説明

壁体の構築方法

【課題】 本発明は、不陸部を含む施工面に磁石を介して磁着パネルを取り付けていくことにより壁体を構築するに当たって、該磁着パネルを施工面に確実に取り付け、且つ外見上、不陸部に対応する形状が壁体の表面に現れないような壁体の構築方法を提供する。
【解決手段】 長尺状の化粧板と、前記化粧板の裏面から突出して設けられた一対の帯状シート磁石3,3であって前記化粧板の長手方向に延び且つ化粧板の幅方向に所定間隔を開けて配置された一対の帯状シート磁石3,3と、を備える磁着パネル1’A,1B,1Cを複数枚、スチール製家具8A,8Bの施工面81に前記帯状シート磁石3を介して取り付けていき、前記磁着パネル1Cを、前記一対の帯状シート磁石3,3の間における化粧板の裏面が前記施工面81の不陸部82に対面するように取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチール製家具に磁石を介して磁着パネルを取り付けていくことによって壁体を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石を用いて、スチール製家具にパネルを取り付けることが知られている(特許文献1)。
具体的には、薄いゴム磁石板の片面に木材の薄片などの装飾片を貼り付けた建材を、ゴム磁石板を介して、スチール製家具に取り付けることにより、建築の内部壁面を装飾することが開示されている(特許文献1の第1図など)。
【特許文献1】特開昭59−34356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の建材は、シート状の装飾片全体にベタ状にゴム磁石板が設けられているため、スチール製家具の施工面(磁石を介して化粧板を取り付ける面)の不陸部に対応して、建材が浮き上がり、建材を施工面に確実に取付けることができない。また、スチール製家具の隅部分や上部、隣接するシート状の装飾片の間に関しては完全に覆い隠す事が困難なため、その隙間から下地(スチール製家具)が見えてしまい、意匠性が低下する場合があった。特に、隣接する装飾片の間は、スチール製家具の施工面の不陸の影響によって、隙間無く接合するのが困難であり、下地が見えることを防止することが非常に困難である。
具体的には、スチール製家具の背面などの施工面は、平坦状に限られず、通常、不陸部がある。不陸部とは、凸部を有する部分をいう。例えば、2台以上のスチール製家具が並べられていると、隣接するスチール製家具の境界部分に、段差(不陸部)が生じる。上記特許文献1に記載の建材は、装飾片全体にゴム磁石板が設けられているので、建材の裏面は平坦状である。かかる建材の裏面を不陸部に対面させて取り付けると、前記建材の裏面の一部分が不陸部の凸部に当たるため、前記建材が施工面に対して大きく傾斜する。このため、建材の一側部の裏面が浮き上り、建材を施工面に確実に取り付けることができない。その結果、スチール製家具の隅部分や上部、隣接する装飾材の間に隙間が生じ、該隙間から下地が見えてしまうといった不具合が発生する。また、単に装飾片を複数装着しただけでは壁体全体の統一性に欠けるため、スチール製家具に装飾を施したといった外観以上の意匠性は達成することが出来ない。
【0004】
一方、上記建材の裏面が不陸部に対面しないように、例えば、隣接する建材の継ぎ目に不陸部が対応するように施工する方法が考えられる。しかしながら、かかる方法では、隣接する建材の継ぎ目に段差が生じ、施工面の不陸部を建材で隠蔽できず、外観上、好ましくない。
【0005】
本発明の第1の目的は、不陸部を含む施工面に磁石を介して磁着パネルを取り付けていくことにより壁体を構築するに当たって、該磁着パネルを施工面に確実に取り付けることができる壁体の構築方法を提供することである。
さらに、本発明の第2の目的は、施工面の不陸部に対応する形状が壁体の表面に外見上現れない壁体の構築方法を提供することである。
また、本発明の第3の目的は、パネルの隙間などから下地(施工面)が見えないように壁体を簡易に構築できる壁体の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の壁体の構築方法は、長尺状の化粧板と、前記化粧板の裏面から突出して設けられた一対の帯状シート磁石であって前記化粧板の長手方向に延び且つ化粧板の幅方向に所定間隔を開けて配置された一対の帯状シート磁石と、を備える磁着パネルを複数枚、スチール製家具の施工面に前記帯状シート磁石を介して取り付けていき、前記磁着パネルの少なくとも1枚を、前記一対の帯状シート磁石の間における化粧板の裏面が前記施工面の不陸部に対面するように取り付けることを特徴とする。
【0007】
上記壁体の構築方法に用いられる磁着パネルは、一対の帯状シート磁石の磁着面(帯状シート磁石の裏面)を、施工面に磁着することによって取り付けることができる。かかる磁着パネルを複数枚、施工面に並べて取り付けることによって壁体が構築される。
上記一対の帯状シート磁石は化粧板の裏面から突出しているので、一対の帯状シート磁石の間における化粧板の裏面と帯状シート磁石の磁着面を含む平面との間には、帯状シート磁石の厚みに相当する空間が形成されている。従って、上記磁着パネルを、一対の帯状シート磁石の間における化粧板の裏面が前記施工面の不陸部に対面するように取り付けることによって、前記空間内に施工面の不陸部が収まるため、磁着パネル(化粧板)は、施工面に対して略平行または極めて緩やかに傾斜する。従って、一対の帯状シート磁石の磁着面が施工面に確実に接し、その結果、磁着パネルを施工面に確実に取り付けることができる。
また、上記のように磁着パネルを取り付けることによって、施工面の不陸部を磁着パネルで隠蔽することができる。
【0008】
本発明の好ましい壁体の構築方法は、上記化粧板の曲げ強度が、9N/mm〜30N/mmである。
かかる曲げ強度の磁着パネルを用いることにより、化粧板は適度に湾曲する。従って、上記不陸部に対面して取り付けられた磁着パネルは、化粧板の裏面に不陸部の凸部が当たっても、該化粧板が適度に湾曲するので、一対の帯状シート磁石の磁着面が、施工面に対して略平行となる。よって、帯状シート磁石を介して、磁着パネルを施工面により確実に取り付けることができる。
さらに、上記のように化粧板が適度に湾曲するので、化粧板(磁着パネル)の表面に不陸部の形状に対応した形状が現れない。従って、外見上、平面的な壁体を構築できる。
【0009】
本発明の好ましい壁体の構築方法は、上記不陸部が、隣接するスチール製家具の境界部分に生じる段差である。
上記壁体の構築方法によれば、隣接するスチール製家具の境界部分の段差を磁着パネルによって隠蔽できるので、前記壁体がスチール製家具に構築されていることを看者に察知されない。従って、施工及び構造が簡易な壁体であるにも拘わらず、高級感のある壁体を看者に印象付けることができる。
【0010】
本発明の壁体の構築方法は、両側部にサネ部がそれぞれ形成され且つ湾曲可能な長尺状の化粧板と、前記化粧板の裏面から突出して設けられた一対の帯状シート磁石であって前記化粧板の裏面の長手方向に延び且つ化粧板の幅方向に所定間隔を開けて配置された一対の帯状シート磁石と、を備える磁着パネルを複数枚、スチール製家具の施工面に取り付けて壁体を構築する方法であって、施工面に隅材を取り付け、1枚目の磁着パネルを湾曲させながら前記隅材に前記1枚目の磁着パネルの一方側部のサネ部を嵌め入れて前記1枚目の磁着パネルを施工面に取り付け、2枚目の磁着パネルを湾曲させながら前記1枚目の磁着パネルの他方側部のサネ部に前記2枚目の磁着パネルの一方側部のサネ部を嵌め入れて前記2枚目の磁着パネルを施工面に取り付け、同様にして磁着パネルを施工面に順次取り付けて壁体を形成した後、終端に取り付けた磁着パネルの終端サネ部に隅材を取り付け且つ前記壁体の上端部に見切り材を取り付けることを特徴とする。
