説明

変位量特定装置、変位量特定方法および変位量特定プログラム

【課題】基板の反りを簡易に検出することができる技術の提供。
【解決手段】電子部品を基板に実装するためのパッドの中から前記基板の反りを検出するための基準パッドを選択し、前記基板に反りが発生していない場合の前記基板の表面である基準平面に対して傾斜した方向に光軸が配向したカメラによって撮影された前記基準パッドの像を含む画像を取得し、前記基準パッドの像の前記画像内での位置と前記基板に反りが発生していない場合における前記基準パッドの像の前記画像内での位置である基準位置とに基づいて前記基準平面に垂直な方向への前記基板の反りの量を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位量特定装置、変位量特定方法および変位量特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に反りが発生していない場合の当該基板の表面である基準平面に対して光軸が斜視するように配設された斜視カメラによる基板の外観検査が行われている。検査対象となる基板は、リフロー炉内での温度や基板に実装された電子部品の重さや密集度、基板支持手段によって基板に作用する力等によって反りが発生している場合があり、斜視カメラにおいては基準平面に対して光軸が傾斜した状態で検査対象部を撮影するため、基板に反りが発生していると検査対象部の位置を特定することが困難になる。
【0003】
そこで、基板の反りによる位置ずれを補正する技術として、例えば、特許文献1のように、基準平面に対して斜視する方向から照射されたレーザ光の位置を、基準平面に対して光軸が垂直に設定されたカメラで観測することにより基板の位置ずれ量を測定し、その位置ずれ量分だけ、基板とカメラとの相対高さ関係を補正する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−198129号公報
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の場合、基板の反りを測定するためのレーザ光を照射する装置を別途設ける必要があり、設備のコストアップに繋がってしまう。また、レーザ光照射装置等の位置ずれ量を測定する装置を配置するためのスペースを別途必要とするため、カメラや照明等の配置に制約が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決せんとするもので、基板の反りを簡易に検出することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明においては、電子部品を基板に実装するためのパッドの中から基板の反りを検出するための基準パッドを選択し、斜視カメラによって撮影された基準パッドの像を含む画像を取得し、基準パッドの像の画像内での位置と基板に反りが発生していない場合における基準パッドの像の画像内での位置である基準位置とに基づいて基準平面に垂直な方向への前記基板の反りの量を特定する。すなわち、基板に電子部品を実装するためのパッドから選択された基準パッドに基づいて基板の反りを検出する。
【0008】
このように、本発明においては、斜視カメラによって取得した画像に基づいて反りを検出することができ、当該斜視カメラは上述のような検査対象部の検査を行う際に利用可能である。従って、反りの検出と検査とを共通の斜視カメラによって実行することができ、反りの検出のために専用のカメラやレーザー光照射装置を設ける必要がなく、コストを抑制することができ、カメラや照明等の配置の制約を抑制することができる。さらに、基板には電子部品が実装されるのが通常であり、通常の基板は電子部品を実装するために必ずパッドを備えている。従って、基板の反りを検出するための基準となるマーク等を基板に設ける必要がなく、汎用性の高い技術を提供することができる。
【0009】
ここで、基準パッド選択手段は、基板に設けられたパッドの中から基準パッドを選択することができればよく、基板や電子部品に関する設計データから選択しても良いし、カメラによって撮影された画像に含まれるパッドの像に基づいて基準パッドを選択しても良い。なお、パッドは、一般的に銅等の導電性の配線パターンの一部として基板の表面に設けられる部位であり、当該パッドに抵抗素子等の電子部品が半田づけされる。
【0010】
そして、基準パッドは当該パッドの中から、基板の反りを検出するために選択される。従って、基準パッドは、当該基準パッドの像の画像内での位置と基準位置との差分から基板の反りを特定可能なパッドであればよく、基準パッドの像の画像内での位置を特定することが容易なパッドを基準パットとすればよい。
【0011】
基準パッドは予め決められた規則によって直接的、あるいは間接的に特定することができればよく、前者としては、基準パッドの大きさや形状、画像内での特徴等に基づいて基準パッド自体を特定する構成を想定可能である。後者としては、基準パッドに実装される部品の大きさや形状、基準パッドに半田づけされる半田の量等に基づいて基準パッドを特定する構成を想定可能である。
【0012】
画像取得手段は、基板に反りが発生していない場合の当該基板の表面である基準平面に対して傾斜した方向に光軸が配向したカメラ、すなわち、斜視カメラによって撮影された基準パッドの像を含む画像を取得することができればよい。なお、ここでは、基準パッドの位置は斜視カメラによる撮影の前に特定されており、当該基準パッドの位置を撮影することによって基準パッドの像を含む画像を取得しても良いし、所定の手順で撮影された画像から基準パッドの像を含む部分を特定し、特定された部分を基準パッドの像を含む画像として取得する構成であっても良い。
【0013】
反り量特定手段は、基準パッドの像の画像内での位置と基準位置とに基づいて基板の反りの量を特定することができればよい。すなわち、基準パッドの設計上の位置は基板の設計段階で予め決められているため、当該基準パッドの設計上の位置に基づいて反りが生じていない基板を斜視カメラによって撮影した場合の画像内での基準パッドの理想的な位置が特定される。そこで、当該理想的な位置に存在する基準パッドが撮影された場合における画像内での基準パッドの像の位置を基準位置とすれば、当該基準位置と実際に撮影された基準パッドの像の画像内での位置との差異が基板の反りによって生じていると見なすことにより、基準パッド部分における基板の反りの量を特定することができる。むろん、基準パッド部分における基板の反りの量を特定すれば、当該反りの量に基づいて基板上の任意の部位の反りの量を推定することができる。
【0014】
反り量特定手段においては、反りの量を特定する過程において基準パッドの像の画像内での位置を特定するが、当該基準パッドの像の画像内での位置を特定するための手法としては種々の手法を採用可能である。例えば、基準パッドの像の特徴量を特定することによって基準パッドの像の画像内での位置を特定する構成とすることが可能であり、特徴量としては、例えば、基準パッドの像のエッジを想定可能である。
【0015】
