説明

変位センサ及び回転センサ

【課題】温度による影響を受けることなくその他の誤差要因に基づく影響を精度よく監視し、信頼性に優れた回転センサを提供する。
【解決手段】回転するシャフトSに取り付けられ周方向に沿って幅が変化する導電性のセンシング部20を有するロータ10と、交流励磁電流によりセンシング部との間に磁気回路をなす励磁コイルと、励磁コイルを保持するコア本体とを有し、ロータのセンシング部に対してシャフトの軸線方向に対向配置される固定コアとを備え、センシング部の周方向360度あたりの幅の変化する周期を複数周期とし、固定コアが主信号用コイルコア組の固定コアと、これと独立してロータの回転角度を検出可能な参照信号用コイルコア組の固定コアからなり、主信号コイルコア組の固定コアと参照信号用コイルコア組の固定コアのセンシング部の周方向に設置される互いの相対角度差をセンシング部周期の整数倍となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体又は回転体に取り付けて当該移動体又は回転体の変位又は回転角度を検出するのに使用する変位センサ又は回転センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のステアリングシャフトなどの回転シャフトに取り付けてこのシャフトと一体になったハンドルの回転角度を検出するのにいわゆる回転センサが使用される。
【0003】
かかる回転センサの一例として、ロータに対して固定コアを所定間隔隔てて対向配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この回転センサは、特許文献1に示すように、回転するシャフトの軸線方向所定位置に取り付けられ、周方向に沿って幅が変化するセンシング部を有するロータと、励磁コイルと、絶縁磁性材から形成され、励磁コイルを保持するコアとを有し、固定部材に取り付けて、ロータに対してシャフトの軸線方向に間隔を置いて対向配置される固定コア及び励磁コイルと接続され、特定周波数の発振信号を発信する発振手段を有している。
【0005】
そして、ロータは、絶縁磁性材又は絶縁性の樹脂材等からなるロータ取り付け部及びこれとステーを介して連結され周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部とからなる。なお、センシング部は導電性を有する金属からなり、周方向360度において幅が最小の幅狭部と、この幅狭部と半径方向反対側に幅が最大の幅広部とをそれぞれ一箇所ずつ有して周方向360度あたり1周期でセンシング幅が変化し、交流磁界によって回転に伴う幅に対応した大きさの渦電流がセンシング部表面に誘起され、この渦電流量の変動に伴い各励磁コイルのインピーダンスも変動するようになっている。
【0006】
そして、このような構成の回転センサを用いて、この渦電流の発生に伴う励磁コイルのインピーダンス変動を利用してロータの回転角度を検出するようになっている。
【特許文献1】特開2003−202240号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような特許文献1に記載の回転センサの検出精度を更に高めた例として、図15に示すような回転センサ5が提案されている。この従来技術に関連する回転センサは、回転するシャフトSに取り付けられるロータ510と、絶縁磁性材からなるコア本体及びコア本体内に収容される励磁コイルを有する1組の主固定コア560,570及び1組の副固定コア660,670と、後述する信号発生部600,700及び信号処理部800を有する基板530を備えている。
【0008】
そして、ロータ510は、絶縁磁性材或いは絶縁性の樹脂材等からなるロータ取り付け部511及びこれとステー520aを介して連結され周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部520とからなる。なお、この回転センサにおいては、センシング部520は、周方向360度において幅が最小の幅狭部521と、この幅狭部521と半径方向反対側に幅が最大の幅広部522とをそれぞれ3箇所ずつ有して周方向120度あたり1周期、即ち周方向360度あたり3周期でセンシング幅が変化するようになっている。また、センシング部520は導電性を有する金属(例えば銅、アルミニウム、銀等)からなり、各固定コア560,570,660,670のそれぞれの励磁コイルに交流励磁電流が流されると、それぞれの固定コア560,570,660,670からセンシング部520を横切って磁気回路が形成され、交流磁界によって回転に伴う幅に対応した大きさの渦電流がセンシング部表面に誘起され、この渦電流量の変動に伴い各励磁コイルのインピーダンスも変動するようになっている。
【0009】
また、センシング部の周方向には、一組の主固定コアと一組の副固定コアが配置されている。
【0010】
なお、一方の主固定コア560と他方の主固定コア570は、ロータ510のセンシング部周方向に150度の回転角度をなす位置に配置されている。また、一方の副固定コア660と他方の副固定コア670も、ロータ510のセンシング部周方向に150度の回転角度をなす位置に配置されている。
【0011】
また、主固定コア560,570及び副固定コア660,670は、シャフトSの近傍に位置する固定部材(図示せず)にそれぞれ取り付けられ、ここではそれぞれ交流磁界の遮蔽性を有する金属又は絶縁磁性材、あるいは絶縁性の樹脂材等からなるケース540にロータ510とともに収納されている。
【0012】
そして、一方の主固定コア560と一方の副固定コア660とがロータ510のセンシング部周方向において直径方向に実質的に180度の回転角度をなす対向位置に配置され、かつ他方の主固定コア570と他方の副固定コア670ともロータ510のセンシング部周方向において直径方向に実質的に180度の回転角度をなす対向位置に配置されている。そして、主固定コア560,570と副固定コア660,670から得られた検出出力の和を図16に示す信号処理部800で算出しているようにしている。信号処理部800には、図17に示すように、回転角度検出部801の他にセンシング部ずれ検出部802が設けられていて、入力された信号をCPUで処理してECU900にそのデータを出力する役目を果たしている。また、ECU900は、入力されたデータより、シャフトSの回転角度を車両の様々な制御に利用する役目を果たしている。
