説明

壁パネル及びこの壁パネルを有する浴室ユニット

【課題】 本発明は、意匠性向上に有効な目地を形成し、耐薬品性及び清掃性の良い壁パネル、浴室ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】 基材と、この基材上に下層から順に印刷柄層、第1のクリア層、第2のクリア層を積層させた壁パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の壁面を形成する壁パネル及びこの壁パネルを有する浴室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室ユニットは、在来工法と比較して日数のかかる浴室の工事を短期間に行えるようにユニット化した部材を組み立てて完成される浴室であり、今日広く用いられている。浴室ユニットを形成する具体的な部材としては、床となる防水パン、壁面を形成する壁パネル、天井パネル、浴槽等が用いられ、それ以外に、鏡、カウンター、棚、シャワー等を適宜設置している。
【0003】
浴室ユニットを形成する部材である壁パネルは、単なる壁として用いられるだけのものではなく、浴室外へと水が漏れることを阻止する必要があり、更には、耐洗剤性、耐薬品性等の機能面において優れている必要がある。
また、浴室ユニットは、心身共にリラックスできる空間が好まれているため、壁パネルの意匠性も重要視される。具体的には、大理石柄や木目等の天然素材をモチーフにした模様、タイルや石張り等の目地で仕切った造形、高平滑・高光沢な表面で清潔感を表現したものがある。
機能性・意匠性共に優れた壁パネルの例としては、壁パネルの意匠面をインクジェット印刷によって形成し、この印刷層の上に表面平滑性、光沢及び、深み感を演出するため透明なクリア層が施されたものがある。
【特許文献1】特開2007−196435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のインクジェット印刷による印刷層の上にクリア層を積層させる方法は、深み、平滑性があるものの、目地等による段差を施した意匠表現に至っていない。
目地模様の形成方法は、目地部分に対応して縦方向および横方向にマスキングテープを貼り、その上から塗装ガン等によって塗料を吹き付け、塗料乾燥後にマスキングテープを剥がす方法が知られている。
但し、この方法は、目地溝底部に印刷柄が露出するため、耐溶剤性、耐薬品性等に優れていない。また、マスキングテープによる目地段差凹形状は、角が鋭角となり、溝段差底部の汚れ付着や清掃性の低下が懸念される。
更に、目地溝段差底部に保護塗膜を塗布するのは、目地幅が狭く、深さが浅い場合、塗布液量に対し目地段差部の容積が小さくなるため塗料のあふれやはみ出しが起こりやすい。したがって、手作業(刷毛、スプレー、ディスペンサー)での塗布が困難である。保護塗膜の塗布は、機械制御の塗布設備にすることも可能ではあるが、初期投資が大きく、製品コストを大幅に押し上げてしまう。
【0005】
本発明は、意匠性向上に有効な目地を形成し、耐薬品性及び清掃性の良い壁パネル、浴室ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のものに関する。
(1)基材と、この基材上に下層から順に印刷柄層、第1のクリア層、第2のクリア層を積層させた壁パネル。
(2)項(1)において、第1のクリア層と、第2のクリア層とが、同一樹脂、又は別の樹脂により形成される壁パネル。
(3)項1又は(2)において、第1のクリア層と第2のクリア層の厚みが、同一又は異なる壁パネル。
(4)項(1)乃至(3)の何れかにおいて、第1のクリア層が、平面視にて複数の領域に区分され、第2のクリア層が、複数の領域に区分された第1のクリア層の全てを覆う壁パネル。
(5)項(1)乃至(4)の何れかにおいて、第2のクリア層が、第1のクリア層の硬化又は半硬化後に積層される壁パネル。
(6)項(1)乃至(5)の何れかにおいて、第1のクリア層及び第2のクリア層に機能性、又は意匠性を付与した壁パネル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、意匠性向上に有効な目地を形成できると共に、耐薬品性及び清掃性の良いものを提供することができる。
また、第1のクリア層と第2のクリア層との間に界面が形成されるので、外的な衝撃により表面にクラックが発生しても、この界面によりクラックの拡大が抑えられ、印刷柄層に到達することがなく、更には補修も容易となる。
第1のクリア層と第2のクリア層とが、同一の樹脂である場合は、第1のクリア層と第2のクリア層の密着性が良くなる。したがって界面の剥がれが起こりにくい。
第1のクリア層と第2のクリア層とが、異なる樹脂である場合は、たとえば第1のクリア層に基材との密着性の良い塗料、第2のクリア層に機能性塗料(撥水・撥油、ハードコートなど)を用いることで機能性塗膜を形成することが出来る。