すなわち、基板の表面においてパッドとパッド以外の部分は色と材質が異なっており、特にパッドの境界において輝度が大きく変化する。また、パッドは、基板の設計段階で形状が決定される。そこで、基準パッドの像のエッジを検出すれば、当該エッジの画像内での位置によって基準パッドの像の画像内での位置を特定することができる。例えば、エッジの画像内での位置を基準パッドの像の画像内での位置と見なす構成やエッジと所定の関係にある位置を基準パッドの像の画像内での位置と見なす構成等を採用可能である。
【0016】
エッジを検出するための手法としては、種々の手法を採用可能であり、例えば、SobelフィルタやPrewittフィルタ等によってエッジを検出する手法を採用可能である。むろん、エッジを検出する際の精度を向上させるため、複数の画素に渡るエッジを抽出するように構成したり、撮影素子の画素が並ぶ方向と平行に配向しているエッジを検出対象とする構成等を採用しても良い。前者としては、画像内での所定方向に並ぶ複数の画素について輝度の累積値を算出し、当該所定方向に垂直な方向に沿った累積値の変化を解析し、累積値が急激に(所定値以上)変化する位置をエッジの画像内での位置とする構成を採用しても良い。
【0017】
さらに、位置を正確に特定するために、基準パッドは大きい方が好ましい。また、基準パッドのエッジが容易に検出可能であるほどエッジの画像内での位置を正確に特定しやすくなる。そこで、所定の大きさ以上のパッドを基準パッドの候補となる候補パッドとし、周囲にエッジの検出を阻害する要素が存在しない候補パッドを選択して基準パッドとする構成を採用することが好ましい。
【0018】
すなわち、所定の大きさ以上のパッドを候補パッドとすることにより、エッジを形成する像の大きさが大きくなり、エッジ検出時の統計精度を高めることができる。また、所定の大きさ以上のパッドは、他のパッドと比較してパッドの全面が半田で覆われる可能性が少なく、パッドの境界に相当するエッジを高い確率で検出することができる。従って、所定の大きさ以上のパッドを候補パッドとすることにより、正確にエッジを検出することが可能になる。むろん、候補パッドを規定するための条件となる所定の大きさは、パッド自体の大きさについて規定されていても良いし、パッドの一部(例えば、エッジ部分)の大きさについて規定されていても良い。
【0019】
さらに、周囲にエッジの検出を阻害する要素が存在しない候補パッドを選択することにより、より正確にエッジを検出可能なパッドを基準パッドとすることが可能になる。ここで、エッジの検出を阻害する要素は、エッジの検出を不可能にする要素やエッジの検出を困難にする要素として予め決められた要素であり、各候補パッドの周囲に当該要素が存在するか否かが判定される。
【0020】
当該要素としては、例えば、候補パッドの周囲の電子部品、シルク印刷、パッドから延びる配線、基板表面の絶縁性樹脂(グリーンマスク等)、基板に形成された構造体等が挙げられる。より具体的には、候補パッドの周囲に、当該候補パッドと斜視カメラの撮影素子とを結ぶ直線と交差する電子部品が存在する場合に、当該電子部品を「エッジの検出を阻害する要素」とする構成を採用可能である。すなわち、斜視カメラの視野内に候補パッドの撮影を阻害する電子部品が存在し、候補パッドが電子部品の影になる場合に当該電子部品を「エッジの検出を阻害する要素」とする。この構成によれば、候補パッドの中から撮影可能なパッドを抽出して基準パッドとすることが可能になる。
【0021】
むろん、電子部品が候補パッドの撮影を阻害する可能性が高い場合にこのような電子部品を「エッジの検出を阻害する要素」とする構成を採用してもよい。例えば、候補パッドの周囲の所定距離以内に電子部品が所定値以上の密度で存在する場合に、このような電子部品を「エッジの検出を阻害する要素」とする。むろん、候補パッドの周囲の所定距離以内に所定の大きさ以上の電子部品が所定値以上の密度で存在する場合に、このような電子部品を「エッジの検出を阻害する要素」とする構成としても良い。
【0022】
さらに、候補パッドから所定距離以内の基板上にシルク印刷が存在する場合に当該シルク印刷を「エッジの検出を阻害する要素」とする構成を採用可能である。すなわち、基板上のシルク印刷の像は輝度が大きいため、基準パッドの像が形成するエッジと区別することが困難である。そこで、候補パッドから所定距離以内の基板上に存在するシルク印刷を「エッジの検出を阻害する要素」とすれば、パッド以外の部分であるシルク印刷部分を基準パッドと見なす誤判定を防止することができる。
【0023】
さらに、候補パッドのエッジに該当する部分から延びる配線パターンが存在する場合に当該配線パターンを「エッジの検出を阻害する要素」とする構成を採用可能である。すなわち、エッジに相当する部分から配線パターンが延びていると、エッジの実効的な長さが短くなるとともにエッジの検出が困難となる。そこで、候補パッドのエッジに該当する部分から延びる配線パターンが存在する場合に当該配線パターンを「エッジの検出を阻害する要素」とすれば、エッジの検出精度が低下しやすい候補パッドを基準パッドとして選択することを防止することができる。
【0024】
なお、候補パッドのエッジに相当する部分から延びる配線パターンは、基板表面に形成される絶縁性樹脂(グリーンマスク等)で覆われる場合と覆われない場合とが存在する。ここでは、一方を「エッジの検出を阻害する要素」としてもよいし、双方を「エッジの検出を阻害する要素」としてもよい。
【0025】
さらに、候補パッドから所定距離以内にスルーホール等の構造体が形成されている場合に当該構造体を「エッジの検出を阻害する要素」とする構成を採用しても良い。すなわち、基板上に形成された構造体は、輝度変化の大きい部分を備えることが多く、基準パッドの像が形成するエッジと区別することが困難である。そこで、候補パッドから所定距離以内にスルーホール等の構造体が形成されている場合に当該構造体を「エッジの検出を阻害する要素」とすれば、パッド以外の部分である構造体を基準パッドと見なす誤判定を防止することができる。
【0026】
さらに、候補パッドから選択される基準パッドの数は限定されないが、例えば、1カ所の検査対象部に対して2カ所の基準パッドを利用する構成や1カ所の検査対象部に対して1カ所の基準パッドを利用する構成等を採用可能である。また、より具体的な適用例として、基板が備える平行な2辺を支持され、基板とカメラとが基準平面に平行な方向に相対的に移動することでカメラで基板表面上の任意の位置を撮影し、撮影画像に基づいて検査を行う構成への適用例が挙げられる。すなわち、基板の平行な2辺をクランプした状態で平面内を移動させることによって基板検査を行う構成を適用例とする。
【0027】
この構成において、当該2辺に平行な方向の一方側において検査対象部に最も近い基準パッドと、2辺に平行な方向の他方側において検査対象部に最も近い基準パッドとに基づいて基板上の検査対象部における反りの量を特定する構成とする構成を採用可能である。すなわち、基板の2辺に平行な方向に沿って検査対象部を両側から挟む基準パッドであって、検査対象部に最も近い基準パッドに基づいて検査対象部における反りの量を特定する。基板の2辺を支持する場合、支持された部位の基準平面に垂直な方向の位置(高さ)は一定であると見なすことができる。そこで、各基準パッドの位置における基板の高さを特定すれば、基準パッドの位置および支持された部位の高さに基づいて補間処理を行うことで基準パッドに挟まれた検査対象部の高さを特定することができる。そして、検査対象部を両側から挟む基準パッドを利用することにより、内挿補間によって検査対象部の高さを特定することができ、正確に検査対象部の高さを特定することが可能である。