【0013】
この回転センサのような主固定コアと副固定コアの配置構造にすると、センシング部520は、そのセンシング幅の変化が周方向に3周期で繰り返され、かつ一方の主固定コア560と一方の副固定コア660とは、センシング部520の直径方向に対向するように配置されることになるので、ロータ510の回転角度のいかんにかかわらず、励磁コイルA1のインピーダンスと励磁コイルA2のインピーダンスの和信号が常に一定となる。従って、この出力信号の和が許容範囲上限値と許容範囲下限値との間にある場合は、センシング部520と主固定コア560及び副固定コア660との配置関係は許容される正常範囲にあるとセンシング部ずれ検出部802で判断する。
【0014】
そして、主固定コア560の励磁コイルA1のインピーダンスと副固定コア660の励磁コイルA2のインピーダンスの和が予め決められた許容範囲からはみ出した場合に、図17に示す信号処理部800のセンシング部ずれ検出部802においてセンサ異常信号を発生させる。即ち、この出力信号の和を求めて比較する信号処理方法によって、出力値が正常範囲内でずれるような回転センサの不具合を検知することができるようになっている。
【0015】
以上のように、この関連技術に関する回転センサは、センサの正常動作を判断するために、主信号と参照信号の和を監視して、あらかじめ決められた判定値を超えた場合にセンサ異常と判断するが、この和が変動する原因としては、部品の特性変化、部品の形状変化、部品の位置関係の変化等が考えられている。
【0016】
しかしながら、この中で、回転センサ自体の温度変化による影響が、他の部品公差などによる影響とは異なって大きな影響を与えている。具体的には温度変化によりコイルコアの特性が変化することと、この温度変化による部品の特性変化することで大きな影響を与える。まず、コイルコアに関しては、コアの透磁率が温度により変化することがあり、これによりコイルコアのインダクタンスや交流抵抗値が変動して、結果として信号が変化する。また、電子回路部品に関しては、抵抗やコンデンサ等の値が温度により変化することにより、増幅部のゲインや共振回路の特性が変化して、結果として信号が変化する。
【0017】
特に、センシング部として周期Tのローターシールドを使用した時、主信号用検出部(コイル、コイルコア)と参照信号用検出部(コイル、コイルコア)の相対角度差がセンシング部(ロータシールド)周期Tの1/2の場合、即ちこの関連出願にかかる回転センサのように、信号が逆位相の場合、環境変化等による主信号と参照信号の出力誤差が大きくなってしまう。
【0018】
具体的には、例えば図18に示すように、主信号の出力信号について一方向(図中のCCW方向)に位相ずれを生じ、参照信号の出力信号については他方向(図中のCW方向)に位相ずれが生じる為、この影響が大きくなり、他の変動の影響を検出するのに支障を生じることが考えられる。そのため、回転センサの検出出力が変化してしまい、温度変化による影響を除いたその他の原因による影響を精度よく監視することができなくなる。
【0019】
本発明の目的は、温度による影響を受けることなく、かつその他の原因による影響を精度良く監視し、信頼性に優れた回転センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の課題を解決するために、本発明にかかる回転センサは、
変位を測定すべき対象物と一体に移動する移動体に取り付けられ、当該移動体の移動方向に幅が変化する導電性のセンシング部を有する変位検出体と、
交流励磁電流が流されることで前記変位検出体のセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ前記励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて前記変位検出体のセンシング部に対して垂直方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた変位センサにおいて、
前記センシング部の全長のうちのセンシング幅の変化する周期を複数周期とすると共に、前記固定コアが、前記移動体の移動量を検出する励磁コイルの主信号用コイルコア組の固定コアと、当該主信号用コイルコアと独立して前記移動体の移動量を検出可能な励磁コイルの参照信号用コイルコア組の固定コアからなり、前記主信号コイルコア組の固定コアと参照信号用コイルコア組の固定コアの前記センシング部のセンシング部延在方向に設置される互いのセンシング部周期に関する相対角度差を前記センシング部周期の整数倍としたことを特徴としている。
【0021】
変位センサがこのような構成を取ることで、主信号と参照信号の位相が同位相になり、変位センサに温度変化が生じても、主信号コイルコア組と参照信号用コイルコア組の出力信号は同じ位相の方向にほぼ同じ値だけずれるようになるので、温度変化等の影響を受けることなく、かつ他の誤差要因に基づく主信号と参照信号の比較精度が高くなり、回転センサに冗長性を持たせることが可能となり、変位センサの信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の請求項2に記載の回転センサは、
回転するシャフトに取り付けられ、周方向に沿って幅が変化する導電性のセンシング部を有するロータと、
交流励磁電流が流されることで前記ロータのセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ前記励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて前記ロータのセンシング部に対して前記シャフトの軸線方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた回転センサにおいて、
前記センシング部の周方向360度あたりのセンシング幅の変化する周期を複数周期とすると共に、前記固定コアが、ロータ回転角度を検出する励磁コイルの主信号用コイルコア組の固定コアと、当該主信号用コイルコアと独立してロータの回転角度を検出可能な励磁コイルの参照信号用コイルコア組の固定コアからなり、前記主信号コイルコア組の固定コアと参照信号用コイルコア組の固定コアの前記センシング部の周方向に設置される互いの相対角度差を前記センシング部周期の整数倍としたことを特徴としている。
