説明

変位検出装置、目盛の校正方法及び目盛の校正プログラム

【課題】容易且つ安価に構成でき、高精度な目盛の測定誤差の校正を可能とする。
【解決手段】光電式エンコーダ100は、スケール10、検出ユニット20、演算部30を有する。検出ユニット20は、少なくとも3つの検出部21〜23を有する。各検出部は、第1検出部21及び第2検出部22間の測定点の間隔が、物理的に配置可能な最小間隔dとなるように配置され、第2検出部22及び第3検出部23間の測定点の間隔が、最小間隔dよりも大きな間隔となるように配置される。第1検出部21の測定点の出力を1ステップ前の他の検出部の測定点に合わせるように制御しつつ検出ユニット20をステップさせてサンプリングを行う。各検出部の測定点の間隔がすべてd以上となるにもかかわらず、d以下のサンプリング間隔で測定誤差を算出し、自律校正曲線を得てスケールの位置情報を補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニアエンコーダやロータリエンコーダ等に応用される、変位検出装置、目盛の校正方法及び目盛の校正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンコーダ等の変位測定装置の測定誤差は出荷前に評価される。誤差評価の基準には、レーザ干渉計などの高精度な変位センサが用いられる。得られた誤差データは出荷前検査表という形でエンコーダと共に出荷され、エンコーダの性能を保証する重要な資料となる。
しかしながら、工作機械や測定機などのアプリケーションにエンコーダのスケールを取り付ける時、スケールの材質や長さ、及び固定方法によってスケールが撓むことがある。場合によっては、生じたスケールの撓みによって要求仕様に対して無視できないレベルで測定誤差が発生し、予め評価された誤差データの信頼性が損なわれる。
この問題を解決する手段としては、ユーザのアプリケーションにおいて基準の変位センサをセットアップし、エンコーダの測定誤差を機上校正することが考えられる。しかし、変位センサのセットアップの手間や高精度変位センサの価格を考えると、ユーザに負担がかかるため好ましくない。
【0003】
一方、この種の変位検出装置において、例えばスケールの目盛の測定誤差を自律校正するものが知られている(特許文献1及び非特許文献1)。これらの自律校正の手法を利用することにより、高精度変位センサをアプリケーションにセットアップすることなく、エンコーダの測定誤差を校正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−224578号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】清野 慧、「知的精密測定」、精密工学会誌、2009年、Vol.75、No.1、p.89−90
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び非特許文献1に開示されたもののように、複数のセンサを所定間隔で配置した構成である場合、測定誤差のサンプリング間隔はセンサ間の配置ピッチとなる。このため、配置ピッチの2倍以下の周期の測定誤差は正しく復元できず、校正可能な測定誤差の周波数には制限がかかることとなる。
【0007】
また、センサ間の配置ピッチを狭めてこれを解決しようとすることも考えられるが、配置ピッチはセンサ同士が物理的に干渉しない最小間隔が必要となるため、これを狭めることには限界がある。
【0008】
更に、レーザ干渉計などの高精度な変位センサを用いたり、リファレンススケールなどを用意したりすると、いたずらに高価な構成となってしまうため、望ましくない。そして、スケールが取付時などに撓んで無視できないレベルの測定誤差が発生するような場合は、基準の変位センサの再セットアップなどが必要となることがあり、やはりコストや手間がかかることとなる。
【0009】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、レーザ干渉計やリファレンススケールなどが不要で容易且つ安価に構成でき、高精度な目盛の測定誤差の校正を可能とする変位検出装置、目盛の校正方法及び目盛の校正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る変位検出装置は、光学格子を有するスケールと、前記スケールに対して走査方向に相対移動可能に配置されると共に、前記光学格子から位置情報を検出する少なくとも第1の検出部、第2の検出部及び第3の検出部を有するn個(nは3以上の整数)の検出部を前記走査方向に配列してなる検出ユニットと、前記検出ユニットにより検出された前記位置情報に基づいて、前記検出部の位置を特定すると共に測定誤差を算出して前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算部とを備え、前記検出ユニットは、前記第1の検出部と前記第2の検出部の間隔と、前記第2の検出部と前記第3の検出部の間隔とが、互いに異なり且つ整数倍でなく、前記演算部は、前記第1〜第3の検出部のうちの1つの検出部が検出した位置情報を他の検出部が検出するまで前記検出ユニットを前記走査方向に移動させる動作を繰り返し、前記検出された位置情報と当該位置情報を検出した検出部の間隔とから測定誤差を演算し、前記スケールの目盛の自律校正曲線を得ることを特徴とする。
