変位センサおよび力検出装置
【課題】力・モーメントを独立検出する装置の薄型化を図る。
【解決手段】変位基板10側に電極E11,E12、固定基板20側に電極E21,E22を設け、両基板をバネ31〜34で接続する。E11,E21は、γ軸を中心とした円形電極で、αβ平面上へ投影すると、E21はE11内に包含される。E12,E22は、α軸方向にオフセット配置された矩形電極で、E12のβ軸方向幅は、E22のβ軸方向幅内に包含される。E11,E21間の容量値C1は、変位Dγの情報のみを示し、E12,E22間の容量値C2は、変位DαおよびDγの合成情報を示すので、両者を用いて、変位Dα,Dγを独立検出できる。より広い基板の複数N箇所にローカル原点Qを設定し、それぞれ所定の向きにαβγローカル座標系を定め、それぞれに同様の電極を配置する。各原点Qについての検出値Dα,Dγを統合して、基板全体に作用した力・モーメントを検出する。
【解決手段】変位基板10側に電極E11,E12、固定基板20側に電極E21,E22を設け、両基板をバネ31〜34で接続する。E11,E21は、γ軸を中心とした円形電極で、αβ平面上へ投影すると、E21はE11内に包含される。E12,E22は、α軸方向にオフセット配置された矩形電極で、E12のβ軸方向幅は、E22のβ軸方向幅内に包含される。E11,E21間の容量値C1は、変位Dγの情報のみを示し、E12,E22間の容量値C2は、変位DαおよびDγの合成情報を示すので、両者を用いて、変位Dα,Dγを独立検出できる。より広い基板の複数N箇所にローカル原点Qを設定し、それぞれ所定の向きにαβγローカル座標系を定め、それぞれに同様の電極を配置する。各原点Qについての検出値Dα,Dγを統合して、基板全体に作用した力・モーメントを検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサおよび力検出装置に関し、特に、力とモーメントとを独立して検出するのに適した力検出装置およびこれに利用するための変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや産業機械の動作制御を行うために、種々のタイプの力検出装置が利用されている。たとえば、ロボットの手や足の運動状態を把握するためには、手首や足首に力検出装置が取り付けられ、手や足に作用している力やモーメントの検出が行われる。このような用途に用いる力検出装置には、小型化およびコストダウンを図るために、できるだけ構造を単純にするとともに、三次元空間内での各座標軸に関する力やモーメントをそれぞれ独立して検出できるようにすることが要求される。
【0003】
一般に利用されている多軸力検出装置は、三次元構造体に作用した力の特定の方向成分を、特定の部分に生じた変位として検出するタイプのものと、特定の部分に生じた機械的な歪みとして検出するタイプのものに分類される。前者の変位検出タイプの代表格は、静電容量素子式の力検出装置であり、一対の電極により容量素子を構成しておき、作用した力によって一方の電極に生じた変位を、容量素子の静電容量値に基づいて検出するものである。たとえば、下記の特許文献1には、この静電容量式の力検出装置が開示されている。一方、後者の歪み検出タイプの代表格は、歪みゲージ式の力検出装置であり、作用した力によって生じた機械的な歪みを、ゲージ抵抗などの電気抵抗の変化として検出するものである。たとえば、下記の特許文献2には、この歪みゲージ式の力検出装置が開示されている。しかしながら、これらの装置は、かなり複雑な三次元構造体を用いる必要があり、小型化およびコストダウンを図ることが困難である。
【0004】
このような問題を解決するために、下記の特許文献3,4には、より単純な構造で、力とモーメントとを独立して検出することができる静電容量素子式の力検出装置が提案されている。これらの装置は、上方基板と下方基板との間を、複数の柱状部材によって接続した単純な構造を有しており、下方基板を固定した状態において、上方基板に外力が作用した場合に、各柱状部材の変位状態を静電容量素子の容量値の変化に基づいて検出することにより、外力として作用した力やモーメントを各座標軸に関して独立して検出することができる。すなわち、三次元空間内にXYZ三次元座標系を定義した場合、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分を、それぞれ独立して検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−215627号公報
【特許文献2】特開昭61−292029号公報
【特許文献3】特開2004−325367号公報
【特許文献4】特開2004−354049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の特許文献3,4に開示されている力検出装置は、上述したとおり、比較的単純な構造により、各座標軸に関する力とモーメントとを独立して検出することが可能な利点を有しているが、各柱状部材の傾斜状態などを検出するために、柱状部材の端部に静電容量素子を配置する必要がある。このため、装置全体が厚くならざるを得ず、薄型化が困難であるという問題がある。現在、実用化されているこれらの力検出装置の場合、厚みは30〜50mm程度であり、商用製品として更に薄型化を図ることは困難である。
【0007】
これに対して、ロボットの手首や足首などの間接部分に設けられる力検出装置には、更なる薄型化が望まれており、実用上は、10mm程度の厚みの製品が好ましいとされている。また、コストダウンを図る上で、構造を更に単純化した製品が望まれている。
【0008】
そこで本発明は、各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントをそれぞれ独立して検出することができ、しかも構造が単純で、薄型化に適した力検出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような力検出装置への利用に適した変位センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の第1の態様は、互いに平行になるように対向して配置された上方基板および下方基板と、上方基板と下方基板とを接続する接続部材と、を有する構造体であって、下方基板を固定した状態において、上方基板に外力を作用させた場合に、上方基板が下方基板に対して変位を生じるように、接続部材の少なくとも一部分が可撓性を有している、そのような構造体について、上記変位を検出する機能をもった変位センサにおいて、
上方基板の下面に形成された第1の上方電極および第2の上方電極と、
下方基板の上面に形成された第1の下方電極および第2の下方電極と、
第1の上方電極と第1の下方電極とによって構成される第1の容量素子の静電容量値C1と、第2の上方電極と第2の下方電極とによって構成される第2の容量素子の静電容量値C2と、に基づいて、所定の検出信号を出力する検出回路と、
を設け、
上方基板内の所定位置に原点Qを定義し、この原点Qを含み、上方基板の基板面に平行な平面上に、原点Qを通り互いに直交するα軸およびβ軸を定義し、原点Qを通りαβ平面に対して直交するγ軸を定義することにより、αβγ三次元直交座標系を定義したときに、
第1の上方電極および第1の下方電極のαβ平面上への正射影像に関して、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極となる一方の電極の正射影像の領域が包含電極となる他方の電極の正射影像の領域内に包含され、かつ、上方基板が下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、および、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、上記包含関係が依然として維持されるように、第1の上方電極および第1の下方電極の配置および形状を設定し、
第2の上方電極および第2の下方電極のαβ平面上への正射影像に関して、両正射影像の重複領域の図形形状が、上方基板が下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに変化し、かつ、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに不変であるように、第2の上方電極および第2の下方電極の配置および形状を設定し、
検出回路が、静電容量値C1の変動量ΔC1を原点Qのγ軸方向の変位Dγを示す検出信号として出力し、静電容量値C2の変動量ΔC2から変位Dγに起因する変動量を除去した値を原点Qのα軸方向の変位Dαを示す検出信号として出力するようにしたものである。
【0010】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る変位センサにおいて、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極のαβ平面上への正射影像が、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、被包含電極の配置および形状を設定したものである。
【0011】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1の態様に係る変位センサにおいて、
第1の上方電極と第1の下方電極とからなる電極対を複数組設け、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極群のαβ平面上への正射影像からなる平面パターンが、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、被包含電極群の配置および形状を設定したものである。
【0012】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1の態様に係る変位センサにおいて、
第2の上方電極が内部に開口部を有する形状をなし、第1の上方電極がこの第2の上方電極の開口部内に配置され、第2の下方電極が内部に開口部を有する形状をなし、第1の下方電極がこの第2の下方電極の開口部内に配置されているようにしたものである。
【0013】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係る変位センサにおいて、
第1の上方電極の外形、第2の上方電極の開口部の形状、第1の下方電極の外形、第2の下方電極の開口部の形状がいずれも円であり、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら各円の中心点がγ軸上に位置するようにしたものである。
【0014】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る変位センサにおいて、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極の外形図形と第2の下方電極の外形図形とについて、
一方の図形を図形F1、他方の図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の図形を図形F3、他方の図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、
図形F3および図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす、
という条件が満たされるようにしたものである。
【0015】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る変位センサにおいて、
第2の上方電極の外形図形および第2の下方電極の外形図形が、α軸に平行な2辺とβ軸に平行な2辺とをもった矩形をなし、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら2つの矩形について、
一方の矩形を矩形F1、他方の矩形を矩形F2としたときに、矩形F1のα軸正方向側の辺が、矩形F2のα軸正方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、矩形F1のα軸負方向側の辺が、矩形F2のα軸負方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の矩形を矩形F3、他方の矩形を矩形F4としたときに、矩形F4のβ軸正方向側の辺が、矩形F3のβ軸正方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、矩形F4のβ軸負方向側の辺が、矩形F3のβ軸負方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置する、
という条件が満たされるようにしたものである。
【0016】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る変位センサにおいて、
第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状が、それぞれ複数の部分図形の集合体によって構成されており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極を構成する部分図形と第2の下方電極を構成する部分図形とについて、
一方の部分図形を図形F1、他方の部分図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の部分図形を図形F3、他方の部分図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、
図形F3および図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす、
という条件が満たされるようにしたものである。
【0017】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る変位センサにおいて、
第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなし、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極を構成する櫛状図形と第2の下方電極を構成する櫛状図形とについて、
一方の櫛状図形を図形F1、他方の櫛状図形を図形F2としたときに、図形F1の根幹部は図形F2の根幹部に比べて、所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、図形F1の各歯状部は根幹部からβ軸正方向側に伸び、図形F2の各歯状部は根幹部からβ軸負方向側に伸び、図形F1の各歯状部のα軸方向に関する配列周期と図形F2の各歯状部のα軸方向に関する配列周期とは位相がずれており、
一方の櫛状図形を図形F3、他方の櫛状図形を図形F4として、αβ平面上へ図形F3および図形F4の正射影像を形成した場合に、図形F3の各歯状部の正射影像は、図形F4の対応する各歯状部の正射影像に部分的に重なり合い、図形F3の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F4の根幹部の正射影像までは届かず、図形F4の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F3の根幹部の正射影像を突き抜け、
図形F4の各歯状部の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の対応する歯状部および根幹部の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす、
という条件が満たされるようにしたものである。
【0018】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第9の態様に係る変位センサにおいて、
平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、この根幹部の中央からβ軸方向に伸びる板状部と、を有する櫛状図形をなす第1の櫛状電極を上方基板の下面もしくは下方基板の上面に形成し、板状部および必要に応じてその付け根に位置する根幹部の一部分を第1の上方電極もしくは第1の下方電極とし、第1の櫛状電極の各歯状部および根幹部を第2の上方電極もしくは第2の下方電極とし、
平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなす第2の櫛状電極と、板状部に対向する位置に配置された島状電極と、を下方基板の上面もしくは上方基板の下面に形成し、島状電極を第1の下方電極もしくは第1の上方基板とし、第2の櫛状電極を第2の下方電極もしくは第2の上方電極とするようにしたものである。
【0019】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第10の態様に係る変位センサを複数N組用いて構成した力検出装置において、
互いに平行になるように対向して配置された上方基板および下方基板と、
上方基板と下方基板とを接続する部材であって、下方基板を固定した状態において、上方基板に外力を作用させた場合に、上方基板が下方基板に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有している接続部材と、
上記複数N組の変位センサと、
この複数N組の変位センサを利用して、上方基板に作用した外力を検出する検出ユニットと、
を設け、
複数N組の変位センサは、それぞれ、上方基板の下面に形成された第1の上方電極および第2の上方電極と、下方基板の上面に形成された第1の下方電極および第2の下方電極と、検出回路と、を有し、
上方基板内の所定のN箇所に、それぞれローカルなαβγ三次元直交座標系の原点Qが定義され、複数N組の変位センサは、上方基板の各ローカル原点Qの位置についてのγ軸方向の変位Dγおよびα軸方向の変位Dαを検出できるように配置され、
上方基板内の所定位置にグローバル原点Oを定義し、このグローバル原点Oを含み、上方基板の基板面に平行な平面上に、グローバル原点Oを通り互いに直交するX軸およびY軸を定義し、グローバル原点Oを通りXY平面に対して直交するZ軸を定義することにより、グローバルなXYZ三次元直交座標系を定義したときに、検出ユニットが、複数N組の変位センサの各検出回路から出力される変位についての検出信号に基づいて、上方基板の原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および上方基板の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のうちの少なくとも1つを検出するようにしたものである。
【0020】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
4組の変位センサを用意し、
第1のセンサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2のセンサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3のセンサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4のセンサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向き、第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、第4のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向くように、この4組のセンサを配置したものである。
【0021】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の外側センサと、を用意し、
第1の内側センサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2の内側センサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3の内側センサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4の内側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の内側センサのα軸正方向がY軸正方向を向き、第2の内側センサのα軸正方向がY軸負方向を向き、第3の内側センサのα軸正方向がX軸負方向を向き、第4の内側センサのα軸正方向がX軸正方向を向くように、この4組の内側センサを配置し、
第1の外側センサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2の外側センサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3の外側センサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4の外側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の外側センサのα軸正方向が第1の内側センサのα軸負方向を向き、第2の外側センサのα軸正方向が第2の内側センサのα軸負方向を向き、第3の外側センサのα軸正方向が第3の内側センサのα軸負方向を向き、第4の外側センサのα軸正方向が第4の内側センサのα軸負方向を向くように、この4組の外側センサを配置したものである。
【0022】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
4組の変位センサを用意し、
第1のセンサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサのローカル原点QがXY座標系の第3象限に位置し、第4のセンサのローカル原点QがXY座標系の第4象限に位置し、
第1のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、第3のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向き、第4のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向くように、この4組のセンサを配置したものである。
【0023】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
3組の変位センサを用意し、
第1のセンサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、この3組のセンサを配置したものである。
【0024】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の外側センサと、を用意し、
第1の外側センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の外側センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の外側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の外側センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2の外側センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3の外側センサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、この3組の外側センサを配置し、
第1の内側センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の内側センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の内側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の内側センサのα軸正方向が第1の外側センサのα軸負方向を向き、第2の内側センサのα軸正方向が第2の外側センサのα軸負方向を向き、第3の内側センサのα軸正方向が第3の外側センサのα軸負方向を向くように、この3組の内側センサを配置したものである。
【0025】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
3組の主センサと、3組の副センサと、を用意し、
第1の主センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の主センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の主センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の主センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2の主センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3の主センサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、この3組の主センサを配置し、
第1の副センサのローカル原点Qが第1の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第2の副センサのローカル原点Qが第2の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第3の副センサのローカル原点Qが第3の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、
第1の副センサのα軸正方向が第1の主センサのα軸負方向を向き、第2の副センサのα軸正方向が第2の主センサのα軸負方向を向き、第3の副センサのα軸正方向が第3の主センサのα軸負方向を向くように、この3組の副センサを配置したものである。
【0026】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第1〜第17の態様に係る変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材を、複数のばね、もしくは弾性変形を生じる複数の柱状部材によって構成したものである。
【0027】
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第1〜第17の態様に係る変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材を、上方基板の周囲に設けられた上方接続用縁部と、下方基板の周囲に設けられた下方接続用縁部と、上方接続用縁部と下方接続用縁部とを接続する複数の柱状部材と、によって構成し、
上方接続用縁部のうち柱状部材の上端が接続された接続部分の近傍と、下方接続用縁部のうち柱状部材の下端が接続された接続部分の近傍とを、ダイアフラムもしくはビーム構造体によって構成したものである。
【0028】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第1〜第17の態様に係る変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材を、上方電極と下方電極との間に配置されたゴム層によって構成したものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る変位センサは、上方基板および下方基板に、形状および配置が所定の幾何学的条件を満足する4種類の電極(第1および第2の上方電極ならびに第1および第2の下方電極)を設けることにより構成される。ここで、これらの電極によって構成される2つの容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、上方基板の原点Qの位置におけるα軸方向の変位Dαおよびγ軸方向の変位Dγを独立して検出することができる。このような機能をもった変位センサは、構造が単純で、薄型化に適した力検出装置を実現するために有用である。
【0030】
一方、本発明に係る力検出装置は、上方基板および下方基板、ならびにこれらを接続する接続部材を備えた物理的構造体の複数N箇所に、上記変位センサをそれぞれ特定の向きに配置することによって構成される。このため、複数N個の変位センサのそれぞれから、各配置場所に定義されたローカルなαβγ三次元直交座標系におけるα軸方向の変位Dαおよびγ軸方向の変位Dγの検出値が得られることになり、これらの検出値に基づいて、グローバルなXYZ三次元直交座標系上で上方基板に作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントをそれぞれ独立して検出することができる。しかも、上記変位センサを利用したため、構造が単純で、薄型化に適した力検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る変位センサおよびその適用対象となる構造体の物理的構造部を示す斜視図ならびに検出処理部を示すブロック図である。
【図2】図1に示す構造体の上方基板10の下面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図3】図1に示す構造体の下方基板20の上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図4】図1に示す構造体および電極の上面図である(上方基板10については透視した状態を示し、バネは図示省略)。
【図5】図1に示す構造体および電極をαγ平面で切断した縦断面図である(バネは図示省略)。
【図6】図1に示す構造体および電極をβγ平面で切断した縦断面図である(バネは図示省略)。
【図7】図5の縦断面図に示されている各構成部分における第1の容量素子C1の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。
【図8】図6の縦断面図に示されている各構成部分における第1の容量素子C1の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。
【図9】図5の縦断面図に示されている各構成部分における第2の容量素子C2の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。
【図10】図6の縦断面図に示されている各構成部分における第2の容量素子C2の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。
【図11】図1に示す変位センサにおける各容量素子C1,C2と検出回路Hとの接続を示す回路図および変位と静電容量値の変動との関係を示すテーブルである。
【図12】図1に示す各基板および第1の容量素子C1を形成する上下電極のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図13】図1に示す各基板および第2の容量素子C2を形成する上下電極のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図14】図1に示す変位センサにおける検出回路Hで行われる演算処理を示すテーブルである。
【図15】図14のテーブルに示されている補正係数kの設定原理を示すグラフである。
【図16】図1に示す変位センサにおける検出回路Hで行われる演算処理によって変位Dγ,Dαが得られる原理を示す図である。
【図17】本発明に係る力検出装置の物理的構造部を示す斜視図(各電極は図示省略)および電気的処理部を示すブロック図である。
【図18】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、上方基板100内に定義された4つの配置点の位置および4組のローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す上面図である。
【図19】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の上方基板100の下面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図20】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の下方基板200の上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図21】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。
【図22】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。
【図23】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図24】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にY軸正方向の力+Fyが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図25】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。
【図26】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図27】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にY軸正まわりのモーメント+Myが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。
【図28】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にY軸正まわりのモーメント+Myが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図29】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にX軸正まわりのモーメント+Mxが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図30】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図31】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの4組の変位センサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図32】図31に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図33】本発明に係る力検出装置の第2の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。
【図34】図33に示す8組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図35】図33に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの8組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図36】図35に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図37】本発明に係る力検出装置の第3の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。
【図38】図37に示す4組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図39】図37に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの4組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図40】図39に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図41】本発明に係る力検出装置の第4の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。
【図42】図41に示す3組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図43】図41に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの3組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図44】図43に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図45】図41に示す力検出装置の3組のセンサの位置をずらした場合に用いられる演算式を示す図である。
【図46】本発明に係る力検出装置の第5の実施形態に用いられる6組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図47】図46に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの6組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図48】図47に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図49】本発明に係る力検出装置の第6の実施形態に用いられる6組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図50】図49に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの6組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図51】図50に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図52】図1に示す構造体および電極のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。バネは図示省略)。
【図53】本発明に係る変位センサの第1の変形例の物理的構造部の上面図である(上方基板40については透視した状態を示し、バネは図示省略)。
【図54】図53に示す変位センサの物理的構造部のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。バネは図示省略)。
【図55】本発明に係る変位センサの第2の変形例の物理的構造部の上面図である(上方基板60については透視した状態を示し、バネは図示省略)。
【図56】図55に示す変位センサの物理的構造部のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。バネは図示省略)。
【図57】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネについては、取付位置のみ表示)。
【図58】本発明に係る力検出装置の第1の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部を切断線Lに沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。
【図59】本発明に係る力検出装置の第2の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図60】図59に示す変形例の接続部材を変更した例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図61】本発明に係る力検出装置の第3の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図62】図61に示す変形例の主要部分のXY平面上への正射影投影図である。
【図63】図61に示す変形例の主要部分の寸法図である(電極の詳細構造は省略)。
【図64】本発明に係る力検出装置の第4の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図65】本発明に係る力検出装置の第5の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図66】本発明に係る力検出装置の第6の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0033】
<<< §1.変位センサの物理的構造 >>>
まず、本発明に係る変位センサの物理的構造を説明する。図1は、本発明に係る変位センサおよびその適用対象となる構造体の物理的構造部を示す斜視図(上段)ならびに検出処理部(下段の検出回路H)を示すブロック図である。
【0034】
図1上段の斜視図には、上方基板10、下方基板20、バネ31〜34によって構成された構造体(本発明に係る変位センサの適用対象となる構造体)が示されている。上方基板10および下方基板20は、互いに平行になるように対向して配置された一対の基板であり、バネ31〜34は、上方基板10と下方基板20とを接続する接続部材としての機能を果たす。ここで、接続部材は、下方基板20を固定した状態において、上方基板10に外力を作用させた場合に、上方基板10が下方基板20に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有している必要がある。バネ31〜34は、このような性質をもった接続部材の典型例であるが、接続部材は必ずしもバネに限定されるものではない。接続部材のバリエーションについては、§7で述べることにする。
【0035】
ここでは、図示のように、この構造体について、上方基板10内の任意の位置に原点Qを定義し、この原点Qを含み、上方基板10の基板面(上面および下面)に平行な平面上に、原点Qを通り互いに直交するα軸およびβ軸を定義し、更に、原点Qを通りαβ平面に対して直交するγ軸を定義することにより、αβγ三次元直交座標系を定義する。図示の例の場合、図の右方向がα軸の正方向、図の奥方向がβ軸の正方向、図の上方向がγ軸の正方向となるように、αβγ三次元直交座標系を定義している。
【0036】
なお、ここで、各座標軸の表記を、一般的なX,Y,Zとせずに、α,β,γとしたのは、後述するように、αβγ三次元直交座標系がローカル原点Qについて定義されたローカル座標系であるため、§3以降で言及するグローバルなXYZ三次元直交座標系と区別するための便宜である。
【0037】
さて、このような構造体では、下方基板20を固定した状態において、上方基板10に対して外力を作用させると、上方基板10は下方基板20に対して変位を生じることになる。ここでは、特に、上方基板10内の原点Qの位置についての変位を考える。上方基板10の変位方向は任意であるが、当該変位は、図に白矢印で示すとおり、αβγ三次元直交座標系におけるα軸方向の変位Dα,β軸方向の変位Dβ,γ軸方向の変位Dγの3成分に分解することができる。
【0038】
本発明に係る変位センサは、この3成分のうち、変位Dαと変位Dγの2成分を検出する機能を有している。変位Dαは、基板面に平行な特定方向についての変位であり、変位Dγは、基板面に垂直な方向についての変位である。上方基板10内の任意の点Qの位置について、このような2成分の変位検出を行うことができる変位センサを複数用いれば、§3以降で詳述するとおり、力とモーメントを独立して検出可能な力検出装置を実現することができる。
【0039】
本発明に係る変位センサの構成要素は、上方基板10の下面に形成された第1の上方電極E11および第2の上方電極E12と、下方基板20の上面に形成された第1の下方電極E21および第2の下方電極E22と、検出回路Hである。第1の上方電極E11と第1の下方電極E21とは対向しており、両者によって第1の容量素子C1が形成され、第2の上方電極E12と第2の下方電極E22とは対向しており、両者によって第2の容量素子C2が形成される。検出回路Hは、第1の容量素子C1の静電容量値と、第2の容量素子C2の静電容量値と、に基づいて、所定の検出信号を出力する機能を果たすが、その詳細な処理動作については、§2で述べることにする。
【0040】
結局、上方基板10,下方基板20,バネ31〜34によって構成される構造体について、上方基板10に生じた変位を検出するための変位センサが設けられていることになり、当該変位センサは、4枚の電極E11,E12,E21,E22と検出回路Hという単純な要素から構成されていることになる。ここで、4枚の電極E11,E12,E21,E22の幾何学的な形状および配置は非常に重要である。
【0041】
図2は、図1に示す上方基板10の下面図であり、図3は、図1に示す下方基板20の上面図である。図2が下面図であるのに対して、図3が上面図であるため、両平面図では、β軸の向きが逆になっている。なお、これら両平面図におけるハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない。
【0042】
図2,図3に示されているとおり、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21は、いずれもγ軸(α軸とβ軸との交点において、紙面に直交する方向に伸びる)を中心とした円形の電極であるが、電極E11の直径の方が電極E21の直径よりも大きくなるように設定されている。一方、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22は、いずれも矩形の電極であり、いずれも内部に円形の開口部を有している。しかも、円形の電極E11は、矩形の電極E12に形成された円形の開口部R1内に配置され、円形の電極E21は、矩形の電極E22に形成された円形の開口部R2内に配置されている。
【0043】
ここで、電極E11,E12の間や、電極E21,E22の間には、空隙が設けられており、各電極は互いに接触せず、独立した状態となっている。また、上方基板10および下方基板20の少なくとも電極形成面は絶縁材料で構成されており、4枚の電極E11,E12,E21,E22は相互に電気的な絶縁状態におかれている。前述したとおり、電極E11,E21は上下に対向する電極対を構成し、第1の容量素子C1として機能し、電極E12,E22も上下に対向する電極対を構成し、第2の容量素子C2として機能する。
【0044】
図4は、図1に示す構造体および電極の上面図であるが、便宜上、上方基板10については透視した状態を示す。したがって、図において、上方電極E11,E12は、実線で描かれており、下方電極E21,E22は、上方電極によって隠れた部分が破線で描かれている。なお、バネ31〜34は図示を省略している。
【0045】
一方、図5は、図1に示す構造体および電極をαγ平面で切断した縦断面図であり、図6は、図1に示す構造体および電極をβγ平面で切断した縦断面図である。いずれも、バネ31〜34は図示を省略している。なお、図1の斜視図に描かれた構造体と、図2〜図6の平面図もしくは断面図に描かれた構造体とでは、各部の寸法に厳密な整合性はない。これは、説明の便宜上、図1の斜視図が、各部の寸法を無視して、全体をデフォルメして描いた図になっているためである。具体的な実施形態における各部の好ましい寸法値は、後に§7で例示する。
【0046】
図5および図6を見れば、電極E11,E21が上下で対向して第1の容量素子C1を形成し、電極E12,E22が上下で対向して第2の容量素子C2を形成している様子が理解できよう。ただ、電極E11,E21は相互に形状や大きさが異なる電極であるから、第1の容量素子C1の形成に寄与するのは、両電極のうちの平面的に重なり合う一部の領域だけである。同様に、電極E12,E22も相互に形状や大きさが異なる電極であるから、第2の容量素子C2の形成に寄与するのは、両電極のうちの平面的に重なり合う一部の領域だけである。
【0047】
図7は、図5の縦断面図に示されている各構成部分における第1の容量素子C1の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図であり、図8は、図6の縦断面図に示されている各構成部分における第1の容量素子C1の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。図4の平面図において、円形の電極E21は円形の電極E11の領域内に包含されているため、結局、上下で対向する領域は、円形の電極E21の全領域に相当する部分ということになる。
【0048】
すなわち、図7および図8に示すとおり、電極E11の直径をφ11とし、電極E21の直径をφ21とすれば、φ11>φ21であるから、第1の容量素子C1は、実質的に、直径φ21をもった一対の円盤状電極によって形成された容量素子ということになる。図示のとおり、電極E11,E21には、端子T11,T21への配線が施され、検出回路Hによって両端子T11,T21間の静電容量値が測定されることになる。こうして測定された静電容量値は、結局、電極E11,E21のうち、図のハッチング部分についての静電容量値ということになる。
【0049】
同様に、図9は、図5の縦断面図に示されている各構成部分における第2の容量素子C2の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図であり、図10は、図6の縦断面図に示されている各構成部分における第2の容量素子C2の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。図4の平面図に示すとおり、矩形の電極E12,E22は、それぞれ円形の開口部R1,R2を有しており、しかも大きさや形状が異なり、配置もずれているため、平面的に重なり合う部分のみが、第2の容量素子C2の形成に寄与する領域ということになる。
【0050】
図9において、電極E12,E22は、α軸方向に関して重複区間ξ1において平面的に重なり合っているが、開口部が除外されるため、結局、図のハッチング部分のみが容量素子の形成に寄与することになる。同様に、図10において、電極E12,E22は、β軸方向に関して重複区間ξ2において平面的に重なり合っているが、開口部が除外されるため、結局、図のハッチング部分のみが容量素子の形成に寄与することになる。図示のとおり、電極E12,E22には、端子T12,T22への配線が施され、検出回路Hによって両端子T12,T22間の静電容量値が測定されることになるが、こうして測定された静電容量値は、結局、電極E12,E22のうち、図のハッチング部分についての静電容量値ということになる。
【0051】
<<< §2.変位センサの検出処理 >>>
続いて、ここでは、§1で述べた変位センサによる変位検出処理を説明する。図11は、図1に示す変位センサにおける各容量素子C1,C2と検出回路Hとの接続を示す回路図(図の左側)および変位と静電容量値の変動との関係を示すテーブル(図の右側)である。
【0052】
既に述べたとおり、第1の容量素子C1は、第1の上方電極E11と第1の下方電極E21との有効領域(平面的に重なりを生じている領域)によって構成される容量素子であり、第2の容量素子C2は、第2の上方電極E12と第2の下方電極E22との有効領域(平面的に重なりを生じている領域)によって構成される容量素子である。
【0053】
各電極E11〜E22への配線がなされている端子T11〜T22は、図示のとおり、検出回路Hへ接続される。検出回路Hは、両端子T11,T21間の静電容量値を第1の容量素子C1の静電容量値として検出し、両端子T12,T22間の静電容量値を第2の容量素子C2の静電容量値として検出する機能を有している。ここでは、第1の容量素子C1の静電容量値を同じ符号「C1」を用いて表し、第2の容量素子C2の静電容量値を同じ符号「C2」を用いて表すことにする。なお、静電容量値C1,C2を電気的に検出する電子回路は、一般に広く利用されている公知の回路であるため、ここでは、その具体的な回路構成についての説明は省略する。
【0054】
図11の右側に示すテーブルは、図1に示す構造体において、下方基板20を固定した状態で上方基板10の原点Qの位置に各座標軸方向の変位+Dα,+Dβ,+Dγが生じたとき、検出回路Hによって検出される静電容量値C1,C2がどのように変動するかを示している。すなわち、変動欄の「0」は、静電容量値に何ら変動が生じないことを示しており、変動欄の「−ΔC1」や「−ΔC2」は、静電容量値に変動が生じることを示している。
【0055】
なお、この図11の右側に示すテーブルでは(後述する図14,図16に示すテーブルも同様)、各座標軸に沿った変位方向が座標軸の正方向なのか負方向なのかを明確にするため、変位量を示す変数Dα,Dβ,Dγは絶対値のみを示し、その頭に「+」や「−」の符号を付して変位方向を示すことにする。たとえば、テーブルの変位欄に記載されている変位+Dα,+Dβ,+Dγは、いずれも各座標軸の正方向への変位を示している。同様に、静電容量値に生じた変動が、容量値が増加する変動なのか減少する変動なのかを明確にするため、変動量を示す変数ΔC1,ΔC2は絶対値のみを示し、その頭に「+」や「−」の符号を付して増加/減少の別を示すことにする。たとえば、テーブルの変動欄に記載されている「−ΔC1」や「−ΔC2」は、静電容量値が減少することを示している。以下、この図11の右側のテーブルに示すような結果が得られる理由を個別に説明しよう。
【0056】
まず、静電容量値C1の変動について考えてみる。図12は、図1に示す各基板10,20および第1の容量素子C1を形成する上下電極E11,E21のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。§1で述べたとおり、電極E11,E21は、γ軸を中心とした同心円状の電極であり、電極E11の直径φ11は、電極E21の直径φ21よりも大きい。したがって、上方基板10が下方基板20に対して変位を生じていない状態では、図示のとおり、被包含電極となる電極E21の正射影像の領域が、包含電極となる電極E11の正射影像の領域内に包含された状態となっている。
【0057】
次に、上方基板10が下方基板20に対して、各座標軸方向に変位を生じた場合を考えよう。たとえば、上方基板10がα軸正方向への変位+Dαを生じると、第1の上方電極E11が、α軸正方向(図12の右方向)へ移動することになる。この場合、変位量が、所定の許容範囲内であれば、上記包含関係は依然として維持されることになる。すなわち、図12において、電極E11が若干右へ動いたとしても、電極E21を包含する状態は維持される。この許容範囲は、図示の例の場合、(φ11−φ21)/2ということになる。
【0058】
上方基板10がα軸負方向への変位−Dαを生じた場合も同様であり、変位量が所定の許容範囲内であれば、上記包含関係は依然として維持される。このような包含関係が維持されている限り、第1の容量素子C1を形成する電極の有効領域面積は一定である。すなわち、電極E11,E21の平面的に重なりを生じている領域(図12にハッチングを施した領域)の面積に変化はない。これは、上方基板10が下方基板20に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、静電容量値C1に変動が生じないことを意味する。図12を参照すれば、上方基板10が下方基板20に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときも、静電容量値C1に変動が生じないことは、容易に理解できよう。
【0059】
これに対して、上方基板10が下方基板20に対してγ軸の正または負方向に変位を生じた場合は、その変位量にかかわらず、静電容量値C1に変動が生じることになる。すなわち、図7,図8に示すとおり、上方基板10のγ軸方向の変位は、両電極E11,E21の電極間距離を変化させることになるので、変位+Dγ(図の上方向への変位)が生じた場合には、電極間距離が広がり静電容量値C1は減少し、変位−Dγ(図の下方向への変位)が生じた場合には、電極間距離が狭まり静電容量値C1は増加する。ここで、静電容量値C1の変動量は、変位量に比例する。
【0060】
図11に示す「C1の変動テーブル」に示されている結果は、このような原理に基づくものである。すなわち、α軸もしくはβ軸方向について、変位+Dα,+Dβが生じても、変位量が所定の許容範囲内であれば、変動欄に「0」と記載されているとおり、静電容量値C1は変動しない(逆方向の変位−Dα,−Dβが生じた場合も同じ結果である)。一方、γ軸について、変位+Dγが生じた場合は、変動欄に「−ΔC1(γ)」と記載されているとおり、静電容量値C1は減少する。ここで、「ΔC1(γ)」は、前述したように、変位+Dγが生じたときの静電容量値C1の変動量の絶対値を示しており、先頭のマイナス符号は「静電容量値の減少」を示している。なお、逆方向の変位−Dγが生じた場合は、「+ΔC1(γ)」になり、静電容量値は増加する。
【0061】
続いて、静電容量値C2の変動について考えてみる。図13は、図1に示す各基板10,20および第2の容量素子C2を形成する上下電極E12,E22のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。図示のとおり、電極E12,E22は、α軸方向に関して重複区間ξ1の部分において、β軸方向に関して重複区間ξ2の部分において、互いに平面的に重なり合っているが、円形の開口部R1が除外されるため、結局、図のハッチング部分のみが容量素子の形成に寄与することになる。
【0062】
ここで、電極E12,E22は、いずれも外形が矩形の図形であり、α軸方向に関しては、電極E12のα軸正方向側の辺が、電極E22のα軸正方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、電極E12のα軸負方向側の辺が、電極E22のα軸負方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置している。要するに、電極E12,E22は、α軸に関してオフセットを生じるようにずれて配置されている。
【0063】
また、β軸方向に関しては、電極E22のβ軸正方向側の辺が、電極E12のβ軸正方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、電極E22のβ軸負方向側の辺が、電極E12のβ軸負方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置している。要するに、電極E22のβ軸方向の幅が、電極E12のβ軸方向の幅よりも大きくなるような寸法設定がなされており、しかも、β軸方向に関しては、電極E12が電極E22に包含されるような配置がなされている。