好ましくは、前記複数枚の磁着パネルのうち少なくとも1枚を、前記一対の帯状シート磁石の間における化粧板の裏面が前記施工面の不陸部に対面するように取り付ける。
【0011】
上記壁体の構築方法によれば、隣接する磁着パネルや、磁着パネルと隅材などの間に、確実に隙間が生じないように施工できるので、隣接する磁着パネルの間や、壁体の隅部分及び上部から下地(スチール製家具)が見えず、意匠性に優れた壁体を構築できる。
【0012】
また、本発明の好ましい壁体の構築方法は、化粧板の曲げ強度が9N/mm〜30N/mmである。かかる曲げ強度の磁着パネルを用いることにより、磁着パネルは適度に湾曲する。従って、磁着パネルの取り付け時に磁着パネルを湾曲させた際、曲がり過ぎ又は曲げ困難とならず、磁着パネルを施工面に簡易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る壁体の構築方法によれば、帯状シート磁石を介して、磁着パネルをスチール製家具の施工面に確実に取り付けることができ、更に、施工面の不陸部を隠蔽することができる。本発明の構築方法によれば、磁着パネルが、不用意に位置ズレたり、施工面から脱落する虞がないので、接着剤や釘などでパネルが取り付けられた壁体と同様に、強固な壁体を構築できる。
さらに、本発明の壁体の構築方法によれば、より確実に磁着パネルを施工面に取り付けることができる上、磁着パネルの表面に、施工面の不陸部に対応した形状が現れず、平面的な壁体を構築することができる。
また、本発明の壁体の構築方法によれば、隅部分、上部、磁着パネル間の下地隠蔽効果が高く、全体の一体性が高い壁体を構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の壁体の構築方法は、スチール製家具の施工面に、磁着パネルを取り付けていく。また、磁着パネルの取付に際しては、入隅材や出隅材などの各種の隅材、見切り材などの端部カバー部材が装着される。以下、磁着パネル及び端部カバー部材の詳細を説明した後、本発明の壁体の構築方法について詳述する。
【0015】
<磁着パネル>
本発明の壁体の構築方法に使用される磁着パネル1は、図1〜図3に示すように、長尺状の化粧板2と、該化粧板2の裏面に設けられた一対の帯状シート磁石3,3と、を備えている。
なお、長尺状とは、化粧板2の面内において直交する2つの方向のうち、一方向が他方向に比して明らかに長い形状をいう。本明細書では、化粧板2の長い方向を「長手方向」といい、該長手方向と化粧板2の面内で直交する方向を「幅方向」という。
上記磁着パネル1は、曲げ強度が9N/mm〜30N/mmである長尺状の化粧板2と、化粧板2の裏面から突出して設けられた一対の帯状シート磁石3,3であって化粧板2の長手方向に延び且つ化粧板2の幅方向に所定間隔を開けて配置された一対の帯状シート磁石3,3と、を備えている。
【0016】
上記化粧板2は、長尺状の板体と、該板体の表面に設けられた化粧層と、を有する。板体の材質は、特に限定されず、木、合成樹脂ボード、石膏ボードなどの無機ボードなどの公知の材質を使用できる。また、化粧板2は、鋸、カッターなどの切断器具を用いて、所望の位置で切断できる材質からなる。
さらに、上記板体は、防火上の観点から準不燃材または不燃材が好ましい。不燃性の板体としては、例えば、無機材料及び補強繊維をバインダーで固めた無機ボードが挙げられる。
前記無機材料としては、各種セメント類;ケイ砂、ケイ石粉、ケイ藻土などのケイ酸質材料;パーライトなどの無機発泡材;平均粒径5μm〜30μm程度のロックウール、スラグウール、グラスウールなどの鉱物質;水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機質粉状体;平均粒径50μm以下(好ましくは20μm〜50μm)のシラス系ガラス質;などを例示できる無機材料としては、特に耐火性に優れ、比較的軽量な炭酸カルシウムが本発明の効果を達成する上で有用である。
前記補強繊維としては、平均繊維長0.5mm〜3mm程度のパルプ;平均繊維長3mm〜18mm(好ましくは3mm〜12mm、より好ましくは3mm〜6mm)の合成樹脂繊維、同ガラス繊維、同炭素繊維、同麻繊維;などを例示できる。補強繊維としては、特に柔軟性に優れるパルプが本発明の効果を達成する上で有用である。パルプを用いることにより、化粧板2が撓み易くなり、磁着パネル1の着脱を、より容易に行える。また、パルプは、他の繊維に比べ切断しやすいという特性も併せ持っており、化粧板2を適宜な位置で容易に切断できる。
前記バインダーとしては、デンプン、ポリビニルアルコール、フェノール系樹脂などを例示できる。
上記無機ボードに於ける無機材料などの配合割合は、好ましくは、無機材料が60質量部〜97質量部であり、補強繊維が3質量部〜18質量部であり、バインダーが残部である。
【0017】
また、上記化粧層としては、化粧シート、吹きつけ塗装、印刷、コーティング、塗り加工などを例示できる。中でも、化粧層としては、板体に化粧シートを積層する方法が好ましい。化粧シートは、加工性が良く、板体の表面を覆い隠すことによって様々な色、模様、光沢、触感を表現できるからである。前記化粧シートの材質についても特に限定されず、紙、合成樹脂シート、発泡シート、剛性紙、不織布などの公知の材質を使用できる。化粧シートの表面に表される模様は、任意であり、例えば、木目模様、煉瓦模様、市松模様、織物柄、和紙模様、土壁模様などが挙げられる。
【0018】
化粧板2の曲げ強度は、特に限定されないが少なくとも9N/mm以上、好ましくは10N/mm〜30N/mmであり、より好ましくは、15N/mm〜20N/mmである。このような曲げ強度の化粧板2を有する磁着パネル1は、不陸部を有する施工面に取り付けた際、化粧板2の裏面が前記不陸部の凸部に当たっても、該凸部に対応して適度に湾曲するので好ましい。
ただし、上記曲げ強度は、JIS A 1408に準じた方法によって測定された値をいう。
【0019】
さらに、上記化粧板2の曲げ破断強度は、特に限定されないが、好ましくは350N以上であり、より好ましくは400N以上であり、特に好ましくは500N以上である。なお、化粧板2の曲げ破断強度の上限は、特に限定されないが、750N以下であり、一般的には650N以下である。
曲げ破断強度が400N以上の化粧板2は、曲げても割れにくく、磁着パネル1の施工性に優れ、保管も簡便である。
ただし、上記曲げ破断強度は、JIS A 1408に準じた方法によって測定された値をいう。
【0020】
また、化粧板2の重量は、特に限定されないが、好ましくは3.4g/cm以下であり、より好ましくは、1.5〜3.4g/cmである。化粧板2が重すぎる場合には、吸着力の強い帯状シート磁石3を用いる必要があり、かかる帯状シート磁石3を用いると、磁着パネル1を取り外し難くなる上にハンドリング性も低下するからである。又、化粧板2が軽すぎる場合は、充分な強度が得られないばかりでなく、防火効果も低下するので好ましくない。
【0021】
化粧板2の厚みは、化粧板2(板体)の材質によって異なるものの、通常、2.5mm〜5mmであり、好ましくは2.5mm〜3.5mmである。具体的寸法では、化粧板2の厚みは、約3mmが好ましい。前記厚みが薄すぎると、充分な強度、重量が得られず、磁着パネル1の着脱が困難となる。さらに、サネ構造の形成が困難となり意匠性も低下する。一方、厚みが厚すぎると、重量が大きすぎて磁力による保持が困難となる上、柔軟性が低下するので化粧板2を湾曲させて着脱を容易に行うことも困難となる。