【0028】
さらに、基板が備える平行な2辺を支持され、基板とカメラとが基準平面に平行な方向に相対的に移動することでカメラで基板表面上の任意の位置を撮影し、撮影画像に基づいて検査を行う構成において、検査対象部に最も近い基準パッドに基づいて基板上の検査対象部における反りの量を特定する構成を採用しても良い。すなわち、基板の平行な2辺を支持する構成において、基板の反りの量は当該2辺に垂直な方向に大きく変化するが、当該反りの量は2辺に平行な方向に大きく変化することはない。そこで、検査対象部に最も近い基準パッドの位置における基板の高さを特定すれば、基準パッドの位置および支持された部位の高さに基づいて補間処理を行うことで2辺に垂直な方向における基板の高さを特定することができ、2辺に平行な方向に高さの変化がないと見なすことで検査対象部の高さを特定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態にかかる変位量特定装置を含む基板外観検査装置を示す概略ブロック図である。
【図2】(2A)は基板を側面方向から眺めた図、(2B)は基板を上面方向から眺めた図である。
【図3】基準パッド選択処理を示すフローチャートである。
【図4】基板の例を示す図である。
【図5】基板外観検査処理を示すフローチャートである。
【図6】(6A)は基板の反り量を特定するための関数を示す図、(6B)は反り特定用斜視画像を示す図、(6C)はエッジの検出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)基板外観検査装置の構成:
(2)基準パッド選択処理:
(3)基板外観検査処理:
(4)他の実施形態:
【0031】
(1)基板外観検査装置の構成:
図1は、本実施形態にかかる変位量特定装置を含む基板外観検査装置の概略構成を示している。同図において、基板外観検査装置1は、撮像部10と、制御部20と、表示部30と、を備えている。撮像部10は、検査対象となる図2A,2Bに示す基板50の画像を撮影し、同画像を制御部20に出力する。制御部20は撮影画像を入力し、同撮影画像を解析することにより、検査対象部となる基板50上のチップ部品等の電子部品や、それらの半田付け部等の外観を検査する。また、制御部20は、撮像部10により取得した画像に基づいて、基板50の反りの量を特定し、当該反りに起因する検査対象部の画像上の位置ずれを補正する。表示部30は、取得した画像や、基板外観検査処理の過程で生成される各種データを表示可能である。
【0032】
撮像部10は、図1および図2A,2Bに示すように、斜視カメラ11aおよび直視カメラ11bと、基板50を支持するガイドレール12と、ガイドレール12に支持された基板50を平面移動させるX−Yステージ13と、を備えている。そして、撮像部10は、制御部20により制御される。
【0033】
ガイドレール12は、X−Yステージ13に固定されており、図示しない搬送装置から搬送される基板50をX−Yステージ13に対して位置決めするとともに、基板50の対向する平行な2辺をクランプして支持する。このように支持された基板50の平行な2辺は、後述する位置ずれ量の算出の際の基準となる。
【0034】
X−Yステージ13は、ガイドレール12により固定された状態の基板50を所定平面内で移動させる。従って、図2Aに一点鎖線で示す矩形のように基板50に反りが発生していない場合の基板50の上方の表面は基板50が移動する所定平面と平行である。本実施形態においては、当該基板50の上方の表面を基準平面Fsと呼ぶ。
【0035】
斜視カメラ11aは、その光軸が基準平面Fsに対して所定の角度θ°(θ≠0°,90°)斜視するように配設されている。本実施形態においては、斜視カメラ11aによって撮影された基板50の画像を斜視画像と呼ぶ。なお、斜視カメラ11aの台数は限定されないが、本実施形態にかかる基板外観検査装置は斜視カメラ11aを4台備えている。また、各斜視カメラ11aの光軸は基準平面Fs上の一点で交差するように斜視カメラ11aが配設されている。さらに、各斜視カメラ11aの光軸を基準平面Fsに投影した投影直線を想定した場合、2台の斜視カメラ11aに関する投影直線が重なるとともにY軸に平行であり、他の2台の斜視カメラ11aに関する投影直線が重なるとともにX軸に平行である。図2Aでは、投影直線がY軸に平行となる斜視カメラ11aを1台例示している。
【0036】
直視カメラ11bは、その光軸が基準平面Fsに垂直な方向に対して平行になるように配設されている。本実施形態においては、直視カメラ11bによって撮影された基板50の画像を直視画像と呼ぶ。
【0037】
本実施形態において、斜視カメラ11aおよび直視カメラ11bは、基板外観検査装置1に固定されている。従って、本実施形態では、X−Yステージ13をX−Y(水平)方向に平面移動させることにより基板50と斜視カメラ11aとの相対位置を変更するようにしている。なお、基板50と斜視カメラ11aとの相対位置を変更するための構成としては、例えば、基板50の位置を固定するようにして斜視カメラ11aを基準平面Fsに対して平行な平面内で移動させる手段や、基板50および斜視カメラ11aをそれぞれ基準平面Fsに対して平行な平面内で移動させる構成であってもよい。
【0038】
ここで、本実施形態では、図2Aに示すように、ガイドレール12の一方から他方へ向かう方向をY方向、このY方向に直交する基準平面に平行な方向を図2Bに示すようにX方向というものとする。また、X方向およびY方向に対して垂直な方向(高さ方向)をZ方向と呼ぶ。本実施形態における基板50は、Y方向の両端においてガイドレール12に支持されるため、反りが発生する場合、図2Aに示すZ方向において、正方向あるいは負方向に反り量が変化する状態となる。
【0039】
制御部20は、図1に示すように、カメラ制御部21と、ガイドレール制御部22と、ステージ制御部23と、CPU24と、メモリ25と、出力部26と、を備えている。CPU24は、メモリ25に記録された各種プログラムを実行可能であり、本実施形態においては、メモリ25に基板外観検査プログラム25aが記録されている。基板外観検査プログラム25aは、基板50を斜視カメラ11aおよび直視カメラ11bにて撮影した画像に基づいて検査対象部の外観検査を実行する機能をCPU24に実現させるためのプログラムであり、予めメモリ25に記録された基板データ25b、電子部品データ25c、対照テーブル25dと、外観検査処理の過程でメモリ25に記録される撮影画像データ25e、座標補正データ25fを利用して基板50上の検査対象部の外観検査を実行する。
【0040】
