に前記壁の上部に設けられる捨て板が固定され、前記捨て板の外側に配置される外装材が前記胴縁に固定され、前記壁の天部に設けられる笠木材と、前記捨て板とがシーリング部材を介して接続されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る壁の上部構造の第2の構成は、長手方向にガイド部が形成される胴縁と、前記ガイド部を長手方向に摺動可能に把持する把持部が形成される保持部材と、前記保持部材を壁面に対して固定する固定手段とを有する胴縁固定具によって、前記胴縁の前記ガイド部が前記把持部に沿って摺動可能となるように、前記胴縁が壁面に対して固定され、前記胴縁に前記壁の上部に設けられる捨て板が固定され、前記捨て板の外側に配置される外装材が前記胴縁に固定され、前記捨て板と前記外装材の頂部が止水部材を介して接続され、前記壁の天部に設けられる笠木材と、前記捨て板とがシーリング部材を介して接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る壁の上部構造によれば、胴縁を外壁材の外部に配設する壁の上部構造であって胴縁が熱伸縮した場合であっても、胴縁を安定して保持することが出来、胴縁に固定され、壁の上部に設けられる捨て板及び該捨て板の外側に配置され、胴縁に固定された外装材を安定して支持することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図により本発明に係る壁の上部構造の一実施形態を具体的に説明する。先ず、図1〜図3を用いて本発明に係る壁の上部構造の第1実施形態の構成について説明する。図1は本発明に係る壁の上部構造の第1実施形態の構成を示す分解斜視図、図2は本発明に係る壁の上部構造の第1実施形態の構成を示す断面説明図、図3は第1実施形態において、開脚釘によりブラケットを壁面に固定する様子を示す断面説明図である。
【0013】
図1及び図2において、2は壁の上部構造であって、長手方向にガイド部12が形成される胴縁10と、該胴縁10のガイド部12を長手方向に摺動可能に把持する把持部21が形成される保持部材20と、該保持部材20を外壁材60の壁面60aに対して固定する固定手段(プレート30、開脚釘40、ブラケット50)とを有する胴縁固定具1によって、胴縁10のガイド部12が把持部21に沿って摺動可能となるように胴縁10が外壁材60の壁面60aに対して固定される。
【0014】
胴縁10は、長手方向に、胴部11から外側方向に突出したレール状のガイド部12を有する。本実施形態は横胴縁であるため、胴部11は横方向に長く構成され、胴縁10の側面に配設されるガイド部12は胴部11から上下方向に突出することになる。
【0015】
保持部材20は、胴縁10のガイド部12を上下両側面から把持するため、保持部材20の表面方向に突出する把持部21を有する。把持部21は、胴縁10のガイド部12を把持するが、ガイド部12と若干の間隙を有するように把持する。このため、胴縁10のガイド部12は、把持部21によって摺動可能に把持される。保持部材20は、ビスSが貫通するビス穴22が形成される。また、保持部材20の中央部には、開口部23が設けられる。
【0016】
図2に示すように、プレート30は保持部材20の裏面に当接し、ビスSによって保持部材20を固定する。プレート30の中央には、後述するブラケット50の胴縁側固定軸51の外周面に形成されたネジ部51aが螺合するためのネジ穴31が形成される。
【0017】
ブラケット50は、胴縁10側に突出する胴縁側固定軸51と、これと反対方向の外壁材60側に突出する外壁側固定軸52と、該胴縁側固定軸51と外壁側固定軸52との間に配設され、各軸51,52よりも径の大きい鍔部53とを有する。胴縁側固定軸51は、プレート30のネジ穴31と螺合するネジ部51aが形成される。また、胴縁側固定軸51及び外壁側固定軸52の内部にはブラケット50の軸方向に貫通する貫通孔51bが形成される。
【0018】
外壁材60は、ブラケット50の外壁側固定軸52を取り付けるための、溝61が形成されている。本実施形態の外壁材60はALC(軽量気泡コンクリート)パネルで構成された一例であるが、外壁材60の材質は特に限定するものではない。
【0019】
外壁材60に胴縁10を固定する場合、図3(a)に示すように、先ず、外壁材60の溝61に対して、モルタルや接着剤等の充填材3を充填し、該溝61にブラケット50の外壁側固定軸52を挿し込む。この状態で、開脚釘40をブラケット50の貫通孔51bを通して外壁材60に対して打ち込む。
【0020】
開脚釘40をブラケット50の貫通孔51bを通して外壁材60に対して打ち込む場合、先ず、図3(a)に示すように、ブラケット50の貫通孔51bに開脚釘40の第1の釘体41を挿通し、該第1の釘体41を外壁材60に打設する(図3(b)参照)。
【0021】