【0064】
次に、上方基板10が下方基板20に対して、各座標軸方向に変位を生じた場合を考えよう。たとえば、上方基板10がα軸正方向への変位+Dαを生じると、第2の上方電極E12が、α軸正方向(図13の右方向)へ移動することになる。そうすると、α軸方向の重複区間ξ1の長さが減少し、第2の容量素子C2を形成する電極の有効領域面積、すなわち、電極E12,E22の平面的に重なりを生じている領域(図13にハッチングを施した領域)の面積は減少する。これは、上方基板10が下方基板20に対してα軸の正方向に変位を生じたとき、静電容量値C2の値が減少することを意味する。
【0065】
逆に、上方基板10が下方基板20に対してα軸の負方向への変位−Dαを生じたときは、第2の容量素子C2を形成する電極の有効領域面積は増加するので、静電容量値C2の値は増加する。結局、α軸の正もしくは負方向への変位が生じると、静電容量値C2の値が増減することになる。これは、電極E12,E22が、α軸に関してオフセットを生じるようにずれて配置されているためである。なお、このようなα軸の正もしくは負方向への変位量が、所定の許容範囲内(図4において、電極E12の円形開口部R1の輪郭が、電極E22の円形開口部R2の輪郭に接するまでの範囲内)であれば、変位量と有効領域面積の変動量とは比例し、静電容量値C2の変動量は変位量に比例したものになる。したがって、変位量が当該許容範囲内である限り、静電容量値C2の変動量は、変位量に比例する。
【0066】
一方、上方基板10がβ軸正方向への変位+Dβを生じると、第2の上方電極E12が、β軸正方向(図13の上方向)へ移動することになり、上方基板10がβ軸負方向への変位−Dβを生じると、第2の上方電極E12が、β軸負方向(図13の下方向)へ移動することになる。ただ、この場合の変位量が、所定の許容範囲内であれば、具体的には、電極E12のβ軸正方向側の辺が、電極E22のβ軸正方向側の辺を越えず、電極E12のβ軸負方向側の辺が、電極E22のβ軸負方向側の辺を越えない範囲内であり、かつ、電極E12の円形開口部R1の輪郭が、電極E22の円形開口部R2の輪郭に接するまでの範囲内であれば、β軸方向に関して、電極E12が電極E22に包含されるという関係が維持されることになり、図13にハッチングを施して示した第2の容量素子C2を形成する電極の有効領域面積は一定になる。これは、上方基板10が下方基板20に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、静電容量値C2に変動が生じないことを意味する。
【0067】
これに対して、上方基板10が下方基板20に対してγ軸の正または負方向に変位を生じた場合は、その変位量にかかわらず、静電容量値C2に変動が生じることになる。すなわち、図9,図10に示すとおり、上方基板10のγ軸方向の変位は、両電極E12,E22の電極間距離を変化させることになるので、変位+Dγ(図の上方向への変位)が生じた場合には、電極間距離が広がり静電容量値C2は減少し、変位−Dγ(図の下方向への変位)が生じた場合には、電極間距離が狭まり静電容量値C2は増加する。ここで、静電容量値C2の変動量は、変位量に比例する。
【0068】
図11に示す「C2の変動テーブル」に示されている結果は、このような原理に基づくものである。すなわち、β軸方向について、変位+Dβが生じても、変位量が所定の許容範囲内であれば、変動欄に「0」と記載されているとおり、静電容量値C2は変動しない(逆方向の変位−Dβが生じた場合も同じ結果である)。
【0069】
一方、α軸について、変位+Dαが生じた場合は、変動欄に「−ΔC2(α)」と記載されているとおり、静電容量値C2は減少する。ここで、「ΔC2(α)」は、前述したように、変位+Dαが生じたときの静電容量値C2の変動量の絶対値を示しており、先頭のマイナス符号は「静電容量値の減少」を示している。なお、逆方向の変位−Dαが生じた場合は、「+ΔC2(α)」になり、静電容量値は増加する。同様に、γ軸について、変位+Dγが生じた場合は、変動欄に「−ΔC2(γ)」と記載されているとおり、静電容量値C2は減少する。ここで、「ΔC2(γ)」は、前述したように、変位+Dγが生じたときの静電容量値C2の変動量の絶対値を示しており、先頭のマイナス符号は「静電容量値の減少」を示している。なお、逆方向の変位−Dγが生じた場合は、「+ΔC2(γ)」になり、静電容量値は増加する。
【0070】
さて、図11に示す変動テーブルから導出される第1の事項は、「静電容量値C1は、γ軸方向の変位が生じた場合にのみ変動を生じる」という点であり、「静電容量値C1の変動は、γ軸方向の変位にのみ起因する」という点である。これは、「静電容量値C1の変動量は、γ軸方向の変位量を示す」ことに他ならない。そして、第2の事項は、「静電容量値C2は、α軸方向の変位が生じた場合もしくはγ軸方向の変位が生じた場合に変動を生じる」という点であり、「静電容量値C2の変動は、α軸方向の変位およびγ軸方法の変位の双方に起因する」という点である。別言すれば、静電容量値C2の変動分は、α軸方向の変位に起因する変動分とγ軸方向の変位に起因する変動分とを合成したものになる。そこで、この静電容量値C2の変動分から、γ軸方向の変位に起因する変動分を除去すれば、α軸方向の変位に起因する変動分のみを得ることができる。検出回路Hは、このような考え方に基づいて、γ軸方向の変位とα軸方向の変位とを、静電容量値C1,C2の変動量から求める処理を行う。
【0071】
具体的には、図14の上段に示すように、2つの検出値Ca,Cbを定義する。ここで、検出値Caは、「Ca=−C1」なる式で定義される値であり、後述するように、γ軸方向の変位Dγを示す検出値になる。一方、検出値Cbは、「Cb=−C2+k・C1」なる式で定義される値であり、後述するように、α軸方向の変位Dαを示す検出値になる。このような2つの検出値Ca,Cbを定義すると、図14の下段に示すようなテーブルが得られる。このテーブルは、変位+Dα,+Dβ,+Dγが生じた場合の、検出値Ca,Cbの変動を示すものであり、図11に示すC1,C2の変動テーブルと、上述した検出値Ca,Cbの定義式とに基づいて導出されるテーブルである。
【0072】
すなわち、検出値Caは、静電容量値C1の値の符号を逆転させたものであるから、図14に示すCaの変動欄は、図11に示すC1の変動欄の符号を逆転することにより得られる。検出値Caを、「Ca=−C1」なる式で定義するのは、図1に示すような方向にα軸,β軸,γ軸を定義すると、図11の「C1の変動テーブル」に示されているように、正方向の変位+Dγに対して、−ΔC1(γ)なる負の変動量をとる静電容量値C1の減少が生じ、γ軸方向に関する変位量と静電容量値C1の変動量との間に符号の逆転現象が生じるためである。検出値Caを、静電容量値C1の値の符号を逆転させたものとして定義することにより、検出値Caの変動量とγ軸方向に関する変位量との符号を一致させることができ、検出値Caをγ軸方向に関する変位Dγを示す値として用いることができるようになる。もちろん、図1において図の下方をγ軸の正方向と定義すれば、Ca=C1なる定義を行うことができる。
【0073】
一方、検出値Cbは、「Cb=−C2+k・C1」なる式で定義される値であるから、図14に示すCbの変動欄は、図11に示すC1,C2の変動欄の内容に、上記式による演算を施すことにより得られる。すなわち、変位+Dαが生じた場合には、C1の変動は0であるから、「Cb=−C2」なる式により、Cbの変動欄は「+ΔC2(α)」となる。これにより、α軸方向に関する変位量と静電容量値C2の変動量との間に生じる符号の逆転現象の問題を解消することができる。α軸方向に関する変位Dαが生じた場合、検出値Cbが、静電容量値C2の値の符号を逆転させたものとして定義されるので、検出値Cbの変動量とα軸方向に関する変位量との符号を一致させることができる。
【0074】
また、変位+Dγが生じた場合のCbの変動量は、図14のテーブルに示すとおり、「+ΔC2(γ)−k・ΔC1(γ)」となるが、補正係数kを所定値に設定しておけば、「ΔC2(γ)=k・ΔC1(γ)」とすることができ、Cbの変動量=0にすることができる。その理由を、もう少し詳しく説明しよう。図11の「C1の変動テーブル」に示されているとおり、「ΔC1(γ)」は、変位+Dγが生じた場合の静電容量値C1の変動量の絶対値である。一方、図11の「C2の変動テーブル」に示されているとおり、「ΔC2(γ)」は、変位+Dγが生じた場合の静電容量値C2の変動量の絶対値である。いずれも変位+Dγに起因して生じる変動量の絶対値であるが、同一の変位+Dγが生じた場合でも、一般的には、「ΔC2(γ)=ΔC1(γ)」にはならない。これは、第1の容量素子C1と第2の容量素子C2とでは、電極の有効領域面積が異なるため、同じ変位量Dγに起因して生じる静電容量値の変動量(すなわち、変位量の検出感度)が異なるためである。
【0075】
補正係数kは、このような検出感度の相違を補正するための係数である。図15は、図14のテーブルに示されている補正係数kの設定原理を示すグラフである。このグラフの横軸は変位Dγを示し、縦軸は容量素子C1,C2の静電容量値の変動ΔC1,ΔC2を示している。また、グラフG1は、静電容量値C1の変動ΔC1(γ)を示し、グラフG2は、静電容量値C2の変動ΔC2(γ)を示している。
【0076】
なお、このグラフに示されている変数Dγ,ΔC1,ΔC2は、これまでのテーブルに示された変数のような絶対値ではなく、符号を含めた値を示している。したがって、各変数Dγ,ΔC1,ΔC2は、負〜正の範囲内の値をとる。上述したとおり、変位Dγが正の場合(γ軸の正方向への変位が生じた場合)、容量値は減少するので、変動ΔC1,ΔC2は負の値をとる。したがって、グラフG1,G2の傾きはいずれも負となる。ただ、変位Dγの絶対値が所定の許容範囲内にあれば、いずれのグラフも線形性を有しており、グラフG1,G2は傾斜が異なるだけである。
【0077】
そこで、変位Dγの値が任意の値DγiのときのグラフG1,G2の値をそれぞれg1,g2として、k=g2/g1となるように補正係数kを設定する。グラフG1,G2の傾きをそれぞれk1,k2とすれば、k=k2/k1=g2/g1ということになる。傾きk1は第1の容量素子C1による変位量Dγの検出感度に相当し、傾きk2は第2の容量素子C2による変位量Dγの検出感度に相当する。したがって、補正係数kは、両者の感度を補正する係数ということになる。図15に示すグラフの傾きk1,k2もしくはグラフの値g1,g2は、各電極の形状、寸法、配置などの幾何学的条件から演算によって求めることもできるし、実際の変位センサを用いた実測によって求めることもできる。したがって、実際の変位センサの物理的構造が定まれば、補正係数kを決定することが可能である。
【0078】
そこで、k=k2/k1=g2/g1となるような値に補正係数kを設定しておけば、「ΔC2(γ)=k・ΔC1(γ)」とすることができ、図14のテーブルにおいて、変位+Dγが生じたときのCbの変動欄「+ΔC2(γ)−k・ΔC1(γ)」の値を0にすることができる。したがって、図14のテーブルは、図16(a) に示すテーブルに書き直すことができる。なお、各座標軸の負方向への変位−Dα,−Dβ,−Dγが生じた場合は、図16(b) に示すテーブルのような結果が得られる。
【0079】
結局、変数Ca,Cb,Dα,Dγを、符号を含めた値をもつ変数として取り扱えば、図16(c) に示すように、検出値Caの変動は、変位Dγのみを示す値となり、検出値Cbの変動は、変位Dαのみを示す値となり、各変動量の符号は、変位方向(各座標軸の正方向か負方向か)を示すものになる。
【0080】
したがって、図11に示す検出回路Hでは、まず、静電容量値C1,C2を電気信号として測定し、これらの値C1,C2を用いて、「Ca=−C1」なる式および「Cb=−C2+k・C1」なる式に基づく演算を行い、検出値Ca,Cbを求める検出処理を実行すればよい。そうすれば、得られた検出値Caの変動量は変位Dγを示し、得られた検出値Cbの変動量は変位Dαを示すものになる。
【0081】
なお、上記各演算は、単純な加減乗算であり、一般的なアナログ演算回路によって実行することも可能であるし(この場合、各静電容量値は電圧値に変換された後に演算される)、デジタル演算回路を用いて実行することも可能である(この場合、各静電容量値は電圧値に変換された後、更にデジタルデータに変換されてから演算される)。このような演算回路は、広く利用されている公知の回路であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0082】
このように、図1に示す構造体に、本発明に係る変位センサ(電極E11,E21からなる容量素子C1と、電極E12,E22からなる容量素子C2と、検出回路H)を設けておけば、検出回路Hにより、静電容量値C1の変動量ΔC1を原点Qのγ軸方向の変位Dγを示す検出信号として出力し、静電容量値C2の変動量ΔC2から変位Dγに起因する変動量を除去した値を原点Qのα軸方向の変位Dαを示す検出信号として出力することができる。かくして、上方基板10の原点Qの部分について、下方基板20に対して生じたα軸方向の変位Dαとγ軸方向の変位Dγとを独立して検出することができる。
【0083】
<<< §3.力検出装置の物理的構造 >>>
続いて、ここでは、本発明に係る力検出装置の物理的構造を説明する。図17は、本発明に係る力検出装置の物理的構造部を示す斜視図(上段)および電気的処理部を示すブロック図(下段)である。なお、実際には、上段に斜視図として示されている物理的構造部には、複数の電極が含まれるが、当該斜視図においては、図が繁雑になるのを避けるため、これら電極の図示は省略されている(下段のブロック図内には、電極E11〜E22が回路図として示されている)。
【0084】
図17上段の斜視図に示すとおり、この力検出装置の物理的構造部は、上方基板100、下方基板200、バネ310〜340によって構成された構造体と、図示されていない複数の電極と、によって構成される。ここで、上方基板100、下方基板200、バネ310〜340によって構成された構造体は、実質的に、図1に示す上方基板10、下方基板20、バネ31〜34によって構成された構造体と同じものである。
【0085】
すなわち、上方基板100および下方基板200は、互いに平行になるように対向して配置された基板であり、バネ310〜340は、この上方基板100と下方基板200とを接続する接続部材として機能する。本発明に係る力検出装置において、接続部材は、下方基板200を固定した状態において、上方基板100に外力を作用させた場合に、上方基板100が下方基板200に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有している部材であればよい。バネ310〜340は、このような性質をもった接続部材の典型例であるが、接続部材は必ずしもバネに限定されるものではなく、§7で述べるように、様々な部材を接続部材として用いることが可能である。
【0086】
なお、図1に示した上方基板10および下方基板20が矩形の基板であるのに対して、図17に示す上方基板100および下方基板200が円形の基板になっているのは、単に、変位センサの取り付け対象となる構造体(図1)と、力検出装置の一部を構成する構造体(図17)とを区別して説明するための便宜であり、各基板10,20,100,200の形状は任意でかまわない。
【0087】
本発明に係る力検出装置は、図17上段に示されている構造体に、図17下段に示されている複数N組の変位センサS(1)〜S(N)と、これら変位センサを利用して、上方基板100に作用した外力を検出する検出ユニットUと、を付加することにより構成される。各変位センサS(1)〜S(N)は、既に§1,§2で述べた本発明に係る変位センサであり、電極E11,E21からなる容量素子C1と、電極E12,E22からなる容量素子C2と、検出回路Hとによって構成される。
【0088】
この複数N組の変位センサS(1)〜S(N)としては、それぞれ電極形状や電極面積の異なるセンサを用いることもできるが、実用上は、共通の構造をもった同一のセンサを用いるのが好ましい。ただ、各変位センサSの配置は、それぞれ固有の位置および固有の向きになるようにする。
【0089】
本発明に係る力検出装置は、上方基板100に作用した力の所定の座標軸方向成分および上方基板100に作用したモーメントの所定の座標軸まわり成分を独立して検出する機能を有する。そこで、ここでは、上方基板100内の所定位置に原点Oを定義し、XYZ三次元直交座標系を定義する。図示の例では、上方基板100の中心点(重心点)に原点Oを定義し、この原点Oを含み、上方基板100の基板面(上面および下面)に平行な平面上に、原点Oを通り互いに直交するX軸およびY軸を定義しており、図の右方向をX軸正方向、図の奥方向をY軸正方向、図の上方向をZ軸正方向としている。原点Oは、必ずしも上方基板100の中心点(重心点)に定義する必要はないが、実用上は、上方基板100および下方基板200の中心をZ軸が通るような位置に定義するのが好ましい。これは、後述する実施形態のように、Z軸を中心として、その周囲に複数N組の変位センサSを配置する形態を採る場合に、各電極を配置しやすくするための配慮である。
【0090】
ここでは、このXYZ三次元直交座標系をグローバル座標系と呼び、§1,§2で説明したαβγ三次元直交座標系をローカル座標系と呼ぶことにする。αβγローカル座標系は、個々の変位センサSごとに定義される座標系であり、複数N組の変位センサS(1)〜S(N)を設けた場合、複数N組のαβγローカル座標系が定義されることになる。ここでは、個々のαβγローカル座標系の原点Qの位置を、変位センサの配置点Pと呼ぶことにする。
【0091】
図17上段に示す配置点P(1)は、第1番目の変位センサS(1)の配置点であり、この配置点P(1)を原点Qとして、第1番目のαβγローカル座標系が定義される。また、図17上段に示す配置点P(N)は、第N番目の変位センサS(N)の配置点であり、この配置点P(N)を原点Qとして、第N番目のαβγローカル座標系が定義される。図17には示されていないが、もちろん、第2番目〜第(N−1)番目の変位センサの配置点も所定位置に定義され、それぞれの配置点を原点Qとして、それぞれのαβγローカル座標系が定義される。
【0092】
なお、N組の配置点P(1)〜P(N)は、いずれもXY平面上に位置し、各ローカル座標系のαβ平面が、グローバル座標系のXY平面に一致するような設定がなされるものとする。したがって、各ローカル座標系のα軸およびβ軸は、XY平面に含まれ、上方基板100の基板面に平行な方向を向いた軸になる。また、各ローカル座標系のγ軸は、Z軸に平行になり、上方基板100の基板面に垂直な方向を向いた軸になる。
【0093】
図1に示すとおり、1組の変位センサには、第1の上方電極E11,第2の上方電極E12,第1の下方電極E21,第2の下方電極E22という4枚の電極が含まれており、これら各電極は、ローカル原点Qに対して、図1に示すような相対位置に形成される。したがって、図17に示す力検出装置の場合、N組の変位センサS(1)〜S(N)を構成する合計(4×N)枚の電極が、各配置点P(1)〜P(N)に対して、それぞれ所定の相対位置をとる場所に形成されることになる。
【0094】
たとえば、第1の変位センサS(1)は、図示する第1の配置点P(1)に配置されるセンサであるから、この第1の配置点P(1)をローカル原点Qとする所定の相対位置に、第1の変位センサS(1)を構成する4枚の電極が形成されることになる。具体的には、上方基板100の下面の配置点P(1)近傍には、第1の上方電極E11および第2の上方電極E12が形成され、その直下に位置する下方基板200の上面部分には、第1の下方電極E21および第2の下方電極E22が形成されることになる。そして、この第1の変位センサS(1)は、上方基板100の配置点P(1)の位置についてのα軸方向への変位Dαと、γ軸方向への変位Dγとを検出値として出力する機能を果たす。
【0095】
同様に、第2の変位センサS(2)〜第Nの変位センサS(N)は、それぞれ上方基板100の配置点P(2)〜P(N)の各位置についてのα軸方向への変位Dαと、γ軸方向への変位Dγとを検出値として出力する機能を果たす。検出ユニットUは、こうしてN組の変位センサから収集したN箇所の配置点についての変位Dα,Dγに基づいて、上方基板100のグローバル原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および上方基板100のグローバル原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のうち、所望の成分を独立して検出する処理を行う。
【0096】
なお、本願では、「力」という文言は、特定の座標軸方向の力を意味する場合と、モーメント成分を含めた集合的な力を意味する場合とを、適宜使い分けることにする。たとえば、力Fx,Fy,Fzと言った場合は、モーメントではない各座標軸方向の力成分を意味しているが、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzと言った場合は、各座標軸方向の力成分と各座標軸まわりのモーメント成分とを含む集合的な力を意味することになる。
【0097】
本発明に係る力検出装置の基本原理は、図17上段に示されている構造体において、上方基板100内に複数N個の配置点P(1)〜P(N)を定義し、各配置点におけるα軸方向(基板面に平行な所定方向)への変位Dαと、γ軸方向(基板面に垂直な方向)への変位Dγと、を変位センサSを用いて検出し、これらの検出結果に基づいて、下方基板200を固定した状態において上方基板100に作用した所定の座標軸方向の力成分や、所定の座標軸まわりのモーメント成分を検出する点にある。したがって、定義する配置点の数N(ローカル原点Qの数)、各配置点の位置、各配置点に配置する変位センサの向き(α軸の向き)といった条件は、どの力成分、あるいはどのモーメント成分を検出するか、によって異なってくる。
【0098】
ここでは、典型的な第1の実施形態として、N=4に設定して、X軸の正領域上、X軸の負領域上、Y軸の正領域上、Y軸の負領域上にそれぞれ配置点を定義し、合計4組の変位センサを利用して、各配置点における変位を検出し、上方基板100の原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および上方基板の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のすべてを検出可能な力検出装置を以下に例示する。
【0099】
図18は、この第1の実施形態に係る力検出装置において、上方基板100内に定義された4つの配置点の位置および4組のローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す上面図である。図示のとおり、この実施形態の場合、X軸の正領域上に配置点P(X+)、X軸の負領域上に配置点P(X−)、Y軸の正領域上に配置点P(Y+)、Y軸の負領域上に配置点P(Y−)がそれぞれ定義されている(括弧書きで示すX+,X−,Y+,Y−なる記号は、それぞれX軸の正領域,負領域,Y軸の正領域,負領域を示すものである)。ここで、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)は、ローカル原点Oから等距離の位置に定義されている。
【0100】
また、各配置点の位置をそれぞれ原点Qとして、ローカルなαβγ三次元座標系が図示の向きに定義されている。上述したとおり、α軸およびβ軸はXY平面に含まれる軸であり、γ軸は紙面に垂直な軸になる。β軸はα軸をXY平面内で反時計回りに90°回転して得られる軸であり、γ軸は常にZ軸に平行な軸であるから、結局、個々のαβγ三次元座標系は、配置点Pとα軸の方向を決めてやれば、一意に定まることになる。
【0101】
各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)に対応する所定位置には、それぞれ変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)を構成するための電極が形成される(図18では、電極は示されていない)。図19は、この第1の実施形態に係る力検出装置の上方基板100の下面図であり、図20は、下方基板200の上面図である。図19は下面図、図20は上面図であるため、図におけるY軸の向きは逆転している。いずれの図も、ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない。
【0102】
上方基板100側に形成された電極E11,E12は、図2に示す電極E11,E12に対応するものであり、下方基板200側に形成された電極E21,E22は、図3に示す電極E21,E22に対応するものである。
【0103】
なお、図19および図20では、各電極を示す符号の後ろに、括弧書きでX+,X−,Y+,Y−なる記号を付記することにより、4組の変位センサの各電極を相互に区別して示している。たとえば、図19において、電極E11(X+),E12(X+)は、X軸の正領域に定義された配置点P(X+)に配置された変位センサS(X+)を構成する上方電極であり、図20において、電極E21(X+),E22(X+)は、X軸の正領域に定義された配置点P(X+)に配置された変位センサS(X+)を構成する下方電極である。変位センサS(X+)は、これら4枚の電極によって構成される容量素子C1,C2の静電容量値の変動に基づいて、配置点P(X+)の位置のα軸方向への変位Dαおよびγ軸方向への変位Dγを検出する機能を果たす。その基本原理は、既に§1,§2で説明したとおりである。
【0104】
図21は、この第1の実施形態に係る力検出装置の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)を構成する各電極が、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)の近傍に配置されている状態が明瞭に示されている。もちろん、個々の電極の向きは、図18に示されている4組のローカルな座標系の座標軸の向きに応じたものになっている。
【0105】
結局、図18において、変位センサS(X+)は、上方基板100の配置点P(X+)の近傍部分のY軸方向変位(Dα)およびZ軸方向変位(Dγ)を検出し、変位センサS(X−)は、上方基板100の配置点P(X−)の近傍部分のY軸方向変位(Dα)およびZ軸方向変位(Dγ)を検出することができる。同様に、変位センサS(Y+)は、上方基板100の配置点P(Y+)の近傍部分のX軸方向変位(Dα)およびZ軸方向変位(Dγ)を検出し、変位センサS(Y−)は、上方基板100の配置点P(Y−)の近傍部分のY軸方向変位(Dα)およびZ軸方向変位(Dγ)を検出することができる。検出ユニットUは、これらの検出結果に基づいて、所定の座標軸に関する力成分もしくはモーメント成分を検出する処理を行う。この検出処理の具体的な内容については、§4で詳述する。
【0106】
<<< §4.力検出装置の検出処理 >>>
ここでは、§3で説明した第1の実施形態に係る力検出装置、すなわち、図18に示す4箇所の配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)にそれぞれ変位センサを配置した実施形態について、6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzをそれぞれ独立して求める検出処理を説明する。
【0107】
まず、図17に示す構造体について、上方基板100にX軸方向の力Fxが作用した場合の変位状態を考える。図22は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、X軸正方向の力+Fxが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。図示のとおり、上方基板100はX軸正方向に平行移動し、変位+Dxを生じることになる(破線は、上方基板100の変位前の位置を示す)。
【0108】
なお、実際には、図22において、上方基板100の左端を図の右方向へ押すなどの方法で力+Fxを加えると、バネ310〜340の弾性力が働くため、上方基板100のバネの取り付け箇所に対しては、Z軸方向に関する力も作用することになる。したがって、そのような方法で力+Fxを加えた場合、上方基板100はX軸正方向へ厳密な平行移動をするわけではなく、Z軸方向への変位を伴うことになる。このように、上方基板100に対して、純然たるX軸正方向の力+Fxのみを作用させることは、実用上困難であるが、ここではこの装置の検出原理を説明するため、図示のとおり、上方基板100が右方向に平行移動した仮想状態を考える。この場合、上方基板100と下方基板200とは、平行状態を維持することになる。
【0109】
図23は、図22に示すように、上方基板100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの4組の変位センサについての矩形電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である(便宜上、円形電極E11,E21の図示は省略する。以下同様)。この図には、上方基板100の位置は示されていないが、上方基板100は、下方基板200に対して、所定の変位量だけ右方向にずれている。上方基板100が右側へ変位したため、各上方電極E12も右側へ変位している。図の破線は、各上方電極E12の変位前の位置を示している(図示の便宜上、図23における変位量は、図22に示す変位量よりも小さい)。もちろん、下方基板200は固定されているため、各下方電極E22の位置は変わらない。
【0110】
一方、図24は、上方基板100にY軸正方向の力+Fyが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。この図にも、上方基板100の位置は示されていないが、上方基板100は、下方基板200に対して、所定の変位量だけ図の上方向にずれている。上方基板100が図の上方へ変位したため、各上方電極E12も図の上方へ変位している。図の破線は、各上方電極E12の変位前の位置を示している。もちろん、下方基板200は固定されているため、各下方電極E22の位置は変わらない。
【0111】
次に、上方基板100にZ軸方向の力Fzが作用した場合の変位状態を考える。図25は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。図示のとおり、上方基板100はZ軸正方向に平行移動し、変位+Dzを生じることになる(破線は、上方基板100の変位前の位置を示す)。
【0112】
図26は、図25に示すように、上方基板100にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。変位がZ軸方向に生じているため、XY平面上への投影図では、電極の変位は全く見られない。ただ、上方基板100は、下方基板200に対して、変位+Dzを生じているので、上方基板100側に形成された各上方電極E11,E12も、変位+Dzを生じている。そこで、図26では、各変位センサの電極位置に「+Dz」なる記号を付してある。これは、容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が広がったことを意味する。
【0113】
続いて、モーメントが作用した場合を考えよう。図27は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、Y軸まわりのモーメントMyが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。ここでは、所定の座標軸まわりのモーメントの向きを、「当該座標軸の正方向に右ネジを進めるための回転方向」と定義することにする。図27の場合、Y軸の正方向は紙面に対して垂直奥方向であるから、図示のとおり、時計まわりの方向がY軸まわりのモーメントMyの正方向ということになる。したがって、時計まわりのモーメントが+My,反時計まわりのモーメントが−Myとなる。
【0114】
さて、図示のとおり、上方基板100の原点Oの位置に、Y軸まわりのモーメント+Myが作用すると、上方基板100の右半分の部分(X軸正領域の部分)は図の下方へと移動して変位−Dzを生じるが、左半分の部分(X軸負領域の部分)は図の上方へと移動して変位+Dzを生じることになる。なお、変位量の絶対値は上方基板100上の位置によって異なり、図27における左右両端へゆくほど、変位量の絶対値は大きくなる。
【0115】
図28は、図27に示すように、上方基板100の原点Oの位置に、Y軸まわりのモーメントが+Myが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。各部の変位は、基本的にZ軸方向のみであるため、XY平面上への投影図では、電極の変位は見られない(厳密に言えば、各電極の姿勢はXY平面に平行な状態から若干傾斜した状態へと遷移するため、XY平面上への投影図では、電極形状は若干変化する)。ただ、上方基板100の各部は、下方基板200に対して、変位±Dzを生じることになる。上述したとおり、図の右半分は変位−Dzを生じ、図の左半分は変位+Dzを生じ、左右両端へゆくほど、変位量の絶対値は大きくなる。
【0116】
そこで、図28では、図の右端に位置する変位センサS(X+)の電極位置には「−Dz」なる記号を付してある。これは、変位センサS(X+)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が狭まったことを意味する。逆に、図の左端に位置する変位センサS(X−)の電極位置には「+Dz」なる記号を付してある。これは、変位センサS(X−)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が広がったことを意味する。なお、Y軸上に位置する変位センサS(Y+),S(Y−)の電極位置には「0」なる記号を付してある。これは、変位センサS(Y+),S(Y−)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離は、部分的には狭まり、部分的には広がるため、トータルでの変化は無視しうることを意味する。
【0117】
厳密に言えば、円形電極E11,E21については、図19,図20に示すようにY軸対称性があるため、半円部分について電極間距離が狭まり、別な半円部分について電極間距離が広がれば、トータルでの静電容量値の変化は0になると言えるが、矩形電極E12,E22については、図19,図20に示すように完全なY軸対称性は保たれていないので、トータルでの静電容量値の変化は0になるとは言えない。しかしながら、実用上、極めて高い測定精度を必要としない限り、トータルでの静電容量値の変化は0になるとして取り扱っても問題はない。
【0118】
同様に、図29は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、X軸まわりのモーメントMxが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。この場合も、各部の変位は、基本的にZ軸方向のみであるため、XY平面上への投影図では、電極の変位は見られない。ただ、上方基板100の各部は、下方基板200に対して、変位±Dzを生じることになり、図の上半分は変位+Dzを生じ、図の下半分は変位−Dzを生じ、図の上下両端へゆくほど、変位量の絶対値は大きくなる。
【0119】
そこで、この図29では、図の上端に位置する変位センサS(Y+)の電極位置には「+Dz」なる記号を付してある。これは、変位センサS(Y+)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が広がったことを意味する。逆に、図の下端に位置する変位センサS(Y−)の電極位置には「−Dz」なる記号を付してある。これは、変位センサS(Y−)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が狭まったことを意味する。また、X軸上に位置する変位センサS(X+),S(X−)の電極位置には「0」なる記号を付してあるが、これは、変位センサS(X+),S(X−)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離は、部分的には狭まり、部分的には広がるため、トータルでの変化は無視しうることを意味する。
【0120】
最後に、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合を考えよう。図30は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、Z軸まわりのモーメント+Mzが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。この例の場合、上方基板100および下方基板200はいずれも円盤状の基板であるため、投影図上では上方基板100の変位は認識できないが、上方基板100がZ軸を回転中心として、反時計まわりに回転を生じるため、各上方電極E12も反時計まわりに回転変位を生じている。図の破線は、各上方電極E12の変位前の位置を示している。もちろん、下方基板200は固定されているため、各下方電極E22の位置は変わらない。
【0121】
以上、上方基板100に対して、+Fx,+Fy,+Fzなる力成分および+Mx,+My,+Mzなるモーメント成分が単独で作用した場合の変位状態を説明した。続いて、これら6通りの変位状態が生じた場合に、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)から出力される検出値Ca,Cbがどのように変動するかを考えてみる。
【0122】
図31は、これまで述べてきた第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)の各検出値Ca,Cbの変動を示すテーブルである。ここで、検出値Ca,Cbは、§2で説明したとおり、図14の上段の式に示す演算によって求められる値であり、検出値Caの変動量は変位Dγを示し、検出値Cbの変動量は変位Dαを示している。なお、ここでは、各検出値Ca,Cbの記号に、(X+),(X−),(Y+),(Y−)なる符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしている。
【0123】
図31のテーブルの各欄には、+Fx,+Fy,+Fzなる力成分および+Mx,+My,+Mzなるモーメント成分が単独で作用した場合に、各検出値Ca,Cbの変動態様が符号で示されている。「0」と記された欄は、変動が生じないこと(もしくは、無視しうること)を示し、「+」と記された欄は、正の変動が生じること(正方向の変位DγもしくはDαが生じていること)を示し、「−」と記された欄は、負の変動が生じること(負方向の変位DγもしくはDαが生じていること)を示す。
【0124】
ここでは、まず、このテーブルにおける「Fx」の列に記された結果が得られる理由を簡単に説明しよう。「Fx」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Fxなる力成分(X軸正方向を向いた力成分)のみが作用した場合の結果を示している。力成分+Fxのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図22および図23に示すとおりである。この場合、上方基板100はX軸正方向に平行移動するので、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)は、Y軸やZ軸方向には変位せず、X軸方向にのみ変位する。
【0125】
したがって、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)によって検出される各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「Fx」の列の4つの検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0126】
一方、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)はX軸方向に変位するので、α軸がX軸に平行となるようなローカル座標系が定義された配置点についての変位センサからは、変位Dαが検出値Cbの変動として検出される。
【0127】
具体的には、図18に示すように、配置点P(Y−)に定義されたローカル座標系のα軸がX軸に平行となっており、向きも等しいので、変位センサS(Y−)から出力される検出値Cb(Y−)の変動は「+」になる。すなわち、検出値Cb(Y−)には正の変動量が生じる。また、図18に示すように、配置点P(Y+)に定義されたローカル座標系のα軸がX軸に平行となっており、向きは逆なので、変位センサS(Y+)から出力される検出値Cb(Y+)の変動は「−」になる。すなわち、検出値Cb(Y+)には負の変動量が生じる
【0128】
これに対して、図18に示すように、配置点P(X+)に定義されたローカル座標系のα軸や配置点P(X−)に定義されたローカル座標系のα軸は、Y軸に平行となっているため、変位センサS(X+)や変位センサS(X−)からは、変位Dαの検出は行われない。すなわち、変位センサS(X+)や変位センサS(X−)から出力される検出値Cb(X+)や検出値Cb(X−)の変動は「0」になる。
【0129】
図31のテーブルにおける「Fy」の列に記された結果が得られる理由も全く同様である。「Fy」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Fyなる力成分(Y軸正方向を向いた力成分)のみが作用した場合の結果を示している。力成分+Fyのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図24に示すとおりである。この場合、上方基板100はY軸正方向に平行移動するので、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)は、X軸やZ軸方向には変位せず、Y軸方向にのみ変位する。
【0130】
したがって、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)によって検出される各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「Fy」の列の4つの検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0131】
一方、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)はY軸方向に変位するので、α軸がY軸に平行となるようなローカル座標系が定義された配置点についての変位センサからは、変位Dαが検出値Cbの変動として検出される。
【0132】
具体的には、図18に示すように、配置点P(X+)に定義されたローカル座標系のα軸がY軸に平行となっており、向きも等しいので、変位センサS(X+)から出力される検出値Cb(X+)の変動は「+」になる。すなわち、検出値Cb(X+)には正の変動量が生じる。また、図18に示すように、配置点P(X−)に定義されたローカル座標系のα軸がY軸に平行となっており、向きは逆なので、変位センサS(X−)から出力される検出値Cb(X−)の変動は「−」になる。すなわち、検出値Cb(X−)には負の変動量が生じる
【0133】
これに対して、図18に示すように、配置点P(Y+)に定義されたローカル座標系のα軸や配置点P(Y−)に定義されたローカル座標系のα軸は、X軸に平行となっているため、変位センサS(Y+)や変位センサS(Y−)からは、変位Dαの検出は行われない。すなわち、変位センサS(Y+)や変位センサS(Y−)から出力される検出値Cb(Y+)や検出値Cb(Y−)の変動は「0」になる。
【0134】
続いて、図31のテーブルにおける「Fz」の列に記された結果が得られる理由を説明する。「Fz」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Fzなる力成分(Z軸正方向を向いた力成分)のみが作用した場合の結果を示している。力成分+Fzのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図25や図26に示すとおりである。
【0135】
この場合、上方基板100はZ軸正方向に平行移動するので、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)は、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの正の変動として出力する。図31のテーブルにおける「Fz」の列の4つの検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「+」となっているのはこのためである。α軸方向の変位Dαは検出されないので、検出値Cbの変動は0である。図31のテーブルにおける「Fz」の列の4つの検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0136】
次に、図31のテーブルにおける「Mx」の列に記された結果が得られる理由を説明する。「Mx」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Mxなるモーメント成分(X軸まわりのモーメント成分)のみが作用した場合の結果を示している。モーメント成分+Mxのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図29に示すとおりである。
【0137】
この場合、変位センサS(Y+)の配置点P(Y+)はZ軸正方向に変位するので、変位センサS(Y+)は、配置点P(Y+)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの正の変動として出力する。図31のテーブルにおける「Mx」の列の検出値Ca(Y+)の欄が「+」となっているのはこのためである。また、変位センサS(Y−)の配置点P(Y−)はZ軸負方向に変位するので、変位センサS(Y−)は、配置点P(Y−)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの負の変動として出力する。図31のテーブルにおける「Mx」の列の検出値Ca(Y−)の欄が「−」となっているのはこのためである。
【0138】
一方、変位センサS(X+)の配置点P(X+)や変位センサS(X−)の配置点P(X−)のZ軸方向への変位は0である(電極のZ軸方向への変位は無視できる)。このため、変位センサS(X+)や変位センサS(X−)によって検出される各配置点P(X+),P(X−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「Mx」の列の検出値Ca(X+),Ca(X−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。また、α軸方向の変位Dαは検出されないので、検出値Cbの変動は0である。図31のテーブルにおける「Mx」の列の4つの検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0139】
図31のテーブルにおける「My」の列に記された結果が得られる理由も全く同様である。「My」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Myなるモーメント成分(Y軸まわりのモーメント成分)のみが作用した場合の結果を示している。モーメント成分+Myのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図27および図28に示すとおりである。
【0140】
この場合、変位センサS(X+)の配置点P(X+)はZ軸負方向に変位するので、変位センサS(X+)は、配置点P(X+)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの負の変動として出力する。図31のテーブルにおける「My」の列の検出値Ca(X+)の欄が「−」となっているのはこのためである。また、変位センサS(X−)の配置点P(X−)はZ軸正方向に変位するので、変位センサS(X−)は、配置点P(X−)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの正の変動として出力する。図31のテーブルにおける「My」の列の検出値Ca(X−)の欄が「+」となっているのはこのためである。
【0141】
一方、変位センサS(Y+)の配置点P(Y+)や変位センサS(Y−)の配置点P(Y−)のZ軸方向への変位は0である(電極のZ軸方向への変位は無視できる)。このため、変位センサS(Y+)や変位センサS(Y−)によって検出される各配置点P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「My」の列の検出値Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。また、α軸方向の変位Dαは検出されないので、検出値Cbの変動は0である。図31のテーブルにおける「My」の列の4つの検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0142】
最後に、図31のテーブルにおける「Mz」の列に記された結果が得られる理由を説明する。「Mz」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Mzなるモーメント成分(Z軸まわりのモーメント成分)のみが作用した場合の結果を示している。モーメント成分+Mzのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図30に示すとおりである。この場合、上方基板100は下方基板200に対して平行な状態を維持したまま図の反時計まわりに回転変位する。
【0143】
したがって、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)によって検出される各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「Mz」の列の4つの検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0144】
一方、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)は、図30において反時計まわりに回転変位し、当該変位は、図18に示すとおり、α軸方向への変位に相当するので、いずれの変位センサからも、変位Dαが検出値Cbの正の変動として出力される。図31のテーブルにおける「Mz」の列の4つの検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の各欄が「+」となっているのはこのためである。
【0145】
この図31に示す各検出値の変動テーブルは、上述したとおり、+Fx,+Fy,+Fzなる正の力成分および+Mx,+My,+Mzなる正のモーメント成分が単独で作用した場合に、各検出値Ca,Cbの変動態様を示すものであるが、負の力成分−Fx,−Fy,−Fzや負のモーメント成分−Mx,−My,−Mzが作用した場合の変動態様は、符号「+」と「−」を逆転させたものになる。
【0146】
また、この変動テーブルでは、変動量の符号(検出値の増減)が「+」もしくは「−」により示されているだけであるが、4組の変位センサとしては、同一の構造(電極の形状および大きさ)を有するものが用いられており、かつ、図21に示すように、そのXY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となっているため、互いに対称位置に配置された変位センサについて生じる変動も対称性をもったものになる。たとえば、「Fx」の列のCb(Y+)の欄は「−」,Cb(Y−)の欄は「+」となっており、一方が減少すると他方は増加する関係が示されているが、変位センサS(Y+),S(Y−)は原点Oに関して点対称となるように配置された同一の構造を有するセンサであるから、変動量の絶対値は等しくなる。
【0147】
このような点を考慮すれば、上方基板100の原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分をFx、Y軸方向成分をFy、Z軸方向成分をFzとし、上方基板100の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分をMx、Y軸まわり成分をMy、Z軸まわり成分をMzとすれば、これら各6成分の値は、図32に示す演算式で与えられることがわかる。
【0148】
たとえば、Fxについては、「Fx=Cb(Y−)−Cb(Y+)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Fx」の列において「+」記号が示されている検出値Cb(Y−)と、「−」記号が示されている検出値Cb(Y+)との差を求める演算を示している。同様に、Fyについては、「Fy=Cb(X+)−Cb(X−)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Fy」の列において「+」記号が示されている検出値Cb(X+)と、「−」記号が示されている検出値Cb(X−)との差を求める演算を示している。また、Fzについては、「Fz=Ca(X+)+Ca(X−)+Ca(Y+)+Ca(Y−)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Fz」の列において「+」記号が示されている検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の和を求める演算を示している。
【0149】
一方、Mxについては、「Mx=Ca(Y+)−Ca(Y−)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Mx」の列において「+」記号が示されている検出値Ca(Y+)と、「−」記号が示されている検出値Ca(Y−)との差を求める演算を示している。同様に、Myについては、「My=Ca(X−)−Ca(X+)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「My」の列において「+」記号が示されている検出値Ca(X−)と、「−」記号が示されている検出値Ca(X+)との差を求める演算を示している。また、Mzについては、「Mz=Cb(X+)+Cb(X−)+Cb(Y+)+Cb(Y−)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Mz」の列において「+」記号が示されている検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の和を求める演算を示している。
【0150】
なお、作用した力やモーメントの大きさが、予め設定した所定の測定可能レンジ内のものであれば、上方基板100の変位を、バネ310〜340などの接続部材の可撓性部分による弾性変形がフックの法則を満足する範囲内に抑えることができ、作用した力やモーメントの大きさと、そのときに生じる変位量との間には線形関係が得られる。更に、変位量が所定の許容範囲内であれば、生じた変位量と容量素子を構成する有効電極面積の変化との関係、もしくは、生じた変位量と容量素子を構成する電極間距離の変化との関係が、線形関係になるので、各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量も、作用した力やモーメントの大きさに比例するものとなる。したがって、所定の測定可能レンジ内の力やモーメントの測定に用いる限り、図32に示す演算式によって得られる値は、線形な測定値を示すものになる。
【0151】
結局、上述した第1の実施形態に係る力検出装置の場合、図17に示す検出ユニットUは、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)から与えられる各検出値に基づいて、図32の演算式に基づく演算を行い、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分の検出値を求め、これを電気信号として出力する処理を行うことになる。もちろん、これら6成分のすべてが必要ではない場合には、所望の成分のみについて演算を行い、これを出力すればよい。本発明に係る力検出装置は、これら6成分のうちの少なくとも1つを検出する機能をもっていればよい。
【0152】
また、6成分の一部のみが必要な場合は、設ける変位センサの数も減らすことが可能である。たとえば、FyとMyの2成分のみの検出を行う力検出装置の場合、変位センサS(X+)とS(X−)と用意すれば、必要な演算が可能になるので、変位センサS(Y+)とS(Y−)とを省略することができる。
【0153】
なお、原理的には、4組の変位センサとしては、必ずしも同一の構造(電極の形状および大きさ)を有するものを用いる必要はなく、また、必ずしもXY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となるように配置する必要はない。ただ、各センサの電極形状および大きさがそれぞれ異なり、配置の対称性も確保されていないと、個々のセンサごとに検出感度が異なることになるので、図32に示す演算式をそのまま適用することはできず、個々のセンサの検出値にそれぞれ固有の感度補正係数を乗じる必要が生じる。したがって、実用上は、各変位センサとしては、同一構造(電極の形状および大きさ)を有するものを用い、XY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となるような配置を行うのが好ましい。
【0154】
<<< §5.力検出装置の別な実施形態 >>>
<5−1:本発明に係る力検出装置の特徴>
さて、§4では、本発明に係る力検出装置の第1の実施形態について、必要な変位センサの配置や、これら変位センサの出力に基づく検出処理の内容を説明した。具体的には、この第1の実施形態では、図21の投影図に示すように、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)を配置し、これら4組の変位センサによって得られる各検出値Ca,Cbの値が、図31のテーブルに示すような変動を生じることを利用して、図32に示すような演算を行うことにより、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を検出することになる。もちろん、このような変位センサの固有の配置や具体的な検出処理は、本発明の一実施形態であり、本発明に係る力検出装置は、この他にも様々な実施形態で実施可能である。