【0011】
このような構成においては、出力データの取得間隔であるサンプリング間隔を、検出ユニットの検出部同士の間隔よりも小さくすることができ、より細かな精度の目盛の自律校正曲線を得ることができるので、高精度な測定誤差の補正を、安価な構成で可能とすることができる。
【0012】
本発明の1つの実施形態においては、前記第1の検出部と前記第2の検出部の間隔と、前記第2の検出部と前記第3の検出部の間隔との差分が、前記n個の検出部同士が物理的に配置可能な最小間隔dよりも小さい。
【0013】
また、本発明の他の実施形態においては、前記演算部が、前記検出ユニットを前記走査方向に往復動させて前記位置情報を取得する。
【0014】
また、本発明の更に他の実施形態においては、前記自律校正曲線を記憶する記憶手段を更に備え、前記演算部が、前記記憶手段に記憶された自律校正曲線を参照して前記目盛の測定誤差を補正する。
【0015】
本発明に係る目盛の校正方法は、光学格子を有するスケールと、前記スケールに対して走査方向に相対移動可能に配置されると共に、前記光学格子から位置情報を検出する少なくとも第1の検出部、第2の検出部及び第3の検出部を有するn個(nは3以上の整数)の検出部を、前記第1の検出部と前記第2の検出部の間隔が、前記第2の検出部と前記第3の検出部の間隔と異なり且つ整数倍でないように配列してなる検出ユニットと、前記検出ユニットにより検出された前記位置情報に基づいて、前記検出部の位置を特定すると共に測定誤差を算出して前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算部とを備えた変位検出装置における目盛の校正方法であって、前記第1〜第3の検出部のうちの1つの検出部が検出した位置情報を他の検出部が検出するまで前記検出ユニットを前記走査方向に移動させる動作を繰り返す検出ステップと、前記検出された位置情報と当該位置情報を検出した検出部の間隔とから測定誤差を演算し、前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算ステップと、得られた自律校正曲線を参照して、前記光学格子の位置情報を補正する補正ステップとを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る目盛の校正プログラムは、光学格子を有するスケールと、前記スケールに対して走査方向に相対移動可能に配置されると共に、前記光学格子の位置情報を検出する少なくとも第1の検出部、第2の検出部及び第3の検出部を有するn個(nは3以上の整数)の検出部を、前記第1の検出部と前記第2の検出部の間隔が、前記第2の検出部と前記第3の検出部の間隔と異なり且つ整数倍でないように配列してなる検出ユニットと、前記検出ユニットにより検出された前記位置情報に基づいて、前記検出部の位置を特定すると共に測定誤差を算出して前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算部とを備えた変位検出装置における目盛の校正方法をコンピュータにより実行可能な目盛の校正プログラムであって、前記第1〜第3の検出部のうちの1つの検出部が検出した位置情報を他の検出部が検出するまで前記検出ユニットを前記走査方向まで移動させる動作を繰り返す検出ステップと、前記検出された位置情報と当該位置情報を検出した検出部の間隔とから測定誤差を演算し、前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算ステップと、得られた自律校正曲線を参照して、前記光学格子の位置情報を補正する補正ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易且つ安価に構成でき、高精度な目盛の測定誤差の校正を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る変位検出装置を構成する光電式エンコーダの構成を示す概略図である。
【図2】スケールの目盛の自律校正の基本原理を説明するための図である。
【図3】同基本原理を説明するための図である。