釘体41の先端部に設けられた開脚制御部41aの外径は第2の釘体42の外径と略同じかそれよりも大きな外径を有して構成されており、釘体41と一体的に外壁材60内に打設される開脚制御部41aにより釘体42の進路前方が予め開孔される。
【0022】
そして、図3(b)に示すように、ブラケット50の鍔部53が外壁材60に当接した状態で該第1の釘体41の頭部41bをブラケット50の貫通孔周縁部51cに係止する。第1の釘体41が外壁材60内に完全に打設され、頭部41bの下面がブラケット50の貫通孔周縁部51cに係止された段階で、ブラケット50の貫通孔51bに、第1の釘体41に沿って第2の釘体42を挿通し、該第2の釘体42の頭部42bを打ち込む。釘体42は釘体41により形成された開孔に沿って外壁材60内に打設される(図3(c)参照)。
【0023】
開脚制御部41aの釘体42側には該釘体42の先端部42aの進行方向を変更して先端を開脚させるためのガイド面41a1が設けられており、第2の釘体42の頭部42bを打ち込んで第1の釘体41の先端部に設けられた開脚制御部41aのガイド面41a1に沿って釘体42の先端部42aが案内されることにより該釘体42の先端部42aの進行方向を変更して該釘体42の先端を開脚させる(図2参照)。
【0024】
そして、第2の釘体42の頭部42bをブラケット50の貫通孔周縁部51cに係止してブラケット50を外壁材60に固定する。
【0025】
開脚釘40を用いてブラケット50を固定することにより、開脚釘40を含む固定手段が、容易に壁面60aに対して取り付けられる。一方、開脚釘40は固定手段の抜けを防止するため、固定手段に固定される保持部材20をも確実に壁面60aに対して固定される。よって、保持部材20により保持される胴縁10の抜けを防止し、確実に壁面60aに固定することが出来る。また、胴縁10は保持部材20の把持部21にて摺動可能に構成されているため、胴縁10が熱伸縮した場合であっても、胴縁10のガイド部12が保持部材20の把持部21内で摺動することにより、胴縁10を安定して保持することが出来る。
【0026】
次に、ブラケット50のネジ部51aに対して、プレート30のネジ穴31を螺合させ、プレート30を外壁材60の方向にねじ込む。
【0027】
一方、胴縁10は、予め保持部材20に対して組み立てて一体的にする。この組み立てに際しては、胴縁10の2つのガイド部12を、保持部材20の2つの把持部21の内部に摺動させる。これにより、胴縁10が保持部材20に把持され、一体的になる。
【0028】
次に、プレート30上に保持部材20のビス穴22がくるように、保持部材20を配置し、この状態で保持部材20のビス穴22に対してビスSを打ち込むことにより胴縁10がプレート30に対して固定される。
【0029】
以上のような手順をとることにより、胴縁10と、保持部材20と、固定手段(プレート30、開脚釘40、ブラケット50)とを有する胴縁固定具1によって、胴縁10のガイド部12が保持部材20の把持部21に沿って摺動可能となるように、胴縁10が外壁材60の壁面60aに対して固定される。
【0030】
上記のように保持部材20により長手方向に摺動可能に固定された胴縁10には壁の上部に設けられる断面J字形状の捨て板4の起立片4aがビスSにより固定され、壁の天部となる外壁材60の上部の小口面60bには笠木材係止部材5が釘6により固定されている。
【0031】
笠木材係止部材5には断面コ字形状の笠木材7が取り付けられており、該笠木材7の外装材9側の垂下片7aの内面と、捨て板4の垂下片4bの外面との間にシーリング部材8が設けられている。これにより、笠木材7と捨て板4とがシーリング部材8を介して接続されている。また、笠木材7の外壁材60側の垂下片7bの内面と、外壁材60の内側表面との間にもシーリング部材8が設けられている。
【0032】
次に捨て板4の外側に外装材9が配置され、ビスSにより胴縁10に固定される。捨て板4の水平片4cと外装材9の頂部との間には止水部材となる止水パッキン13が嵌入されており、これにより捨て板4と外装材9の頂部とが止水部材となる止水パッキン13を介して接続されている。
【0033】
上記の壁の上部構造2によれば、胴縁10を外壁材60の外部に配設する壁の上部構造2であって該胴縁10が熱伸縮した場合であっても、該胴縁10を安定して保持することが出来、胴縁10に固定され、外壁材60の壁面60aの上部に設けられる捨て板4及び該捨て板4の外側に配置され、胴縁10に固定された外装材9を安定して支持することが出来る。
【0034】
次に、図4を用いて本発明に係る壁の上部構造の第2実施形態の構成について説明する。図4(a)は本発明に係る壁の上部構造の第2実施形態の構成を示す分解斜視図、図4(b)は本発明に係る壁の上部構造の第2実施形態の構成の要部を示す断面説明図である。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態の胴縁固定具1も前記第1実施形態と同様に胴縁10と、該胴縁10を保持する保持部材20と、保持部材20を固定する固定手段(プレート30、開脚釘40、ブラケット50)とを有して構成され、これらにより、外壁材60に断熱材70を取り付け、且つ外壁材60に胴縁10を固定したものである。