【0155】
本発明に係る力検出装置の基本的な特徴は、前述したとおり、図17上段に示すような基本的な構造体に、複数N組の変位センサS(1)〜S(N)と、検出ユニットUとを付加した点にある。ここで、複数N組の変位センサは、§1,§2で説明したとおり、上方基板100の下面に形成された第1の上方電極E11および第2の上方電極E12と、下方基板200の上面に形成された第1の下方電極E21および第2の下方電極E22と、検出回路Hと、によって構成される。そして、上方基板100内の所定のN箇所には、それぞれローカルなαβγ三次元直交座標系の原点Qが定義され、複数N組の変位センサは、この上方基板100の各ローカル原点Qの位置についてのγ軸方向の変位Dγおよびα軸方向の変位Dαを検出できるように配置される。
【0156】
また、図17上段に示すように、上方基板100内の所定位置にグローバル原点Oを定義し、このグローバル原点Oを含み、上方基板100の基板面に平行な平面上に、グローバル原点Oを通り互いに直交するX軸およびY軸を定義し、グローバル原点Oを通りXY平面に対して直交するZ軸を定義し、グローバルなXYZ三次元直交座標系を定義した場合に、検出ユニットUは、複数N組の変位センサS(1)〜S(N)の各検出回路Hから出力される変位についての検出信号に基づいて、上方基板100の原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および上方基板100の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のうちの少なくとも1つを検出する機能を果たす。
【0157】
ここで、§4で説明した第1の実施形態は、N=4として、4組の変位センサを用意し、図18に示すように、第1のセンサS(X+)のローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2のセンサS(X−)のローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3のセンサS(Y+)のローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4のセンサS(Y−)のローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、第1のセンサS(X+)のα軸正方向がY軸正方向を向き、第2のセンサS(X−)のα軸正方向がY軸負方向を向き、第3のセンサS(Y+)のα軸正方向がX軸負方向を向き、第4のセンサS(Y−)のα軸正方向がX軸正方向を向くように、4組のセンサを配置した形態、ということになる。
【0158】
ここでは、変位センサの配置を変えたいくつかの別な実施形態を述べる。これらの各実施形態と、§4で述べた第1の実施形態との相違は、変位センサSの配置と検出ユニットUで行われる検出処理(演算処理)の内容だけであり、上方基板100,下方基板200,接続部材(バネ)310〜340の構成は全く同じである。もちろん、この§5で述べる各実施形態も、本発明に係る力検出装置の実用的な形態を例示するものであり、本発明は、ここに述べた形態以外にも、様々な形態で実施可能である。
【0159】
なお、本願明細書では、「上方基板」や「下方基板」というように、「上下」という文言を用いて装置の説明を行っているが、ここで「上下」の概念を用いているのは、装置を図1や図17に示すように配置した状態で、その構造を説明するための便宜であり、もちろん実用上は、必ずしも「上方基板」が「下方基板」の上方にくるように設置する必要はない。また、本願明細書では、「下方基板」を固定した状態で「上方基板」に作用した力を検出する例を説明しているが、「一方を固定したときの他方の変位」という概念は、あくまでも相対的なものであり、本発明に係る力検出装置が、「上方基板」を固定した状態で「下方基板」に作用した力を検出できることは自明の理である。
【0160】
<5−2:第2の実施形態>
図33は、本発明に係る力検出装置の第2の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図であり(バネは図示省略)、図34は、図33に示す8組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。図示のとおり、この第2の実施形態では、8組の変位センサが配置される。これら8組の変位センサのうちの4組は内側に配置されており、ここでは内側センサと呼ぶ。残りの4組は外側に配置されており、ここでは外側センサと呼ぶ。8箇所の配置点に定義されたαβγ三次元座標系のα軸およびβ軸の向きは、図34に示すとおり、個々の配置点ごとに異なるが、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図34の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0161】
4組の内側センサS(X1+),S(X1−),S(Y1+),S(Y1−)は、それぞれX軸の正領域上、負領域上、Y軸の正領域上、負領域上に定義された配置点P(X1+),P(X1−),P(Y1+),P(Y1−)がローカル原点Qとなる位置に配置され、その向きは、図34に示す各αβγローカル座標系に応じた向きになっている。これら4組の内側センサの向きは、図21に示す第1の実施形態における4組の変位センサの向きと一致する。別言すれば、図33に示す4組の内側センサS(X1+),S(X1−),S(Y1+),S(Y1−)は、それぞれ図21に示す変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)を原点Oに若干近づけて配置したものと言うことができる。
【0162】
一方、4組の外側センサS(X2+),S(X2−),S(Y2+),S(Y2−)は、それぞれX軸の正領域上、負領域上、Y軸の正領域上、負領域上に定義された配置点P(X2+),P(X2−),P(Y2+),P(Y2−)がローカル原点Qとなる位置に配置され、その向きは、図34に示す各αβγローカル座標系に応じた向きになっている。これら4組の外側センサの向きは、それぞれ隣接配置された内側センサの向きと逆になっている。たとえば、図34において、外側センサの配置点P(X2+)のα軸正方向と、これに隣接する内側センサの配置点P(X1+)のα軸正方向とは逆になっている。そのため、図33における内側センサS(X1+)の向きと外側センサS(X2+)の向きは逆になっている。その他の隣接する内側センサ/外側センサの対についても、同様に向きが逆になっている。
【0163】
なお、4組の内側センサの配置点P(X1+),P(X1−),P(Y1+),P(Y1−)は、原点Oから等距離(第1の距離)にあり、4組の外側センサの配置点P(X2+),P(X2−),P(Y2+),P(Y2−)も、原点Oから等距離(第1の距離よりも大きい第2の距離)にある。
【0164】
結局、この第2の実施形態に係る力検出装置は、ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の外側センサと、を有していることになる。
【0165】
ここで、第1の内側センサS(X1+)のローカル原点QはX軸の正領域上に位置し、第2の内側センサS(X1−)のローカル原点QはX軸の負領域上に位置し、第3の内側センサS(Y1+)のローカル原点QはY軸の正領域上に位置し、第4の内側センサS(Y1−)のローカル原点QはY軸の負領域上に位置している。そして、第1の内側センサS(X1+)のα軸正方向がY軸正方向を向き、第2の内側センサS(X1−)のα軸正方向がY軸負方向を向き、第3の内側センサS(Y1+)のα軸正方向がX軸負方向を向き、第4の内側センサS(Y1−)のα軸正方向がX軸正方向を向くように、これら4組の内側センサが配置されている。
【0166】
一方、第1の外側センサS(X2+)のローカル原点QはX軸の正領域上に位置し、第2の外側センサS(X2−)のローカル原点QはX軸の負領域上に位置し、第3の外側センサS(Y2+)のローカル原点QはY軸の正領域上に位置し、第4の外側センサS(Y2−)のローカル原点QはY軸の負領域上に位置している。そして、第1の外側センサS(X2+)のα軸正方向が第1の内側センサS(X1+)のα軸負方向を向き、第2の外側センサS(X2−)のα軸正方向が第2の内側センサS(X1−)のα軸負方向を向き、第3の外側センサS(Y2+)のα軸正方向が第3の内側センサS(Y1+)のα軸負方向を向き、第4の外側センサS(Y2−)のα軸正方向が第4の内側センサS(Y1−)のα軸負方向を向くように、これら4組の外側センサが配置されている。
【0167】
この第2の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図35のテーブルに示すようになる。このテーブルでも、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(X1+),(X2+)等の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてあり、「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。
【0168】
この図35のテーブルにおいて、4組の内側センサS(X1+),S(X1−),S(Y1+),S(Y1−)の変動は、図31のテーブルに示す4組のセンサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)の変動と全く同じである。これは、前述したとおり、図33に示す4組の内側センサは、それぞれ図21に示す4組の変位センサを原点Oに若干近づけて配置したセンサであるためである。一方、4組の外側センサS(X2+),S(X2−),S(Y2+),S(Y2−)の変動は、「Fz」の列を除いて、それぞれ対応する4組の内側センサS(X1+),S(X1−),S(Y1+),S(Y1−)の変動の符号を逆転させたものになっている。これは、これら4組の外側センサの向きが、それぞれ隣接配置された内側センサの向きと逆になっているためである。
【0169】
この実施形態の場合も、8組の変位センサは同一のセンサであり、そのXY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図35のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図36に示す演算式で与えられることになる。なお、前述したとおり、センサの同一性や配置の対称性が確保されていない場合には、個々のセンサの検出値にそれぞれ固有の感度補正係数を乗じる必要がある。
【0170】
第1の実施形態に係る図32の演算式と、第2の実施形態に係る図36の演算式とを比べると、Fzの演算式を除いて、前者における各項が、後者では差分項に置き換えられていることがわかる。たとえば、Fxの演算式の場合、前者における項「Cb(Y−)」,「Cb(Y+)」は、後者では、それぞれ差分項「Cb(Y1−)−Cb(Y2−)」,「Cb(Y1+)−Cb(Y2+)」に置き換えられている。これらの差分項は、隣接配置された内側センサと外側センサとについての検出値の差を示すものである。
【0171】
隣接配置された内側センサと外側センサとは、向きが逆になっているため、力成分Fzを検出する場合を除いて、両者は相補的な検出値を出力することになる。このため、Fzを除く5成分の検出には、図36の各演算式に示すように、差分値を利用した検出が可能になる。このような差分値を利用した検出は、検出精度を高めるために有効である。たとえば、この力検出装置の設置場所の温度環境が変化すると、温度変化に起因して装置各部の材質に膨張・収縮が生じ、容量素子を構成する電極面積や電極間距離に変動が生じることになる。差分値を利用した検出を行えば、このような温度変動に基づいて生じる測定誤差を相殺することができるので、より正確な検出値を得ることができる。これが、ここで述べた第2の実施形態のメリットである。
【0172】
<5−3:第3の実施形態>
図37は、本発明に係る力検出装置の第3の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図であり(バネは図示省略)、図38は、図37に示す各変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。図示のとおり、この第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同様に4組の変位センサが用いられるが、その配置が若干異なっている。すなわち、4組の変位センサS(1)〜S(4)のXY平面上の投影像は、図37に示すとおり、それぞれXY座標系の第1象限〜第4象限に位置する。
【0173】
より具体的には、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなす2本の斜め方向軸W1,W2を定義した場合、変位センサS(1),S(3)は、W1軸上に定義された配置点P(1),P(3)がローカル原点Qとなる位置に配置され、変位センサS(2),S(4)はW2軸上に定義された配置点P(2),P(4)がローカル原点Qとなる位置に配置される。ここで、各配置点P(1)〜P(4)は、原点Oから等距離の点である。これら4箇所の配置点に定義されたαβγ三次元座標系のα軸およびβ軸の向きは、図38に示すとおり、個々の配置点ごとに異なるが、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図38の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0174】
結局、この第3の実施形態に係る力検出装置は、4組の変位センサを有し、図37に示すXY平面上への投影図において、第1のセンサS(1)のローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサS(2)のローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサS(3)のローカル原点QがXY座標系の第3象限に位置し、第4のセンサS(4)のローカル原点QがXY座標系の第4象限に位置することになる。また、図38に示すとおり、配置点P(1)に配置された第1のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、配置点P(2)に配置された第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、配置点P(3)に配置された第3のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向き、配置点P(4)に配置された第4のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向くように、これら4組のセンサが配置されていることになる。
【0175】
この第3の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図39のテーブルに示すようになる。このテーブルでは、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(1)〜(4)の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてある。各欄の符号「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。なお、図37に示す4組の変位センサS(1)〜S(4)による各検出値Ca,Cbの変動結果が、図39のテーブルの各欄に示すようになる個々の理由については、ここでは説明を省略する。これらの理由は、各配置点P(1)〜P(4)の変位方向と、各配置点P(1)〜P(4)に定義されたα軸の向きとを考慮すれば、これまでの説明から容易に理解できよう。
【0176】
この実施形態の場合も、4組の変位センサS(1)〜S(4)は同一のセンサであり、そのXY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図39のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図40に示す演算式で与えられることになる。なお、前述したとおり、センサの同一性や配置の対称性が確保されていない場合には、個々のセンサの検出値にそれぞれ固有の感度補正係数を乗じる必要がある。
【0177】
図21に示す第1の実施形態における4組の変位センサの配置と、図37に示す第3の実施形態における4組の変位センサの配置と、を比較すると、後者は前者の配置をZ軸を回転軸として反時計回りに45°回転させたものであることがわかる。別言すれば、第3の実施形態において、W1軸をX軸として取り扱い、W2軸をY軸として取り扱えば、W1,W2軸方向の力成分や、W1,W2軸まわりのモーメント成分の検出も可能になる(センサの向きが45°傾斜しているので、演算が複雑になり、配慮が必要である)。
【0178】
<5−4:第4の実施形態>
図41は、本発明に係る力検出装置の第4の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図であり(バネは図示省略)、図42は、図41に示す各変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。この第4の実施形態では、3組の変位センサのみが用いられており、その配置は図示のとおりである。
【0179】
すなわち、XY平面上に、原点Oを中心にX軸を反時計回りに30°回転させることによって得られる斜め方向軸W3と、原点Oを中心にX軸を反時計回りに150°回転させることによって得られる斜め方向軸W4と、を定義する。これら2本の斜め方向軸W3,W4は、結局、X軸に対して30°の角度をなすことになる。ここで、軸W3の正領域の軸線,軸W4の正領域の軸線、Y軸の負領域の軸線に着目すると、これらの各軸線は相互に120°の角度をなしている。3組の変位センサS(11),S(12),S(13)は、この120°の角度をなす3つの軸線上に定義された配置点P(11),P(12),P(13)がローカル原点Qとなる位置に配置される。ここで、各配置点P(11),P(12),P(13)は、原点Oから等距離の点である。これら3箇所の配置点に定義されたαβγ三次元座標系のα軸およびβ軸の向きは、図42に示すとおり、個々の配置点ごとに異なるが、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図42の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0180】
結局、この第4の実施形態に係る力検出装置は、3組の変位センサを有し、図41に示すXY平面上への投影図において、第1のセンサS(11)のローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサS(12)のローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサS(13)のローカル原点QがY軸の負領域上に位置することになる。また、図42に示すとおり、配置点P(11)に配置された第1のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向(図の右下方向)を向き、配置点P(12)に配置された第2のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向(図の右上方向)を向き、配置点P(13)に配置された第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向(図の左方向)を向くように、これら3組のセンサが配置されていることになる。
【0181】
この第4の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図43のテーブルに示すようになる。このテーブルでは、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(11)〜(13)の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてある。各欄の符号「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。このテーブルの各欄に示すような結果が得られる個々の理由については、ここでは説明を省略するが、各配置点P(11)〜P(13)の変位方向と、各配置点P(11)〜P(13)に定義されたα軸の向きとを考慮すれば、これまでの説明から容易に理解できよう。
【0182】
この実施形態の場合も、3組の変位センサS(11)〜S(13)は同一のセンサである。各センサのXY平面上への投影像は、原点Oに関して点対称ではないが、図41に示すように、各センサを原点Oを中心として120°回転させると元の配置に重なるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図43のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図44に示す演算式で与えられることになる。ここで、K1,K2は、3組の変位センサの検出感度を補正するための感度補正係数である。
【0183】
図示の例の場合、上述したとおり、軸W3,W4が、X軸に対して30°の角度をなすように定義されているため、図44の演算式において、FxおよびMxの式についてのみ感度補正係数K1,K2を用いれば足りるが、一般に、軸W3,W4のX軸に対する角度が任意の場合には、各検出値について、それぞれ固有の感度補正係数を用いた調整が必要になる。図45に示す演算式は、このような一般的な配置の場合に用いられる演算式であり、K11〜K26は、各検出値について乗じる固有の感度補正係数である。
【0184】
<5−5:第5の実施形態>
図46は、本発明に係る力検出装置の第5の実施形態に用いられる6組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。この図46に示されている配置点P(11),P(12),P(13)は、図42に示されている各配置点と全く同じであり、各配置点について定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置方向も全く同じである。
【0185】
この第5の実施形態では、これら配置点P(11),P(12),P(13)の内側(原点Oに近い側)に、新たな配置点P(21),P(22),P(23)が定義され、それぞれについて、ローカルなαβγ三次元座標系が定義されている。ここで、外側の配置点P(11),P(12),P(13)は、いずれも原点Oから等距離にあり、内側の配置点P(21),P(22),P(23)も点Oから等距離にある。また、内側の配置点P(21),P(22),P(23)についてのα軸は、隣接する外側の配置点P(11),P(12),P(13)についてのα軸とは逆方向を向くようになっている。なお、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図46の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0186】
ここでは、この第5の実施形態の各電極配置を示すXY平面上への正射影投影図は省略するが、図41に示す3組のセンサS(11)〜S(13)を外側センサとして、その内側に、3組の内側センサS(21)〜S(23)を逆向きに配置した構成をとることになる。
【0187】
要するに、この第5の実施形態に係る力検出装置は、ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の内側センサS(21)〜S(23)と、ローカル原点QがZ軸から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の外側センサS(11)〜S(13)と、を有することになる。
【0188】
ここで、第1の外側センサS(11)のローカル原点Qは、XY座標系の第1象限に位置し、第2の外側センサS(12)のローカル原点Qは、XY座標系の第2象限に位置し、第3の外側センサS(13)のローカル原点Qは、Y軸の負領域上に位置しており、第1の外側センサS(11)のα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2の外側センサS(12)のα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3の外側センサS(13)のα軸正方向がX軸負方向を向くように、3組の外側センサが配置されている。
【0189】
また、第1の内側センサS(21)のローカル原点Qは、XY座標系の第1象限に位置し、第2の内側センサS(22)のローカル原点Qは、XY座標系の第2象限に位置し、第3の内側センサS(23)のローカル原点Qは、Y軸の負領域上に位置しており、第1の内側センサS(21)のα軸正方向が第1の外側センサS(11)のα軸負方向を向き、第2の内側センサS(22)のα軸正方向が第2の外側センサS(12)のα軸負方向を向き、第3の内側センサS(23)のα軸正方向が第3の外側センサS(13)のα軸負方向を向くように、3組の内側センサが配置されている。
【0190】
この第5の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図47のテーブルに示すようになる。このテーブルでは、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(11)〜(23)の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてある。各欄の符号「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。
【0191】
この図47のテーブルにおいて、3組の外側センサS(11),S(12),S(13)の変動は、図43のテーブルに示すそれぞれセンサS(11),S(12),S(13)の変動と全く同じである。また、図47のテーブルにおいて、3組の内側センサS(21),S(22),S(23)の検出値Caの変動は、それぞれ外側センサS(11),S(12),S(13)の検出値Caの変動と同じになり、3組の内側センサS(21),S(22),S(23)の検出値Cbの変動は、それぞれ外側センサS(11),S(12),S(13)の検出値Caの変動の符号を逆転させたものになっている。これは、隣接配置された内側センサと外側センサとを比べると、γ軸の方向は同一であるが、α軸の方向が逆になっているためである。
【0192】
この実施形態の場合も、6組の変位センサS(11)〜S(23)は同一のセンサである。各センサのXY平面上への投影像は、原点Oに関して点対称ではないが、各センサを原点Oを中心として120°回転させると元の配置に重なるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図47のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図48に示す演算式で与えられることになる。ここで、K1,K2は、3組の変位センサの検出感度を補正するための感度補正係数である。
【0193】
図46に示すとおり、軸W3,W4が、X軸に対して30°の角度をなすように定義されているため、図48の演算式では、FxおよびMxの式についてのみ感度補正係数K1,K2を用いれば足りるが、一般に、軸W3,W4のX軸に対する角度が任意の場合には、各検出値について、それぞれ固有の感度補正係数を用いた調整が必要になる。
【0194】
第5の実施形態に係る図48の演算式と、第4の実施形態に係る図44の演算式とを比べると、Fx,Fy,Mzの演算式については、前者における各項が、後者では差分項に置き換えられていることがわかる。たとえば、Fxの演算式の場合、前者における項「Cb(11)」,「Cb(12)」,「Cb(13)」は、後者では、それぞれ差分項「Cb(11)−Cb(21)」,「Cb(12)−Cb(22)」,「Cb(13)−Cb(23)」に置き換えられている。これらの差分項は、隣接配置された内側センサと外側センサとについての検出値の差を示すものである。
【0195】
隣接配置された内側センサと外側センサとは、向きが逆になっているため、Fx,Fy,Mzの演算式に関しては、両者は相補的な検出値を出力することになる。このため、これら3成分の検出には、図48の各演算式に示すように、差分値を利用した検出が可能になる。このような差分値を利用した検出が、検出精度を高めるために有効であることは既に述べたとおりである。
【0196】
<5−6:第6の実施形態>
図49は、本発明に係る力検出装置の第6の実施形態に用いられる6組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。この図49に示されている3つの配置点P(11),P(12),P(13)は、図42に示されている各配置点と全く同じであり、各配置点について定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置方向も全く同じである。
【0197】
この第6の実施形態では、これら配置点P(11),P(12),P(13)について、XY平面上で原点Oに関して点対称となる位置に、それぞれ新たな配置点P(31),P(32),P(33)が定義され、それぞれについて、ローカルなαβγ三次元座標系が定義されている。ここで、6個の配置点P(11)〜P(32)は、いずれも原点Oから等距離にある。また、互いに点対称となる位置に配置された一対の配置点については、αβγローカル座標系もXY平面上で点対称となるように定義されており、α軸は互いに逆方向を向くようになっている。なお、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図49の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0198】
ここでは、この第6の実施形態の各電極配置を示すXY平面上への正射影投影図は省略するが、図41に示す3組のセンサS(11)〜S(13)を主センサとして、それぞれについて、XY平面上で原点Oに関して点対称となる位置に、3組の副センサS(31)〜S(33)を配置した構成をとることになる。
【0199】
このように、この第6の実施形態に係る力検出装置は、3組の主センサS(11)〜S(13)と、3組の副センサS(31)〜S(33)と、を有している。ここで、第1の主センサS(11)のローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の主センサS(12)のローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の主センサS(13)のローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、第1の主センサS(11)のα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2の主センサS(12)のα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3の主センサS(13)のα軸正方向がX軸負方向を向くように、3組の主センサが配置されている。
【0200】
また、第1の副センサS(31)のローカル原点Qが第1の主センサS(11)のローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第2の副センサS(32)のローカル原点Qが第2の主センサS(12)のローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第3の副センサS(33)のローカル原点Qが第3の主センサS(13)のローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第1の副センサS(31)のα軸正方向が第1の主センサS(11)のα軸負方向を向き、第2の副センサS(32)のα軸正方向が第2の主センサS(12)のα軸負方向を向き、第3の副センサS(33)のα軸正方向が第3の主センサS(13)のα軸負方向を向くように、3組の副センサが配置されている。
【0201】
この第6の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図50のテーブルに示すようになる。このテーブルでは、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(11)〜(33)の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてある。各欄の符号「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。
【0202】
この図50のテーブルにおいて、3組の主センサS(11),S(12),S(13)の変動は、図43のテーブルに示すそれぞれセンサS(11),S(12),S(13)の変動と全く同じである。また、図50のテーブルにおいて、3組の副センサS(31),S(32),S(33)の検出値Caの変動は、「Fz」の列に関しては、それぞれ主センサS(11),S(12),S(13)の検出値Caの変動と同じになり、「Mx」,「My」の列に関しては、それぞれ主センサS(11),S(12),S(13)の検出値Caの変動の符号を逆転させたものとなっている。一方、3組の副センサS(31),S(32),S(33)の検出値Cbの変動は、「Mz」の列に関しては、それぞれ主センサS(11),S(12),S(13)の検出値Cbの変動と同じになり、「Fx」,「Fy」の列に関しては、それぞれ主センサS(11),S(12),S(13)の検出値Cbの変動の符号を逆転させたものとなっている。このようになる理由は、図49に示す各配置点P(11)〜P(33)の変位方向と、各配置点P(11)〜P(33)に定義されたα軸,γ軸の向きとを考慮すれば、これまでの説明から容易に理解できよう。
【0203】
この実施形態の場合も、6組の変位センサS(11)〜S(33)は同一のセンサである。各センサのXY平面上への投影像は、原点Oに関して点対称ではないが、各センサを原点Oを中心として60°回転させると元の配置に重なるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図50のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図51に示す演算式で与えられることになる。ここで、K1,K2は、各変位センサの検出感度を補正するための感度補正係数である。
【0204】
図49に示すとおり、軸W3,W4が、X軸に対して30°の角度をなすように定義されているため、図51の演算式では、FxおよびMxの式についてのみ感度補正係数K1,K2を用いれば足りるが、一般に、軸W3,W4のX軸に対する角度が任意の場合には、各検出値について、それぞれ固有の感度補正係数を用いた調整が必要になる。
【0205】
この第6の実施形態に係る図51の演算式では、Fx,Fy,Mx,Myの演算式について、差分項の演算が行われている。したがって、これら4成分の検出には、差分値を利用した検出が可能になる。このような差分値を利用した検出が、検出精度を高めるために有効であることは既に述べたとおりである。
【0206】
<<< §6.変位センサの変形例 >>>
§4,§5で述べた第1〜第6の実施形態に係る力検出装置は、いずれも§1,§2で述べた変位センサを複数N組用いることにより、上方基板100の各部(各センサの配置点)の変位を検出し、力の6成分を検出するものである。ただ、本発明に係る力検出装置に用いる変位センサは、§1,§2で述べたセンサに限定されるものではない。ここでは、本発明に利用する変位センサに必要な本質的な特徴を説明するとともに、この変位センサのいくつかの変形例を述べることにする。
【0207】
<6−1:本発明に係る変位センサの特徴>
まず、§1,§2で述べた変位センサ(以下、基本センサと呼ぶ)の電極構造およびその機能を再考してみよう。図52は、図1に示す構造体および電極のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、バネ31〜34の図示は省略する。
【0208】
図52には、αβγ三次元直交座標系が示されているが、当該座標系の原点Qは、図17に示す力検出装置を構成する上方基板100(変位センサによる測定対象となる図1の上方基板10)内の当該変位センサを配置すべき所定の配置点Pに定義される。既に述べたとおり、このαβγ三次元直交座標系は、力検出装置全体に定義されるXYZグローバル座標系に対して、個々の配置点Pごと(すなわち、個々の変位センサごと)に定義されるローカル座標系となる。ここで、α軸およびβ軸は、原点Qを含み、上方基板100の基板面に平行な平面上に定義され、原点Qを通りαβ平面に対して直交する方向にγ軸が定義される。
【0209】
この基本センサに要求される基本的な機能は、上方基板100の配置点Pの位置(すなわち、原点Qの位置)について、α軸方向の変位Dαとγ軸方向の変位Dγとを独立して検出することである。ここで、「独立して検出する」とは、他軸成分の干渉を受けずに、検出対象成分のみを正確に取り出すことを意味する。そのような検出を行うために、本発明では、上方基板側に設けられた第1の上方電極E11および第2の上方電極E12と、下方基板側に設けられた第1の下方電極E21および第2の下方電極E22という4種類の電極を用意し、第1の上方/下方電極E11,E21によって第1の容量素子C1を構成し、第2の上方/下方電極E12,E22によって第2の容量素子C2を構成することになる。
【0210】
図52に示す基本センサの場合、第1の上方/下方電極E11,E21は円形の電極であり、第2の上方/下方電極E12,E22は矩形の電極であるが、もちろん、各電極の形状はこれらの形状に限定されるわけではない。図にハッチングを施して示す円形領域A1は、第1の容量素子C1を構成する一対の電極E11,E21の平面的な重複領域を示しており、第1の容量素子C1の静電容量値C1は、この重複領域A1の面積に比例して定まる。また、図にハッチングを施して示す外形が矩形の領域A2(内部に円形の開口部R1を有する)は、第2の容量素子C2を構成する一対の電極E12,E22の平面的な重複領域を示しており、第2の容量素子C2の静電容量値C2は、この重複領域A2の面積に比例して定まる。
【0211】
本発明に係る変位センサにおいて、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21に要求される基本的な条件は、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21のαβ平面上への正射影像に関して、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では(検出対象となる外力が作用していない状態では)、被包含電極となる一方の電極の正射影像の領域が包含電極となる他方の電極の正射影像の領域内に包含され、かつ、上方基板が下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、および、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、上記包含関係が依然として維持されるように、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21の配置および形状が設定されている、という条件である。なお、上方基板が下方基板に対してγ軸の正または負方向に変位を生じたときに、αβ平面上への正射影像に関して上記包含関係が維持されることは当然である。
【0212】
図52に示す基本センサの場合、第1の上方電極E11が包含電極、第1の下方電極E21が被包含電極となっており、上方基板が変位を生じていないときでも、α軸もしくはβ軸に所定の許容範囲内の変位を生じたときでも、αβ平面上への正射影像に関して、第1の下方電極E21の正射影像は第1の上方電極E11の正射影像内に包含される。このような包含関係が維持されている限り、図にハッチングを施して示す重複領域A1の面積は一定になり、γ軸方向の変位がない限り、第1の容量素子C1の静電容量値C1は変化しない。別言すれば、このような包含関係が維持されている限り、第1の容量素子C1の静電容量値C1の変動量ΔC1は、γ軸方向の変位を示すことになる。基本センサから出力される検出値Ca(=−C1)の変動量を、変位Dγのみを示す値として利用できるのは、このためである。
【0213】
なお、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21のいずれを包含電極もしくは被包含電極とするかは任意であり、図52に示す基本センサとは逆に、第1の上方電極E11を被包含電極とし、第1の下方電極E21を包含電極とする構成を採ってもよい。この場合、第1の下方電極E21の方が第1の上方電極E11よりも大きな電極ということになる。
【0214】
一方、本発明に係る変位センサにおいて、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22に要求される基本的な条件は、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22のαβ平面上への正射影像に関して、両正射影像の重複領域の図形形状(その面積)が、上方基板が下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに変化し、かつ、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに不変であるように、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22の配置および形状が設定されている、という条件である。
【0215】
図52に示す基本センサの場合、α軸方向の変位が生じた場合、第2の上方電極E12が図の左右に移動するため、図にハッチングを施して示す重複領域A2の面積変動量は変位量に比例することになる。これは、第2の上方電極E12と第2の下方電極E22とが、αβ平面上への正射影像に関して、オフセットを生じるように配置されているためである。一方、β軸方向の変位が生じた場合、第2の上方電極E12が図の上下に移動するが、移動量が所定の許容範囲内であれば(電極E12の上下の辺が、電極E22の上下の辺を越えず、開口部R1の輪郭が開口部R2の輪郭に接触しなければ)、重複領域A2の面積は一定になる。これは、β軸方向の変位が生じていない状態において、第2の下方電極E22のβ軸方向の幅区間が、第2の上方電極E12のβ軸方向の幅区間を包含しており、当該包含関係が、所定の許容範囲内のβ軸方向の変位が生じた場合も維持されるようになっているためである。もちろん、第2の上方電極E12のβ軸方向の幅区間が、第2の下方電極E22のβ軸方向の幅区間を包含するという、逆の包含関係になっていてもかまわない。
【0216】
結局、このようなβ軸方向に関する包含関係が維持されている限り、図にハッチングを施して示す重複領域A2の形状(面積)は、α軸方向の変位が生じた場合には変化し、β軸方向の変位が生じた場合には変化しないので、第2の容量素子C2の静電容量値C2の変化は、α軸方向の変位か、γ軸方向の変位か、のいずれかに起因したものになる。別言すれば、上記β軸方向に関する包含関係が維持されている限り、第2の容量素子C2の静電容量値C2の変動は、α軸方向の変位Dαに起因した変動分とγ軸方向の変位Dγに起因した変動分とを合成したものになる。ここで、γ軸方向の変位Dγは、第1の容量素子C1の静電容量値C1の変動量ΔC1として求まるので、静電容量値C2の変動量ΔC2から、変位Dγに起因した変動分を除去すれば、α軸方向の変位Dαのみを示す検出値を得ることができる。すなわち、検出値Cbを、Cb=−C2+k・C1とすれば、当該検出値Cbの変動量が変位Dαのみを示す値になる。
【0217】
基本センサの検出回路Hは、このような原理に基づいて、静電容量値C1の変動量ΔC1を原点Qのγ軸方向の変位Dγを示す検出信号として出力し、静電容量値C2の変動量ΔC2から変位Dγに起因する変動量を除去した値を原点Qのα軸方向の変位Dαを示す検出信号として出力することになる。もちろん、こうして検出された変位Dγの値は、原点Qの位置に作用したγ軸方向の力を示す値ということもでき、変位Dαの値は、原点Qの位置に作用したα軸方向の力を示す値ということもできる。したがって、本発明に係る変位センサは、ローカル原点Qの位置に作用した力を検出する力センサということもできる。
【0218】
<6−2:基本センサに固有の特徴>
続いて、§1,§2で述べた基本センサに固有の特徴を述べる。もちろん、この基本センサも、本発明に係る変位センサの1つであるので、上記「6−1:本発明に係る変位センサの特徴」で述べた特徴をすべて備えているが、この基本センサは、更に、次のような固有の特徴を備えている。
【0219】
まず、前述したように、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21の一方を包含電極、他方を被包含電極と呼んだ場合に、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極のαβ平面上への正射影像が、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、被包含電極の配置および形状が設定されている、という特徴を有している。具体的には、被包含電極となる第1の下方電極E21のαβ平面上への正射影像が円形であり、変位が生じていない状態で、原点Qを中心とする位置に配置されている、という構成をとっている。
【0220】
このような軸対称性は、上方基板の傾斜を変位として誤検出することを避ける上で効果的である。たとえば、図31に示すテーブルの「My」の列のCa(Y+),Ca(Y−)の欄は「0」となっているが、これはモーメントMyが作用した場合、変位センサS(Y+),S(Y−)から出力される検出値Ca(=−C1)の変動がないことを前提とした結果である。しかしながら、モーメントMyが作用した場合、上方基板100は、図27に示すように傾斜するため、図26に示すY軸上に配置されている変位センサS(Y+),S(Y−)を構成する電極の電極間距離は変動することになる。ただ、電極がY軸に関して線対称であれば、図27に示すように傾斜が生じた場合でも、変位センサS(Y+),S(Y−)を構成する電極の電極間距離は、右側半分では減少し、左側半分では増加するため、静電容量値C1の変動は左右で相殺され、トータルでは、静電容量値C1に変動は生じない。
【0221】
よって、図31に示すテーブルの「My」の列のCa(Y+),Ca(Y−)の欄を正確に「0」にするためには、被包含電極となる第1の下方電極E21のXY平面上への正射影像(すなわち、図52においてハッチングを施した重複領域A1)がY軸について線対称である必要がある。もちろん、このような対称性が維持されていなくても、測定精度上「0」とみなすことができる程度の変動であれば、実用上、大きな問題は生じないので、本発明を実施する上で、上記線対称性は必須条件ではない。ただ、上記線対称性が維持されていれば、測定精度を確実に向上させることができるので、実際には、被包含電極の形状および配置は、α軸およびβ軸に関して線対称を有するようにするのが好ましい。
【0222】
同様の理由により、第2の容量素子C2を構成することになる電極の実効領域、すなわち、図52においてハッチングを施した重複領域A2についても、変位が生じていない状態で、α軸およびβ軸に関する線対称性が維持されるように、形状および配置が設定されているようにするのが好ましい。
【0223】
また、この基本センサでは、図52に示されているとおり、第2の上方電極E12が内部に開口部R1を有する形状をなし、第1の上方電極E11がこの第2の上方電極E12の開口部R1内に配置され、第2の下方電極E22が内部に開口部R2を有する形状をなし、第1の下方電極E21がこの第2の下方電極E22の開口部内に配置されている。このような入れ子式の電極配置を採ると、次の2つのメリットが得られる。
【0224】
第1のメリットは、電極形成領域をローカル原点Q近傍に集約化できる点である。本発明における変位センサは、上方基板100内に定義された所定の配置点P(ローカル原点Q)についての変位を検出することを目的としているため、その構成要素となる電極は、できるだけローカル原点Qの近傍に配置するのが好ましい。電極の外縁部がローカル原点Qから遠くなればなるほど、「ローカル原点Qの変位量」としての位置的精度は低下せざるを得ない。このような位置的精度を向上させる観点からは、電極はできるだけ面積を小さくするのが好ましいが、電極面積を小さくすると、容量素子の静電容量値も小さくなるため、検出感度は低下せざるを得ない。上記入れ子式の電極配置を採れば、ある程度の面積をもったすべての電極をローカル原点Qの近傍に集約することができる。
【0225】
第2のメリットは、前述した対称性確保が容易になる点である。たとえば、図52に示す例の場合、前述したとおり、ハッチングを施した重複領域A1,A2の形状および配置にα軸およびβ軸に関する線対称性が確保されるのが好ましい。実際、図52に示す例の場合、このような線対称性が確保されている。一方の電極の開口部内に他方の電極を配置するという入れ子式の電極配置を採れば、重複領域A1,A2の双方について線対称性を確保することが非常に容易になる。
【0226】
特に、図52に示す例の場合、第1の上方電極E11の外形、第2の上方電極E12の開口部R1の形状、第1の下方電極E21の外形、第2の下方電極E22の開口部R2の形状がいずれも円となっており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら各円の中心点がγ軸上(αβ投影面における原点Q上)に位置するようになっている。このように、電極E11,E21,開口部R1,R2を、γ軸を中心とする円とする実施例は、上述したα軸およびβ軸に関する線対称性を確保することができ、しかも上述した入れ子式の電極配置を容易に実現することができるので、実用上、非常に好ましい実施例ということができる。
【0227】
一方、図52に示す例の場合、第2の上方電極E12の外形および第2の下方電極E22の外形を矩形としている。前述したように、本発明に係る変位センサにおいて、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22に要求される基本的な条件は、両電極のαβ平面上への正射影像の重複領域A2の図形形状(面積)が、α軸方向に変位を生じたときには変化するが、β軸方向に変位を生じたときに不変である、という条件である。電極E12,E22の外形を矩形として、両者をα軸に関してオフセット配置するようにすれば、上記条件を満足させる構成を容易に実現することができる。
【0228】
もっとも、電極E12,E22の外形は、必ずしも矩形である必要はない。たとえば、図52において、電極E12の右端部分の形状や、電極E22の左端・上端・下端部分の形状は、α軸方向およびβ軸方向の変位量が所定の許容範囲内である限り(これら端部にまで重複領域A2が到達しない限り)、重複領域A2の形状には影響を及ぼすことはない。したがって、上記各端部は必ずしも直線である必要はなく、任意の形状でかまわない。また、電極E12の左端・上端・下端部分の形状は、変位量に比例する線形検出値を得る必要がなければ、必ずしも直線である必要はない。結局、図52に示す電極構成において、重複領域A2の図形形状(面積)が、α軸方向に変位を生じたときには変化するが、β軸方向に変位を生じたときに不変である、という条件を満足させるためには、電極形状については、「電極E22の右端部分がβ軸に平行な直線である」という条件が満たされていれば足りる。図52に示すαβ平面上への正射影像に関して、電極E22の右端部分は、電極E12と重なりが生じる可能性がある部分であり、電極E12がβ軸方向に変位した場合にも、重複領域A2の図形形状を一定に維持するためには、この部分がβ軸に平行な直線である必要がある。
【0229】
結局、重複領域A2の図形形状(面積)が、α軸方向に変位を生じたときには変化するが、β軸方向に変位を生じたときに不変である、という条件を満足させるためには、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態において、第2の上方電極E12の外形図形と第2の下方電極E22の外形図形とについて、次の3条件が満足されていればよい(図52に示す例は、電極E12の外形図形を図形F1,F3とし、電極E22の外形図形を図形F2,F4とした例である)。
【0230】
<条件1:α軸に関するオフセット条件>
一方の図形を図形F1、他方の図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置する(α軸の正負を逆転させても等価)。
【0231】
<条件2:β軸に関する包含条件>
一方の図形を図形F3、他方の図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置する。
【0232】
<条件3:重複領域の輪郭線条件>
上記条件2における図形F3および図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす。
【0233】
ただ、実用上は、変位量に比例する線形検出値が得られるのが好ましいので、重複領域A2の外形が、常に、α軸に平行な2辺とβ軸に平行な2辺を有する矩形となるようにするのが好ましい。具体的には、上記条件1における図形F1のα軸負方向側の端部(図52に示すように、図形F1=図形F3の場合)もしくは図形F2のα軸正方向側の端部(図52に示す例において、電極E12の縦幅が電極E22の縦幅よりも広くなるように設定し、図形F1=図形F4とする場合)が、β軸に平行な直線となるようにし、上記条件2における図形F3のβ軸正方向側の端部およびβ軸負方向側の端部が、α軸に平行な直線となるようにすればよい。
【0234】
このような観点からは電極E12,E22の外形図形を矩形にすることは、実用上、非常に好ましい実施例ということができる。より具体的に説明すれば、実用上は、第2の上方電極E12の外形図形および第2の下方電極E22の外形図形が、α軸に平行な2辺とβ軸に平行な2辺とをもった矩形をなし(これにより、上記条件3:重複領域の輪郭線条件が満たされる)、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら2つの矩形について、次の2条件が満足されるような配置を行えばよい。
【0235】
<条件1:α軸に関するオフセット条件>
一方の矩形を矩形F1、他方の矩形を矩形F2としたときに、矩形F1のα軸正方向側の辺が、矩形F2のα軸正方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、矩形F1のα軸負方向側の辺が、矩形F2のα軸負方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置する(α軸の正負を逆転させても等価)。
【0236】
<条件2:β軸に関する包含条件>
一方の矩形を矩形F3、他方の矩形を矩形F4としたときに、矩形F4のβ軸正方向側の辺が、矩形F3のβ軸正方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、矩形F4のβ軸負方向側の辺が、矩形F3のβ軸負方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置する。
【0237】
<6−3:第1の変形例>
続いて、§1,§2で述べた基本センサ(図52)の変形例を示す。図53は、この第1の変形例の物理的構造部の上面図であり、上方基板40および下方基板50と、これら各基板の表面に形成された個々の電極が示されている。ここで、上方基板40については透視した状態を示し、バネは図示を省略する。図において、実線で示された電極E41A,E41B,E42は、上方基板40の下面に形成された上方電極であり、図において、一部もしくは全部が破線で示された電極E51A,E51B,E52は、下方基板50の上面に形成された下方電極である。
【0238】
ここで、実線で示された円形電極E41A,E41Bは、図52に示す基本センサにおける第1の上方電極E11に対応する機能を果たし、破線で示された円形電極E51A,E51Bは、図52に示す基本センサにおける第1の下方電極E21に対応する機能を果たす。図示のとおり、円形電極E41A,E51Aの投影像は、点QAを中心とした位置に配置され、円形電極E41B,E51Bの投影像は、点QBを中心とした位置に配置されており、これらの配置位置は、αβγ座標系のローカル原点Qとは一致しない。ただ、中心点QAはβ軸正領域上に位置し、中心点QBはβ軸負領域上に位置し、それぞれ原点Qから等距離の位置にある。
【0239】
一方、矩形電極E42は、図52に示す基本センサにおける第2の上方電極E12に対応する機能を果たし、矩形電極E52は、図52に示す基本センサにおける第2の下方電極E22に対応する機能を果たす。これら矩形電極E42,E52の投影像は、原点Qの近傍に位置する。
【0240】
図54は、図53に示す変位センサの物理的構造部のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、バネは図示を省略する。図示の重複領域A1AおよびA1Bは、それぞれ容量素子C1A,C1Bを構成する電極の実効領域を示し、容量素子C1A,C1Bを並列接続することにより、基本センサの容量素子C1が形成される。別言すれば、図示の重複領域A1AおよびA1Bは、図52に示す基本センサにおける重複領域A1に対応する。一方、図示の重複領域A2は、容量素子C2を構成する電極の実効領域を示し、図52に示す基本センサにおける重複領域A2に対応する。
【0241】
図52に示す基本センサでは、矩形電極E12,E22の内部に円形開口部R1,R2を設け、この円形開口部R1,R2内に円形電極E11,E21を配置する入れ子式の配置を採っていたが、図53,図54に示す変形例では、入れ子式を採用せずに、円形電極を矩形電極の外部に配置する構成を採っている。したがって、矩形電極E42,E52には開口部は設けられていない。
【0242】