【0023】
回転センサがこのような構成を取ることで、主信号と参照信号の位相が同位相になり、回転センサに温度変化が生じても、主信号コイルコア組と参照信号用コイルコア組の出力信号は同じ位相の方向にほぼ同じ値だけずれるようになるので、温度変化等の影響を受けることなく、かつ他の誤差要因に基づく主信号と参照信号の比較精度が高くなり、回転センサに冗長性を持たせることが可能となり、回転センサの信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、温度による影響を受けることなく、かつその他の誤差要因に基づく影響を精度よく監視し、冗長性を有し信頼性に優れた変位センサ及び回転センサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態にかかる回転センサを図面に基いて説明する。なお、本実施形態では、自動車のステアリング装置に関してこの回転センサをステアリングシャフトに取り付け、ハンドルの回転角度を検出するために回転センサを用いた場合について説明する。
【0026】
この回転センサ1は、図1に示すように、回転するシャフトSに取り付けられるロータ10と、絶縁磁性材からなるコア本体及びコア本体内に収容される励磁コイルを有する1組の主固定コア60,70及び1組の副固定コア160,170と、図2に示す信号発生部100,200及び信号処理部300を有する基板30を備えている。
【0027】
ロータ10は、絶縁磁性材或いは絶縁性の樹脂材等からなるロータ取り付け部11及びこれとステー20aを介して連結され周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部20とからなる。なお、本実施の形態においては、センシング部20は、図1において周方向に均一の幅として示しているが、実際には周方向360度において幅が最小の幅狭部と、この幅狭部と半径方向反対側に幅が最大の幅広部とをそれぞれ3箇所ずつ有して周方向120度あたり1周期、即ち周方向360度あたり3周期でセンシング幅が変化するようになっている。また、センシング部20は導電性を有する金属(例えば銅、アルミニウム、銀等)からなり、各固定コア60,70,160,170のそれぞれの励磁コイルに交流励磁電流が流されると、それぞれの固定コア60,70,160,170からセンシング部20を横切って磁気回路が形成され、交流磁界によって回転に伴う幅に対応した大きさの渦電流がセンシング部表面に誘起されるようになっており、この渦電流量の変動に伴い各励磁コイルのインピーダンスも変動するようになっている。
【0028】
そして、一方の主固定コア60と他方の主固定コア70は、ロータ10のセンシング部周方向に30度の回転角度をなす位置に配置されている。また、一方の副固定コア160と他方の副固定コア170も、ロータ10のセンシング部周方向において30度の回転角度をなす位置に配置されている。そして、一方の主固定コア60から見て一方の副固定コア160がロータ10のセンシング部周方向に沿って図中反時計回りに実質的にセンシング部20の周期の整数倍である120度(本実施形態にかかるセンシング部周期の1倍)の回転角度をなす位置に配置され、かつ他方の主固定コア70から見て他方の副固定コア170ともロータ10のセンシング部周方向に沿って図中反時計回りに実質的にセンシング部20の周期の整数倍である120度(本実施形態にかかるセンシング部周期の1倍)の回転角度をなす位置に配置されている。
【0029】
また、主固定コア60,70及び副固定コア160,170は、シャフトSの近傍に位置する固定部材(図示せず)にそれぞれ取り付けられ、ここではそれぞれ交流磁界の遮蔽性を有する金属又は絶縁磁性材、あるいは絶縁性の樹脂材等からなるケース40にロータ10とともに収納されている。
【0030】
なお、副固定コア160,170は主固定コア60,70の冗長性を確保するとともに後述する回転センサのセンサ異常を検知する役目を果たすために回転センサ1に取り付けられている。
【0031】
図2は本実施形態の全体的な信号処理回路を示しており、信号発生部100は励磁コイルA1及び励磁コイルB1をそれぞれ有する主固定コア60,70で検出された信号を増幅するとともに、信号発生部200は励磁コイルA2及び励磁コイルB2をそれぞれ有する副固定コア160,170で検出された信号を増幅し、それぞれ信号処理部300に出力する役目を果たしている。また、信号処理部300は、入力された信号をCPUで処理してECU400にそのデータを出力する役目を果たしている。また、ECU400は、入力されたデータより、シャフトSの回転角度を車両の様々な制御に利用する役目を果たしている。
【0032】
回転センサ1の信号発生部100の詳細な回路ブロック構成は図3に示すようになっている。この回路ブロック図は、主固定コア60,70における信号発生部100を主に示しており、副固定コア160,170における信号発生部200の内部構成もこれに対応するようになっているので、ここでは信号発生部200の詳細な説明を省略する。この回路ブロック部は、発振部としての役目を果たし特定周波数の発振信号を出力する発振回路101と、センシング部20に発生する渦電流の大きさに応じて発振回路101から入力された発振信号の位相をシフトする位相シフト部110(111,112)と、位相シフト量を検出する位相シフト量検出部120(121,122)と、検出された位相シフト量を対応するパラメータに変換する位相シフト量コンバート部130(131,132)と、位相シフト量コンバート部130から出力される位相シフト量を増幅する増幅部140(141,142)と、増幅部140からの出力に基づいて回転角度を算出する回転角度検出部301及びセンシング部20のシフト(ずれ)等の異常を検知する回転センサ異常検出部302を備えた信号処理部300を有し、位相シフト部110に入力される回転角度を検出するようになっている。
【0033】
また、位相シフト部110は、電子回路の抵抗とコンデンサ及びコイルからからなる。ロータ10のセンシング部20は上述したように周方向に幅が連続的に変化する形状を有しているので、シャフトSの回転と連動するロータ10のセンシング部20が回転することにより、励磁コイルのインピーダンスが変化する。
【0034】