基板データ25bは、基板50の設計情報であり、基板50に実装される電子部品を指定するための部品コード、電子部品を実装する位置、電子部品を実装する方向、基板50の上方の表面におけるシルク印刷の位置、配線パターンの位置を示す情報を含んでいる。むろん、部品の回路記号等の情報を含んでいても良い。電子部品データ25cは、複数の電子部品のそれぞれに検査方法と良否判定条件とを対応づけた情報である。対照テーブル25dは、基板データ25bが示す部品コードと電子部品データ25cが示す電子部品との対応関係を示す情報であり、CPU24は当該対照テーブル25dを参照することにより、基板データ25bが示す各電子部品についての検査方法と良否判定条件とを特定することができる。なお、本実施形態において、検査方法と良否判定条件は、直視画像と斜視画像とのそれぞれについて定義される。すなわち、直視カメラ11bにて撮影された直視画像に関する検査方法および良否判定条件と、斜視カメラ11aにて撮影された斜視画像に関する検査方法および良否判定条件とが定義される。
【0041】
撮影画像データ25eは直視カメラ11bおよび斜視カメラ11aによって撮影された画像のデータである。すなわち、CPU24は基板外観検査プログラム25aの処理によってステージ制御部23に撮影領域の座標を指示し、カメラ制御部21に撮影タイミングを指示する。ステージ制御部23は、当該指示に応じて撮影領域の座標が直視カメラ11bあるいは斜視カメラ11aの視野の所定位置(例えば、視野中心)に位置するようにX−Yステージ13を駆動して基板50を搬送する。カメラ制御部21は、当該X−Yステージ13による基板50の搬送が終了すると、直視カメラ11bあるいは斜視カメラ11aを駆動して画像を撮影する。撮影が終了すると、CPU24はカメラ制御部21を制御し、直視カメラ11bあるいは斜視カメラ11aが出力する画像データを取得してメモリ25に記録する。本実施形態において斜視カメラ11aにより撮影された画像のうち、基準パッドを撮影した画像は反り量特定用斜視画像、検査対象部となる電子部品の半田付け部分を撮影した画像は検査用斜視画像というものとする。むろん、基準パッドが検査対象となる場合、反り量特定用斜視画像を検査用斜視画像として流用することができる。
【0042】
座標補正データ25fは、検査用画像を撮影する場合に上述の撮影領域の座標を補正するための情報であり、基板50の反り量に応じて特定される。すなわち、撮影領域の座標は、上述の基板データ25bが示す電子部品の座標に基づいて検査対象となる電子部品が実装されるパッドが視野に含まれるように特定されるが、基板50に反りが発生している場合、CPU24は座標補正データ25fに基づいて撮影領域の座標を補正する。この座標補正データ25fは、検査対象部毎に算出される。
【0043】
基板外観検査プログラム25aは、以上のような基板50の反りに応じた補正を行うため、基板50の反り量を特定する機能を備えている。すなわち、基板外観検査プログラム25aは、基板50の反りを特定するために、基準パッド選択機能25a1と画像取得機能25a2と反り量特定機能25a3とをCPU24に実現させることが可能である。基準パッド選択機能25a1は、基板50に実装される電子部品が実装されるパッドの中から基板50の反りを検出するための基準パッドを選択する機能をCPU24に実現させる。なお、本実施形態にかかる基板50において基準パッドとなり得るパッドは矩形であり、通常その4辺が基板50の4辺に平行である。すなわち、図2A,2Bに示すX方向およびY方向と平行である。
【0044】
また、画像取得機能25a2は、基板に反りが発生していない場合の基板の表面である基準平面に対して傾斜した方向に光軸が配向したカメラによって撮影された基準パッドを含む画像を取得する機能をCPU24に実現させる。さらに、反り量特定機能25a3は、基準パッドの像の画像内での位置と基板に反りが発生していない場合における基準パッドの像の画像内での位置である基準位置とに基づいて基準平面に垂直な方向への前記基板の反りの量を特定する機能をCPU24に実現させる。以上のように、本実施形態においては、基準パッド選択機能25a1と画像取得機能25a2と反り量特定機能25a3とを記録するメモリ25とこれらの機能を実行するCPU24が変位量特定装置を構成する。
【0045】
(2)基準パッド選択処理:
以下、基準パッド選択機能25a1,画像取得機能25a2,反り量特定機能25a3によって実現される機能の詳細とともに基板外観検査プログラム25aの処理を説明する。本実施形態においては、所定の大きさ以上のパッドが基準パッドの候補となる候補パッドとされ、電子部品の大きさに基づいて候補パッドが特定され、当該候補パッドの中から周囲にパッドのエッジの検出を阻害する要素が存在しない候補パッドを選択することによって基準パッドが選択される。
【0046】
すなわち、基板50の設計段階において、各電子部品を実装するためのパッドの大きさが予め決められるため、基板データ25bが示す電子部品を特定すれば、当該電子部品を実装するためのパッドの大きさを特定することができる。そこで、本実施形態においては、所定の大きさ以上のパッドに対して実装される電子部品を予め特定しておき、当該電子部品が実装されるパッドが所定の大きさ以上のパッドであることを示すフラグを各電子部品のデータに対応づけて基板データ25bに記録しておく。
【0047】
図4は、基板50の表面の実例を示す図であり、複数個のパッドを白い丸で示している。同図4に示すように、電子部品の大きさが大きくなると、電子部品の端子の大きさが大きくなり、これに伴ってパッドの大きさも大きくなる。そして、図4に示す例においては、実線の白い丸で示すパッドは所定の大きさよりも小さいパッド(図4に示すパッドP)であり、破線の白い丸で示すパッドは所定の大きさ以上のパッドである。従って、図4に示す例において、パッドS01,S02,C1,C2はいずれも候補パッドとなる。
【0048】
このように、所定の大きさ以上のパッドが候補パッドとして定義された状態において、CPU24は、外観検査処理の実行開始前に基準パッド選択機能25a1の処理により予め図3に示す基準パッド選択処理を実行して基板50上の基準パッドを選択しておく。すなわち、CPU24はまず基板データ25bを取得し(ステップS100)、電子部品データ25cを取得する(ステップS105)。そして、CPU24は、対照テーブル25dを参照し、電子部品毎の検査手順を作成する(ステップS110)。すなわち、CPU24は、対照テーブル25dに基づいて、基板データ25bに記述された各電子部品のそれぞれについて、検査方法と良否判定条件とを示す情報を対応づけて検査手順として規定する。当該検査手順を示す情報は、直視画像と斜視画像とのそれぞれについて定義され、後述する基板外観検査処理にて参照される。
【0049】
次に、CPU24は、候補パッドを選択する(ステップS115)。すなわち、基板データ25bに記述された各電子部品のデータにおいて、電子部品が接続されるパッドが所定の大きさ以上であれば、当該パッドが候補パッドであることを示すフラグが対応づけられている。そこで、CPU24は、当該フラグが対応づけられている電子部品のデータを特定し、当該電子部品が接続されるパッドを候補パッドとして選択する。
【0050】
次にCPU24は、ステップS120〜S130において、候補パッドの周囲にエッジの検出を阻害する要素が存在しない候補パッドを選択し、選択された候補パッドを基準パッドとする。すなわち、基板外観検査処理においては、反り特定用斜視画像に含まれるエッジを検出し、エッジの画像内での位置によって基準パッドの位置を特定する構成を採用している。そこで、本実施形態においては、当該エッジの検出を阻害する要素が存在しないような候補パッドを基準パッドとする構成を採用している。