第1のクリア層と第2のクリア層とが、同一厚みである場合は、第1、第2のクリア層塗布時における塗布液量調整の手間が省ける。
第1のクリア層と第2のクリア層とが、異なる厚みである場合は、より厚いクリア層に低コストの塗料を使用することでトータルの塗料コストを低減化できる。
第1のクリア層が、平面視にて複数の領域に区分され、第2のクリア層が、複数の領域に区分された第1のクリア層の全てを覆う場合は、第1のクリア層間にある印刷柄層を第2のクリア層にて覆うことで、印刷柄層を保護することができる。また、第2のクリア層が目地段差凹形状を流動して硬化するため角が滑らかになる。したがって角が滑らかな分清掃性の向上が期待できる。
第2のクリア層が、第1のクリア層の硬化又は半硬化後に積層される場合は、第1のクリア層の流動による目地段差の消失を防ぐ。
第1のクリア層及び第2のクリア層に機能性、又は意匠性を付与した場合は、例えば第2のクリア層に撥水、撥油性を付与することで目地段差部の清掃性が優れたものが出来る。また、第2のクリア層にハードコート性を付与し耐久性を向上できたり、第1のクリア層に光輝材を配合し、意匠性を付与できたりする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にて述べる基材は、壁パネルとしての剛性を有するものであり、材質を制限するものではない。
具体的には、鋼板等の金属板、ウレタンなどのプラスチック板、セメントなどの無機板、ガラスなどを使用した繊維強化プラスチック(FRP)板、木板等を使用することができる。
但し、壁パネルを水場にて使用する場合は、金属板に防錆のめっき処理を施すか、防錆性能を有するものを使用することが好ましい。
また、基材は、単板である必要はなく、複数枚の基板を積層することで形成してもよく、積層の際に異種材質のものを組み合わせても、同種材質のものを組み合わせても良い。最も好ましいのは印刷柄のインクとの吸着性に対して愛称の良いインク受理層付樹脂シート被覆鋼板が良い。
【0009】
本発明にて述べる印刷柄層は、印刷方法においてはインクジェット印刷、スクリーン印刷など特に制限はしない。また、インクに関しても特に制限されるものではなく、溶剤系、水系、UV系等を用いることができ、基材のインク受理層と第1クリア層との密着を良好とする溶剤系インクを使用することが好ましい。インク色は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの他、ホワイト、グレー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、透光色等適宜選定することができる。
印刷する柄、色、解像度は特に制限することはなく、自由な柄、色を印刷することができる。
【0010】
本発明にて述べる第1および第2のクリア層は、硬化後に透光性(無色透明、着色透明、半透明を含み、印刷柄層を見ることができるという意味)を有するものであれば特に制限されるものではなく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。樹脂の硬化方法に関しては常温硬化、熱効果、UV硬化など特に制限されるものではない。
第1および第2のクリア層の塗布方法は、刷毛塗り、静電塗装、スプレー塗装、ロールコーター、フローコーター、インクジェット、スクリーン塗装等で行うことができ、特に制限するものではない。
【0011】
塗布する膜厚は、第1および第2クリア層ともに25μm〜100μmが好ましい。25μm以下では光沢感や透明感が損なわれる。また、極端に厚くすると意匠性より、製造コストが大きく影響されてくるので100μm以上は好ましくない。
目地幅に関しては特に制限されるものではないが目地であることを認識できる幅1.5mm〜10mm程度が好ましい。目地段差は25μm〜100μmが好ましい。25μm以下では浅くなりすぎて目地と認識できにくく、意匠性の向上に繋がらない。100μm以上では段差部に汚れが溜まりやすくなるため清掃性が悪くなる。
【0012】
第1のクリア層を区分する方法に関しては、特に限定しないがマスキングテープ、インクジェット塗布、スクリーン印刷などを使うことも可能である。マスキングテープに関してはフィルム、紙等の片面接着剤が好ましく、厚みは貼りやすさ、剥がしやすさの作業性を考慮して0.1mm〜1mmの範囲が好ましい。幅に関してはマスキングテープの幅が目地幅となるので目地であることを認識できる幅1.5mm〜10mmが好ましい。
【0013】