【図4】同光電式エンコーダの検出ユニットの構成を説明するための図である。
【図5】同検出ユニットのステップを説明するための図である。
【図6】本発明の実施例及び比較例に係る検出ユニットのシミュレーションモデルによる作用を説明するための図である。
【図7】同実施例に係る検出ユニットのシミュレーションモデルによる作用を説明するための図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る変位検出装置を構成する光電式エンコーダの検出ユニットの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係る変位検出装置、目盛の校正方法及び目盛の校正プログラムを詳細に説明する。
【0020】
[実施形態に係る変位検出装置である光電式エンコーダの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置を構成する光電式エンコーダの構成を示す概略図である。光電式エンコーダ100は、図1に示すように、スケール10と、検出ユニット20と、演算部30とを有する。ここで、光電式エンコーダ100は、本実施形態では例えば反射型として構成されている。
【0021】
スケール10は、例えばテープスケールからなり、検出ユニット20を構成する複数の検出部(第1〜第3検出部)21,22,23の測定点の位置を検出するための位置情報を有する。スケール10は、検出ユニット20の各検出部21〜23から照射された光を、各検出部21〜23に反射させる。なお、複数の検出部は、n個(nは3以上の整数)設けられているとよい。
【0022】
スケール10は、図1に示すように、矩形フィルム状の基板11と、この基板11上に設けられたトラック12とを有する。基板11の長手方向は、測定時にスケール10が検出ユニット20に対して相対的に移動する方向(走査方向X)である。
【0023】
トラック12は、パターン12aにて構成されている。パターン12aは、走査方向Xに沿って一定のピッチ(例えば、μmオーダー)をもって配列され、明部又は暗部が一定周期に配置されたパターンである。
【0024】
検出ユニット20は、スケール10に対して走査方向Xに相対移動可能に構成されている。各検出部21〜23は、スケール10から位置情報を検出する。各検出部21〜23は、例えば第1検出部21及び第2検出部22間の測定点の間隔が、物理的に配置可能な最小間隔dとなるように配置されている。また、第2検出部22及び第3検出部23間の測定点の間隔が、最小間隔dよりも大きな間隔αd(α(i=2,3,...,n−1))となるように配置されている。なお、αは、1より大きく整数ではない定数である。
【0025】
具体的には、各検出部21〜23は、スケール10(トラック12)に対して光を照射し、その反射光を受光する。そして、検出ユニット20は、各検出部21〜23が受光した光に基づき、各検出部21〜23の測定点の位置情報を検出する。
【0026】
演算部30は、検出された位置情報に基づき、各検出部21〜23の測定点の位置を特定する。また、演算部30は、各検出部21〜23により検出されたスケール10の目盛の測定誤差を算出して精度曲線(自律校正曲線)を得る。演算部30は、例えばコンピュータに組み込まれたCPUによって構成され、得られた自律校正曲線を記憶部31に記憶すると共に、記憶部31から目盛の校正プログラムを読み出し、このプログラムを実行することによって、例えば自律校正曲線を参照してスケール10の目盛の測定誤差の補正処理を行ったり、各種動作を実現する。
【0027】
[目盛の自律校正の基本原理の説明]
図2及び図3は、スケールの目盛の自律校正の基本原理を説明するための図である。図2に示すように、まず、撓みによるピッチずれを有するスケール209に沿って並設された、2つの検出部201,202を有する検出ユニット200を準備する。各検出部201,202の測定点の間隔を例えばdとし、各検出部201,202のそれぞれの出力をm(x),m(x)とする。ここで、f(x)を測定誤差とすると、出力m(x)はm(x)=x+f(x)と表され、出力m(x)はm(x)=(x+d)+f(x+d)と表される。
【0028】
そして、測定に当たっては、検出ユニット200を走査方向Xに沿って一定間隔で移動(ステップ)させ、各ステップ毎に検出部201,202の出力m(x),m(x)をサンプリングする。スケール209の全長を走査するのに要するステップ数をnとし、検出ユニット200に与えるステップ量をDSTEPとすると、i番目(i=0,1,...,n)のステップにおける各検出部201,202の出力m(DSTEP・i),m(DSTEP・i)は、次式(1)及び(2)のように表される。
【0029】