シャフトSが回転したとき、入力角度に対して位相シフト量検出部120の出力はセンシング部20の形状によって決まり、図4に示すような頂部と底部の出力を飽和させてそれぞれ平坦部を形成したSin波形の如く変化させることができる。例えば、図1に示すように、2つの固定コア60,70をロータ10の中心に対して30度の角度で配置した場合、図4に示すように入力角度に対して、一方の主固定コア60の励磁コイルのインピーダンス変化に基づいて信号処理した位相シフト量と、他方の主固定コア70の励磁コイルのインピーダンス変化に基づいて信号処理した位相シフト量は30度の位相差をもって変化するようになる。
【0035】
そして、このような構成の回転センサ1を用いて、この渦電流の発生に伴う励磁コイルのインピーダンス変動を利用してロータ10の回転角度、即ちシャフトの回転角度を検出するようになっている。
【0036】
この回転センサ1は、センシング部20のセンシング幅が上述したように周方向360度あたり3周期で変化するようになっている。この場合のロータ10の回転角度の検出方法について説明する。まず、図3に示す発振回路101が分周回路を介して特定周波数の発振信号を抵抗、励磁コイル及びコンデンサからなる位相シフト部110に出力する。このとき、磁束がセンシング部20を横切る際にセンシング部20の表面に発生する渦電流量の大きさに応じて各励磁コイルのインピーダンスが変化し、このインピーダンス変化によって各コンデンサ両端における電圧信号の位相も変化する。そして、コンデンサの両端の電圧信号は、位相シフト量検出部120へ出力され、この検出部で各コンデンサ両端の電圧信号の位相シフト量を検出する。そして、コンバータが、検出された位相シフト量を対応する電圧値に変換する。
【0037】
なお、本実施形態では、各固定コア60,70とセンシング部20とが協働することで得られる位相シフト量出力信号の位相が30度ずれるように主固定コア60,70をセンシング部20の周方向に30度隔ててケース40に配置しているので、上述のような信号処理によって、図4に示すように、一方の主固定コア60の位相シフト量出力値SAと他方の主固定コア70の位相シフト量出力値SBのごとく互いに30度位相のずれた120度周期の位相シフト量の出力値が得られる。
【0038】
このようにして得られた位相シフト量の出力値からロータ10の回転角度を120度周期で検出する方法は以下の通りである。
【0039】
図4に示すように、各固定コア60,70から得られるロータ10の回転角度の出力値(SA,SB)とこれらをそれぞれ反転させた出力値(RSA,RSB)とを重畳させる。そして、これら4つの位相シフト量検出値の検出特性に優れた直線部分を用いて各位相シフト量検出値の大小関係から、ロータの回転角度が0度〜30度(図中、区間(1))、30度〜60度(図中、区間(2))、60度〜90度(図中、区間(3))、90度〜120度(図中、区間(4))、のいずれの範囲にあるかを判断する。そして、この直線部分同士をジョイント(結合)処理する。次いで、上述した4つの角度範囲の何れの角度範囲にあるかの判断結果に基づき、図5に示す120度ごとの周期で変化する鋸歯状波形の出力信号から、ロータの回転角度を120度周期で求めるようになっている。
【0040】
続いて、このような構成を有する回転センサ1の作用、即ち検出出力の変化が回転センサの温度変化によって生じた場合にこの影響を受ける理由について説明する。
【0041】
回転センサ自体に温度変化が生じた場合、コイルコアに関しては、コアの透磁率が温度により変化することがあり、これによりコイルコアのインダクタンスや交流抵抗値が変動する。また、電子回路部品に関しては、抵抗やコンデンサ等の値が温度により変化することにより、増幅部のゲインや共振回路の特性が変化する。しかしながら、本実施形態のような配置構造にすると、センシング部20は、そのセンシング幅の変化が周方向に3周期で繰り返され、かつ一方の主固定コア60と一方の副固定コア160の設置角度がセンシング部20の周期Tの整数倍(1倍)に配置されている。その結果、温度変化に伴う検出出力の特性変化は例えば図6に示すように、主信号の出力信号について図6中定線から点線に向かって一方向(図6中のCCW方向)に位相ずれを生じるが、参照信号の出力信号についても図6中定線から点線に向かって一方向(図6中のCCW方向)に位相ずれが生じ、主信号の出力信号と参照信号の出力信号の位相が同位相となることから、温度による影響はほとんど生じない。その結果、他の変動の影響を検出するのに支障を生じさせることがない。
【0042】
なお、ここで言う他の変動の影響としては、センシング部20と固定コアとの相対的ずれがあげられる。センシング部20と固定コアとの相対的なずれには大きく分けて2つ考えられる。1つ目は長期間使用しているうちに、センシング部20が直線的に移動(シフト)する等して固定コアとの位置関係が正常範囲外にずれてしまう場合である。2つ目はがたつき等により正常範囲内でずれる場合である。ここではまず、位置関係が正常範囲外にずれてしまう場合について説明する。回転センサ1は、一方の副固定コア160(励磁コイルA2)を主固定コア60(励磁コイルA1)の120度対向した位置に配置している。
【0043】
この場合、ロータ10の回転角度のいかんにかかわらず、励磁コイルA1のインピーダンスと励磁コイルA2のインピーダンスの差信号が常に一定となる。従って、図7に示すように、この出力信号の差が許容範囲上限値と許容範囲下限値との間にある場合は、センシング部20と主固定コア60及び副固定コア160との配置関係は許容される正常範囲にあると判断する。なお、ここでの信号処理は上述のCPUによるデジタル回路の代わりにアナログ回路を使用して行っても良い。
【0044】
また、図8に示すように、主固定コア60の励磁コイルA1のインピーダンスと副固定コア160の励磁コイルA2のインピーダンスの差が予め決められた許容範囲からはみ出した場合に、信号処理部300の回転センサ異常検出部302においてセンサ異常信号を発生させる。即ち、この出力信号の差を求めて比較する信号処理方法によって、出力値が正常範囲内でずれるような回転センサの不具合を検知することができるようになっている。このような場合には、例えば警告を発生する等して、必要に応じて回転センサ1を交換する等してセンシング部と各固定コアとの位置関係を正常範囲内に配置する必要があることを知らせる。
【0045】