第1、第2クリア層の機能性付与に関しては撥水性、撥油性、ハードコート性、親水性等があり、撥水性、撥油性においては薄膜のシリコーン加水分解重縮合反応硬化タイプの2液タイプ樹脂などが挙げられる。ハードコート性においては1液UV硬化型、ナノシリカ−シラン−アクリレート共重合一体化の樹脂などが挙げられる。親水性においては2液水性ナノシリカ−シラン−ウレタン複合架橋型ハイブリット樹脂などが挙げられる。いずれの機能性樹脂も特に制限することなく便宜選定すれば良い。
【0014】
第1、第2クリア層の意匠性付与に関しては樹脂に光輝材を配合してパール調にするものなどが挙げられる。光輝材の種類、材質に関しては、二酸化チタンコート・ガラスフレーク、パール顔料、アルミ蒸着粉、フィルム蒸着カッティング粉などが挙げられる。これらに関しても必要に応じて便宜選定すればよい。
【実施例】
【0015】
本発明の1実施例について、以下図面を用いて説明する。
基材1として縦2000mm、横1000mm、厚さ0.5mmの溶融亜鉛メッキ鋼鈑に、ポリエステル系白色フィルム60μmと前記ポリエステル系フィルムより耐溶剤性を落とした無色透明の変性PETフィルム20μmの受理層を積層した。
その基材1上にシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色から成る溶剤インクを使用したインクジェットプリンターで大理石調の印刷柄層2を施した。(図1)
インクが乾燥した後、目地段差部を付けたい箇所に幅1.8mm、厚さ0.2mmの紙製片面粘着製のマスキングテープ3を貼り付けた。(図2)
その後、無色透明なアクリルウレタン塗料に二酸化チタンコート・ガラスフレーク(粒径20μ)の光輝材を0.1%配合させた塗料をスプレー塗装で塗布を行い、第1のクリア層4を形成した。(図3)
塗布後、室温で20分間塗料中溶剤を揮発し、その後80℃で30分間強制加熱し、塗料を半硬化させ、マスキングテープ3を剥がした。(図4)
その後、撥水、撥油性能塗料であるシリコーン加水分解重縮合反応硬化樹脂をスプレー塗装で塗布し第2のクリア層5を形成した。(図5)
塗布後、室温で20分間塗料中溶剤を揮発し、90℃で60分間加熱し、第1のクリア層、第2のクリア層ともに完全硬化させた。
完成した第1のクリア層、第2のクリア層ともに25〜30μmの厚さであり、形成された目地は幅1.8mm、段差は25〜30μmであり、段差の角は丸みを帯びた形状であった。
以上により、耐薬品性や清掃性に良く印刷柄層までクラック、キズが到達しにくく表面層の修復が容易で且つ、撥水、撥油性の機能性を付与した壁パネルを作成することが出来た。また光輝材や目地段差を施したことにより大理石を貼りあわせたような意匠を演出することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例である、基材にインクジェットによる印刷柄層を施した断面図を示す。
【図2】図1にマスキングテープを施した断面図を示す。
【図3】図2に第1のクリア層を形成した断面図を示す。
【図4】図3からマスキングテープを取り除いた断面図を示す。
【図5】図4に第2のクリア層を形成した断面図を示す。
【符号の説明】
【0017】
1…基材、2…印刷柄層、3…マスキングテープ、4…第1のクリア層、5…第2のクリア層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、この基材上に下層から順に印刷柄層、第1のクリア層、第2のクリア層を積層させた壁パネル。
【請求項2】
請求項1において、第1のクリア層と、第2のクリア層とが、同一樹脂、又は別の樹脂により形成される壁パネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、第1のクリア層と第2のクリア層の厚みが、同一又は異なる壁パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、第1のクリア層が、平面視にて複数の領域に区分され、第2のクリア層が、複数の領域に区分された第1のクリア層の全てを覆う壁パネル。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、第2のクリア層が、第1のクリア層の硬化又は半硬化後に積層される壁パネル。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、第1のクリア層及び第2のクリア層に機能性、又は意匠性を付与した壁パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−155816(P2009−155816A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332070(P2007−332070)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(301050924)株式会社ハウステック (234)
【Fターム(参考)】