[数1]
(DSTEP・i)=DSTEP・i+f(DSTEP・i)・・・(1)
【0030】
[数2]
(DSTEP・i)=DSTEP・i+d+f(DSTEP・i+d)・・・(2)
【0031】
従って、出力m(DSTEP・i)には、出力m(DSTEP・i)と比べてdだけオフセットが存在することが分かる。なお、各検出部201,202の測定点の間隔dは、予め何らかの方法で求めておく必要がある。
【0032】
検出ユニット200を走査方向Xの一方(例えば図中右方向)に向けてステップさせるときは、図3に示すように、進行方向の後ろ側に配置された検出部201の出力m(DSTEP)を、1つ前のステップの進行方向の先行側に配置された検出部202の出力m(0)に合わせるようにステップ量を制御する。このとき、各検出部201,202間の測定点の間隔dは既知のものであるため、検出部201の出力が1つ前のステップの検出部202の出力と等しくなったときに、ステップ量は測定点の間隔dと等しくなり、次式(3)が成り立つこととなる。
【0033】
[数3]
STEP=d・・・(3)
【0034】
なお、最初に検出ユニット200をステップさせるとき(i=1のとき)、検出部201の出力は初期位置での検出部202の出力に合わせる必要がある。従って、スケール209はアブソリュートスケールであることが望ましいが、位置情報の検出方法によってはインクリメンタルスケールでもよい。
【0035】
そして、i番目(i=0,1,...,n)のステップにおける測定誤差f(d・i)は、上記式(1)及び式(3)より、次式(4)のように表すことができる。
【0036】
[数4]
f(d・i)=m(d・i)−d・i・・・(4)
【0037】
上記式(4)では、サンプリング位置を測定基準にして、検出部201の出力から測定誤差を求めている。こうして、各ステップが完了した後に検出部201の出力を取得しておき、それぞれの出力に対して上記式(4)を演算すれば、スケール209の全長にわたる測定誤差f(d・i)を求めることができ、これに基づく自律校正曲線を得ることができる。
【0038】
この自律校正曲線をスケール209の目盛の補正に用いれば、エンコーダの正確性の向上を望めるが、測定点の間隔dの低減には限界があるため、上記基本原理の構成ではより高周波で高精度な目盛の測定誤差の校正をすることができないこととなる。従って、本実施形態に係る変位検出装置は、少なくとも3つの検出部を有する検出ユニット20を採用し、次のように自律校正を行うこととした。
【0039】
[本実施形態に係る目盛の自律校正の説明]
図4は、光電式エンコーダの検出ユニットの構成を説明するための図である。図5は、検出ユニットのステップを説明するための図である。図1に示した検出ユニット20は、第1〜第3検出部21〜23を有する構成としたが、検出ユニット20はこれより多くの検出部を有する構成とすることができるので、ここではn個(nは3以上の整数)の検出部を有することとして説明する。
【0040】
図4に示すように、検出ユニット20は、第1検出部21〜第n検出部nのn個の検出部を有し、各検出部間の測定点の間隔は、第1検出部21から第n検出部に向かってd,αd,αd,...,αn−1dと設定されている。αは、1より大きく整数ではない定数であり、予め求めておく。
【0041】
まず、初期位置で各検出部21〜nの測定点での出力データを取得する。次に、初期位置で取得した出力データに基づき、例えば第1ステップにおいて第1検出部21の測定点の出力が初期位置での第2検出部22の測定点の出力に合うように、ステップ量を制御して検出ユニット20を走査方向Xにステップさせ、第1ステップにおける測定点の出力データを取得する。
【0042】
その後、第1ステップで取得した出力データに基づき、例えば第2ステップにおいて第1検出部21の測定点の出力が第1ステップでの第2検出部22の測定点の出力に合うように、ステップ量を制御して検出ユニット20を同様にステップさせ、第2ステップにおける測定点の出力データを取得する。
【0043】
更に、初期位置で取得した出力データに基づき、例えば第3ステップにおいて第1検出部21の測定点の出力が初期位置での第3検出部23の測定点の出力に合うように、ステップ量を制御して検出ユニット20を同様にステップさせ、第3ステップにおける測定点の出力データを取得する。
【0044】
このように、各ステップ毎に取得した第2検出部22〜第n検出部nの測定点の出力データに基づいて、例えば第1検出部21の測定点の出力をこれらの測定点に合わせるようにステップ量を制御しながら検出ユニット20をステップさせると、サンプリング間隔が間隔dよりも小さくなる区間(例えば、間隔(α−1)・d<d)が出現する。
【0045】