【0051】
具体的には、CPU24は、まず、電子部品の影になる候補パッドを除外する(ステップS120)。すなわち、CPU24は、基板データ25bを参照し、候補パッドの周囲の所定距離以内に存在する電子部品のそれぞれについて高さおよび候補パッドとの相対位置関係(距離および方向)を特定する。そして、CPU24は、斜視カメラ11aの光軸と候補パッドとの位置関係を特定し、候補パッドが各電子部品の影になるか否かを判定し、影になる場合に当該候補パッドを除外する。すなわち、候補パッドと斜視カメラの撮影素子とを結ぶ直線と交差する電子部品が存在する場合に当該候補パッドを除外する。本実施形態において、除外された候補パッドに実装される電子部品には、パッドが基準パッドではないことを示すフラグが対応づけられて基板データ25bに記録される(以下同様)。
【0052】
さらに、CPU24は、所定距離以内にシルク印刷が存在する候補パッドを除外する(ステップS125)。すなわち、CPU24は、基板データ25bを参照し、候補パッドの周囲の所定距離以内にシルク印刷が存在するか否かを判定し、シルク印刷が存在する場合に当該候補パッドを除外する。例えば、図4に示す例において、パッドS01,S02,C1,C2はいずれも候補パッドであるが、パッドC1は近くにシルク印刷(IC655の文字)が存在するため除外される。
【0053】
さらに、CPU24は、エッジに相当する部分から配線パターンが延びている候補パッドを除外する(ステップS130)。すなわち、CPU24は、基板データ25bを参照し、候補パッドと当該候補パッドに接続される電子部品の位置および方向から、候補パッドの境界(外周線)の中で、電子部品の端部から最も遠い位置に存在する境界を検出対象のエッジとして特定する。そして、CPU24は、基板データ25bを参照し、検出対象のエッジから配線パターンが延びているか否かを判定し、検出対象のエッジから配線パターンが延びている場合に当該候補パッドを除外する。
【0054】
例えば、図4に示す例において、パッドS02,C2には直方体の電子部品が接続されるが、当該直方体の一方の端部がパッドS02、他方の端部がパッドC2上に半田付けされることによって実装が行われる。これらのパッドS02,C2において、電子部品の端部から最も遠い位置に存在する境界は、パッドS02については図面の左側の境界B1、パッドCについては図面の右側の境界B2である。本実施形態においては、これらの境界が検出対象のエッジとされる。従って、本実施形態においては、これらの境界から配線パターンが延びているか否かが判定され、当該境界から図面の右方向に配線パターンが延びているパッドC2が除外される。
【0055】
以上の処理の後、CPU24は、除外されずに残った候補パッド(すなわち、基準パッドではないことを示すフラグが対応づけられなかった候補パッド)を基準パッドとして確定する(ステップS135)。図4に示す例においては、候補パッドS01,S02,C1,C2の中から基準パッドS01,S02が特定される。以上のような候補パッドは大半の基板が備えているため、大半の基板から基準パッドを選択することが可能である。従って、基板の反りを検出するための基準となるマーク等を基板に設ける必要がなく、汎用性の高い技術を提供することができる。
【0056】
(3)基板外観検査処理:
次に、基板外観検査プログラム25aが実行する基板外観検査処理を詳細に説明する。図5は、基板外観検査処理を示すフローチャートである。基板外観検査処理において、最初に、CPU24は、図示しない搬送機構によって基板50をX−Yステージ13上のガイドレール12に搬入し、その両端部を支持する(ステップS200)。本実施形態においては、各検査対象部について撮影および検査を逐次実行する構成を採用しており、CPU24は、基板外観検査プログラム25aの処理によって基板データ25bを参照し、検査対象部のそれぞれを処理対象としたステップS205〜S220のループ処理によって検査を実行する。
【0057】
具体的には、CPU24は、検査対象部の撮影位置に基板を移動させる(ステップS205)。すなわち、基板データ25bに基づいて、処理対象となっている検査対象部の座標を特定し、当該座標を示す信号をステージ制御部23に対して出力する。この結果、処理対象となっている検査対象部の座標が直視カメラ11bの視野に含まれた状態になる。次に、CPU24は、直視画像を撮影する(ステップS210)。すなわち、CPU24はカメラ制御部21に制御信号を出力して直視カメラ11bによって撮影領域の直視画像を撮影する。
【0058】
次に、CPU24は、処理対象となっている検査対象部の検査を行う(ステップS215)。すなわち、CPU24は、上述の検査手順を参照し、検査方法に示された画像処理を行って特徴量を取得し、当該特徴量と良否判定条件としての閾値とを比較して良否判定を行う。なお、本実施形態においては、特徴量と閾値との差異が小さい場合など、特定の条件においては良否判定結果を未定とするように構成されている。むろん、検査方法としては種々の方法を採用可能であり、パターンマッチングにより検査対象の良否の判定する方法や、表示部30に表示した直視画像に基づいて目視により検査する方法を採用しても良い。検査結果を示す情報は、メモリ25に記録される。
【0059】
処理対象となっている検査対象部の検査が終了すると、CPU24は、全ての検査対象部の検査が終了したか否かを判定し(ステップS220)、全ての検査対象部の検査が終了したと判定されない場合にはステップS205以降の処理を繰り返す。すなわち、検査対象部の中で、処理対象とされていない検査対象部を一つ抽出して新たな処理対象とし、ステップS205以降の処理を繰り返す。ステップS220にて、全ての検査対象部の検査が終了したと判定された場合、CPU24は、詳細検査が必要な検査対象部が存在するか否かを判定する(ステップS225)。すなわち、ステップS215の検査において、良否判定結果が未定とされた検査対象部が存在する場合には、詳細検査が必要な検査対象部が存在するとみなす。
【0060】
ステップS225にて、詳細検査が必要な検査対象部が存在すると判定されない場合、CPU24は、検査結果を出力する(ステップS230)。すなわち、CPU24は、各検査対象部と良否判定結果とを対応づけた情報を表示部30に表示するための制御信号を出力部26に出力する。この結果、表示部30には、各検査対象部と良否判定結果とを対応づけた情報が表示され、利用者は、各検査対象部の良否判定結果を把握することができる。そして、CPU24は、図示しない搬送機構によってX−Yステージ13上のガイドレール12による基板50の支持を解除し、X−Yステージ13上から基板50を搬出する(ステップS235)。
【0061】
一方、ステップS225にて、詳細検査が必要な検査対象部が存在すると判定された場合、CPU24は、ステップS240以降において詳細検査を実行する。本実施形態においては、詳細検査が必要とされた検査対象部について撮影および検査を逐次実行する構成を採用しており、CPU24は、基板外観検査プログラム25aの処理によって基板データ25bを参照し、詳細検査が必要とされた検査対象部のそれぞれを処理対象としたステップS240〜S300のループ処理によって検査を実行する。