【0022】
化粧板2の長さ(長手方向長さ)は、特に限定されないが、余りに長いと、取り外す際に湾曲させると破損する虞がある上、取り扱い性も悪く、反対に余りに短いと、湾曲させることが困難となり磁着パネル1の取り外しが困難となる上、施工時に磁着パネル1を長手方向に多数継がなければならないので施工性も悪くなる。これらを考慮すると、化粧板2の長さは、好ましくは1500mm〜2600mmであり、より好ましくは1700mm〜2500mmである。具体的寸法では、化粧板2の長さは、約1820mm(所謂6尺)に形成することが好ましい。
また、化粧板2の幅(幅方向長さ)についても特に限定されないが、余りに長いと化粧板2が割れたり、撓んだりして施工性が悪く、余りに短いと施工時に化粧板2を幅方向に多数継がなければならない。これらを考慮すると、化粧板2の幅は、好ましくは400mm〜600mmであり、より好ましくは445mm〜455mmである。具体的寸法では、化粧板2の幅は、約450mm(所謂3尺の半分)に形成することが好ましい。
【0023】
化粧板2の両方の側部2a,2bには、サネ構造が形成されている。具体的には、化粧板2の一方側部2aには、化粧板2の表面と略平行な面を有し、且つ化粧板2の厚みよりも薄肉の第1サネ部21が設けられ、一方、化粧板2の他方側部2bには、化粧板2の裏面と略平行な面を有し、且つ化粧板2の厚みよりも薄肉の第2サネ部22が設けられている。第1サネ部21及び第2サネ部22は、化粧板2の両側部2a,2b(長手方向に延びる側部)の全体から外方に突出した長状突出部からなる。
上記サネ構造が形成されていることによって、例えば、1枚目の磁着パネル1の第2サネ部22の上に、2枚目の磁着パネル1の第1サネ部21を重ね合わせつつ、幅方向に位置合わせを行うことによって、複数枚の磁着パネル1を順次取り付けることができる。
なお、上記第1サネ部21が化粧板2の他方側部2bに設けられ、上記第2サネ部22が化粧板2の一方側部2aに設けられていてもよい。
【0024】
上記第1サネ部21及び第2サネ部22の突出長は特に限定されないが、好ましくは第2サネ部22の突出長22Lは、第1サネ部21の突出長21Lよりも長いことが好ましい。第2サネ部22の上に第1サネ部21を重ね合わせて位置調整しながら複数枚の磁着パネル1を施工した際に、隣接する磁着パネル1の重ね合わせ部分(継ぎ目)に長手方向に延びる目地(筋状の凹み)を形成できるからである。
例えば、上記第1サネ部21の突出長21Lは、2mm〜6mm程度であり、好ましくは2mm〜4mm程度である。具体的寸法では、第1サネ部21の突出長21Lは、約3mmが好ましい。
一方、上記第2サネ部22の突出長22Lは、7mm〜12mm程度であり、好ましくは7mm〜9mm程度である。具体的寸法では、第2サネ部22の突出長22Lは、約8mmが好ましい。
上記目地の幅は、第2サネ部22の突出長22Lと第1サネ部21の突出長21Lの差によって適宜設定でき、通常、3〜7mmの範囲、好ましくは4mm〜6mm、より好ましくは5mm程度に形成される。目地の幅が適正範囲であると、指やヘラ等をサネ構造の隙間に挿入し易くなり、磁着パネル1の取り外しを容易に行える上、意匠的にも好ましいものとなる。
【0025】
第1サネ部21の厚み及び第2サネ部22の厚みは、最大で化粧板2の厚みの1/2である。1枚目の磁着パネル1の第1サネ部21と2枚目の第2サネ部22の重ね合わせ部分(継ぎ目)が、盛り上がることを防止するためである。
また、図3に示すように、第1サネ部21の裏面及び第2サネ部22の表面は、傾斜面状に形成されていることが好ましい。磁着パネル1を取り外す際、第1サネ部21と第2サネ部22の隙間に、指やヘラ等を入れやすくなるからである。
第1サネ部21の裏面及び第2サネ部22の表面が、傾斜面状に形成される場合には、第1サネ部21及び第2サネ部22の基部(化粧板2との境界部)の厚みが、最も厚く形成され、第1サネ部21及び第2サネ部22の外端部に向かうに従って、厚みが薄く形成されている。
【0026】
次に、一対の帯状シート磁石3,3は、化粧板2の裏面(施工面に面する側)から突出するように設けられている。帯状シート磁石3は、薄肉シート状に形成した永久磁石を、細長いテープ状に形成したものである。
帯状シート磁石3は、1枚の化粧板2に対して2本設けられている。該帯状シート磁石3は、化粧板2の両方の側部2a,2bの近傍において、化粧板2の長手方向と略平行に延びて設けられている。該帯状シート磁石3は、例えば、接着剤を介して化粧板2の裏面に取り付けられている。前記接着剤は、帯状シート磁石3の吸着力よりも強い接着力を有する必要がある。具体的には、前記接着剤は、少なくとも5kPa以上、望ましくは9kPa以上の接着力を有するものを選択する。また、前記接着剤は、帯状シート磁石3に対する耐ブリード性を有するものが好ましく、例えば、変性ポリアミド系接着剤、ホットメルト型接着剤などを例示できる。
【0027】
化粧板2の両側部2a,2bに対する帯状シート磁石3の取付位置は、図3に示すように、化粧板2の両側部2a,2bと帯状シート磁石3の一側縁3aの間の距離3Lが、好ましくは5mm〜30mmであり、より好ましくは10mm〜20mmである。帯状シート磁石3の一側縁3aが、化粧板2の両側部2a,2bと一致していると、磁着パネル1を取り外し難く、一方、帯状シート磁石3が、化粧板2の両側部2a,2bから離れすぎていると、2本の帯状シート磁石3の取付間隔が狭まって、隣接する磁着パネル1の継ぎ目が浮き上がる虞があるからである。
【0028】
また、化粧板2の上端部2cに対する帯状シート磁石3の取付位置は、帯状シート磁石3の上端縁3cが化粧板2の上端部2cに一致するように設けられていても良いが、好ましくは、図2に示すように、帯状シート磁石3の上端縁3cが、化粧板2の上端部2cから僅かに離間して設けられていることが好ましい。
同様に、化粧板2の下端部2dに対する帯状シート磁石3の取付位置は、帯状シート磁石3の下端縁3cが化粧板2の下端部2dに一致するように設けられていても良いが、好ましくは、図2に示すように、帯状シート磁石3の下端縁3dが、化粧板2の下端部2dから僅かに離間して設けられていることが好ましい。
上記のように帯状シート磁石3の上端縁3c及び/又は下端縁3dを、化粧板2の上下端部2c,2dから離間して設けることにより、化粧板2の上端部2c及び/又は下端部2dに見切り材を装着した際、帯状シート磁石3が見切り材と接触することによって帯状シート磁石3の上下端縁3c,3dが化粧板2から剥がれることを防止できる。
【0029】
かかる帯状シート磁石3の上端縁3cと化粧板2の上端部2cの間の距離3Nは、少なくとも10mm以上とするのが良く、好ましくは15mm〜30mmであり、より好ましくは18mm〜25mmである。具体的には、前記距離3Nは、20mm前後に設定するのが最も使い勝手が良い。
また、帯状シート磁石3の下端縁3dと化粧板2の下端部2dの間の距離3Pは、少なくとも10mm以上とするのが良く、好ましくは15mm〜30mmであり、より好ましくは18mm〜25mmである。具体的には、前記距離3Pは、20mm前後に設定するのが最も使い勝手が良い。
上記距離3Nや距離3Pが、余りに短いと、見切り材を装着した際、帯状シート磁石3の上下端縁3c,3dが見切り材に接触する場合があり、一方、余りに長いと、化粧板2の上下端部2c,2dが施工面から浮き上がる虞があるからである。
【0030】