更に、上記のようなステップをスケール全長にわたって繰り返し行うことで、ランダムに間隔dよりも小さなサンプリング間隔を得ることができる。このため、各検出部21〜nの測定点の間隔がすべてd以上となるように構成されているにもかかわらず、d以下のサンプリング間隔で測定誤差を算出し、自律校正曲線を得てスケールの位置情報を補正することが可能となる。
【0046】
なお、測定誤差を求めるための測定基準はサンプリング位置であるが、すべてのサンプリング位置は既知の測定点の間隔d〜αn−1dから逆算することができる。このように、本実施形態に係る変位検出装置によれば、高価な構成が不要で容易且つ安価に、高精度な目盛の測定誤差の校正を行うことが可能となる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例により上記構成について具体的に説明する。図6は、本発明の実施例及び比較例に係る検出ユニットのシミュレーションモデルによる作用を説明するための図である。また、図7は、実施例に係る検出ユニットのシミュレーションモデルによる作用を説明するための図である。
【0048】
図6に示すように、実施例に係る検出ユニット20は、3つの検出部を備え、第1検出部21及び第2検出部22間の測定点の間隔dを10mmとし、第2検出部22及び第3検出部23間の測定点の間隔αdを12.5mmとして構成した。
【0049】
一方、比較例に係る検出ユニット20Aは、2つの検出部を備え、第1検出部21及び第2検出部22間の測定点の間隔dを10mmとして構成した。従って、検出ユニット20は上記パラメータn=3,d=1,α=1.25の構成であり、検出ユニット20Aはn=2,d=1の構成である。
【0050】
そして、各検出ユニット20,20A毎に、第1検出部21の測定点の出力を第2及び第3検出部22,23の測定点の出力に合うようにステップさせて、得られるサンプリング位置を100mmにわたってシミュレートした。その結果、比較例の検出ユニット20Aでは全域にわたってサンプリング間隔が10mmとなったのに対し、実施例の検出ユニット20では60mm以降の移動領域からサンプリング間隔が2.5mmとなっていることが明らかとなった。
【0051】
これは、比較例のサンプリング間隔に比べて1/4のサンプリング間隔である。つまり、測定点の間隔が10mm以上であるにもかかわらず、10mm以下のサンプリング間隔で測定誤差を演算することが可能であることを表している。従って、比較例よりも高精度な目盛の測定誤差の校正を行うことができる。
【0052】
なお、図6に示した例では、実施例においても0〜60mmまでの移動領域においてはサンプリング間隔が必ずしも2.5mmとはならないので、更なる高精度化が望めることが分かる。このため、図7に示すように、検出ユニット20をスケール10の検出範囲内で往復動させ、サンプリング位置を補う構成とすることが望ましい。
【0053】
具体的には、往路においては上記のようにサンプリング位置を得て、例えば復路において第3検出部23の測定点の出力を、往路で得た第1及び第2検出部21,22の測定点の出力に合わせるように検出ユニット20をステップさせて、サンプリング位置を補完する。このようにすれば、スケールの検出範囲全長にわたってサンプリング間隔を2.5mmとすることができる。
【0054】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。例えば、光電式エンコーダはリニア型のみならず、ロータリ型であってもよい。また、図8に示すように、検出ユニット20の少なくとも3つ以上の検出部21,22,23は、例えば測定点の間隔d〜αn−1d(図8ではd,αd)が上述した構成となるように、3つ以上の受光領域に分けた1つの受光素子アレイで構成するようにしてもよい。更に、本発明は、一定周期の光学格子を有するインクリメンタルスケールのみならず、疑似ランダムコードパターンからなるアブソリュートスケール、及びこれらのスケールの両方又はどちらか一方を複数備えたマルチトラックスケールにも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 スケール
11 基板
12 トラック
12a パターン
20 検出ユニット
21 第1検出部
22 第2検出部
23 第3検出部
30 演算部
31 記憶部
100 光電式エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学格子を有するスケールと、
前記スケールに対して走査方向に相対移動可能に配置されると共に、前記光学格子から位置情報を検出する少なくとも第1の検出部、第2の検出部及び第3の検出部を有するn個(nは3以上の整数)の検出部を前記走査方向に配列してなる検出ユニットと、