この変形例で、円形電極を図の上部(E41A,E51A)と、図の下部(E41B,E51B)とに分けて配置したのは、α軸に関する対称性を確保するための便宜である。正確な検出を行うために、重複領域の形状がα軸およびβ軸に関して線対称性を有することが好ましいことは、既に述べたとおりである。図54において、重複領域A1A,A1Bは、それぞれ単独ではα軸に関する線対称性は有していないが、両領域を一体の領域として見れば、α軸に関する線対称性が得られることになる。もちろん、β軸に関する線対称性も得られている。
【0243】
結局、ここに示す変形例のように、第1の上方電極と第1の下方電極とからなる電極対を複数組設け、各電極対によって構成される容量素子を並列接続することによって第1の容量素子C1を構成する場合には、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態で、被包含電極群(図54に示す例では、電極E51AとE51B)のαβ平面上への正射影像からなる平面パターンが、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、被包含電極群の配置および形状を設定するのが好ましい。
【0244】
<6−4:第2の変形例>
図55は、図52に示す基本センサの別な変形例の物理的構造部の上面図であり、上方基板60および下方基板70と、これら各基板の表面に形成された個々の電極が示されている。ここで、上方基板60については透視した状態を示し、バネは図示を省略する。また、図において、破線は上方基板60の下面に形成された電極を示し、実線は下方基板70の上面に形成された電極を示している。なお、便宜上、図の上方向をα軸正方向とし、図の左方向をβ軸正方向として、図が描かれている。
【0245】
図に破線で描かれている電極E60は、上方基板60の下面に形成された第1の櫛状電極であり、平面形状が櫛状図形をしている。この第1の櫛状電極E60は、α軸方向に伸びた根幹部E60Aと、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数(図示の例では8本)の歯状部E60Bと、この根幹部E60Aの中央からβ軸方向に伸びる板状部E60Cと、によって構成された1枚の連続した電極である。
【0246】
一方、図に実線で描かれている電極E70は、下方基板70の上面に形成された第2の櫛状電極であり、やはり平面形状が櫛状図形をしている。この第2の櫛状電極E70は、α軸方向に伸びた根幹部E70Aと、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数(図示の例では8本)の歯状部E70Bと、によって構成された1枚の連続した電極である。下方基板70の上面には、更に、別個独立した島状電極E75が形成されている。この島状電極E75は、第1の櫛状電極E60内の板状部E60Cに対向する位置に配置されている。ここで、8本の歯状部E70Bのα軸方向に関する配列周期は、8本の歯状部E60Bのα軸方向に関する配列周期に対して位相がずれており、それぞれ対応する歯状部のαβ平面上への投影像が部分的に重なり合っている。
【0247】
このような電極構成を行えば、板状部E60Cおよびその付け根に位置する根幹部E60Aの一部分が、図52に示す基本センサにおける第1の上方電極E11の役割を果たし、島状電極E75が、図52に示す基本センサにおける第1の下方電極E21の役割を果たすことが理解できよう。すなわち、αβ平面への投影像に関して、板状部E60Cおよびその付け根に位置する根幹部E60Aの一部分は、島状電極E75を包含した状態になっており、上方基板60が下方基板70に対してα軸もしくはβ軸方向に所定の許容範囲内の変位を生じても、上記包含関係は依然として維持される。なお、島状電極E75の位置を図の左方に若干ずらし、板状部E60Cの部分に包含されるようにすれば、板状部E60Cのみによって第1の上方電極E11の役割を果たすことができる。
【0248】
一方、このような電極構成を行えば、第1の櫛状電極E60の構成部分のうち、根幹部E60Aおよび各歯状部E60Bの部分が、α軸に関するオフセット条件については、図52に示す基本センサにおける第2の上方電極E12の役割を果たし、β軸に関する包含条件については、第2の下方電極E22の役割を果たすことが理解できよう。同様に、第2の櫛状電極E70(根幹部E70Aと各歯状部E70B)が、α軸に関するオフセット条件については、図52に示す基本センサにおける第2の下方電極E22の役割を果たし、β軸に関する包含条件については、第2の上方電極E12の役割を果たすことが理解できよう。図示のとおり、8本の歯状部E60Bと8本の歯状部E70Bとは、それぞれ1対1に対応しており、αβ平面への投影像に関して、対応する歯状部が部分的に重なり合うような配置がなされている。しかも、各歯状部の平面的な重複領域の面積は、上方基板60が下方基板70に対してα軸方向に変位した場合には増減するが、β軸方向に所定の許容範囲内の変位を生じた場合には一定になる。
【0249】
図56は、図55に示す変位センサの物理的構造部のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、バネは図示を省略する。図示の重複領域A1は、第1の容量素子C1を構成する電極の実効領域を示している。この重複領域A1の外形は、被包含電極である島状電極E75の外形に等しい。島状電極E75は、図示のとおり矩形をなし、変位が生じていない状態において、ローカル原点Qが中心点となるように配置されているため、重複領域A1は、α軸およびβ軸に関する線対称性を有している。上述したとおり、この重複領域A1の面積は、変位が所定の許容範囲内である限り一定である。
【0250】
一方、図示の8箇所の重複領域A2−1〜A2−8は、それぞれ容量素子C2−1〜C2−8を構成する電極の実効領域を示し、これら8組の容量素子C2−1〜C2−8を並列接続することにより、基本センサの容量素子C2が形成される。別言すれば、図示の重複領域A2−1〜A2−8は、図52に示す基本センサにおける重複領域A2に対応する。図56に示されている8組の重複領域A2−1〜A2−8のそれぞれに着目すれば、第2の櫛状電極E70の位置を固定した状態において、第1の櫛状電極E60をα軸方向に移動させると面積が増減するが、β軸方向に移動させても、変位量が所定の許容範囲内であれば、面積に変化が生じないことが理解できよう。なお、図示の重複領域A0の部分は、α軸方向およびβ軸方向への変位に対して面積が常に一定の領域になり、変位検出には利用されない不使用領域となる。
【0251】
ここで、第1の櫛状電極E60も、第2の櫛状電極E70も、それぞれ連続した1枚の電極であるため、8組の容量素子C2−1〜C2−8は、自然に並列接続された状態となり、電極E60/E70間の静電容量値を求めれば、この8組の容量素子C2−1〜C2−8の合計容量を得ることができる。なお、第1の櫛状電極E60のうち、板状部E60Cは、根幹部E60Aに連なっているため、第1の上方電極(E60C)と第2の上方電極(E60A,E60B)とが電気的に接続された状態になるが、第1の下方電極(E75)と第2の下方電極(E70A,E70B)とは、電気的に絶縁された個別電極となっているため、電気的な容量検出について問題が生じることはない。
【0252】
以上、第1の櫛状電極E60を上方電極とし、第2の櫛状電極E70および島状電極E75を下方電極とした例を述べたが、もちろん、これら上下の配置を入れ替えてもかまわない。
【0253】
このような櫛状電極E60,E70を用いて構成した変位センサは、検出感度をより高めるために有効である。特に、α軸方向の変位に関する検出感度は、飛躍的に構造する。たとえば、図54に示す実施例における重複領域A2の面積と、図56に示す実施例の重複領域A2−1〜A2−8の合計面積とが等しかった場合、基板上に形成される電極形成部の占有面積はほぼ同程度になる。しかしながら、α軸方向の変位に関する後者の検出感度は前者の検出感度に比べて極めて高くなる。これは、α軸方向に同一の変位量が生じた場合でも、重複領域A2の面積変化に比べて、重複領域A2−1〜A2−8の合計面積の変化の方が大きくなるためである。
【0254】
たとえば、図54に示す重複領域A2を実効面積とする容量素子の静電容量値が16pFであり、図56に示す8組の重複領域A2−1〜A2−8の合計面積を実効面積とする容量素子の静電容量値も16pFであったとしよう(1組の重複領域についての容量素子の静電容量値は2pF)。このように、静電容量値それ自体には変わりはない。しかしながら、図56に示す変形例の場合、たとえば、各歯状部のα軸方向の幅が20μmであり、各重複領域A2−1〜A2−8のα軸方向の幅が10μmであるときに、α軸方向に5μmの変位が生じたとすれば、1組の重複領域についての容量素子の容量値変動は1pFになるので、合計8pFの容量値変動が得られる。これに対して、図54に示す変形例の場合、図示の重複領域A2の横方向の長さが5μmだけ増減するだけなので、容量値変動は、図56に示す変形例ほどは得られない。
【0255】
このように、櫛状電極を利用すると、個々の歯状部についての容量素子ごとに、それぞれ変位量に応じた容量値変動が生じ、これら容量値変動を積算した検出値を得ることができるようになるため、検出感度の向上が図れることになる。
【0256】
ここでこの櫛状電極を用いる実施例における第2の上方電極および第2の下方電極の電極構成を一般論として述べれば、まず、第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状は、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなしていることになる。
【0257】
そして、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極を構成する櫛状図形と第2の下方電極を構成する櫛状図形とについて、次の3条件が満足されていればよい(図55に示す例は、実線で描かれた電極E70の櫛形図形を図形F2,F3とし、破線で描かれた電極E60の櫛形図形を図形F1,F4とした例である)。
【0258】
<条件1:α軸に関するオフセット条件>
一方の櫛状図形を図形F1、他方の櫛状図形を図形F2としたときに、図形F1の根幹部は図形F2の根幹部に比べて、所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、図形F1の各歯状部は根幹部からβ軸正方向側に伸び、図形F2の各歯状部は根幹部からβ軸負方向側に伸びており、図形F1の各歯状部のα軸方向に関する配列周期と図形F2の各歯状部のα軸方向に関する配列周期とは位相がずれている。
【0259】
<条件2:β軸に関する包含条件>
一方の櫛状図形を図形F3、他方の櫛状図形を図形F4として、αβ平面上へ図形F3および図形F4の正射影像を形成した場合に、図形F3の各歯状部の正射影像は、図形F4の対応する各歯状部の正射影像に部分的に重なり合い、図形F3の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F4の根幹部の正射影像までは届かず、図形F4の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F3の根幹部の正射影像を突き抜けている。
【0260】
<条件3:重複領域の輪郭線条件>
上記条件2における図形F4の各歯状部の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに、上記条件2における図形F3の対応する歯状部および根幹部の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす。
【0261】
この櫛状電極を用いる実施例における第2の上方電極および第2の下方電極の電極構成を別な観点から把握すれば、次のように定義することができる。すなわち、まず、第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状は、それぞれ複数の部分図形の集合体によって構成されており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極を構成する部分図形と第2の下方電極を構成する部分図形とについて、次の3条件が満足されていればよい(図55に示す例は、実線で描かれた1本の歯状部E70Bおよびその付け根に位置する根幹部E70Aの一部分からなる矩形を部分図形F2,F3とし、破線で描かれた1本の歯状部E60Bおよびその付け根に位置する根幹部E60Aの一部分からなる矩形を部分図形F1,F4とした例である:図55の最下段の歯状部参照)。
【0262】
<条件1:α軸に関するオフセット条件>
一方の部分図形を図形F1、他方の部分図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置する。
【0263】
<条件2:β軸に関する包含条件>
一方の部分図形を図形F3、他方の部分図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置する。
【0264】
<条件3:重複領域の輪郭線条件>
上記条件2における図形F3および図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす。
【0265】
<<< §7.力検出装置の構造体の変形例 >>>
ここでは、§3〜§5で述べた力検出装置を構成する構造体の変形例を述べる。図17の上段に示す実施形態の場合、力検出装置を構成する構造体は、上方基板100、下方基板200、バネ310〜340によって構成されており、この構造体に、変位センサを構成する複数の電極を付加することにより、力検出装置の物理的構造部が形成される。図57は、本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図であり、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)が配置された状態が示されている。なお、この図では、接続部材(バネ310〜340)については、その取付位置である接続点J1〜J4のみを示してある。
【0266】
以下、この第1の実施形態に係る物理的構造部について、いくつかの変形例を示すことにする。なお、以下に述べる各変形例は、§3,§4で述べた第1の実施形態に係る変位センサの配置(電極配置)を採用した例についてのものであるが、もちろん、§5で述べた様々な変位センサの配置を採用することも可能である。
【0267】
<7−1:第1の変形例>
図58は、第1の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部を切断線Lに沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。図58に示す各構成要素の符号末尾には「A」なる記号が付されているが、当該記号「A」を取り去ると、図17上段に示す物理的構造部の対応する構成要素と同じ符号になる。たとえば、図58の上方基板100Aは、図17の上方基板100に対応する構成要素である。
【0268】
この第1の変形例が図17に示す物理的構造部と相違する点は、各上方電極E11,E12と上方基板100Aとの間に絶縁基板110Aが挿入され、各下方電極E21,E22と下方基板200Aとの間に絶縁基板210Aが挿入されている点である。このように、絶縁基板110Aおよび絶縁基板210Aを付加した構造を用いると、上方基板100Aおよび下方基板200Aを金属などの導電性材料で構成することが可能になる。すなわち、上方基板100Aおよび下方基板200Aが導電性基板であっても、絶縁基板110Aおよび絶縁基板210Aを介して各電極を形成するようにすれば、個々の電極が導電性基板によって短絡することを避けることができる。
【0269】
量産型の装置の場合、上方基板100Aおよび下方基板200Aをアルミニウム板やステンレス板などの金属板で構成し、絶縁基板110Aおよび絶縁基板210Aをセラミック板やガラスエポキシ板などの絶縁材料からなる基板で構成するのが好ましい。なお、ばね310A〜340Aは、一般的な金属からなるコイル状のバネでもよいし、合成樹脂製のバネでもよい。
【0270】
<7−2:第2の変形例>
図59は、第2の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部を切断線Lに沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。図59に示す各構成要素の符号末尾には「B」なる記号が付されているが、当該記号「B」を取り去ると、図17上段に示す物理的構造部の対応する構成要素と同じ符号になる。
【0271】
この第2の変形例と図17に示す物理的構造部との第1の相違点は、前述した第1の変形例と同様に、各上方電極E11,E12と上方基板100Bとの間に絶縁基板110Bが挿入され、各下方電極E21,E22と下方基板200Bとの間に絶縁基板210Bが挿入されている点である。この例でも、上方基板100Bおよび下方基板200Bは、アルミニウム板やステンレス板などの金属板で構成され、絶縁基板110Bおよび絶縁基板210Bはセラミック板やガラスエポキシ板などの絶縁材料からなる基板で構成されている。
【0272】
第2の相違点は、下方基板200Bが、基板本体部201Bと台座部202Bとによって構成されている点である。台座部202Bは、基板本体部201Bの周囲下面に形成されており、台座部202Bの内側には空洞部Vが形成されている。この空洞部Vには、絶縁基板410Bを介して、回路素子420Bが配置されている。この回路素子420Bは、各変位センサの検出回路Hや力検出装置の検出ユニットUを構成するための電子回路である。各電極E11,E12,E21,E22と回路素子420Bとの間には、図示しない配線が施されている。
【0273】
第3の相違点は、ばね310〜340の代わりに、可撓性をもった柱状部材310B〜340Bが用いられている点である。本発明において、上方基板と下方基板とを接続する接続部材は、下方基板を固定した状態において、上方基板に外力を作用させた場合に、上方基板が下方基板に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有していればよい。したがって、複数のばね310〜340によって接続部材を構成することもできるし、弾性変形を生じる複数の柱状部材によって接続部材を構成することもできる。図59に示す例は、接続部材として、扁平の柱状部材310B〜340Bを用いたものである。これらの柱状部材は、金属や合成樹脂などの弾性材料で構成すればよい。もちろん、用いる柱状部材の本数や形状は任意である。
【0274】
図60は、図59に示す変形例の接続部材を変更した例を示す縦断面図である。図59に示す変形例との相違は、扁平の柱状部材310B〜340Bを、一部に屈曲部を有する扁平の柱状部材315B〜345Bに置き換えた点のみである。この屈曲部の構造は、柱状部材315Bおよび335Bの断面形状に明瞭に示されているように断面がU字状となっている。これらの柱状部材は、やはり金属や合成樹脂などの弾性材料で構成することができる。このように、柱状部材の一部に屈曲部を設けると、可撓性をより高める効果が得られる。特に、図示のような断面がU字状構造をもった屈曲部は、上方基板100BをXYZ三次元直交座標系上における各座標軸方向に変位させるために効果的である。
【0275】
<7−3:第3の変形例>
図61は、第3の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部をX軸に沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。図61に示す各構成要素の符号末尾には「C」なる記号が付されているが、当該記号「C」を取り去ると、図17上段に示す物理的構造部の対応する構成要素と同じ符号になる。
【0276】
この第3の変形例と図17に示す物理的構造部との第1の相違点は、前述した第1,第2の変形例と同様に、各上方電極と上方基板100Cとの間に絶縁基板110Cが挿入され、各下方電極と下方基板200Cとの間に絶縁基板210Cが挿入されている点である。やはり、上方基板100Cおよび下方基板200Cを、アルミニウム板やステンレス板などの金属板で構成し、絶縁基板110Cおよび絶縁基板210Cをセラミック板やガラスエポキシ板などの絶縁材料からなる基板で構成できる。
【0277】
第2の相違点は、前述した第2の変形例と同様に、下方基板200Cが、基板本体部201Cと台座部202Cとを有し、台座部202Cの内側には空洞部Vが形成されている点である。この空洞部Vには、絶縁基板410Cを介して、検出回路Hや検出ユニットUとして機能する回路素子420Cが配置されている。
【0278】
第3の相違点は、接続部材を、上方基板100Cの周囲に設けられた上方接続用縁部104Cと、下方基板の周囲に設けられた下方接続用縁部204Cと、この上方接続用縁部104Cと下方接続用縁部204Cとを接続する4本の円柱状の柱状部材310C〜340Cと、によって構成した点である。ここで、上方接続用縁部104Cのうち柱状部材310C〜340Cの上端が接続された接続部分の近傍は、ダイアフラム103Cを構成するように厚みが薄くなっており、下方接続用縁部204Cのうち柱状部材310C〜340Cの下端が接続された接続部分の近傍は、ダイアフラム203Cを構成するように厚みが薄くなっている。
【0279】
図62は、図61に示す変形例の主要部分のXY平面上への正射影投影図である。上方基板100Cの外周部分(絶縁基板110Cより外側の部分)は、円環状の上方接続用縁部104Cを形成し、この上方接続用縁部104Cの4箇所には、厚みの薄い円形ダイアフラム103Cが形成されている。同様に、下方基板200Cの外周部分(絶縁基板210Cより外側の部分)は、円環状の下方接続用縁部204Cを形成し、この下方接続用縁部204Cの4箇所には、厚みの薄い円形ダイアフラム203Cが形成されている。そして4本の柱状部材310C〜340Cの上端は、円形ダイアフラム103Cの中心部に接続され、下端は、円形ダイアフラム203Cの中心部に接続されている。
【0280】
上方基板100C側に設けられた円形ダイアフラム103Cと、下方基板200C側に設けられた円形ダイアフラム203Cとは、いずれも可撓性をもった薄膜状の部材である。また、各柱状部材310C〜340Cは可撓性をもった細長い棒状部材である。図示の例では、円形ダイアフラム103Cおよび上方接続用縁部104Cを含めた上方基板100Cは、アルミニウムやステンレスなどの金属から構成されており、また、円形ダイアフラム203Cおよび下方接続用縁部204Cを含めた下方基板200Cも、アルミニウムやステンレスなどの金属から構成されている。更に、4本の柱状部材310C〜340Cも同じ金属から構成されている。
【0281】
上述したとおり、4本の柱状部材310C〜340Cは、細長い棒状部材であるので、X軸もしくはY軸方向に撓みやすいが、Z軸方向への伸縮は起こりにくい。しかしながら、円形ダイアフラム103C,203Cの部分にも撓みが生じるため、上方基板100Cは下方基板200Cに対して、X軸およびY軸方向に容易に変位するとともに、Z軸方向にも容易に変位することになる。なお、4本の柱状部材310C〜340Cの上端および下端を支持する部分は、必ずしもダイアフラムのような膜状構造体にする必要はなく、ビーム構造体にすることも可能である。たとえば、1本の柱状部材の上端もしくは下端を、複数本のビーム構造体によって周囲から支持する構造を採ることも可能である。
【0282】
この第3の変形例では、接続部材を上方基板および下方基板の外周縁部に配置するようにしたため、装置全体の厚みを小さく設計することが可能になり、薄型の力検出装置を実現することができるようになる。図63は、この変形例の主要部分の寸法図である。以下に、本願発明者が試作した装置についての実際の寸法値を例示しておく。この例の場合、装置全体の厚みは、15mmとなり、かなり薄型の装置を実現することができる。本願発明者が知る限り、現時点で市販されている力検出装置の中で、力の6成分を検出可能な最も薄型の装置でも、厚みは28mm程度である。
上方基板100Cおよび下方基板200Cの径φ1=80mm
絶縁基板110Cおよび210Cの径φ2=50mm
空洞部Vの径φ3=40mm
ダイアフラム103C,203Cの径φ4=6mm
柱状部材310C〜340Cの径φ5=2mm
上方基板100Cの厚みd1=6mm
下方基板200Cの厚みd2=7.5mm
上方基板100Cと下方基板200Cとの間の間隙寸法d3=1.5mm
絶縁基板110C,210Cの厚みd4=0.5mm
ダイアフラム103C,203Cの厚みd5=0.3mm
各電極の厚みd6=1.0μm
【0283】
<7−4:第4の変形例>
図64は、第4の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部をX軸に沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。図64に示す各構成要素の符号末尾には「D」なる記号が付されているが、当該記号「D」を取り去ると、図17上段に示す物理的構造部の対応する構成要素と同じ符号になる。
【0284】
この第4の変形例と図17に示す物理的構造部との第1の相違点は、前述した第1〜第3の変形例と同様に、各上方電極と上方基板100Dとの間に絶縁基板110Dが挿入され、各下方電極と下方基板200Dとの間に絶縁基板210Dが挿入されている点である。上方基板100Dおよび下方基板200Dを、アルミニウム板やステンレス板などの金属板で構成し、絶縁基板110Dおよび絶縁基板210Dをセラミック板やガラスエポキシ板などの絶縁材料からなる基板で構成できる点は、これまでの変形例と同様である。
【0285】
第2の相違点は、前述した第2,第3の変形例と同様に、下方基板200Dの下面に空洞部Vが形成され、この空洞部V内に、絶縁基板410Dを介して、検出回路Hや検出ユニットUとして機能する回路素子420Dを配置した点である。
【0286】
第3の相違点は、接続部材を、上方基板100Dと下方基板200Dとの間に充填されたゴム層350D(エラストマーからなる層)によって構成した点である。実際には、エラストマーの材料となる粘度状の高分子化合物を両基板間に充填した後、これを硬化させることにより、弾力をもったエラストマーからなるゴム層350Dを形成することができる。
【0287】
一般に、ゴム(エラストマー)は金属や合成樹脂に比べると経年劣化しやすい材料であるため、ゴム層350Dを接続部材として用いた装置は、これまで述べてきたバネや柱状部材を接続部材として用いた装置に比べて、寿命や測定精度の点で劣ることになる。しかしながら、ゴム層350Dによって接続部材を構成すると、バネや柱状部材を配置するための領域を各基板の周縁部に設ける必要がなくなり、構造が単純になり、装置全体を小型化できるメリットが得られる。
【0288】
なお、その他の細かな変更点ではあるが、上方基板100Dの上面にはネジ孔107Dが設けられ、下方基板200Dの下面にはネジ孔207Dが設けられている。これらのネジ孔107D,207Dは、この力検出装置を2つの物体間に接続して用いる場合に利用できる。たとえば、ロボットの手首の部分にこの装置を介挿して利用する場合、ネジ孔107Dを利用して、上方基板100Dの上面にロボットの手の部分を固定し、ネジ孔207Dを利用して、下方基板200Dの下面にロボットの腕の部分を固定することができる。
【0289】
<7−5:第5の変形例>
図65は、本発明に係る力検出装置の第5の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。この第5の変形例は、図64に示す第4の変形例のバリエーションであり、対応する各構成要素の符号末尾には、「D」の代わりに「E」なる記号を付して示してある。
【0290】
前述した第4の変形例では、図64に示されているように、上方基板100Dと下方基板200Dとの間にエラストマーからなるゴム層350Dが介挿されているが、図示のとおり、実際にゴム層350Dの上下両面が接するのは、主として、絶縁基板110D,210Dおよび各電極ということになる。
【0291】
ところが、実際、本願発明者が、絶縁基板110D,210Dの材質としてガラスエポキシを用い、各電極の材質として銅を用いた試作品を制作してみたところ、エラストマーとガラスエポキシ層との界面、およびエラストマーと銅箔との界面における密着性が不十分であるため、ゴム層350Dの介挿によって、上方基板100D(直接的には、絶縁基板110Dおよび上方電極)と、下方基板200D(直接的には、絶縁基板210Dおよび下方電極)と、を十分に接着することが困難であった。すなわち、図64に示す第4の変形例の構造では、ゴム層350Dによる上下の基板の接着強度が、実用上、必ずしも十分ではないことが判明した。
【0292】
図65に示す第5の変形例は、このような問題を解決するための工夫を加えたものである。すなわち、この第5の変形例では、上方基板100Eの周縁部の数カ所に貫通孔107Eが設けられ、下方基板200Eの周縁部の数カ所に貫通孔207Eが設けられている。その他の構成については、第4の変形例と同様である。
【0293】
このように、上下の基板に貫通孔107E,207Eを設けておくと、エラストマーの材料となる粘度状の高分子化合物を両基板間に充填する作業を行った場合に、材料の一部が貫通孔107E,207Eを通って上方基板100Eの上面および下方基板200Eの下面に食み出してくる。そのまま材料を硬化させると、図示のとおり、貫通孔107E,207Eの外部にエラストマーからなる係合固定部351E,352Eが形成される。この係合固定部351E,352Eは、ゴム層350Eと一体構造をなす。しかも、係合固定部351Eは上方基板100Eの上面の貫通孔107E周辺部に係合する構造をもち、係合固定部352Eは下方基板200Eの下面の貫通孔207E周辺部に係合する構造をもつ。
【0294】
このため、上方基板100Eおよび下方基板200Eは、これら係合固定部351E,352Eによって固定された状態になる。もっとも、係合固定部351E,352Eは、貫通孔107E,207E内に充填された部分を含めて、ゴム層350Eと同じ弾力性をもったエラストマーによって構成されているので、上方基板100Eが下方基板200Eに対して三次元の自由度をもって変位可能である点に変わりはない。
【0295】
<7−6:第6の変形例>
図66は、本発明に係る力検出装置の第6の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。この第6の変形例も、図64に示す第4の変形例のバリエーションであり、対応する各構成要素の符号末尾には、「D」の代わりに「F」なる記号を付して示してある。
【0296】
前述した第4の変形例では、図64に示されているように、上方基板100Dと下方基板200Dとの間にエラストマーからなるゴム層350Dが介挿されており、このゴム層350Dは、上下の基板間に隙間なく充填された構造をなす。
【0297】
これに対して、図66に示す第6の変形例では、上下の基板間に挟まれたゴム層360Fは、やはりエラストマーからなる層であるが、隙間なく充填された構造ではなく、基底部361Fの上面に、多数の突起部362Fを上方に向けて植設した構造をなす。図66は、この装置をXZ平面に沿って切断した側断面図であるが、この装置をYZ平面に沿って切断した側断面図も全く同様の図になる。結局、基底部361FはXY平面に平行な平面に沿って延びるシート状の構成要素であり、多数の突起部362Fは、この基底部361Fから上方(Z軸に平行な方向)に生えるようにして伸びる構成要素ということになる。
【0298】
このようなゴム層360Fは、別途の工程で予め成形しておくようにし、これを上下両基板間に挿入して、基底部361Fの下面を下方電極の上面に接着し、突起部362Fの上面を上方電極の下面に接着すればよい。個々の突起部362Fは、図の左右方向および紙面に垂直な方向(すなわち、X軸方向およびY軸方向)に傾斜しやすい性質を有している。したがって、この第6の変形例では、上方基板100FのX軸方向およびY軸方向への変位がしやすくなり、X軸方向およびY軸方向に関する検出感度が向上する。
【0299】
図示のとおり、この第6の変形例でも、下方基板200Fは台座部を有する構造をなし、下面に空洞部Vを確保できるようにしている。この空洞部V内には、絶縁基板410Fおよび回路素子420Fが収容される。また、この装置全体は、筐体500内に収容されており、台座部の底面は、筐体500の底部に固着されている。更に、筐体500の上部には、庇部508が形成され、上方基板100Fの変位量が所定の許容範囲を超えないように制御する制御部材として機能する。
【0300】
すなわち、円盤状の上方基板100Fの周囲側面には、外形の大きなフランジ部108Fおよび109Fが設けられており、筐体500側に設けられた庇部508が、このフランジ部108Fおよび109Fの間の溝部に嵌合している。したがって、上方基板100Fが、X軸方向もしくはY軸方向に所定の許容範囲を超えて変位しようとすると、庇部508が上方基板100Fの周囲側面に設けられた溝部に当接し、過度の変位を抑制する機能を果たす。同様に、上方基板100Fが、Z軸方向に所定の許容範囲を超えて変位しようとすると、庇部508が上方基板100Fの周囲側面に設けられたフランジ部108Fもしくは109Fに当接し、過度の変位を抑制する機能を果たす。
【符号の説明】
【0301】
10:上方基板
20:下方基板
31〜34:バネ
40:上方基板
50:下方基板
60:上方基板
70:下方基板
100:上方基板
100A〜100F:上方基板
101C:上方基板本体部
103C:ダイアフラム
104C:上方接続用縁部
107D:ネジ孔
107E:貫通孔
108F:フランジ部
109F:フランジ部
110A〜110F:絶縁基板
200:下方基板
200A〜200F:下方基板
201B〜201C:基板本体部
202B〜202C:台座部
203C:ダイアフラム
204C:下方接続用縁部
207D:ネジ孔
207E:貫通孔
210A〜210F:絶縁基板
310〜340:バネ
310A〜340A:バネ
310B〜340B:柱状部材
315B〜345B:柱状部材
310C〜340C:柱状部材
350D:ゴム層
350E:ゴム層
351E,352E:係合固定部
360F:ゴム層
361F:基底部
362F:突起部
410B〜410F:絶縁基板
420B〜420F:回路素子(検出回路・検出ユニット)
500:筐体
508:庇部
A0:不使用領域
A1:第1の容量素子C1を構成する一対の電極の平面的な重複領域
A2:第2の容量素子C2を構成する一対の電極の平面的な重複領域
C1:第1の容量素子/その静電容量値
C2:第2の容量素子/その静電容量値
Ca:変位Dγを示す検出値
Cb:変位Dαを示す検出値
Dx,Dy,Dz:各座標軸X,Y,Z方向への変位
Dα,Dβ,Dγ:各座標軸α,β,γ方向への変位
Dγi:変位Dγの任意値
d1〜d6:寸法値
E11:第1の上方電極
E12:第2の上方電極
E21:第1の下方電極
E22:第2の下方電極
E41A,E41B:第1の上方電極
E42:第2の上方電極
E51A,E51B:第1の下方電極
E52:第2の下方電極
E60:第1の櫛状電極
E60A:根幹部(第2の上方電極)
E60B:歯状部(第2の上方電極)
E60C:板状部(第1の上方電極)
E70:第2の櫛状電極
E70A:根幹部(第2の下方電極)
E70B:歯状部(第2の下方電極)
E75:島状電極(第1の下方電極)
F1〜F4:図形
Fx:作用した力のX軸方向成分
Fy:作用した力のY軸方向成分
Fz:作用した力のZ軸方向成分
G1,G2:グラフ
g1,g2:グラフの値
H:検出回路
J1〜J4:バネ接続点
K1,K2,K11〜K26:重み係数
k:補正係数
k1:グラフG1の傾き
k2:グラフG2の傾き
L:切断線
Mx:作用したモーメントのX軸まわり成分
My:作用したモーメントのY軸まわり成分
Mz:作用したモーメントのZ軸まわり成分
N:用いる変位センサの総数
O:XYZ三次元座標系の原点
P:センサの配置点
Q:αβγ三次元座標系の原点
QA,QB:電極の中心点
R1,R2:開口部
S:センサ
T11〜T22:端子
U:検出ユニット
V:空洞部
W1〜W4:斜め方向軸
X,Y,Z:XYZ三次元座標系(グローバル座標系)の各座標軸
α,β,γ:αβγ三次元座標系(ローカル座標系)の各座標軸
ΔC1:静電容量値C1の変動量
ΔC2:静電容量値C2の変動量
ξ1,ξ2:重複区間
φ1〜φ5:寸法値
φ11〜φ22:各電極の直径
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサおよび力検出装置に関し、特に、力とモーメントとを独立して検出するのに適した力検出装置およびこれに利用するための変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや産業機械の動作制御を行うために、種々のタイプの力検出装置が利用されている。たとえば、ロボットの手や足の運動状態を把握するためには、手首や足首に力検出装置が取り付けられ、手や足に作用している力やモーメントの検出が行われる。このような用途に用いる力検出装置には、小型化およびコストダウンを図るために、できるだけ構造を単純にするとともに、三次元空間内での各座標軸に関する力やモーメントをそれぞれ独立して検出できるようにすることが要求される。
【0003】
一般に利用されている多軸力検出装置は、三次元構造体に作用した力の特定の方向成分を、特定の部分に生じた変位として検出するタイプのものと、特定の部分に生じた機械的な歪みとして検出するタイプのものに分類される。前者の変位検出タイプの代表格は、静電容量素子式の力検出装置であり、一対の電極により容量素子を構成しておき、作用した力によって一方の電極に生じた変位を、容量素子の静電容量値に基づいて検出するものである。たとえば、下記の特許文献1には、この静電容量式の力検出装置が開示されている。一方、後者の歪み検出タイプの代表格は、歪みゲージ式の力検出装置であり、作用した力によって生じた機械的な歪みを、ゲージ抵抗などの電気抵抗の変化として検出するものである。たとえば、下記の特許文献2には、この歪みゲージ式の力検出装置が開示されている。しかしながら、これらの装置は、かなり複雑な三次元構造体を用いる必要があり、小型化およびコストダウンを図ることが困難である。
【0004】
このような問題を解決するために、下記の特許文献3,4には、より単純な構造で、力とモーメントとを独立して検出することができる静電容量素子式の力検出装置が提案されている。これらの装置は、上方基板と下方基板との間を、複数の柱状部材によって接続した単純な構造を有しており、下方基板を固定した状態において、上方基板に外力が作用した場合に、各柱状部材の変位状態を静電容量素子の容量値の変化に基づいて検出することにより、外力として作用した力やモーメントを各座標軸に関して独立して検出することができる。すなわち、三次元空間内にXYZ三次元座標系を定義した場合、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分を、それぞれ独立して検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−215627号公報
【特許文献2】特開昭61−292029号公報
【特許文献3】特開2004−325367号公報
【特許文献4】特開2004−354049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の特許文献3,4に開示されている力検出装置は、上述したとおり、比較的単純な構造により、各座標軸に関する力とモーメントとを独立して検出することが可能な利点を有しているが、各柱状部材の傾斜状態などを検出するために、柱状部材の端部に静電容量素子を配置する必要がある。このため、装置全体が厚くならざるを得ず、薄型化が困難であるという問題がある。現在、実用化されているこれらの力検出装置の場合、厚みは30〜50mm程度であり、商用製品として更に薄型化を図ることは困難である。
【0007】
これに対して、ロボットの手首や足首などの間接部分に設けられる力検出装置には、更なる薄型化が望まれており、実用上は、10mm程度の厚みの製品が好ましいとされている。また、コストダウンを図る上で、構造を更に単純化した製品が望まれている。
【0008】
そこで本発明は、各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントをそれぞれ独立して検出することができ、しかも構造が単純で、薄型化に適した力検出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような力検出装置への利用に適した変位センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の第1の態様は、互いに平行になるように対向して配置された上方基板および下方基板と、上方基板と下方基板とを接続する接続部材と、を有する構造体であって、下方基板を固定した状態において、上方基板に外力を作用させた場合に、上方基板が下方基板に対して変位を生じるように、接続部材の少なくとも一部分が可撓性を有している、そのような構造体について、上記変位を検出する機能をもった変位センサにおいて、
上方基板の下面に形成された第1の上方電極および第2の上方電極と、
下方基板の上面に形成された第1の下方電極および第2の下方電極と、
第1の上方電極と第1の下方電極とによって構成される第1の容量素子の静電容量値C1と、第2の上方電極と第2の下方電極とによって構成される第2の容量素子の静電容量値C2と、に基づいて、所定の検出信号を出力する検出回路と、
を設け、
上方基板内の所定位置に原点Qを定義し、この原点Qを含み、上方基板の基板面に平行な平面上に、原点Qを通り互いに直交するα軸およびβ軸を定義し、原点Qを通りαβ平面に対して直交するγ軸を定義することにより、αβγ三次元直交座標系を定義したときに、
第1の上方電極および第1の下方電極のαβ平面上への正射影像に関して、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極となる一方の電極の正射影像の領域が包含電極となる他方の電極の正射影像の領域内に包含され、かつ、上方基板が下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、および、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、上記包含関係が依然として維持されるように、第1の上方電極および第1の下方電極の配置および形状を設定し、
第2の上方電極および第2の下方電極のαβ平面上への正射影像に関して、両正射影像の重複領域の図形形状が、上方基板が下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに変化し、かつ、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに不変であるように、第2の上方電極および第2の下方電極の配置および形状を設定し、
検出回路が、静電容量値C1の変動量ΔC1を原点Qのγ軸方向の変位Dγを示す検出信号として出力し、静電容量値C2の変動量ΔC2から変位Dγに起因する変動量を除去した値を原点Qのα軸方向の変位Dαを示す検出信号として出力するようにしたものである。
【0010】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る変位センサにおいて、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極のαβ平面上への正射影像が、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、被包含電極の配置および形状を設定したものである。
【0011】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1の態様に係る変位センサにおいて、
第1の上方電極と第1の下方電極とからなる電極対を複数組設け、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極群のαβ平面上への正射影像からなる平面パターンが、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、被包含電極群の配置および形状を設定したものである。
【0012】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1の態様に係る変位センサにおいて、
第2の上方電極が内部に開口部を有する形状をなし、第1の上方電極がこの第2の上方電極の開口部内に配置され、第2の下方電極が内部に開口部を有する形状をなし、第1の下方電極がこの第2の下方電極の開口部内に配置されているようにしたものである。
【0013】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係る変位センサにおいて、
第1の上方電極の外形、第2の上方電極の開口部の形状、第1の下方電極の外形、第2の下方電極の開口部の形状がいずれも円であり、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら各円の中心点がγ軸上に位置するようにしたものである。
【0014】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る変位センサにおいて、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極の外形図形と第2の下方電極の外形図形とについて、
一方の図形を図形F1、他方の図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の図形を図形F3、他方の図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、
図形F3および図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす、
という条件が満たされるようにしたものである。
【0015】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る変位センサにおいて、
第2の上方電極の外形図形および第2の下方電極の外形図形が、α軸に平行な2辺とβ軸に平行な2辺とをもった矩形をなし、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら2つの矩形について、
一方の矩形を矩形F1、他方の矩形を矩形F2としたときに、矩形F1のα軸正方向側の辺が、矩形F2のα軸正方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、矩形F1のα軸負方向側の辺が、矩形F2のα軸負方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の矩形を矩形F3、他方の矩形を矩形F4としたときに、矩形F4のβ軸正方向側の辺が、矩形F3のβ軸正方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、矩形F4のβ軸負方向側の辺が、矩形F3のβ軸負方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置する、
という条件が満たされるようにしたものである。
【0016】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る変位センサにおいて、
第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状が、それぞれ複数の部分図形の集合体によって構成されており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極を構成する部分図形と第2の下方電極を構成する部分図形とについて、
一方の部分図形を図形F1、他方の部分図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の部分図形を図形F3、他方の部分図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、
図形F3および図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす、
という条件が満たされるようにしたものである。
【0017】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る変位センサにおいて、
第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなし、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極を構成する櫛状図形と第2の下方電極を構成する櫛状図形とについて、
一方の櫛状図形を図形F1、他方の櫛状図形を図形F2としたときに、図形F1の根幹部は図形F2の根幹部に比べて、所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、図形F1の各歯状部は根幹部からβ軸正方向側に伸び、図形F2の各歯状部は根幹部からβ軸負方向側に伸び、図形F1の各歯状部のα軸方向に関する配列周期と図形F2の各歯状部のα軸方向に関する配列周期とは位相がずれており、
一方の櫛状図形を図形F3、他方の櫛状図形を図形F4として、αβ平面上へ図形F3および図形F4の正射影像を形成した場合に、図形F3の各歯状部の正射影像は、図形F4の対応する各歯状部の正射影像に部分的に重なり合い、図形F3の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F4の根幹部の正射影像までは届かず、図形F4の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F3の根幹部の正射影像を突き抜け、
図形F4の各歯状部の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の対応する歯状部および根幹部の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす、
という条件が満たされるようにしたものである。
【0018】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第9の態様に係る変位センサにおいて、
平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、この根幹部の中央からβ軸方向に伸びる板状部と、を有する櫛状図形をなす第1の櫛状電極を上方基板の下面もしくは下方基板の上面に形成し、板状部および必要に応じてその付け根に位置する根幹部の一部分を第1の上方電極もしくは第1の下方電極とし、第1の櫛状電極の各歯状部および根幹部を第2の上方電極もしくは第2の下方電極とし、
平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなす第2の櫛状電極と、板状部に対向する位置に配置された島状電極と、を下方基板の上面もしくは上方基板の下面に形成し、島状電極を第1の下方電極もしくは第1の上方基板とし、第2の櫛状電極を第2の下方電極もしくは第2の上方電極とするようにしたものである。
【0019】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第10の態様に係る変位センサを複数N組用いて構成した力検出装置において、
互いに平行になるように対向して配置された上方基板および下方基板と、
上方基板と下方基板とを接続する部材であって、下方基板を固定した状態において、上方基板に外力を作用させた場合に、上方基板が下方基板に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有している接続部材と、
上記複数N組の変位センサと、
この複数N組の変位センサを利用して、上方基板に作用した外力を検出する検出ユニットと、
を設け、
複数N組の変位センサは、それぞれ、上方基板の下面に形成された第1の上方電極および第2の上方電極と、下方基板の上面に形成された第1の下方電極および第2の下方電極と、検出回路と、を有し、
上方基板内の所定のN箇所に、それぞれローカルなαβγ三次元直交座標系の原点Qが定義され、複数N組の変位センサは、上方基板の各ローカル原点Qの位置についてのγ軸方向の変位Dγおよびα軸方向の変位Dαを検出できるように配置され、
上方基板内の所定位置にグローバル原点Oを定義し、このグローバル原点Oを含み、上方基板の基板面に平行な平面上に、グローバル原点Oを通り互いに直交するX軸およびY軸を定義し、グローバル原点Oを通りXY平面に対して直交するZ軸を定義することにより、グローバルなXYZ三次元直交座標系を定義したときに、検出ユニットが、複数N組の変位センサの各検出回路から出力される変位についての検出信号に基づいて、上方基板の原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および上方基板の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のうちの少なくとも1つを検出するようにしたものである。
【0020】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
4組の変位センサを用意し、
第1のセンサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2のセンサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3のセンサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4のセンサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向き、第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、第4のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向くように、この4組のセンサを配置したものである。
【0021】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の外側センサと、を用意し、
第1の内側センサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2の内側センサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3の内側センサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4の内側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の内側センサのα軸正方向がY軸正方向を向き、第2の内側センサのα軸正方向がY軸負方向を向き、第3の内側センサのα軸正方向がX軸負方向を向き、第4の内側センサのα軸正方向がX軸正方向を向くように、この4組の内側センサを配置し、
第1の外側センサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2の外側センサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3の外側センサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4の外側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の外側センサのα軸正方向が第1の内側センサのα軸負方向を向き、第2の外側センサのα軸正方向が第2の内側センサのα軸負方向を向き、第3の外側センサのα軸正方向が第3の内側センサのα軸負方向を向き、第4の外側センサのα軸正方向が第4の内側センサのα軸負方向を向くように、この4組の外側センサを配置したものである。
【0022】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
4組の変位センサを用意し、
第1のセンサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサのローカル原点QがXY座標系の第3象限に位置し、第4のセンサのローカル原点QがXY座標系の第4象限に位置し、
第1のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、第3のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向き、第4のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向くように、この4組のセンサを配置したものである。
【0023】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
3組の変位センサを用意し、
第1のセンサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、この3組のセンサを配置したものである。
【0024】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の外側センサと、を用意し、
第1の外側センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の外側センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の外側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の外側センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2の外側センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3の外側センサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、この3組の外側センサを配置し、
第1の内側センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の内側センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の内側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の内側センサのα軸正方向が第1の外側センサのα軸負方向を向き、第2の内側センサのα軸正方向が第2の外側センサのα軸負方向を向き、第3の内側センサのα軸正方向が第3の外側センサのα軸負方向を向くように、この3組の内側センサを配置したものである。