帯状シート磁石3の幅3Wは、特に限定されないが、好ましくは25m〜40mmであり、より好ましくは25mm〜30mmである。前記幅3Wが小さすぎると、磁力が不足して磁着パネル1を施工面に取り付けることが困難であり、又、取り付けることができても僅かな外力で磁着パネル1が位置ズレし、場合によっては滑落する虞がある。反対に、前記幅3Wが大きすぎると、磁力が強すぎ、施工時に磁着パネル1の位置合わせが困難となるばかりでなく、取り外し時に磁着パネル1の折れ曲りや、帯状シート磁石3と化粧板2が層間剥離を生じる虞がある。さらに、前記幅3Wが大きすぎると、化粧板2の、一対の帯状シート磁石3の間の部分を適切に湾曲させることが困難となり、磁着パネル1を湾曲させながら容易に取り外す効果が得られにくくなる。
帯状シート磁石3の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.4mm〜1.2mmであり、より好ましくは0.6mm〜1mmである。帯状シート磁石3の厚みが余りに厚すぎると化粧板2と施工面の隙間が大きくなり、施工した磁着パネル1を斜め方向から見た場合に、化粧板2の間から帯状シート磁石3が見えて美観を損なう虞があるからである。加えて、帯状シート磁石3の厚みが余りに厚いと、磁力が強すぎて施工性が低下したり、施工時に磁着パネル1を破損する虞がある。一方、余りに薄いと、十分な磁力が得られない上、化粧板2と施工面の間隔が小さくなりすぎて施工上支障が生じる場合がある。
【0031】
帯状シート磁石3の吸着力は、好ましくは2.4kPa〜8.4kPaであり、より好ましくは3.9kPa〜7.9kPaであり、特に好ましくは5kPa〜7kPaである。また、帯状シート磁石3の表面磁束密度は、好ましくは30mT〜54mTであり、より好ましくは36mT〜50mTであり、特に好ましくは38mT〜48mTである。
かかる帯状シート磁石3を用いることにより、施工面に対して十分な吸着力で磁着でき、且つ、手の力で引き離すことができるからである。
【0032】
さらに、上記帯状シート磁石3の性質は、等方性または異方性の何れでも良い。
ここで、異方性磁石とは、磁石の結晶粒の方向が整列していて、磁化容易軸が揃った磁石をいう。異方性磁石は、特定の方向から磁化(着磁)することにより他の方向から磁化したときよりも強い磁石を得ることができる。異方性磁石の好例としては、フェライトの六角晶を含む磁石が挙げられ、該磁石は、六角晶の面と垂直方向に磁化容易軸が生じる。異方性磁石は、一方向(磁化容易軸)に磁力線が作用するので、その方向に対して強い吸着力が生じるが、他の方向に対しては吸着力が極めて弱い。
一方、等方性磁石とは、磁石内の結晶粒の磁化容易軸が特定の方向に揃っておらず、磁気特性が等方的な磁石をいう。該等方性磁石は、立方的にどの方向においても磁力線が作用するが、個々の磁力線は、異方性磁石の一方向に於ける磁力線に比べると弱いと言える。
【0033】
好ましくは、上記帯状シート磁石3は、異方性の磁石が用いられる。帯状シート磁石3が異方性磁石の場合、その磁化容易軸が帯状シート磁石3の磁着面に対して垂直な方向(つまり、施工面に対して垂直な方向)となるように形成される。
かかる異方性磁石の帯状シート磁石3は、施工面に対して極めて強い吸着力で磁着する一方、帯状シート磁石3の一側縁3aを起点として、該帯状シート磁石3を施工面から引き起こすと、比較的小さい力で帯状シート磁石3を施工面から引き離すことができる。特に、化粧板2の湾曲を利用すれば、帯状シート磁石3の磁力線の方向を、施工面に対して容易にずらすことができ、上記異方性磁石を用いた場合、磁力線の方向が施工面に対してずれると(傾斜すると)、吸着力が大きく低下するので磁着パネル1を施工面から容易に引き離すことができる。
【0034】
さらに、上記帯状シート磁石3の性質は、片面多極着磁または両面多極着磁の何れでも良い。
ここで、片面多極着磁の磁石とは、磁石の表面又は裏面の何れか一方の面にN極及びS極が交互に並び、前記一方の面のみに磁力線が生じるシート状の磁石をいう。片面多極着磁の磁石は、磁力線が一方の面においてループ状に生じ、磁力線が一方の面から数ミリ程度離れた範囲にまで作用する。
一方、両面多極着磁の磁石とは、磁石の表面及び裏面の双方の面にそれぞれ、N極及びS極が交互に並び、前記双方の面に磁力線がそれぞれ生じるシート状の磁石をいう。
【0035】
好ましくは、上記帯状シート磁石3は、片面多極着磁の磁石が用いられる。帯状シート磁石3が片面多極着磁の場合、多極着磁の磁着面(磁力線が作用する面)が、施工面に面するように形成される。
かかる片面多極着磁の帯状シート磁石3は、施工面に対して極めて強い吸着力で磁着する。また、片面多極着磁の帯状シート磁石3の場合には、化粧板2の表面側には、磁力線が作用せず、従って、磁力によって悪影響を受ける電子機器類などを化粧板2(磁着パネル1)の表面側に設置することも可能となる。特に、化粧板2の湾曲を利用すれば、帯状シート磁石3の磁着面と施工面の間に隙間を形成することができ、上記片面多極着磁の磁石を用いた場合、帯状シート磁石3と施工面の間の隙間が大きくなると磁力が低下するので、磁着パネル1を施工面から容易に引き剥がすことができる。
【0036】
上記片面多極着磁の極間は、好ましくは0.3mm〜2mmの範囲である。極間が0.3mm未満であると磁力線の回り込みが小さくなるので、十分な吸着力を有する帯状シート磁石3を得ることが困難となる。また、極間が2mmを越えると、帯状シート磁石3の厚みに対して相対的に極間が大きくなるので、十分な吸着力を有する帯状シート磁石3を得ることが困難となる。なお、ワンターン着磁ヨークによって着磁する場合は、極間を1.0mm以上とするのが好ましい。
【0037】
上記帯状シート磁石3は、最も好ましくは、異方性且つ片面多極着磁の双方の性質を有するものである。特に、磁着パネル1を取り外す際、上述のように、帯状シート磁石3の施工面に対する磁力線のずれと、帯状シート磁石3の磁着面と施工面との隙間形成と、が相乗し、より容易に磁着パネル1を施工面から引き離すことができる。一方、磁着パネル1が施工面に取り付けられている状態では、施工面に対して磁力線方向が一致しているので、異方性と片面多極着磁の双方の磁力を高める性質が発揮され、より強い吸着力にて施工面に取付け得る。
【0038】
上記帯状シート磁石3の製法は、特に限定されず、例えば、樹脂またはゴムなどのベースポリマーに磁性粉末を混合した組成物をシート状に成形(押出し成形、圧延成形など)することにより得ることができる。
磁性粉末としては、鉄粉、MO・6Fe(前記Mは、Sr、Ba、Pbなどの2価の金属を表す)で表されるフェライト系粉末、RCo,RCo17(前記Rは、Sm、Y、La、Ceなどの希土類元素を表す)で表される希土類コバルト系粉末、RFe14Bを主相とするR−Fe−B系粉末、マンガン− ビスマス系粉末、マンガン−アルミニウム系粉末、コバルト系粉末(例えば、Al−Ni−Co系、Fe−Cr−Co系等)などを例示できる。特に、フェライト系粉末が好適である。
磁性粉末の配合量は、好ましくは80〜97質量%であり、より好ましくは85〜95質量%である。磁性粉末の配合量が少なすぎると、磁力が低下して磁着パネル1の取付けに必要な吸着力が得られなくなり、前記配合量が多すぎると、帯状シート磁石3の柔軟性が低下するので、化粧板2の曲げに追従しにくくなる上、磁着パネル1を切断し難くなる。
また、上記ベースポリマーとしては、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴムなどを例示できる。特に、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴムが好適である。なお、ニトリルゴムは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合によって得られる共重合ゴムである。塩素化ポリエチレン及び/又はニトリルゴムを用いると、柔軟性が高く、且つ切断も容易に行えるシート磁石が得られる。