このように、本実施形態にかかる回転センサによると、センサの正常動作を判断するために、主信号と参照信号の差を監視して、あらかじめ決められた判定値を越えた場合にセンサ異常と判断しているが、この差が変動する原因としては、部品の特性変化、部品の形状変化、部品の位置関係の変化などが考えられ、この中で、従来の回転センサでの温度変化による部品の特性変化による影響が大きくて他の変動の影響を調べることができなかったのを、本発明による特別な構造を与えることで、温度変化等の影響を受けにくくなり、主信号と参照信号の比較精度が高くなり、回転センサの冗長性を高め、結果として回転センサの信頼性を向上させている。
【0046】
続いて、上述した実施形態にかかる第1の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
この第1の変形例にかかる回転センサ1Aは、図9に示すように、回転するシャフトSに取り付けられるロータ10と、絶縁磁性材からなるコア本体及びコア本体内に収容される励磁コイルを有する1組の主固定コア60,70及び1組の副固定コア160,170と、信号発生部100,200及び信号処理部300を有する基板30を備えている。
【0048】
ロータ10は、絶縁磁性材或いは絶縁性の樹脂材等からなるロータ取り付け部11及びこれとステー20bを介して連結され周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部20とからなる。なお、本変形例においても、センシング部20は、図9において周方向に均一の幅として示しているが、実際には周方向360度において幅が最小の幅狭部と、この幅狭部と半径方向反対側に幅が最大の幅広部とをそれぞれ3箇所ずつ有して周方向120度あたり1周期、即ち周方向360度あたり3周期でセンシング幅が変化するようになっている。また、センシング部20は導電性を有する金属(例えば銅、アルミニウム、銀等)からなり、前記各固定コア60,70,160,170のそれぞれの励磁コイルに交流励磁電流が流されると、それぞれの固定コア60,70,160,170からセンシング部20を横切って磁気回路が形成され、交流磁界によって回転に伴う幅に対応した大きさの渦電流がセンシング部表面に誘起されるようになっており、この渦電流量の変動に伴い各励磁コイルのインピーダンスも変動するようになっている。
【0049】
また、本変形例においては、一方の主固定コア60と他方の主固定コア70は、ロータ10のセンシング部周方向において30度の回転角度をなす位置に配置されている。また、一方の副固定コア160と他方の副固定コア170も、ロータ10のセンシング部周方向において30度の回転角度をなす位置に配置されている。そして、一方の主固定コア60から見て一方の副固定コア160がロータ10のセンシング部周方向に沿って図中反時計方向に実質的にセンシング部20の周期の整数倍である240度(本実施形態にかかるセンシング部周期の2倍)の回転角度をなす位置に配置され、かつ他方の主固定コア70から見て他方の副固定コア170もロータ10のセンシング部周方向に沿って図中反時計方向に実質的にセンシング部20の周期の整数倍である240度(本実施形態にかかるセンシング部周期の2倍)の回転角度をなす位置に配置されている。
【0050】
また、主固定コア60,70及び副固定コア160,170は、シャフトSの近傍に位置する固定部材(図示せず)にそれぞれ取り付けられ、ここではそれぞれ交流磁界の遮蔽性を有する金属又は絶縁磁性材、あるいは絶縁性の樹脂材等からなるケース40にロータ10とともに収納されている。
【0051】
本変形例のような配置構造にすると、センシング部20は、そのセンシング幅の変化が周方向に3周期で繰り返され、かつ一方の主固定コア60と一方の副固定コア160の設置角度がセンシング部20の周期Tの整数倍(2倍)に配置されることになるので、ロータ10の回転角度のいかんにかかわらず、励磁コイルA1のインピーダンスと励磁コイルA2のインピーダンスの差信号が常に一定となる。そのため、上述した実施形態において図6を示して説明したように、回転センサの温度変化による影響をキャンセルすることができる。その結果、温度変化等の影響を受けることなく、かつ他の誤差要因に基づく主信号と参照信号の比較精度が図7及び図8に示すように高くなり、回転センサに冗長性を持たせることが可能となって、回転センサの信頼性を向上させることができる。
【0052】
続いて、上述した実施形態にかかる第2の変形例について説明する。なお、上述した実施形態及びその変形例と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
この第2の変形例にかかる回転センサ1Bは、図10に示すように、回転するシャフトSに取り付けられるロータ10と、絶縁磁性材からなるコア本体及びコア本体内に収容される励磁コイルを有する1組の主固定コア60,70及び1組の副固定コア160,170と、信号発生部100,200及び信号処理部300を有する基板30を備えている。
【0054】
ロータ10は、絶縁磁性材或いは絶縁性の樹脂材等からなるロータ取り付け部11及びこれとステー21aを介して連結され周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部21とからなる。なお、本変形例においては、センシング部21は、図10において周方向に均一の幅として示しているが、実際には周方向360度において幅が最小の幅狭部と、この幅狭部と半径方向反対側に幅が最大の幅広部とをそれぞれ2箇所ずつ有して周方向180度あたり1周期、即ち周方向360度あたり2周期でセンシング幅が変化するようになっている。また、センシング部21は導電性を有する金属(例えば銅、アルミニウム、銀等)からなり、前記各固定コア60,70,160,170のそれぞれの励磁コイルに交流励磁電流が流されると、それぞれの固定コア60,70,160,170からセンシング部21を横切って磁気回路が形成され、交流磁界によって回転に伴う幅に対応した大きさの渦電流がセンシング部表面に誘起されるようになっており、この渦電流量の変動に伴い各励磁コイルのインピーダンスも変動するようになっている。
【0055】