【0025】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
3組の主センサと、3組の副センサと、を用意し、
第1の主センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の主センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の主センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
第1の主センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2の主センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3の主センサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、この3組の主センサを配置し、
第1の副センサのローカル原点Qが第1の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第2の副センサのローカル原点Qが第2の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第3の副センサのローカル原点Qが第3の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、
第1の副センサのα軸正方向が第1の主センサのα軸負方向を向き、第2の副センサのα軸正方向が第2の主センサのα軸負方向を向き、第3の副センサのα軸正方向が第3の主センサのα軸負方向を向くように、この3組の副センサを配置したものである。
【0026】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第1〜第17の態様に係る変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材を、複数のばね、もしくは弾性変形を生じる複数の柱状部材によって構成したものである。
【0027】
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第1〜第17の態様に係る変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材を、上方基板の周囲に設けられた上方接続用縁部と、下方基板の周囲に設けられた下方接続用縁部と、上方接続用縁部と下方接続用縁部とを接続する複数の柱状部材と、によって構成し、
上方接続用縁部のうち柱状部材の上端が接続された接続部分の近傍と、下方接続用縁部のうち柱状部材の下端が接続された接続部分の近傍とを、ダイアフラムもしくはビーム構造体によって構成したものである。
【0028】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第1〜第17の態様に係る変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材を、上方電極と下方電極との間に配置されたゴム層によって構成したものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る変位センサは、上方基板および下方基板に、形状および配置が所定の幾何学的条件を満足する4種類の電極(第1および第2の上方電極ならびに第1および第2の下方電極)を設けることにより構成される。ここで、これらの電極によって構成される2つの容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、上方基板の原点Qの位置におけるα軸方向の変位Dαおよびγ軸方向の変位Dγを独立して検出することができる。このような機能をもった変位センサは、構造が単純で、薄型化に適した力検出装置を実現するために有用である。
【0030】
一方、本発明に係る力検出装置は、上方基板および下方基板、ならびにこれらを接続する接続部材を備えた物理的構造体の複数N箇所に、上記変位センサをそれぞれ特定の向きに配置することによって構成される。このため、複数N個の変位センサのそれぞれから、各配置場所に定義されたローカルなαβγ三次元直交座標系におけるα軸方向の変位Dαおよびγ軸方向の変位Dγの検出値が得られることになり、これらの検出値に基づいて、グローバルなXYZ三次元直交座標系上で上方基板に作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントをそれぞれ独立して検出することができる。しかも、上記変位センサを利用したため、構造が単純で、薄型化に適した力検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る変位センサおよびその適用対象となる構造体の物理的構造部を示す斜視図ならびに検出処理部を示すブロック図である。
【図2】図1に示す構造体の上方基板10の下面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図3】図1に示す構造体の下方基板20の上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図4】図1に示す構造体および電極の上面図である(上方基板10については透視した状態を示し、バネは図示省略)。
【図5】図1に示す構造体および電極をαγ平面で切断した縦断面図である(バネは図示省略)。
【図6】図1に示す構造体および電極をβγ平面で切断した縦断面図である(バネは図示省略)。
【図7】図5の縦断面図に示されている各構成部分における第1の容量素子C1の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。
【図8】図6の縦断面図に示されている各構成部分における第1の容量素子C1の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。
【図9】図5の縦断面図に示されている各構成部分における第2の容量素子C2の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。
【図10】図6の縦断面図に示されている各構成部分における第2の容量素子C2の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。
【図11】図1に示す変位センサにおける各容量素子C1,C2と検出回路Hとの接続を示す回路図および変位と静電容量値の変動との関係を示すテーブルである。
【図12】図1に示す各基板および第1の容量素子C1を形成する上下電極のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図13】図1に示す各基板および第2の容量素子C2を形成する上下電極のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図14】図1に示す変位センサにおける検出回路Hで行われる演算処理を示すテーブルである。
【図15】図14のテーブルに示されている補正係数kの設定原理を示すグラフである。
【図16】図1に示す変位センサにおける検出回路Hで行われる演算処理によって変位Dγ,Dαが得られる原理を示す図である。
【図17】本発明に係る力検出装置の物理的構造部を示す斜視図(各電極は図示省略)および電気的処理部を示すブロック図である。
【図18】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、上方基板100内に定義された4つの配置点の位置および4組のローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す上面図である。
【図19】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の上方基板100の下面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図20】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の下方基板200の上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図21】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。
【図22】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。
【図23】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図24】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にY軸正方向の力+Fyが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図25】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。
【図26】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図27】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にY軸正まわりのモーメント+Myが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。
【図28】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にY軸正まわりのモーメント+Myが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図29】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にX軸正まわりのモーメント+Mxが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図30】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100にZ軸正まわりのモーメント+Mzが作用したときの電極の変位状態を示すXY平面上への正射影投影図である。
【図31】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの4組の変位センサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図32】図31に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図33】本発明に係る力検出装置の第2の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。
【図34】図33に示す8組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図35】図33に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの8組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図36】図35に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図37】本発明に係る力検出装置の第3の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。
【図38】図37に示す4組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図39】図37に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの4組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図40】図39に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図41】本発明に係る力検出装置の第4の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。
【図42】図41に示す3組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図43】図41に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの3組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図44】図43に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図45】図41に示す力検出装置の3組のセンサの位置をずらした場合に用いられる演算式を示す図である。
【図46】本発明に係る力検出装置の第5の実施形態に用いられる6組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図47】図46に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの6組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図48】図47に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図49】本発明に係る力検出装置の第6の実施形態に用いられる6組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。
【図50】図49に示す力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの6組のセンサの各検出値の変動を示すテーブルである。
【図51】図50に示すテーブルに基づいて、作用した各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを求める演算式を示す図である。
【図52】図1に示す構造体および電極のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。バネは図示省略)。
【図53】本発明に係る変位センサの第1の変形例の物理的構造部の上面図である(上方基板40については透視した状態を示し、バネは図示省略)。
【図54】図53に示す変位センサの物理的構造部のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。バネは図示省略)。
【図55】本発明に係る変位センサの第2の変形例の物理的構造部の上面図である(上方基板60については透視した状態を示し、バネは図示省略)。
【図56】図55に示す変位センサの物理的構造部のαβ平面上への正射影投影図である(ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。バネは図示省略)。
【図57】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネについては、取付位置のみ表示)。
【図58】本発明に係る力検出装置の第1の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部を切断線Lに沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。
【図59】本発明に係る力検出装置の第2の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図60】図59に示す変形例の接続部材を変更した例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図61】本発明に係る力検出装置の第3の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図62】図61に示す変形例の主要部分のXY平面上への正射影投影図である。
【図63】図61に示す変形例の主要部分の寸法図である(電極の詳細構造は省略)。
【図64】本発明に係る力検出装置の第4の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図65】本発明に係る力検出装置の第5の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【図66】本発明に係る力検出装置の第6の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0033】
<<< §1.変位センサの物理的構造 >>>
まず、本発明に係る変位センサの物理的構造を説明する。図1は、本発明に係る変位センサおよびその適用対象となる構造体の物理的構造部を示す斜視図(上段)ならびに検出処理部(下段の検出回路H)を示すブロック図である。
【0034】
図1上段の斜視図には、上方基板10、下方基板20、バネ31〜34によって構成された構造体(本発明に係る変位センサの適用対象となる構造体)が示されている。上方基板10および下方基板20は、互いに平行になるように対向して配置された一対の基板であり、バネ31〜34は、上方基板10と下方基板20とを接続する接続部材としての機能を果たす。ここで、接続部材は、下方基板20を固定した状態において、上方基板10に外力を作用させた場合に、上方基板10が下方基板20に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有している必要がある。バネ31〜34は、このような性質をもった接続部材の典型例であるが、接続部材は必ずしもバネに限定されるものではない。接続部材のバリエーションについては、§7で述べることにする。
【0035】
ここでは、図示のように、この構造体について、上方基板10内の任意の位置に原点Qを定義し、この原点Qを含み、上方基板10の基板面(上面および下面)に平行な平面上に、原点Qを通り互いに直交するα軸およびβ軸を定義し、更に、原点Qを通りαβ平面に対して直交するγ軸を定義することにより、αβγ三次元直交座標系を定義する。図示の例の場合、図の右方向がα軸の正方向、図の奥方向がβ軸の正方向、図の上方向がγ軸の正方向となるように、αβγ三次元直交座標系を定義している。
【0036】
なお、ここで、各座標軸の表記を、一般的なX,Y,Zとせずに、α,β,γとしたのは、後述するように、αβγ三次元直交座標系がローカル原点Qについて定義されたローカル座標系であるため、§3以降で言及するグローバルなXYZ三次元直交座標系と区別するための便宜である。
【0037】
さて、このような構造体では、下方基板20を固定した状態において、上方基板10に対して外力を作用させると、上方基板10は下方基板20に対して変位を生じることになる。ここでは、特に、上方基板10内の原点Qの位置についての変位を考える。上方基板10の変位方向は任意であるが、当該変位は、図に白矢印で示すとおり、αβγ三次元直交座標系におけるα軸方向の変位Dα,β軸方向の変位Dβ,γ軸方向の変位Dγの3成分に分解することができる。
【0038】
本発明に係る変位センサは、この3成分のうち、変位Dαと変位Dγの2成分を検出する機能を有している。変位Dαは、基板面に平行な特定方向についての変位であり、変位Dγは、基板面に垂直な方向についての変位である。上方基板10内の任意の点Qの位置について、このような2成分の変位検出を行うことができる変位センサを複数用いれば、§3以降で詳述するとおり、力とモーメントを独立して検出可能な力検出装置を実現することができる。
【0039】
本発明に係る変位センサの構成要素は、上方基板10の下面に形成された第1の上方電極E11および第2の上方電極E12と、下方基板20の上面に形成された第1の下方電極E21および第2の下方電極E22と、検出回路Hである。第1の上方電極E11と第1の下方電極E21とは対向しており、両者によって第1の容量素子C1が形成され、第2の上方電極E12と第2の下方電極E22とは対向しており、両者によって第2の容量素子C2が形成される。検出回路Hは、第1の容量素子C1の静電容量値と、第2の容量素子C2の静電容量値と、に基づいて、所定の検出信号を出力する機能を果たすが、その詳細な処理動作については、§2で述べることにする。
【0040】
結局、上方基板10,下方基板20,バネ31〜34によって構成される構造体について、上方基板10に生じた変位を検出するための変位センサが設けられていることになり、当該変位センサは、4枚の電極E11,E12,E21,E22と検出回路Hという単純な要素から構成されていることになる。ここで、4枚の電極E11,E12,E21,E22の幾何学的な形状および配置は非常に重要である。
【0041】
図2は、図1に示す上方基板10の下面図であり、図3は、図1に示す下方基板20の上面図である。図2が下面図であるのに対して、図3が上面図であるため、両平面図では、β軸の向きが逆になっている。なお、これら両平面図におけるハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない。
【0042】
図2,図3に示されているとおり、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21は、いずれもγ軸(α軸とβ軸との交点において、紙面に直交する方向に伸びる)を中心とした円形の電極であるが、電極E11の直径の方が電極E21の直径よりも大きくなるように設定されている。一方、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22は、いずれも矩形の電極であり、いずれも内部に円形の開口部を有している。しかも、円形の電極E11は、矩形の電極E12に形成された円形の開口部R1内に配置され、円形の電極E21は、矩形の電極E22に形成された円形の開口部R2内に配置されている。
【0043】
ここで、電極E11,E12の間や、電極E21,E22の間には、空隙が設けられており、各電極は互いに接触せず、独立した状態となっている。また、上方基板10および下方基板20の少なくとも電極形成面は絶縁材料で構成されており、4枚の電極E11,E12,E21,E22は相互に電気的な絶縁状態におかれている。前述したとおり、電極E11,E21は上下に対向する電極対を構成し、第1の容量素子C1として機能し、電極E12,E22も上下に対向する電極対を構成し、第2の容量素子C2として機能する。
【0044】
図4は、図1に示す構造体および電極の上面図であるが、便宜上、上方基板10については透視した状態を示す。したがって、図において、上方電極E11,E12は、実線で描かれており、下方電極E21,E22は、上方電極によって隠れた部分が破線で描かれている。なお、バネ31〜34は図示を省略している。
【0045】
一方、図5は、図1に示す構造体および電極をαγ平面で切断した縦断面図であり、図6は、図1に示す構造体および電極をβγ平面で切断した縦断面図である。いずれも、バネ31〜34は図示を省略している。なお、図1の斜視図に描かれた構造体と、図2〜図6の平面図もしくは断面図に描かれた構造体とでは、各部の寸法に厳密な整合性はない。これは、説明の便宜上、図1の斜視図が、各部の寸法を無視して、全体をデフォルメして描いた図になっているためである。具体的な実施形態における各部の好ましい寸法値は、後に§7で例示する。
【0046】
図5および図6を見れば、電極E11,E21が上下で対向して第1の容量素子C1を形成し、電極E12,E22が上下で対向して第2の容量素子C2を形成している様子が理解できよう。ただ、電極E11,E21は相互に形状や大きさが異なる電極であるから、第1の容量素子C1の形成に寄与するのは、両電極のうちの平面的に重なり合う一部の領域だけである。同様に、電極E12,E22も相互に形状や大きさが異なる電極であるから、第2の容量素子C2の形成に寄与するのは、両電極のうちの平面的に重なり合う一部の領域だけである。
【0047】
図7は、図5の縦断面図に示されている各構成部分における第1の容量素子C1の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図であり、図8は、図6の縦断面図に示されている各構成部分における第1の容量素子C1の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。図4の平面図において、円形の電極E21は円形の電極E11の領域内に包含されているため、結局、上下で対向する領域は、円形の電極E21の全領域に相当する部分ということになる。
【0048】
すなわち、図7および図8に示すとおり、電極E11の直径をφ11とし、電極E21の直径をφ21とすれば、φ11>φ21であるから、第1の容量素子C1は、実質的に、直径φ21をもった一対の円盤状電極によって形成された容量素子ということになる。図示のとおり、電極E11,E21には、端子T11,T21への配線が施され、検出回路Hによって両端子T11,T21間の静電容量値が測定されることになる。こうして測定された静電容量値は、結局、電極E11,E21のうち、図のハッチング部分についての静電容量値ということになる。
【0049】
同様に、図9は、図5の縦断面図に示されている各構成部分における第2の容量素子C2の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図であり、図10は、図6の縦断面図に示されている各構成部分における第2の容量素子C2の形成に寄与する部分(ハッチング部分)を示す図である。図4の平面図に示すとおり、矩形の電極E12,E22は、それぞれ円形の開口部R1,R2を有しており、しかも大きさや形状が異なり、配置もずれているため、平面的に重なり合う部分のみが、第2の容量素子C2の形成に寄与する領域ということになる。
【0050】
図9において、電極E12,E22は、α軸方向に関して重複区間ξ1において平面的に重なり合っているが、開口部が除外されるため、結局、図のハッチング部分のみが容量素子の形成に寄与することになる。同様に、図10において、電極E12,E22は、β軸方向に関して重複区間ξ2において平面的に重なり合っているが、開口部が除外されるため、結局、図のハッチング部分のみが容量素子の形成に寄与することになる。図示のとおり、電極E12,E22には、端子T12,T22への配線が施され、検出回路Hによって両端子T12,T22間の静電容量値が測定されることになるが、こうして測定された静電容量値は、結局、電極E12,E22のうち、図のハッチング部分についての静電容量値ということになる。
【0051】
<<< §2.変位センサの検出処理 >>>
続いて、ここでは、§1で述べた変位センサによる変位検出処理を説明する。図11は、図1に示す変位センサにおける各容量素子C1,C2と検出回路Hとの接続を示す回路図(図の左側)および変位と静電容量値の変動との関係を示すテーブル(図の右側)である。
【0052】
既に述べたとおり、第1の容量素子C1は、第1の上方電極E11と第1の下方電極E21との有効領域(平面的に重なりを生じている領域)によって構成される容量素子であり、第2の容量素子C2は、第2の上方電極E12と第2の下方電極E22との有効領域(平面的に重なりを生じている領域)によって構成される容量素子である。
【0053】
各電極E11〜E22への配線がなされている端子T11〜T22は、図示のとおり、検出回路Hへ接続される。検出回路Hは、両端子T11,T21間の静電容量値を第1の容量素子C1の静電容量値として検出し、両端子T12,T22間の静電容量値を第2の容量素子C2の静電容量値として検出する機能を有している。ここでは、第1の容量素子C1の静電容量値を同じ符号「C1」を用いて表し、第2の容量素子C2の静電容量値を同じ符号「C2」を用いて表すことにする。なお、静電容量値C1,C2を電気的に検出する電子回路は、一般に広く利用されている公知の回路であるため、ここでは、その具体的な回路構成についての説明は省略する。
【0054】
図11の右側に示すテーブルは、図1に示す構造体において、下方基板20を固定した状態で上方基板10の原点Qの位置に各座標軸方向の変位+Dα,+Dβ,+Dγが生じたとき、検出回路Hによって検出される静電容量値C1,C2がどのように変動するかを示している。すなわち、変動欄の「0」は、静電容量値に何ら変動が生じないことを示しており、変動欄の「−ΔC1」や「−ΔC2」は、静電容量値に変動が生じることを示している。
【0055】
なお、この図11の右側に示すテーブルでは(後述する図14,図16に示すテーブルも同様)、各座標軸に沿った変位方向が座標軸の正方向なのか負方向なのかを明確にするため、変位量を示す変数Dα,Dβ,Dγは絶対値のみを示し、その頭に「+」や「−」の符号を付して変位方向を示すことにする。たとえば、テーブルの変位欄に記載されている変位+Dα,+Dβ,+Dγは、いずれも各座標軸の正方向への変位を示している。同様に、静電容量値に生じた変動が、容量値が増加する変動なのか減少する変動なのかを明確にするため、変動量を示す変数ΔC1,ΔC2は絶対値のみを示し、その頭に「+」や「−」の符号を付して増加/減少の別を示すことにする。たとえば、テーブルの変動欄に記載されている「−ΔC1」や「−ΔC2」は、静電容量値が減少することを示している。以下、この図11の右側のテーブルに示すような結果が得られる理由を個別に説明しよう。
【0056】
まず、静電容量値C1の変動について考えてみる。図12は、図1に示す各基板10,20および第1の容量素子C1を形成する上下電極E11,E21のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。§1で述べたとおり、電極E11,E21は、γ軸を中心とした同心円状の電極であり、電極E11の直径φ11は、電極E21の直径φ21よりも大きい。したがって、上方基板10が下方基板20に対して変位を生じていない状態では、図示のとおり、被包含電極となる電極E21の正射影像の領域が、包含電極となる電極E11の正射影像の領域内に包含された状態となっている。
【0057】
次に、上方基板10が下方基板20に対して、各座標軸方向に変位を生じた場合を考えよう。たとえば、上方基板10がα軸正方向への変位+Dαを生じると、第1の上方電極E11が、α軸正方向(図12の右方向)へ移動することになる。この場合、変位量が、所定の許容範囲内であれば、上記包含関係は依然として維持されることになる。すなわち、図12において、電極E11が若干右へ動いたとしても、電極E21を包含する状態は維持される。この許容範囲は、図示の例の場合、(φ11−φ21)/2ということになる。
【0058】
上方基板10がα軸負方向への変位−Dαを生じた場合も同様であり、変位量が所定の許容範囲内であれば、上記包含関係は依然として維持される。このような包含関係が維持されている限り、第1の容量素子C1を形成する電極の有効領域面積は一定である。すなわち、電極E11,E21の平面的に重なりを生じている領域(図12にハッチングを施した領域)の面積に変化はない。これは、上方基板10が下方基板20に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、静電容量値C1に変動が生じないことを意味する。図12を参照すれば、上方基板10が下方基板20に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときも、静電容量値C1に変動が生じないことは、容易に理解できよう。
【0059】
これに対して、上方基板10が下方基板20に対してγ軸の正または負方向に変位を生じた場合は、その変位量にかかわらず、静電容量値C1に変動が生じることになる。すなわち、図7,図8に示すとおり、上方基板10のγ軸方向の変位は、両電極E11,E21の電極間距離を変化させることになるので、変位+Dγ(図の上方向への変位)が生じた場合には、電極間距離が広がり静電容量値C1は減少し、変位−Dγ(図の下方向への変位)が生じた場合には、電極間距離が狭まり静電容量値C1は増加する。ここで、静電容量値C1の変動量は、変位量に比例する。
【0060】
図11に示す「C1の変動テーブル」に示されている結果は、このような原理に基づくものである。すなわち、α軸もしくはβ軸方向について、変位+Dα,+Dβが生じても、変位量が所定の許容範囲内であれば、変動欄に「0」と記載されているとおり、静電容量値C1は変動しない(逆方向の変位−Dα,−Dβが生じた場合も同じ結果である)。一方、γ軸について、変位+Dγが生じた場合は、変動欄に「−ΔC1(γ)」と記載されているとおり、静電容量値C1は減少する。ここで、「ΔC1(γ)」は、前述したように、変位+Dγが生じたときの静電容量値C1の変動量の絶対値を示しており、先頭のマイナス符号は「静電容量値の減少」を示している。なお、逆方向の変位−Dγが生じた場合は、「+ΔC1(γ)」になり、静電容量値は増加する。
【0061】
続いて、静電容量値C2の変動について考えてみる。図13は、図1に示す各基板10,20および第2の容量素子C2を形成する上下電極E12,E22のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。図示のとおり、電極E12,E22は、α軸方向に関して重複区間ξ1の部分において、β軸方向に関して重複区間ξ2の部分において、互いに平面的に重なり合っているが、円形の開口部R1が除外されるため、結局、図のハッチング部分のみが容量素子の形成に寄与することになる。
【0062】
ここで、電極E12,E22は、いずれも外形が矩形の図形であり、α軸方向に関しては、電極E12のα軸正方向側の辺が、電極E22のα軸正方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、電極E12のα軸負方向側の辺が、電極E22のα軸負方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置している。要するに、電極E12,E22は、α軸に関してオフセットを生じるようにずれて配置されている。
【0063】
また、β軸方向に関しては、電極E22のβ軸正方向側の辺が、電極E12のβ軸正方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、電極E22のβ軸負方向側の辺が、電極E12のβ軸負方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置している。要するに、電極E22のβ軸方向の幅が、電極E12のβ軸方向の幅よりも大きくなるような寸法設定がなされており、しかも、β軸方向に関しては、電極E12が電極E22に包含されるような配置がなされている。
【0064】
次に、上方基板10が下方基板20に対して、各座標軸方向に変位を生じた場合を考えよう。たとえば、上方基板10がα軸正方向への変位+Dαを生じると、第2の上方電極E12が、α軸正方向(図13の右方向)へ移動することになる。そうすると、α軸方向の重複区間ξ1の長さが減少し、第2の容量素子C2を形成する電極の有効領域面積、すなわち、電極E12,E22の平面的に重なりを生じている領域(図13にハッチングを施した領域)の面積は減少する。これは、上方基板10が下方基板20に対してα軸の正方向に変位を生じたとき、静電容量値C2の値が減少することを意味する。
【0065】
逆に、上方基板10が下方基板20に対してα軸の負方向への変位−Dαを生じたときは、第2の容量素子C2を形成する電極の有効領域面積は増加するので、静電容量値C2の値は増加する。結局、α軸の正もしくは負方向への変位が生じると、静電容量値C2の値が増減することになる。これは、電極E12,E22が、α軸に関してオフセットを生じるようにずれて配置されているためである。なお、このようなα軸の正もしくは負方向への変位量が、所定の許容範囲内(図4において、電極E12の円形開口部R1の輪郭が、電極E22の円形開口部R2の輪郭に接するまでの範囲内)であれば、変位量と有効領域面積の変動量とは比例し、静電容量値C2の変動量は変位量に比例したものになる。したがって、変位量が当該許容範囲内である限り、静電容量値C2の変動量は、変位量に比例する。
【0066】
一方、上方基板10がβ軸正方向への変位+Dβを生じると、第2の上方電極E12が、β軸正方向(図13の上方向)へ移動することになり、上方基板10がβ軸負方向への変位−Dβを生じると、第2の上方電極E12が、β軸負方向(図13の下方向)へ移動することになる。ただ、この場合の変位量が、所定の許容範囲内であれば、具体的には、電極E12のβ軸正方向側の辺が、電極E22のβ軸正方向側の辺を越えず、電極E12のβ軸負方向側の辺が、電極E22のβ軸負方向側の辺を越えない範囲内であり、かつ、電極E12の円形開口部R1の輪郭が、電極E22の円形開口部R2の輪郭に接するまでの範囲内であれば、β軸方向に関して、電極E12が電極E22に包含されるという関係が維持されることになり、図13にハッチングを施して示した第2の容量素子C2を形成する電極の有効領域面積は一定になる。これは、上方基板10が下方基板20に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、静電容量値C2に変動が生じないことを意味する。
【0067】
これに対して、上方基板10が下方基板20に対してγ軸の正または負方向に変位を生じた場合は、その変位量にかかわらず、静電容量値C2に変動が生じることになる。すなわち、図9,図10に示すとおり、上方基板10のγ軸方向の変位は、両電極E12,E22の電極間距離を変化させることになるので、変位+Dγ(図の上方向への変位)が生じた場合には、電極間距離が広がり静電容量値C2は減少し、変位−Dγ(図の下方向への変位)が生じた場合には、電極間距離が狭まり静電容量値C2は増加する。ここで、静電容量値C2の変動量は、変位量に比例する。
【0068】
図11に示す「C2の変動テーブル」に示されている結果は、このような原理に基づくものである。すなわち、β軸方向について、変位+Dβが生じても、変位量が所定の許容範囲内であれば、変動欄に「0」と記載されているとおり、静電容量値C2は変動しない(逆方向の変位−Dβが生じた場合も同じ結果である)。
【0069】
一方、α軸について、変位+Dαが生じた場合は、変動欄に「−ΔC2(α)」と記載されているとおり、静電容量値C2は減少する。ここで、「ΔC2(α)」は、前述したように、変位+Dαが生じたときの静電容量値C2の変動量の絶対値を示しており、先頭のマイナス符号は「静電容量値の減少」を示している。なお、逆方向の変位−Dαが生じた場合は、「+ΔC2(α)」になり、静電容量値は増加する。同様に、γ軸について、変位+Dγが生じた場合は、変動欄に「−ΔC2(γ)」と記載されているとおり、静電容量値C2は減少する。ここで、「ΔC2(γ)」は、前述したように、変位+Dγが生じたときの静電容量値C2の変動量の絶対値を示しており、先頭のマイナス符号は「静電容量値の減少」を示している。なお、逆方向の変位−Dγが生じた場合は、「+ΔC2(γ)」になり、静電容量値は増加する。
【0070】
さて、図11に示す変動テーブルから導出される第1の事項は、「静電容量値C1は、γ軸方向の変位が生じた場合にのみ変動を生じる」という点であり、「静電容量値C1の変動は、γ軸方向の変位にのみ起因する」という点である。これは、「静電容量値C1の変動量は、γ軸方向の変位量を示す」ことに他ならない。そして、第2の事項は、「静電容量値C2は、α軸方向の変位が生じた場合もしくはγ軸方向の変位が生じた場合に変動を生じる」という点であり、「静電容量値C2の変動は、α軸方向の変位およびγ軸方法の変位の双方に起因する」という点である。別言すれば、静電容量値C2の変動分は、α軸方向の変位に起因する変動分とγ軸方向の変位に起因する変動分とを合成したものになる。そこで、この静電容量値C2の変動分から、γ軸方向の変位に起因する変動分を除去すれば、α軸方向の変位に起因する変動分のみを得ることができる。検出回路Hは、このような考え方に基づいて、γ軸方向の変位とα軸方向の変位とを、静電容量値C1,C2の変動量から求める処理を行う。
【0071】
具体的には、図14の上段に示すように、2つの検出値Ca,Cbを定義する。ここで、検出値Caは、「Ca=−C1」なる式で定義される値であり、後述するように、γ軸方向の変位Dγを示す検出値になる。一方、検出値Cbは、「Cb=−C2+k・C1」なる式で定義される値であり、後述するように、α軸方向の変位Dαを示す検出値になる。このような2つの検出値Ca,Cbを定義すると、図14の下段に示すようなテーブルが得られる。このテーブルは、変位+Dα,+Dβ,+Dγが生じた場合の、検出値Ca,Cbの変動を示すものであり、図11に示すC1,C2の変動テーブルと、上述した検出値Ca,Cbの定義式とに基づいて導出されるテーブルである。
【0072】
すなわち、検出値Caは、静電容量値C1の値の符号を逆転させたものであるから、図14に示すCaの変動欄は、図11に示すC1の変動欄の符号を逆転することにより得られる。検出値Caを、「Ca=−C1」なる式で定義するのは、図1に示すような方向にα軸,β軸,γ軸を定義すると、図11の「C1の変動テーブル」に示されているように、正方向の変位+Dγに対して、−ΔC1(γ)なる負の変動量をとる静電容量値C1の減少が生じ、γ軸方向に関する変位量と静電容量値C1の変動量との間に符号の逆転現象が生じるためである。検出値Caを、静電容量値C1の値の符号を逆転させたものとして定義することにより、検出値Caの変動量とγ軸方向に関する変位量との符号を一致させることができ、検出値Caをγ軸方向に関する変位Dγを示す値として用いることができるようになる。もちろん、図1において図の下方をγ軸の正方向と定義すれば、Ca=C1なる定義を行うことができる。
【0073】
一方、検出値Cbは、「Cb=−C2+k・C1」なる式で定義される値であるから、図14に示すCbの変動欄は、図11に示すC1,C2の変動欄の内容に、上記式による演算を施すことにより得られる。すなわち、変位+Dαが生じた場合には、C1の変動は0であるから、「Cb=−C2」なる式により、Cbの変動欄は「+ΔC2(α)」となる。これにより、α軸方向に関する変位量と静電容量値C2の変動量との間に生じる符号の逆転現象の問題を解消することができる。α軸方向に関する変位Dαが生じた場合、検出値Cbが、静電容量値C2の値の符号を逆転させたものとして定義されるので、検出値Cbの変動量とα軸方向に関する変位量との符号を一致させることができる。
【0074】
また、変位+Dγが生じた場合のCbの変動量は、図14のテーブルに示すとおり、「+ΔC2(γ)−k・ΔC1(γ)」となるが、補正係数kを所定値に設定しておけば、「ΔC2(γ)=k・ΔC1(γ)」とすることができ、Cbの変動量=0にすることができる。その理由を、もう少し詳しく説明しよう。図11の「C1の変動テーブル」に示されているとおり、「ΔC1(γ)」は、変位+Dγが生じた場合の静電容量値C1の変動量の絶対値である。一方、図11の「C2の変動テーブル」に示されているとおり、「ΔC2(γ)」は、変位+Dγが生じた場合の静電容量値C2の変動量の絶対値である。いずれも変位+Dγに起因して生じる変動量の絶対値であるが、同一の変位+Dγが生じた場合でも、一般的には、「ΔC2(γ)=ΔC1(γ)」にはならない。これは、第1の容量素子C1と第2の容量素子C2とでは、電極の有効領域面積が異なるため、同じ変位量Dγに起因して生じる静電容量値の変動量(すなわち、変位量の検出感度)が異なるためである。
【0075】
補正係数kは、このような検出感度の相違を補正するための係数である。図15は、図14のテーブルに示されている補正係数kの設定原理を示すグラフである。このグラフの横軸は変位Dγを示し、縦軸は容量素子C1,C2の静電容量値の変動ΔC1,ΔC2を示している。また、グラフG1は、静電容量値C1の変動ΔC1(γ)を示し、グラフG2は、静電容量値C2の変動ΔC2(γ)を示している。
【0076】
なお、このグラフに示されている変数Dγ,ΔC1,ΔC2は、これまでのテーブルに示された変数のような絶対値ではなく、符号を含めた値を示している。したがって、各変数Dγ,ΔC1,ΔC2は、負〜正の範囲内の値をとる。上述したとおり、変位Dγが正の場合(γ軸の正方向への変位が生じた場合)、容量値は減少するので、変動ΔC1,ΔC2は負の値をとる。したがって、グラフG1,G2の傾きはいずれも負となる。ただ、変位Dγの絶対値が所定の許容範囲内にあれば、いずれのグラフも線形性を有しており、グラフG1,G2は傾斜が異なるだけである。
【0077】
そこで、変位Dγの値が任意の値DγiのときのグラフG1,G2の値をそれぞれg1,g2として、k=g2/g1となるように補正係数kを設定する。グラフG1,G2の傾きをそれぞれk1,k2とすれば、k=k2/k1=g2/g1ということになる。傾きk1は第1の容量素子C1による変位量Dγの検出感度に相当し、傾きk2は第2の容量素子C2による変位量Dγの検出感度に相当する。したがって、補正係数kは、両者の感度を補正する係数ということになる。図15に示すグラフの傾きk1,k2もしくはグラフの値g1,g2は、各電極の形状、寸法、配置などの幾何学的条件から演算によって求めることもできるし、実際の変位センサを用いた実測によって求めることもできる。したがって、実際の変位センサの物理的構造が定まれば、補正係数kを決定することが可能である。
【0078】
そこで、k=k2/k1=g2/g1となるような値に補正係数kを設定しておけば、「ΔC2(γ)=k・ΔC1(γ)」とすることができ、図14のテーブルにおいて、変位+Dγが生じたときのCbの変動欄「+ΔC2(γ)−k・ΔC1(γ)」の値を0にすることができる。したがって、図14のテーブルは、図16(a) に示すテーブルに書き直すことができる。なお、各座標軸の負方向への変位−Dα,−Dβ,−Dγが生じた場合は、図16(b) に示すテーブルのような結果が得られる。
【0079】
結局、変数Ca,Cb,Dα,Dγを、符号を含めた値をもつ変数として取り扱えば、図16(c) に示すように、検出値Caの変動は、変位Dγのみを示す値となり、検出値Cbの変動は、変位Dαのみを示す値となり、各変動量の符号は、変位方向(各座標軸の正方向か負方向か)を示すものになる。
【0080】
したがって、図11に示す検出回路Hでは、まず、静電容量値C1,C2を電気信号として測定し、これらの値C1,C2を用いて、「Ca=−C1」なる式および「Cb=−C2+k・C1」なる式に基づく演算を行い、検出値Ca,Cbを求める検出処理を実行すればよい。そうすれば、得られた検出値Caの変動量は変位Dγを示し、得られた検出値Cbの変動量は変位Dαを示すものになる。
【0081】
なお、上記各演算は、単純な加減乗算であり、一般的なアナログ演算回路によって実行することも可能であるし(この場合、各静電容量値は電圧値に変換された後に演算される)、デジタル演算回路を用いて実行することも可能である(この場合、各静電容量値は電圧値に変換された後、更にデジタルデータに変換されてから演算される)。このような演算回路は、広く利用されている公知の回路であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0082】
このように、図1に示す構造体に、本発明に係る変位センサ(電極E11,E21からなる容量素子C1と、電極E12,E22からなる容量素子C2と、検出回路H)を設けておけば、検出回路Hにより、静電容量値C1の変動量ΔC1を原点Qのγ軸方向の変位Dγを示す検出信号として出力し、静電容量値C2の変動量ΔC2から変位Dγに起因する変動量を除去した値を原点Qのα軸方向の変位Dαを示す検出信号として出力することができる。かくして、上方基板10の原点Qの部分について、下方基板20に対して生じたα軸方向の変位Dαとγ軸方向の変位Dγとを独立して検出することができる。
【0083】
<<< §3.力検出装置の物理的構造 >>>
続いて、ここでは、本発明に係る力検出装置の物理的構造を説明する。図17は、本発明に係る力検出装置の物理的構造部を示す斜視図(上段)および電気的処理部を示すブロック図(下段)である。なお、実際には、上段に斜視図として示されている物理的構造部には、複数の電極が含まれるが、当該斜視図においては、図が繁雑になるのを避けるため、これら電極の図示は省略されている(下段のブロック図内には、電極E11〜E22が回路図として示されている)。
【0084】
図17上段の斜視図に示すとおり、この力検出装置の物理的構造部は、上方基板100、下方基板200、バネ310〜340によって構成された構造体と、図示されていない複数の電極と、によって構成される。ここで、上方基板100、下方基板200、バネ310〜340によって構成された構造体は、実質的に、図1に示す上方基板10、下方基板20、バネ31〜34によって構成された構造体と同じものである。
【0085】
すなわち、上方基板100および下方基板200は、互いに平行になるように対向して配置された基板であり、バネ310〜340は、この上方基板100と下方基板200とを接続する接続部材として機能する。本発明に係る力検出装置において、接続部材は、下方基板200を固定した状態において、上方基板100に外力を作用させた場合に、上方基板100が下方基板200に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有している部材であればよい。バネ310〜340は、このような性質をもった接続部材の典型例であるが、接続部材は必ずしもバネに限定されるものではなく、§7で述べるように、様々な部材を接続部材として用いることが可能である。
【0086】
なお、図1に示した上方基板10および下方基板20が矩形の基板であるのに対して、図17に示す上方基板100および下方基板200が円形の基板になっているのは、単に、変位センサの取り付け対象となる構造体(図1)と、力検出装置の一部を構成する構造体(図17)とを区別して説明するための便宜であり、各基板10,20,100,200の形状は任意でかまわない。
【0087】
本発明に係る力検出装置は、図17上段に示されている構造体に、図17下段に示されている複数N組の変位センサS(1)〜S(N)と、これら変位センサを利用して、上方基板100に作用した外力を検出する検出ユニットUと、を付加することにより構成される。各変位センサS(1)〜S(N)は、既に§1,§2で述べた本発明に係る変位センサであり、電極E11,E21からなる容量素子C1と、電極E12,E22からなる容量素子C2と、検出回路Hとによって構成される。
【0088】
この複数N組の変位センサS(1)〜S(N)としては、それぞれ電極形状や電極面積の異なるセンサを用いることもできるが、実用上は、共通の構造をもった同一のセンサを用いるのが好ましい。ただ、各変位センサSの配置は、それぞれ固有の位置および固有の向きになるようにする。
【0089】
本発明に係る力検出装置は、上方基板100に作用した力の所定の座標軸方向成分および上方基板100に作用したモーメントの所定の座標軸まわり成分を独立して検出する機能を有する。そこで、ここでは、上方基板100内の所定位置に原点Oを定義し、XYZ三次元直交座標系を定義する。図示の例では、上方基板100の中心点(重心点)に原点Oを定義し、この原点Oを含み、上方基板100の基板面(上面および下面)に平行な平面上に、原点Oを通り互いに直交するX軸およびY軸を定義しており、図の右方向をX軸正方向、図の奥方向をY軸正方向、図の上方向をZ軸正方向としている。原点Oは、必ずしも上方基板100の中心点(重心点)に定義する必要はないが、実用上は、上方基板100および下方基板200の中心をZ軸が通るような位置に定義するのが好ましい。これは、後述する実施形態のように、Z軸を中心として、その周囲に複数N組の変位センサSを配置する形態を採る場合に、各電極を配置しやすくするための配慮である。
【0090】
ここでは、このXYZ三次元直交座標系をグローバル座標系と呼び、§1,§2で説明したαβγ三次元直交座標系をローカル座標系と呼ぶことにする。αβγローカル座標系は、個々の変位センサSごとに定義される座標系であり、複数N組の変位センサS(1)〜S(N)を設けた場合、複数N組のαβγローカル座標系が定義されることになる。ここでは、個々のαβγローカル座標系の原点Qの位置を、変位センサの配置点Pと呼ぶことにする。
【0091】
図17上段に示す配置点P(1)は、第1番目の変位センサS(1)の配置点であり、この配置点P(1)を原点Qとして、第1番目のαβγローカル座標系が定義される。また、図17上段に示す配置点P(N)は、第N番目の変位センサS(N)の配置点であり、この配置点P(N)を原点Qとして、第N番目のαβγローカル座標系が定義される。図17には示されていないが、もちろん、第2番目〜第(N−1)番目の変位センサの配置点も所定位置に定義され、それぞれの配置点を原点Qとして、それぞれのαβγローカル座標系が定義される。
【0092】
なお、N組の配置点P(1)〜P(N)は、いずれもXY平面上に位置し、各ローカル座標系のαβ平面が、グローバル座標系のXY平面に一致するような設定がなされるものとする。したがって、各ローカル座標系のα軸およびβ軸は、XY平面に含まれ、上方基板100の基板面に平行な方向を向いた軸になる。また、各ローカル座標系のγ軸は、Z軸に平行になり、上方基板100の基板面に垂直な方向を向いた軸になる。
【0093】
図1に示すとおり、1組の変位センサには、第1の上方電極E11,第2の上方電極E12,第1の下方電極E21,第2の下方電極E22という4枚の電極が含まれており、これら各電極は、ローカル原点Qに対して、図1に示すような相対位置に形成される。したがって、図17に示す力検出装置の場合、N組の変位センサS(1)〜S(N)を構成する合計(4×N)枚の電極が、各配置点P(1)〜P(N)に対して、それぞれ所定の相対位置をとる場所に形成されることになる。
【0094】
たとえば、第1の変位センサS(1)は、図示する第1の配置点P(1)に配置されるセンサであるから、この第1の配置点P(1)をローカル原点Qとする所定の相対位置に、第1の変位センサS(1)を構成する4枚の電極が形成されることになる。具体的には、上方基板100の下面の配置点P(1)近傍には、第1の上方電極E11および第2の上方電極E12が形成され、その直下に位置する下方基板200の上面部分には、第1の下方電極E21および第2の下方電極E22が形成されることになる。そして、この第1の変位センサS(1)は、上方基板100の配置点P(1)の位置についてのα軸方向への変位Dαと、γ軸方向への変位Dγとを検出値として出力する機能を果たす。
【0095】
同様に、第2の変位センサS(2)〜第Nの変位センサS(N)は、それぞれ上方基板100の配置点P(2)〜P(N)の各位置についてのα軸方向への変位Dαと、γ軸方向への変位Dγとを検出値として出力する機能を果たす。検出ユニットUは、こうしてN組の変位センサから収集したN箇所の配置点についての変位Dα,Dγに基づいて、上方基板100のグローバル原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および上方基板100のグローバル原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のうち、所望の成分を独立して検出する処理を行う。
【0096】
なお、本願では、「力」という文言は、特定の座標軸方向の力を意味する場合と、モーメント成分を含めた集合的な力を意味する場合とを、適宜使い分けることにする。たとえば、力Fx,Fy,Fzと言った場合は、モーメントではない各座標軸方向の力成分を意味しているが、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzと言った場合は、各座標軸方向の力成分と各座標軸まわりのモーメント成分とを含む集合的な力を意味することになる。
【0097】
本発明に係る力検出装置の基本原理は、図17上段に示されている構造体において、上方基板100内に複数N個の配置点P(1)〜P(N)を定義し、各配置点におけるα軸方向(基板面に平行な所定方向)への変位Dαと、γ軸方向(基板面に垂直な方向)への変位Dγと、を変位センサSを用いて検出し、これらの検出結果に基づいて、下方基板200を固定した状態において上方基板100に作用した所定の座標軸方向の力成分や、所定の座標軸まわりのモーメント成分を検出する点にある。したがって、定義する配置点の数N(ローカル原点Qの数)、各配置点の位置、各配置点に配置する変位センサの向き(α軸の向き)といった条件は、どの力成分、あるいはどのモーメント成分を検出するか、によって異なってくる。
【0098】
ここでは、典型的な第1の実施形態として、N=4に設定して、X軸の正領域上、X軸の負領域上、Y軸の正領域上、Y軸の負領域上にそれぞれ配置点を定義し、合計4組の変位センサを利用して、各配置点における変位を検出し、上方基板100の原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および上方基板の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のすべてを検出可能な力検出装置を以下に例示する。
【0099】
図18は、この第1の実施形態に係る力検出装置において、上方基板100内に定義された4つの配置点の位置および4組のローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す上面図である。図示のとおり、この実施形態の場合、X軸の正領域上に配置点P(X+)、X軸の負領域上に配置点P(X−)、Y軸の正領域上に配置点P(Y+)、Y軸の負領域上に配置点P(Y−)がそれぞれ定義されている(括弧書きで示すX+,X−,Y+,Y−なる記号は、それぞれX軸の正領域,負領域,Y軸の正領域,負領域を示すものである)。ここで、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)は、ローカル原点Oから等距離の位置に定義されている。
【0100】
また、各配置点の位置をそれぞれ原点Qとして、ローカルなαβγ三次元座標系が図示の向きに定義されている。上述したとおり、α軸およびβ軸はXY平面に含まれる軸であり、γ軸は紙面に垂直な軸になる。β軸はα軸をXY平面内で反時計回りに90°回転して得られる軸であり、γ軸は常にZ軸に平行な軸であるから、結局、個々のαβγ三次元座標系は、配置点Pとα軸の方向を決めてやれば、一意に定まることになる。
【0101】