また、上記組成物には、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、滑剤、カップリング剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0039】
異方性且つ片面多極着磁の磁石を得る方法としては、磁場コイルによって発生した磁場を使用する方法と、機械的圧力を加える方法の2種類の方法があり、いずれも磁性材料の磁化容易軸を1方向に整列させることができる。磁場を使用する方法は、磁場中成形法といい、主にフェライト、プラスチック磁石などに用いられる。 機械的圧力を加える方法は、機械的圧力により磁性材料の粒子を1方向に整列させる方法で、主にラバー磁石に用いられる。
【0040】
なお、本発明の壁体の構築方法においては、少なくとも1枚の磁着パネル1を、施工面の不陸部に対応するように取り付けることから、幅の異なる2以上の磁着パネル1を準備しておくことが好ましい。
例えば、図4に示すように、上記基本幅(例えば、上記450mm幅)の磁着パネル1(以下、幅が狭い又は広い磁着パネルと区別するために、この基本幅の磁着パネル1を「基本磁着パネル」という場合がある)よりも幅が狭い磁着パネル1’(以下、基本磁着パネルと区別するために、この幅が狭い磁着パネルを「幅狭磁着パネル」という場合がある)、及び、図5に示すように、上記基本磁着パネル1よりも幅が広い磁着パネル1”(以下、基本磁着パネルと区別するために、この磁着パネルを「幅広磁着パネル」という場合がある)の少なくとも何れか一方を準備する。
幅狭磁着パネル1’及び幅広磁着パネル1”の幅は、基本磁着パネル1に応じて適宜設定される。基本磁着パネル1の幅が450mmの場合には、幅狭磁着パネル1’の幅は、約225mmなどであり、幅広磁着パネル1”の幅は、約600mmなどである。
【0041】
なお、上記幅狭磁着パネル1’及び幅広磁着パネル1”の何れも、上記基本磁着パネル1に比して化粧板2の幅が異なるだけであり、幅狭磁着パネル1’及び幅広磁着パネル1”のその他の構成は、基本磁着パネル1と同様である。
もっとも、幅狭磁着パネル1’は、基本磁着パネル1に比して軽くなるので、その割合に応じて、基本磁着パネル1よりも帯状シート磁石3の幅を狭く形成することが好ましい。同様に、幅広磁着パネル1”は、基本磁着パネル1に比して重くなるので、その割合に応じて、基本磁着パネル1よりも帯状シート磁石3の幅を広く形成することが好ましい。
【0042】
<端部カバー部材>
本発明の壁体の構築方法は、複数枚の磁着パネル1を施工面に取り付けることにより、該複数枚の磁着パネル1で壁体が構築される。該壁体の端部には、端部カバー部材を装着することが好ましい。
例えば、壁体の側端部(複数枚の磁着パネル1のうち、側方に配置される磁着パネル1の未接合側部)には、必要に応じて、隅材が装着される。また、壁体の上端部(複数枚の磁着パネル1の各上端部)には、必要に応じて、上方見切り材が装着され、壁体の下端部(複数枚の磁着パネル1の各下端部)には、必要に応じて、下方見切り材が装着される。また、磁着パネル1が上下に並べて配置される場合には、必要に応じて、下方の磁着パネル1の上端部と上方の磁着パネル1の下端部を接続するために、両端部間にジョイナーが装着される。
【0043】
上記各端部カバー部材は、細長い形状であり、合成樹脂成形品、金属成形品などで形成される。
【0044】
上記隅材としては、入隅または出隅に応じて、入隅材または出隅材が用いられる。
図6(a)に、入隅材の一例を示す。該入隅材5は、略コの字状の挿入口55を有する。該挿入口55は、一方側に延出された第1片51及び第2片52の間に形成され、前記第1片51及び第2片52の基部が連結片53で連結されている。前記入隅材5の挿入口55に磁着パネル1の側部を嵌め入れた際、第1片51は、磁着パネル1の表面側に位置し、且つ第2片52は、磁着パネル1の裏面側に位置する。
上記第2片52の延出長さは、磁着パネル1の側部を挿入口55に嵌め入れた際、第2片52の延出端部が帯状シート磁石3の一側縁3aに接触しない程度に形成されていることが好ましい。帯状シート磁石3の一側縁3aが入隅材5と接触することを防止して、帯状シート磁石3の一側縁3aが化粧板2から剥がれることを防止するためである。
また、第2片52の厚みは、帯状シート磁石3の厚みと略同一又はそれよりも薄く形成されていることが好ましい。入隅材5を装着した際、帯状シート磁石3の磁着面が施工面から離反しないようにするためである。
【0045】
図6(b)は、出隅材6の一例を示す。該出隅材6は、略コの字状の挿入口65を2箇所有する。該2箇所の挿入口65は、その開口が略90度となるように向けて形成されている。該挿入口65は、上記入隅材5と同様に、一方側に延出された第1片61及び第2片62の間に形成され、前記第1片61及び第2片62の基部が連結片63で連結されている。
上記出隅材6の第2片62の延出長さ及び厚みは、上記入隅材5の第2片52の延出長さ及び厚みと同様に形成されていることが好ましい。
【0046】
図6(c)は、上方見切材7の一例を示す。該上方見切り材7は、略コの字状の挿入口75を有する。該挿入口75は、上記入隅材5と同様に、一方側に延出された第1片71及び第2片72の間に形成され、前記第1片71及び第2片72の基部が連結片73で連結されている。
上記上方見切り材7の第2片72の延出長さは、磁着パネル1の上端部を挿入口75に嵌め入れた際、第2片72の延出端部が帯状シート磁石3の上端縁3cに接触しない程度に形成されていることが好ましい。帯状シート磁石3の上端縁3cが上方見切り材7と接触することを防止して、帯状シート磁石3の上端縁3cが化粧板2から剥がれることを防止するためである。
また、上記第2片72の厚みは、帯状シート磁石3の厚みと略同一又はそれよりも薄く形成されていることが好ましい。上方見切り材7を装着した際、帯状シート磁石3の磁着面が施工面から離反しないようにするためである。
【0047】
なお、下方見切り材は、上方見切り材と同様に形成されることが好ましく、その説明は省略する。
【0048】
図6(d)は、ジョイナー4の一例を示す。該ジョイナー4は、略コの字状の挿入口45と、略L字状の挿入口46と、を有する。該挿入口45は、上記上方見切り材7と同様に、一方側に延出された第1片41及び第2片42の間に形成され、前記第1片41及び第2片42の基部が連結片43で連結されている。挿入口46は、基部が連結片43に連結され且つ前記第1片41と約180°の反対方向に延出された第3片44によって形成されている。第2片42の延出長さ及び厚みは、上記上方見切り材7の第2片72の延出長さ及び厚みと同様に形成されていることが好ましい。
【0049】
<壁体の構築方法>
上記磁着パネル1を、帯状シート磁石3を介して、スチール製家具の施工面に順次取り付けていく。
スチール製家具とは、磁石に磁着可能な金属(鉄など)を用いて形成された家具類であり、その全てが金属で形成されているものに限られず、一部分に非金属部位が含まれていてもよい。スチール製家具としては、例えば、鉄製の書棚、鉄製のロッカー、鉄製の整理棚などを例示できる。
本発明の構築方法を適用することにより、オフィスの部屋の壁体、オフィスの机同士を仕切る壁体、一般家庭の部屋の壁体、展示会などの各種イベントの設置ブースを仕切る壁体、などの各種壁体を構築できる。
【0050】