【0062】
具体的には、CPU24は、基準パッド選択機能25a1の処理により、基板50のガイドレール12に支持された2辺に平行な方向の両側において、処理対象とされた検査対象部に最も近い基準パッドを特定する(ステップS240)。すなわち、基板50のガイドレール12に支持された2辺に平行な方向の一方側において、処理対象とされた検査対象部に最も近い基準パッドを特定する。また、基板50のガイドレール12に支持された2辺に平行な方向の他方側において処理対象とされた検査対象部に最も近い基準パッドを特定する。
【0063】
例えば、図2Bにおいては、破線の矩形で基準パッド、破線の円形で検査対象部Iを示しており、X方向に平行な方向が基板50のガイドレール12に支持された2辺に平行な方向である。この例において、X方向に平行な方向の一方を図2Bの上方とすると、検査対象部Iに最も近い基準パッドは基準パッドS1である。また、X方向に平行な方向の他方を図2Bの下方とすると、検査対象部Iに最も近い基準パッドは基準パッドS2である。従って、図2Bに示す例においては、処理対象とされた検査対象部IについてステップS240が実行されると、検査対象部Iから上方に距離L1min離れた基準パッドS1と検査対象部Iから下方に距離L2min離れた基準パッドS2とが、2辺に平行な方向の両側において、検査対象部Iに最も近い基準パッドとして特定される。
【0064】
ステップS240にて基準パッドが特定されると、CPU24は、画像取得機能25a2の処理により、一方の基準パッドが斜視カメラ11aの視野に含まれるように基板50を移動させる(ステップS245)。すなわち、基板データ25bに基づいて、処理対象となっている検査対象部の座標を特定し、当該座標を示す信号をステージ制御部23に対して出力する。この結果、処理対象となっている検査対象部の座標が斜視カメラ11aの視野に含まれた状態になる。例えば、図2Bに示す例において、基準パッドS1が斜視カメラ11aの視野に含まれた状態になる。
【0065】
次に、CPU24は、画像取得機能25a2の処理により、反り特定用斜視画像を撮影する(ステップS250)。すなわち、CPU24はカメラ制御部21に制御信号を出力して斜視カメラ11aによって撮影領域の画像を撮影し、基準パッド上に実装された電子部品の端部と逆側に配設された斜視カメラ11aにて撮影した画像を反り特定用斜視画像とする。図2Bに示す例においては、基準パッドS1が視野の所定位置(例えば、視野中心)に位置する画像が撮影される。そして、4台の斜視カメラ11aによる撮影画像の中から、基準パッドS1上に実装された電子部品の端部から最も遠い位置に存在する境界が電子部品の影になることなく画像内に含まれる画像が抽出されて反り特定用斜視画像とされる。例えば、図4に示す基準パッドS01,S02であれば、図面の左側に位置する斜視カメラ11aで基準パッドS01,S02を撮影した画像が反り特定用斜視画像とされる。
【0066】
次に、CPU24は、一方の基準パッドの位置における反り量に基づいて基板50のY方向の反り量を特定する(ステップS255)。すなわち、反り特定用斜視画像内での基準パッドの像の位置と、基板50に反りが発生していない場合における基準パッドの像の反り特定用斜視画像内での位置である基準位置と、の差異に相当する反りが基準パッドの位置で発生しているとみなして基板50の反り量を特定し、当該反り量に基づいてY方向の反り量を推定する。
【0067】
なお、本実施形態における基板50の反りに伴う基準パッドの位置変動は、主にZ方向に現れ、X方向およびY方向への位置変動は無視できるほど小さい。そこで、本実施形態においては、基板50の反りに伴う基準パッドの位置変動がZ方向にのみ生じると見なす。図6Aは、図2Bに示すX方向の位置X1における基板50の上面の形状をY軸およびZ軸からなるグラフ上にて実線で示す図である。同図6Aにおいては、基板50が上方に向けて反っている場合の例を、基板50における反り量を誇張して示している。
【0068】
なお、図6Aに示す図においては、基準パッドS1のY方向の位置をY1として示しており、基板50が支持された2辺の間の幅はWである。本実施形態において、斜視カメラ11aによる撮影位置は、基板50に反りが生じていない場合において基準パッドS1のY方向の位置であるY1が斜視カメラ11aの光軸を通るように設定される。従って、基板50にて反りが生じていない場合において基準パッドS1が撮影される画像内での位置Y1が基準位置に相当する。
【0069】
基板50において図6Aに示すような反りが生じていると、基準パッドS1の位置がZ方向にずれるため、斜視カメラ11aの視野内で基準パッドS1の像が斜視カメラ11aの光軸上の基準位置Y1に存在しない状態となる。そして、基準パッドS1の位置変動方向がZ方向のみである場合、斜視カメラ11aによって撮影された反り特定用斜視画像内における基準パッドS1の像の位置と、基準位置Y1の反り特定用斜視画像内での位置とのずれ量に相当するSは、基板50のZ方向への反り量hと一対一に対応する。そこで、本実施形態においては、予めずれ量Sと反り量hとを対応づけた情報をメモリ25に記録しておく。
【0070】
そして、CPU24は、反り特定用斜視画像を解析することにより、反り特定用斜視画像内における基準パッドS1の像の位置と基準位置Y1とのずれ量Sを取得し、メモリ25を参照してずれ量Sに対応する反り量hを特定する。なお、本実施形態において、基準パッドS1の像の位置は、基準パッドS1の像のエッジの反り特定用斜視画像内での位置に基づいて特定される。
【0071】
図6Bは、図6Aに示す斜視カメラ11aによって基準パッドS1を撮影した反り特定用斜視画像の例を示しており、縦方向を図2Bに示すX方向、横方向を図6Bに示すY'方向として示している。同図6Bに示すように、基準パッドS1の像のエッジはX方向に平行である。当該エッジの反り特定用斜視画像内での位置は、図6Bに示すような反り量特定用斜視画像において基準パッドS1のエッジの方向に平行な方向(X方向)に画像内の輝度値を積算し、当該輝度値の積算結果をエッジ部分に垂直な方向(Y'方向)に沿って比較することによって特定される。
【0072】
図6Cは、図6Bに示す反り量特定用斜視画像においてY'方向の各位置においてX方向に輝度値を積算し、横軸をY'方向、縦軸を輝度値の積算値Brとして示したグラフの例である。基板50においては、表面の絶縁性樹脂の輝度値が相対的に小さく、電子部品の表面の輝度値が絶縁性樹脂の輝度値よりも相対的に大きく、パッドの輝度値およびパッド上の半田の輝度値が相対的に最も大きい。従って、パッドの境界に相当するエッジの部分で輝度値の積算値Brは急激に変化する。図6Cにおいて、当該積算値Brが急激に変化する位置は位置Y'eである。そこで、基板50に反りが発生していない場合に基準パッドS1の基準位置Y1が撮影される画像内の位置Y'1と、実際に基準パッドS1のエッジが撮影された位置Y'eとのずれ(画素数)に基づいてずれ量Sを特定すれば、ずれ量Sに対応する反り量hを特定することができる。