各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)に対応する所定位置には、それぞれ変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)を構成するための電極が形成される(図18では、電極は示されていない)。図19は、この第1の実施形態に係る力検出装置の上方基板100の下面図であり、図20は、下方基板200の上面図である。図19は下面図、図20は上面図であるため、図におけるY軸の向きは逆転している。いずれの図も、ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない。
【0102】
上方基板100側に形成された電極E11,E12は、図2に示す電極E11,E12に対応するものであり、下方基板200側に形成された電極E21,E22は、図3に示す電極E21,E22に対応するものである。
【0103】
なお、図19および図20では、各電極を示す符号の後ろに、括弧書きでX+,X−,Y+,Y−なる記号を付記することにより、4組の変位センサの各電極を相互に区別して示している。たとえば、図19において、電極E11(X+),E12(X+)は、X軸の正領域に定義された配置点P(X+)に配置された変位センサS(X+)を構成する上方電極であり、図20において、電極E21(X+),E22(X+)は、X軸の正領域に定義された配置点P(X+)に配置された変位センサS(X+)を構成する下方電極である。変位センサS(X+)は、これら4枚の電極によって構成される容量素子C1,C2の静電容量値の変動に基づいて、配置点P(X+)の位置のα軸方向への変位Dαおよびγ軸方向への変位Dγを検出する機能を果たす。その基本原理は、既に§1,§2で説明したとおりである。
【0104】
図21は、この第1の実施形態に係る力検出装置の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図である(バネは図示省略)。4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)を構成する各電極が、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)の近傍に配置されている状態が明瞭に示されている。もちろん、個々の電極の向きは、図18に示されている4組のローカルな座標系の座標軸の向きに応じたものになっている。
【0105】
結局、図18において、変位センサS(X+)は、上方基板100の配置点P(X+)の近傍部分のY軸方向変位(Dα)およびZ軸方向変位(Dγ)を検出し、変位センサS(X−)は、上方基板100の配置点P(X−)の近傍部分のY軸方向変位(Dα)およびZ軸方向変位(Dγ)を検出することができる。同様に、変位センサS(Y+)は、上方基板100の配置点P(Y+)の近傍部分のX軸方向変位(Dα)およびZ軸方向変位(Dγ)を検出し、変位センサS(Y−)は、上方基板100の配置点P(Y−)の近傍部分のY軸方向変位(Dα)およびZ軸方向変位(Dγ)を検出することができる。検出ユニットUは、これらの検出結果に基づいて、所定の座標軸に関する力成分もしくはモーメント成分を検出する処理を行う。この検出処理の具体的な内容については、§4で詳述する。
【0106】
<<< §4.力検出装置の検出処理 >>>
ここでは、§3で説明した第1の実施形態に係る力検出装置、すなわち、図18に示す4箇所の配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)にそれぞれ変位センサを配置した実施形態について、6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzをそれぞれ独立して求める検出処理を説明する。
【0107】
まず、図17に示す構造体について、上方基板100にX軸方向の力Fxが作用した場合の変位状態を考える。図22は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、X軸正方向の力+Fxが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。図示のとおり、上方基板100はX軸正方向に平行移動し、変位+Dxを生じることになる(破線は、上方基板100の変位前の位置を示す)。
【0108】
なお、実際には、図22において、上方基板100の左端を図の右方向へ押すなどの方法で力+Fxを加えると、バネ310〜340の弾性力が働くため、上方基板100のバネの取り付け箇所に対しては、Z軸方向に関する力も作用することになる。したがって、そのような方法で力+Fxを加えた場合、上方基板100はX軸正方向へ厳密な平行移動をするわけではなく、Z軸方向への変位を伴うことになる。このように、上方基板100に対して、純然たるX軸正方向の力+Fxのみを作用させることは、実用上困難であるが、ここではこの装置の検出原理を説明するため、図示のとおり、上方基板100が右方向に平行移動した仮想状態を考える。この場合、上方基板100と下方基板200とは、平行状態を維持することになる。
【0109】
図23は、図22に示すように、上方基板100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの4組の変位センサについての矩形電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である(便宜上、円形電極E11,E21の図示は省略する。以下同様)。この図には、上方基板100の位置は示されていないが、上方基板100は、下方基板200に対して、所定の変位量だけ右方向にずれている。上方基板100が右側へ変位したため、各上方電極E12も右側へ変位している。図の破線は、各上方電極E12の変位前の位置を示している(図示の便宜上、図23における変位量は、図22に示す変位量よりも小さい)。もちろん、下方基板200は固定されているため、各下方電極E22の位置は変わらない。
【0110】
一方、図24は、上方基板100にY軸正方向の力+Fyが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。この図にも、上方基板100の位置は示されていないが、上方基板100は、下方基板200に対して、所定の変位量だけ図の上方向にずれている。上方基板100が図の上方へ変位したため、各上方電極E12も図の上方へ変位している。図の破線は、各上方電極E12の変位前の位置を示している。もちろん、下方基板200は固定されているため、各下方電極E22の位置は変わらない。
【0111】
次に、上方基板100にZ軸方向の力Fzが作用した場合の変位状態を考える。図25は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。図示のとおり、上方基板100はZ軸正方向に平行移動し、変位+Dzを生じることになる(破線は、上方基板100の変位前の位置を示す)。
【0112】
図26は、図25に示すように、上方基板100にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。変位がZ軸方向に生じているため、XY平面上への投影図では、電極の変位は全く見られない。ただ、上方基板100は、下方基板200に対して、変位+Dzを生じているので、上方基板100側に形成された各上方電極E11,E12も、変位+Dzを生じている。そこで、図26では、各変位センサの電極位置に「+Dz」なる記号を付してある。これは、容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が広がったことを意味する。
【0113】
続いて、モーメントが作用した場合を考えよう。図27は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、Y軸まわりのモーメントMyが作用したときの変位状態を示す正面図である(バネは図示省略)。ここでは、所定の座標軸まわりのモーメントの向きを、「当該座標軸の正方向に右ネジを進めるための回転方向」と定義することにする。図27の場合、Y軸の正方向は紙面に対して垂直奥方向であるから、図示のとおり、時計まわりの方向がY軸まわりのモーメントMyの正方向ということになる。したがって、時計まわりのモーメントが+My,反時計まわりのモーメントが−Myとなる。
【0114】
さて、図示のとおり、上方基板100の原点Oの位置に、Y軸まわりのモーメント+Myが作用すると、上方基板100の右半分の部分(X軸正領域の部分)は図の下方へと移動して変位−Dzを生じるが、左半分の部分(X軸負領域の部分)は図の上方へと移動して変位+Dzを生じることになる。なお、変位量の絶対値は上方基板100上の位置によって異なり、図27における左右両端へゆくほど、変位量の絶対値は大きくなる。
【0115】
図28は、図27に示すように、上方基板100の原点Oの位置に、Y軸まわりのモーメントが+Myが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。各部の変位は、基本的にZ軸方向のみであるため、XY平面上への投影図では、電極の変位は見られない(厳密に言えば、各電極の姿勢はXY平面に平行な状態から若干傾斜した状態へと遷移するため、XY平面上への投影図では、電極形状は若干変化する)。ただ、上方基板100の各部は、下方基板200に対して、変位±Dzを生じることになる。上述したとおり、図の右半分は変位−Dzを生じ、図の左半分は変位+Dzを生じ、左右両端へゆくほど、変位量の絶対値は大きくなる。
【0116】
そこで、図28では、図の右端に位置する変位センサS(X+)の電極位置には「−Dz」なる記号を付してある。これは、変位センサS(X+)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が狭まったことを意味する。逆に、図の左端に位置する変位センサS(X−)の電極位置には「+Dz」なる記号を付してある。これは、変位センサS(X−)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が広がったことを意味する。なお、Y軸上に位置する変位センサS(Y+),S(Y−)の電極位置には「0」なる記号を付してある。これは、変位センサS(Y+),S(Y−)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離は、部分的には狭まり、部分的には広がるため、トータルでの変化は無視しうることを意味する。
【0117】
厳密に言えば、円形電極E11,E21については、図19,図20に示すようにY軸対称性があるため、半円部分について電極間距離が狭まり、別な半円部分について電極間距離が広がれば、トータルでの静電容量値の変化は0になると言えるが、矩形電極E12,E22については、図19,図20に示すように完全なY軸対称性は保たれていないので、トータルでの静電容量値の変化は0になるとは言えない。しかしながら、実用上、極めて高い測定精度を必要としない限り、トータルでの静電容量値の変化は0になるとして取り扱っても問題はない。
【0118】
同様に、図29は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、X軸まわりのモーメントMxが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。この場合も、各部の変位は、基本的にZ軸方向のみであるため、XY平面上への投影図では、電極の変位は見られない。ただ、上方基板100の各部は、下方基板200に対して、変位±Dzを生じることになり、図の上半分は変位+Dzを生じ、図の下半分は変位−Dzを生じ、図の上下両端へゆくほど、変位量の絶対値は大きくなる。
【0119】
そこで、この図29では、図の上端に位置する変位センサS(Y+)の電極位置には「+Dz」なる記号を付してある。これは、変位センサS(Y+)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が広がったことを意味する。逆に、図の下端に位置する変位センサS(Y−)の電極位置には「−Dz」なる記号を付してある。これは、変位センサS(Y−)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離が狭まったことを意味する。また、X軸上に位置する変位センサS(X+),S(X−)の電極位置には「0」なる記号を付してあるが、これは、変位センサS(X+),S(X−)の容量素子を構成する一対の対向電極の電極間距離は、部分的には狭まり、部分的には広がるため、トータルでの変化は無視しうることを意味する。
【0120】
最後に、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合を考えよう。図30は、下方基板200を固定した状態で上方基板100の原点Oの位置に、Z軸まわりのモーメント+Mzが作用したときの4組の変位センサについての電極E12,E22の位置を示すXY平面上への正射影投影図である。この例の場合、上方基板100および下方基板200はいずれも円盤状の基板であるため、投影図上では上方基板100の変位は認識できないが、上方基板100がZ軸を回転中心として、反時計まわりに回転を生じるため、各上方電極E12も反時計まわりに回転変位を生じている。図の破線は、各上方電極E12の変位前の位置を示している。もちろん、下方基板200は固定されているため、各下方電極E22の位置は変わらない。
【0121】
以上、上方基板100に対して、+Fx,+Fy,+Fzなる力成分および+Mx,+My,+Mzなるモーメント成分が単独で作用した場合の変位状態を説明した。続いて、これら6通りの変位状態が生じた場合に、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)から出力される検出値Ca,Cbがどのように変動するかを考えてみる。
【0122】
図31は、これまで述べてきた第1の実施形態に係る力検出装置において、下方基板200を固定した状態で上方基板100に各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントを作用させたときの4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)の各検出値Ca,Cbの変動を示すテーブルである。ここで、検出値Ca,Cbは、§2で説明したとおり、図14の上段の式に示す演算によって求められる値であり、検出値Caの変動量は変位Dγを示し、検出値Cbの変動量は変位Dαを示している。なお、ここでは、各検出値Ca,Cbの記号に、(X+),(X−),(Y+),(Y−)なる符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしている。
【0123】
図31のテーブルの各欄には、+Fx,+Fy,+Fzなる力成分および+Mx,+My,+Mzなるモーメント成分が単独で作用した場合に、各検出値Ca,Cbの変動態様が符号で示されている。「0」と記された欄は、変動が生じないこと(もしくは、無視しうること)を示し、「+」と記された欄は、正の変動が生じること(正方向の変位DγもしくはDαが生じていること)を示し、「−」と記された欄は、負の変動が生じること(負方向の変位DγもしくはDαが生じていること)を示す。
【0124】
ここでは、まず、このテーブルにおける「Fx」の列に記された結果が得られる理由を簡単に説明しよう。「Fx」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Fxなる力成分(X軸正方向を向いた力成分)のみが作用した場合の結果を示している。力成分+Fxのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図22および図23に示すとおりである。この場合、上方基板100はX軸正方向に平行移動するので、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)は、Y軸やZ軸方向には変位せず、X軸方向にのみ変位する。
【0125】
したがって、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)によって検出される各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「Fx」の列の4つの検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0126】
一方、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)はX軸方向に変位するので、α軸がX軸に平行となるようなローカル座標系が定義された配置点についての変位センサからは、変位Dαが検出値Cbの変動として検出される。
【0127】
具体的には、図18に示すように、配置点P(Y−)に定義されたローカル座標系のα軸がX軸に平行となっており、向きも等しいので、変位センサS(Y−)から出力される検出値Cb(Y−)の変動は「+」になる。すなわち、検出値Cb(Y−)には正の変動量が生じる。また、図18に示すように、配置点P(Y+)に定義されたローカル座標系のα軸がX軸に平行となっており、向きは逆なので、変位センサS(Y+)から出力される検出値Cb(Y+)の変動は「−」になる。すなわち、検出値Cb(Y+)には負の変動量が生じる
【0128】
これに対して、図18に示すように、配置点P(X+)に定義されたローカル座標系のα軸や配置点P(X−)に定義されたローカル座標系のα軸は、Y軸に平行となっているため、変位センサS(X+)や変位センサS(X−)からは、変位Dαの検出は行われない。すなわち、変位センサS(X+)や変位センサS(X−)から出力される検出値Cb(X+)や検出値Cb(X−)の変動は「0」になる。
【0129】
図31のテーブルにおける「Fy」の列に記された結果が得られる理由も全く同様である。「Fy」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Fyなる力成分(Y軸正方向を向いた力成分)のみが作用した場合の結果を示している。力成分+Fyのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図24に示すとおりである。この場合、上方基板100はY軸正方向に平行移動するので、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)は、X軸やZ軸方向には変位せず、Y軸方向にのみ変位する。
【0130】
したがって、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)によって検出される各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「Fy」の列の4つの検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0131】
一方、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)はY軸方向に変位するので、α軸がY軸に平行となるようなローカル座標系が定義された配置点についての変位センサからは、変位Dαが検出値Cbの変動として検出される。
【0132】
具体的には、図18に示すように、配置点P(X+)に定義されたローカル座標系のα軸がY軸に平行となっており、向きも等しいので、変位センサS(X+)から出力される検出値Cb(X+)の変動は「+」になる。すなわち、検出値Cb(X+)には正の変動量が生じる。また、図18に示すように、配置点P(X−)に定義されたローカル座標系のα軸がY軸に平行となっており、向きは逆なので、変位センサS(X−)から出力される検出値Cb(X−)の変動は「−」になる。すなわち、検出値Cb(X−)には負の変動量が生じる
【0133】
これに対して、図18に示すように、配置点P(Y+)に定義されたローカル座標系のα軸や配置点P(Y−)に定義されたローカル座標系のα軸は、X軸に平行となっているため、変位センサS(Y+)や変位センサS(Y−)からは、変位Dαの検出は行われない。すなわち、変位センサS(Y+)や変位センサS(Y−)から出力される検出値Cb(Y+)や検出値Cb(Y−)の変動は「0」になる。
【0134】
続いて、図31のテーブルにおける「Fz」の列に記された結果が得られる理由を説明する。「Fz」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Fzなる力成分(Z軸正方向を向いた力成分)のみが作用した場合の結果を示している。力成分+Fzのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図25や図26に示すとおりである。
【0135】
この場合、上方基板100はZ軸正方向に平行移動するので、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)は、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの正の変動として出力する。図31のテーブルにおける「Fz」の列の4つの検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「+」となっているのはこのためである。α軸方向の変位Dαは検出されないので、検出値Cbの変動は0である。図31のテーブルにおける「Fz」の列の4つの検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0136】
次に、図31のテーブルにおける「Mx」の列に記された結果が得られる理由を説明する。「Mx」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Mxなるモーメント成分(X軸まわりのモーメント成分)のみが作用した場合の結果を示している。モーメント成分+Mxのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図29に示すとおりである。
【0137】
この場合、変位センサS(Y+)の配置点P(Y+)はZ軸正方向に変位するので、変位センサS(Y+)は、配置点P(Y+)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの正の変動として出力する。図31のテーブルにおける「Mx」の列の検出値Ca(Y+)の欄が「+」となっているのはこのためである。また、変位センサS(Y−)の配置点P(Y−)はZ軸負方向に変位するので、変位センサS(Y−)は、配置点P(Y−)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの負の変動として出力する。図31のテーブルにおける「Mx」の列の検出値Ca(Y−)の欄が「−」となっているのはこのためである。
【0138】
一方、変位センサS(X+)の配置点P(X+)や変位センサS(X−)の配置点P(X−)のZ軸方向への変位は0である(電極のZ軸方向への変位は無視できる)。このため、変位センサS(X+)や変位センサS(X−)によって検出される各配置点P(X+),P(X−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「Mx」の列の検出値Ca(X+),Ca(X−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。また、α軸方向の変位Dαは検出されないので、検出値Cbの変動は0である。図31のテーブルにおける「Mx」の列の4つの検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0139】
図31のテーブルにおける「My」の列に記された結果が得られる理由も全く同様である。「My」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Myなるモーメント成分(Y軸まわりのモーメント成分)のみが作用した場合の結果を示している。モーメント成分+Myのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図27および図28に示すとおりである。
【0140】
この場合、変位センサS(X+)の配置点P(X+)はZ軸負方向に変位するので、変位センサS(X+)は、配置点P(X+)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの負の変動として出力する。図31のテーブルにおける「My」の列の検出値Ca(X+)の欄が「−」となっているのはこのためである。また、変位センサS(X−)の配置点P(X−)はZ軸正方向に変位するので、変位センサS(X−)は、配置点P(X−)のγ軸方向の変位Dγを、検出値Caの正の変動として出力する。図31のテーブルにおける「My」の列の検出値Ca(X−)の欄が「+」となっているのはこのためである。
【0141】
一方、変位センサS(Y+)の配置点P(Y+)や変位センサS(Y−)の配置点P(Y−)のZ軸方向への変位は0である(電極のZ軸方向への変位は無視できる)。このため、変位センサS(Y+)や変位センサS(Y−)によって検出される各配置点P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「My」の列の検出値Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。また、α軸方向の変位Dαは検出されないので、検出値Cbの変動は0である。図31のテーブルにおける「My」の列の4つの検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0142】
最後に、図31のテーブルにおける「Mz」の列に記された結果が得られる理由を説明する。「Mz」の列の各欄は、下方基板200を固定した状態で上方基板100に+Mzなるモーメント成分(Z軸まわりのモーメント成分)のみが作用した場合の結果を示している。モーメント成分+Mzのみが作用したときの変位状態は、既に説明したとおり、図30に示すとおりである。この場合、上方基板100は下方基板200に対して平行な状態を維持したまま図の反時計まわりに回転変位する。
【0143】
したがって、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)によって検出される各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)のγ軸方向の変位Dγは0であり、検出値Caの変動は0である。図31のテーブルにおける「Mz」の列の4つの検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の各欄が「0」となっているのはこのためである。
【0144】
一方、各配置点P(X+),P(X−),P(Y+),P(Y−)は、図30において反時計まわりに回転変位し、当該変位は、図18に示すとおり、α軸方向への変位に相当するので、いずれの変位センサからも、変位Dαが検出値Cbの正の変動として出力される。図31のテーブルにおける「Mz」の列の4つの検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の各欄が「+」となっているのはこのためである。
【0145】
この図31に示す各検出値の変動テーブルは、上述したとおり、+Fx,+Fy,+Fzなる正の力成分および+Mx,+My,+Mzなる正のモーメント成分が単独で作用した場合に、各検出値Ca,Cbの変動態様を示すものであるが、負の力成分−Fx,−Fy,−Fzや負のモーメント成分−Mx,−My,−Mzが作用した場合の変動態様は、符号「+」と「−」を逆転させたものになる。
【0146】
また、この変動テーブルでは、変動量の符号(検出値の増減)が「+」もしくは「−」により示されているだけであるが、4組の変位センサとしては、同一の構造(電極の形状および大きさ)を有するものが用いられており、かつ、図21に示すように、そのXY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となっているため、互いに対称位置に配置された変位センサについて生じる変動も対称性をもったものになる。たとえば、「Fx」の列のCb(Y+)の欄は「−」,Cb(Y−)の欄は「+」となっており、一方が減少すると他方は増加する関係が示されているが、変位センサS(Y+),S(Y−)は原点Oに関して点対称となるように配置された同一の構造を有するセンサであるから、変動量の絶対値は等しくなる。
【0147】
このような点を考慮すれば、上方基板100の原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分をFx、Y軸方向成分をFy、Z軸方向成分をFzとし、上方基板100の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分をMx、Y軸まわり成分をMy、Z軸まわり成分をMzとすれば、これら各6成分の値は、図32に示す演算式で与えられることがわかる。
【0148】
たとえば、Fxについては、「Fx=Cb(Y−)−Cb(Y+)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Fx」の列において「+」記号が示されている検出値Cb(Y−)と、「−」記号が示されている検出値Cb(Y+)との差を求める演算を示している。同様に、Fyについては、「Fy=Cb(X+)−Cb(X−)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Fy」の列において「+」記号が示されている検出値Cb(X+)と、「−」記号が示されている検出値Cb(X−)との差を求める演算を示している。また、Fzについては、「Fz=Ca(X+)+Ca(X−)+Ca(Y+)+Ca(Y−)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Fz」の列において「+」記号が示されている検出値Ca(X+),Ca(X−),Ca(Y+),Ca(Y−)の和を求める演算を示している。
【0149】
一方、Mxについては、「Mx=Ca(Y+)−Ca(Y−)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Mx」の列において「+」記号が示されている検出値Ca(Y+)と、「−」記号が示されている検出値Ca(Y−)との差を求める演算を示している。同様に、Myについては、「My=Ca(X−)−Ca(X+)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「My」の列において「+」記号が示されている検出値Ca(X−)と、「−」記号が示されている検出値Ca(X+)との差を求める演算を示している。また、Mzについては、「Mz=Cb(X+)+Cb(X−)+Cb(Y+)+Cb(Y−)」なる演算式が示されているが、これは、図31のテーブルにおける「Mz」の列において「+」記号が示されている検出値Cb(X+),Cb(X−),Cb(Y+),Cb(Y−)の和を求める演算を示している。
【0150】
なお、作用した力やモーメントの大きさが、予め設定した所定の測定可能レンジ内のものであれば、上方基板100の変位を、バネ310〜340などの接続部材の可撓性部分による弾性変形がフックの法則を満足する範囲内に抑えることができ、作用した力やモーメントの大きさと、そのときに生じる変位量との間には線形関係が得られる。更に、変位量が所定の許容範囲内であれば、生じた変位量と容量素子を構成する有効電極面積の変化との関係、もしくは、生じた変位量と容量素子を構成する電極間距離の変化との関係が、線形関係になるので、各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量も、作用した力やモーメントの大きさに比例するものとなる。したがって、所定の測定可能レンジ内の力やモーメントの測定に用いる限り、図32に示す演算式によって得られる値は、線形な測定値を示すものになる。
【0151】
結局、上述した第1の実施形態に係る力検出装置の場合、図17に示す検出ユニットUは、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)から与えられる各検出値に基づいて、図32の演算式に基づく演算を行い、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分の検出値を求め、これを電気信号として出力する処理を行うことになる。もちろん、これら6成分のすべてが必要ではない場合には、所望の成分のみについて演算を行い、これを出力すればよい。本発明に係る力検出装置は、これら6成分のうちの少なくとも1つを検出する機能をもっていればよい。
【0152】
また、6成分の一部のみが必要な場合は、設ける変位センサの数も減らすことが可能である。たとえば、FyとMyの2成分のみの検出を行う力検出装置の場合、変位センサS(X+)とS(X−)と用意すれば、必要な演算が可能になるので、変位センサS(Y+)とS(Y−)とを省略することができる。
【0153】
なお、原理的には、4組の変位センサとしては、必ずしも同一の構造(電極の形状および大きさ)を有するものを用いる必要はなく、また、必ずしもXY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となるように配置する必要はない。ただ、各センサの電極形状および大きさがそれぞれ異なり、配置の対称性も確保されていないと、個々のセンサごとに検出感度が異なることになるので、図32に示す演算式をそのまま適用することはできず、個々のセンサの検出値にそれぞれ固有の感度補正係数を乗じる必要が生じる。したがって、実用上は、各変位センサとしては、同一構造(電極の形状および大きさ)を有するものを用い、XY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となるような配置を行うのが好ましい。
【0154】
<<< §5.力検出装置の別な実施形態 >>>
<5−1:本発明に係る力検出装置の特徴>
さて、§4では、本発明に係る力検出装置の第1の実施形態について、必要な変位センサの配置や、これら変位センサの出力に基づく検出処理の内容を説明した。具体的には、この第1の実施形態では、図21の投影図に示すように、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)を配置し、これら4組の変位センサによって得られる各検出値Ca,Cbの値が、図31のテーブルに示すような変動を生じることを利用して、図32に示すような演算を行うことにより、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を検出することになる。もちろん、このような変位センサの固有の配置や具体的な検出処理は、本発明の一実施形態であり、本発明に係る力検出装置は、この他にも様々な実施形態で実施可能である。
【0155】
本発明に係る力検出装置の基本的な特徴は、前述したとおり、図17上段に示すような基本的な構造体に、複数N組の変位センサS(1)〜S(N)と、検出ユニットUとを付加した点にある。ここで、複数N組の変位センサは、§1,§2で説明したとおり、上方基板100の下面に形成された第1の上方電極E11および第2の上方電極E12と、下方基板200の上面に形成された第1の下方電極E21および第2の下方電極E22と、検出回路Hと、によって構成される。そして、上方基板100内の所定のN箇所には、それぞれローカルなαβγ三次元直交座標系の原点Qが定義され、複数N組の変位センサは、この上方基板100の各ローカル原点Qの位置についてのγ軸方向の変位Dγおよびα軸方向の変位Dαを検出できるように配置される。
【0156】
また、図17上段に示すように、上方基板100内の所定位置にグローバル原点Oを定義し、このグローバル原点Oを含み、上方基板100の基板面に平行な平面上に、グローバル原点Oを通り互いに直交するX軸およびY軸を定義し、グローバル原点Oを通りXY平面に対して直交するZ軸を定義し、グローバルなXYZ三次元直交座標系を定義した場合に、検出ユニットUは、複数N組の変位センサS(1)〜S(N)の各検出回路Hから出力される変位についての検出信号に基づいて、上方基板100の原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および上方基板100の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のうちの少なくとも1つを検出する機能を果たす。
【0157】
ここで、§4で説明した第1の実施形態は、N=4として、4組の変位センサを用意し、図18に示すように、第1のセンサS(X+)のローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2のセンサS(X−)のローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3のセンサS(Y+)のローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4のセンサS(Y−)のローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、第1のセンサS(X+)のα軸正方向がY軸正方向を向き、第2のセンサS(X−)のα軸正方向がY軸負方向を向き、第3のセンサS(Y+)のα軸正方向がX軸負方向を向き、第4のセンサS(Y−)のα軸正方向がX軸正方向を向くように、4組のセンサを配置した形態、ということになる。
【0158】
ここでは、変位センサの配置を変えたいくつかの別な実施形態を述べる。これらの各実施形態と、§4で述べた第1の実施形態との相違は、変位センサSの配置と検出ユニットUで行われる検出処理(演算処理)の内容だけであり、上方基板100,下方基板200,接続部材(バネ)310〜340の構成は全く同じである。もちろん、この§5で述べる各実施形態も、本発明に係る力検出装置の実用的な形態を例示するものであり、本発明は、ここに述べた形態以外にも、様々な形態で実施可能である。
【0159】
なお、本願明細書では、「上方基板」や「下方基板」というように、「上下」という文言を用いて装置の説明を行っているが、ここで「上下」の概念を用いているのは、装置を図1や図17に示すように配置した状態で、その構造を説明するための便宜であり、もちろん実用上は、必ずしも「上方基板」が「下方基板」の上方にくるように設置する必要はない。また、本願明細書では、「下方基板」を固定した状態で「上方基板」に作用した力を検出する例を説明しているが、「一方を固定したときの他方の変位」という概念は、あくまでも相対的なものであり、本発明に係る力検出装置が、「上方基板」を固定した状態で「下方基板」に作用した力を検出できることは自明の理である。
【0160】
<5−2:第2の実施形態>
図33は、本発明に係る力検出装置の第2の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図であり(バネは図示省略)、図34は、図33に示す8組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。図示のとおり、この第2の実施形態では、8組の変位センサが配置される。これら8組の変位センサのうちの4組は内側に配置されており、ここでは内側センサと呼ぶ。残りの4組は外側に配置されており、ここでは外側センサと呼ぶ。8箇所の配置点に定義されたαβγ三次元座標系のα軸およびβ軸の向きは、図34に示すとおり、個々の配置点ごとに異なるが、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図34の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0161】
4組の内側センサS(X1+),S(X1−),S(Y1+),S(Y1−)は、それぞれX軸の正領域上、負領域上、Y軸の正領域上、負領域上に定義された配置点P(X1+),P(X1−),P(Y1+),P(Y1−)がローカル原点Qとなる位置に配置され、その向きは、図34に示す各αβγローカル座標系に応じた向きになっている。これら4組の内側センサの向きは、図21に示す第1の実施形態における4組の変位センサの向きと一致する。別言すれば、図33に示す4組の内側センサS(X1+),S(X1−),S(Y1+),S(Y1−)は、それぞれ図21に示す変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)を原点Oに若干近づけて配置したものと言うことができる。
【0162】
一方、4組の外側センサS(X2+),S(X2−),S(Y2+),S(Y2−)は、それぞれX軸の正領域上、負領域上、Y軸の正領域上、負領域上に定義された配置点P(X2+),P(X2−),P(Y2+),P(Y2−)がローカル原点Qとなる位置に配置され、その向きは、図34に示す各αβγローカル座標系に応じた向きになっている。これら4組の外側センサの向きは、それぞれ隣接配置された内側センサの向きと逆になっている。たとえば、図34において、外側センサの配置点P(X2+)のα軸正方向と、これに隣接する内側センサの配置点P(X1+)のα軸正方向とは逆になっている。そのため、図33における内側センサS(X1+)の向きと外側センサS(X2+)の向きは逆になっている。その他の隣接する内側センサ/外側センサの対についても、同様に向きが逆になっている。
【0163】
なお、4組の内側センサの配置点P(X1+),P(X1−),P(Y1+),P(Y1−)は、原点Oから等距離(第1の距離)にあり、4組の外側センサの配置点P(X2+),P(X2−),P(Y2+),P(Y2−)も、原点Oから等距離(第1の距離よりも大きい第2の距離)にある。
【0164】
結局、この第2の実施形態に係る力検出装置は、ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の外側センサと、を有していることになる。
【0165】
ここで、第1の内側センサS(X1+)のローカル原点QはX軸の正領域上に位置し、第2の内側センサS(X1−)のローカル原点QはX軸の負領域上に位置し、第3の内側センサS(Y1+)のローカル原点QはY軸の正領域上に位置し、第4の内側センサS(Y1−)のローカル原点QはY軸の負領域上に位置している。そして、第1の内側センサS(X1+)のα軸正方向がY軸正方向を向き、第2の内側センサS(X1−)のα軸正方向がY軸負方向を向き、第3の内側センサS(Y1+)のα軸正方向がX軸負方向を向き、第4の内側センサS(Y1−)のα軸正方向がX軸正方向を向くように、これら4組の内側センサが配置されている。
【0166】
一方、第1の外側センサS(X2+)のローカル原点QはX軸の正領域上に位置し、第2の外側センサS(X2−)のローカル原点QはX軸の負領域上に位置し、第3の外側センサS(Y2+)のローカル原点QはY軸の正領域上に位置し、第4の外側センサS(Y2−)のローカル原点QはY軸の負領域上に位置している。そして、第1の外側センサS(X2+)のα軸正方向が第1の内側センサS(X1+)のα軸負方向を向き、第2の外側センサS(X2−)のα軸正方向が第2の内側センサS(X1−)のα軸負方向を向き、第3の外側センサS(Y2+)のα軸正方向が第3の内側センサS(Y1+)のα軸負方向を向き、第4の外側センサS(Y2−)のα軸正方向が第4の内側センサS(Y1−)のα軸負方向を向くように、これら4組の外側センサが配置されている。
【0167】
この第2の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図35のテーブルに示すようになる。このテーブルでも、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(X1+),(X2+)等の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてあり、「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。
【0168】
この図35のテーブルにおいて、4組の内側センサS(X1+),S(X1−),S(Y1+),S(Y1−)の変動は、図31のテーブルに示す4組のセンサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)の変動と全く同じである。これは、前述したとおり、図33に示す4組の内側センサは、それぞれ図21に示す4組の変位センサを原点Oに若干近づけて配置したセンサであるためである。一方、4組の外側センサS(X2+),S(X2−),S(Y2+),S(Y2−)の変動は、「Fz」の列を除いて、それぞれ対応する4組の内側センサS(X1+),S(X1−),S(Y1+),S(Y1−)の変動の符号を逆転させたものになっている。これは、これら4組の外側センサの向きが、それぞれ隣接配置された内側センサの向きと逆になっているためである。
【0169】
この実施形態の場合も、8組の変位センサは同一のセンサであり、そのXY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図35のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図36に示す演算式で与えられることになる。なお、前述したとおり、センサの同一性や配置の対称性が確保されていない場合には、個々のセンサの検出値にそれぞれ固有の感度補正係数を乗じる必要がある。
【0170】
第1の実施形態に係る図32の演算式と、第2の実施形態に係る図36の演算式とを比べると、Fzの演算式を除いて、前者における各項が、後者では差分項に置き換えられていることがわかる。たとえば、Fxの演算式の場合、前者における項「Cb(Y−)」,「Cb(Y+)」は、後者では、それぞれ差分項「Cb(Y1−)−Cb(Y2−)」,「Cb(Y1+)−Cb(Y2+)」に置き換えられている。これらの差分項は、隣接配置された内側センサと外側センサとについての検出値の差を示すものである。
【0171】
隣接配置された内側センサと外側センサとは、向きが逆になっているため、力成分Fzを検出する場合を除いて、両者は相補的な検出値を出力することになる。このため、Fzを除く5成分の検出には、図36の各演算式に示すように、差分値を利用した検出が可能になる。このような差分値を利用した検出は、検出精度を高めるために有効である。たとえば、この力検出装置の設置場所の温度環境が変化すると、温度変化に起因して装置各部の材質に膨張・収縮が生じ、容量素子を構成する電極面積や電極間距離に変動が生じることになる。差分値を利用した検出を行えば、このような温度変動に基づいて生じる測定誤差を相殺することができるので、より正確な検出値を得ることができる。これが、ここで述べた第2の実施形態のメリットである。
【0172】
<5−3:第3の実施形態>
図37は、本発明に係る力検出装置の第3の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図であり(バネは図示省略)、図38は、図37に示す各変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。図示のとおり、この第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同様に4組の変位センサが用いられるが、その配置が若干異なっている。すなわち、4組の変位センサS(1)〜S(4)のXY平面上の投影像は、図37に示すとおり、それぞれXY座標系の第1象限〜第4象限に位置する。
【0173】
より具体的には、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなす2本の斜め方向軸W1,W2を定義した場合、変位センサS(1),S(3)は、W1軸上に定義された配置点P(1),P(3)がローカル原点Qとなる位置に配置され、変位センサS(2),S(4)はW2軸上に定義された配置点P(2),P(4)がローカル原点Qとなる位置に配置される。ここで、各配置点P(1)〜P(4)は、原点Oから等距離の点である。これら4箇所の配置点に定義されたαβγ三次元座標系のα軸およびβ軸の向きは、図38に示すとおり、個々の配置点ごとに異なるが、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図38の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0174】
結局、この第3の実施形態に係る力検出装置は、4組の変位センサを有し、図37に示すXY平面上への投影図において、第1のセンサS(1)のローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサS(2)のローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサS(3)のローカル原点QがXY座標系の第3象限に位置し、第4のセンサS(4)のローカル原点QがXY座標系の第4象限に位置することになる。また、図38に示すとおり、配置点P(1)に配置された第1のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、配置点P(2)に配置された第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、配置点P(3)に配置された第3のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向き、配置点P(4)に配置された第4のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向くように、これら4組のセンサが配置されていることになる。
【0175】
この第3の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図39のテーブルに示すようになる。このテーブルでは、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(1)〜(4)の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてある。各欄の符号「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。なお、図37に示す4組の変位センサS(1)〜S(4)による各検出値Ca,Cbの変動結果が、図39のテーブルの各欄に示すようになる個々の理由については、ここでは説明を省略する。これらの理由は、各配置点P(1)〜P(4)の変位方向と、各配置点P(1)〜P(4)に定義されたα軸の向きとを考慮すれば、これまでの説明から容易に理解できよう。
【0176】
この実施形態の場合も、4組の変位センサS(1)〜S(4)は同一のセンサであり、そのXY平面上への投影像が原点Oに関して点対称となるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図39のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図40に示す演算式で与えられることになる。なお、前述したとおり、センサの同一性や配置の対称性が確保されていない場合には、個々のセンサの検出値にそれぞれ固有の感度補正係数を乗じる必要がある。
【0177】
図21に示す第1の実施形態における4組の変位センサの配置と、図37に示す第3の実施形態における4組の変位センサの配置と、を比較すると、後者は前者の配置をZ軸を回転軸として反時計回りに45°回転させたものであることがわかる。別言すれば、第3の実施形態において、W1軸をX軸として取り扱い、W2軸をY軸として取り扱えば、W1,W2軸方向の力成分や、W1,W2軸まわりのモーメント成分の検出も可能になる(センサの向きが45°傾斜しているので、演算が複雑になり、配慮が必要である)。
【0178】
<5−4:第4の実施形態>
図41は、本発明に係る力検出装置の第4の実施形態の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図であり(バネは図示省略)、図42は、図41に示す各変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。この第4の実施形態では、3組の変位センサのみが用いられており、その配置は図示のとおりである。
【0179】
すなわち、XY平面上に、原点Oを中心にX軸を反時計回りに30°回転させることによって得られる斜め方向軸W3と、原点Oを中心にX軸を反時計回りに150°回転させることによって得られる斜め方向軸W4と、を定義する。これら2本の斜め方向軸W3,W4は、結局、X軸に対して30°の角度をなすことになる。ここで、軸W3の正領域の軸線,軸W4の正領域の軸線、Y軸の負領域の軸線に着目すると、これらの各軸線は相互に120°の角度をなしている。3組の変位センサS(11),S(12),S(13)は、この120°の角度をなす3つの軸線上に定義された配置点P(11),P(12),P(13)がローカル原点Qとなる位置に配置される。ここで、各配置点P(11),P(12),P(13)は、原点Oから等距離の点である。これら3箇所の配置点に定義されたαβγ三次元座標系のα軸およびβ軸の向きは、図42に示すとおり、個々の配置点ごとに異なるが、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図42の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0180】
結局、この第4の実施形態に係る力検出装置は、3組の変位センサを有し、図41に示すXY平面上への投影図において、第1のセンサS(11)のローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサS(12)のローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサS(13)のローカル原点QがY軸の負領域上に位置することになる。また、図42に示すとおり、配置点P(11)に配置された第1のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向(図の右下方向)を向き、配置点P(12)に配置された第2のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向(図の右上方向)を向き、配置点P(13)に配置された第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向(図の左方向)を向くように、これら3組のセンサが配置されていることになる。
【0181】
この第4の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図43のテーブルに示すようになる。このテーブルでは、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(11)〜(13)の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてある。各欄の符号「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。このテーブルの各欄に示すような結果が得られる個々の理由については、ここでは説明を省略するが、各配置点P(11)〜P(13)の変位方向と、各配置点P(11)〜P(13)に定義されたα軸の向きとを考慮すれば、これまでの説明から容易に理解できよう。
【0182】
この実施形態の場合も、3組の変位センサS(11)〜S(13)は同一のセンサである。各センサのXY平面上への投影像は、原点Oに関して点対称ではないが、図41に示すように、各センサを原点Oを中心として120°回転させると元の配置に重なるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図43のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図44に示す演算式で与えられることになる。ここで、K1,K2は、3組の変位センサの検出感度を補正するための感度補正係数である。
【0183】
図示の例の場合、上述したとおり、軸W3,W4が、X軸に対して30°の角度をなすように定義されているため、図44の演算式において、FxおよびMxの式についてのみ感度補正係数K1,K2を用いれば足りるが、一般に、軸W3,W4のX軸に対する角度が任意の場合には、各検出値について、それぞれ固有の感度補正係数を用いた調整が必要になる。図45に示す演算式は、このような一般的な配置の場合に用いられる演算式であり、K11〜K26は、各検出値について乗じる固有の感度補正係数である。
【0184】
<5−5:第5の実施形態>
図46は、本発明に係る力検出装置の第5の実施形態に用いられる6組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。この図46に示されている配置点P(11),P(12),P(13)は、図42に示されている各配置点と全く同じであり、各配置点について定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置方向も全く同じである。
【0185】
この第5の実施形態では、これら配置点P(11),P(12),P(13)の内側(原点Oに近い側)に、新たな配置点P(21),P(22),P(23)が定義され、それぞれについて、ローカルなαβγ三次元座標系が定義されている。ここで、外側の配置点P(11),P(12),P(13)は、いずれも原点Oから等距離にあり、内側の配置点P(21),P(22),P(23)も点Oから等距離にある。また、内側の配置点P(21),P(22),P(23)についてのα軸は、隣接する外側の配置点P(11),P(12),P(13)についてのα軸とは逆方向を向くようになっている。なお、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図46の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0186】
ここでは、この第5の実施形態の各電極配置を示すXY平面上への正射影投影図は省略するが、図41に示す3組のセンサS(11)〜S(13)を外側センサとして、その内側に、3組の内側センサS(21)〜S(23)を逆向きに配置した構成をとることになる。
【0187】