また、本変形例においては、一方の主固定コア60と他方の主固定コア70は、ロータ10のセンシング部周方向に45度の回転角度をなす位置に配置されている。また、一方の副固定コア160と他方の副固定コア170も、ロータ10のセンシング部周方向において45度の回転角度をなす位置に配置されている。そして、一方の主固定コア60から見て一方の副固定コア160がロータ10のセンシング部周方向に沿って図中反時計方向に実質的にセンシング部21の周期の整数倍である180度(本実施形態にかかるセンシング部周期の1倍)の回転角度をなす対向位置に配置され、かつ他方の主固定コア70が他方の副固定コア170に対してロータ10のセンシング部周方向に沿って反時計方向に実質的にセンシング部21の周期の整数倍である180度(本実施形態にかかるセンシング部周期の1倍)の回転角度をなす対向位置に配置されている。
【0056】
また、主固定コア60,70及び副固定コア160,170は、シャフトSの近傍に位置する固定部材(図示せず)にそれぞれ取り付けられ、ここではそれぞれ交流磁界の遮蔽性を有する金属又は絶縁磁性材、あるいは絶縁性の樹脂材等からなるケース40にロータ10とともに収納されている。
【0057】
本変形例のような配置構造にすると、センシング部21は、そのセンシング幅の変化が周方向に2周期で繰り返され、かつ一方の主固定コア60と一方の副固定コア160の設置角度がセンシング部21の周期Tの整数倍(1倍)に配置されることになるので、ロータ10の回転角度のいかんにかかわらず、励磁コイルA1のインピーダンスと励磁コイルA2のインピーダンスの差信号が常に一定となる。そのため、上述した実施形態及び第1の変形例において図6を示して説明したように、回転センサの温度変化による影響をキャンセルすることができる。その結果、温度変化等の影響を受けることなく、かつ他の誤差要因に基づく主信号と参照信号の比較精度が図7及び図8に示すように高くなり、回転センサに冗長性を持たせることが可能となって、回転センサの信頼性を向上させることができる。
【0058】
続いて、上述した実施形態にかかる第3の変形例について説明する。なお、上述した実施形態及びその変形例と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
この第3の変形例にかかる回転センサ1Cは、図11に示すように、回転するシャフトSに取り付けられるロータ10と、絶縁磁性材からなるコア本体及びコア本体内に収容される励磁コイルを有する1組の主固定コア60,70及び1組の副固定コア160,170と、信号発生部100,200及び信号処理部300を有する基板30を備えている。
【0060】
ロータ10は、絶縁磁性材或いは絶縁性の樹脂材等からなるロータ取り付け部11及びこれとステー22aを介して連結され周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部22とからなる。なお、本変形例においては、センシング部22は、図11において周方向に均一の幅として示しているが、実際には周方向360度において幅が最小の幅狭部と、この幅狭部と半径方向反対側に幅が最大の幅広部とをそれぞれ4箇所ずつ有して周方向90度あたり1周期、即ち周方向360度あたり4周期でセンシング幅が変化するようになっている。また、センシング部22は導電性を有する金属(例えば銅、アルミニウム、銀等)からなり、前記各固定コア60,70,160,170のそれぞれの励磁コイルに交流励磁電流が流されると、それぞれの固定コア60,70,160,170からセンシング部22を横切って磁気回路が形成され、交流磁界によって回転に伴う幅に対応した大きさの渦電流がセンシング部表面に誘起されるようになっており、この渦電流量の変動に伴い各励磁コイルのインピーダンスも変動するようになっている。
【0061】
また、本変形例においては、一方の主固定コア60と他方の主固定コア70は、ロータ10のセンシング部周方向に22.5度の回転角度をなす位置に配置されている。また、一方の副固定コア160と他方の副固定コア170も、ロータ10のセンシング部周方向において22.5度の回転角度をなす位置に配置されている。そして、一方の主固定コア60から見て一方の副固定コア160がロータ10のセンシング部周方向に沿って図中反時計回りに実質的にセンシング部22の周期の整数倍である90度(本実施形態にかかるセンシング部周期の1倍)の回転角度をなす位置に配置され、かつ他方の主固定コア70から見て他方の副固定コア170もロータ10のセンシング部周方向に沿って図中反時計回りに実質的にセンシング部22の周期の整数倍である90度(本実施形態にかかるセンシング部周期の1倍)の回転角度をなす位置に配置されている。
【0062】
また、主固定コア60,70及び副固定コア160,170は、シャフトSの近傍に位置する固定部材(図示せず)にそれぞれ取り付けられ、ここではそれぞれ交流磁界の遮蔽性を有する金属又は絶縁磁性材、あるいは絶縁性の樹脂材等からなるケース40にロータ10とともに収納されている。
【0063】
本変形例のような配置構造にすると、センシング部22は、そのセンシング幅の変化が周方向に4周期で繰り返され、かつ一方の主固定コア60と一方の副固定コア160の設置角度がセンシング部22の周期Tの整数倍(1倍)に配置されることになるので、ロータ10の回転角度のいかんにかかわらず、励磁コイルA1のインピーダンスと励磁コイルA2のインピーダンスの差信号が常に一定となる。そのため、上述した実施形態及び第1、第2の変形例において図6を示して説明したように、回転センサの温度変化による影響をキャンセルすることができる。その結果、温度変化等の影響を受けることなく、かつ他の誤差要因に基づく主信号と参照信号の比較精度が図7及び図8に示すように高くなり、回転センサに冗長性を持たせることが可能となって、回転センサの信頼性を向上させることができる。
【0064】
続いて、上述した実施形態にかかる第4の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
この第4の変形例にかかる回転センサ1Dは、図12に示すように、回転するシャフトSに取り付けられるロータ10と、絶縁磁性材からなるコア本体及びコア本体内に収容される励磁コイルを有する1組の主固定コア60,70及び1組の副固定コア160,170と、後述する信号発生部100,200及び信号処理部300を有する基板30を備えている。
【0066】