本発明の壁体の構築方法は、オフィス用途に適用することが好ましい。オフィス内にはスチール製家具が多数存在し、さらに、オフィスでは、頻繁にレイアウト変更を行うことが多いからである。
本発明によれば、簡易に且つ安価に、高級感のある壁体を構築でき、更に、簡単に取り外してレイアウト変更を行うことができる。
【0051】
以下、本発明の壁体の構築方法によって、オフィスの部屋を形成する場合について詳述する。ただし、複数の同じ部材を区別するため、語尾にA,B…の符号を付す場合がある。
図7は、複数のスチール製家具8A,…が配置されたオフィスを示す。なお、91は、オフィスの壁面であり、通常、壁紙などが貼着されている。
なお、図7では、2台のスチール製家具8A,8Bを例示しているが、本発明の壁体の構築方法は、2台のスチール製家具8A,8Bに壁体を構築する場合に限られない。本発明は、オフィスのレイアウトを考慮して、適切な台数のスチール製家具を適宜な位置に配置することにより、スチール製家具を利用した任意の壁体を構築できる。
【0052】
上記壁面91に、第1のスチール製家具8Aの側面を一致させ、該スチール製家具8Aの他方の側面に、第2のスチール製家具8Bの側面を一致させて、2台のスチール製家具8A,8Bを配置する。この際、2台のスチール製家具8A,8Bの背面81が、略面一となるように配置させることが好ましい。
【0053】
スチール製家具8A,8Bは、様々な幅のものが市販されているが、オフィス用途では、幅900mm前後のスチール製家具が多い。このため、基本磁着パネル1は、その幅が450mmに形成されていることが好ましく、幅狭磁着パネル1’は、その幅が225mmに形成されていることが好ましい。
【0054】
上記のように配置されたスチール製家具8A,8Bの背面81(スチール製家具の背面は、通常、物品の出し入れを行うようになっておらず、ほぼ平坦面となっている)が、磁着パネル1を取り付ける施工面である。
ただし、2台のスチール製家具8A,8Bの背面81が略面一となるように配置しても、通常、隣接するスチール製家具8A,8Bの境界部分に、段差82(不陸部)が生じ得る。
【0055】
まず、第1のスチール製家具8Aの背面81の側部(壁面91に接する部分)に、上述した入隅材5を取り付ける。
【0056】
図8に示すように、この入隅材5の挿入口55に、幅狭磁着パネル1’Aの第2サネ部22を嵌入する。この際、幅狭磁着パネル1’Aを幅方向において湾曲させながら、第2サネ部22を入隅材5に嵌入すれば、第2サネ部22を入隅材5に確実に入れ込むことができ、幅狭磁着パネル1’Aと入隅材5の間に隙間が生じることを防止できる。よって、幅狭磁着パネル1’Aと入隅材5の間から、スチール製家具8Aの背面81(下地)が見えることを防止できる。
幅狭磁着パネル1’Aを湾曲させることによって、該幅狭磁着パネル1’Aの第2サネ部22の近傍に設けられた帯状シート磁石3のみをスチール製家具8Aの背面81に磁着させ、且つ幅狭磁着パネル1’Aの第1サネ部21の近傍に設けられた帯状シート磁石3を背面81から浮かせた状態にすることができる。この状態においては、背面81に対する幅狭磁着パネル1’Aの吸着力は弱いので、入隅材5への嵌入が容易に行える上、正確に位置決めをすることが可能となる。特に、帯状シート磁石3が異方性磁石及び/又は片面多極着磁の場合には、前述のように湾曲により帯状シート磁石3と背面81の間の隙間が大きくなると磁力が低下するので、幅狭磁着パネル1’の位置合わせをより容易に行える。
なお、幅狭磁着パネル1’Aの第1サネ部21を入隅材5に嵌入してもよい。第1サネ部21から入れた場合には、2枚目以降の磁着パネル1は、第1サネ部21側から嵌め入れられる。
【0057】
幅狭磁着パネル1’Aの第2サネ部22を入隅材5に嵌入した後、位置決めし、湾曲させた幅狭磁着パネル1’Aを元の平板状に復帰させ、スチール製家具8Aの背面81側へ押す。これにより、該幅狭磁着パネル1’Aの一対の帯状シート磁石3の磁着面が、背面81に磁着し、幅狭磁着パネル1’Aが背面81に取り付けられる。
図9は、スチール製家具の天面側から見た、幅狭磁着パネル1’Aと入隅材5の嵌入状態を表す図である。
図9に示すように、前記幅狭磁着パネル1’Aの裏面側に位置する入隅材5の第2片52は、帯状シート磁石3の一側縁3aに接していない上、該第2片52が、化粧板2の裏面と背面81の間に介在しても、帯状シート磁石3の磁着面31は、確実に背面81に接している。
【0058】
次に、図10に示すように、2枚目の磁着パネル1(基本磁着パネル1B)の第2サネ部22を、上記幅狭磁着パネル1’Aの第1サネ部21の裏面側へと嵌め入れる。この際、上記基本磁着パネル1Bを幅方向において湾曲させながら、その第2サネ部22を幅狭磁着パネル1’Aの第1サネ部21に嵌入すれば、第2サネ部22を確実に入れ込むことができ、基本磁着パネル1Bと幅狭磁着パネル1’Aの間に隙間が生じることを防止できる。よって、隣接する磁着パネルの間から、スチール製家具8Aの背面81が見えることを防止できる。
そして、位置決めし、湾曲させた基本磁着パネル1Bを元の平板状に復帰させ、スチール製家具8Aの背面81側へ押圧する。
磁着パネル1は、化粧板2の両側部2a,2bの近傍のみに帯状シート磁石3が設けられているので、上記基本磁着パネル1Bを幅方向にずらしながら容易に位置決めをすることができる。
【0059】
次に、上記2枚目の磁着パネル1と同様にして、3枚目の磁着パネル1(基本磁着パネル1C)を取り付けるが、該基本磁着パネル1Cは、隣接するスチール製家具8A,8Bの境界部分の段差82に、対応して取り付けられる。
具体的には、上記幅狭磁着パネル1’A及び基本磁着パネル1Bを第1のスチール製家具8Aに取り付けると、3枚目の磁着パネル1(基本磁着パネル1C)は、隣接するスチール製家具8A,8Bの段差82に跨るように配置される。該基本磁着パネル1Cは、その幅方向中央部に段差82が対応する。従って、図11(スチール製家具の天面側から見た図)に示すように、基本磁着パネル1Cは、一対の帯状シート磁石3,3の間における化粧板2の裏面が前記段差82(不陸部)に対面する。
【0060】
かかる基本磁着パネル1Cは、化粧板2の曲げ強度が9N/mm〜30N/mmであるため、適度に湾曲する。従って、図11に示すように、化粧板2の裏面に段差82の凸部が当たっても、該化粧板2(基本磁着パネル1C)が適度に湾曲するので、その一対の帯状シート磁石3,3の磁着面31,31が、背面81に対して略平行となる。よって、帯状シート磁石3,3を介して、基本磁着パネル1Cを背面82に確実に取り付けることができる。また、上記化粧板2(基本磁着パネル1C)の表面は、外見上、殆ど識別できないほどのなだらかな曲面を描くので、該化粧板2の表面に段差82に対応した形状が現れず、外見上、平面的な壁体を構築できる。
【0061】
なお、化粧板2の30N/mmを超えていても、段差82が比較的小さい場合には、基本磁着パネル1Cを背面81に確実に取り付けることができる。具体的には、一対の帯状シート磁石3,3は化粧板2の裏面から突出しているので、一対の帯状シート磁石3,3の間における化粧板2の裏面と帯状シート磁石3の磁着面31を含む平面との間には、帯状シート磁石3の厚みに相当する空間が形成されている。従って、上記基本磁着パネル1Cの化粧板2が30N/mmを超えていて、比較的曲がり難い場合であっても、図12に示すように、前記空間内に段差82が収まるため、上記基本磁着パネル1Cは、背面81に対して略平行または極めて緩やかに傾斜する。よって、一対の帯状シート磁石3,3の磁着面31が背面81に確実に接し、基本磁着パネル1Cを背面81に確実に取り付けることができる。