要するに、この第5の実施形態に係る力検出装置は、ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の内側センサS(21)〜S(23)と、ローカル原点QがZ軸から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の外側センサS(11)〜S(13)と、を有することになる。
【0188】
ここで、第1の外側センサS(11)のローカル原点Qは、XY座標系の第1象限に位置し、第2の外側センサS(12)のローカル原点Qは、XY座標系の第2象限に位置し、第3の外側センサS(13)のローカル原点Qは、Y軸の負領域上に位置しており、第1の外側センサS(11)のα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2の外側センサS(12)のα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3の外側センサS(13)のα軸正方向がX軸負方向を向くように、3組の外側センサが配置されている。
【0189】
また、第1の内側センサS(21)のローカル原点Qは、XY座標系の第1象限に位置し、第2の内側センサS(22)のローカル原点Qは、XY座標系の第2象限に位置し、第3の内側センサS(23)のローカル原点Qは、Y軸の負領域上に位置しており、第1の内側センサS(21)のα軸正方向が第1の外側センサS(11)のα軸負方向を向き、第2の内側センサS(22)のα軸正方向が第2の外側センサS(12)のα軸負方向を向き、第3の内側センサS(23)のα軸正方向が第3の外側センサS(13)のα軸負方向を向くように、3組の内側センサが配置されている。
【0190】
この第5の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図47のテーブルに示すようになる。このテーブルでは、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(11)〜(23)の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてある。各欄の符号「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。
【0191】
この図47のテーブルにおいて、3組の外側センサS(11),S(12),S(13)の変動は、図43のテーブルに示すそれぞれセンサS(11),S(12),S(13)の変動と全く同じである。また、図47のテーブルにおいて、3組の内側センサS(21),S(22),S(23)の検出値Caの変動は、それぞれ外側センサS(11),S(12),S(13)の検出値Caの変動と同じになり、3組の内側センサS(21),S(22),S(23)の検出値Cbの変動は、それぞれ外側センサS(11),S(12),S(13)の検出値Caの変動の符号を逆転させたものになっている。これは、隣接配置された内側センサと外側センサとを比べると、γ軸の方向は同一であるが、α軸の方向が逆になっているためである。
【0192】
この実施形態の場合も、6組の変位センサS(11)〜S(23)は同一のセンサである。各センサのXY平面上への投影像は、原点Oに関して点対称ではないが、各センサを原点Oを中心として120°回転させると元の配置に重なるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図47のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図48に示す演算式で与えられることになる。ここで、K1,K2は、3組の変位センサの検出感度を補正するための感度補正係数である。
【0193】
図46に示すとおり、軸W3,W4が、X軸に対して30°の角度をなすように定義されているため、図48の演算式では、FxおよびMxの式についてのみ感度補正係数K1,K2を用いれば足りるが、一般に、軸W3,W4のX軸に対する角度が任意の場合には、各検出値について、それぞれ固有の感度補正係数を用いた調整が必要になる。
【0194】
第5の実施形態に係る図48の演算式と、第4の実施形態に係る図44の演算式とを比べると、Fx,Fy,Mzの演算式については、前者における各項が、後者では差分項に置き換えられていることがわかる。たとえば、Fxの演算式の場合、前者における項「Cb(11)」,「Cb(12)」,「Cb(13)」は、後者では、それぞれ差分項「Cb(11)−Cb(21)」,「Cb(12)−Cb(22)」,「Cb(13)−Cb(23)」に置き換えられている。これらの差分項は、隣接配置された内側センサと外側センサとについての検出値の差を示すものである。
【0195】
隣接配置された内側センサと外側センサとは、向きが逆になっているため、Fx,Fy,Mzの演算式に関しては、両者は相補的な検出値を出力することになる。このため、これら3成分の検出には、図48の各演算式に示すように、差分値を利用した検出が可能になる。このような差分値を利用した検出が、検出精度を高めるために有効であることは既に述べたとおりである。
【0196】
<5−6:第6の実施形態>
図49は、本発明に係る力検出装置の第6の実施形態に用いられる6組の変位センサのそれぞれについて定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置を示す平面図である。この図49に示されている3つの配置点P(11),P(12),P(13)は、図42に示されている各配置点と全く同じであり、各配置点について定義されたローカルなαβγ三次元座標系の配置方向も全く同じである。
【0197】
この第6の実施形態では、これら配置点P(11),P(12),P(13)について、XY平面上で原点Oに関して点対称となる位置に、それぞれ新たな配置点P(31),P(32),P(33)が定義され、それぞれについて、ローカルなαβγ三次元座標系が定義されている。ここで、6個の配置点P(11)〜P(32)は、いずれも原点Oから等距離にある。また、互いに点対称となる位置に配置された一対の配置点については、αβγローカル座標系もXY平面上で点対称となるように定義されており、α軸は互いに逆方向を向くようになっている。なお、γ軸はいずれもZ軸に平行な方向(図49の紙面に垂直な方向)であり、上方基板100から上方に向かう方向がγ軸の正方向となる。
【0198】
ここでは、この第6の実施形態の各電極配置を示すXY平面上への正射影投影図は省略するが、図41に示す3組のセンサS(11)〜S(13)を主センサとして、それぞれについて、XY平面上で原点Oに関して点対称となる位置に、3組の副センサS(31)〜S(33)を配置した構成をとることになる。
【0199】
このように、この第6の実施形態に係る力検出装置は、3組の主センサS(11)〜S(13)と、3組の副センサS(31)〜S(33)と、を有している。ここで、第1の主センサS(11)のローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の主センサS(12)のローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の主センサS(13)のローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、第1の主センサS(11)のα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第2の主センサS(12)のα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、第3の主センサS(13)のα軸正方向がX軸負方向を向くように、3組の主センサが配置されている。
【0200】
また、第1の副センサS(31)のローカル原点Qが第1の主センサS(11)のローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第2の副センサS(32)のローカル原点Qが第2の主センサS(12)のローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第3の副センサS(33)のローカル原点Qが第3の主センサS(13)のローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第1の副センサS(31)のα軸正方向が第1の主センサS(11)のα軸負方向を向き、第2の副センサS(32)のα軸正方向が第2の主センサS(12)のα軸負方向を向き、第3の副センサS(33)のα軸正方向が第3の主センサS(13)のα軸負方向を向くように、3組の副センサが配置されている。
【0201】
この第6の実施形態の場合、上方基板100に力が作用した場合の各変位センサの検出値Ca,Cbの変動量は、図50のテーブルに示すようになる。このテーブルでは、各検出値Ca,Cbの記号の後ろに、(11)〜(33)の符号を付記して、どの変位センサによる検出値であるかを区別できるようにしてある。各欄の符号「0」は変動なし、「+」は正の変動、「−」は負の変動が生じることを示している。
【0202】
この図50のテーブルにおいて、3組の主センサS(11),S(12),S(13)の変動は、図43のテーブルに示すそれぞれセンサS(11),S(12),S(13)の変動と全く同じである。また、図50のテーブルにおいて、3組の副センサS(31),S(32),S(33)の検出値Caの変動は、「Fz」の列に関しては、それぞれ主センサS(11),S(12),S(13)の検出値Caの変動と同じになり、「Mx」,「My」の列に関しては、それぞれ主センサS(11),S(12),S(13)の検出値Caの変動の符号を逆転させたものとなっている。一方、3組の副センサS(31),S(32),S(33)の検出値Cbの変動は、「Mz」の列に関しては、それぞれ主センサS(11),S(12),S(13)の検出値Cbの変動と同じになり、「Fx」,「Fy」の列に関しては、それぞれ主センサS(11),S(12),S(13)の検出値Cbの変動の符号を逆転させたものとなっている。このようになる理由は、図49に示す各配置点P(11)〜P(33)の変位方向と、各配置点P(11)〜P(33)に定義されたα軸,γ軸の向きとを考慮すれば、これまでの説明から容易に理解できよう。
【0203】
この実施形態の場合も、6組の変位センサS(11)〜S(33)は同一のセンサである。各センサのXY平面上への投影像は、原点Oに関して点対称ではないが、各センサを原点Oを中心として60°回転させると元の配置に重なるような配置がなされている。したがって、上方基板100の原点Oの位置に力が作用した場合、図50のテーブルの各欄に示す変動結果を踏まえれば、作用した力の6成分の値は、図51に示す演算式で与えられることになる。ここで、K1,K2は、各変位センサの検出感度を補正するための感度補正係数である。
【0204】
図49に示すとおり、軸W3,W4が、X軸に対して30°の角度をなすように定義されているため、図51の演算式では、FxおよびMxの式についてのみ感度補正係数K1,K2を用いれば足りるが、一般に、軸W3,W4のX軸に対する角度が任意の場合には、各検出値について、それぞれ固有の感度補正係数を用いた調整が必要になる。
【0205】
この第6の実施形態に係る図51の演算式では、Fx,Fy,Mx,Myの演算式について、差分項の演算が行われている。したがって、これら4成分の検出には、差分値を利用した検出が可能になる。このような差分値を利用した検出が、検出精度を高めるために有効であることは既に述べたとおりである。
【0206】
<<< §6.変位センサの変形例 >>>
§4,§5で述べた第1〜第6の実施形態に係る力検出装置は、いずれも§1,§2で述べた変位センサを複数N組用いることにより、上方基板100の各部(各センサの配置点)の変位を検出し、力の6成分を検出するものである。ただ、本発明に係る力検出装置に用いる変位センサは、§1,§2で述べたセンサに限定されるものではない。ここでは、本発明に利用する変位センサに必要な本質的な特徴を説明するとともに、この変位センサのいくつかの変形例を述べることにする。
【0207】
<6−1:本発明に係る変位センサの特徴>
まず、§1,§2で述べた変位センサ(以下、基本センサと呼ぶ)の電極構造およびその機能を再考してみよう。図52は、図1に示す構造体および電極のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、バネ31〜34の図示は省略する。
【0208】
図52には、αβγ三次元直交座標系が示されているが、当該座標系の原点Qは、図17に示す力検出装置を構成する上方基板100(変位センサによる測定対象となる図1の上方基板10)内の当該変位センサを配置すべき所定の配置点Pに定義される。既に述べたとおり、このαβγ三次元直交座標系は、力検出装置全体に定義されるXYZグローバル座標系に対して、個々の配置点Pごと(すなわち、個々の変位センサごと)に定義されるローカル座標系となる。ここで、α軸およびβ軸は、原点Qを含み、上方基板100の基板面に平行な平面上に定義され、原点Qを通りαβ平面に対して直交する方向にγ軸が定義される。
【0209】
この基本センサに要求される基本的な機能は、上方基板100の配置点Pの位置(すなわち、原点Qの位置)について、α軸方向の変位Dαとγ軸方向の変位Dγとを独立して検出することである。ここで、「独立して検出する」とは、他軸成分の干渉を受けずに、検出対象成分のみを正確に取り出すことを意味する。そのような検出を行うために、本発明では、上方基板側に設けられた第1の上方電極E11および第2の上方電極E12と、下方基板側に設けられた第1の下方電極E21および第2の下方電極E22という4種類の電極を用意し、第1の上方/下方電極E11,E21によって第1の容量素子C1を構成し、第2の上方/下方電極E12,E22によって第2の容量素子C2を構成することになる。
【0210】
図52に示す基本センサの場合、第1の上方/下方電極E11,E21は円形の電極であり、第2の上方/下方電極E12,E22は矩形の電極であるが、もちろん、各電極の形状はこれらの形状に限定されるわけではない。図にハッチングを施して示す円形領域A1は、第1の容量素子C1を構成する一対の電極E11,E21の平面的な重複領域を示しており、第1の容量素子C1の静電容量値C1は、この重複領域A1の面積に比例して定まる。また、図にハッチングを施して示す外形が矩形の領域A2(内部に円形の開口部R1を有する)は、第2の容量素子C2を構成する一対の電極E12,E22の平面的な重複領域を示しており、第2の容量素子C2の静電容量値C2は、この重複領域A2の面積に比例して定まる。
【0211】
本発明に係る変位センサにおいて、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21に要求される基本的な条件は、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21のαβ平面上への正射影像に関して、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では(検出対象となる外力が作用していない状態では)、被包含電極となる一方の電極の正射影像の領域が包含電極となる他方の電極の正射影像の領域内に包含され、かつ、上方基板が下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、および、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、上記包含関係が依然として維持されるように、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21の配置および形状が設定されている、という条件である。なお、上方基板が下方基板に対してγ軸の正または負方向に変位を生じたときに、αβ平面上への正射影像に関して上記包含関係が維持されることは当然である。
【0212】
図52に示す基本センサの場合、第1の上方電極E11が包含電極、第1の下方電極E21が被包含電極となっており、上方基板が変位を生じていないときでも、α軸もしくはβ軸に所定の許容範囲内の変位を生じたときでも、αβ平面上への正射影像に関して、第1の下方電極E21の正射影像は第1の上方電極E11の正射影像内に包含される。このような包含関係が維持されている限り、図にハッチングを施して示す重複領域A1の面積は一定になり、γ軸方向の変位がない限り、第1の容量素子C1の静電容量値C1は変化しない。別言すれば、このような包含関係が維持されている限り、第1の容量素子C1の静電容量値C1の変動量ΔC1は、γ軸方向の変位を示すことになる。基本センサから出力される検出値Ca(=−C1)の変動量を、変位Dγのみを示す値として利用できるのは、このためである。
【0213】
なお、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21のいずれを包含電極もしくは被包含電極とするかは任意であり、図52に示す基本センサとは逆に、第1の上方電極E11を被包含電極とし、第1の下方電極E21を包含電極とする構成を採ってもよい。この場合、第1の下方電極E21の方が第1の上方電極E11よりも大きな電極ということになる。
【0214】
一方、本発明に係る変位センサにおいて、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22に要求される基本的な条件は、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22のαβ平面上への正射影像に関して、両正射影像の重複領域の図形形状(その面積)が、上方基板が下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに変化し、かつ、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに不変であるように、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22の配置および形状が設定されている、という条件である。
【0215】
図52に示す基本センサの場合、α軸方向の変位が生じた場合、第2の上方電極E12が図の左右に移動するため、図にハッチングを施して示す重複領域A2の面積変動量は変位量に比例することになる。これは、第2の上方電極E12と第2の下方電極E22とが、αβ平面上への正射影像に関して、オフセットを生じるように配置されているためである。一方、β軸方向の変位が生じた場合、第2の上方電極E12が図の上下に移動するが、移動量が所定の許容範囲内であれば(電極E12の上下の辺が、電極E22の上下の辺を越えず、開口部R1の輪郭が開口部R2の輪郭に接触しなければ)、重複領域A2の面積は一定になる。これは、β軸方向の変位が生じていない状態において、第2の下方電極E22のβ軸方向の幅区間が、第2の上方電極E12のβ軸方向の幅区間を包含しており、当該包含関係が、所定の許容範囲内のβ軸方向の変位が生じた場合も維持されるようになっているためである。もちろん、第2の上方電極E12のβ軸方向の幅区間が、第2の下方電極E22のβ軸方向の幅区間を包含するという、逆の包含関係になっていてもかまわない。
【0216】
結局、このようなβ軸方向に関する包含関係が維持されている限り、図にハッチングを施して示す重複領域A2の形状(面積)は、α軸方向の変位が生じた場合には変化し、β軸方向の変位が生じた場合には変化しないので、第2の容量素子C2の静電容量値C2の変化は、α軸方向の変位か、γ軸方向の変位か、のいずれかに起因したものになる。別言すれば、上記β軸方向に関する包含関係が維持されている限り、第2の容量素子C2の静電容量値C2の変動は、α軸方向の変位Dαに起因した変動分とγ軸方向の変位Dγに起因した変動分とを合成したものになる。ここで、γ軸方向の変位Dγは、第1の容量素子C1の静電容量値C1の変動量ΔC1として求まるので、静電容量値C2の変動量ΔC2から、変位Dγに起因した変動分を除去すれば、α軸方向の変位Dαのみを示す検出値を得ることができる。すなわち、検出値Cbを、Cb=−C2+k・C1とすれば、当該検出値Cbの変動量が変位Dαのみを示す値になる。
【0217】
基本センサの検出回路Hは、このような原理に基づいて、静電容量値C1の変動量ΔC1を原点Qのγ軸方向の変位Dγを示す検出信号として出力し、静電容量値C2の変動量ΔC2から変位Dγに起因する変動量を除去した値を原点Qのα軸方向の変位Dαを示す検出信号として出力することになる。もちろん、こうして検出された変位Dγの値は、原点Qの位置に作用したγ軸方向の力を示す値ということもでき、変位Dαの値は、原点Qの位置に作用したα軸方向の力を示す値ということもできる。したがって、本発明に係る変位センサは、ローカル原点Qの位置に作用した力を検出する力センサということもできる。
【0218】
<6−2:基本センサに固有の特徴>
続いて、§1,§2で述べた基本センサに固有の特徴を述べる。もちろん、この基本センサも、本発明に係る変位センサの1つであるので、上記「6−1:本発明に係る変位センサの特徴」で述べた特徴をすべて備えているが、この基本センサは、更に、次のような固有の特徴を備えている。
【0219】
まず、前述したように、第1の上方電極E11および第1の下方電極E21の一方を包含電極、他方を被包含電極と呼んだ場合に、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極のαβ平面上への正射影像が、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、被包含電極の配置および形状が設定されている、という特徴を有している。具体的には、被包含電極となる第1の下方電極E21のαβ平面上への正射影像が円形であり、変位が生じていない状態で、原点Qを中心とする位置に配置されている、という構成をとっている。
【0220】
このような軸対称性は、上方基板の傾斜を変位として誤検出することを避ける上で効果的である。たとえば、図31に示すテーブルの「My」の列のCa(Y+),Ca(Y−)の欄は「0」となっているが、これはモーメントMyが作用した場合、変位センサS(Y+),S(Y−)から出力される検出値Ca(=−C1)の変動がないことを前提とした結果である。しかしながら、モーメントMyが作用した場合、上方基板100は、図27に示すように傾斜するため、図26に示すY軸上に配置されている変位センサS(Y+),S(Y−)を構成する電極の電極間距離は変動することになる。ただ、電極がY軸に関して線対称であれば、図27に示すように傾斜が生じた場合でも、変位センサS(Y+),S(Y−)を構成する電極の電極間距離は、右側半分では減少し、左側半分では増加するため、静電容量値C1の変動は左右で相殺され、トータルでは、静電容量値C1に変動は生じない。
【0221】
よって、図31に示すテーブルの「My」の列のCa(Y+),Ca(Y−)の欄を正確に「0」にするためには、被包含電極となる第1の下方電極E21のXY平面上への正射影像(すなわち、図52においてハッチングを施した重複領域A1)がY軸について線対称である必要がある。もちろん、このような対称性が維持されていなくても、測定精度上「0」とみなすことができる程度の変動であれば、実用上、大きな問題は生じないので、本発明を実施する上で、上記線対称性は必須条件ではない。ただ、上記線対称性が維持されていれば、測定精度を確実に向上させることができるので、実際には、被包含電極の形状および配置は、α軸およびβ軸に関して線対称を有するようにするのが好ましい。
【0222】
同様の理由により、第2の容量素子C2を構成することになる電極の実効領域、すなわち、図52においてハッチングを施した重複領域A2についても、変位が生じていない状態で、α軸およびβ軸に関する線対称性が維持されるように、形状および配置が設定されているようにするのが好ましい。
【0223】
また、この基本センサでは、図52に示されているとおり、第2の上方電極E12が内部に開口部R1を有する形状をなし、第1の上方電極E11がこの第2の上方電極E12の開口部R1内に配置され、第2の下方電極E22が内部に開口部R2を有する形状をなし、第1の下方電極E21がこの第2の下方電極E22の開口部内に配置されている。このような入れ子式の電極配置を採ると、次の2つのメリットが得られる。
【0224】
第1のメリットは、電極形成領域をローカル原点Q近傍に集約化できる点である。本発明における変位センサは、上方基板100内に定義された所定の配置点P(ローカル原点Q)についての変位を検出することを目的としているため、その構成要素となる電極は、できるだけローカル原点Qの近傍に配置するのが好ましい。電極の外縁部がローカル原点Qから遠くなればなるほど、「ローカル原点Qの変位量」としての位置的精度は低下せざるを得ない。このような位置的精度を向上させる観点からは、電極はできるだけ面積を小さくするのが好ましいが、電極面積を小さくすると、容量素子の静電容量値も小さくなるため、検出感度は低下せざるを得ない。上記入れ子式の電極配置を採れば、ある程度の面積をもったすべての電極をローカル原点Qの近傍に集約することができる。
【0225】
第2のメリットは、前述した対称性確保が容易になる点である。たとえば、図52に示す例の場合、前述したとおり、ハッチングを施した重複領域A1,A2の形状および配置にα軸およびβ軸に関する線対称性が確保されるのが好ましい。実際、図52に示す例の場合、このような線対称性が確保されている。一方の電極の開口部内に他方の電極を配置するという入れ子式の電極配置を採れば、重複領域A1,A2の双方について線対称性を確保することが非常に容易になる。
【0226】
特に、図52に示す例の場合、第1の上方電極E11の外形、第2の上方電極E12の開口部R1の形状、第1の下方電極E21の外形、第2の下方電極E22の開口部R2の形状がいずれも円となっており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら各円の中心点がγ軸上(αβ投影面における原点Q上)に位置するようになっている。このように、電極E11,E21,開口部R1,R2を、γ軸を中心とする円とする実施例は、上述したα軸およびβ軸に関する線対称性を確保することができ、しかも上述した入れ子式の電極配置を容易に実現することができるので、実用上、非常に好ましい実施例ということができる。
【0227】
一方、図52に示す例の場合、第2の上方電極E12の外形および第2の下方電極E22の外形を矩形としている。前述したように、本発明に係る変位センサにおいて、第2の上方電極E12および第2の下方電極E22に要求される基本的な条件は、両電極のαβ平面上への正射影像の重複領域A2の図形形状(面積)が、α軸方向に変位を生じたときには変化するが、β軸方向に変位を生じたときに不変である、という条件である。電極E12,E22の外形を矩形として、両者をα軸に関してオフセット配置するようにすれば、上記条件を満足させる構成を容易に実現することができる。
【0228】
もっとも、電極E12,E22の外形は、必ずしも矩形である必要はない。たとえば、図52において、電極E12の右端部分の形状や、電極E22の左端・上端・下端部分の形状は、α軸方向およびβ軸方向の変位量が所定の許容範囲内である限り(これら端部にまで重複領域A2が到達しない限り)、重複領域A2の形状には影響を及ぼすことはない。したがって、上記各端部は必ずしも直線である必要はなく、任意の形状でかまわない。また、電極E12の左端・上端・下端部分の形状は、変位量に比例する線形検出値を得る必要がなければ、必ずしも直線である必要はない。結局、図52に示す電極構成において、重複領域A2の図形形状(面積)が、α軸方向に変位を生じたときには変化するが、β軸方向に変位を生じたときに不変である、という条件を満足させるためには、電極形状については、「電極E22の右端部分がβ軸に平行な直線である」という条件が満たされていれば足りる。図52に示すαβ平面上への正射影像に関して、電極E22の右端部分は、電極E12と重なりが生じる可能性がある部分であり、電極E12がβ軸方向に変位した場合にも、重複領域A2の図形形状を一定に維持するためには、この部分がβ軸に平行な直線である必要がある。
【0229】
結局、重複領域A2の図形形状(面積)が、α軸方向に変位を生じたときには変化するが、β軸方向に変位を生じたときに不変である、という条件を満足させるためには、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態において、第2の上方電極E12の外形図形と第2の下方電極E22の外形図形とについて、次の3条件が満足されていればよい(図52に示す例は、電極E12の外形図形を図形F1,F3とし、電極E22の外形図形を図形F2,F4とした例である)。
【0230】
<条件1:α軸に関するオフセット条件>
一方の図形を図形F1、他方の図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置する(α軸の正負を逆転させても等価)。
【0231】
<条件2:β軸に関する包含条件>
一方の図形を図形F3、他方の図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置する。
【0232】
<条件3:重複領域の輪郭線条件>
上記条件2における図形F3および図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす。
【0233】
ただ、実用上は、変位量に比例する線形検出値が得られるのが好ましいので、重複領域A2の外形が、常に、α軸に平行な2辺とβ軸に平行な2辺を有する矩形となるようにするのが好ましい。具体的には、上記条件1における図形F1のα軸負方向側の端部(図52に示すように、図形F1=図形F3の場合)もしくは図形F2のα軸正方向側の端部(図52に示す例において、電極E12の縦幅が電極E22の縦幅よりも広くなるように設定し、図形F1=図形F4とする場合)が、β軸に平行な直線となるようにし、上記条件2における図形F3のβ軸正方向側の端部およびβ軸負方向側の端部が、α軸に平行な直線となるようにすればよい。
【0234】
このような観点からは電極E12,E22の外形図形を矩形にすることは、実用上、非常に好ましい実施例ということができる。より具体的に説明すれば、実用上は、第2の上方電極E12の外形図形および第2の下方電極E22の外形図形が、α軸に平行な2辺とβ軸に平行な2辺とをもった矩形をなし(これにより、上記条件3:重複領域の輪郭線条件が満たされる)、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら2つの矩形について、次の2条件が満足されるような配置を行えばよい。
【0235】
<条件1:α軸に関するオフセット条件>
一方の矩形を矩形F1、他方の矩形を矩形F2としたときに、矩形F1のα軸正方向側の辺が、矩形F2のα軸正方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、矩形F1のα軸負方向側の辺が、矩形F2のα軸負方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置する(α軸の正負を逆転させても等価)。
【0236】
<条件2:β軸に関する包含条件>
一方の矩形を矩形F3、他方の矩形を矩形F4としたときに、矩形F4のβ軸正方向側の辺が、矩形F3のβ軸正方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、矩形F4のβ軸負方向側の辺が、矩形F3のβ軸負方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置する。
【0237】
<6−3:第1の変形例>
続いて、§1,§2で述べた基本センサ(図52)の変形例を示す。図53は、この第1の変形例の物理的構造部の上面図であり、上方基板40および下方基板50と、これら各基板の表面に形成された個々の電極が示されている。ここで、上方基板40については透視した状態を示し、バネは図示を省略する。図において、実線で示された電極E41A,E41B,E42は、上方基板40の下面に形成された上方電極であり、図において、一部もしくは全部が破線で示された電極E51A,E51B,E52は、下方基板50の上面に形成された下方電極である。
【0238】
ここで、実線で示された円形電極E41A,E41Bは、図52に示す基本センサにおける第1の上方電極E11に対応する機能を果たし、破線で示された円形電極E51A,E51Bは、図52に示す基本センサにおける第1の下方電極E21に対応する機能を果たす。図示のとおり、円形電極E41A,E51Aの投影像は、点QAを中心とした位置に配置され、円形電極E41B,E51Bの投影像は、点QBを中心とした位置に配置されており、これらの配置位置は、αβγ座標系のローカル原点Qとは一致しない。ただ、中心点QAはβ軸正領域上に位置し、中心点QBはβ軸負領域上に位置し、それぞれ原点Qから等距離の位置にある。
【0239】
一方、矩形電極E42は、図52に示す基本センサにおける第2の上方電極E12に対応する機能を果たし、矩形電極E52は、図52に示す基本センサにおける第2の下方電極E22に対応する機能を果たす。これら矩形電極E42,E52の投影像は、原点Qの近傍に位置する。
【0240】
図54は、図53に示す変位センサの物理的構造部のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、バネは図示を省略する。図示の重複領域A1AおよびA1Bは、それぞれ容量素子C1A,C1Bを構成する電極の実効領域を示し、容量素子C1A,C1Bを並列接続することにより、基本センサの容量素子C1が形成される。別言すれば、図示の重複領域A1AおよびA1Bは、図52に示す基本センサにおける重複領域A1に対応する。一方、図示の重複領域A2は、容量素子C2を構成する電極の実効領域を示し、図52に示す基本センサにおける重複領域A2に対応する。
【0241】
図52に示す基本センサでは、矩形電極E12,E22の内部に円形開口部R1,R2を設け、この円形開口部R1,R2内に円形電極E11,E21を配置する入れ子式の配置を採っていたが、図53,図54に示す変形例では、入れ子式を採用せずに、円形電極を矩形電極の外部に配置する構成を採っている。したがって、矩形電極E42,E52には開口部は設けられていない。
【0242】
この変形例で、円形電極を図の上部(E41A,E51A)と、図の下部(E41B,E51B)とに分けて配置したのは、α軸に関する対称性を確保するための便宜である。正確な検出を行うために、重複領域の形状がα軸およびβ軸に関して線対称性を有することが好ましいことは、既に述べたとおりである。図54において、重複領域A1A,A1Bは、それぞれ単独ではα軸に関する線対称性は有していないが、両領域を一体の領域として見れば、α軸に関する線対称性が得られることになる。もちろん、β軸に関する線対称性も得られている。
【0243】
結局、ここに示す変形例のように、第1の上方電極と第1の下方電極とからなる電極対を複数組設け、各電極対によって構成される容量素子を並列接続することによって第1の容量素子C1を構成する場合には、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態で、被包含電極群(図54に示す例では、電極E51AとE51B)のαβ平面上への正射影像からなる平面パターンが、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、被包含電極群の配置および形状を設定するのが好ましい。
【0244】
<6−4:第2の変形例>
図55は、図52に示す基本センサの別な変形例の物理的構造部の上面図であり、上方基板60および下方基板70と、これら各基板の表面に形成された個々の電極が示されている。ここで、上方基板60については透視した状態を示し、バネは図示を省略する。また、図において、破線は上方基板60の下面に形成された電極を示し、実線は下方基板70の上面に形成された電極を示している。なお、便宜上、図の上方向をα軸正方向とし、図の左方向をβ軸正方向として、図が描かれている。
【0245】
図に破線で描かれている電極E60は、上方基板60の下面に形成された第1の櫛状電極であり、平面形状が櫛状図形をしている。この第1の櫛状電極E60は、α軸方向に伸びた根幹部E60Aと、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数(図示の例では8本)の歯状部E60Bと、この根幹部E60Aの中央からβ軸方向に伸びる板状部E60Cと、によって構成された1枚の連続した電極である。
【0246】
一方、図に実線で描かれている電極E70は、下方基板70の上面に形成された第2の櫛状電極であり、やはり平面形状が櫛状図形をしている。この第2の櫛状電極E70は、α軸方向に伸びた根幹部E70Aと、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数(図示の例では8本)の歯状部E70Bと、によって構成された1枚の連続した電極である。下方基板70の上面には、更に、別個独立した島状電極E75が形成されている。この島状電極E75は、第1の櫛状電極E60内の板状部E60Cに対向する位置に配置されている。ここで、8本の歯状部E70Bのα軸方向に関する配列周期は、8本の歯状部E60Bのα軸方向に関する配列周期に対して位相がずれており、それぞれ対応する歯状部のαβ平面上への投影像が部分的に重なり合っている。
【0247】
このような電極構成を行えば、板状部E60Cおよびその付け根に位置する根幹部E60Aの一部分が、図52に示す基本センサにおける第1の上方電極E11の役割を果たし、島状電極E75が、図52に示す基本センサにおける第1の下方電極E21の役割を果たすことが理解できよう。すなわち、αβ平面への投影像に関して、板状部E60Cおよびその付け根に位置する根幹部E60Aの一部分は、島状電極E75を包含した状態になっており、上方基板60が下方基板70に対してα軸もしくはβ軸方向に所定の許容範囲内の変位を生じても、上記包含関係は依然として維持される。なお、島状電極E75の位置を図の左方に若干ずらし、板状部E60Cの部分に包含されるようにすれば、板状部E60Cのみによって第1の上方電極E11の役割を果たすことができる。
【0248】
一方、このような電極構成を行えば、第1の櫛状電極E60の構成部分のうち、根幹部E60Aおよび各歯状部E60Bの部分が、α軸に関するオフセット条件については、図52に示す基本センサにおける第2の上方電極E12の役割を果たし、β軸に関する包含条件については、第2の下方電極E22の役割を果たすことが理解できよう。同様に、第2の櫛状電極E70(根幹部E70Aと各歯状部E70B)が、α軸に関するオフセット条件については、図52に示す基本センサにおける第2の下方電極E22の役割を果たし、β軸に関する包含条件については、第2の上方電極E12の役割を果たすことが理解できよう。図示のとおり、8本の歯状部E60Bと8本の歯状部E70Bとは、それぞれ1対1に対応しており、αβ平面への投影像に関して、対応する歯状部が部分的に重なり合うような配置がなされている。しかも、各歯状部の平面的な重複領域の面積は、上方基板60が下方基板70に対してα軸方向に変位した場合には増減するが、β軸方向に所定の許容範囲内の変位を生じた場合には一定になる。
【0249】
図56は、図55に示す変位センサの物理的構造部のαβ平面上への正射影投影図である。ここで、ハッチングは上下電極の平面的な重複領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、バネは図示を省略する。図示の重複領域A1は、第1の容量素子C1を構成する電極の実効領域を示している。この重複領域A1の外形は、被包含電極である島状電極E75の外形に等しい。島状電極E75は、図示のとおり矩形をなし、変位が生じていない状態において、ローカル原点Qが中心点となるように配置されているため、重複領域A1は、α軸およびβ軸に関する線対称性を有している。上述したとおり、この重複領域A1の面積は、変位が所定の許容範囲内である限り一定である。
【0250】
一方、図示の8箇所の重複領域A2−1〜A2−8は、それぞれ容量素子C2−1〜C2−8を構成する電極の実効領域を示し、これら8組の容量素子C2−1〜C2−8を並列接続することにより、基本センサの容量素子C2が形成される。別言すれば、図示の重複領域A2−1〜A2−8は、図52に示す基本センサにおける重複領域A2に対応する。図56に示されている8組の重複領域A2−1〜A2−8のそれぞれに着目すれば、第2の櫛状電極E70の位置を固定した状態において、第1の櫛状電極E60をα軸方向に移動させると面積が増減するが、β軸方向に移動させても、変位量が所定の許容範囲内であれば、面積に変化が生じないことが理解できよう。なお、図示の重複領域A0の部分は、α軸方向およびβ軸方向への変位に対して面積が常に一定の領域になり、変位検出には利用されない不使用領域となる。
【0251】
ここで、第1の櫛状電極E60も、第2の櫛状電極E70も、それぞれ連続した1枚の電極であるため、8組の容量素子C2−1〜C2−8は、自然に並列接続された状態となり、電極E60/E70間の静電容量値を求めれば、この8組の容量素子C2−1〜C2−8の合計容量を得ることができる。なお、第1の櫛状電極E60のうち、板状部E60Cは、根幹部E60Aに連なっているため、第1の上方電極(E60C)と第2の上方電極(E60A,E60B)とが電気的に接続された状態になるが、第1の下方電極(E75)と第2の下方電極(E70A,E70B)とは、電気的に絶縁された個別電極となっているため、電気的な容量検出について問題が生じることはない。
【0252】
以上、第1の櫛状電極E60を上方電極とし、第2の櫛状電極E70および島状電極E75を下方電極とした例を述べたが、もちろん、これら上下の配置を入れ替えてもかまわない。
【0253】
このような櫛状電極E60,E70を用いて構成した変位センサは、検出感度をより高めるために有効である。特に、α軸方向の変位に関する検出感度は、飛躍的に構造する。たとえば、図54に示す実施例における重複領域A2の面積と、図56に示す実施例の重複領域A2−1〜A2−8の合計面積とが等しかった場合、基板上に形成される電極形成部の占有面積はほぼ同程度になる。しかしながら、α軸方向の変位に関する後者の検出感度は前者の検出感度に比べて極めて高くなる。これは、α軸方向に同一の変位量が生じた場合でも、重複領域A2の面積変化に比べて、重複領域A2−1〜A2−8の合計面積の変化の方が大きくなるためである。
【0254】
たとえば、図54に示す重複領域A2を実効面積とする容量素子の静電容量値が16pFであり、図56に示す8組の重複領域A2−1〜A2−8の合計面積を実効面積とする容量素子の静電容量値も16pFであったとしよう(1組の重複領域についての容量素子の静電容量値は2pF)。このように、静電容量値それ自体には変わりはない。しかしながら、図56に示す変形例の場合、たとえば、各歯状部のα軸方向の幅が20μmであり、各重複領域A2−1〜A2−8のα軸方向の幅が10μmであるときに、α軸方向に5μmの変位が生じたとすれば、1組の重複領域についての容量素子の容量値変動は1pFになるので、合計8pFの容量値変動が得られる。これに対して、図54に示す変形例の場合、図示の重複領域A2の横方向の長さが5μmだけ増減するだけなので、容量値変動は、図56に示す変形例ほどは得られない。
【0255】
このように、櫛状電極を利用すると、個々の歯状部についての容量素子ごとに、それぞれ変位量に応じた容量値変動が生じ、これら容量値変動を積算した検出値を得ることができるようになるため、検出感度の向上が図れることになる。
【0256】
ここでこの櫛状電極を用いる実施例における第2の上方電極および第2の下方電極の電極構成を一般論として述べれば、まず、第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状は、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなしていることになる。
【0257】
そして、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極を構成する櫛状図形と第2の下方電極を構成する櫛状図形とについて、次の3条件が満足されていればよい(図55に示す例は、実線で描かれた電極E70の櫛形図形を図形F2,F3とし、破線で描かれた電極E60の櫛形図形を図形F1,F4とした例である)。
【0258】
<条件1:α軸に関するオフセット条件>
一方の櫛状図形を図形F1、他方の櫛状図形を図形F2としたときに、図形F1の根幹部は図形F2の根幹部に比べて、所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、図形F1の各歯状部は根幹部からβ軸正方向側に伸び、図形F2の各歯状部は根幹部からβ軸負方向側に伸びており、図形F1の各歯状部のα軸方向に関する配列周期と図形F2の各歯状部のα軸方向に関する配列周期とは位相がずれている。
【0259】
<条件2:β軸に関する包含条件>
一方の櫛状図形を図形F3、他方の櫛状図形を図形F4として、αβ平面上へ図形F3および図形F4の正射影像を形成した場合に、図形F3の各歯状部の正射影像は、図形F4の対応する各歯状部の正射影像に部分的に重なり合い、図形F3の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F4の根幹部の正射影像までは届かず、図形F4の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F3の根幹部の正射影像を突き抜けている。
【0260】
<条件3:重複領域の輪郭線条件>
上記条件2における図形F4の各歯状部の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに、上記条件2における図形F3の対応する歯状部および根幹部の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす。
【0261】
この櫛状電極を用いる実施例における第2の上方電極および第2の下方電極の電極構成を別な観点から把握すれば、次のように定義することができる。すなわち、まず、第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状は、それぞれ複数の部分図形の集合体によって構成されており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極を構成する部分図形と第2の下方電極を構成する部分図形とについて、次の3条件が満足されていればよい(図55に示す例は、実線で描かれた1本の歯状部E70Bおよびその付け根に位置する根幹部E70Aの一部分からなる矩形を部分図形F2,F3とし、破線で描かれた1本の歯状部E60Bおよびその付け根に位置する根幹部E60Aの一部分からなる矩形を部分図形F1,F4とした例である:図55の最下段の歯状部参照)。
【0262】
<条件1:α軸に関するオフセット条件>
一方の部分図形を図形F1、他方の部分図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置する。
【0263】
<条件2:β軸に関する包含条件>
一方の部分図形を図形F3、他方の部分図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置する。
【0264】
<条件3:重複領域の輪郭線条件>
上記条件2における図形F3および図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなす。
【0265】
<<< §7.力検出装置の構造体の変形例 >>>
ここでは、§3〜§5で述べた力検出装置を構成する構造体の変形例を述べる。図17の上段に示す実施形態の場合、力検出装置を構成する構造体は、上方基板100、下方基板200、バネ310〜340によって構成されており、この構造体に、変位センサを構成する複数の電極を付加することにより、力検出装置の物理的構造部が形成される。図57は、本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の物理的構造部のXY平面上への正射影投影図であり、4組の変位センサS(X+),S(X−),S(Y+),S(Y−)が配置された状態が示されている。なお、この図では、接続部材(バネ310〜340)については、その取付位置である接続点J1〜J4のみを示してある。
【0266】
以下、この第1の実施形態に係る物理的構造部について、いくつかの変形例を示すことにする。なお、以下に述べる各変形例は、§3,§4で述べた第1の実施形態に係る変位センサの配置(電極配置)を採用した例についてのものであるが、もちろん、§5で述べた様々な変位センサの配置を採用することも可能である。
【0267】
<7−1:第1の変形例>
図58は、第1の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部を切断線Lに沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。図58に示す各構成要素の符号末尾には「A」なる記号が付されているが、当該記号「A」を取り去ると、図17上段に示す物理的構造部の対応する構成要素と同じ符号になる。たとえば、図58の上方基板100Aは、図17の上方基板100に対応する構成要素である。
【0268】
この第1の変形例が図17に示す物理的構造部と相違する点は、各上方電極E11,E12と上方基板100Aとの間に絶縁基板110Aが挿入され、各下方電極E21,E22と下方基板200Aとの間に絶縁基板210Aが挿入されている点である。このように、絶縁基板110Aおよび絶縁基板210Aを付加した構造を用いると、上方基板100Aおよび下方基板200Aを金属などの導電性材料で構成することが可能になる。すなわち、上方基板100Aおよび下方基板200Aが導電性基板であっても、絶縁基板110Aおよび絶縁基板210Aを介して各電極を形成するようにすれば、個々の電極が導電性基板によって短絡することを避けることができる。
【0269】
量産型の装置の場合、上方基板100Aおよび下方基板200Aをアルミニウム板やステンレス板などの金属板で構成し、絶縁基板110Aおよび絶縁基板210Aをセラミック板やガラスエポキシ板などの絶縁材料からなる基板で構成するのが好ましい。なお、ばね310A〜340Aは、一般的な金属からなるコイル状のバネでもよいし、合成樹脂製のバネでもよい。
【0270】
<7−2:第2の変形例>
図59は、第2の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部を切断線Lに沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。図59に示す各構成要素の符号末尾には「B」なる記号が付されているが、当該記号「B」を取り去ると、図17上段に示す物理的構造部の対応する構成要素と同じ符号になる。
【0271】
この第2の変形例と図17に示す物理的構造部との第1の相違点は、前述した第1の変形例と同様に、各上方電極E11,E12と上方基板100Bとの間に絶縁基板110Bが挿入され、各下方電極E21,E22と下方基板200Bとの間に絶縁基板210Bが挿入されている点である。この例でも、上方基板100Bおよび下方基板200Bは、アルミニウム板やステンレス板などの金属板で構成され、絶縁基板110Bおよび絶縁基板210Bはセラミック板やガラスエポキシ板などの絶縁材料からなる基板で構成されている。
【0272】
第2の相違点は、下方基板200Bが、基板本体部201Bと台座部202Bとによって構成されている点である。台座部202Bは、基板本体部201Bの周囲下面に形成されており、台座部202Bの内側には空洞部Vが形成されている。この空洞部Vには、絶縁基板410Bを介して、回路素子420Bが配置されている。この回路素子420Bは、各変位センサの検出回路Hや力検出装置の検出ユニットUを構成するための電子回路である。各電極E11,E12,E21,E22と回路素子420Bとの間には、図示しない配線が施されている。
【0273】
第3の相違点は、ばね310〜340の代わりに、可撓性をもった柱状部材310B〜340Bが用いられている点である。本発明において、上方基板と下方基板とを接続する接続部材は、下方基板を固定した状態において、上方基板に外力を作用させた場合に、上方基板が下方基板に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有していればよい。したがって、複数のばね310〜340によって接続部材を構成することもできるし、弾性変形を生じる複数の柱状部材によって接続部材を構成することもできる。図59に示す例は、接続部材として、扁平の柱状部材310B〜340Bを用いたものである。これらの柱状部材は、金属や合成樹脂などの弾性材料で構成すればよい。もちろん、用いる柱状部材の本数や形状は任意である。
【0274】
図60は、図59に示す変形例の接続部材を変更した例を示す縦断面図である。図59に示す変形例との相違は、扁平の柱状部材310B〜340Bを、一部に屈曲部を有する扁平の柱状部材315B〜345Bに置き換えた点のみである。この屈曲部の構造は、柱状部材315Bおよび335Bの断面形状に明瞭に示されているように断面がU字状となっている。これらの柱状部材は、やはり金属や合成樹脂などの弾性材料で構成することができる。このように、柱状部材の一部に屈曲部を設けると、可撓性をより高める効果が得られる。特に、図示のような断面がU字状構造をもった屈曲部は、上方基板100BをXYZ三次元直交座標系上における各座標軸方向に変位させるために効果的である。
【0275】
<7−3:第3の変形例>
図61は、第3の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部をX軸に沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。図61に示す各構成要素の符号末尾には「C」なる記号が付されているが、当該記号「C」を取り去ると、図17上段に示す物理的構造部の対応する構成要素と同じ符号になる。
【0276】
この第3の変形例と図17に示す物理的構造部との第1の相違点は、前述した第1,第2の変形例と同様に、各上方電極と上方基板100Cとの間に絶縁基板110Cが挿入され、各下方電極と下方基板200Cとの間に絶縁基板210Cが挿入されている点である。やはり、上方基板100Cおよび下方基板200Cを、アルミニウム板やステンレス板などの金属板で構成し、絶縁基板110Cおよび絶縁基板210Cをセラミック板やガラスエポキシ板などの絶縁材料からなる基板で構成できる。
【0277】
第2の相違点は、前述した第2の変形例と同様に、下方基板200Cが、基板本体部201Cと台座部202Cとを有し、台座部202Cの内側には空洞部Vが形成されている点である。この空洞部Vには、絶縁基板410Cを介して、検出回路Hや検出ユニットUとして機能する回路素子420Cが配置されている。
【0278】
第3の相違点は、接続部材を、上方基板100Cの周囲に設けられた上方接続用縁部104Cと、下方基板の周囲に設けられた下方接続用縁部204Cと、この上方接続用縁部104Cと下方接続用縁部204Cとを接続する4本の円柱状の柱状部材310C〜340Cと、によって構成した点である。ここで、上方接続用縁部104Cのうち柱状部材310C〜340Cの上端が接続された接続部分の近傍は、ダイアフラム103Cを構成するように厚みが薄くなっており、下方接続用縁部204Cのうち柱状部材310C〜340Cの下端が接続された接続部分の近傍は、ダイアフラム203Cを構成するように厚みが薄くなっている。
【0279】
図62は、図61に示す変形例の主要部分のXY平面上への正射影投影図である。上方基板100Cの外周部分(絶縁基板110Cより外側の部分)は、円環状の上方接続用縁部104Cを形成し、この上方接続用縁部104Cの4箇所には、厚みの薄い円形ダイアフラム103Cが形成されている。同様に、下方基板200Cの外周部分(絶縁基板210Cより外側の部分)は、円環状の下方接続用縁部204Cを形成し、この下方接続用縁部204Cの4箇所には、厚みの薄い円形ダイアフラム203Cが形成されている。そして4本の柱状部材310C〜340Cの上端は、円形ダイアフラム103Cの中心部に接続され、下端は、円形ダイアフラム203Cの中心部に接続されている。
【0280】
上方基板100C側に設けられた円形ダイアフラム103Cと、下方基板200C側に設けられた円形ダイアフラム203Cとは、いずれも可撓性をもった薄膜状の部材である。また、各柱状部材310C〜340Cは可撓性をもった細長い棒状部材である。図示の例では、円形ダイアフラム103Cおよび上方接続用縁部104Cを含めた上方基板100Cは、アルミニウムやステンレスなどの金属から構成されており、また、円形ダイアフラム203Cおよび下方接続用縁部204Cを含めた下方基板200Cも、アルミニウムやステンレスなどの金属から構成されている。更に、4本の柱状部材310C〜340Cも同じ金属から構成されている。
【0281】
上述したとおり、4本の柱状部材310C〜340Cは、細長い棒状部材であるので、X軸もしくはY軸方向に撓みやすいが、Z軸方向への伸縮は起こりにくい。しかしながら、円形ダイアフラム103C,203Cの部分にも撓みが生じるため、上方基板100Cは下方基板200Cに対して、X軸およびY軸方向に容易に変位するとともに、Z軸方向にも容易に変位することになる。なお、4本の柱状部材310C〜340Cの上端および下端を支持する部分は、必ずしもダイアフラムのような膜状構造体にする必要はなく、ビーム構造体にすることも可能である。たとえば、1本の柱状部材の上端もしくは下端を、複数本のビーム構造体によって周囲から支持する構造を採ることも可能である。
【0282】
この第3の変形例では、接続部材を上方基板および下方基板の外周縁部に配置するようにしたため、装置全体の厚みを小さく設計することが可能になり、薄型の力検出装置を実現することができるようになる。図63は、この変形例の主要部分の寸法図である。以下に、本願発明者が試作した装置についての実際の寸法値を例示しておく。この例の場合、装置全体の厚みは、15mmとなり、かなり薄型の装置を実現することができる。本願発明者が知る限り、現時点で市販されている力検出装置の中で、力の6成分を検出可能な最も薄型の装置でも、厚みは28mm程度である。
上方基板100Cおよび下方基板200Cの径φ1=80mm
絶縁基板110Cおよび210Cの径φ2=50mm
空洞部Vの径φ3=40mm
ダイアフラム103C,203Cの径φ4=6mm
柱状部材310C〜340Cの径φ5=2mm
上方基板100Cの厚みd1=6mm