ロータ10は、絶縁磁性材或いは絶縁性の樹脂材等からなるロータ取り付け部11及びこれとステー20cを介して連結され周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部20とからなる。なお、本実施の形態においては、センシング部20は、図12において周方向に均一の幅として示しているが、実際には周方向360度において幅が最小の幅狭部と、この幅狭部と半径方向反対側に幅が最大の幅広部とをそれぞれ3箇所ずつ有して周方向120度あたり1周期、即ち周方向360度あたり3周期でセンシング幅が変化するようになっている。また、センシング部20は導電性を有する金属(例えば銅、アルミニウム、銀等)からなり、各固定コア60,70,160,170のそれぞれの励磁コイルに交流励磁電流が流されると、それぞれの固定コア60,70,160,170からセンシング部20を横切って磁気回路が形成され、交流磁界によって回転に伴う幅に対応した大きさの渦電流がセンシング部表面に誘起されるようになっており、この渦電流量の変動に伴い各励磁コイルのインピーダンスも変動するようになっている。
【0067】
また、本変形例においては、一方の主固定コア60と他方の主固定コア70は、ロータ10のセンシング部周方向に30度の回転角度をなす位置に配置されている。また、一方の副固定コア160と他方の副固定コア170も、センシング部20に関してこのセンシング部20のセンシング面と垂直方向に対称となる位置にそれぞれ対応して配置されている(図13及び図14参照)。即ち、一方の主固定コア60と他方の主固定コア70はケース40の一側である上ケース41に固定され、一方の副固定コアと160と他方の副固定コア170はケース40の他側である下ケース42に固定されている。また、一方の副固定コア160と他方の副固定コア170は、一方の主固定コア60と他方の主固定コア70に関してセンシング部20の反対側においてロータ10のセンシング部周方向において30度の回転角度をなす位置に配置されている。その結果、一方の主固定コア60から見て一方の副固定コア160がロータ10のセンシング部の反対側に実質的にセンシング部20の周期の整数倍である360度(本実施形態にかかるセンシング部周期の3倍)の回転角度をなす位置に配置され、かつ他方の主固定コア70から見て他方の副固定コア170もロータ10のセンシング部の反対側に実質的にセンシング部20の周期の整数倍である360度(本実施形態にかかるセンシング部周期の3倍)の回転角度をなす位置に配置されている。
【0068】
また、主固定コア60,70及び副固定コア160,170は、シャフトSの近傍に位置する固定部材(図示せず)にそれぞれ取り付けられ、ここではそれぞれ交流磁界の遮蔽性を有する金属又は絶縁磁性材、あるいは絶縁性の樹脂材等からなるケース40にロータ10とともに収納されている。
【0069】
本変形例のような配置構造にすると、センシング部20は、そのセンシング幅の変化が周方向に3周期で繰り返され、かつ一方の主固定コア60と一方の副固定コア160の設置角度がセンシング部20の周期Tの整数倍(3倍)に配置されることになるので、ロータ10の回転角度のいかんにかかわらず、励磁コイルA1のインピーダンスと励磁コイルA2のインピーダンスの差信号が常に一定となる。そのため、上述した実施形態及び第1乃至第3の変形例において図6を示して説明したように、回転センサの温度変化による影響をキャンセルすることができる。その結果、温度変化等の影響を受けることなく、かつ他の誤差要因に基づく主信号と参照信号の比較精度が図7及び図8に示すように高くなり、回転センサに冗長性を持たせることが可能となって、回転センサの信頼性を向上させることができる。
【0070】
このように、主固定コアと副固定コアの配置位置をロータのセンシング部周期の整数倍の回転角度で配置することにより、主信号と参照信号の位相が同位相になり、回転センサに温度変化が生じても、主信号コイルコア組と参照信号用コイルコア組の出力信号は同じ位相の方向にほぼ同じ値だけずれるようになるので、温度変化等の影響を受けることなく、かつ他の誤差要因に基づく主信号と参照信号の比較精度が高くなり、回転センサに冗長性を持たせることが可能となって、回転センサの信頼性を向上させることができる。
【0071】
このように、本実施形態にかかる回転センサによると、センサの正常動作を判断するために、主信号と参照信号の差を監視して、あらかじめ決められた判定値を越えた場合にセンサ異常と判断しているが、この差が変動する原因としては、部品の特性変化、部品の形状変化、部品の位置関係の変化などが考えられ、この中で、従来の回転センサでの温度変化による部品の特性変化による影響が大きくて、他の変動の影響を調べることができなかったのを本発明による特別な構造を備えることで温度変化等の影響を受けにくくなり、主信号と参照信号の比較精度が高くなり、回転センサの冗長性を高め、結果として回転センサの信頼性を向上させることができるようになる。
【0072】
なお、本発明は上述したような回転センサにのみ適用されるのではなく、変位を測定すべき対象物と一体に移動する移動体に取り付けられ、移動体の移動方向に幅が変化する導電性のセンシング部を有する変位検出体と、交流励磁電流が流されることで変位検出体のセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて変位検出体のセンシング部に対して垂直方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた変位センサにおいて、センシング部の全長のうちのセンシング幅の変化する周期を複数周期とすると共に、固定コアが、移動体の移動量を検出する励磁コイルの主信号用コイルコア組の固定コアと、主信号用コイルコアと独立して移動体の移動量を検出可能な励磁コイルの参照信号用コイルコア組の固定コアからなり、主信号コイルコア組の固定コアと参照信号用コイルコア組の固定コアのセンシング部のセンシング部延在方向に設置される互いのセンシング部周期に関する相対角度差をセンシング部周期の整数倍とした変位センサにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明にかかる回転センサは、自動車のステアリング装置の回転角度検出に適している。しかしながら、本発明にかかる回転センサは、例えばロボットアームのように互いに回転するシャフト間の相対回転角度や回転トルクを求めるものであれば、どのようなものにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態にかかる回転センサを概略的に示した平面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる回転センサの信号処理ブロック図である。