【0062】
次に、同様にして、4枚目の磁着パネル1(基本磁着パネル1D)を取り付けた後、幅狭磁着パネル1’Eを取り付ける。このようにして、2台のスチール製家具8A,8Bの背面81,81に、複数枚の磁着パネル1(本実施形態では、幅狭磁着パネル1’が2枚、基本磁着パネル1が3枚)からなる壁体が構築される(図13参照)。
【0063】
さらに、図13に示すように、上記幅狭磁着パネル1’Eの第1サネ部21に、上述した出隅材6を装着した後、第2のスチール製家具8Bの開放された側面83に基本磁着パネル1Fを取り付け、該基本磁着パネル1Fの第1サネ部21(終端サネ部)に入隅材5を装着する。
さらに、既に取り付けた上記幅狭磁着パネル1’A,1’E及び基本磁着パネル1B,1C,1D,1Fの上端部には、上述した上方見切り材7を取り付ける。
上記のような手順で壁体を構築できる。得られた壁体は、磁着パネル1、隅材5,6及び上方見切り材7によって、施工面の不陸が隠蔽され、外観上好ましい。上記壁体は、隅材5,6及び上方見切り材87が磁着パネル1と一体になっているために、一体感に優れ、隙間からスチール製家具が覗き出ないので、意匠的にも優れている。
なお、上方見切り材7は、幅狭磁着パネル1’Aを取り付けた後、該幅狭磁着パネル1’Aに装着してもよい。この場合、2枚目以降の磁着パネル1を取り付ける際に、該磁着パネル1を湾曲させながら既に装着した上方見切り材7に嵌め込むようにしてもよい。
【0064】
なお、上記各磁着パネル1,1’の下端部に、下方見切り材を装着する場合には、各磁着パネル1,1’を背面81に取り付ける前に、下方見切り材を背面81の下端部に取り付けておいても良いし、或いは、各磁着パネル1,1’を取り付けた後、該磁着パネル1,1’の下方側を湾曲させながら下方見切り材を取り付けても良い。特に、化粧板2の曲げ強度が9N/mm〜30N/mmであれば、磁着パネルを容易に湾曲させることができるので、下方見切り材の取り付けを簡易に行うことが可能となる。
【0065】
また、各磁着パネル1、1’の長さが、スチール製家具8A,8Bの高さよりも短い場合には、図14に示すように、スチール製家具8A,8Bの上方側が露出するので、この部分にも磁着パネル1,1’を取り付けて壁体を構築することが好ましい。
【0066】
この場合、例えば、図14に示すように、既に取り付けた幅狭磁着パネル1’A,1’E及び基本磁着パネル1B,1C,1Dの上端部に、上述したジョイナー4の挿入口45を嵌入する。
【0067】
そして、スチール製家具8A,8Bの上方側を覆う長さとなるように、図15(a)に示すように、幅狭磁着パネル1’を切断する(切断線を一点鎖線で示す)。得られた短い幅狭磁着パネル1’Gは、図15(b)に示すように、化粧板2の下端部(切断縁)において帯状シート磁石3,3の下端縁が一致しており、その化粧板2の上端部2cにおいて帯状シート磁着3,3の上端縁3cが離間している。
【0068】
図16(スチール製家具の側面側から見た図)に示すように、この短い幅狭磁着パネル1’Gの下端部を、ジョイナー4の略L字状の挿入口46に嵌め入れて施工面に磁着する。該短い幅狭磁着パネル1’Gの上端部に上方見切り材7の挿入口75を嵌め込み固定する。
ジョイナー4の挿入口45は、下方に位置する幅狭磁着パネル1’Aの上端部に嵌め入れられるが、該挿入口45を形成する第2片42は、帯状シート磁石3の上端縁3cに接触しないので該帯状シート磁石3の上端縁3cが損傷せず、さらに、該帯状シート磁石3の磁着面31は、確実に背面81に接する。
また、ジョイナー4の挿入口46は、第3片44のみによって形成されているので、切断によって帯状シート磁石の下端縁が化粧板2の下端部に一致している上記短い幅狭磁着パネル1’Gを嵌め入れても、該短い幅狭磁着パネル1’Gに設けられた帯状シート磁石3が損傷したり、或いは、その磁着面31が背面81から離れることを防止できる。
【0069】
また、上方見切り材7に入れられた短い幅狭磁着パネル1’Gの上端部においても同様に、帯状シート磁石3の損傷、磁着面31の離反を防止できる。
なお、図16において、92は、オフィスの天井面を示す。
【0070】
事後、上記と同様にして、他の磁着パネル1(基本磁着パネル1など)を切断した後、該他の磁着パネル1を、ジョイナー4の上端部の略L字状の挿入口46に嵌め入れてから上方見切り材7の挿入口75に湾曲させながら嵌め込んで取り付ける。この工程を繰り返すことにより、スチール製家具8A,8Bの上方側に、壁体を構築することができる。尚、上方見切り材7は、上スチール製家具8A,8Bの上方側に施工する磁着パネル1を、全て取り付けた後に装着しても良い。その場合は、上方見切り材7を壁体の側方からスライドさせて入れる、或いは、既に取り付けられた磁着パネル1を湾曲させて上方見切り材7を嵌め込むと、作業が簡単になる。
【0071】
また、スチール製家具8A,8Bの天面84とオフィスの天井面92の間隔が長い場合には、磁着パネル1の裏面における空間面積が広くなるため、磁着パネル1の上方側の取付けが不安定になる場合もある。
このような場合には、必要に応じて、図16に示すように、スチール製家具8A,8Bの天面84に、支持板100を設置することが好ましい。
支持板100は、例えば、鉄などの磁石に磁着可能なL字状の金属板からなり、支持板100の一面101がスチール製家具8Aの背面81に略面一となるように固定されている。該支持板100の固定方法は特に限定されないが、例えば、支持板100の他面102を、磁石103を介してスチール製家具8A,8Bの天面に固定する方法が簡便である。
このように支持板100を設けることにより、帯状シート磁石3が支持板100の一面101に磁着するので、上記磁着パネル1の上方側がぐらつくことを防止できる。
【0072】
本発明の壁体は、帯状シート磁石3を介して磁着パネル1を施工面に取り付けて構築されるので、その解体も容易に行うことができる。例えば、レイアウト変更をする場合には、磁着パネル1を取り外していき、スチール製家具8A,…の配置を変更した後、磁着パネル1を再び取り付けることにより、再び壁体を構築することができる。
【0073】
なお、上記壁体の構築方法においては、施工面の不陸部として、スチール製家具8A,8Bの境界部分に生じる段差を例示しているが、不陸部は前記段差に限られず、本発明によれば、前記段差以外の不陸部を磁着パネルで良好に隠蔽することもできる。例えば、スチール製家具の背面内に存在する凸部に対面するように磁着パネル1を取り付けることにより、該背面の凸部(施工面の不陸部)を隠蔽できる。
また、本発明の壁体の構築方法では、複数枚の磁着パネルが取り付けられるが、そのうちの少なくとも1枚が不陸部に対面するように取り付けられていればよい。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例を示す。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
化粧板として、厚み9.5mm、幅450mm、長さ250mmの石膏製ボード(吉野石膏(株)製、製品名「タイガーボード」)を用いた。この化粧板の曲げ強度は、9.56N/mmであり、曲げ破断強度は、360Nであった。
ただし、上記曲げ強度及び破断強度は、JIS A 1408に準じた方法によって測定した。
帯状シート磁石として、厚み0.8mm、幅25mmの異方性シート磁石(ニチレイマグネット(株)製、製品名「マグネシート」)を用いた。
【0076】
上記帯状シート磁石の一側縁が化粧板の一方側部から20mmとなるように位置決めして、帯状シート磁石を、化粧板の一方側部の近傍において化粧板の長手方向全体に接着剤を用いて貼り付けた。