【0073】
以上のようにして、基準パッドの位置における反り量を特定すると、CPU24は、当該反り量に基づいて基板50のY方向の反り量を特定する。すなわち、基準パッドの位置における反り量は、図6Aに示す例において、位置Y1における反り量hに相当するため、当該反り量hに基づいて図6Aに示す上に凸の曲線を特定し、Y方向には当該曲線のように反り量が変化すると見なす。
【0074】
具体的には、CPU24は、Yを独立変数、Zを従属変数とした関数(Z=f(Y))を特定することによってY方向の反り量を特定する。本実施形態においては、図6Aに示すように、基板の両固定端の座標(Z,Y)=(0,0)、(W,0)および基準パッドの座標(Y1,h)の3点を通る、以下の式(1)に示す2次関数によってずれ量Zを規定する。
Z=h×{Y×(Y−W)}/{Y1×(Y1―W)}・・・(1)
このように、Y方向の反り量Zを曲線的に表す式によって、実際の位置ずれ量に近いずれ量を推定することができる。
【0075】
なお、ずれ量Zは、Yを独立変数、Zを従属変数とした関数であって基板上の任意の点のおけるずれ量を近似的に推定することができる式であればよく、上述の式(1)に限定されない。例えば、各種のスプライン関数や線形関数を採用しても良い。むろん、Y方向の複数の位置における基準パッドに基づいて複数の位置におけるずれ量を特定し、当該複数の位置におけるずれ量に基づいて関数Zを特定しても良い。また、Y方向の区間を細分化した複数の近似式で関数Zを表すようにしてもよい。
【0076】
以上のようにして、一方の基準パッドに基づいて基準パッドの位置におけるY方向の反り量を特定すると、CPU24は、他方の基準パッドに基づいて基準パッドの位置におけるY方向の反り量を特定する。すなわち、図2Bに示す基準パッドS1に基づいて位置X1におけるY方向の反り量を特定すると、CPU24は、さらに、ステップS260〜S270によって基準パッドS2に基づいて位置X2におけるY方向の反り量を特定する。
【0077】
当該ステップS260〜S270は、他方の基準パッド(基準パッドS2)についてステップS245〜S255と同様の処理を行うことによって実現される。すなわち、ステップS260においては、他方の基準パッドが斜視カメラ11aの視野に含まれるように基板50を移動させ、ステップS265において当該他方の基準パッドについて反り特定用斜視画像を撮影する。さらに、CPU24は、ステップS270において、当該他方の基準パッドの位置における反り量に基づいて基板50のY方向の反り量を特定する。
【0078】
以上のようにして位置X1におけるY方向の反り量と位置X2におけるY方向の反り量が特定されると、CPU24は、反り量特定機能25a3の処理により、検査対象部の位置における反り量を特定する(ステップS275)。本実施形態において、CPU24は、基準パッドに基づいて特定された2個のY方向の反り量(ステップS255,S270で特定された反り量)を参照し、基準パッドと検査対象部との距離に基づいて補間演算を行って検査対象部の位置における反り量を特定する。
【0079】
例えば、図2Bに示す例において、検査対象部Iの座標は(Xi,Yi)である。また、X方向の位置X1,X2におけるY方向の反り量は基準パッドS1,S2の位置における反り量に基づいて特定されている。従って、これらの反り量を参照すれば、座標(X1,Yi)、(X2,Yi)のそれぞれにおける反り量δ1,δ2と特定することができる。そこで、座標(X1,Yi)と座標(Xi,Yi)との距離L1minと座標(X2,Yi)と座標(Xi,Yi)との距離L2minとを利用すれば、検査対象部Iの座標(Xi,Yi)における反り量Δを、例えば、Δ=(L2min/(L1min+L2min))×δ1+(L1min/(L1min+L2min))×δ2として算出することができる。
【0080】
以上のようにして検査対象部の反り量を特定すると、CPU24は、反り量特定機能25a3の処理により、当該反り量だけ基板50が反っている状態において当該検査対象部の位置を斜視カメラ11aの視野内に設定して検査用斜視画像を撮影するための撮影領域の座標を示す座標補正データ25fを作成する(ステップS280)。作成された座標補正データ25fはメモリ25に記録される。なお、ここでは、画像内での基準パッドの像の位置と基準位置とのずれ量が、基板50のZ方向への反り量と一対一に対応することを利用して座標補正データ25fを作成すればよい。例えば、検査対象部における反り量が図6Aに示す反り量hと同一である場合、反り量hに相当するずれ量Sと斜視カメラ11aの斜視角θとを利用して補正量M=S×sinθを算出し、基準位置Y1と比較してY方向に補正量Mだけ移動した座標を特定して座標補正データ25fとする構成を採用可能である。
【0081】
次に、CPU24は、基板外観検査プログラム25aの処理により、検査対象部が斜視カメラ11aの視野に含まれるように基板50を移動させる(ステップS285)。すなわち、座標補正データ25fに基づいて、処理対象となっている検査対象部に関する補正後の座標を特定し、当該補正後の座標を示す信号をステージ制御部23に対して出力する。この結果、処理対象となっている検査対象部に関する補正後の座標が斜視カメラ11aの視野(例えば、視野中心)に含まれた状態になる。
【0082】
次に、CPU24は、基板外観検査プログラム25aの処理により、検査用斜視画像を撮影する(ステップS290)。すなわち、CPU24はカメラ制御部21に制御信号を出力して斜視カメラ11aによって撮影領域の画像を撮影し、撮影した画像を検査用斜視画像とする。
【0083】
次に、CPU24は、基板外観検査プログラム25aの処理により、処理対象となっている検査対象部の検査を行う(ステップS295)。すなわち、CPU24は、上述の検査手順を参照し、検査方法に示された画像処理を行って特徴量を取得し、当該特徴量と良否判定条件としての閾値とを比較して良否判定を行う。この結果、処理対象となっている検査対象部について、未定とされていた良否判定結果が特定される。むろん、ここでも、検査方法としては種々の方法を採用可能であり、パターンマッチングにより検査対象の良否の判定する方法や、表示部30に表示した直視画像に基づいて目視により検査する方法を採用しても良い。検査結果を示す情報は、メモリ25に記録される。
【0084】
処理対象となっている検査対象部の検査が終了すると、CPU24は、詳細検査が必要とされた検査対象部の全てについて検査が終了したか否かを判定し(ステップS300)、全ての検査対象部の検査が終了したと判定されない場合にはステップS240以降の処理を繰り返す。すなわち、詳細検査が必要とされた検査対象部の中で、処理対象とされていない検査対象部を一つ抽出して新たな処理対象とし、ステップS240以降の処理を繰り返す。ステップS300にて、詳細検査が必要とされた検査対象部の全てについて検査が終了したと判定された場合、CPU24は、検査結果を出力する(ステップS305)。すなわち、CPU24は、各検査対象部と良否判定結果とを対応づけた情報を表示部30に表示するための制御信号を出力部26に出力する。この結果、表示部30には、各検査対象部と良否判定結果とを対応づけた情報が表示され、利用者は、各検査対象部の良否判定結果を把握することができる。そして、CPU24は、図示しない搬送機構によってX−Yステージ13上のガイドレール12による基板50の支持を解除し、X−Yステージ13上から基板50を搬出する(ステップS310)。以上の処理により、基板50に反りが発生していても正確に検査対象部の良否判定を実行することが可能である。