下方基板200Cの厚みd2=7.5mm
上方基板100Cと下方基板200Cとの間の間隙寸法d3=1.5mm
絶縁基板110C,210Cの厚みd4=0.5mm
ダイアフラム103C,203Cの厚みd5=0.3mm
各電極の厚みd6=1.0μm
【0283】
<7−4:第4の変形例>
図64は、第4の変形例を示す縦断面図であり、図57に示す物理的構造部をX軸に沿って切断した縦断面図に対応する(電極の詳細構造は省略)。図64に示す各構成要素の符号末尾には「D」なる記号が付されているが、当該記号「D」を取り去ると、図17上段に示す物理的構造部の対応する構成要素と同じ符号になる。
【0284】
この第4の変形例と図17に示す物理的構造部との第1の相違点は、前述した第1〜第3の変形例と同様に、各上方電極と上方基板100Dとの間に絶縁基板110Dが挿入され、各下方電極と下方基板200Dとの間に絶縁基板210Dが挿入されている点である。上方基板100Dおよび下方基板200Dを、アルミニウム板やステンレス板などの金属板で構成し、絶縁基板110Dおよび絶縁基板210Dをセラミック板やガラスエポキシ板などの絶縁材料からなる基板で構成できる点は、これまでの変形例と同様である。
【0285】
第2の相違点は、前述した第2,第3の変形例と同様に、下方基板200Dの下面に空洞部Vが形成され、この空洞部V内に、絶縁基板410Dを介して、検出回路Hや検出ユニットUとして機能する回路素子420Dを配置した点である。
【0286】
第3の相違点は、接続部材を、上方基板100Dと下方基板200Dとの間に充填されたゴム層350D(エラストマーからなる層)によって構成した点である。実際には、エラストマーの材料となる粘度状の高分子化合物を両基板間に充填した後、これを硬化させることにより、弾力をもったエラストマーからなるゴム層350Dを形成することができる。
【0287】
一般に、ゴム(エラストマー)は金属や合成樹脂に比べると経年劣化しやすい材料であるため、ゴム層350Dを接続部材として用いた装置は、これまで述べてきたバネや柱状部材を接続部材として用いた装置に比べて、寿命や測定精度の点で劣ることになる。しかしながら、ゴム層350Dによって接続部材を構成すると、バネや柱状部材を配置するための領域を各基板の周縁部に設ける必要がなくなり、構造が単純になり、装置全体を小型化できるメリットが得られる。
【0288】
なお、その他の細かな変更点ではあるが、上方基板100Dの上面にはネジ孔107Dが設けられ、下方基板200Dの下面にはネジ孔207Dが設けられている。これらのネジ孔107D,207Dは、この力検出装置を2つの物体間に接続して用いる場合に利用できる。たとえば、ロボットの手首の部分にこの装置を介挿して利用する場合、ネジ孔107Dを利用して、上方基板100Dの上面にロボットの手の部分を固定し、ネジ孔207Dを利用して、下方基板200Dの下面にロボットの腕の部分を固定することができる。
【0289】
<7−5:第5の変形例>
図65は、本発明に係る力検出装置の第5の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。この第5の変形例は、図64に示す第4の変形例のバリエーションであり、対応する各構成要素の符号末尾には、「D」の代わりに「E」なる記号を付して示してある。
【0290】
前述した第4の変形例では、図64に示されているように、上方基板100Dと下方基板200Dとの間にエラストマーからなるゴム層350Dが介挿されているが、図示のとおり、実際にゴム層350Dの上下両面が接するのは、主として、絶縁基板110D,210Dおよび各電極ということになる。
【0291】
ところが、実際、本願発明者が、絶縁基板110D,210Dの材質としてガラスエポキシを用い、各電極の材質として銅を用いた試作品を制作してみたところ、エラストマーとガラスエポキシ層との界面、およびエラストマーと銅箔との界面における密着性が不十分であるため、ゴム層350Dの介挿によって、上方基板100D(直接的には、絶縁基板110Dおよび上方電極)と、下方基板200D(直接的には、絶縁基板210Dおよび下方電極)と、を十分に接着することが困難であった。すなわち、図64に示す第4の変形例の構造では、ゴム層350Dによる上下の基板の接着強度が、実用上、必ずしも十分ではないことが判明した。
【0292】
図65に示す第5の変形例は、このような問題を解決するための工夫を加えたものである。すなわち、この第5の変形例では、上方基板100Eの周縁部の数カ所に貫通孔107Eが設けられ、下方基板200Eの周縁部の数カ所に貫通孔207Eが設けられている。その他の構成については、第4の変形例と同様である。
【0293】
このように、上下の基板に貫通孔107E,207Eを設けておくと、エラストマーの材料となる粘度状の高分子化合物を両基板間に充填する作業を行った場合に、材料の一部が貫通孔107E,207Eを通って上方基板100Eの上面および下方基板200Eの下面に食み出してくる。そのまま材料を硬化させると、図示のとおり、貫通孔107E,207Eの外部にエラストマーからなる係合固定部351E,352Eが形成される。この係合固定部351E,352Eは、ゴム層350Eと一体構造をなす。しかも、係合固定部351Eは上方基板100Eの上面の貫通孔107E周辺部に係合する構造をもち、係合固定部352Eは下方基板200Eの下面の貫通孔207E周辺部に係合する構造をもつ。
【0294】
このため、上方基板100Eおよび下方基板200Eは、これら係合固定部351E,352Eによって固定された状態になる。もっとも、係合固定部351E,352Eは、貫通孔107E,207E内に充填された部分を含めて、ゴム層350Eと同じ弾力性をもったエラストマーによって構成されているので、上方基板100Eが下方基板200Eに対して三次元の自由度をもって変位可能である点に変わりはない。
【0295】
<7−6:第6の変形例>
図66は、本発明に係る力検出装置の第6の変形例を示す縦断面図である(電極の詳細構造は省略)。この第6の変形例も、図64に示す第4の変形例のバリエーションであり、対応する各構成要素の符号末尾には、「D」の代わりに「F」なる記号を付して示してある。
【0296】
前述した第4の変形例では、図64に示されているように、上方基板100Dと下方基板200Dとの間にエラストマーからなるゴム層350Dが介挿されており、このゴム層350Dは、上下の基板間に隙間なく充填された構造をなす。
【0297】
これに対して、図66に示す第6の変形例では、上下の基板間に挟まれたゴム層360Fは、やはりエラストマーからなる層であるが、隙間なく充填された構造ではなく、基底部361Fの上面に、多数の突起部362Fを上方に向けて植設した構造をなす。図66は、この装置をXZ平面に沿って切断した側断面図であるが、この装置をYZ平面に沿って切断した側断面図も全く同様の図になる。結局、基底部361FはXY平面に平行な平面に沿って延びるシート状の構成要素であり、多数の突起部362Fは、この基底部361Fから上方(Z軸に平行な方向)に生えるようにして伸びる構成要素ということになる。
【0298】
このようなゴム層360Fは、別途の工程で予め成形しておくようにし、これを上下両基板間に挿入して、基底部361Fの下面を下方電極の上面に接着し、突起部362Fの上面を上方電極の下面に接着すればよい。個々の突起部362Fは、図の左右方向および紙面に垂直な方向(すなわち、X軸方向およびY軸方向)に傾斜しやすい性質を有している。したがって、この第6の変形例では、上方基板100FのX軸方向およびY軸方向への変位がしやすくなり、X軸方向およびY軸方向に関する検出感度が向上する。
【0299】
図示のとおり、この第6の変形例でも、下方基板200Fは台座部を有する構造をなし、下面に空洞部Vを確保できるようにしている。この空洞部V内には、絶縁基板410Fおよび回路素子420Fが収容される。また、この装置全体は、筐体500内に収容されており、台座部の底面は、筐体500の底部に固着されている。更に、筐体500の上部には、庇部508が形成され、上方基板100Fの変位量が所定の許容範囲を超えないように制御する制御部材として機能する。
【0300】
すなわち、円盤状の上方基板100Fの周囲側面には、外形の大きなフランジ部108Fおよび109Fが設けられており、筐体500側に設けられた庇部508が、このフランジ部108Fおよび109Fの間の溝部に嵌合している。したがって、上方基板100Fが、X軸方向もしくはY軸方向に所定の許容範囲を超えて変位しようとすると、庇部508が上方基板100Fの周囲側面に設けられた溝部に当接し、過度の変位を抑制する機能を果たす。同様に、上方基板100Fが、Z軸方向に所定の許容範囲を超えて変位しようとすると、庇部508が上方基板100Fの周囲側面に設けられたフランジ部108Fもしくは109Fに当接し、過度の変位を抑制する機能を果たす。
【符号の説明】
【0301】
10:上方基板
20:下方基板
31〜34:バネ
40:上方基板
50:下方基板
60:上方基板
70:下方基板
100:上方基板
100A〜100F:上方基板
101C:上方基板本体部
103C:ダイアフラム
104C:上方接続用縁部
107D:ネジ孔
107E:貫通孔
108F:フランジ部
109F:フランジ部
110A〜110F:絶縁基板
200:下方基板
200A〜200F:下方基板
201B〜201C:基板本体部
202B〜202C:台座部
203C:ダイアフラム
204C:下方接続用縁部
207D:ネジ孔
207E:貫通孔
210A〜210F:絶縁基板
310〜340:バネ
310A〜340A:バネ
310B〜340B:柱状部材
315B〜345B:柱状部材
310C〜340C:柱状部材
350D:ゴム層
350E:ゴム層
351E,352E:係合固定部
360F:ゴム層
361F:基底部
362F:突起部
410B〜410F:絶縁基板
420B〜420F:回路素子(検出回路・検出ユニット)
500:筐体
508:庇部
A0:不使用領域
A1:第1の容量素子C1を構成する一対の電極の平面的な重複領域
A2:第2の容量素子C2を構成する一対の電極の平面的な重複領域
C1:第1の容量素子/その静電容量値
C2:第2の容量素子/その静電容量値
Ca:変位Dγを示す検出値
Cb:変位Dαを示す検出値
Dx,Dy,Dz:各座標軸X,Y,Z方向への変位
Dα,Dβ,Dγ:各座標軸α,β,γ方向への変位
Dγi:変位Dγの任意値
d1〜d6:寸法値
E11:第1の上方電極
E12:第2の上方電極
E21:第1の下方電極
E22:第2の下方電極
E41A,E41B:第1の上方電極
E42:第2の上方電極
E51A,E51B:第1の下方電極
E52:第2の下方電極
E60:第1の櫛状電極
E60A:根幹部(第2の上方電極)
E60B:歯状部(第2の上方電極)
E60C:板状部(第1の上方電極)
E70:第2の櫛状電極
E70A:根幹部(第2の下方電極)
E70B:歯状部(第2の下方電極)
E75:島状電極(第1の下方電極)
F1〜F4:図形
Fx:作用した力のX軸方向成分
Fy:作用した力のY軸方向成分
Fz:作用した力のZ軸方向成分
G1,G2:グラフ
g1,g2:グラフの値
H:検出回路
J1〜J4:バネ接続点
K1,K2,K11〜K26:重み係数
k:補正係数
k1:グラフG1の傾き
k2:グラフG2の傾き
L:切断線
Mx:作用したモーメントのX軸まわり成分
My:作用したモーメントのY軸まわり成分
Mz:作用したモーメントのZ軸まわり成分
N:用いる変位センサの総数
O:XYZ三次元座標系の原点
P:センサの配置点
Q:αβγ三次元座標系の原点
QA,QB:電極の中心点
R1,R2:開口部
S:センサ
T11〜T22:端子
U:検出ユニット
V:空洞部
W1〜W4:斜め方向軸
X,Y,Z:XYZ三次元座標系(グローバル座標系)の各座標軸
α,β,γ:αβγ三次元座標系(ローカル座標系)の各座標軸
ΔC1:静電容量値C1の変動量
ΔC2:静電容量値C2の変動量
ξ1,ξ2:重複区間
φ1〜φ5:寸法値
φ11〜φ22:各電極の直径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行になるように対向して配置された上方基板および下方基板と、前記上方基板と前記下方基板とを接続する接続部材と、を有する構造体であって、前記下方基板を固定した状態において、前記上方基板に外力を作用させた場合に、前記上方基板が前記下方基板に対して変位を生じるように、前記接続部材の少なくとも一部分が可撓性を有している、そのような構造体について、前記変位を検出する機能をもった変位センサであって、
前記上方基板の下面に形成された第1の上方電極および第2の上方電極と、
前記下方基板の上面に形成された第1の下方電極および第2の下方電極と、
前記第1の上方電極と前記第1の下方電極とによって構成される第1の容量素子の静電容量値C1と、前記第2の上方電極と前記第2の下方電極とによって構成される第2の容量素子の静電容量値C2と、に基づいて、所定の検出信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記上方基板内の所定位置に原点Qを定義し、この原点Qを含み、前記上方基板の基板面に平行な平面上に、前記原点Qを通り互いに直交するα軸およびβ軸を定義し、前記原点Qを通りαβ平面に対して直交するγ軸を定義することにより、αβγ三次元直交座標系を定義したときに、
前記第1の上方電極および前記第1の下方電極のαβ平面上への正射影像に関して、前記上方基板が前記下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極となる一方の電極の正射影像の領域が包含電極となる他方の電極の正射影像の領域内に包含され、かつ、前記上方基板が前記下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、および、前記上方基板が前記下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、前記包含関係が依然として維持されるように、前記第1の上方電極および前記第1の下方電極の配置および形状が設定されており、
前記第2の上方電極および前記第2の下方電極のαβ平面上への正射影像に関して、両正射影像の重複領域の図形形状が、前記上方基板が前記下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに変化し、かつ、前記上方基板が前記下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに不変であるように、前記第2の上方電極および前記第2の下方電極の配置および形状が設定されており、
前記検出回路が、前記静電容量値C1の変動量ΔC1を前記原点Qのγ軸方向の変位Dγを示す検出信号として出力し、前記静電容量値C2の変動量ΔC2から前記変位Dγに起因する変動量を除去した値を前記原点Qのα軸方向の変位Dαを示す検出信号として出力することを特徴とする変位センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の変位センサにおいて、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極のαβ平面上への正射影像が、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、前記被包含電極の配置および形状が設定されていることを特徴とする変位センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の変位センサにおいて、
第1の上方電極と第1の下方電極とからなる電極対が複数組設けられており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極群のαβ平面上への正射影像からなる平面パターンが、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、前記被包含電極群の配置および形状が設定されていることを特徴とする変位センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の変位センサにおいて、
第2の上方電極が内部に開口部を有する形状をなし、第1の上方電極がこの第2の上方電極の開口部内に配置され、第2の下方電極が内部に開口部を有する形状をなし、第1の下方電極がこの第2の下方電極の開口部内に配置されていることを特徴とする変位センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の変位センサにおいて、
第1の上方電極の外形、第2の上方電極の開口部の形状、第1の下方電極の外形、第2の下方電極の開口部の形状がいずれも円であり、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら各円の中心点がγ軸上に位置することを特徴とする変位センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の変位センサにおいて、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極の外形図形と第2の下方電極の外形図形とについて、
一方の図形を図形F1、他方の図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の図形を図形F3、他方の図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、
前記図形F3および前記図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、前記図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに前記図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなすことを特徴とする変位センサ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の変位センサにおいて、
第2の上方電極の外形図形および第2の下方電極の外形図形が、α軸に平行な2辺とβ軸に平行な2辺とをもった矩形をなし、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら2つの矩形について、
一方の矩形を矩形F1、他方の矩形を矩形F2としたときに、矩形F1のα軸正方向側の辺が、矩形F2のα軸正方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、矩形F1のα軸負方向側の辺が、矩形F2のα軸負方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の矩形を矩形F3、他方の矩形を矩形F4としたときに、矩形F4のβ軸正方向側の辺が、矩形F3のβ軸正方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、矩形F4のβ軸負方向側の辺が、矩形F3のβ軸負方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置することを特徴とする変位センサ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の変位センサにおいて、
第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状が、それぞれ複数の部分図形の集合体によって構成されており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、前記第2の上方電極を構成する部分図形と前記第2の下方電極を構成する部分図形とについて、
一方の部分図形を図形F1、他方の部分図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の部分図形を図形F3、他方の部分図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、
前記図形F3および前記図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、前記図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに前記図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなすことを特徴とする変位センサ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の変位センサにおいて、
第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、前記根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなし、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、前記第2の上方電極を構成する櫛状図形と前記第2の下方電極を構成する櫛状図形とについて、
一方の櫛状図形を図形F1、他方の櫛状図形を図形F2としたときに、図形F1の根幹部は図形F2の根幹部に比べて、所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、図形F1の各歯状部は根幹部からβ軸正方向側に伸び、図形F2の各歯状部は根幹部からβ軸負方向側に伸び、前記図形F1の各歯状部のα軸方向に関する配列周期と前記図形F2の各歯状部のα軸方向に関する配列周期とは位相がずれており、
一方の櫛状図形を図形F3、他方の櫛状図形を図形F4として、αβ平面上へ図形F3および図形F4の正射影像を形成した場合に、図形F3の各歯状部の正射影像は、図形F4の対応する各歯状部の正射影像に部分的に重なり合い、図形F3の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F4の根幹部の正射影像までは届かず、図形F4の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F3の根幹部の正射影像を突き抜け、
前記図形F4の各歯状部の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに前記図形F3の対応する歯状部および根幹部の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなすことを特徴とする変位センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の変位センサにおいて、
平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、この根幹部の中央からβ軸方向に伸びる板状部と、を有する櫛状図形をなす第1の櫛状電極を上方基板の下面もしくは下方基板の上面に形成し、前記板状部および必要に応じてその付け根に位置する根幹部の一部分を第1の上方電極もしくは第1の下方電極とし、前記第1の櫛状電極の前記各歯状部および前記根幹部を第2の上方電極もしくは第2の下方電極とし、
平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなす第2の櫛状電極と、前記板状部に対向する位置に配置された島状電極と、を下方基板の上面もしくは上方基板の下面に形成し、前記島状電極を第1の下方電極もしくは第1の上方基板とし、前記第2の櫛状電極を第2の下方電極もしくは第2の上方電極とすることを特徴とする変位センサ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の変位センサを複数N組含む力検出装置であって、
互いに平行になるように対向して配置された上方基板および下方基板と、
前記上方基板と前記下方基板とを接続する部材であって、前記下方基板を固定した状態において、前記上方基板に外力を作用させた場合に、前記上方基板が前記下方基板に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有している接続部材と、
前記複数N組の変位センサと、
前記複数N組の変位センサを利用して、前記上方基板に作用した外力を検出する検出ユニットと、
を備え、
前記複数N組の変位センサは、それぞれ、前記上方基板の下面に形成された第1の上方電極および第2の上方電極と、前記下方基板の上面に形成された第1の下方電極および第2の下方電極と、検出回路と、を有し、
前記上方基板内の所定のN箇所に、それぞれローカルなαβγ三次元直交座標系の原点Qが定義され、前記複数N組の変位センサは、前記上方基板の各ローカル原点Qの位置についてのγ軸方向の変位Dγおよびα軸方向の変位Dαを検出できるように配置され、
前記上方基板内の所定位置にグローバル原点Oを定義し、このグローバル原点Oを含み、前記上方基板の基板面に平行な平面上に、前記グローバル原点Oを通り互いに直交するX軸およびY軸を定義し、前記グローバル原点Oを通りXY平面に対して直交するZ軸を定義することにより、グローバルなXYZ三次元直交座標系を定義したときに、前記検出ユニットが、前記複数N組の変位センサの各検出回路から出力される変位についての検出信号に基づいて、前記上方基板の前記原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および前記上方基板の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のうちの少なくとも1つを検出することを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の力検出装置において、
4組の変位センサを有し、
第1のセンサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2のセンサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3のセンサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4のセンサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向き、前記第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、前記第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、前記第4のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向くように、前記4組のセンサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
請求項11に記載の力検出装置において、
ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から前記第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の外側センサと、を有し、
第1の内側センサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2の内側センサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3の内側センサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4の内側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の内側センサのα軸正方向がY軸正方向を向き、前記第2の内側センサのα軸正方向がY軸負方向を向き、前記第3の内側センサのα軸正方向がX軸負方向を向き、前記第4の内側センサのα軸正方向がX軸正方向を向くように、前記4組の内側センサが配置されており、
第1の外側センサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2の外側センサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3の外側センサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4の外側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の外側センサのα軸正方向が前記第1の内側センサのα軸負方向を向き、前記第2の外側センサのα軸正方向が前記第2の内側センサのα軸負方向を向き、前記第3の外側センサのα軸正方向が前記第3の内側センサのα軸負方向を向き、前記第4の外側センサのα軸正方向が前記第4の内側センサのα軸負方向を向くように、前記4組の外側センサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
請求項11に記載の力検出装置において、
4組の変位センサを有し、
第1のセンサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサのローカル原点QがXY座標系の第3象限に位置し、第4のセンサのローカル原点QがXY座標系の第4象限に位置し、
前記第1のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、前記第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、前記第3のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向き、前記第4のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向くように、前記4組のセンサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項11に記載の力検出装置において、
3組の変位センサを有し、
第1のセンサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第2のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、前記3組のセンサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項11に記載の力検出装置において、
ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から前記第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の外側センサと、を有し、
第1の外側センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の外側センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の外側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の外側センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第2の外側センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第3の外側センサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、前記3組の外側センサが配置されており、
第1の内側センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の内側センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の内側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の内側センサのα軸正方向が前記第1の外側センサのα軸負方向を向き、前記第2の内側センサのα軸正方向が前記第2の外側センサのα軸負方向を向き、前記第3の内側センサのα軸正方向が前記第3の外側センサのα軸負方向を向くように、前記3組の内側センサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項11に記載の力検出装置において、
3組の主センサと、3組の副センサと、を有し、
第1の主センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の主センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の主センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の主センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第2の主センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第3の主センサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、前記3組の主センサが配置されており、
第1の副センサのローカル原点Qが前記第1の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第2の副センサのローカル原点Qが前記第2の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第3の副センサのローカル原点Qが前記第3の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、
前記第1の副センサのα軸正方向が前記第1の主センサのα軸負方向を向き、前記第2の副センサのα軸正方向が前記第2の主センサのα軸負方向を向き、前記第3の副センサのα軸正方向が前記第3の主センサのα軸負方向を向くように、前記3組の副センサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材が、複数のばね、もしくは弾性変形を生じる複数の柱状部材によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材が、上方基板の周囲に設けられた上方接続用縁部と、下方基板の周囲に設けられた下方接続用縁部と、前記上方接続用縁部と前記下方接続用縁部とを接続する複数の柱状部材と、によって構成され、
前記上方接続用縁部のうち前記柱状部材の上端が接続された接続部分の近傍と、前記下方接続用縁部のうち前記柱状部材の下端が接続された接続部分の近傍とが、ダイアフラムもしくはビーム構造体によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載の変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材が、上方電極と下方電極との間に配置されたゴム層によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項1】
互いに平行になるように対向して配置された上方基板および下方基板と、前記上方基板と前記下方基板とを接続する接続部材と、を有する構造体であって、前記下方基板を固定した状態において、前記上方基板に外力を作用させた場合に、前記上方基板が前記下方基板に対して変位を生じるように、前記接続部材の少なくとも一部分が可撓性を有している、そのような構造体について、前記変位を検出する機能をもった変位センサであって、
前記上方基板の下面に形成された第1の上方電極および第2の上方電極と、
前記下方基板の上面に形成された第1の下方電極および第2の下方電極と、
前記第1の上方電極と前記第1の下方電極とによって構成される第1の容量素子の静電容量値C1と、前記第2の上方電極と前記第2の下方電極とによって構成される第2の容量素子の静電容量値C2と、に基づいて、所定の検出信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記上方基板内の所定位置に原点Qを定義し、この原点Qを含み、前記上方基板の基板面に平行な平面上に、前記原点Qを通り互いに直交するα軸およびβ軸を定義し、前記原点Qを通りαβ平面に対して直交するγ軸を定義することにより、αβγ三次元直交座標系を定義したときに、
前記第1の上方電極および前記第1の下方電極のαβ平面上への正射影像に関して、前記上方基板が前記下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極となる一方の電極の正射影像の領域が包含電極となる他方の電極の正射影像の領域内に包含され、かつ、前記上方基板が前記下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、および、前記上方基板が前記下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたとき、前記包含関係が依然として維持されるように、前記第1の上方電極および前記第1の下方電極の配置および形状が設定されており、
前記第2の上方電極および前記第2の下方電極のαβ平面上への正射影像に関して、両正射影像の重複領域の図形形状が、前記上方基板が前記下方基板に対してα軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに変化し、かつ、前記上方基板が前記下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに不変であるように、前記第2の上方電極および前記第2の下方電極の配置および形状が設定されており、
前記検出回路が、前記静電容量値C1の変動量ΔC1を前記原点Qのγ軸方向の変位Dγを示す検出信号として出力し、前記静電容量値C2の変動量ΔC2から前記変位Dγに起因する変動量を除去した値を前記原点Qのα軸方向の変位Dαを示す検出信号として出力することを特徴とする変位センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の変位センサにおいて、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極のαβ平面上への正射影像が、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、前記被包含電極の配置および形状が設定されていることを特徴とする変位センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の変位センサにおいて、
第1の上方電極と第1の下方電極とからなる電極対が複数組設けられており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、被包含電極群のαβ平面上への正射影像からなる平面パターンが、α軸に関して線対称かつβ軸に関して線対称となるように、前記被包含電極群の配置および形状が設定されていることを特徴とする変位センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の変位センサにおいて、
第2の上方電極が内部に開口部を有する形状をなし、第1の上方電極がこの第2の上方電極の開口部内に配置され、第2の下方電極が内部に開口部を有する形状をなし、第1の下方電極がこの第2の下方電極の開口部内に配置されていることを特徴とする変位センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の変位センサにおいて、
第1の上方電極の外形、第2の上方電極の開口部の形状、第1の下方電極の外形、第2の下方電極の開口部の形状がいずれも円であり、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら各円の中心点がγ軸上に位置することを特徴とする変位センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の変位センサにおいて、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、第2の上方電極の外形図形と第2の下方電極の外形図形とについて、
一方の図形を図形F1、他方の図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の図形を図形F3、他方の図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、
前記図形F3および前記図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、前記図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに前記図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなすことを特徴とする変位センサ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の変位センサにおいて、
第2の上方電極の外形図形および第2の下方電極の外形図形が、α軸に平行な2辺とβ軸に平行な2辺とをもった矩形をなし、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、これら2つの矩形について、
一方の矩形を矩形F1、他方の矩形を矩形F2としたときに、矩形F1のα軸正方向側の辺が、矩形F2のα軸正方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、矩形F1のα軸負方向側の辺が、矩形F2のα軸負方向側の辺よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の矩形を矩形F3、他方の矩形を矩形F4としたときに、矩形F4のβ軸正方向側の辺が、矩形F3のβ軸正方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、矩形F4のβ軸負方向側の辺が、矩形F3のβ軸負方向側の辺よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置することを特徴とする変位センサ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の変位センサにおいて、
第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状が、それぞれ複数の部分図形の集合体によって構成されており、上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、前記第2の上方電極を構成する部分図形と前記第2の下方電極を構成する部分図形とについて、
一方の部分図形を図形F1、他方の部分図形を図形F2としたときに、図形F1のα軸正方向側の端部が、図形F2のα軸正方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、図形F1のα軸負方向側の端部が、図形F2のα軸負方向側の端部よりも所定寸法だけα軸正方向側にずれて位置し、
一方の部分図形を図形F3、他方の部分図形を図形F4としたときに、図形F4のβ軸正方向側の端部が、図形F3のβ軸正方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸正方向側にずれて位置し、図形F4のβ軸負方向側の端部が、図形F3のβ軸負方向側の端部よりも所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、
前記図形F3および前記図形F4のαβ平面上への正射影像に関して、前記図形F4の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに前記図形F3の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなすことを特徴とする変位センサ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の変位センサにおいて、
第2の上方電極および第2の下方電極の平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、前記根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなし、
上方基板が下方基板に対して変位を生じていない状態では、前記第2の上方電極を構成する櫛状図形と前記第2の下方電極を構成する櫛状図形とについて、
一方の櫛状図形を図形F1、他方の櫛状図形を図形F2としたときに、図形F1の根幹部は図形F2の根幹部に比べて、所定寸法だけβ軸負方向側にずれて位置し、図形F1の各歯状部は根幹部からβ軸正方向側に伸び、図形F2の各歯状部は根幹部からβ軸負方向側に伸び、前記図形F1の各歯状部のα軸方向に関する配列周期と前記図形F2の各歯状部のα軸方向に関する配列周期とは位相がずれており、
一方の櫛状図形を図形F3、他方の櫛状図形を図形F4として、αβ平面上へ図形F3および図形F4の正射影像を形成した場合に、図形F3の各歯状部の正射影像は、図形F4の対応する各歯状部の正射影像に部分的に重なり合い、図形F3の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F4の根幹部の正射影像までは届かず、図形F4の各歯状部の正射影像の先端部は、図形F3の根幹部の正射影像を突き抜け、
前記図形F4の各歯状部の正射影像の輪郭線のうち、上方基板が下方基板に対してβ軸の正または負方向に所定の許容範囲内の変位を生じたときに前記図形F3の対応する歯状部および根幹部の正射影像が重なりを生じる可能性のある部分がβ軸に平行な直線をなすことを特徴とする変位センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の変位センサにおいて、
平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、この根幹部の中央からβ軸方向に伸びる板状部と、を有する櫛状図形をなす第1の櫛状電極を上方基板の下面もしくは下方基板の上面に形成し、前記板状部および必要に応じてその付け根に位置する根幹部の一部分を第1の上方電極もしくは第1の下方電極とし、前記第1の櫛状電極の前記各歯状部および前記根幹部を第2の上方電極もしくは第2の下方電極とし、
平面形状が、α軸方向に伸びた根幹部と、この根幹部からβ軸方向に伸び、α軸方向に所定ピッチで配列された複数の歯状部と、を有する櫛状図形をなす第2の櫛状電極と、前記板状部に対向する位置に配置された島状電極と、を下方基板の上面もしくは上方基板の下面に形成し、前記島状電極を第1の下方電極もしくは第1の上方基板とし、前記第2の櫛状電極を第2の下方電極もしくは第2の上方電極とすることを特徴とする変位センサ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の変位センサを複数N組含む力検出装置であって、
互いに平行になるように対向して配置された上方基板および下方基板と、
前記上方基板と前記下方基板とを接続する部材であって、前記下方基板を固定した状態において、前記上方基板に外力を作用させた場合に、前記上方基板が前記下方基板に対して変位を生じるように、少なくとも一部分が可撓性を有している接続部材と、
前記複数N組の変位センサと、
前記複数N組の変位センサを利用して、前記上方基板に作用した外力を検出する検出ユニットと、
を備え、
前記複数N組の変位センサは、それぞれ、前記上方基板の下面に形成された第1の上方電極および第2の上方電極と、前記下方基板の上面に形成された第1の下方電極および第2の下方電極と、検出回路と、を有し、
前記上方基板内の所定のN箇所に、それぞれローカルなαβγ三次元直交座標系の原点Qが定義され、前記複数N組の変位センサは、前記上方基板の各ローカル原点Qの位置についてのγ軸方向の変位Dγおよびα軸方向の変位Dαを検出できるように配置され、
前記上方基板内の所定位置にグローバル原点Oを定義し、このグローバル原点Oを含み、前記上方基板の基板面に平行な平面上に、前記グローバル原点Oを通り互いに直交するX軸およびY軸を定義し、前記グローバル原点Oを通りXY平面に対して直交するZ軸を定義することにより、グローバルなXYZ三次元直交座標系を定義したときに、前記検出ユニットが、前記複数N組の変位センサの各検出回路から出力される変位についての検出信号に基づいて、前記上方基板の前記原点Oの位置に作用した力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fz、および前記上方基板の原点Oの位置に作用したモーメントのX軸まわり成分Mx、Y軸まわり成分My、Z軸まわり成分Mzの6成分のうちの少なくとも1つを検出することを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の力検出装置において、
4組の変位センサを有し、
第1のセンサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2のセンサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3のセンサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4のセンサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向き、前記第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、前記第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、前記第4のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向くように、前記4組のセンサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
請求項11に記載の力検出装置において、
ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から前記第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された4組の外側センサと、を有し、
第1の内側センサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2の内側センサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3の内側センサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4の内側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の内側センサのα軸正方向がY軸正方向を向き、前記第2の内側センサのα軸正方向がY軸負方向を向き、前記第3の内側センサのα軸正方向がX軸負方向を向き、前記第4の内側センサのα軸正方向がX軸正方向を向くように、前記4組の内側センサが配置されており、
第1の外側センサのローカル原点QがX軸の正領域上に位置し、第2の外側センサのローカル原点QがX軸の負領域上に位置し、第3の外側センサのローカル原点QがY軸の正領域上に位置し、第4の外側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の外側センサのα軸正方向が前記第1の内側センサのα軸負方向を向き、前記第2の外側センサのα軸正方向が前記第2の内側センサのα軸負方向を向き、前記第3の外側センサのα軸正方向が前記第3の内側センサのα軸負方向を向き、前記第4の外側センサのα軸正方向が前記第4の内側センサのα軸負方向を向くように、前記4組の外側センサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
請求項11に記載の力検出装置において、
4組の変位センサを有し、
第1のセンサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサのローカル原点QがXY座標系の第3象限に位置し、第4のセンサのローカル原点QがXY座標系の第4象限に位置し、
前記第1のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向き、前記第2のセンサのα軸正方向がY軸負方向を向き、前記第3のセンサのα軸正方向がX軸正方向を向き、前記第4のセンサのα軸正方向がY軸正方向を向くように、前記4組のセンサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項11に記載の力検出装置において、
3組の変位センサを有し、
第1のセンサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2のセンサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3のセンサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第2のセンサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第3のセンサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、前記3組のセンサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項11に記載の力検出装置において、
ローカル原点QがZ軸から第1の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の内側センサと、ローカル原点QがZ軸から前記第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離れた位置にくるように配置された3組の外側センサと、を有し、
第1の外側センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の外側センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の外側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の外側センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第2の外側センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第3の外側センサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、前記3組の外側センサが配置されており、
第1の内側センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の内側センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の内側センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の内側センサのα軸正方向が前記第1の外側センサのα軸負方向を向き、前記第2の内側センサのα軸正方向が前記第2の外側センサのα軸負方向を向き、前記第3の内側センサのα軸正方向が前記第3の外側センサのα軸負方向を向くように、前記3組の内側センサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項11に記載の力検出装置において、
3組の主センサと、3組の副センサと、を有し、
第1の主センサのローカル原点QがXY座標系の第1象限に位置し、第2の主センサのローカル原点QがXY座標系の第2象限に位置し、第3の主センサのローカル原点QがY軸の負領域上に位置し、
前記第1の主センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸負方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第2の主センサのα軸正方向がX軸正方向ベクトルとY軸正方向ベクトルとの合成ベクトル方向を向き、前記第3の主センサのα軸正方向がX軸負方向を向くように、前記3組の主センサが配置されており、
第1の副センサのローカル原点Qが前記第1の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第2の副センサのローカル原点Qが前記第2の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、第3の副センサのローカル原点Qが前記第3の主センサのローカル原点Qに対して原点Oに関して点対称となるように位置し、
前記第1の副センサのα軸正方向が前記第1の主センサのα軸負方向を向き、前記第2の副センサのα軸正方向が前記第2の主センサのα軸負方向を向き、前記第3の副センサのα軸正方向が前記第3の主センサのα軸負方向を向くように、前記3組の副センサが配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材が、複数のばね、もしくは弾性変形を生じる複数の柱状部材によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材が、上方基板の周囲に設けられた上方接続用縁部と、下方基板の周囲に設けられた下方接続用縁部と、前記上方接続用縁部と前記下方接続用縁部とを接続する複数の柱状部材と、によって構成され、
前記上方接続用縁部のうち前記柱状部材の上端が接続された接続部分の近傍と、前記下方接続用縁部のうち前記柱状部材の下端が接続された接続部分の近傍とが、ダイアフラムもしくはビーム構造体によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載の変位センサもしくは力検出装置において、
接続部材が、上方電極と下方電極との間に配置されたゴム層によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【公開番号】特開2011−128096(P2011−128096A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288872(P2009−288872)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
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