【0036】
断熱材70は、ブラケット50の鍔部53とプレート30との間に挟持して配設され、該断熱材70には、ブラケット50の胴縁側固定軸51が貫通する貫通穴71が形成される。
【0037】
外壁材60の壁面60aには溝61に連続してブラケット50の鍔部53の大きさに対応する座彫部62が形成されており、該座彫部62にブラケット50の鍔部53を嵌入することで、外壁材60の壁面60aと断熱材70の表面とが段差なく当接することが出来る。
【0038】
そして、前記第1実施形態と同様にして開脚釘40によりブラケット50を外壁材60の壁面60aに固定した後、断熱材70に形成される貫通穴71を、ブラケット50の胴縁側固定軸51が突出するように、該断熱材70をブラケット50に対して嵌め込む。これにより、図4(b)に示すように、断熱材70の貫通穴71からブラケット50のネジ部51aが突出した状態になる。
【0039】
次に、ブラケット50のネジ部51aに対して、プレート30のネジ穴31を螺合させ、該プレート30を断熱材70の方向にねじ込む。すると、プレート30がブラケット50のネジ部51aに螺合され、プレート30は、断熱材70をブラケット50の鍔部53との間で挟みこんで固定される。他の構成は前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の活用例として、胴縁を外壁材の外部に配設する壁の上部構造に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る壁の上部構造の第1実施形態の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る壁の上部構造の第1実施形態の構成を示す断面説明図である。
【図3】第1実施形態において、開脚釘によりブラケットを壁面に固定する様子を示す断面説明図である。
【図4】(a)は本発明に係る壁の上部構造の第2実施形態の構成を示す分解斜視図、(b)は本発明に係る壁の上部構造の第2実施形態の構成の要部を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0042】
S…ビス
1…胴縁固定具
2…壁の上部構造
3…充填材
4…捨て板
4a…起立片
4b…垂下片
4c…水平片
5…笠木材係止部材
6…釘
7…笠木材
7a,7b…垂下片
8…シーリング部材
9…外装材
10…胴縁
11…胴部
12…ガイド部
13…止水パッキン
20…保持部材
21…把持部
22…ビス穴
23…開口部
30…プレート
31…ネジ穴
40…開脚釘
41,42…釘体
41a…開脚制御部
41a1…ガイド面
41b…頭部
42a…先端部
42b…頭部
50…ブラケット
51…胴縁側固定軸
51a…ネジ部
51b…貫通孔
51c…貫通孔周縁部
52…外壁側固定軸
53…鍔部
60…外壁材
60a…壁面
60b…小口面
61…溝
62…座彫部
70…断熱材
71…貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の上部構造であって、
長手方向にガイド部が形成される胴縁と、前記ガイド部を長手方向に摺動可能に把持する把持部が形成される保持部材と、前記保持部材を壁面に対して固定する固定手段とを有する胴縁固定具によって、
前記胴縁の前記ガイド部が前記把持部に沿って摺動可能となるように、前記胴縁が壁面に対して固定され、
前記胴縁に前記壁の上部に設けられる捨て板が固定され、
前記捨て板の外側に配置される外装材が前記胴縁に固定され、
前記壁の天部に設けられる笠木材と、前記捨て板とがシーリング部材を介して接続されたことを特徴とする壁の上部構造。
【請求項2】
壁の上部構造であって、
長手方向にガイド部が形成される胴縁と、前記ガイド部を長手方向に摺動可能に把持する把持部が形成される保持部材と、前記保持部材を壁面に対して固定する固定手段とを有する胴縁固定具によって、
前記胴縁の前記ガイド部が前記把持部に沿って摺動可能となるように、前記胴縁が壁面に対して固定され、
前記胴縁に前記壁の上部に設けられる捨て板が固定され、
前記捨て板の外側に配置される外装材が前記胴縁に固定され、
前記捨て板と前記外装材の頂部とが止水部材を介して接続され、
前記壁の天部に設けられる笠木材と、前記捨て板とがシーリング部材を介して接続されたことを特徴とする壁の上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−156904(P2008−156904A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346892(P2006−346892)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】