【0085】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、基板上のパッドから選択された基準パッドに基づいて基板の反り量を特定する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、斜視カメラの数は4台に限定されず、1台以上の任意の数であってよい。むろん、斜視カメラの光軸方向は固定されていても良いし、可動であっても良い。また、基準パッドの境界に相当するエッジは、斜視カメラの光軸の投影直線に対して垂直に配向している関係となっていることが好ましく、基板データ25bに基づいて固定的に配置された斜視カメラと当該関係にある基準パッドを特定しても良いし、基板データ25bに基づいて斜視カメラや基板の向きを調整しても良い。
【0086】
さらに、上述の実施形態においては、2個の基準パッドに基づいて基板の反りを特定していたが、基板の反りを特定するために参照する基準パッドの数は2個に限定されず、3個以上であっても良いし1個でも良い。例えば、基板上の検査対象部に最も近い基準パッドに基づいて検査対象部における反りの量を特定する構成を採用しても良い。すなわち、図2Bに示す例のように、基板50の2辺が支持された状態において、基板の反り量はY方向に大きく変化するものの、X方向への変化は微小である。そして、Y方向の反り量は1カ所の基準パッドに基づいて特定することが可能である。そこで、1カ所の基準パッドに基づいてY方向の反り量を特定し、X方向に基板の反り量は変化しないと見なせば、1カ所の基準パッドに基づいて任意の位置の基板の反り量を特定することが可能になる。
【0087】
さらに、上述の実施形態においては、Y方向の基板の反り量を特定して任意の位置の基板の反り量を推定したが、特定の方向の基板の反り量を特定することなく、複数の位置の基板の反り量に基づいて任意の位置の基板の反り量を特定する構成としても良い。例えば、図2Bに示す基準パッドS1に基づいて基準パッドS1の座標(X1,Yi)における反り量を特定し、基準パッドS2に基づいて基準パッドS2の座標(X2,Yi)における反り量を特定し、検査対象部の座標(Xi,Yi)と座標(X1,Yi)との距離および検査対象部の座標(Xi,Yi)と座標(X2,Yi)との距離を利用した補間演算によって検査対象部の座標(Xi,Yi)における基板の反り量を特定しても良い。
【符号の説明】
【0088】
1…基板外観検査装置、10…撮像部、11a…斜視カメラ、11b…直視カメラ、12…ガイドレール、13…X−Yステージ、20…制御部、21…カメラ制御部、22…ガイドレール制御部、23…ステージ制御部、24…CPU、25…メモリ、25a…基板外観検査プログラム、25a1…基準パッド選択機能、25a2…画像取得機能、25a3…反り量特定機能、25b…基板データ、25c…電子部品データ、25d…対照テーブル、25e…撮影画像データ、25f…座標補正データ、26…出力部、30…表示部、50…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を基板に実装するためのパッドの中から前記基板の反りを検出するための基準パッドを選択する基準パッド選択手段と、
前記基板に反りが発生していない場合の前記基板の表面である基準平面に対して傾斜した方向に光軸が配向したカメラによって撮影された前記基準パッドの像を含む画像を取得する画像取得手段と、
前記基準パッドの像の前記画像内での位置と前記基板に反りが発生していない場合における前記基準パッドの像の前記画像内での位置である基準位置とに基づいて前記基準平面に垂直な方向への前記基板の反りの量を特定する反り量特定手段と、
を備える変位量特定装置。
【請求項2】
前記反り量特定手段は、前記基準パッドの像のエッジを検出し、当該エッジの前記画像内での位置によって前記基準パッドの像の前記画像内での位置を特定する、
請求項1に記載の変位量特定装置。
【請求項3】
前記基準パッド選択手段は、所定の大きさ以上の前記パッドを前記基準パッドの候補となる候補パッドとし、当該候補パッドの周囲に前記エッジの検出を阻害する要素が存在しない前記候補パッドを選択して前記基準パッドとする、
請求項2に記載の変位量特定装置。
【請求項4】
前記基板は当該基板が備える平行な2辺を支持され、前記基板と前記カメラとは前記基準平面に平行な方向に相対的に移動し、
前記基準パッド選択手段は、前記2辺に平行な方向の一方側において前記基板上の検査対象部に最も近い前記基準パッドと、前記2辺に平行な方向の他方側において前記検査対象部に最も近い前記基準パッドとに基づいて前記検査対象部における前記基板の反りの量を特定する、
請求項3に記載の変位量特定装置。
【請求項5】
前記基板は当該基板が備える平行な2辺を支持され、前記基板と前記カメラとは前記基準平面に平行な方向に相対的に移動し、
前記基準パッド選択手段は、前記基板上の検査対象部に最も近い前記基準パッドに基づいて前記検査対象部における前記基板の反りの量を特定する、
請求項3に記載の変位量特定装置。
【請求項6】
電子部品を基板に実装するためのパッドの中から前記基板の反りを検出するための基準パッドを選択する基準パッド選択工程と、
前記基板に反りが発生していない場合の前記基板の表面である基準平面に対して傾斜した方向に光軸が配向したカメラによって撮影された前記基準パッドの像を含む画像を取得する画像取得工程と、
前記基準パッドの像の前記画像内での位置と前記基板に反りが発生していない場合における前記基準パッドの像の前記画像内での位置である基準位置とに基づいて前記基準平面に垂直な方向への前記基板の反りの量を特定する反り量特定工程と、
を含む変位量特定方法。
【請求項7】
電子部品を基板に実装するためのパッドの中から前記基板の反りを検出するための基準パッドを選択する基準パッド選択機能と、
前記基板に反りが発生していない場合の前記基板の表面である基準平面に対して傾斜した方向に光軸が配向したカメラによって撮影された前記基準パッドの像を含む画像を取得する画像取得機能と、
前記基準パッドの像の前記画像内での位置と前記基板に反りが発生していない場合における前記基準パッドの像の前記画像内での位置である基準位置とに基づいて前記基準平面に垂直な方向への前記基板の反りの量を特定する反り量特定機能と、
をコンピュータに実現させる変位量特定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−11569(P2013−11569A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145981(P2011−145981)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】