【図3】図2に示した信号処理ブロック図の一部をより詳細に示した回路ブロック図である。
【図4】図1に示した固定コアとセンシング部の組み合わせからロータの回転角度を検出する方法を示した説明図である。
【図5】図4に続いて、図1に示した固定コアとセンシング部の組み合わせからロータの回転角度を検出する方法を示した説明図である。
【図6】固定コアを図1の実施形態のように配置した場合の主固定コアの検出出力と副固定コアの検出出力を同時に示した説明図である。
【図7】センシング部にずれが生じていない正常な状態における一方の主固定コア(励磁コイルA1)の検出出力と一方の副固定コア(励磁コイルA2)の検出出力の差分を縦軸とし、時間を横軸として示した検出出力特性図である。
【図8】センシング部にずれが生じた異常な状態における一方の主固定コア(励磁コイルA1)の検出出力と一方の副固定コア(励磁コイルA2)の検出出力の差分を縦軸とし、時間を横軸として示した検出出力特性図である。
【図9】図1に示した回転センサの第1の変形例を概略的に示した平面図である。
【図10】図1に示した回転センサの第2の変形例を概略的に示した平面図である。
【図11】図1に示した回転センサの第3の変形例を概略的に示した平面図である。
【図12】図1に示した回転センサの第4の変形例を概略的に示した平面図である。
【図13】図12に示したコイルの位置を概略的に示した平面図である。
【図14】図13に示したコイル位置の平面図をより詳細に示した平面図である。
【図15】従来の回転センサを概略的に示した平面図である。
【図16】図14に示した回転センサの信号処理ブロック図である。
【図17】図16に示した信号処理ブロック図の信号処理部をより詳細に示した平面図である。
【図18】固定コアを図15に示したように配置した場合の主固定コアの検出出力と副固定コアの検出出力を同時に示した説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1 回転センサ
1A,1B,1C,1D 回転センサ
5 回転センサ
10 ロータ
11 ロータ取り付け部
20 センシング部
20a,20b,20c ステー
21 センシング部
21a ステー
22 センシング部
22a ステー
30 基板
40 ケース
41 上ケース
42 下ケース
60,70 主固定コア
100 信号発生部
101 発振回路
110(111,112) 位相シフト部
120(121,122) 位相シフト量検出部
130(131,132) コンバート部
140(141,142) 増幅部
160,170 副固定コア
200 信号発生部
300 信号処理部
301 回転角度検出部
302 回転センサ異常検出部
400 ECU
510 ロータ
511 ロータ取り付け部
520 センシング部
520a ステー
521 幅狭部
522 幅広部
530 基板
540 ケース
560,570 主固定コア
600 信号発生部
660,670 副固定コア
700 信号発生部
800 信号処理部
801 回転角度検出部
802 センシング部ずれ検出部
900 ECU
S シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位を測定すべき対象物と一体に移動する移動体に取り付けられ、当該移動体の移動方向に幅が変化する導電性のセンシング部を有する変位検出体と、
交流励磁電流が流されることで前記変位検出体のセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ前記励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて前記変位検出体のセンシング部に対して垂直方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた変位センサにおいて、
前記センシング部の全長のうちのセンシング幅の変化する周期を複数周期とすると共に、前記固定コアが、前記移動体の移動量を検出する励磁コイルの主信号用コイルコア組の固定コアと、当該主信号用コイルコアと独立して前記移動体の移動量を検出可能な励磁コイルの参照信号用コイルコア組の固定コアからなり、前記主信号コイルコア組の固定コアと参照信号用コイルコア組の固定コアの前記センシング部のセンシング部延在方向に設置される互いのセンシング部周期に関する相対角度差を前記センシング部周期の整数倍としたことを特徴とする変位センサ。
【請求項2】
回転するシャフトに取り付けられ、周方向に沿って幅が変化する導電性のセンシング部を有するロータと、
交流励磁電流が流されることで前記ロータのセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ前記励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて前記ロータのセンシング部に対して前記シャフトの軸線方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた回転センサにおいて、
前記センシング部の周方向360度あたりのセンシング幅の変化する周期を複数周期とすると共に、前記固定コアが、ロータ回転角度を検出する励磁コイルの主信号用コイルコア組の固定コアと、当該主信号用コイルコアと独立してロータの回転角度を検出可能な励磁コイルの参照信号用コイルコア組の固定コアからなり、前記主信号コイルコア組の固定コアと参照信号用コイルコア組の固定コアの前記センシング部の周方向に設置される互いの相対角度差を前記センシング部周期の整数倍としたことを特徴とする回転センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−271457(P2007−271457A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97448(P2006−97448)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】