前記検出ユニットにより検出された前記位置情報に基づいて、前記検出部の位置を特定すると共に測定誤差を算出して前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算部とを備え、
前記検出ユニットは、前記第1の検出部と前記第2の検出部の間隔と、前記第2の検出部と前記第3の検出部の間隔とが、互いに異なり且つ整数倍でなく、
前記演算部は、前記第1〜第3の検出部のうちの1つの検出部が検出した位置情報を他の検出部が検出するまで前記検出ユニットを前記走査方向に移動させる動作を繰り返し、前記検出された位置情報と当該位置情報を検出した検出部の間隔とから測定誤差を演算し、前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る
ことを特徴とする変位検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出部と前記第2の検出部の間隔と、前記第2の検出部と前記第3の検出部の間隔との差分は、前記n個の検出部同士が物理的に配置可能な最小間隔dよりも小さい
ことを特徴とする請求項1記載の変位検出装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記検出ユニットを前記走査方向に往復動させて前記位置情報を取得することを特徴とする請求項1又は2記載の変位検出装置。
【請求項4】
前記自律校正曲線を記憶する記憶手段を更に備え、
前記演算部は、前記記憶手段に記憶された自律校正曲線を参照して前記目盛の測定誤差を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の変位検出装置。
【請求項5】
光学格子を有するスケールと、前記スケールに対して走査方向に相対移動可能に配置されると共に、前記光学格子から位置情報を検出する少なくとも第1の検出部、第2の検出部及び第3の検出部を有するn個(nは3以上の整数)の検出部を、前記第1の検出部と前記第2の検出部の間隔が、前記第2の検出部と前記第3の検出部の間隔と異なり且つ整数倍でないように配列してなる検出ユニットと、前記検出ユニットにより検出された前記位置情報に基づいて、前記検出部の位置を特定すると共に測定誤差を算出して前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算部とを備えた変位検出装置における目盛の校正方法であって、
前記第1〜第3の検出部のうちの1つの検出部が検出した位置情報を他の検出部が検出するまで前記検出ユニットを前記走査方向に移動させる動作を繰り返す検出ステップと、
前記検出された位置情報と当該位置情報を検出した検出部の間隔とから測定誤差を演算し、前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算ステップと、
得られた自律校正曲線を参照して、前記光学格子の位置情報を補正する補正ステップとを備えた
ことを特徴とする目盛の校正方法。
【請求項6】
光学格子を有するスケールと、前記スケールに対して走査方向に相対移動可能に配置されると共に、前記光学格子から位置情報を検出する少なくとも第1の検出部、第2の検出部及び第3の検出部を有するn個(nは3以上の整数)の検出部を、前記第1の検出部と前記第2の検出部の間隔が、前記第2の検出部と前記第3の検出部の間隔と異なり且つ整数倍でないように配列してなる検出ユニットと、前記検出ユニットにより検出された前記位置情報に基づいて、前記検出部の位置を特定すると共に測定誤差を算出して前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算部とを備えた変位検出装置における目盛の校正方法をコンピュータにより実行可能な目盛の校正プログラムであって、
前記第1〜第3の検出部のうちの1つの検出部が検出した位置情報を他の検出部が検出するまで前記検出ユニットを前記走査方向に移動させる動作を繰り返す検出ステップと、
前記検出された位置情報と当該位置情報を検出した検出部の間隔とから測定誤差を演算し、前記スケールの目盛の自律校正曲線を得る演算ステップと、
得られた自律校正曲線を参照して、前記光学格子の位置情報を補正する補正ステップとを備えた
ことを特徴とする目盛の校正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−92414(P2013−92414A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233748(P2011−233748)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】