同様に、上記帯状シート磁石の一側縁が化粧板の他方側部から20mmとなるように位置決めして、帯状シート磁石を、化粧板の一方側部の近傍において化粧板の長手方向全体に接着剤を用いて貼り付けた。
このようにして図1〜図3に示すような形態の磁着パネルを作製した。
【0077】
(実施例2)
実施例1で用いた化粧板に代えて、厚み6.0mm、幅450mm、長さ250mmの火山性ガラス質製ボード(大建工業(株)製、製品名「ダイライト MK」)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして磁着パネルを作製した。この化粧板の曲げ強度は、11.5N/mmであり、曲げ破断強度は、400Nであった。
【0078】
(実施例3)
実施例1で用いた化粧板に代えて、厚み3.0mm、幅450mm、長さ250mmの炭酸カルシウム製ボード(大建工業(株)製、製品名「ダイライト MS」)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして磁着パネルを作製した。この化粧板の曲げ強度は、19.5N/mmであり、曲げ破断強度は、500Nであった。
【0079】
(実施例4)
実施例1で用いた化粧板に代えて、厚み3.0mm、幅450mm、長さ250mmのパルプ・けい酸カルシウム混入/セメント板((株)エーアンドエーマテリアル製、製品名「ハイブリッドセラ」)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして磁着パネルを作製した。この化粧板の曲げ強度は、18.0N/mmであり、曲げ破断強度は、650Nであった。
【0080】
(実施例5)
実施例1で用いた化粧板に代えて、厚み3.0mm、幅450mm、長さ250mmのJAS合板(市販品)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして磁着パネルを作製した。のボードに代えて、化粧板として下記のボードを用いたこと以外は、実施例1と同様にして磁着パネルを作製した。この化粧板の曲げ強度は、15.3N/mmであり、曲げ破断強度は、450Nであった。
【0081】
(試験例)
上記実施例1〜5の磁着パネルを、一対の帯状シート磁石を介して、段差(高低差3mm)を有する金属面に取り付けた。この際、各磁着パネルの幅方向中央部が段差に対面するように取り付けた。
上記取付け後、各磁着パネルの表面に上記段差に起因する筋形状が生じていないかどうかを目視で観察した。その結果、実施例1の磁着パネルは、若干の筋形状が確認されたが、実施例2〜5の磁着パネルは、平面状に見え、筋形状を確認できなかった。
【0082】
また、各磁着パネルの左右(両側部)の取付状態を確認したところ、実施例1〜5の何れの磁着パネルも、強固に磁着していた。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の磁着パネルの一実施形態を示す正面図(磁着パネルの表面側から視た図)。
【図2】同背面図(磁着パネルの裏面側から視た図)。
【図3】図1のI−I線断面図。
【図4】幅狭磁着パネルの一実施形態を示す正面図。
【図5】幅広磁着パネルの一実施形態を示す正面図。
【図6】(a)は、入隅材の一実施形態を示す一部省略斜視図、(b)は、出隅材の一実施形態を示す一部省略斜視図、(c)は、上方見切り材の一実施形態を示す一部省略斜視図、(d)は、ジョイナーの一実施形態を示す一部省略斜視図。
【図7】壁体を構築する一工程を示し、スチール製家具を配置した状態を示す参考斜視図。
【図8】スチール製家具の施工面に、1枚目の磁着パネルを施工面に取り付けた状態を示す参考斜視図。
【図9】1枚目の磁着パネルの側部を入隅材に嵌入した状態を示す参考上面図。
【図10】施工面の段差に跨るように磁着パネルを取り付けた状態を示す参考斜視図。
【図11】段差に跨って取り付けられた磁着パネルの取付け状態を示す参考上面図。
【図12】他の実施形態の磁着パネル(曲げ強度の大きい磁着パネル)を段差に跨って取り付けた状態を示す参考上面図。
【図13】スチール製家具の背面及び側面に磁着パネルを取り付けた状態を示す参考上面図。
【図14】スチール製家具の背面及び側面に磁着パネルを取り付けた状態を示す参考斜視図。
【図15】(a)は、磁着パネルの切断する際の切断線(一点鎖線)を示す正面図、(b)は、前記切断によって得られた短い磁着パネルを示す背面図。
【図16】施工面に取り付けられた下方の磁着パネルの上方側に、更に、磁着パネルを取り付けた状態を示す参考側面図。
【符号の説明】
【0084】
1、1’、1”…磁着パネル、2…化粧板、2a…化粧板の一方側部、2b…化粧板の他方側部、2c…化粧板の上端部、2d…化粧板の下端部、21…第1サネ部、22…第2サネ部、3…帯状シート磁石、3a…帯状シート磁石の一側縁、3c…帯状シート磁石の上端縁、3d…帯状シート磁石の下端縁、31…磁着面、4…ジョイナー、5…入隅材、6…出隅材、7…見切り材、8A,8B…スチール製家具、81…スチール製家具の背面(施工面)、82…段差(不陸部)、100…支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の化粧板と、前記化粧板の裏面から突出して設けられた一対の帯状シート磁石であって前記化粧板の長手方向に延び且つ化粧板の幅方向に所定間隔を開けて配置された一対の帯状シート磁石と、を備える磁着パネルを複数枚、スチール製家具の施工面に前記帯状シート磁石を介して取り付けていき、
前記磁着パネルの少なくとも1枚を、前記一対の帯状シート磁石の間における化粧板の裏面が前記施工面の不陸部に対面するように取り付けることを特徴とする壁体の構築方法。
【請求項2】
前記不陸部が、隣接するスチール製家具の境界部分に生じる段差である請求項1に記載の壁体の構築方法。
【請求項3】
両側部にサネ部がそれぞれ形成され且つ湾曲可能な長尺状の化粧板と、前記化粧板の裏面から突出して設けられた一対の帯状シート磁石であって前記化粧板の裏面の長手方向に延び且つ化粧板の幅方向に所定間隔を開けて配置された一対の帯状シート磁石と、を備える磁着パネルを複数枚、スチール製家具の施工面に取り付けて壁体を構築する方法であって、
施工面に隅材を取り付け、1枚目の磁着パネルを湾曲させながら前記隅材に前記1枚目の磁着パネルの一方側部のサネ部を嵌め入れて前記1枚目の磁着パネルを施工面に取り付け、2枚目の磁着パネルを湾曲させながら前記1枚目の磁着パネルの他方側部のサネ部に前記2枚目の磁着パネルの一方側部のサネ部を嵌め入れて前記2枚目の磁着パネルを施工面に取り付け、同様にして磁着パネルを施工面に順次取り付けて壁体を形成した後、終端に取り付けた磁着パネルの終端サネ部に隅材を取り付け且つ前記壁体の上端部に見切り材を取り付けることを特徴とする壁体の構築方法。
【請求項4】
前記磁着パネルの少なくとも1枚を、前記一対の帯状シート磁石の間における化粧板の裏面が前記施工面の不陸部に対面するように取り付ける請求項3に記載の壁体の構築方法。
【請求項5】
前記化粧板の曲げ強度が、9N/mm〜30N/mmである請求項1〜4のいずれかに記載の壁体の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−57740(P2009−57740A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225524(P2007−225524)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】